JPH08196292A - 酵素によるN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法 - Google Patents

酵素によるN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法

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JPH08196292A
JPH08196292A JP7007034A JP703495A JPH08196292A JP H08196292 A JPH08196292 A JP H08196292A JP 7007034 A JP7007034 A JP 7007034A JP 703495 A JP703495 A JP 703495A JP H08196292 A JPH08196292 A JP H08196292A
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Shigeaki Irino
滋哲 入野
Shinichiro Nakamura
伸一郎 中村
Kiyotaka Oyama
清孝 小山
Peter Jan Leonard Quaedflieg
ヤン レオナルド クオデフリーグ ピーター
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Abstract

(57)【要約】 【目的】原料の使用量が少なく、循環流も少なく、有機
溶媒やアミンも必要なく、高い転化率で濾過し得る生成
物が得られるN−ベンジルカルボキシル−α−L−アス
パルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造
方法を提供する。 【構成】L−フェニルアラニンメチルエステルとN−ベ
ンジルオキシカルボニル−アスパラギン酸との酵素によ
るカップリング反応によるN−ベンジルカルボキシル−
α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエ
ステルの製造方法において、等モル又は実質的に等モル
のL−フェニルアラニンメチルエステルとN−ベンジル
オキシカルボニル−アスパラギン酸を使用し中性プロテ
アーゼの作用下で、当初のpHが4.5〜6.0で、3
〜25重量%のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又
はアンモニウム塩の存在下でカップリング反応を実施す
ることを特徴とするN−ベンジルカルボキシル−α−L
−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は酵素によるL−フェニルア
ラニンメチルエステルとN−ベンジルオキシカルボニル
−L−アスパラギン酸とのカップリング反応により、水
性溶媒中で沈殿物として、高い転化率でN−ベンジルオ
キシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェニル
アラニンメチルエステルを製造する方法に関するもので
ある。
【0002】N−保護−α−L−アスパルチル−L−フ
ェニルアラニンメチルエステル、例えば特にN−ベンジ
ルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェ
ニルアラニンメチルエステルは、蔗糖の約200倍の甘
味があり、サッカリンやチクロの様な強力甘味料の様な
苦味の後味もない強力甘味料“アスパルテーム”の重要
な前駆体である。甘味料アスパルテームはソフトドリン
ク、お菓子、卓上甘味料、薬品等の様な製品に広い範囲
で使用される。
【0003】
【従来の技術】アスパルテームの製造法としては、種々
の方法が知られている。化学的製造方法に加えて、酵素
による製造方法もあり、それは酵素が構造的選択的およ
び位置選択的に起こるという特異性によるものである。
N−保護−アスパラギン酸、特にN−ベンジルオキシカ
ルボニル−アスパラギン酸(以後、Z−Aspと略記す
る。)とL−(又はDL−)フェニルアラニンメチルエ
ステル又はそれから誘導される例えば塩酸塩の様な酸塩
(以後、PMとして略記する。)との酵素によるL,L
カップリング反応は、N−保護のアスパルテーム前駆体
の合成法として、これまで、十分に研究され、記述され
てきた。このアスパルテーム製造法の総説が、“キラリ
ティ− イン ケミストリー”(発行所:John W
iley& SonsLtd, 11章、p.237〜
247(1992)に掲載された。
【0004】原則として、6〜7.5のpHで、中性プ
ロテアーゼ、特に、サーモリシンの様な金属プロテアー
ゼの存在下で実施される当酵素によるカップリング反応
は、平衡が支配的な反応である。その様な酵素によるカ
ップリング反応の高い転化率を達成するため、先行文献
によれば特別な方法が必要である。例えば、US−41
65311には、反応混合物中に、N−保護アスパルテ
ーム、特にN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−ア
スパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(以
