JPH08228765A - ファフィア・ロドチーマ酵母の製造法、並びにそれを含有してなる飼料 - Google Patents

ファフィア・ロドチーマ酵母の製造法、並びにそれを含有してなる飼料

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JPH08228765A
JPH08228765A JP7061897A JP6189795A JPH08228765A JP H08228765 A JPH08228765 A JP H08228765A JP 7061897 A JP7061897 A JP 7061897A JP 6189795 A JP6189795 A JP 6189795A JP H08228765 A JPH08228765 A JP H08228765A
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yeast
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phaffia rhodozyma
astaxanthin
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Withdrawn
Application number
JP7061897A
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English (en)
Inventor
Hiroki Kobayashi
洋樹 小林
Yasuyoshi Ueda
恭義 上田
Shiro Imamura
史朗 今村
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 栄養源存在下での菌体増殖期を150時間以
上経る培養を行った後、又は、栄養源存在下で菌体増殖
期を150時間以上経る培養を行った後、更に実質的に
栄養源が制限された条件下での増殖制限期を経た後、化
学的処理を行うことを特徴とするファフィア・ロドチー
マ酵母菌体の製造法。 【効果】 酵母中のアスタキサンチンの安定性の高い、
色調改善効果の優れたファフィア・ロドチーマ酵母が得
られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アスタキサンチン生産
性のファフィア・ロドチーマ酵母に関するものであり、
該酵母はサケ、マス、マダイ、金魚、クルマエビ等の肉
食や皮膚色、赤色カナリアの羽毛、卵黄などの着色や栄
養価の強化に有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、サケ、マス、マダイなどの魚類の
養殖が広く行われているが、生息環境、餌料が天然の場
合と異なるため、天然魚類の色調と同様の色調を呈しに
くい。これら魚類の肉色や皮膚色の赤色は、アスタキサ
ンチンと関連があり、この色素を与えると色調が改善で
きることや卵質改善効果が見られることから、この色素
を含有する飼料が広く用いられている。1970年代後
期以来、このアスタキサンチン源として、アスタキサン
チン生産性のファフィア・ロドチーマ酵母に関する研究
が盛んに行われ、色調改善効果等が確認されてきている
〔例えば、エリック.A.ジョンソンら:アクアカルチ
ャー誌、20巻、123〜134頁(1980年)、ア
ナスタシア・ジェントルズら:ザ・プログレッシブ・フ
ィッシュカルチャーリスト誌、53巻、1〜6頁(19
91年)、特開昭57−206342、特開平4−22
8064など〕。
【0003】しかし、ファフィア・ロドチーマ酵母を培
養後、そのままの形で飼料に添加し魚に与えても、ファ
フィア・ロドチーマ酵母のもつ強固な細胞壁が障害とな
り、菌体内のアスタキサンチンが吸収されにくく、良好
な色調改善効果が得られないとか、溶剤によるアスタキ
サンチン抽出が効率的に行えないといった問題がある。
そのため、菌体内のアスタキサンチンを有効に利用する
ために、菌体分解物を利用する方法が多数報告されてい
る。
【0004】菌体分解物を得るための細胞壁を処理する
方法としては、超音波処理、フレンチプレス、ホモジナ
イザー等を用いて菌体を破砕する機械的処理法、リゾチ
ーム、バチラス・サーキュランス等の酵素を用いる方法
(特公昭63−61907)、塩酸や硫酸等の無機酸で
処理する酸加水分解法〔エリック.A.ジョンソンら:
ジャーナル・オブ・アプライド・バイオケミストリー
誌、1巻、273〜282頁(1979年)、特開平6
−7153〕、更には、pH10以上のアルカリ溶液で
処理する方法(特開平5−292897、特開平4−1
73058、特開平6−105657)等が知られてい
る。
【0005】しかしながら、ファフィア・ロドチーマ酵
母を機械的に処理する場合、特殊な装置を必要とするだ
けでなく、パン酵母等とは違って容易には破砕できない
とか、破砕菌体から溶剤を用いて抽出する場合、非常に
不都合なエマルジョン形成のために溶剤層をうまく分離
できないといった問題がある。また、酵素処理法は、菌
体から溶剤を用いて抽出する場合は好ましい方法である
が、ファフィア・ロドチーマ酵母の強固な細胞壁を効率
的に分解する適当な酵素がないことや、多量の酵素が必
要であること、酵素の価格、処理時間等の問題の他、ア
スタキサンチンの収率を低下させる場合もあるなど、商
業生産上必ずしも適した方法ではない(特開平6−71
53)。
【0006】一方、化学的処理方法は、菌体から溶剤を
用いて抽出する場合、大変好ましい方法である。しかし
ながら、単純に培養を行い、その後、化学的に細胞壁処
理を行った酵母菌体は、酵母菌体の細胞壁(皮膚)が強
度に損傷しているために、菌体内成分を保護する効果が
