JPH08232019A - グラス被膜の良好な高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

グラス被膜の良好な高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH08232019A
JPH08232019A JP7035672A JP3567295A JPH08232019A JP H08232019 A JPH08232019 A JP H08232019A JP 7035672 A JP7035672 A JP 7035672A JP 3567295 A JP3567295 A JP 3567295A JP H08232019 A JPH08232019 A JP H08232019A
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JP
Japan
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annealing
steel sheet
magnetic flux
flux density
high magnetic
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Withdrawn
Application number
JP7035672A
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English (en)
Inventor
Isao Iwanaga
功 岩永
Osamu Tanaka
収 田中
Koji Yamazaki
幸司 山崎
Maremizu Ishibashi
希瑞 石橋
Fumio Kurosawa
文夫 黒沢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Nippon Steel Plant Designing Corp
Original Assignee
Nittetsu Plant Designing Corp
Nippon Steel Corp
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Publication date
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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、被膜良好な高磁束密度一方向性電
磁鋼板の製造方法を提供する。 【構成】 スラブ素材にBi:0.0005〜0.05
%を含有することで、インヒビターが強化されることに
より、二次再結晶が安定して高磁束密度特性が得られ、
且つ脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量を600〜900ppm
とし、焼鈍分離剤として、MgO100重量部に対し塩
素分を0.01〜0.10重量部含有、及び/又はS
b,B,Sr,Baの化合物の中から選ばれる1種又は
2種以上を0.05〜2.0重量部添加することによ
り、優れたグラス被膜を有する一方向性電磁鋼板が得ら
れる。 【効果】 本発明によれば、高磁束密度特性と良好なグ
ラス被膜を兼ね備えた優れた一方向性電磁鋼板を工業的
に製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2.5〜4.5%のS
iを含む高い磁束密度を有する一方向性電磁鋼板の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、トランス等の電気
機器の鉄心材料として使用されており、磁気特性として
励磁特性と鉄損特性が良好でなくてはならない。しかも
近年特にエネルギーロスの少ない低鉄損素材への市場要
求が強まっている。
【0003】磁束密度の高い鋼板は、鉄損が低くまた鉄
心が小さくできるので、極めて重要な開発目標である。
この高い磁束密度を有する一方向性電磁鋼板は、適切な
冷延と焼鈍とにより熱延板から最終板厚にした鋼板を仕
上げ焼鈍して{110}〈001〉方位を有する一次再
結晶粒を選択成長させる、いわゆる二次再結晶によって
得られる。
【0004】二次再結晶は、二次再結晶前の鋼板中に微
細な析出物、例えばMnS,AlN,MnSe,Cu2
S,BN(Al,Si)N等が存在すること、あるいは
Sn,Sb等の粒界偏析型の元素が存在することによっ
て達成される。これら析出物、粒界偏析型の元素はJ.
B.May and Turnbull(Trans.
