JPH08246009A - 水素吸蔵合金粉末製造装置 - Google Patents

水素吸蔵合金粉末製造装置

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JPH08246009A
JPH08246009A JP7058895A JP7058895A JPH08246009A JP H08246009 A JPH08246009 A JP H08246009A JP 7058895 A JP7058895 A JP 7058895A JP 7058895 A JP7058895 A JP 7058895A JP H08246009 A JPH08246009 A JP H08246009A
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JP
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alloy powder
hydrogen storage
cooling
storage alloy
alloy
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JP7058895A
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English (en)
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Yoshiyuki Isozaki
義之 五十崎
Takamichi Inaba
隆道 稲葉
Shusuke Inada
周介 稲田
Noriaki Sato
典昭 佐藤
Takao Sawa
孝雄 沢
Hiromichi Horie
宏道 堀江
Hiroyuki Hasebe
裕之 長谷部
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】特にニッケル水素二次電池の負極材料として使
用した場合に優れた電池特性を発揮する高品質の水素吸
蔵合金を効率的に製造することが可能な水素吸蔵合金粉
末製造装置を提供する。 【構成】水素吸蔵合金溶湯2を冷却媒体3に接触せし
め、冷却媒体3の運動力によって水素吸蔵合金溶湯2を
分散飛翔させると同時に冷却凝固せしめて合金粉末を形
成する分散冷却手段6と,冷却媒体3との接触点Pから
分散飛翔する合金粉末を回収する開口部7を有する回収
手段8とを備え、上記水素吸蔵合金溶湯2の冷却媒体3
との接触点Pと回収手段8の開口部7の両縁S1 ,S2
とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角度θを20〜120
度の範囲に設定したことを特徴とする。また上記各構成
手段を所定雰囲気に調整した同一チャンバ内に配置する
とよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水素吸蔵合金粉末製造装
置に係り、特にニッケル水素二次電池の負極材料として
使用した場合に優れた電池特性を発揮する高品質の水素
吸蔵合金粉末を効率的に製造することが可能な水素吸蔵
合金粉末製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子技術の進歩による省電力化,
実装技術の進歩により従来では予想し得なかった電子機
器が小型化およびポータブル化されてきている。それに
伴い、前記電子機器の電源である二次電池に対する高容
量化,長寿命化が特に要求されている。上記用途の二次
電池として、水素吸蔵合金粉末を集電体である導電性芯
体に固定化した負極を使用したアルカリ二次電池が実用
化されている。特にLaNi5 に代表されるAB5 型水
素吸蔵合金を使用した負極は、従来の代表的なアルカリ
二次電池負極材料であるカドミウムを使用した負極と比
較して単位重量当りまたは単位容積当りのエネルギ密度
を大きくすることができ、電池の高容量化を可能にする
と同時に環境汚染を引き起こすおそれが少ないという特
徴を有している。
【0003】従来、上記のようなアルカリ二次電池用水
素吸蔵合金の製造方法としては、所定組成の原料混合体
を、アーク溶解炉や高周波加熱溶解炉を用いて溶解して
合金溶湯とし、この合金溶湯を水冷式金属鋳型等に鋳込
み冷却凝固せしめる鋳造法によって製造されていた。
【0004】しかしながら、上記鋳造法においては、水
素吸蔵合金を構成するLa,Mn,Al等の元素が粒界
部に偏析し易く、この偏析に起因する局部電池の形成に
よって、合金の腐食が進行し易く、また粒界偏析による
粒界強度の低下によって合金の微細化(微粉化)が進行
し易く電池特性の経時劣化が大きくなる難点があった。
【0005】そこで合金調製時における添加元素の偏析
を抑制する手段として、単ロール法,回転電極法等の溶
湯急冷法を使用し、合金溶湯の冷却速度を高めて電池用
水素吸蔵合金を製造する方法も採用されている。
【0006】単ロール法による製造装置は、例えば熱伝
導性に優れる冷却ロールと、合金溶湯を冷却ロールの走
行面に噴射する注湯ノズルとを冷却チャンバ内に収容し
て構成される。この製造装置において、所定組成に調製
された合金溶湯は注湯ノズルより冷却ロールの走行面に
噴射される。噴射された合金溶湯は冷却ロールに接触し
た部位から凝固し、冷却ロールから離脱するまでに固化
が終了する。冷却ロールから離脱した合金片は、冷却チ
ャンバ内を飛翔する間にさらに冷却されて水素吸蔵合金
片とされる。得られた水素吸蔵合金片は、全量回収さ
れ、さらに分級粉砕工程を経て電池用水素吸蔵合金粉末
とされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の単ロール法等の溶湯急冷法を使用した製造装置にお
いては、合金溶湯が冷却ロールに接触した瞬間にはじき
飛ばされる割合が大きく、不完全な冷却処理で製造され
る合金粉末が多かった。上記のような不完全な冷却は、
冷却ロールの走行面の周速や溶湯滴下速度等の操作条件
を調整することにより、ある程度は防止できるが、完全