後、Z−APMと略記する。)を、D又はL−フェニル
アラニンメチルエステルとの付加化合物として晶析させ
て、カップリング平衡反応を右にシフトすることを利用
している。そのようなアスパルテームの前駆体の付加化
合物も、以後、Z−APM・D−PM又はZ−APM・
L−PMと各々略記する。その先行文献によれば、望ま
しいその付加化合物を製造するためには、高い転化率す
なわちZ−Aspに対して60%以上、好ましくは80
%以上を得るために、Z−AspとL−PMのカップリ
ング反応において、Z−Aspに対して少なくとも2倍
モルのL−PM、又は、少なくともD−PMの1当量の
存在下でカップリング反応を実施することが好ましい。
実際、この酵素によるカップリング反応は通常Z−As
pに対するPMのモル比で、例えば、2.0〜2.5:
1で表現される。従って、その様な場合、望ましい化合
物が高い転化率で確かに得られるのであるが、それらの
方法には、多数の欠点を有する。
【0005】例えば、(a)その付加化合物は濾過する
のが比較的困難であり、最終的に求められるアスパルテ
ーム(以後、APMと略記する。)を得るための沈殿の
処理及び品質改良には、徹底的に洗浄しなければならな
いために、ほんの少量の不純物を含有するAPMを得る
のは、幾分困難である。
【0006】(b)過剰に存在する成分と、カップリン
グ生成物から遊離する非APM組成物の回収及び/又は
再利用が必要である。;カップリング反応がDL−PM
を用いて行われた場合、一般に、残存したD−PMは再
利用するために、DL−フェニルアラニンを経てラセミ
化しなければならない。従って、これらの方法は、工業
規模への適用が好ましくない。
【0007】WO−92/02617(出願番号:PC
T/US91/05415)は、水性溶媒中で、酢酸存
在下、pH=7で、Z−AspとL−PM・HClとが
実質上等量(モル比はおおよそ1.2:1)で酵素によ
るカップリング反応を記載していることに注目すべきで
ある。この場合、架橋法で固定化したプロテアーゼ酵素
結晶を使用しているが、転化率は高々約20%にしかす
ぎない。EP−A−0149594には水溶液中で、L
−PMに対するホルミル保護アスパラギン酸(F−As
p)のモル比が1:1での酵素によるカップリング反応
に対して、F−Aspの使用が記載されている。しかし
ながら、F−APM・L−PMの付加化合物の生成のた
め、F−Aspの転化率は、50%以下であり、反応後
の収率は非常に低い(F−APMを得るための精製後で
約12%である。)。
【0008】カップリング反応系に存在するそのエステ
ルは、ついでながら、化学的加水分解に対して比較的鋭
敏であることも注目すべきである。このように、PMは
加水分解によりフェニルアラニン(以後、Pheと略記
する。)を生成する;Z−APMは加水分解し、Z−保
護−アスパルチルフェニルアラニン(時々、Z−APと
略記する。)となる。この好ましくない副反応はpH≧
6又はpH≦4で特に起こり、そのpH値よりはずれれ
ばはずれる程、反応条件下でZ−APMの残留時間が長
くなればなるほど、その副反応が強くなる。
【0009】対応する量のD−PMの存在なしに、また
はカップリング平衡反応のずれをシフトする他の方法を
用いることなしに、Z−AspとL−PMが当量又は事
実上当量から出発する場合、Z−AspとL−PMの酵
素によるカップリング反応において、Z−Aspに対す
る計算値の50%以上の転化率は達成できないことが、
現在迄推定されてきた。水性溶媒中での酵素によるカッ
プリングに関しては、Zhou en Huang(I
ndian J.Chem.,32B,p.35〜39
(1993))が最近、固定化プロテアーゼを使用した
反応の最適条件でさえ、Z−Asp:PMの比が1:4
であることを述べている。この中で、固定化酵素を使用
した場合(例えば、Nakanishi et al,
Biotechnology, Vol.3,p.45
9〜464(1985)),多量の目的物が固定化に使
用した樹脂に吸着し、分離抽出により取り除かなければ
ならないことが記載されている。Z−AspとL−PM
の1:1の比でのNakanishi等により得られた
結果は、比較的低濃度(80mM)でせいぜい58%の
収率であり、従って工業的実施は不適当である。
【0010】カップリング平衡反応をシフトさせる別の
反応は、特に、(i)J.Org.Chem.Vol.
46,p.5241(1981)や、同様に特公昭60
−33840:固定化プロテアーゼと水と混和しない有
機溶媒を使用することが記載されているが、1:1のモ
ル比の場合、約20〜30%の転化率しか得られていな
い。又、(ii)固定化プロテアーゼと水に混和する有
機溶媒を使用する(GB−A−2250023)及びア
セトニトリルを使用する(EP−A−0272564)
場合、N−保護−AspとL−PMの比が10:1〜
1:10にすることが記載されているが、実施例では、
かなり過剰のL−PMのみしか示されておらず、理論比
または実質的に理論比である場合、低い転化率及び低い
収率しか得られないことが示されている。GB−A−2
250023の実施例から、N−保護Aspに対するL
−PMの比を高くすると高い収率が得られる(2:1で
約85%、1:1でたった約50%)ことが同様に理解