Met.Soc.AIME 212(1958)P76
9/781)によって説明されているように、仕上げ焼
鈍工程で{110}〈001〉方位以外の一次再結晶粒
の成長を抑え、{110}〈001〉方位粒を選択的に
成長させる機能を持つ。このような粒成長の抑制効果は
一般にはインヒビター効果と呼ばれている。
【0005】従って当該分野の研究開発の重点課題はい
かなる種類の析出物、あるいは粒界偏析型を用いて二次
再結晶を安定させるか、そして正確な{110}〈00
1〉方位粒の存在割合を高めるために、それらの適切な
存在状態をいかに達成するかにある。特に最近では一種
類の析出物による方法では{110}〈001〉方位の
高度の制御に限界があるため、各析出物について長所、
短所を深く解明することにより、いくつかの析出物を有
機的に組み合わせて、より磁束密度の高い製品を安定
に、且つコストを安く製造できる技術の開発が進められ
ている。
【0006】現在、工業生産されている代表的な一方向
性電磁鋼板の製造方法として3種類あるが、各々につい
ては長所、短所がある。第一の技術はM.F.Litt
mannによる特公昭30−3651号公報に示された
MnSを用いた2回冷延工程であり、得られる二次再結
晶粒は安定して発達するが、高い磁束密度が得られな
い。
【0007】第二の技術は田口等による特公昭40−1
5644号公報に示されたAlN+MnSを用いた最終
冷延を80%以上の高圧下率とするプロセスであり、高
い磁束密度は得られるが、工業生産に際しては製造条件
の厳密なコントロールが要求される。第三の技術は今中
等による特公昭51−13469号公報に示されたMn
S(及び/又はMnSe)+Sbを含有する珪素鋼を2
回冷延工程によって製造するプロセスであり、比較的高
い磁束密度は得られるが、Sb,Seのような人体に有
害で且つ高価な元素を使用し、しかも2回冷延法である
ことから製造コストが高くなる。
【0008】また上記3種類の技術においては、共通し
て次のような問題がある。すなわち上記技術はいずれも
析出物を微細、均一に制御する技術として熱延に先立つ
スラブ加熱温度を、第一の技術では1260℃以上、第
二の技術では特開昭48−51852号公報に示すよう
に素材Si量によるが3%Siの場合で1350℃、第
三の技術では特開昭51−20716号公報に示すよう
に1230℃以上、高い磁束密度の得られた実施例では
1320℃といった極めて高い温度にすることによっ
て、粗大に存在する析出物を一旦固溶させ、その後の熱
延中、あるいは熱処理中に析出させている。
【0009】スラブ加熱温度を上げることは、加熱時の
使用エネルギーの増大やノロの発生による歩留り低下及
び加熱炉の補修頻度の増大に起因する設備稼働率の低
下、さらには特公昭57−41526号公報に示される
ように線状二次再結晶不良が発生するため連続鋳造スラ
ブが使用できないという問題がある。
【0010】しかしこのようなコスト上の問題以上に重
要なことは、鉄損向上のためにSiを多く、製品板厚を
薄くといった手段をとると、この線状二次再結晶不良の
発生が増大し、高温スラブ加熱法を前提にした技術では
将来の鉄損向上に希望を持てない。
【0011】これに対し特公昭61−60896号公報
に開示されている技術では、鋼中のSを少なくすること
によって二次再結晶が極めて安定し、高Si薄手製品を
可能にした。しかしこの技術は量産規模で工場生産する
上で、磁束密度の安定性に問題があり、例えば特開昭6
2−40315号公報に開示されているような改良技術
が提案されているが、今まで完全に解決するに至ってい
ない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上述べてきたように
現在工業化されている製造方法は二次再結晶に必要なイ
ンヒビターを冷間圧延以前の工程で造り込むものであ
る。これに対し本発明は特開昭62−40315号公報
と同一技術思想に基づく製造方法である。すなわち二次
再結晶に必要なインヒビターは、脱炭焼鈍(一次再結
晶)完了以降から仕上げ焼鈍における二次再結晶発現以
前までに造り込むものでその手段として、鋼中にNを侵
入させることによって、インヒビターとして機能する
(Al,Si)Nを形成させる。鋼中にNを侵入させる
手段としては、従来技術で提案されているように仕上げ
焼鈍昇温過程での雰囲気ガスからのNの侵入を利用する
か、脱炭焼鈍後段領域あるいは脱炭焼鈍完了後のストリ
ップを連続ラインでNH3 等の窒化源となる雰囲気ガス
を用いて行う。
【0013】ところで以上のような方法で適正なインヒ
ビターを造り込んでも、窒化時の一次再結晶組織の状態
が適当でなければ高磁束密度を有する良好な二次再結晶
は得られない。しかしながら従来方式の溶鋼成分では、