に防止することは不可能であった。上記のような不完全
な冷却処理によって調製された合金では、特にMnやL
aなどの合金構成元素の偏析が発生し易く、これらの合
金粉末を電池の負極材料として使用した場合に電池特性
が大きくばらつく問題点があった。すなわち従来の製造
装置においては、不完全な冷却処理で製造された合金粉
末を含めて製造された合金粉末の全量を回収していたた
め、上記電池特性の低下は必至となる問題点があった。
【0008】また上記のような溶湯急冷法を使用した場
合、水素吸蔵合金は、通常フレークとして得られる。し
かしながら急冷直後のフレークは極めて活性が高いた
め、温度が高い状態で空気中に取り出すと表面酸化を受
け水素吸蔵合金としての特性が劣化し易い難点がある。
さらにフレークは冷却ロールの表面形状に近似した反り
を有するため、フレーク同士は点接触にて接しているた
め熱伝導性が悪い。そのためフレークの冷却速度が遅
く、フレークを装置外に取り出すまでに長時間の冷却時
間が必要となり、合金の量産性が低くなる問題点があ
る。
【0009】また上記フレーク状の合金片は、そのまま
負極材料としては使用できないため、水素吸蔵合金片か
ら電池の負極を製造する場合には、ボールミル,ハンマ
ーミル,ジェットミル等の粉砕手段を用いて水素吸蔵合
金片を機械的に粉砕する工程が必要となる。さらに水素
吸蔵合金片は脆いため、上記のような機械的な粉砕手段
で粉砕された粉末の粒度分布が非常に広くなり易い難点
があり、粉砕した合金粉末を所定の粒度に揃えるため
に、さらに分級工程が必須となる。
【0010】ところが、従来の製法においては、上記合
金片の製造工程,合金片の粉砕工程および粉砕粉の分級
工程はそれぞれ個別の装置で実行されていたため、一連
の工程は不連続になる問題点があった。そのため、合金
粉末の製造効率が低い上に、各工程間の移送中に水素吸
蔵合金が大気中に曝露されることになるため、水素吸蔵
合金の表面酸化が不可避であった。そして上記表面酸化
によって、水素の吸蔵・放出に関与する活物質が失われ
て電極容量が低下する等の問題点があった。
【0011】さらに、この表面酸化によって水素吸蔵合
金の不均一化反応が進行するため、電池の劣化速度が増
大し電池寿命が低下する不具合もあった。また合金表面
に生成した酸化物皮膜によって表面反応が阻害されるた
め、電池容量の立上り特性が低下するなどの問題点もあ
った。
【0012】他方、磁性材料に関する分野においては、
急冷凝固法により製造された非晶質薄帯をインライン操
作で粉砕して粉末にする合金粉末製造装置が提案されて
いる。しかしながら、上記非晶質薄帯は長尺となるた
め、粉砕工程に投入する前処理工程としての破断工程が
必須となるため、装置構成が複雑化する。その反面、合
金粉末の粒度分布が揃い易いために分級工程が不要であ
るなどの点において必要とされる工程種や操作条件が、
水素吸蔵合金粉末製造装置と大幅に異なっており、その
磁性材料粉末製造装置を水素吸蔵合金粉末製造装置にそ
のまま転用することは困難である。
【0013】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、特にニッケル水素二次電池の負極材料
として使用した場合に優れた電池特性を発揮する高品質
の水素吸蔵合金粉末を効率的に製造することが可能な水
素吸蔵合金粉末製造装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る第1の水素吸蔵合金粉末製造装置は、
水素吸蔵合金溶湯を冷却媒体に接触せしめ、冷却媒体の
運動力によって水素吸蔵合金溶湯を分散飛翔させると同
時に冷却凝固せしめて合金粉末を形成する分散冷却手段
と,冷却媒体との接触点から分散飛翔する合金粉末を回
収する開口部を有する回収手段とを備え、上記水素吸蔵
合金溶湯の冷却媒体との接触点と回収手段の開口部の両
縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角度を20〜120
度の範囲に設定したことを特徴とする。また冷却媒体が
高速回転する冷却ロールであることを特徴とする。
【0015】ここで上記水素吸蔵合金の組成は特に限定
されないが、一般式A Nia Mnb c (但し、A
はY(イットリウム)を含む希土類元素より選択される
少なくとも1種の元素、MはCo,Al,Fe,Si,
Cr,Cu,Ti,Zr,P,Zn,Hf,V,Nb,
Ta,Mo,W,Ag,Pd,B,Ga,In,Geお
よびSnの中から選択される少なくとも1種の元素を主
成分とする金属、3.5≦a≦5,0.1≦b≦1,0
≦c≦1,4.5≦a+b+c≦6)で表わされる組成
を有するAB5 型水素吸蔵合金やAB2 型水素吸蔵合金
などが使用される。
【0016】また分散冷却手段は、例えば単ロール装
置,双ロール装置等で構成され、その冷却媒体としては
冷却機能を有し高速回転する冷却ロールが好適に使用さ
れる。
【0017】水素吸蔵合金溶湯の冷却媒体との接触点と
回収装置の開口部の両縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開
き角度は、高品質を有する水素吸蔵合金粉末の収率に大
きく影響するため、本発明では20〜120度の範囲に
設定される。上記開き角度が120度を超える場合は、
冷却媒体によって充分に冷却されずに偏析を生じた合金
粉末が多量に回収装置に回収されてしまうため、それら
の合金粉末を負極材料として使用した電池の特性がばら
ついたり低下したりする難点がある。一方、上記開き角
度が20度未満と過小な場合には、偏析が少ない良質な
合金粉末の収率が低下し、工業上実用化し得ない。した
がって回収手段の開口部の開き角度は20〜120度の
範囲に設定される。
【0018】なお、水素吸蔵合金溶湯が冷却ロールに接
触した瞬間に飛ばされることなく、冷却ロールと充分に
接触した後に、冷却ロールの遠心力によって飛散させら
れる場合、合金フレークは冷却ロールの接線方向に対し
て下向きの角度をもって飛翔する。したがって回収手段
の開口部の開き角度θが20〜120度の範囲にあって