できる。その様な方法では、平衡反応のシフトは、沈殿
が生成することによっては達成することができず、カッ
プリング反応生成物が有機相に移行することにより達成
される。有機溶媒を使用すると、しばしば不可避の有機
溶媒ロスによるコスト上昇の面とは別に、この様な方法
のもう一つの欠点としては、アスパルテーム製造の高度
精製を行う間に、カップリング反応に使用する有機溶媒
を取り除くために特別の方法がとられなければならない
ことがある。例えば、アセトニトリル、ジメチルホルム
アミドの様な有機溶媒又はジ及びトリグリム(EP−A
−0278190参照)の様な物質を添加する場合(場
合に応じて、その中で反応を行うか、又はその存在中で
実施するか)、Z−Aspに対して高モル比のL−PM
(・HCL)を用いないと、一般的に低いZ−APMま
たは同様なものの収率しか得られない。
【0011】さらに、化学カップリング反応(N−保護
−無水アスパラギン酸、例えば、N−ホルミル誘導体、
及びL−Phe又はL−PMを原料とする。)におい
て、反応が化学量論的な又は実質化学量論的な比で起こ
ることは珍しくないことも注目すべきであるが、これら
の方法は水中での出発物質としてZ−Aspを使用す
る、酵素によるカップリング反応に関しては何にも開示
していない。
【0012】しかしながら、DE−A−3517361
が、酵素法カップリング反応において、反応原料Z−A
spとL−PMが実質的に等モル比でよいことを開示し
ており、注目されるが、付加物形成のために、(上記公
知文献によるL−PM又はD−PMが少なくとも等モル
が過剰にあることが必要な代わりに)少なくとも一個の
6炭化水素基が存在する有機アミノ化合物が少なくと
も等モル必要である。実際には、この様な方法は、AP
Mの製造に適さない。何故ならば、一方で生成した付加
化合物は酸分解により開裂し、アミンを遊離しなければ
ならず、他方、「プロセスにとって異物である」有機化
合物が導入されるが、このものは、プロセス中の循環液
及び濾液に存在し、APMの合成のために用いられた出
発原料と分離することが困難であるからである。
【0013】従って、単純で、効率的であり、好ましく
は化学量論的であり、高い転化率及び原料の使用量が少
なく、循環流が少なく、少なくとも当量のD−PM(又
はL−PMの追加当量)の必要もなく、カップリング反
応中に有機溶媒もアミンも必要のない、酵素によるZ−
AspとL−PMとのカップリング方法が望まれてい
る。
【0014】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上
記欠点を回避し、化学量論の又は実質的に化学量論の反
応原料を使用し、容易に濾過し得る生成物を得、高転化
率でのZ−Asp及びL−PMの酵素によるカップリン
グ反応の単純なプロセスを提供することにある。驚くべ
きことに、この目的は、等モル、又は実質等モルのZ−
AspとL−PMを使用し、酵素として、中性プロテア
ーゼの存在下で、初期のpHを4.5〜6.0にし、全
反応物質の3〜25重量%のアルカリ金属塩、アルカリ
土類金属塩又はアンモニウム塩の存在下でこの反応を行
うことにより達成される。反応速度と好ましくない加水
分解抑制と関係して、初期のpHを4.7〜5.5とし
て反応を行なうことが好ましい。
【0015】更に驚くべきことに、本発明に従って実施
する場合には、非常に都合のよいことに、出発物質(原
料)の濃度が相当高くてもカップリング反応を実施でき
ることも判った。従来の方法では、この様な高濃度で
ば、反応が進むにつれて、反応系の粘度が過度の状態に
まで上昇するため、製造プロセスとしては不可能である
ことが判っている。
【0016】特別な説明を加えなくても、本発明の有利
な結果は、異なるpH値及び塩濃度において、Z−AP
M及びZ−APM・PMの溶解度が異なることに起因す
ることが推察される。
【0017】本発明による方法では、アルカリ金属塩、
アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩を全反応液基準
で3〜25重量%含み、初期のpH=4.5〜6.01
である水性溶媒を用いて、化学量論比又は実質的に化学
量論比のZ−保護アスパラギン酸とL−フェニルアラニ
ンメチルエステルとを中性プロテアーゼにより酵素カッ
プリング反応を実施し、沈殿物が生成する。
【0018】本発明において、水性溶媒とは、例えば、
メタノールやアセトニトリルの様な有機溶媒を少量(約
30%まで)含有しても良い、均一な極性水溶液系の溶
媒をも意味する。
【0019】種々のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属
塩又はアンモニウム塩を本発明の方法に使用できる。特
に、カリウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マ
グネシウム及びアンンモニウムのハロゲン化物又は硫酸
塩、又はそれらの混合物が好ましい。ここで言うアンモ
ニウムとは、一つ又はそれ以上がC1〜3アルキル基と置
換しているアンモニウム化合物も含む。その様なアンモ
ニウム塩としては、例えば、トリエチル(又はメチル)
アミン塩化物やジエチル(又はメチル)アミン塩化物等
が挙げられる。本発明においては、3〜25重量%であ
