JPH08209252A - 金属帯板の連続熱処理炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、連続熱処理炉における金属帯板の
蛇行および座屈、特に鋼帯の蛇行が最も発生し易い加熱
帯において、これらの問題を有利に解決し、かつ設備上
も経済的な連続熱処理炉を提供することを目的としてい
る。 【構成】 連続熱処理炉において、加熱される金属帯板
の温度が常温から６００℃に達する領域に使用されるハ
ースロールにクラウン可変ロールを配置することを特徴
とする連続熱処理炉。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、金属帯板の縦型連続熱
処理炉に関するものであり、例えば、冷延鋼板、ステン
レス鋼板、銅板、アルミニウム板等の連続焼鈍ライン、
電磁鋼板の熱処理ライン、連続熱処理を含む溶融めっき
ラインなどのストリップの連続焼鈍設備に関するもので
ある。以下、本発明では鋼帯の連続熱処理を例として説
明する。

【０００２】

【従来の技術】連続熱処理炉では、上流から加熱、均
熱、冷却の各帯域で構成され、鋼帯はこれらの帯域を順
次通過しながら目的に応じた適正な熱処理が施される。
この連続熱処理炉における操業上の問題に、鋼帯の幅方
向への蛇行と鋼帯内に生じる座屈がある。近年、連続焼
鈍においては高温、高速通板化が指向されており上記の
問題の解決が急務とされている。鋼帯内に生じる座屈
（ヒートバックル）を防止するには、一般的には、炉内
の通板張力を低下させる事が現場的に知られているが、
一方では、鋼帯の蛇行を防止するためには高めの張力が
望ましい。また、鋼帯の蛇行は、高速通板になればなる
ほど発生し易い。そこで、操業上のトラブルを回避する
手段として、ヒートバックルの防止のため鋼帯の通板張
力を低く保ち、これによる鋼帯の蛇行の防止のため低速
で鋼板を通板せざるを得ないのが現状である。このた
め、生産効率の低下を来している。

【０００３】鋼帯の蛇行は、特に連続熱処理炉の加熱部
で狭幅材を通過させる時が顕著で問題であった。これ
は、ハースロール温度に比べて鋼帯温度が低い加熱帯で
は、狭幅の材料を通板している際、ハースロールの中心
部の鋼帯の接している部分の温度が接していない部分に
比べて低温になり、一方、鋼帯の接していない部分は炉
雰囲気温度により加熱され熱膨張で膨らみ、中高にして
あったロールクラウンが減った状態、もしくは中凹のク
ラウンになることによるものであった。この狭幅材の蛇
行の問題を解決するために、ハースロールに中高のクラ
ウンを付けたハースロールを使用し、このクラウンの作
用による鋼帯に及ぼすセンタリング力で蛇行を防止する
ことが考えられるが、この方法では、次のように新たに
座屈問題を引き起こす。

【０００４】即ち、このような中高形状のハースロール
では鋼帯の蛇行を防止する機能は有するが、ハースロー
ルの両端に先細りテーパーを設けたハースロールを用い
たときにはそのテーパーの傾斜角度が過大な場合に、ラ
ウンドロールを用いた場合ではその曲率クラウンの曲率
半径が小さすぎる場合に、あるいは鋼帯の通板張力を増
大させた場合に、鋼帯内面に不均一張力による中心部へ
の圧縮応力が発生し、この応力が鋼帯を座屈させること
になる。なお、ハースロールのテーパー角度（図１中の
θ）は、座屈を避けるため、高々４×１０^-3ラジアンが
限度である。

【０００５】図１は、ハースロールのテーパー角度４×
１０^-3ラジアン、炉温９００℃、鋼帯温度２００℃の条
件で、広幅材、例えば鋼帯幅１７００mmの場合と狭幅
材、例えば鋼帯幅９００mmの場合について、ハースロー
ルの温度分布変化によるハースロールの初期プロフィル
からの変化状況を示している。狭幅材では、逆クラウン
となり、鋼帯の蛇行が発生し易くなることが分かる。ク
ラウン可変ハースロールによりこの逆クラウンを防止す
ることで、狭幅材の蛇行を防止することが必要である。
一方、広幅材においては、中高のクラウンが維持される
ため蛇行の問題は発生しない。

【０００６】従来より、広範な寸法や材質の異なる鋼帯
を連続的に熱処理炉において製造する場合、前述した蛇
行や座屈を防止するために、ハースロールの形状、例え
ばテーパー付きハースロールの中央部幅やテーパーの傾
斜角度を最適化することが試みられてきたが、すべての
条件に合う解を得ることは困難であった。そこで、この
ような状態でも安定した操業をするために、例えば特公
昭５８−４３４５４号公報ではハースロールの内部およ
び外部から冷媒を吹きつけることによってクラウンをコ
ントロールするものが、また、特公昭６３−３９６４８
号公報ではハースロール内部に冷却流体を循環させ流体
温度をコントロールすることによりクラウンをコントロ
ールするものが、更に、特開昭６１−２１０１２８号公
報、特開平３−２０４２０号公報ではハースロールクラ
ウンを外力により自在に変更できる構造としたものが開
示されている。しかし、これらのハースロールは、ロー
ルの構造が複雑であったり、炉外にクラウンを制御する
ための制御装置が必要になるので、特に多数のハースロ
ールが必要な連続熱処理炉には、設備費が膨大になり、
経済上好ましくない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、連続熱処理
炉における金属帯板の蛇行および座屈、特に鋼帯の蛇行
が最も発生し易い加熱帯において、これらの問題を有利
に解決し、かつ設備上も経済的な連続熱処理炉を提供す
ることを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の目的
を達成するために鋭意検討を重ねた結果、連続熱処理炉
における鋼帯の蛇行および座屈の起因となる、鋼帯幅の
狭幅化に伴うハースロールクラウンの悪化は、鋼帯温度
と密接に関係することを見出し、この発明を完成するに
至ったものである。即ち、本発明の要旨は、連続熱処理
炉において、加熱される金属帯板の温度が常温から６０
０℃に達する領域に使用されるハースロールにクラウン
可変ロールを配置することを特徴とする連続熱処理炉に
ある。

