JPH08208227A - 高純度三塩化チタン水溶液の製造方法 - Google Patents

高純度三塩化チタン水溶液の製造方法

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JPH08208227A JP3934295A JP3934295A JPH08208227A JP H08208227 A JPH08208227 A JP H08208227A JP 3934295 A JP3934295 A JP 3934295A JP 3934295 A JP3934295 A JP 3934295A JP H08208227 A JPH08208227 A JP H08208227A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チタンと塩酸の簡易な反応を介して反応効率
よく、低コストで高純度の三塩化チタン水溶液を得るた
めの工業的な製造方法を提供する。 【構成】 チタンと塩酸との反応により三塩化チタン水
溶液を製造する方法において、チタン源としてスポンジ
チタンを使用すると共に、理論当量よりも常に過剰の塩
酸(具体的にはチタン1g原子当たり塩酸3.1モル以
上)を用いて反応させる方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種触媒またはその中
間体、金属のコーティング剤、有機合成における還元
剤、医薬品の原料またはその中間体などとして有用され
る高純度三塩化チタン水溶液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】三塩化チタン水溶液(TiCl3 aq.) の製造
技術については従来から幾つかの方法が知られている
が、工業的規模で高純度の三塩化チタン水溶液を製造す
るための有効な方法は未だに開発されていない。例え
ば、チタンと塩酸を反応させて三塩化チタン水溶液を生
成させる方法は、反応効率が悪いため工業的は製造技術
としては確立されていない。固体の三塩化チタンを塩酸
に溶解させて溶液化する方法では、原料として四塩化チ
タンを金属アルミニウムで還元生成した三塩化チタンを
用いるため、三塩化チタン中に不可避的に混入する塩化
アルミニウム成分や未反応の四塩化チタンを除去する煩
雑な精製工程が必要となる。また、前記の精製工程で除
去し得ない塩化アルミニウムあるいは塩酸に溶解しても
なお4価のままで残存する四塩化チタンの影響で、三塩
化チタン水溶液の純度が低下するうえ、三塩化チタンを
塩酸に溶解させる際に発生する多量の塩酸ガスが安全衛
生面の大きな問題となる。
【0003】四塩化チタン水溶液を金属アルミニウムま
たは金属亜鉛で還元して三塩化チタン水溶液を生成する
方法は、還元金属成分が水溶液中に溶解して三塩化チタ
ン水溶液の純度を損ねる欠点がある。また、四塩化チタ
ン水溶液を電解して三塩化チタン水溶液に還元する方法
では、陰極側で電解生成する3価のチタンイオンが陽極
側に流入し、ここで酸化により生成した4価のチタンイ
オンが陰極側に流入して三塩化チタン水溶液に不純物と
して混入したり、結果的には電解効率の低下を招くとい
う不都合が生じる。
【0004】特開平2−25586号公報には、上記の
ような電解生成法の問題を解消する手段として、陰極側
と陽極側とを仕切る隔膜にフッ素系陰イオン交換膜を使
用して生成イオンの逆流を防止する方法が提案されてい
る。ところが、四塩化チタン水溶液の電解還元による三
塩化チタン水溶液の製造方法、とりわけ隔膜を用いる電
解生成においては、電子密度の低下が避けられず、電解
効率の減退と製造コストの高騰化を招くほか、電極に使
用する金属成分の溶出や電解液に使用する塩化ナトリウ
ムなどの金属塩が、生成される三塩化チタン水溶液に混
入する恐れがある。その上、電解設備は複雑でメンテナ
ンスコストも高く、電解時に発生する塩素を処理する付
帯設備が必要となる等、工業的な製造手段としては問題
が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の