損なわれ、菌体内のアスタキサンチンの安定性が悪く、
分解しやすいといった欠点を有している。化学的処理法
の例としては、塩酸や硫酸等を用いる酸加水分解法とし
て、特開平6−7153に、硫酸、塩酸又はそれらの混
合物でファフィア・ロドチーマ酵母細胞を処理し、そし
て得られたスラリーを60〜90℃で2〜24時間加熱
する方法において、スラリーの酸強度が約0.75〜1
Nであることが好ましいと述べられているが、通常、こ
のようなかなり高い酸濃度で実施されるために、加水分
解処理時のアスタキサンチンの分解や加水分解処理槽の
材質の問題、更には、中和した際に多量の塩が生じる
(例えば、ファフィア・ロドチーマ酵母菌体を約10重
量%含む1NのHCl含有水溶液中で処理した場合、処
理時のpHは0.1以下で、中和時に生成する塩化ナト
リウム重量は菌体乾燥重量に対して約等量もの量とな
る)ため、セパレーターによる塩の洗浄除去が難しいと
か、液比重が高くなりセパレーターによる菌体濃縮液の
分離取得等が難しいとか、更には、セパレーターによる
分離の際、加水分解処理液が発泡し菌体濃縮液の分離取
得が良好に行いにくいといった問題もある。
【0007】また、pH10以上のアルカリ溶液で処理
を行う方法として、例えば、特開平4−173058
に、ファフィア・ロドチーマ酵母菌体の培養液そのま
ま、又はこれらを濃縮したもの、或いは、培養液中の菌
体を遠心分離によって分離沈殿させたものをpH10以
上のアルカリ溶液を用いて処理する方法が述べられてい
る。このアルカリ処理により確かに酵母中アスタキサン
チンはより利用しやすくなるものの、本発明者らの検討
の結果、pH10以上のアルカリ条件下で処理した場
合、ファフィア・ロドチーマ酵母中のアスタキサンチン
が分解しやすいといった欠点があることがわかった。一
方、特開平4−173058では、菌体を機械的破砕し
た場合に抽出されるアスタキサンチン量を100%とし
ているが、その菌体がアルカリ処理前のものであるのか
処理後のものであるのかが不明確であり、また、アルカ
リ処理前後でのアスタキサンチンの安定性(残存量)に
関する記述がなく、不明確な点が多い。このように、こ
れまで知られている化学的処理方法は、いずれも商業生
産に利用する上で大きな問題を有している。
【0008】一方、上述の細胞壁処理に供するファフィ
ア・ロドチーマ酵母の培養方法としては、これまで種々
の方法が報告されている。例えば、数時間〜数十時間菌
体増殖を継続させる培養方法の他、150時間以上菌体
増殖を継続させる培養方法〔Gil-Hwan An ら:Antonie
van Leeuwenhoek 誌、57巻、191 〜203 頁(1990)、Biot
ech Forum Europe誌、9 巻、565 〜567 頁(1992)など〕
が知られている。また、菌体増殖期の後、アスタキサン
チンの生産増強の目的で、栄養源を制限した条件(増殖
制限期)を組み合わせる方法も知られており、特表平2
−504101では、菌体増殖期87時間経過後、増殖
制限期72時間を経てファフィア・ロドチーマ酵母を得
る例、また、特開平4−228064では、菌体増殖期
96時間経過後、増殖制限期24時間を経てファフィア
・ロドチーマ酵母を得る例を挙げている。
【0009】しかしながら、これらの培養方法と菌体中
に生産されたアスタキサンチンの安定性との関連につい
ては報告されておらず、また、これらの培養方法と細胞
壁処理の難易との関連についてもほとんど報告されてい
ない。わずかに特開平4−228064において、増殖
制限期を長時間経過させた場合、菌体内のアスタキサン
チンの吸収が不利になるほど細胞壁が厚くなるという欠
点を指摘しているにすぎない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、菌体中
に生産されたアスタキサンチンの安定性の高いファフィ
ア・ロドチーマ酵母をいかに生産するか、又、アスタキ
サンチンを分解させることなく簡便且つ安価にいかに細
胞壁を処理するかについて、これまで充分な検討がなさ
れておらず、食餌色素補充として有効に利用できるファ
フィア・ロドチーマ酵母を取得するための好ましい培養
方法又は/及び細胞壁処理方法は知られていない。本発
明は、かかる実情に鑑み、酵母中のアスタキサンチンの
安定性が高く、色調改善効果に優れたファフィア・ロド
チーマ酵母を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、食餌色素
補充として有効に利用できる、また、溶剤により効率的
に抽出できるファフィア・ロドチーマ酵母を取得するた
めの、好ましい培養方法又は/及び細胞壁処理方法に関
して鋭意研究した結果、菌体中のアスタキサンチンの安
定性は菌体内成分の変化と関連があり、栄養源存在下で
の菌体増殖期を150時間以上経て培養されたファフィ
ア・ロドチーマ酵母は菌体中のアスタキサンチンの安定
性が非常に高いこと、また、上記菌体増殖期の後に、従
来、菌体内のアスタキサンチンの利用に大変不利である
とされてきた、実質的に栄養源が制限された条件下での
増殖制限期を経るか又は/及び加熱処理を行うことによ
り、更に菌体中のアスタキサンチンの安定性が増し、色
調改善効果の高いファフィア・ロドチーマ酵母が得られ
ることを見い出し、また、これらの培養或いは処理の
後、化学的に細胞壁処理を行うことにより、アスタキサ
ンチンの安定性及び色調改善効果の高い、また、アスタ
キサンチンの抽出が容易なファフィア・ロドチーマ酵母
が得られ、従来から用いられてきた方法の欠点を克服で
きることを見い出し、本発明の食餌色素補充として有効
に利用できるファフィア・ロドチーマ酵母の簡便かつ安
価な製造法を完成した。
【0012】即ち、本発明の第1は、栄養源存在下での
菌体増殖期を150時間以上経る培養を行った後、又