るその含有量に関して、その塩の使用は、各々の溶解度
によっても決定される。アルカリ金属塩やアンモニウム
塩は一般に溶解度が大きく、好ましい。特に、塩化リチ
ウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウ
ム、硫酸カリウム、塩化アンモニウム及び/又は硫酸ア
ンモニウムが好ましい。
【0020】反応系の塩の含有量が大きければ大きい
程、収率に著しく影響を及ぼすことなく、反応がより速
くなる。しかしながら、その塩の含有量が大きいと、す
ぐに系の粘度値が著しく上昇し、そして/または1つ又
はそれ以上の出発物質及び/又は塩自体の溶解限界を超
えてしまい、得られた沈殿が当該塩により不必要に汚染
され、反応の収率が低くなる。塩の含有量が25%を超
えると、系の粘度により、反応の実施が実質上不可能と
なる。反応系の塩の含量を低くすればする程、必要な反
応時間が長くなり、加水分解、特に、L−PMの加水分
解が増大する。塩の含有量が3%より低くなると、塩の
存在は全く反応に効果が無くなる。低い塩濃度では、カ
ップリング生成物の溶解度に好ましくない影響もある。
付加生成物(Z−APM・L−PM)が早く沈殿する場
合、当の特別な条件下での反応進行中、平衡は、その生
成物の全部又は一部がZ−APM沈殿物へ自動的にシフ
トするために、この沈殿は本発明の反応の妨げにならな
い。a)系の粘度、b)出発物質の溶解度と最終目的物
の沈殿生成及びc)反応時間の点から最も好ましい条件
から、塩の好ましい含有量は、10〜18%である。こ
のことは、下文で、その系に必要な力学的条件に関する
議論の中でより詳細に議論する。
【0021】一般に酵素によるカップリング反応は、原
則として10〜60℃の範囲で実施される。温度が低く
なると、カップリング反応もL−PMおよびZ−APM
の加水分解の様な副反応も遅くなる。温度が高くなる
と、酵素の失活が速くなる。従って、当業者は、Z−A
PMの転化率及び酵素の寿命から、最良の結果を得るた
めに、温度を何度にすべきかを容易に決定することが出
来る。
【0022】本発明の酵素によるカップリング反応は、
中性プロテアーゼを用いて実施される。この中性プロテ
アーゼは、Z−AspとL−PMからZ−APMを合成
するのに用いることのできる蛋白質加水分解活性をもつ
酵素を意味し、同様に同等もしくは増強された活性をも
つ変異体も意味する。例としては、Bacillust
hermoproteolyticusから製造される
サーモリシンの様な金属プロテアーゼや他のプロテアー
ゼ、特に、Bacillus stearotherm
ophilusBacillus amyloliq
uefaciesBacillus cereus
ような他のBacillus属やコラゲナーゼの様が含
まれる。一般的に、これらの酵素は、pH=6〜8の範
囲で酵素活性が最大となるが、本発明のカップリング反
応においては、初期のpHが4.5〜6.0の範囲、特
に、4.7〜5.5の範囲において、過度の酵素を追加
しなくても良い結果が得られる。一般に、少量のCa2+
イオンの存在は酵素の安定化及び作用に有利な効果があ
ることも注目すべきである。
【0023】本発明で良い結果を与える、(初期のpH
値として表現される)pHの範囲は酵素によるカップリ
ング反応の開始での水溶液反応系でのpH値として、理
解すべきであり、本発明のカップリング反応中、原則と
して、最初にpHの値が少し低下し、その後、反応の進
行とともにpH値が大きくなる。その低下及び増加の
間、その結果に不利な効果なしに前述のpHの限度を超
える。しかしながら、カップリング反応の間は、特にこ
のような反応の後半では、pH値は6.2未満、特に
5.7未満にするのが好ましい。
【0024】初期のpH値が4.5以下になると、酵素
活性が低くなり、転化率および収率が減少する。初期の
pH値が6.0を超えると、もはやこの条件ではZ−A
PMに変換されず、Z−APM・L−PMの生成と同様
に好ましくないエステルの加水分解の増加のため、転化
率及び収率もまた低下する。ついでに言えば、これらの
pHの限界値は使用する酵素により少し変化する。例え
ば、低いpHで活性である変異酵素を使用すれば、例え
ば3.5〜4.0の様なpH値も可能となる。反応の終
了時、即ち、最終転化率が得られる時点では、酵素の活
性は、原則として、殆ど変化しないかほとんど変わら
ず、酵素の再使用が可能である。結果として、−特に溶
解した酵素を使用する場合−、沈殿物の分離後、その酵
素を酵素のカップリング反応に再使用することを勧め
る。そうする場合、水性溶媒の組成を、反応の初期組成
になるまで微調整することが必要となる。このようにし
て、同じ酵素量で数回繰り返して使用することが可能で
あり、酵素の初期活性が若干低下すれば、必要であれ
ば、新しい酵素を添加し、好ましい転化率が、目的に合
致する時間内に達成される。
【0025】本発明での“Z−”とは、例えば、ベンジ
ル基の環を一つまたはそれ以上のアルキル基、アルコキ
シ基、アシル基またはハロゲン基で置換したベンジルオ
キシカルボニル化合物の様な極性を有するいかなる保護
基をも意味する。また、本発明のL−フェニルアラニン
メチルエステル(L−PM)とは、例えば、その塩酸塩
(L−PM/HCl)の様なその酸塩をも意味する。本