ような実情に鑑み、異種成分が混入せずに円滑かつ経済
的に高純度の三塩化チタン水溶液を工業生産する方法を
開発すべく多くの研究を重ねる過程で、古典的方法とさ
れているチタンと塩酸の反応を介して三塩化チタン水溶
液を生成させる方法において、チタン源として比表面積
の大きな粒状のスポンジチタンを選択し、チタン/塩酸
モル比を常に塩酸過剰に保って反応させると反応効率が
著しく改善され、目的とする高純度の三塩化チタン水溶
液を極めて効率よく製造し得ることを確認した。
【0006】本発明は上記の知見に基づいて完成された
もので、その目的とするところは、簡易な反応生成機構
により極めて効率よく高純度の三塩化チタン水溶液を安
定して工業生産するための製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による高純度三塩化チタン水溶液の製造方法
は、チタン(Ti)と塩酸(HCl) との反応により三塩化チタ
ン水溶液を製造する方法において、チタン源としてスポ
ンジチタンを使用すると共に、理論当量より常に過剰の
塩酸を用いて反応させることを構成上の特徴とする。
【0008】本発明の第1の要件は、チタン源としてス
ポンジチタンを選択使用するところにある。スポンジチ
タンは、市販の粒状品(JIS H2151相当品)を
使用することができるが、好ましくは粒径が5メッシュ
以下〔5メッシュの標準篩(JIS Z8801;目開き4000μ)
で篩別した際の篩下〕のものが用いられる。粒状スポン
ジチタンは、そのままでも金属チタン(インゴット、
板、棒、管等)に較べて比表面積が大きいため塩酸との
反応性は良好であるが、とくに粒径が5メッシュ以下の
場合に反応性が効果的に向上し、短時間内に反応が完結
して未反応のチタンが残存する現象が避けられる。これ
に対し、金属チタン粉末や水素化チタンをチタン源とし
た場合には、原料コストが高い割には反応効率が悪く工
業的に不利となる。なお、スポンジチタンは、鉄、マグ
ネシウムなどの異種金属不純物が可能な限り少ないもの
であることが望ましい。
【0009】一方、塩酸としては、市販の工業用塩酸の
ように鉄等の金属成分その他の不純物を含まない純塩酸
が適用される。塩酸の濃度は、20%以上の共沸塩酸あ
るいは37%以上の濃塩酸が好ましいが、この濃度範囲
に限定されるものではない。
【0010】スポンジチタンと塩酸との反応は、2Ti
+6HCl(aq)→2TiCl3(aq)+3H2 の反応式を
介して進行するが、本発明では前記反応系において理論
当量より常に塩酸過剰の状態で反応を継続させることが
第2の必須要件となる。具体的には、スポンジチタン(T
i)1g原子当り3.1モル以上、好ましくは3.5モル
以上の塩酸(HCl) の存在下に反応が維持される。前記の
反応により塩酸は理論当量づつ消費されるが、これをそ
のまま放置すると反応系内の塩酸分が消尽し、生成した
三塩化チタンが全溶液に対して過飽和となるため、固体
の三塩化チタンが析出する現象を生じる。常時、塩酸過
剰の条件を維持する反応操作は、このような固体析出現
象の発生を防ぎながら、安定した反応状態で効率よく三
塩化チタン水溶液の生成を進行させるための重要な条件
となる。
【0011】スポンジチタンと塩酸の反応操作は、図1
に模式的に示した簡易構造の製造装置を用いて行うこと
ができる。図1において、1は内部に加熱用のヒーター
2を内蔵し、外周を水冷ジャケット2で囲繞した反応槽
であり、該反応槽1の上部には、塩酸貯槽4およびスポ
ンジチタン貯槽5からの原料供給導管のほか、水、窒素
ガス等の供給ラインが接続され、排ガス(水素)を系外
に排出するルートとなるコンデンサー6が設置されてい
る。7は反応系の液温を測定するための温度計である。
反応槽1の材質は、塩酸や生成した三塩化チタン水溶液
によって侵蝕されたり、不純物の混入を防ぐため、内側
をグラスライニングまたは耐腐食性の樹脂(例えばテフ
ロン、FRP等)でライニング加工した鉄製容器、ポリ
プロピレン製容器、ガラス製容器等で構成することが好
ましく、槽内に撹拌装置を装備させることもできる。