この方式の特徴である1280℃以下の加熱の後熱延に
よっては析出物が粗大化しすぎてインヒビターとしての
機能はほとんどなく、結晶組織制御のために脱炭焼鈍条
件を厳密にコントロールする必要がある。
【0014】そこで本発明者等は、特開平6−8817
3号公報に開示したように、スラブ素材にBiを添加す
ることでより二次再結晶が安定し高磁束密度が得られる
ことを見出し、さらに特開平6−158169号公報に
おいて、脱炭焼鈍雰囲気を規定することで絶縁被膜特性
がより優れた一方向性電磁鋼板の製造方法を開示した。
ところが複合インヒビターとしてBiを使用するこれら
技術においては、グラス被膜形成が困難になる問題が生
じた。
【0015】本発明者等は、これらBi添加技術におい
て、グラス被膜形成反応が従来成分系の材料に比べて低
下するという問題の解決のために、絶縁被膜特性のより
優れた高磁束密度一方向性電磁鋼板のさらに工業的に安
定した製造方法を検討した。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記問題
を解決すべく検討を重ねた結果、Biを含有した素材の
処理として、脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量の適正化及び
焼鈍分離剤中への塩化物の添加により、脱炭焼鈍後から
最終仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化
処理を施す方式で、グラス被膜が良好で且つ安定して高
磁束密度の一方向性電磁鋼板が得られることを見出し
た。
【0017】本発明の要旨は、重量比でC:0.025
〜0.10%、Si:2.5〜4.5%、Mn:0.0
5〜0.45%、S+0.405Se≦0.014%、
酸可溶性Al:0.01〜0.06%、N:0.000
5〜0.013%、Bi:0.0005〜0.05%を
含み、残部Fe及び不可避的不純物からなるスラブを素
材とし、1280℃以下の温度に加熱した後熱延し、最
終冷延圧下率50%以上の1回ないし中間焼鈍を含む2
回以上の冷間圧延を施し、さらに脱炭焼鈍、焼鈍分離剤
塗布及び仕上げ焼鈍を行い、また脱炭焼鈍後から最終仕
上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を
施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍後
の酸化膜の酸素量を600〜900ppm とし、MgO1
00重量部に対し塩素化合物を塩素分として0.01〜
0.10重量部、及び/又はSb,B,Sr,Baの化
合物の1種又は2種以上を0.05〜2.0重量部添加
する焼鈍分離剤を塗布することを特徴とするグラス被膜
の良好な高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法にあ
る。
【0018】以下に本発明を詳細に説明する。まず本発
明の特徴であるBi添加の効果について述べる。本発明
者等は一方向性電磁鋼板の製造における前記課題を解決
すべく、種々検討を行った。その結果上記成分のスラブ
素材にBi:0.0005〜0.05%を含有させる
と、脱炭焼鈍前の微細析出物が増加することがわかっ
た。従ってBi添加によってこの時点でインヒビターが
強まり、一次再結晶粒径の変動が小さく且つ均一化し、
従って二次再結晶が安定すると推定される。
【0019】またBi添加材は脱炭焼鈍後窒化処理して
も相対的にインヒビターすなわち{110}〈001〉
方位粒が成長するまで他方位粒の成長を抑制する力は強
く、このことが高磁束密度が得られる原因と考えられ
る。以上のことからこのBi添加は、二次再結晶が不安
定なためより強力なインヒビターを必要とする薄手・極
低鉄損材ほど有効と考えられる。Bi量の限定理由は、
0.0005%未満ではインヒビター強化すなわち脱炭
焼鈍温度の広い領域で二次再結晶が安定化する効果がな
い。一方0.05%を超えると熱延板の耳割れがひどく
なり、コスト高につながる。
【0020】以上のようにBiが鋼中に含有するとイン
ヒビターが強化され、磁束密度が向上するが、一方でグ
ラス被膜形成が阻害される傾向にあることがわかった。
これは、図1,2に示すように鋼中Biは脱炭焼鈍時の
酸化及びその後の窒化を抑制する作用が認められる。こ
のメカニズムは明確ではないが、脱炭焼鈍時の酸化膜中
の(Fe,Mn)O系酸化物量が減少したり、酸化膜の
シール性が強いために、仕上げ焼鈍昇温過程での追加酸
化が抑制されグラス被膜形成反応に悪影響を及ぼすもの
と考えられる。
【0021】またBiは鋼中にほとんど固溶せず、非常
に拡散しにくいため高温にならないと鋼中から抜けな