発明のベンジルオキシカルボニルアスパラギン酸(Z−
Asp)とは、例えば、二ナトリウム塩(Z−Asp・
2Na)の様なその塩も意味すると理解すべきである。
明らかにL−PMの代わりにその塩を及び/又はZ−A
spの代わりにその塩を使用する場合、そのpHを調整
するために、化学薬品の量を調節する必要がある。
【0026】本発明での化学量論比又は実質化学量論比
は、Z−Asp:L−PMの比が1:0.7〜0.7:
1の範囲の比を意味する。特に、1:0.8〜1:1の
範囲のモル比を使用するのが好ましい。Z−Aspを若
干過剰にすれば、転化率及び収率が良くなる。1:1条
件では、一方または両方の未反応の原料の必要な循環が
最小となる。
【0027】本発明の方法によれば、その沈殿は先行技
術で得られるZ−APM・(D/L)−PM付加化合物
とは化学組成と結晶の性質及び濾過性の両方の面から異
なる。得られる結晶はより大きく、濾過速度は従って大
きく、結果として不純物が少ししか付着しないか、又は
残存する水分に少ししか残存しないため、その生成物の
精製が容易となる。
【0028】本発明者は、そのカップリング反応を実施
する際に、系を流動させるための装置又は方法におい
て、望むならば多くの形態が可能であることを見出だし
た。そのカップリング反応は、その反応を妨げないガラ
ス製、ステンレス製等で作られたいかなる種類の容器や
カラムにおいて実施することが可能である。カラムは、
特に支持酵素などの固定化酵素を使用する場合に好適で
ある。その装置の寸法は、広範囲に変えることが出来
る。その反応は、例えば試験管、ビーカーから10m3
のスケールの範囲で実施出来る。
【0029】また、バッチ方式反応から連続式反応まで
選択することも可能である。本発明の方法を(半)連続
操作で実施する場合、最初の反応液の転化率が、少なく
とも約60%に達した時点から、沈殿物の連続分離を開
始することが好ましく、それ以後、沈殿物の分離に見合
った量の限度において、さらに原料を実質的に化学量論
比で添加することも容易にできる。
【0030】本発明の転化は、反応系に付加される何等
の力学的作用のない状態、いわゆる静置状態で良好に進
行する。従って、その時選択された反応器は撹拌機又は
反応液を撹拌以外で流動化させる手段を備える必要がな
い。反応系を例えば機械的撹拌や反応容器の振動によ
り、連続的に、又は間欠的に流動させれば、素晴らしい
結果が達成される。撹拌や振動という用語には、当業者
にとって思い当たるすべての具体例が含まれる。
【0031】この様にして、撹拌の目的にいかなるタイ
プの撹拌機も使用される。しかしながら、撹拌速度を最
適にし、粘度の変化に調節されるように、可変速式撹拌
機の使用が好ましい。しかしながら、時として撹拌速度
の影響が小さいこともある。反応容器中の内容物を外部
ポンプで循環することも、撹拌の一種と見なされる。ポ
ンプの速度と反応容器の寸法により、反応系の混合度が
決定される。振動を使用する場合は、反応が比較的小規
模、1000リットル迄の規模で実施される場合に好ま
しいことは自明である。本発明の実施例においては、
“振動法”を使用すれば非常に高い転化率が達成され
る。非常に好ましい方法として、転化率が20〜60
%、特に好ましくは30〜50%になる迄は静置状態で
反応を実施し、その後は、所望の転化率が達成される
迄、撹拌条件下で反応を実施する方法がある。これらの
力学的方法の全ての可能な組み合わせも本発明の範疇に
入る。
【0032】カップリング反応に使用される酵素の量は
それほど重要ではないが、高い転換率(60%以上、好
ましくは80%以上)に達する迄の反応時間が150時
間を超えない程度の量の酵素が通常使用される。一般
に、全反応混合液の重量割合で0.08〜1.5%、特
に好ましくは0.15〜0.75%の当該酵素量(酵素
活性を有する蛋白質、いわゆる活性蛋白質として理解さ
れる)は、もしその全酵素量を購入した(乾燥)粗酵
素、即ち、活性蛋白及び塩の様な他の補助剤として同様
な他の蛋白の総量で換算した場合、ここで言うパーセン
トとは、原則として約0.5〜10%であり、好ましく
は1〜5%に相当する。その酵素はしばしば粗酵素とし
て使用され、それ自体商業的にも入手できる。通常、そ
の粗酵素に含まれる活性蛋白は、粗酵素の約15%であ
る。
【0033】本発明の方法において、酵素はこの目的に
適したいかなる形態、即ち、溶解した状態及び固定化酵
素の状態で使用が可能である。特にその酵素自体の再使
用と同様に、得られる沈殿物の分離や、その沈殿物のそ
の後の精製時に利点を有するので、(反応溶媒に粗酵素
を溶解して得られた)溶解酵素を使用するのが好まし
い。既述の様に、変異導入酵素の使用も可能である。酵
素量として上文に記した割合は、変異導入酵素を使用す
る場合、使用する酵素の活性により変化する。
【0034】原料であるZ−Asp及びL−PMの濃度
は同様に広い範囲で変えられ、特に、初期の反応混合液
中でのそれらの物質の溶解度により決定される。しかし
ながら、少量の未溶解原料があったとしても、反応中に
溶液に溶解するので、反応の妨げにならない。従来の反
応法では、反応中に過剰の原料に起因する生成反応の停
止及び粘度の上昇により、約200〜700mMの原料
モル濃度以上で反応を実施することが不可能である;本