は、栄養源存在下での菌体増殖期を150時間以上経る
培養を行った後、更に実質的に栄養源が制限された条件
下での増殖制限期を経た後、化学的処理を行うことを特
徴とするファフィア・ロドチーマ酵母菌体の製造法を、
本発明の第2は、栄養源存在下での菌体増殖期を150
時間以上経る培養を行った後、又は、栄養源存在下での
菌体増殖期を150時間以上経る培養を行った後、更に
実質的に栄養源が制限された条件下での増殖制限期を経
た後、加熱処理を行い、しかる後に化学的処理を行うこ
とを特徴とするファフィア・ロドチーマ酵母菌体の製造
法を、本発明の第3は、上記製造法で得られたファフィ
ア・ロドチーマ酵母を、本発明の第4は、上記製造法で
得られたファフィア・ロドチーマ酵母を更に破砕処理し
てなるファフィア・ロドチーマ酵母菌体破砕物を、本発
明の第5は、上記ファフィア・ロドチーマ酵母又はその
破砕物を含有してなる魚介類、家禽類用飼料を、本発明
の第6は、上記ファフィア・ロドチーマ酵母又はその破
砕物から抽出したアスタキサンチンを含有してなる魚介
類、家禽類用飼料又は飼料添加物を、それぞれ内容とす
るものである。
【0013】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明で使用するファフィア・ロドチーマ酵母菌は菌株の
種類を問わない。例えば、IFO10129株、IFO
10130株、ATCC24201株等やその改良株が
用いられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用い
られる。ファフィア・ロドチーマ酵母の培養は、種母培
養、本培養を有する通常の方法で行うことができる。培
養に用いる炭素源としてはスクロース、グルコース、マ
ルトース、デンプン、コーンシロップ、糖蜜等が挙げら
れ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる
が、これらに限定されるものではない。また、これらの
炭素源は、一般に酵母の増殖に適するように一括添加、
分割添加、或いは連続添加する等の方法で供給すること
ができる。栄養源としては、アンモニア、アンモニウム
塩、尿素等の少なくとも1種、リン、マグネシウム、カ
リウム、硫酸、塩酸、銅、鉄、亜鉛、マンガン、モリブ
デン等のミネラル、及びビタミン類(ビタミンを含む天
然原料或いは純ビタミン及びその混合物)等が一般に用
いられるが、必ずしもこれらに限定されるものではな
い。培養温度は、一般に18〜25℃程度であり、培養
液のpHは一般に4〜6程度である。また、培養中の溶
存酸素濃度は、一般に飽和の30〜80%の範囲に保た
れる。必要に応じて消泡剤を添加できる。また、培養方
法は回分法、半回分法、流加培養法の他、実質的に菌体
増殖期が150時間以上に相当する連続培養法等が選択
できるが、これらの条件は菌株の種類等により適した方
法を任意に選択できるものであり、特に限定されるもの
ではない。
【0014】培養時間は、栄養源存在下菌体増殖期15
0時間以上必要であるが、より好ましくは170時間以
上、最も好ましくは190時間以上であり、長時間の菌
体増殖期の間に菌体内の脂質成分等が変化し、得るファ
フィア・ロドチーマ酵母中のアスタキサンチンの安定性
が高まる。例えば、後記参考例に示す如く、菌体増殖期
90時間の培養を行った酵母を40℃下、7日間保存し
た後の酵母中アスタキサンチンの残存率が70%である
のに対し、菌体増殖期150時間の培養を行った酵母で
は残存率が82%に向上する(表1のAとC参照)。ま
た、酵母中アスタキサンチンの有効利用率も向上し、例
えば、後記参考例に示すアセトン抽出法により、菌体増
殖期90時間の培養を行った酵母が38%の抽出率であ
るのに対し、菌体増殖期150時間の培養を行った酵母
では70%の抽出率が得られ、約2倍の抽出率向上効果
が得られる(表1のAとC参照)。このように菌体増殖
期150時間以上の培養を行うことで酵母中アスタキサ
ンチンのおよそ70%以上を抽出回収することが可能と
なる。更に、引き続き、酸或いはアルカリ条件により化
学的に細胞壁処理を行うことで、抽出効率、色揚げ効果
共に、より向上させることができる。また好適には、酸
或いはアルカリ処理で温和な条件を選択することによ
り、処理中のアスタキサンチンの分解を効果的に抑える
ことができる。
【0015】更に、栄養源存在下菌体増殖期150時間
以上培養した後、実質的に栄養源が制限された条件であ
る増殖制限期を2時間以上経過させることにより、酵母
中のアスタキサンチンの安定性をより高めることができ
る。例えば、後記参考例に示すように、菌体増殖期17
0時間の培養を行った酵母を40℃下、7日間保存した
後の酵母中アスタキサンチンの残存率が85%であるの
に対し、菌体増殖期170時間培養後増殖制限期を行っ
た酵母では残存率が90%に向上する(表1のDとF参
照)。また、菌体表面の夾雑多糖類が分解するため、更
に有効利用率が向上し、例えば、後記参考例に示すアセ
トン抽出法により、菌体増殖期170時間の培養後の酵
母で74%の抽出率であるのに対し、菌体増殖期170
時間の培養後増殖制限期を行った酵母では83%の抽出
率が得られ、約1割の抽出率向上効果が得られる(表1
のDとF参照)。このように栄養源存在下菌体増殖期1
50時間以上培養後、増殖制限期を2時間以上行うこと
により、酵母中アスタキサンチンのおよそ80%以上を
抽出回収することが可能となる。更に、引き続き、酸或
いはアルカリ条件により化学的に細胞壁処理を行うこと
により、抽出効率、色揚げ効果共に、より向上させるこ
とができる。また好適には、酸或いはアルカリ処理でよ
り温和な条件を選択することにより、処理中のアスタキ
サンチンの分解を抑えることができる。この増殖制限期