も、合金溶湯の接触点から回収手段の開口部の上縁を見
込む仰角を必要以上に大きくすると、冷却ロールによる
合金の冷却作用が不充分なために偏析が生じた合金が多
く回収されてしまうため、電池特性を改善することが困
難となる。したがって溶湯の接触点から回収手段の開口
部の上縁を見込む仰角を5〜20度の範囲に設定すると
同時に、接触点から開口部の下縁を見込む俯角を上記仰
角より大きい値にし、かつ上記仰角と俯角との和を20
〜120度の範囲に設定する。さらにばらつきが少ない
良好な特性を有する合金粉末を得るためには20〜90
度の範囲に設定することが、より望ましい。
【0019】また分散冷却した高活性の合金フレークを
急速に冷却せしめ変質等を防止するために、回収手段に
は冷却機構を付設することが望ましい。この冷却機構と
しては、例えば、回収手段外壁に付設した冷却水配管に
冷却水を循環させる水冷方式の冷却機構や冷却ファン等
を用いた空冷方式の冷却機構が採用できる。さらに回収
手段に回収された合金フレークの冷却状態(温度)を検
知するために、上記回収手段内部に温度検出端子を設け
ることが望ましい。
【0020】また本発明に係る第2の水素吸蔵合金粉末
製造装置は、水素吸蔵合金溶湯を冷却媒体に接触せし
め、冷却媒体の運動力によって水素吸蔵合金溶湯を分散
飛翔させると同時に冷却凝固せしめて合金粉末を形成す
る分散冷却手段と,冷却媒体との接触点から分散飛翔す
る合金粉末を回収する開口部を有する回収手段と,回収
した合金粉末を粉砕する粉砕手段と,粉砕した合金粉末
を分級する分級手段とを備え、上記分散冷却手段,回収
手段,粉砕手段および分級手段を所定雰囲気に調整した
同一のチャンバ内に配置したことを特徴とする。
【0021】また冷却媒体が高速回転する冷却ロールで
ある場合には、上記水素吸蔵合金溶湯の冷却ロールとの
接触点と回収手段の開口部の両縁とをそれぞれ結ぶ線分
がなす開き角度を20〜120度の範囲に設定するとよ
い。
【0022】ここで上記分散冷却手段としては単ロール
装置,双ロール装置の他にガスアトマイズ装置,回転デ
ィスク装置等を使用することができるが、合金の量産
性,量産コスト,メンテナンスの容易さ等の観点から単
ロール装置が好適である。
【0023】上記単ロール装置等の分散冷却手段によっ
て調製された合金片は、反りを有する薄片状に形成され
るため、そのままでは電池用材料にはなり得ない。そこ
で合金片を粉砕する粉砕手段が設けられる。粉砕手段と
しては、ボールミル,ハンマーミル,ジェットミル,パ
ルペライザなどの機械的粉砕装置が採用される。
【0024】さらに粉砕後の合金粉末は、粒度分布が非
常に広くなり易い。そこで粉砕した合金粉末を所定の粒
度に揃えるための分級手段が装置内に設けられる。上記
分級手段の具体例としては、量産性が良好な観点から連
続投入型の電動ふるいが好適である。
【0025】上記分散冷却手段,回収手段,粉砕手段お
よび分級手段は、所定雰囲気に調整された同一のチャン
バ内に配設され、各工程を連続的に実施できるように構
成される。
【0026】チャンバ内の雰囲気としては、合金の酸化
による劣化や変質を防止できる真空雰囲気や不活性ガス
雰囲気とすることが好ましい。
【0027】上記水素吸蔵合金粉末製造装置において、
水素吸蔵合金溶湯は分散冷却手段の冷却媒体の運動力や
噴出ガス圧力によって分散飛翔し急冷凝固して回収手段
に回収される。このとき回収手段の開口部の開き角度に
対応する空間を飛翔する合金粉末のみが選択的に回収さ
れる。回収された合金粉末は、逐次、粉砕手段によって
粉砕された後に、さらに分級手段によって分級され、粒
径が揃った水素吸蔵合金粉末とされる。
【0028】
【作用】上記水素吸蔵合金粉末製造装置によれば、回収
手段の開口部の開き角度に対応する区間を飛翔する合金
粒子、すなわち適正に冷却処理を施された偏析の少ない
合金粒子のみが回収される。したがってこの合金粒子を
電池の負極材料として使用した場合に、特性のばらつき
が少ない電池が得られる。
【0029】また分散冷却手段,回収手段,粉砕手段お
よび分級手段を同一のチャンバ内に配置することによ
り、分散冷却工程および回収・粉砕・分級の各工程を同
一チャンバ内で一貫して連続的に行なうことが可能とな
る。そのため、従来の回分処理方式の装置と比較して量
産性に優れ、合金粉末の製造効率を大幅に改善すること
ができる。また各工程間において合金粉末が大気と接触
することがないため、合金粉末の酸化による劣化や水分
による変質が少なく、電極材料として使用した場合に、
電池の容量の立上り性が良好であり、またサイクル寿命
特性が大幅に改善される。
【0030】
【実施例】次に本発明の一実施例について添付図面を参
照して説明する。
【0031】図1は本発明に係る水素吸蔵合金粉末製造
装置の一実施例を示す断面図であり、図2は分散冷却手
段の構成を示す断面図である。すなわち本実施例に係る
水素吸蔵合金粉末製造装置1は、水素吸蔵合金溶湯2を
冷却媒体3としての高速回転体(冷却ロール)4に接触
せしめ、冷却媒体3の運動力によって水素吸蔵合金溶湯
2を分散飛翔させると同時に冷却凝固せしめて合金フレ
ーク5を形成する分散冷却手段6と,冷却媒体3との接
触点Pから分散飛翔する合金フレーク5を回収する開口
部7を有する回収手段8とを備え、上記水素吸蔵合金溶
湯2の冷却媒体3との接触点Pと回収手段8の開口部7
の両縁S1 ,S2 とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角度
θを20〜120度の範囲に設定して構成される。
【0032】ここで上記分散冷却手段6は、汎用の単ロ
ール装置であり、原料金属を溶解して水素吸蔵合金溶湯
2を調製する高周波誘導炉9と,合金溶湯2を噴射する
注湯ノズル(射出ノズル)10と,噴射された合金溶湯
2を冷却分散する高速回転体(冷却ロール)4とから構
成される。
【0033】また上記回収手段8の底部外壁には、合金
フレーク5を冷却する冷却機構11が付設され、回収手
段8の下部には、回収された合金フレーク5を機械的に
粉砕する粉砕装置12が設けられ、粉砕装置12の下部