発明は、実際に1200mM迄の高濃度の原料モル濃度
でさえ良い転化率を達成できる方法を供し、従って、高
カップリング生成物濃度もまた供される。反応容積当た
りの生成量が大きくすることが可能となるため、本発明
は別の利点を有する。
【0035】本発明を以下の実施例及び比較例により、
具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等
限定されるものでない。
【0036】最初に、実施例で与えられる反応混合物の
組成(初期状態での、モル濃度及び重量%)は、正確に
求められる使用量と調製された反応混合物の重量及び容
積を基に計算されたものである。転化率(と同時に反応
終了時で起こっているL−PMの加水分解に関しての結
果)は、いわゆる逆相高速液体クロマトグラフィー(逆
相HPLC)により、257nmの紫外線分光検知器を
用いて、Nucleosil C18を充填したカラム
で、pH=3の多重勾配溶出システム(水/アセトニト
リル/トリエチルアミン燐酸塩)を使用して定量した。
反応混合物から取り出したサンプルは、酵素反応を停止
するために、そのたびごとに直ちにエタノール溶液に溶
解し、(溶離液の連続的液流に自動的注入により)分析
する前に、低温で保存した。以下の実施例に記載された
酵素の濃度や酵素の初期活性は、各々使用した酵素を基
にしてそのたびごとに計算された。明記したL−PMの
加水分解値は反応終了時に測定し、最初に存在したL−
PMの総量に対して、1時間当たりの平均的加水分解パ
ーセントで表現されている。
【0037】実施例1 L−PM・HCl(4.01g;18.6mmol)
を、水(20.57g)にZ−Asp・二ナトリウム塩
(7.28g;23.4mmol)を加えた溶液と撹拌
機付100mlのビーカーで室温において混合した。そ
の後、その混合液を2.59gの塩化ナトリウム及び
0.17gのCaCl2・2H2Oと撹拌しながら混合
し、3Nの塩酸を添加して、pHを5.0に設定した。
残存している清浄な溶液を、2.98gのサーモライシ
ン(大和化成社製粉末;約15%のサーモリシン蛋白質
及び70%の塩化ナトリウムを含有する。)と混合し
た。この様にして、以下に示す構成からなる反応混合液
が得られた。
【0038】全重量:39.7g 全容量:33.1ml [Z−Asp]0 :707mM(L−PMに対して26
%過剰) [L−PM]0 :562mM [NaCl] :14.5% [enzyme]:7.5%(粗酵素) pH :5.0 反応混合液の約2.0mlを、各々15本の試験管に直
ちに移し、その後、振動機(New Brunswic
k Scientific社製、Gyratory水浴
振動機、G76D型)に連結されたホルダーに浮かせ
て、40℃のウォターバスに同時に設置した。その振動
機は1分間に200回転するようにセットされた。ある
時間経過した後、反応の進行度を決定するために、一本
の試験管をウォターバスから取り出した。最後に、反応
を停止するために約15mlのメタノールを添加した
後、その試験管を約5℃に冷却し、その組成を逆相HP
LCで分析した。酵素の初期活性値は、32nmol・
min-1mg-1−粗酵素であった。加えて、約30分間
後に最初の沈殿が存在し、最終転化率が2.5時間の反
応後には、L−PMを基準にして87%に達することが
確認された。それ以降、反応を続けても転化率は全く増
加しなかった。2.5時間の反応後、L−Pheの生成
は全く確認できなかった。従って、この条件下では、L
−PMの加水分解は起こらない。
【0039】実施例2 L−PM・HCl(3.34g;15.5mmol)
と、水(14.9g)にZ−Asp(4.96g;1
8.6mmol)を加えた溶液に22%の水酸化ナトリ
ウム(6.72g:37.0mmolのNaOH)を撹
拌機付100mlのビーカーで室温において混合し、p
H=5.0である透明な溶液が得られた。その後、その
混合液を、3.26gの塩化ナトリウム、0.12gの
CaCl2・2H2O及び1.4gのサーモライシン(天
野製薬社製粉末;約15%のサーモリシン蛋白質及び3
4%の塩化ナトリウムを含有する。)と混合した。この
様にして、以下に示す構成からなる反応混合液が得られ
た。
【0040】全重量:34.7g 全容量:29.3ml [Z−Asp]0 :634mM(L−PMに対して20
%過剰) [L−PM]0 :529mM [NaCl] :13.5% [enzyme]:4.0% pH :5.0 反応混合液を直ちに試験管に分けて、さらに実施例1と
同様の方法で処理した。酵素の初期活性値は、27nm
ol・min-1mg-1−粗酵素であった。約120分間
後に最初の沈殿を確認することができ、最終転化率が9
時間の反応後にはL−PM基準で80%に達した。それ
以降、反応を続けても転化率は全く増加しなかった。9
時間の反応後、1時間当り0.16%のL−PMの加水
分解に相当する少量のL−Phe(0.21mmol)
が生成していた。
【0041】実施例3 原料の量を以下の様にする以外は、実施例2と同様な実
施例を繰り返した。
【0042】(L−PM・HCl(4.70g;21.
8mmol);Z−Asp(5.28g;19.8mm
ol);水(13.68g);22%NaOH(6.3
6g;35.0mmol NaOH);NaCl(2.