は、一般には培養途中で炭素源の供給を停止し、培養液
中の炭素源が消費された後、通常、培養温度付近、好ま
しくは培養温度でそのまま通気、攪拌することにより行
うことができる。
【0016】また、上記の方法で得られた酵母を加熱処
理を行う方法も、酵母中アスタキサンチンの安定性を更
に高めることができる。加熱処理の温度は40℃以上が
好ましく、40℃未満では処理効率が著しく低くなる。
例えば、後記参考例に示すように、菌体増殖期170時
間の培養を行った酵母を40℃下、7日間保存した後の
酵母中アスタキサンチンの残存率が85%であるのに対
し、菌体増殖期170時間培養後加熱処理を行った酵母
では残存率が87%に向上する(表1のDとE参照)。
また、菌体増殖期170時間培養後増殖制限期を行い、
更に加熱処理を行った酵母では残存率が92%に向上す
る(表1のG参照)。また、菌体表面の夾雑多糖類がよ
り可溶化或いは分解するため、有効利用率を更に向上さ
せることができる。例えば、後記参考例に示すアセトン
抽出法により、菌体増殖期170時間の培養後の酵母で
74%の抽出率であるのに対し、菌体増殖期170時間
の培養後加熱処理を行った酵母では81%の抽出率が得
られ、約1割弱の抽出率向上効果が得られる(表1のD
とE参照)。また、菌体増殖期170時間の培養後増殖
制限期を行った酵母が83%の抽出率であるのに対し、
菌体増殖期170時間の培養後増殖制限期を行い、更に
加熱処理を行った酵母では88%の抽出率が得られ、約
1割弱の抽出率向上効果が得られる(表1のFとG参
照)。このように栄養源存在下菌体増殖期150時間以
上培養後に加熱処理を行うことにより、或いは、菌体増
殖期150時間以上培養後増殖制限期を行った後に加熱
処理を行うことにより、酵母中アスタキサンチンのおよ
そ80%以上を抽出回収することが可能となる。更に、
引き続き酸或いはアルカリ条件により化学的に細胞壁処
理を行うことで、抽出効率、色揚げ効果共に向上させる
ことができる。また好適には、酸或いはアルカリ処理で
より温和な条件を選択することで、処理中のアスタキサ
ンチンの分解を抑えることができる。
【0017】加熱処理に用いる菌体は、培養液そのまま
でも、培養液中の培地成分を洗浄除去した菌体懸濁液を
濃縮したものでもよく、菌体を含有する水性溶液であれ
ば、特に制限なく用いることができる。また、アルコー
ル等の有機溶剤を約1〜20%程度添加して、処理効率
を高めることができる。加熱処理時間は長時間でも可能
であるが、所要時間や用役費用と得られる効果を勘案し
て、適宜決定される。例えば、40℃の場合は通常2〜
15時間程度であり、90℃の場合は通常10分〜2時
間程度である。短時間で効率的に処理する場合は、例え
ば60〜130℃程度の高温が選ばれるが、この場合、
水蒸気を導入して加熱する方法も好ましく用いられる。
また、加熱処理時のpHは、通常、培養pH〜中和pH
付近であり、pH4.0〜7.5程度が好適である。
【0018】次に、上述の培養或いは処理の後、ファフ
ィア・ロドチーマ酵母は更に化学的処理(酸或いはアル
カリ条件下での細胞壁処理)を行うことができる。処理
に供する菌体は、培養液或いは培養後の処理液そのまま
でも、培養液中の培地成分を洗浄除去した菌体の懸濁液
でもよく、濃縮したもの、あるいは遠心分離機、濾過機
等を用いる一般的な方法で取得した湿菌体や既に乾燥し
てある菌体を懸濁液としたものも用いることができる。
【0019】本発明の細胞壁処理で用いる酸としては、
塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、蟻酸、クエン酸等の有機
酸、或いはこれらを有する緩衝液等を用いることができ
るが、これらに限定されるものではない。一般的には、
塩酸、硫酸が好ましく用いられる。また、これらは単独
で使用しても、2種以上の混合物として用いてもよい。
酸溶液で酵母菌体を処理する方法としては、酸溶液と酵
母菌体とが接触する方法であればいかなる方法でもよ
く、例えば培養後の菌体懸濁液に酸溶液を添加してもよ
いし、酸溶液中に菌体を浸漬してもよい。
【0020】酸処理時のpHは、およそpH3.0以下
の任意pHにおいて、好ましい処理時間、温度条件で実
施することができ、例えば、低pH条件では低温、高p
H条件では高温の処理条件が設定される。しかしなが
ら、本発明では必ずしも極度の低pH条件は必要としな
い。本発明では、通常pH0.1〜3.0、好ましくは
pH0.5〜3.0の範囲が好ましく用いられる。処理
温度は、0〜110℃程度で行うことが可能であるが、
pH2〜3程度の条件では通常60℃以上、pH2以下
の条件では通常10〜80℃程度である。処理時間は、
1分〜1日程度処理すればよいが、酸処理時のpH、温
度の条件により、1〜15時間程度が好ましく用いられ
る。これらの酸処理条件は、前述の培養方法、及び培養
後の処理条件との組み合わせで、実施例に示すアセトン
抽出法により酵母中アスタキサンチンの85%以上が抽
出されるよう最適に設定されるのが好ましい。
【0021】酸溶液で処理した後は、通常、スプレード
ライヤー、凍結乾燥器等を用いる一般的な乾燥方法で乾
燥菌体とすることができる。酸処理液をそのまま乾燥し
てもよいし、酸処理液にアルカリを加え、培養時pH〜
中和pHや乾燥装置の材質上問題のないpHに調節した
後に、乾燥させてもよい。例えば、乾燥装置の材質がス
テンレススチールの場合であれば、酸処理液をpH4程
度以上に調整した後、乾燥を行うのが好ましい。また、
通常行われる遠心分離又は濾過等の方法により菌体を分
離し、更に水洗いを繰り返すことにより酸溶液を除去し
たもの、又アルカリを添加した後、菌体を水洗いしたも
のを乾燥してもよい。もちろん乾燥せずに使用すること
もできる。