には、粉砕した合金粉末を所定の粒度に分級する分級装
置13が配設されている。さらに分級された合金粉末の
うち、所定の粒度を超えた合金粉末を粉砕装置12に還
流移送するための移送機構14が設けられる。
【0034】ここで上記分散冷却手段6,回収手段8,
粉砕装置12および分級装置13は、同一のチャンバ1
5内に収納され、分散冷却工程および回収・粉砕・分級
などの一連の工程を連続的に実施できるように構成され
ている。また高周波誘導炉9に対向するチャンバ15の
上部には原料投入口16が配設される一方、チャンバ1
5の側壁には、チャンバ内の雰囲気を調整するArガス
精製装置17と,チャンバ15内を減圧して真空にする
真空ポンプ18とが付設される。一方分級装置13の下
部はゲートバルブ19を介して製品槽20に接続され
る。
【0035】上記製造装置1において、水素吸蔵合金溶
湯2は注湯ノズル10から高速回転体4の走行面に噴射
される。噴射された合金溶湯2は高速回転体4に接触し
た面から固化し初め、結晶成長とともに、高速回転体4
から離脱するまでに完全に固化が終了する。その後、分
散した状態でチャンバ15内を、回収手段8方向に飛翔
する間に冷却がさらに進行して、偏析が少なく結晶成長
方向が揃った水素吸蔵合金フレーク5となり、回収手段
8の開口部7を経て回収される。このとき回収手段8の
開口部7の開き角度θに対応する空間を飛翔した合金フ
レーク、すなわち適正に冷却処理を受けた合金フレーク
のみが選択的に回収手段8内に回収される一方、高速回
転体4の走行面で飛ばされた合金フレークや合金粒子、
すなわち冷却処理が適正でない合金フレークや粒子は、
上記開口部7の開き角度θに対応する空間外を飛翔する
ことになり、回収されない。そして適正に冷却処理され
た合金フレーク5のみが回収手段8に回収され、さらに
冷却機構11によって冷却され、安定化される。冷却さ
れた合金フレーク5は、次に粉砕装置12によって粉砕
された後に、さらに分級装置13によって所定の粒度に
分級される。分級された合金粉末のうち所定の粒度を超
えたものについては、移送機構14によって粉砕装置1
2にフィードバックされ再粉砕される。分級装置13に
よって所定粒度に分級された水素吸蔵合金粉末21は、
ゲートバルブ19の開閉によって適宜、製品槽20に排
出される。
【0036】上記実施例に係る水素吸蔵合金粉末製造装
置1によれば、回収手段8の開口部7の開き角度(θ=
20〜120度)に対応する区間を飛翔する合金フレー
ク5、すなわち適正に冷却処理を施された偏析の少ない
合金フレーク5のみが回収される。したがってこの合金
フレーク5を粉砕・分級した合金粉末21を電池の負極
材料として使用した場合に、特性のばらつきが少ない電
池を形成することができる。
【0037】次に本発明の他の実施例について図3を参
照して説明する。図3は本発明装置の他の実施例を示す
断面図である。本実施例に係る水素吸蔵合金粉末製造装
置1aは、図1および図2に示す単ロール方式の分散冷
却手段6に代えて、ガスアトマイズ方式の分散冷却手段
6aを採用した点以外の構成は、図1に示す水素吸蔵合
金粉末製造装置1と同一であり、同一の構成要素および
部品について同一符号を付している。
【0038】分散冷却手段6aは、汎用のガスアトマイ
ズ装置であり、原料金属を溶解して水素吸蔵合金溶湯2
を調製する高周波誘導炉9と,合金溶湯2を噴射する注
湯ノズル10と,注湯ノズル10の噴射口付近に対向す
るように配置された一対のアトマイズガスノズル22と
から構成される。アトマイズガスノズル22は、注湯ノ
ズル10から噴射された合金溶湯2を分散するとともに
冷却凝固せしめる冷却媒体を供給するノズルである。冷
却媒体としてはArガスなどの不活性ガスが使用され
る。
【0039】また上記分散冷却手段6a,分散凝固した
合金粉末23を回収する回収手段8,回収した合金粉末
23を粉砕する粉砕装置12,粉砕した合金粉末を分級
する分級装置13および移送機構14は所定雰囲気に調
整された同一のチャンバ15内に収容されている。
【0040】上記製造装置1aにおいて、注湯ノズル1
0から噴射された合金溶湯2は、アトマイズガスノズル
22から噴射されたArガスなどの不活性ガスによって
分散されると同時に冷却されて凝固し、凝固した合金粉
末23は回収手段8によって回収される。以下前記実施
例装置と同様にして、冷却工程,粉砕工程,分級工程を
経て所定粒度に分級され水素吸蔵合金粉末21aが製造
される。
【0041】上記実施例に係る水素吸蔵合金粉末製造装
置1aによれば、分散冷却手段6a,回収手段8,粉砕
装置12および分級装置13を同一のチャンバ15内に
配置しているため、分散冷却工程および回収・粉砕・分
級の各工程を同一チャンバ15内で一貫して連続的に行
なうことが可能となる。そのため、従来の回分処理方式
の装置と比較して量産性に優れ、合金粉末21aの製造
効率を大幅に改善することができる。また各工程間にお
いて合金粉末23,21aが大気と接触することがない
ため、合金粉末23,21aの酸化による劣化や水分に
よる変質が少なく、電極材料として使用した場合に、電
池の容量の立上り性が良好であり、またサイクル寿命特
性が大幅に改善される。
【0042】次に上記実施例に係る製造装置を使用して
水素吸蔵合金粉末を製造し、その合金粉末について耐食
性の良否,偏析の有無および回収率の良否を、比較例と
ともに判定し、製造装置の優位性を評価した。
【0043】実施例1〜4および比較例1〜4 図1に示す製造装置において、チャンバ15内をArガ
ス雰囲気に調整した後に、合金とした際の組成がLmN
4.0 Co0.4 Mn0.3 Al0.3 となるように配合した
原料混合体を高周波誘導炉9により溶解して水素吸蔵合
金溶湯2を調製した。ここで上記原料混合体におけるミ
ッシュメタル(Lm)としては、Ce3重量%,La5
0重量%,Nd35重量%,Pr10重量%,その他の
希土類金属2重量%から成るLa富化ミッシュメタルを
使用した。
【0044】また高速回転体(冷却ロール)4としては
直径300mmのCu製冷却ロールを使用する一方、注湯