95g);CaCl2・2H2O(0.13g);サーモ
リシン(実施例2と同様の天野製薬社製粉末、1.50
g)。
【0043】この様にして、以下に示す構成からなる反
応混合液が得られた。
【0044】全重量:34.6g 全容量:29.0ml [Z−Asp]0 :683mM [L−PM]0 :752mM(Z−Aspに対して1
0%過剰) [NaCl] :13.7% [enzyme]:4.3% pH :5.0 反応混合液を直ちに試験管に分けて、実施例1と同様の
方法で処理した。酵素の初期活性値は、32nmol・
min-1mg-1−粗酵素であった。約60分間後に最初
の沈殿が確認できた。最終転化率が13.5時間の反応
後にはL−PM基準で57%に達した。それ以降、反応
を続けると、転化率はさらにいくらか増加した。13.
5時間の反応後は、1時間当り0.1%のL−PMの加
水分解に相当する少量のL−Phe(0.21mmo
l)が確認された。
【0045】実施例4 原料の量を以下の様にする以外は、実施例2と同様な実
施例を繰り返した。
【0046】(L−PM・HCl(4.31g;20.
0mmol);Z−Asp(5.87g;22.0mm
ol);水(14.53g);22%NaOH(6.8
9g;37.9mmol NaOH);NaCl(3.
20g);CaCl2・2H2O(0.12g);サーモ
リシン(実施例2と同様の天野製薬社製粉末、1.42
g)。
【0047】この様にして、以下に示す構成からなる反
応混合液が得られた。
【0048】全重量:36.3g 全容量:30.8ml [Z−Asp]0 :714mM(L−PMに対して10
%過剰) [L−PM]0 :649mM [NaCl] :13.4% [enzyme]:3.9% pH :5.0 反応混合液を直ちに試験管に分けて、さらに実施例1と
同様の方法で処理した。酵素の初期活性値は、27.9
nmol・min-1mg-1−粗酵素であった。最終転化
率が15時間の反応後にはL−PM基準で83%に達し
た。それ以降、反応を続けても転化率は全く増加しなか
った。15時間の反応後は、1時間当り0.2%のL−
PMの加水分解に相当する少量のL−Pheが確認され
た。
【0049】実施例5 水(13.58g),22%NaOH(7.30g;4
0.1mmol);NaCl(4.60g)を使用する
以外は、実施例4と同様な実施例を繰り返した。この様
にして、以下に示す構成からなる反応混合液が得られ
た。
【0050】全重量:37.2g 全容量:31.2ml [Z−Asp]0 :706mM(L−PMに対して10
%過剰) [L−PM]0 :641mM [NaCl] :17.2% [enzyme]:3.8% pH :5.0 反応混合液を直ちに試験管に分けて、さらに実施例1と
同様の方法で処理した。酵素の初期活性値は、42.0
nmol・min-1mg-1−粗酵素であった。最終転化
率は、4時間の反応後にはL−PM基準で77%に達し
た。それ以降、反応を続けても転化率は全く増加しなか
った。4時間の反応後は、1時間当り0.16%のL−
PMの加水分解に相当する少量のL−Phe(0.23
mmol)が確認された。
【0051】実施例6 水(15.78g),22%NaOH(6.82g;3
7.5mmol);NaCl(2.00g)を使用する
以外は、実施例4と同様な実施例を繰り返した。
【0052】この様にして、以下に示す構成からなる反
応混合液が得られた。
【0053】全重量:36.3g 全容量:30.8ml [Z−Asp]0 :714mM(L−PMに対して10
%過剰) [L−PM]0 :649mM [NaCl] :10.0% [enzyme]:3.9% pH :5.0 反応混合液を直ちに試験管に分けて、さらに実施例1と
同様の方法で処理した。酵素の初期活性値は、18.0
nmol・min-1mg-1−粗酵素であった。最終転化
率が16時間の反応後にはL−PM基準で84%に達し
た。それ以降、反応を続けても転化率は全く増加しなか
った。16時間の反応後は、1時間当り0.3%のL−
PMの加水分解に相当する少量のL−Phe(1.1m
mol)の生成が確認された。
【0054】実施例7 原料の量を以下の様にする以外は、実施例2と同様な実
施例を繰り返し、流動の効果を明確にするため、種々の
振動速度、及び静置条件下で実験を実施した。(L−P
M・HCl(12.93g;60.0mmol);Z−
Asp(18.33g;68.6mmol);水(4
3.86g);22%NaOH(19.99g;10
9.9mmol NaOH);NaCl(9.75
g);CaCl2・2H2O(0.42g);サーモリシ
ン(実施例2と同様の天野製薬社製粉末、4.26
g)。
【0055】この様にして、以下に示す構成からなる反
応混合物が得られた。
【0056】全重量:109.5g 全容量:91.2ml [Z−Asp]0 :752mM(L−PMに対して14
%過剰) [L−PM]0 :658mM [NaCl] :13.4% [enzyme]:3.9% pH :5.0 得られた反応混合液の内の15mlを、40℃のウォタ
ーバス中に設置し、振動機に連結されたホルダーに浮か
せた3.3cmの直径を有するガラス製反応器に移し
た。振動機の回転速度を1分間に150回転にセットし
た。
【0057】同時に、別の15mlの反応混合液を、回
転速度を1分間に250回転にセットした別の振動機で
同様に処理した。更に、別の10mlの反応混合物を、
40℃での静置状態で貯蔵した。
【0058】ある時間が経過した後、反応の進行度を決
定するため容器からサンプルを取り出した。沈殿がない
か、または非常に少量の沈殿が存在している最初のサン
プルはピペットで取り出した。沈殿生成により反応混合
液の粘度が上がっているその後のサンプルは、スパチュ
ラにより取り出した。最後のサンプルは約15mlのメ
タノールで希釈して取り出し、すべてのサンプルは約5
℃に冷却してから、逆相HPLCでそれらの組成を分析
した。酵素の初期活性値は、150回転の場合、37.