い。そして、鋼中から抜ける時は、鋼板表面に濃縮し、
さらにガス状となるので、被膜形成温度域が、脱Bi温
度域と重なると、グラス被膜が不良となってしまう。
【0022】これは被膜形成に必要なSiが表面に拡散
して酸化層を形成するのを、鋼板表面に濃化したBiが
防げるとともに、ガス状となったBiが、形成されつつ
ある被膜を、内側から破壊するためと推定される。
【0023】従って良好なグラス被膜を形成させるに
は、グラス被膜形成反応時の酸素源を多くし、且つ仕上
げ焼鈍昇温中にBiが抜け始め、板表層に拡散する以前
の比較的低温時期に早くグラス被膜形成反応を生じさせ
れば良いと考えられる。
【0024】そこで本発明者等は、上記具体的手段を検
討した結果、脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量600〜90
0ppm とし、焼鈍分離剤としてMgO100重量部に対
し塩素化合物を塩素分として0.01〜0.10重量
部、及び/又はSb,B,Sr,Baの化合物の1種又
は2種以上を0.05〜2.0重量部添加することによ
り、脱炭焼鈍後から最終仕上げ焼鈍の二次再結晶開始ま
での間に鋼板に窒化処理を施す方式で、グラス被膜が良
好で且つ安定して高磁束密度の一方向性電磁鋼板が得ら
れることを見出した。
【0025】図3は、焼鈍分離剤中の塩素分が適当量含
有する焼鈍分離剤を用いると、グラス被膜形成が早まる
ことを示す。ただし塩素分が多すぎると、公知のように
グラス被膜が分解・消失してしまう。これは被膜や被膜
と地鉄界面が、塩化物や分解した塩素ガスによりエッチ
ングされ、被膜は剥離すると推定される。
【0026】また焼鈍分離剤中にSb,B,Sr,Ba
の化合物を添加しても、MgOを比較的低温で溶融させ
ることでグラス被膜形成を低温化し容易にする効果があ
る。図4は、脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量が多いと、仕
上げ焼鈍後の酸素量も多い、すなわち良好なグラス被膜
が形成されることを示す。
【0027】しかし脱炭焼鈍後の酸素量も多すぎると、
グラス被膜形成時に酸化オーバーとなって部分的にグラ
ス被膜が極度に薄くなり均一な被膜が得られない欠陥が
生じる。以上の理由から、脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量
と、焼鈍分離剤中の塩素分の量及びSb,B,Sr,B
aの化合物の添加を上記のように規定した。
【0028】
【作用】次に本発明において鋼組成及び製造条件を上述
のように限定した理由を詳細に説明する。Cは、その含
有量が0.025%未満になると二次再結晶が不安定と
なり、且つ二次再結晶した場合でも製品の磁束密度(B
8 値)が1.80Tに満たない低いものとなる。一方C
の含有量が0.10%を超えて多くなりすぎると、脱炭
焼鈍時間が長大なものとなり、生産性を著しく損なう。
【0029】Siは、その含有量が2.5%未満になる
と低鉄損の製品を得難く、一方Siの含有量が4.5%
を超えて多くなりすぎると、冷間圧延等の製造時に割
れ、破断が発生して安定した工業生産が不可能となる。
【0030】本発明の出発材料の成分系における特徴の
一つは、Sを0.014%以下、好ましくは0.010
%以下とする点にある。従来公知の技術、例えば特公昭
40−15644号公報、あるいは特公昭47−252
50号公報に開示されている技術においては、Sは二次
再結晶を生起させるに必要な析出物の一つであるMnS
の形成元素として必須であった。前記公知技術におい
て、Sが最も効果を発揮する含有量範囲があり、それは
熱間圧延に先立って行われるスラブの加熱段階でMnS
を固溶できる量として規定されていた。
【0031】しかしながらインヒビターとして(Al,
Si)Nを用いる本発明においては、MnSを特に必要
とはしない。むしろMnSが増加することは磁気特性上
好ましくない。従って本発明においては、Sの含有量は
0.014%以下、好ましくは0.010%以下であ
る。
【0032】Seは、Sと同様にMnと化合物を形成し
二次再結晶に影響するため、その含有量はS+0.40
5Se≦0.014%とする。Alは、Nと結合してA
lNを形成するが、本発明においては、後工程すなわち
一次再結晶完了後に鋼を窒化することにより(Al,S
i)Nを形成せしめることを必須としているから、フリ
ーのAlが一定量以上必要である。そのためsol.Al
として0.01〜0.06%添加する。
【0033】Mnは、その含有量が少なすぎると二次再
結晶が不安定となり、一方多すぎると高い磁束密度を有
する製品を得難くなる。適正な含有量は0.05〜0.