ノズル10と冷却ロール4との間隙を20mmに設定し、
合金溶湯2の射出圧力を0.5kgf/cm2 に設定し、冷却
ロール4の回転数を400rpmに設定して合金溶湯2
を冷却ロール4の走行面に射出した。この際、回収手段
8の開口部7の開きを調整するシャッタ機構を調整し
て、合金溶湯2を冷却ロール4との接触点Pと開口部7
の上下縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角度θを表1
に示すように5〜140度の範囲で段階的に切り換え
た。
【0045】射出された合金溶湯2は、冷却ロール4の
運動力によって分散飛翔すると同時に急冷凝固され、厚
さ20〜150μmのフレーク状の水素吸蔵合金片5と
なって回収手段8に回収された。そして回収手段8の底
部外壁に付設した冷却水配管に冷却水を循環させた冷却
機構11によって各合金片5を充分に冷却した後にチャ
ンバ15から取り出した。そして、上記開口部7の開き
角度θに対応する実施例1〜4および比較例1〜4に係
る水素吸蔵合金片5を得た。
【0046】次に各水素吸蔵合金片5を温度5℃に冷却
し、圧力10kgf/cm2 (ゲージ圧)の加圧水素を吸蔵さ
せた後に、温度90℃に加熱して真空引きを行なうこと
によって粉砕し、さらに200メッシュ以下に分級する
ことにより実施例1〜4および比較例1〜4に係る水素
吸蔵合金粉末21を調製した。
【0047】そして各実施例および比較例の合金粉末2
1から試料をサンプリングし、温度60℃の電池用アル
カリ電解液(8Nの水酸化カリウム溶液)中に10日間
浸漬し、合金の腐食反応によって析出したNiの磁化率
を測定することにより、各合金粉末の耐食性を評価し
た。また製造時における開口部7の各開き角度θに対応
する合金粉末の回収率を測定した。測定結果を下記表1
に示す。また回収手段の開口部の開き角度θとアルカリ
浸漬後の合金の磁化率との関係を図4に示す。さらに開
き角度θと回収率との関係を図5に示す。
【0048】
【表1】
【0049】上記表1および図4に示す結果から明らか
なように、回収手段の開口部の開き角度θを120度以
下に設定して製造された実施例1〜4に係る水素吸蔵合
金粉末は、開き角度θを120度超に設定して製造した
比較例3〜4の合金粉末と比較して腐食反応によって析
出したNiの磁化率が小さく、アルカリ電解液に対する
耐食性が優れていることが確認できた。特に開口部の開
き角度θを90度以下に設定して製造した実施例1〜3
に係る合金粉末では、さらに耐食性が良好であり、電池
の負極材料とした場合に優れた耐久性を発揮することが
判明した。
【0050】一方、表1および図5に示すように開口部
の開き角度θを20度未満として製造した比較例1〜2
に係る合金粉末では、磁化率が小さくアルカリ電解液に
対する耐食性は良好である反面、回収率が大幅に低下す
ることが確認できた。
【0051】また上記の各実施例および比較例に係る合
金粉末において浸漬試験後における磁化率が相違する原
因を調査するため、下記要領で各合金粉末試料の研磨面
についてX線マイクロアナライザ(EPMA)により構
成元素のマッピング観察を行なった。
【0052】試料の作製は以下の手順で行なった。ま
ず、フレーク状の各水素吸蔵合金片を2〜3枚ずつ採取
し、直径20mmのSEM試料用樹脂埋込み枠(ポリプロ
ピレン製)中央部に散布した。次いで、SEM試料埋込
み用樹脂として市販されているエポキシ樹脂(ビューラ
ー社製EPO−MIX)と硬化剤とを良く混合した後、
混合体を上記埋込み枠に注入し硬化させた。この際、試
料と樹脂との密着性を向上させるため、樹脂を予め60
℃程度まで加温して粘度を低下させたり、樹脂注入後、
真空デシケータ中で真空引きして脱泡を行なうことが望
ましい。
【0053】上記手順により埋込みを行なった試料を、
鏡面仕上となるまで研磨した。なお水素吸蔵合金試料は
水と反応し易いため、上記研磨はエチルアルコールを滴
下しながら耐水研磨紙の目の荒さを180番,400
番,600番と順に細かくしながら200rpmで回転
する回転式研磨機により研磨した後、同じく回転研磨機
にフェルトをセットしダイアモンドペーストの粒度を1
5ミクロン,3ミクロン,0.25ミクロンの順に細か
くしながら研磨し鏡面仕上げした。そして各試料の研磨
面について構成元素のマッピング観察を行なった。
【0054】その結果、回収手段の開口部の開き角度θ
を120度以下に設定して調製した実施例1〜4および
比較例1〜2に係る合金粉末では、構成元素の偏析は殆
ど観察されず、各構成元素が均一に分布していることが
確認できた。図6は実施例3に係る合金粉末の研磨面の
金属組織をEPMAによって観察したMn分布を示す組
織写真であり、Mnの均一な分布状態を示している。
【0055】一方、回収手段の開口部の開き角度θを1
20度超と過大に設定して製造した比較例3〜4に係る
合金粉末においては、MnやLaなどの構成元素による
直径数μm程度の大きな偏析が数多く観察された。図7
は比較例4に係る合金粉末の研磨面の金属組織をEPM
Aによって観察したMn分布を示す組織写真であり、M
nの偏析が数多く観察され、不均一なMn分布を呈して
いる。
【0056】上記のような偏析はアルカリ電解液中にお
いて局部電池を形成し易く、その電食作用によって合金
成分がアルカリ電解液中に溶出したり、合金表面におい
て水酸化物に変化したりして合金の腐食が加速される。
その結果、表1に示すような磁化測定結果に相異が表わ
れたものと考えられる。
【0057】回収手段の開口部の各開き角度θと原料の
総重量に対する合金粉末の回収重量の比率(回収率)と
の関係を表1および図5に示す。表1および図5から明
らかなように、開き角度θを20度以上とした実施例1
〜4および比較例3〜4に係る合金粉末の回収率は90
%以上と高い値を示すのに対して、開き角度θを20度
未満とした比較例1〜2においては、実施例1〜4およ
び比較例3〜4と比較して回収率が大幅に低下し、実用
化が困難となることが判明した。
【0058】以上の結果から、偏析に起因する腐食を抑