【0022】また、本発明の細胞壁処理で用いるアルカ
リとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を
含む化合物、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土
類金属をを含む化合物、アルミニウム、鉄等の他の金属
元素を含む金属化合物、更にアンモニア、メチルアミ
ン、エタノールアミン等の有機化合物、或いはこれらを
有する緩衝液等を用いることができる。代表的なものと
しては、アルカリ金属を含む化合物の例として、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化
物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ
金属炭酸塩が挙げられるが、これらに限定されるもので
はない。一般的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムが好ましく用いられる。これらは単独で使用しても2
種以上の混合物として用いてもよい。本発明のアルカリ
溶液で酵母菌体を処理する方法としては、アルカリ溶液
と酵母菌体とが接触する方法であればいかなる方法でも
よく、例えば培養後の菌体懸濁液にアルカリ溶液を添加
してもよいし、アルカリ溶液中に菌体を浸漬してもよ
い。
【0023】アルカリ処理時のpHはおよそpH8.0
以上の任意pHにおいて好ましい処理時間、温度条件で
実施することができ、例えば、低pH条件では高温、高
pHでは低温の処理条件が設定される。しかしながら、
本発明では必ずしも極度の高pH条件は必要としない。
本発明では、通常、pH12以下の条件が有効である
が、処理中の菌体内アスタキサンチンの分解を抑え、且
つ有効利用率を向上させるためpH8.0〜10.0が
好ましく用いられ、pH8.0〜9.5が特に好ましく
用いられる。処理温度は、0〜110℃程度で行うこと
が可能であるが、温度が高いとアスタキサンチンの分解
が進行しやすくなるため、通常0〜80℃である。ま
た、反応時間は、1分〜1日程度処理すればよいが、処
理時間が長いとアスタキサンチンの分解が進行しやすく
なるため、アルカリ溶液のpH、温度の条件により、1
〜10時間程度が好ましく用いられる。これらのアルカ
リ処理条件は、前述の培養法及び培養後の処理条件との
組み合わせで、後記実施例に示すアセトン抽出法によ
り、酵母中アスタキサンチンの85%以上が抽出される
よう最適に設定するのが好ましい。
【0024】アルカリ溶液で処理した後は、通常、スプ
レードライヤー、凍結乾燥器等を用いる一般的な乾燥方
法で乾燥菌体とすることができる。アルカリ処理液をそ
のまま乾燥してもよいし、アルカリ処理液に酸を加え、
培養時pH〜中和pHや乾燥装置の材質上問題のないp
Hに調節した後に、乾燥させてもよい。また、通常行わ
れる遠心分離又は濾過等の方法により菌体を分離し、更
に水洗いを繰り返すことによりアルカリ溶液を除去した
もの、又酸を添加した後、菌体を水洗いしたものを乾燥
してもよい。もちろん乾燥せずに使用することもでき
る。
【0025】もちろん、上記の酸処理とアルカリ処理は
任意の順序で組み合わせることもでき、上述のように、
栄養源存在下、菌体増殖期150時間以上の培養後或い
は培養後加熱処理後、アルカリ性条件下pH8.0〜
9.5、又は/及び、酸性条件下pH0.1〜3.0の
化学的処理を行うことにより、従来提唱されている、p
H10以上の酵母中アスタキサンチンの分解が伴うよう
なアルカリ処理、或いは酸強度が約0.75〜1Nのか
なり高い酸濃度での酸処理を行わなくとも同等以上の色
揚げ効果を得ることができる。
【0026】また、上述の培養或いは培養後加熱処理で
得られたファフィア・ロドチーマ酵母や、その後の酸処
理又は/及びアルカリ処理で得られるファフィア・ロド
チーマ酵母を、ホモジナイザー、フレンチプレス、ビー
ズミル等の一般に用いられている細胞破砕が行える装置
を用いて破砕処理することにより、有効利用率を更に向
上させることもできる。この細胞破砕は、血球計数盤を
使用し顕微鏡観察する方法で、細胞が破砕前に比べ好ま
しくは70%以上、特に好ましくは80%以上破砕され
るように処理されるものである。この破砕処理により、
特に色揚げにおいて、アスタキサンチンはより吸収に好
ましい状態となり、上述の培養或いは培養後加熱処理で
得られたファフィア・ロドチーマ酵母やその後の酸処理
又は/及びアルカリ処理で得られるファフィア・ロドチ
ーマ酵母に比べ、より興味深い相乗効果が得られ、極め
て優れたファフィア・ロドチーマ酵母製品となる。
【0027】尚、当然のことながら、ファフィア・ロド
チーマ酵母菌体は生物体であるので、菌株や培養条件等
により、上記の加熱処理、酸処理或いはアルカリ処理、
粉砕処理の効果は、幾分か変動するものである。
【0028】この様にして得られる本発明のファフィア
・ロドチーマ酵母の菌体、菌体処理物或いは菌体破砕物
は、アセトンやイソブチルケトン等のケトン、ヘキサン
や石油エーテル等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン等の
ハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル、エタノ
ールやn−プロパノールやイソプロパノール等のアルコ
ール、食用油等、或いはこれらの混合物を用いて内容物
を効率的に抽出・溶出し、これらを利用することができ
る。
【0029】また、本発明のファフィア・ロドチーマ酵
母の菌体、菌体処理物或いは菌体破砕物は、そのまま飼
料として用いてもよいが、湿菌体或いは、乾燥菌体とし
て一般に用いられている飼料の配合物、例えば、魚粉、