【0012】本発明における反応操作は、(1) 反応に供
される全スポンジチタン量の1g原子に対して、3モル
以上の塩酸を反応槽1に装入し、次いで所定量のスポン
ジチタンを分別または一括して装入して反応させる、
(2) 前記(1) に相当する量比の塩酸とスポンジチタンを
同時に反応槽に装入して反応させる、(3) 前記(1) に相
当する量比の塩酸とスポンジチタンを少量に分別して反
応槽に装入しながら徐々に反応を進行させる、のいずれ
かの方法で行うことが好ましい。なお、いずれの方法を
採る場合にも、反応を通じて常に塩酸過剰になるように
配慮し、かつ一定になるように制御することが重要であ
る。また、一連の反応操作は、窒素やアルゴンなどの不
活性ガス雰囲気下で行なうことが好適である。
【0013】反応温度については任意であるが、室温か
ら使用する塩酸の沸点(110℃)の範囲内に調整され
る。好ましい反応温度は、50〜110℃の範囲であ
る。反応過程では副生的に水素ガスが発生するため、廃
ガス系統における十分な配慮が必要となる。通常は排ガ
スを水槽に通してバブリングさせるか、火気の恐れのな
い大気中の高所へ排出することにより希釈化して放出す
る。
【0014】反応の完結は水素の発生がなくなった時点
で確認されるが、反応の停止と三塩化チタン水溶液の濃
度調整を行うために反応槽内に水が添加される。使用す
る水には、金属成分等の不純物を除去したもの、例えば
蒸留水あるいはイオン交換樹脂等で処理した純水が好ま
しく用いられる。水の添加時期については特に制限はな
く、反応終了後に限らず、スポンジチタンと塩酸とを反
応槽に装入する際に同時に添加するか、予め反応槽に仕
込んで置くか、あるいは反応の継続中に徐々に添加する
か、のいずれの方法であってもよい。また、水の添加量
は目的とする三塩化チタン水溶液の濃度に応じて適宜に
増減されるが、通常は三塩化チタン水溶液中の三塩化チ
タン分の濃度が5〜60重量%になる範囲内において必
要量の水が添加される。
【0015】なお、上記の水の添加は反応の停止や希釈
を目的とするだけでなく、反応終了後、生成した三塩化
チタン水溶液を冷却したり、保存の際に生ずる固形物の
析出(三塩化チタンの過飽和による固体三塩化チタンが
析出、酸化による水酸化チタンの析出など)を防止する
などの付随的な効果をもたらす。
【0016】水を添加して反応を停止させたのち、未反
応のスポンジチタンの反応を完結させるために反応系を
加熱して熟成反応を促す操作を行うことが望ましい。こ
の際の加熱温度は30〜110℃、好ましくは70〜1
10℃であり、熟成時間は特に制限はないが、通常1分
〜10時間、好ましくは30分から5時間である。
【0017】製造された三塩化チタン水溶液は、保存に
あたり濃度を可及的に希薄として酸化や固形物の析出を
防止して高純度を保持し、使用に際しては蒸留等の処理
により水分を除去して所望の濃度に調整される。
【0018】
【作用】本発明に係る高純度三塩化チタン水溶液の製造
方法は、チタン源にスポンジチタンを用い、理論当量よ
り常に塩酸過剰の条件下にチタンと塩酸を反応させる点
に特徴がある。チタン源として選択したスポンジチタン
は、組織構造的にポーラスであるため高い比表面積を備
えており、この高比表面組織が塩酸との効率的な反応を
進行させるために有効に機能する。また、スポンジチタ
ンは金属チタンや水素化チタンに比べてコストが低廉で
あるから、工業的生産において経済的な有利性をもたら
す。塩酸過剰による反応の進行は、反応系に固体三塩化
チタンが析出する現象を阻止し、常に安定な状態で短時
間内に円滑に反応を完了させる機能を営む。さらに、反
応段階を通じて三塩化チタン水溶液に異種の不純物が混
入することはないから、固形物を含まない高純度の三塩
化チタン水溶液として製造することができる。
【0019】上記の機能が相乗的に作用して、従来、工
業的製造技術としては注目されていなかったチタンと塩
酸との簡易な反応法によって極めて反応効率よく、かつ
安価に高品位の高純度三塩化チタン水溶液を工業生産す