制でき高品質の合金粉末を得るためには、回収手段の開
口部の開き角度を120度以下、好ましくは90度以下
に設定する必要があり、回収率を良好に維持するために
は上記開き角度θを20度以上に設定することが必要と
なる。
【0059】したがって、開き角度θを20〜120度
に設定した本実施例の製造装置を使用することにより、
偏析が少なくアルカリ電解液に対する耐食性が優れた水
素吸蔵合金粉末を高い生産効率で製造できることが判明
した。
【0060】実施例5および比較例5〜6 図1に示す製造装置において、チャンバ15内をArガ
ス雰囲気に調整した後に、合金とした際の組成がLmN
4.0 Co0.4 Mn0.3 Al0.3 となるように配合した
原料混合体を高周波誘導炉9により溶解して水素吸蔵合
金溶湯2を調製した。ここで上記原料混合体におけるミ
ッシュメタル(Lm)としては、Ce3重量%,La5
0重量%,Nd35重量%,Pr10重量%,その他の
希土類金属2重量%から成るLa富化ミッシュメタルを
使用した。
【0061】また高速回転体(冷却ロール)4としては
直径300mmのCu製冷却ロールを使用する一方、注湯
ノズル10と冷却ロール4との間隙を20mmに設定し、
合金溶湯2の射出圧力を0.5kgf/cm2 に設定し、冷却
ロール4の回転数を400rpmに設定して合金溶湯2
を冷却ロール4の走行面に射出した。この際、回収手段
8の開口部7の開きを調整するシャッタ機構を調整し
て、合金溶湯2を冷却ロール4との接触点Pと開口部7
の上下縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角度θを80
度に設定した。
【0062】射出された合金溶湯2は、冷却ロール4の
運動力によって分散飛翔すると同時に急冷凝固され、厚
さ20〜150μmのフレーク状の水素吸蔵合金片5と
なって回収手段8に回収された。そして回収手段8の底
部外壁に付設した冷却水配管に冷却水を循環させた冷却
機構11によって合金片5を充分に冷却した後に、さら
に粉砕装置12としてのジェットミルによって粉砕し
た。粉砕された合金粉末は、200メッシュの電磁ふる
いから成る分級装置13において200メッシュ以下に
分級すると同時に、200メッシュ超の大きな合金粉末
を移送機構14により粉砕装置12に戻して再粉砕し
て、平均粒径が35μmである実施例5に係る水素吸蔵
合金粉末を製造した。
【0063】一方、比較例として実施例5において粉砕
装置12によって粉砕した合金粉末を、一旦、チャンバ
15外へ取り出してから再び分級装置13に移送して分
級を行なうことにより、比較例5に係る水素吸蔵合金粉
末を製造した。
【0064】また実施例5において、分散冷却工程,粉
砕工程,および分級工程がそれぞれ終了する毎に、合金
粉末を一旦チャンバ15外へ取り出すような不連続な処
理工程を経て比較例6に係る水素吸蔵合金粉末を製造し
た。
【0065】しかしながら上記比較例5〜6に係る合金
粉末の製造過程においては、合金粉末の活性が高く、チ
ャンバ15の外部に取り出した瞬間に水素吸蔵合金粉末
が発火する場合があり、合金粉末の取出し操作には困難
が伴った。
【0066】次に上記のように製造した実施例5および
比較例5〜6に係る水素吸蔵合金粉末の酸化状態および
水素ガス吸収特性を次の要領で調査した。すなわち不活
性ガス融解−赤外線吸収法により、各合金粉末中に含ま
れる全酸素を定量分析した。また各合金粉末を20gず
つ採取して耐圧容器内に投入し、温度90℃で3時間の
脱気処理を実施した後に、温度5℃で圧力10kgf/cm2
(ゲージ圧)の水素ガスを充填した。そして、水素ガス
が合金粉末に吸収されて耐圧容器内の圧力が5kgf/cm2
に低下するまでの遷移時間を測定し、下記表2に示す結
果を得た。
【0067】
【表2】
【0068】上記表2に示す結果から明らかなように、
分散冷却工程,粉砕工程,分級工程などの一連の処理工
程を同一チャンバ内で連続的に実施して製造した実施例
5に係る水素吸蔵合金粉末は、酸素との接触がないため
含有酸素量が非常に少なく、また水素ガス吸収特性に優
れていることが確認できた。
【0069】一方、従来製法と同様に処理工程間におい
て、大気と接触するような不連続な処理工程を経て製造
された比較例5〜6の合金粉末は、酸化劣化が大きく水
素ガスの吸収特性も大幅に低下した。
【0070】すなわち、酸素含有量が100ppm 以下で
ある本発明に係る合金粉末(実施例5)は、全酸素量が
100ppm 以上である合金粉末(比較例5〜6)に比
べ、水素ガス吸収特性に優れることが判明した。
【0071】次に上記実施例5および比較例5〜6に係
る水素吸蔵合金粉末を使用して以下に示す手順にて負電
極を形成し、この負電極とニッケル酸化物を含む正極と
をアルカリ電解液とを組み合せて実際にニッケル水素二
次電池を形成し、その電池特性を測定した。
【0072】すなわち、各水素吸蔵合金粉末と、カーボ
ン粉末とPTFE粉末とを重量%で95.5%,4.0
%,0.5%になるように秤量後、混練圧延して各電極
シートを作製した。電極シートを所定の大きさになるよ
うに切り出してニッケル製集電帯に圧着し、水素吸蔵合
金電極(負極)をそれぞれ作製した。
【0073】一方、水酸化ニッケル90重量%と一酸化
コバルト10重量%とに少量のCMC(カルボキシメチ
ルセルロース)と水とを添加し撹拌混合してペーストを
調製した。このペーストを、三次元構造を有するニッケ
ル多孔体に充填乾燥後、ローラプレスによって圧延する
ことによりニッケル極(正極)を製造した。
【0074】そして、上記各水素吸蔵合金電極とニッケ
ル極とを組み合せて実施例5および比較例5〜6に対応
するAA型(単三型)ニッケル水素電池を組み立てた。
ここで、この電池の容量はニッケル極の理論容量である
1100mAhとなるように設定し、電解液としては、
7規定の水酸化カリウム溶液と1規定の水酸化リチウム
との混合水溶液を使用した。
【0075】そして、水素吸蔵合金電極単体を用いて、
合金1g当り220mAの電流値(220mA/g)で
300mAh/gまで充電した後に、上記電流値でHg