骨肉粉、オキアミミール、大豆油粕、大豆粕、コーング
ルテンミールやトルラー酵母、ビール酵母、パン酵母等
の飼料用酵母、小麦粉、デンプン、グアーガム、デキス
トリン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ア
ルギン酸ソーダ、レシチン等のリン脂質、フィードオイ
ル、ミネラル、ビタミン類と混合し普通用いられている
方法、例えばハードペレット、モイストペレット、EP
ペレット等のペレット状或いはマッシュ状に成形し配合
飼料として利用もできる。
【0030】更に、本発明のファフィア・ロドチーマ酵
母をデンプン、デキストリン、プルラン、ゼラチン、カ
ゼイン、アラビアガム、シュークロース、グルコース、
フルクトース、マルトース、落花生油、大豆油、魚油等
の食用油、硬化油等の被覆剤、エトキシキン、BHA、
BHT、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコル
ビン酸パルミテート、トコフェロール等の抗酸化剤、ビ
タミンA類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸
エステル、プロピレングリコール、レシチン、リン脂質
等の添加物とともに加工した後、飼料或いは飼料添加物
として利用することもできる。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、これらの実施例は本発明の実施を単に例証する
ためのものであり、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0032】参考例 5mlの培地を含む試験管8本にファフィア・ロドチーマ
酵母を接種し、20℃で48時間培養した。培養液を5
0mlの培地を含む500ml容の坂口フラスコ8本に移
し、20℃で48時間培養した。培養液を2500mlの
培地を含む5000ml容のミニジャー2基に移し、20
℃で48時間培養した。培養液を100Lの培地を含む
200L容ジャーに移し、20℃で本培養を行った。本
培養では、pHは4.8〜5.5の間にコントロール
し、溶存酸素濃度は飽和の30〜80%の間に保持し
た。炭素源のグルコースを始発時に2Kg添加し、グルコ
ースが消費された後、グルコースを補給した。初期の補
給は一般にゆっくりと行い、その後徐々に速くした。お
よそ0.1〜0.2Kg/hrの速度でグルコースを添加し
た。
【0033】本培養では培養途中に培養液を抜き出し、
以下に示す処理を行った。 A:本培養90時間目に培養液を500ml抜き出した。 B:本培養130時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 C:本培養150時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 D:本培養170時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 E:本培養170時間目に培養液をミニジャーに100
0ml抜き出し、50℃で1時間加熱処理し冷却した。 F:本培養170時間目に培養液をミニジャーに200
0ml抜き出し、グルコースの消費を確認した後、20℃
で、通気、攪拌を10時間継続した。 G:本培養170時間目に培養液をミニジャーに200
0ml抜き出し、グルコースの消費を確認した後、20℃
で、通気、攪拌を10時間継続し、その後50℃で1時
間加熱処理をし、冷却した。 H:本培養190時間目に培養液を500ml抜き出し
た。
【0034】以上の抜き出し及び処理の後、各培養液を
用いて酵母中アスタキサンチンの有効利用率の指標とな
るアセトン抽出率を測定した。さらに遠心分離機を用い
て培養液中の菌体を水洗し、スプレードライヤー(大川
原化工機製L8型)を用い、入口温度180℃、出口温
度60℃の条件で各乾燥菌体を取得し、菌体中の脂質含
量、および菌体中アスタキサンチンの安定性を測定し
た。なお、得られた乾燥菌体の水分はいずれも7〜9重
量%であった。
【0035】(アセトン抽出率)培養液1mlを栓付き試
験管に分取し、遠心分離機を用いて水洗を3回繰り返し
た後、水分をできる限り取り除いた。1mlの脱イオン水
を加えて菌体を試験管ミキサーで懸濁した後、6mlのア
セトンを加え試験管ミキサーで1分間懸濁し、遠心分離
した。上清のアスタキサンチン濃度をHPLCで定量
し、抽出量を求め、100%抽出量に対するアセトン抽
出量をアセトン抽出率とした。
【0036】(100%抽出量)J.Jamesら;バ
イオテクノロジーテクニック、4巻、107〜112頁
に記載される方法を参考にした。培養液1mlを栓付き試
験管に分取し、遠心分離機を用いて水洗を3回繰り返し
た後、水分をできる限り取り除いた。ジメチルスルホキ
シド(DMSO)1mlを加え試験管ミキサーで菌体を懸
濁し、超音波下、50℃で菌体を完全に溶解し、次にア
セトンを加えて抽出した後、20ml容メスフラスコに移
し、アセトンでメスアップした。上清のアスタキサンチ
ン濃度をHPLCで定量し求めた(以下、DMSO溶解
法と記す)。
【0037】(菌体中のアスタキサンチンの安定性)各
乾燥菌体を20mgづつ栓付き試験管に分取し、40℃、
100℃の恒温槽にてそれぞれ7日、2時間保存処理し
た後、上記DMSO溶解法を用いて菌体中アスタキサン
チン量を計算し、保存処理前に対する保存後のアスタキ
サンチン量の残存率として算出した。得られた結果を表
1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1の結果から明らかなように、菌体増殖
期を150時間以上経ることにより、酵母中のアスタキ
サンチンの有効利用率の指標となるアセトン抽出率を高