ることが可能となる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、本実施例に
限定されるものではない。
【0021】実施例 図1に示した製造装置を用い、反応槽1(ポリプロピレ
ン製、容量200l) にスポンジチタン貯槽5から粒度5〜
20メッシュ範囲の粒状スポンジチタン1kgおよび塩酸
貯槽4から38%純塩酸6.5リットルをそれぞれ投入
(チタン1g原子当たりの塩酸量;3.9モル)し、反
応系を80℃に加熱昇温しながら30分反応を行った。
ついで、上記と同量のスポンジチタンおよび塩酸を投入
し、反応槽の温度を70〜80℃に保持しながら30分
反応を行い、その後この操作を16回反復した。投入し
たスポンジチタンの合計量は18kg、塩酸の合計量は1
17リットルであった。反応完了後、反応槽にイオン交
換樹脂で不純物を除去した純水60リットルを投入し、
100℃に加熱して1時間熟成反応を行い、赤紫色の三
塩化チタン水溶液を得た。得られた三塩化チタン水溶液
を分析したところ、TiCl3 として26.4重量%を
含み、不純物であるFe、NaおよびMgは各10ppm
以下であった。したがって、三塩化チタンの反応収率が
高く、水溶液は極めて高純度を有していることが確認さ
れた。
【0022】比較例 実施例と同じ反応槽に、先ず5〜20メッシュ範囲の粒
状スポンジチタン18kgを投入し、次に38%純塩酸2
0リッターを投入(チタン1g原子当たりの塩酸量;
0.7モル)し、80℃に加熱昇温し30分反応させ
た。その後、徐々に塩酸を追加して添加したが、反応途
中でスポンジチタン表面に固体の三塩化チタンが析出す
るのが認められたので、その時点で反応を終了した。反
応槽から液体部分を採取し、分析したところTiC13
5.3重量%であった。
【0023】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば入手が容
易で比較的安価なスポンジチタンをチタン源とし、理論
当量よりも過剰の塩酸の存在下に両者を反応させること
により、極めて効率よく、高純度の三塩化チタン水溶液
を製造することが可能となる。そのうえ、製造装置およ
びプロセスは簡易であり、得られる三塩化チタン水溶液
の濃度も任意に調製し得るから、巾広い用途に適応でき
る高純度三塩化チタン水溶液の工業的な製造技術として
有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いられる製造装置の一例を模
式的に示した説明図である。
【符号の説明】
1 反応槽 2 ヒーター 3 水冷ジャケット 4 塩酸貯槽 5 スポンジチタン貯槽 6 コンデンサー

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン(Ti)と塩酸(HCl) との反応により
    三塩化チタン水溶液を製造する方法において、チタン源
    としてスポンジチタンを使用すると共に、理論当量より
    常に過剰の塩酸を用いて反応させることを特徴とする高
    純度三塩化チタン水溶液の製造方法。
  2. 【請求項2】 スポンジチタンと反応させる塩酸(HCl)
    の使用量が、チタン1g原子当り3.1モル以上である
    請求項1記載の高純度三塩化チタン水溶液の製造方法。
JP03934295A 1995-02-03 1995-02-03 高純度三塩化チタン水溶液の製造方法 Expired - Lifetime JP3566774B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012255188A (ja) * 2011-06-08 2012-12-27 Sumitomo Electric Ind Ltd 三塩化チタン溶液の製造方法、三塩化チタン溶液、および三塩化チタン溶液の保存方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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