/HgO参照電極に対して−0.5Vの電位になるまで
放電させたときに、電極が最大容量を示すまでに必要な
充放電サイクル数(活性回数)を測定して表3に示す結
果を得た。なお、この活性回数は、電池特性の立上りの
良否を判定する指標となる。次いで各電池について、1
100mAで1.5時間充電後、電池電圧が1Vになる
まで1Aの電流で放電する充放電サイクルを繰り返し、
電池容量が初期の80%になるまでのサイクル数を電池
寿命として測定した。電池寿命の測定値を下記表3に併
せて示す。
【0076】
【表3】
【0077】表3に示す結果から明らかなように、実施
例5に係る電池用水素吸蔵合金粉末を使用した二次電池
によれば、表面反応を阻害する表面酸化物が少ないた
め、最大放電容量に達するまでに必要な充放電サイクル
数、すなわち活性化回数が2サイクルと少なく、電池製
造時における初期の立上り特性を改善することができ
た。また、実施例5に係る電池用水素吸蔵合金粉末を電
極として用いた場合、構成元素の偏析が極めて少なく、
また製造時の酸化劣化によって失われる活物質も少ない
ため、寿命特性の優れた電池を形成することができた。
【0078】一方、工程間の移送中に大気中に曝され、
酸素や水分によって合金が酸化された合金粉末を用いた
比較例5,6に対応する電池においては、最大電極容量
を得るまでに必要な充放電サイクル数(活性回数)は4
〜10回であり、実施例5の2回と比較して大きくなっ
ており、電池の初期立上り特性が低いことが確認され、
また、充放電サイクルで示す電池寿命も実施例に比べて
低いことが確認できた。
【0079】すなわち、酸素含有量が100ppm 以下で
ある実施例5に係る合金粉末は、酸素含有量が100pp
m 以上である比較例5,6と比べて寿命特性に優れるこ
とが判明した。
【0080】本実施例に係る電池用水素吸蔵合金粉末製
造装置によれば、真空や不活性ガス雰囲気などの非酸化
性雰囲気に調整された同一チャンバ内において、合金溶
湯の分散冷却処理から分級処理に至る一連の処理工程を
連続して実施することができる。したがって、水素吸蔵
合金が表面酸化を受けることが少ないため、構成元素の
偏析が少なく耐食性が良好で、酸化劣化が少ない良質な
電池用水素吸蔵合金粉末を高い製造効率で量産すること
ができた。
【0081】また、この装置を用いて作製した、酸素含
有量が100ppm 以下の合金粉末を用いることにより、
初期の容量立上り特性に優れ、かつサイクル寿命の長い
ニッケル水素二次電池を提供することができた。
【0082】次に分散冷却手段としてガスアトマイズ装
置を使用した図3に示す水素吸蔵合金粉末製造装置を使
用し、同様に合金粉末を製造した例を以下に示す。
【0083】実施例6および比較例7〜8 図3に示す製造装置において、チャンバ15内をArガ
ス雰囲気に調整した後に、合金とした際の組成がLmN
4.3 Co0.1 Mn0.5 Al0.1 となるように配合した
原料混合体を高周波誘導炉9により溶解して水素吸蔵合
金溶湯2aを調製した。ここで上記原料混合体における
ミッシュメタル(Lm)としては、Ce3重量%,La
50重量%,Nd35重量%,Pr10重量%,その他
の希土類金属2重量%から成るLa富化ミッシュメタル
を使用した。
【0084】次に得られた合金溶湯2aを注湯ノズル1
0内に注入するとともにアトマイズガスノズル22から
Arガスを噴射することにより、合金溶湯2aを分散微
粉化するとともにArガスによって冷却凝固させた。さ
らに、冷却凝固した合金粉末を一旦、回収手段8に回収
し、回収手段8の外壁に付設された冷却機構により速か
に冷却した後に、粉砕装置12としての回転ハンマーミ
ルによって粉砕した。粉砕された合金粉末は、200メ
ッシュの電磁ふるいから成る分級装置13において20
0メッシュ以下に分級すると同時に、200メッシュ超
の大きな合金粉末を移送機構14により粉砕装置12に
戻して再粉砕して、平均粒径が35μmである実施例6
に係る水素吸蔵合金粉末を製造した。
【0085】一方、比較例として実施例6において粉砕
装置12によって粉砕した合金粉末を、一旦、チャンバ
15外へ取り出してから再び分級装置13に移送して分
級を行なうことにより、比較例7に係る水素吸蔵合金粉
末を製造した。
【0086】また実施例6において、分散冷却工程,粉
砕工程,および分級工程がそれぞれ終了する毎に、合金
粉末を一旦チャンバ15外へ取り出すような不連続な処
理工程を経て比較例8に係る水素吸蔵合金粉末を製造し
た。
【0087】しかしながら上記比較例7〜8に係る合金
粉末の製造過程においては、比較例5〜6の場合と同様
に、チャンバ15の外部に取り出した瞬間に水素吸蔵合
金粉末が発火する場合があり、合金粉末の取出し操作に
は困難が伴った。
【0088】次に上記のように製造した実施例6および
比較例7〜8に係る水素吸蔵合金粉末の酸化状態および
水素ガス吸収特性を次の要領で調査した。すなわち不活
性ガス融解−赤外線吸収法により、各合金粉末中に含ま
れる全酸素を定量分析した。また各合金粉末を20gず
つ採取して耐圧容器内に投入し、温度90℃で3時間の
脱気処理を実施した後に、温度5℃で圧力10kgf/cm2
(ゲージ圧)の水素ガスを充填した。そして、水素ガス
が合金粉末に吸収されて耐圧容器内の圧力が5kgf/cm2
に低下するまでの遷移時間を測定し、下記表4に示す結
果を得た。
【0089】
【表4】
【0090】上記表4に示す結果から明らかなように、
分散冷却工程,粉砕工程,分級工程などの一連の処理工
程を同一チャンバ内で連続的に実施して製造した実施例
6に係る水素吸蔵合金粉末は、酸素との接触がないため
含有酸素量が非常に少なく、また水素ガス吸収特性に優
れていることが確認できた。
【0091】一方、従来製法と同様に処理工程間におい
て、大気と接触するような不連続な処理工程を経て製造
された比較例7〜8の合金粉末は、酸化劣化が大きく水
素ガスの吸収特性も大幅に低下した。
【0092】このように分散冷却手段としてガスアトマ
イズ法を使用した本実施例の水素吸蔵合金粉末製造装置
を利用して合金粉末を製造した場合においても、各製造