45%である。Nは、0.0005%未満では二次再結
晶粒の発達が悪くなる。一方0.013%を超えるとブ
リスターと呼ばれる鋼板のふくれが発生する。
【0034】Snは、0.01%未満では磁気特性改善
の上で効果がなく、一方0.10%超では窒化を抑制し
二次再結晶粒の発達を悪くする。Sbは、インヒビター
効果として、0.01〜0.15%が適当である。同様
にCuは、インヒビター効果として、0.05〜1.0
%が適当である。
【0035】スラブ加熱温度については、インヒビター
を固溶する高温スラブ加熱でも、また普通鋼並の低温ス
ラブ加熱でも、二次再結晶は行われる。しかし熱延板の
耳割れを抑制できること、また当然のこととして熱エネ
ルギーが少ない低温スラブ加熱が有利であることから、
ノロの発生しない1280℃以下が望ましい。
【0036】熱延以降の工程においては、最も高い磁束
密度を得るために、短時間の焼鈍後80%以上の高圧下
率の冷間圧延によって最終板厚にする方法が望ましい。
しかし磁気特性はやや劣るが低コストとするために熱延
板焼鈍を省略しても良い。また最終製品の結晶粒を小さ
くするため、中間焼鈍を含む工程でも可能である。
【0037】次に湿水素あるいは湿水素、窒素混合雰囲
気ガス中で脱炭焼鈍をする。ここで雰囲気露点や焼鈍時
間等の調整により、脱炭焼鈍後の酸化膜の酸素量を60
0〜900ppm とする。この酸素量が600ppm より少
ない場合にはグラス被膜形成性が低下してグラス被膜が
薄くなり、一方900ppm を超える場合には鋼板間が過
酸化になり、部分的にグラス被膜が極度に薄い現象が発
生し易い。
【0038】次に焼鈍分離剤を塗布し高温(通常110
0〜1200℃)長時間の仕上げ焼鈍を行う。焼鈍分離
剤は酸化マグネシウムを水又は水を主成分とする水溶液
に分散させ、スラリー状にして鋼板に塗布する。その
際、後の仕上げ焼鈍時にMgOパウダーの溶融を容易に
させ、またフォルステライト生成反応を促進させる目的
で、適当な化合物を微量添加する。
【0039】ここで焼鈍分離剤としてMgO100重量
部に対し、塩素化合物を塩素分として0.01〜0.1
0重量部、及び/又はSb,B,Sr,Baの化合物の
1種又は2種以上を0.05〜2.0重量部添加する。
この際塩素分が0.01重量部より少ない場合には、フ
ォルステライト生成反応促進効果が少ないためグラス被
膜が薄くなり、一方0.10重量部を超える場合には、
塩化物や分解した塩素ガスによるエッチング作用により
グラス被膜が極度に薄くなる。
【0040】添加する塩素化合物としては、例えばMn
Cl2 ,CoCl2 ,SrCl2 やMgCl2 を用い
る。またSb,B,Sr,Baの化合物を添加する場合
は、0.05重量部がMgOを比較的低温で溶融を起こ
す下限であり、一方2.0重量部を超える場合は低融点
化効果が過剰になり過酸化状の被膜欠陥が生じて、グラ
ス被膜が不均一になったり薄くなる問題がある。また極
端な場合には、二次再結晶に悪影響を及ぼす。
【0041】またTiO2 を添加する場合は、0.5〜
15重量部が好ましい。この添加理由は、フォルステラ
イト生成反応促進によるグラス被膜改善であるが、0.