めることができる(C、D、H)。また、酵母中の脂質
含量の変化とともに、酵母中のアスタキサンチンの安定
性も大きく向上させることができる。更に、150時間
以上の培養後、増殖制限期又は/及び加熱処理を行うこ
とにより、アセトン抽出率が更に高まり、かつ、酵母中
のアスタキサンチンの安定性の高いファフィア・ロドチ
ーマ酵母を得ることが可能である(E、F、G)。
【0040】実施例1 ファフィア・ロドチーマ酵母を参考例と同様の条件で1
70時間培養後、グルコースの消費を確認した後、20
℃で、通気、攪拌を10時間継続した。その後、培養液
を500mlづつフラスコに分取し、20%水酸化ナトリ
ウム水溶液で表2に示す各pHに調整し、50℃で2時
間アルカリ処理を行った。また、添加した水酸化ナトリ
ウム水溶液と同量の水を加えたものをコントロールとし
た。アルカリ処理中のアスタキサンチンの分解率は、参
考例に示すDMSO溶解法で得られるコントロール及び
アルカリ処理後の液1ml中のアスタキサンチン量を比較
することで算出した。酵母中のアスタキサンチンの有効
利用率の指標となるアセトン抽出率は、各アルカリ処理
後の液を実施例1に示す方法で求めた。また、アルカリ
処理中のアスタキサンチンの分解を考慮し、処理後のア
セトン抽出率から処理中の分解分を差し引いた、処理後
の実質的なアスタキサンチン有効利用率を算出した。各
アルカリ処理条件における、処理中のアスタキサンチン
の分解率と処理後のアセトン抽出率、及び処理後の実質
的なアスタキサンチン有効利用率を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】表2の結果から明かなように、本発明によ
り、従来、例えば特開平5−292897で提唱されて
いるpH10以上の厳しい条件下でのアルカリ処理を実
施することなく、適切な培養条件とそれに続く最適なア
ルカリ処理条件を選択することにより、より温和なアル
カリ処理条件での細胞壁処理が可能となり、アルカリ処
理中での酵母中アスタキサンチンの分解が抑えられるば
かりでなく、実質的な酵母中アスタキサンの有効利用率
を増大させることが可能である。
【0043】実施例2 ファフィア・ロドチーマ酵母を参考例と同様の条件で培
養を行い、本培養の途中以下に示す時間に培養液を抜き
出し、各処理を行った。
【0044】I:本培養90時間目に培養液を500ml
抜き出した。 J:本培養130時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 K:本培養150時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 L:本培養170時間目に培養液を500ml抜き出し
た。 M:本培養170時間目に培養液をミニジャーに100
0ml抜き出し、50℃で1時間加熱処理し冷却した。 N:本培養170時間目に培養液をミニジャーに200
0ml抜き出し、グルコースの消費を確認した後、20℃
で、通気、攪拌を10時間継続した。 O:本培養170時間目に培養液をミニジャーに200
0ml抜き出し、グルコースの消費を確認した後、20℃
で、通気、攪拌を10時間継続し、その後50℃で1時
間加熱処理をし、冷却した。 P:本培養190時間目に培養液を500ml抜き出し
た。
【0045】以上の抜き出しの後、各処理を行った各培
養液について、アルカリ処理前のアセトン抽出率を参考
例に示す方法で求めた。さらに、各々の抜き出した液2
00mlをフラスコに分取し、20%水酸化ナトリウム水
溶液でpH9.2に調整し、50℃で2時間アルカリ処
理を行った後、30%硫酸水溶液で中和し、遠心分離機
で菌体を洗浄し菌体懸濁液を得た。その後、参考例に示
す方法で、処理後のアセトン抽出率を求めた。更に、得
られた菌体懸濁液をスプレードライヤーで噴霧乾燥し各
乾燥菌体を得、参考例に示す方法で菌体中アスタキサン
チンの安定性を調べた。なお、得られた乾燥菌体の水分
含量はいずれも7〜9重量%であった。各抜き出し処理
液に関して得られた、アルカリ処理前のアセトン抽出
率、アルカリ処理後のアセトン抽出率、アルカリ処理後
の菌体中アルタキサンチンの安定性を、表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】表3の結果から明らかなように、150時
間以上の菌体増殖期を経た培養を行うことで、アルカリ
処理せずとも70%以上のアセトン抽出率を持つファフ
ィア・ロドチーマ酵母を得ることができ、また、150
時間以上の菌体増殖期に引き続き増殖制限期又は/及び
加熱処理を組み合わせることで細胞壁の強固さが軽減さ
れ、アセトン抽出率が更に高まる。更に、アスタキサン
チンの分解を抑えた温和な条件下でアルカリ処理を実施
することにより、より高い抽出率が得られ、利用価値の
高いファフィアロドチーマ酵母を得ることが可能とな
る。
【0048】実施例3 ファフィア・ロドチーマ酵母を参考例と同様の条件で1
70時間培養後、グルコースの消費を確認した後、20
℃で通気、攪拌を10時間継続した。培養液を50℃で
2時間加熱処理した後、30%水酸化ナトリウム水溶液
でpH9.0に調整し、50℃で2時間アルカリ処理を
行った。25℃に冷却した後、50%硫酸水溶液で中和
し、遠心分離機で菌体を洗浄・濃縮し、スプレードライ
ヤーで乾燥した(本発明品1:170時間培養+増殖制
限期+加熱処理+アルカリ処理;水分6重量%)。ま
た、遠心分離機で菌体を洗浄・濃縮した菌体懸濁液の一
部を、高圧ホモジナイザー(マントン−ゴーリン・ラボ
ラトリー・ホモジナイザー15M−8TA型)を用いて
破砕処理を行い、その後スプレードライヤーで乾燥した
(本発明品2:170時間培養+増殖制限期+加熱処理