【０００９】

【作用】以下、本発明を詳細に説明する。図２は、発明
者らが本発明の作用、効果を検討した鋼帯の連続焼鈍設
備の概略図である。本設備では、板厚０．４〜２．３m
m、板幅６００〜１８３０mmまでの鋼帯を連続焼鈍でき
る。

【００１０】図３は、連続熱処理炉において、例えば鋼
帯温度を８５０℃まで加熱する場合の加熱帯での鋼帯の
温度履歴を示したものである。この測温結果では、加熱
帯のほぼ中央部にて鋼帯の温度が６００℃に達している
ことが分かる。

【００１１】加熱帯において狭幅材の鋼帯温度を変化さ
せた場合のロールの軸方向温度分布を図４に、その時の
ロールプロフィルを図５に示す。鋼帯の温度が高いほど
ロール中央部と端部の温度差が小さくなるため、６００
℃以上では初期クラウンと同様のロールプロフィルとな
り、鋼帯端部のクラウン増はなくなる。

【００１２】よって、鋼帯温度が常温から６００℃まで
の範囲にクラウン可変ハースロールを設置するのが必要
であり十分である。鋼帯温度が６００℃以上の領域にお
いては、鋼帯のヤング率、降伏応力値が低下し、また、
鋼帯の残留歪みも回復されるので鋼帯の形状は平坦な形
状となり、更にロールプロフィルも初期クラウンに近付
くので鋼帯の蛇行は問題とはならない。

【００１３】狭幅材の蛇行防止のためのクラウン可変ハ
ースロールの設置は、鋼帯温度と炉温の温度差がより大
きいところで適用するのがより効果的であることは言う
までもない。

【００１４】

【実施例】図２の鋼帯の連続焼鈍設備に本発明を適用
し、図３の板温測定結果に基づき、加熱帯入側から１ロ
ール目ないし１２ロール目の加熱帯のハースロールにク
ラウン可変ハースロールを使用した。この領域での鋼帯
温度は、常温から６００℃である。これにより、ヒート
クラウンによる蛇行問題が解決され、通板速度が向上し
た例を図６に示す。上段が従来技術による板幅８５０〜
９００mmまでの狭幅材の炉内通板速度分布を示し、下段
が本発明の適用による改善効果例である。狭幅材の平均
通板速度は、従来速度の１．５倍になり生産能率が大幅
に向上した。また、本発明では、クラウン可変ハースロ
ールの設備対象範囲を、鋼帯温度が常温から６００℃に
限定するため、加熱帯全部を対象とする必要はなく、例
えば図３に示すように加熱帯のほぼ前半部に設置すれば
良いので、設備コストも低減することができる。

【００１５】

【発明の効果】この発明によれば、連続熱処理炉におけ
る鋼帯の蛇行および座屈、特に鋼帯の蛇行が最も発生し
易い加熱帯において、これらの問題を有利に解決でき、
歩留および生産能率を向上させることができる。また、
適用箇所を限定できるため、設備費の削減を図ることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】広幅材と狭幅材を通板した場合のロール温度分
布変化によるハースロールの初期クラウンからのロール
プロフィルの変化状況を示す説明図である。

【図２】本発明の作用、効果を検討した鋼帯の連続焼鈍
設備の概略図である。

【図３】連続熱処理炉において例えば鋼帯温度を８５０
℃まで加熱する場合の加熱帯での鋼帯の温度履歴を示す
説明図である。

【図４】加熱帯において狭幅材の鋼帯温度を変化させた
場合のロールの軸方向温度分布を示す説明図である。

【図５】加熱帯において狭幅材の鋼帯温度を変化させた
場合のロールプロフィルを示す説明図である。

【図６】本発明による炉内平均通板速度の向上例を示す
説明図である。

【符号の説明】

１ 捲戻機 ２ 溶接機 ３ 電解清浄部 ４ 入側ルーパー ５ 加熱帯 ６ 均熱帯 ７ １次冷却帯 ８ 再加熱帯 ９ 過時効帯 １０ ２次冷却帯 １１ 後処理部 １２ 出側ルーパー １３ 調質圧延機 １４ サイドトリマー １５ 捲取機

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加熱される金属帯板の温度が常温から６
   ００℃に達する領域に使用されるハースロールにクラウ
   ン可変ロールを配置することを特徴する連続熱処理炉。