5重量部より少ないとこの効果が弱く、一方15重量部
を超えるとMgOが少なくなってフォルステライト生成
反応がかえって遅れたり磁気特性を劣化させ易くなる。
【0042】さらに脱炭焼鈍後から最終仕上げ焼鈍の二
次再結晶開始までに鋼板に窒化処理を施す。これにより
二次再結晶に必要なインヒビターを造り込むことができ
る。なお本発明における窒化の実施態様として、脱炭焼
鈍時均熱以降で窒化能のある気体の雰囲気で窒化する
か、又は脱炭焼鈍後別途設けたNH3 等の雰囲気を有す
る熱処理炉に通過せしめて窒化したり、また仕上げ焼鈍
の昇温過程において窒化しても良く、以上の手段の組み
合わせでも良い。二次再結晶完了後は、水素雰囲気中に
おいて純化焼鈍を行う。
【0043】
【実施例】
実施例1.表1に示す鋼の成分組成を含む溶鋼を鋳造し
たスラブを、1150℃で加熱した後熱延し、2.8mm
厚みの熱延板とした。次いでこれらの熱延板を1050
℃×2.5分+900℃×2分間焼鈍を行った後100
℃の湯中に冷却し、さらに酸洗した後冷間圧延を行い
0.30mm厚にした。次にこの冷延板を830℃で2分
間、湿潤水素、窒素雰囲気中で脱炭焼鈍した。この際、
表2に示すように雰囲気露点を調整することで脱炭焼鈍
後の酸化膜量を変化させた。
【0044】次いでアンモニア1%を含む水素、窒素雰
囲気中で750℃×30秒窒化処理を行い、鋼板中の窒
素量を200ppm とした。さらにMgOパウダーを塗布
した後、1200℃×20時間水素ガス雰囲気中で高温
焼鈍を行った。この際、MgOパウダー中の塩素量をM
nCl2 を添加して0.03〜0.04重量部になるよ
うに調整し、またSb2 (SO4 3 を0.3重量部と
TiO2 を5重量部添加した。得られた製品は、表2に
示すように、本発明の方が良好なグラス被膜と共に高磁
束密度特性が得られた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】実施例2.表1に示す鋼Bの成分組成を含
む溶鋼を鋳造したスラブを、1150℃で加熱した後熱
延し、2.8mm厚みの熱延板とした。次いでこれらの熱
延板を1050℃×2.5分+900℃×2分間焼鈍を
行った後100℃の湯中に冷却し、さらに酸洗した後冷
間圧延を行い0.30mm厚にした。次にこの冷延板を8
30℃で2分間、湿潤水素、窒素雰囲気中で脱炭焼鈍し
た。この際、雰囲気露点を調整することで脱炭焼鈍後の
酸化膜量を700〜800ppm にした。
【0048】ついでアンモニア1%を含む水素、窒素雰
囲気中で750℃×30秒窒化処理を行い、鋼板中の窒
素量を200ppm とした。さらにMgOパウダーを塗布
した後、1200℃×20時間水素ガス雰囲気中で高温
焼鈍を行った。この際、表3に示すようにMgOパウダ
ー中の塩素量をCoCl2 を添加して調整し、さらにS
b,B化合物としてSb2 (SO4 3 とNa2 4
7 を使用した。またいずれの場合もTiO2 を5重量部
添加した。得られた製品は、表3に示すように、本発明
の方が良好なグラス被膜と共に高磁束密度特性が得られ
た。
【0049】
【表3】
【0050】実施例3.表4に示す鋼の成分組成を含む
溶鋼を鋳造したスラブを、1150℃で加熱した後熱延
し、2.8mm厚みの熱延板とした。次いでこれらの熱延
板を1050℃×2.5分+900℃×2分間焼鈍を行
った後100℃の湯中に冷却し、さらに酸洗した後冷間
圧延を行い0.30mm厚にした。次にこの冷延板を83
0℃で2分間、湿潤水素、窒素雰囲気中で脱炭焼鈍し
た。この際、表5に示すように雰囲気露点を調整するこ
とで脱炭焼鈍後の酸化膜量を変化させた。
【0051】次いでアンモニア1%を含む水素、窒素雰
囲気中で750℃×30秒窒化処理を行い、鋼板中の窒
素量を200ppm とした。さらにMgOパウダーを塗布
した後、1200℃×20時間水素ガス雰囲気中で高温
焼鈍を行った。この際、MgOパウダー中の塩素量をS
rCl2 を添加して0.03〜0.04重量部になるよ
うに調整し、またSb2 (SO4 3 を0.3重量部と