工程における合金粉末と酸素との接触が防止できるた
め、酸化劣化が少ない良質な水素吸蔵合金粉末を高い製
造効率で量産できることが確認できた。
【0093】すなわち本発明装置によれば、ガスアトマ
イズ法を使用した場合においても、酸素含有量が100
ppm 以下である実施例6のような良質な合金粉末を製造
することが可能となり、この合金粉末(実施例6)は、
酸素含有量が100ppm 以上である合金粉末(比較例7
〜8)に比べ水素ガス吸収特性に優れることが判明し
た。
【0094】
【発明の効果】以上説明の通り本発明に係る水素吸蔵合
金粉末製造装置によれば、回収手段の開口部の開き角度
に対応する区間を飛翔する合金粒子、すなわち適正に冷
却処理を施された偏析の少ない合金粒子のみが回収され
る。したがってこの合金粒子を電池の負極材料として使
用した場合に、特性のばらつきが少ない電池が得られ
る。
【0095】また分散冷却手段,回収手段,粉砕手段お
よび分級手段を同一のチャンバ内に配置することによ
り、分散冷却工程および回収・粉砕・分級の各工程を同
一チャンバ内で一貫して連続的に行なうことが可能とな
る。そのため、従来の回分処理方式の装置と比較して量
産性に優れ、合金粉末の製造効率を大幅に改善すること
ができる。また各工程間において合金粉末が大気と接触
することがないため、合金粉末の酸化による劣化や水分
による変質が少なく、電極材料として使用した場合に、
電池の容量の立上り性が良好であり、またサイクル寿命
特性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水素吸蔵合金粉末製造装置の一実
施例を示す断面図。
【図2】分散冷却手段の構成を示す断面図。
【図3】本発明に係る水素吸蔵合金粉末製造装置の他の
実施例を示す断面図。
【図4】回収手段の開口部の開き角度と磁化率との関係
を示すグラフ。
【図5】回収手段の開口部の開き角度と回収率との関係
を示すグラフ。
【図6】実施例装置で製造した合金粉末の研磨面の金属
組織をEPMAにより観察したMn分布を示す組織写
真。
【図7】比較例装置で製造した合金粉末の研磨面の金属
組織をEPMAにより観察したMn分布を示す組織写
真。
【符号の説明】
1,1a 水素吸蔵合金粉末製造装置 2,2a 水素吸蔵合金溶湯 3 冷却媒体 4 高速回転体(冷却ロール) 5 合金フレーク 7 開口部 8 回収手段 9 高周波誘導炉 10 注湯ノズル(射出ノズル) 11 冷却機構 12 粉砕装置(粉砕手段) 13 分級装置(分級手段) 14 移送機構 15 チャンバ 16 原料投入口 17 Arガス精製装置 18 真空ポンプ 19 ゲートバルブ 20 製品槽 21,21a 水素吸蔵合金粉末 22 アトマイズガスノズル 23 合金粉末 P 接触点 S1 ,S2 開口部の両縁 θ 開口部の開き角度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 典昭 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 沢 孝雄 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 堀江 宏道 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 長谷部 裕之 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素吸蔵合金溶湯を冷却媒体に接触せし
    め、冷却媒体の運動力によって水素吸蔵合金溶湯を分散
    飛翔させると同時に冷却凝固せしめて合金粉末を形成す
    る分散冷却手段と,冷却媒体との接触点から分散飛翔す
    る合金粉末を回収する開口部を有する回収手段とを備
    え、上記水素吸蔵合金溶湯の冷却媒体との接触点と回収
    手段の開口部の両縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き角
    度を20〜120度の範囲に設定したことを特徴とする
    水素吸蔵合金粉末製造装置。
  2. 【請求項2】 冷却媒体が高速回転する冷却ロールであ
    ることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金粉末製
    造装置。
  3. 【請求項3】 水素吸蔵合金溶湯を冷却媒体に接触せし
    め、冷却媒体の運動力によって水素吸蔵合金溶湯を分散
    飛翔させると同時に冷却凝固せしめて合金粉末を形成す
    る分散冷却手段と,冷却媒体との接触点から分散飛翔す
    る合金粉末を回収する開口部を有する回収手段と,回収
    した合金粉末を粉砕する粉砕手段と,粉砕した合金粉末
    を分級する分級手段とを備え、上記分散冷却手段,回収
    手段,粉砕手段および分級手段を所定雰囲気に調整した
    同一のチャンバ内に配置したことを特徴とする水素吸蔵
    合金粉末製造装置。
  4. 【請求項4】 冷却媒体が高速回転する冷却ロールであ
    り、上記水素吸蔵合金溶湯の冷却ロールとの接触点と回
    収手段の開口部の両縁とをそれぞれ結ぶ線分がなす開き
    角度を20〜120度の範囲に設定したことを特徴とす
    る請求項3記載の水素吸蔵合金粉末製造装置。
  5. 【請求項5】 冷却媒体がアトマイズ用ガスであること
    を特徴とする請求項3記載の水素吸蔵合金粉末製造装
    置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100900142B1 (ko) * 2007-06-27 2009-06-01 공주대학교 산학협력단 급속응고법에 의한 기능성 합금스트립 제조방법
CN111795923A (zh) * 2020-08-24 2020-10-20 兰州金川科力远电池有限公司 快速测试储氢合金粉耐腐蚀性的方法

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