+アルカリ処理+破砕処理;破砕率92%、水分7重量
%)。また、170時間培養後、グルコースの消費を確
認した後、20℃で通気、攪拌を10時間継続した。培
養液を50℃で2時間加熱処理した後、50%硫酸水溶
液でpH1に調整し、50℃で2時間酸処理を行った。
25℃に冷却した後、30%水酸化ナトリウム水溶液で
中和し、遠心分離機で菌体を洗浄・濃縮し、スプレード
ライヤーで乾燥した(本発明品3:170時間培養+増
殖制限期+加熱処理+酸処理;水分6重量%)。また、
170時間培養後、グルコースの消費を確認した後、2
0℃で通気、攪拌を10時間継続した。培養液を50℃
で2時間加熱処理した後、30%水酸化ナトリウム水溶
液で中和し、遠心分離機で菌体を洗浄・濃縮後、高圧ホ
モジナイザーを用いて破砕処理を行い、その後スプレー
ドライヤーで乾燥した(本発明品4:170時間培養+
増殖制限期+加熱処理+破砕処理;破砕率91%、水分
6重量%)。
【0049】更に、比較品として、120時間培養後の
培養液を中和し、アルカリ処理をせずに遠心分離機で菌
体を洗浄・濃縮し、スプレードライヤーで乾燥し、乾燥
菌体を得た(比較品1:120時間培養;水分6重量
%)。また、120時間培養後、培養液を30%水酸化
ナトリウム水溶液でpH12.5に調整し、25℃で1
時間アルカリ処理を行った後、50%硫酸水溶液で中和
し、遠心分離機で菌体を洗浄・濃縮し、スプレードライ
ヤーで乾燥した(比較品2:120時間培養+強アルカ
リ処理;水分8重量%)。
【0050】次に、上述の方法で作製した各々のファフ
ィア・ロドチーマ酵母を用いて、表4に示す配合飼料を
調製し、ニジマスの色揚げ試験を行った。
【0051】
【表4】 試験期間 平成6年11月〜12月(4週間) 供試魚 平均体重約150gのニジマスを1試験区当たり45尾
づつ用いた。 給餌量 1日あたり魚体重の約3%を朝、昼、夕の3回に分けて
給餌。
【0052】(魚体中アスタキサンチン蓄積量の測定)
4週間の色揚げ試験終了後、ニジマスの背肉部分約5g
を乳鉢に入れ、クロロホルム/メタノール(2/1)を
加え、肉片をすりつぶしながら完全に抽出した。その
後、抽出液を濾過し、濾液を蒸発乾固させ、アセトン2
ml加えて溶解後、HPLCでアスタキサンチンを定量し
た。試験結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】表5から明かなように、本発明のファフィ
ア・ロドチーマ酵母を配合した1区〜4区の飼料は、良
好な色揚げ効果を示している。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、ファフィア・ロドチー
マ酵母を適切な培養条件で培養することにより、酵母中
のアスタキサンチンの安定性の高い、色調改善効果の優
れたファフィア・ロドチーマ酵母を提供することができ
る。また、適切な培養条件で培養後、さらに、酵母中ア
スタキサンチンの分解を抑えた温和な細胞壁処理条件で
処理することにより、より高い色調改善効果を有し、酵
母中のアスタキサンチンの安定性が高いファフィア・ロ
ドチーマ酵母を提供することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 1/16 C12R 1:645)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 栄養源存在下での菌体増殖期を150時
    間以上経る培養を行った後、又は、栄養源存在下で菌体
    増殖期を150時間以上経る培養を行った後、更に実質
    的に栄養源が制限された条件下での増殖制限期を経た
    後、化学的処理を行うことを特徴とするファフィア・ロ
    ドチーマ酵母菌体の製造法。
  2. 【請求項2】 栄養源存在下での菌体増殖期を150時
    間以上経る培養を行った後、又は、栄養源存在下での菌
    体増殖期を150時間以上経る培養を行った後、更に実
    質的に栄養源が制限された条件下での増殖制限期を経た
    後、加熱処理を行い、しかる後に化学的処理を行うこと
    を特徴とするファフィア・ロドチーマ酵母菌体の製造
    法。
  3. 【請求項3】 栄養源が制限された条件下での増殖制限
    期を2時間以上経る請求項1又は2記載の製造法。
  4. 【請求項4】 栄養源存在下での菌体増殖期を170時
    間以上経る請求項1〜3記載の製造法。
  5. 【請求項5】 栄養源存在下での菌体増殖期を190時
    間以上経る請求項1〜3記載の製造法。
  6. 【請求項6】 化学的処理をアルカリ性条件下pH8.
    0〜9.5、又は/及び、酸性条件下pH0.1〜3.
    0で行う請求項1〜5記載の製造法。
  7. 【請求項7】 加熱処理を温度40℃以上でpH4.0
    〜pH7.5の条件で行う請求項2〜6記載の製造法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7の製造法で得られたファフ
    ィア・ロドチーマ酵母。
  9. 【請求項9】 請求項1〜7記載の製造法で得られたフ
    ァフィア・ロドチーマ酵母を更に破砕処理してなるファ
    フィア・ロドチーマ酵母菌体破砕物。
  10. 【請求項10】 請求項8又は9記載のファフィア・ロ
    ドチーマ酵母又はその破砕物を含有してなる魚介類、家
    禽類用飼料。
  11. 【請求項11】 請求項8又は9記載のファフィア・ロ
    ドチーマ酵母又はその破砕物から抽出したアスタキサン
    チンを含有してなる魚介類、家禽類用飼料又は飼料添加
    物。
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