TiO2 を5重量部添加した。得られた製品は、表5に
示すように、本発明の方が良好なグラス被膜と共に高磁
束密度特性が得られた。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、Bi添加によって二次
再結晶が安定して高磁束密度特性が得られ、且つ脱炭焼
鈍後の酸化膜の酸素量及び、焼鈍分離剤としてのMgO
中の塩素分を規定し、及び/又はSb,B,Sr,Ba
の化合物の中から選ばれる1種又は2種以上を添加する
ことにより、優れたグラス被膜を有する高磁束密度一方
向性電磁鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍後の鋼板表面酸素量とBi量の関係の
グラフである。
【図2】脱炭焼鈍後鋼板の窒化性に及ぼすBiの影響を
示したグラフである。
【図3】グラス被膜形成に及ぼす焼鈍分離剤中塩素量の
影響を示したグラフである。
【図4】脱炭焼鈍後の鋼板表面酸素量と仕上げ焼鈍後被
膜酸素量の関係を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山崎 幸司 北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製 鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 石橋 希瑞 北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製 鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 黒沢 文夫 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で C :0.025〜0.10%、 Si:2.5〜4.5%、 Mn:0.05〜0.45%、 S+0.405Se≦0.014%、 酸可溶性Al:0.01〜0.06%、 N :0.0005〜0.013%、 Bi:0.0005〜0.05%、 残部Fe及び不可避的不純物からなるスラブを素材と
    し、1280℃以下の温度に加熱した後熱延し、最終冷
    延圧下率50%以上の1回ないし中間焼鈍を含む2回以
    上の冷間圧延を施し、さらに脱炭焼鈍、焼鈍分離剤塗布
    及び仕上げ焼鈍を行い、また脱炭焼鈍後から最終仕上げ
    焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施す
    一方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍後の酸
    化膜の酸素量を600〜900ppm とし、MgO100
    重量部に対し塩素化合物を塩素分として0.01〜0.
    10重量部、及び/又はSb,B,Sr,Baの化合物
    の1種又は2種類以上を0.05〜2.0重量部添加す
    る焼鈍分離剤を塗布することを特徴とするグラス被膜の
    良好な高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記素材の最終冷延圧下率が80%以上
    である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 重量比で C :0.025〜0.10%、 Si:2.5〜4.5%、 Mn:0.05〜0.45%、 S+0.405Se≦0.014%、 酸可溶性Al:0.01〜0.06%、 N :0.0005〜0.013%、 Bi:0.0005〜0.05%、 で、さらに Sn:0.01〜0.10%、 Sb:0.01〜0.15% 及び Cu:0.05〜1.0% を少なくとも1種含有し、残部Fe及び不可避的不純物
    からなる溶鋼である請求項1又は2記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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