8nmol・min-1mg-1−粗酵素であり、250回
転の場合、30.0nmol・min-1mg-1−粗酵素
であり、静置条件下では、21.0nmol・min-1
mg-1−粗酵素であった。その3つの条件下で、150
回転の場合、8時間以内、他の場合、12時間以内に、
転化率はL−PM基準で約89%となり、それ以降、反
応を続けても転化率は全く増加しなかった。これらの3
つの条件下において、L−PMの加水分解は1時間当り
0.2%の量であった。振動を行った状態で4時間後に
存在する沈殿の化学組成を測定し、少なくとも98%が
Z−APMであることを確認した。
【0059】実施例8 実施例7で準備した初期の反応混合物の別の50ml
を、40℃に保温してあり、撹拌羽根が底の僅か上部と
液面の僅か下部に位置している可変撹拌機が付いた直径
約5cmのガラス製反応容器に移した。撹拌機の回転速
度は60回転/分に設定した。ある時間が経過後に、実
施例7と同様に、各々ピペットまたはスパチュラでサン
プルを取り出し、分析した。酵素の初期活性値は、2
0.1nmol・min-1mg-1−粗酵素であった。2
5時間反応が経過した後、転化率はL−PM基準で67
%に達し、それ以降、反応を続けると転化率は依然とし
てさらに増加した。25時間後、1時間当り0.07%
のL−PMの加水分解に相当する少量のL−Phe
(0.55mmol)の生成が確認された。4時間後お
よび20時間後に存在する沈殿の化学組成を測定した。
4時間後では、98%がZ−APM・L−PMであり、
2%がZ−APMであったが、20時間後では、これら
の割合は、67%がZ−APM・L−PMであり、33
%がZ−APMに変化した。
【0060】実施例9 主にKCl又はNa2SO4を使用して、13.4%の塩
含量を達成した溶液を調製し、他の組成が同じである実
施例7及び実施例8と同様な原料を準備した。混合液A
には12.1%のKClと1.3%のNaClが含まれ
ている。混合液Bには、8.9%のNa2SO4と4.5
%NaClが含まれてる。カップリング反応を実施した
ところ、実施例7及び実施例8の結果と同様の結果が確
認された。
【0061】実施例10 実施例7と同様の方法で、新たに反応混合液を準備し
た。その反応混合液の50mlを40℃に保温した実施
例8と同様のガラス製反応容器に直ちに移した。しかし
ながら、5時間後まで静置条件下にしておき、その後撹
拌を開始し、回転速度を60回転/分にセットした。
【0062】ある時間が経過後に、実施例7と同様にサ
ンプルを取り出し、分析した。酵素の初期活性値は、2
0.6nmol・min-1mg-1−粗酵素であった。5
時間経過後、転化率はL−PM基準で43%であった。
反応時間が20時間経過した後、転化率はL−PM基準
で86%に達し、それ以降、反応を続けると転化率は依
然として増加した。25時間後、1時間当り0.17%
のL−PMの加水分解に相当する少量のL−Phe
(1.1mmol)が確認された。
【0063】実施例11 以下の組成を有する反応混合液(全重量:339.96
g;全容積:275.6ml)を調製した。
【0064】[Z−Asp]0 :745mM(L−PM
に対して14%過剰) [L−PM]0 :653mM [NaCl] :13.0% [enzyme]:3.8%(粗酵素:天野製薬製サー
モリシン) pH :5.3 反応混合液を、実施例8と同様の方法で、90mlの3
つの溶液(A,B,C)に分割した。溶液AのpHはカ
ップリング反応の間に調製しなかった。溶液BのpHは
(pHが低下する場合、)NaOHを添加し、(pHが
増大する場合、)HClを添加して、pHを約5.3に
保った。溶液Cの場合、(pHが5.3を越える場
合、)HClを添加してpHを約5.3に保つようにし
た。
【0065】溶液A及び溶液Bのカップリング反応にお
いては、30分後に、すでに結晶が生じていた、溶液C
の場合は、約1時間かかった。溶液A(酵素の初期活性
が33.0nmol・min-1mg-1−粗酵素)におい
て、転化率は24時間後に約70%となり、それ以降は
反応を続けてもこの転化率は増加しなかった。最終のp
Hが6.16であり、PMの加水分解は、1時間当り約
0.1%であった。溶液Bおよび溶液C(同じ酵素の初
期活性を有する。)においては、溶液Bでは60時間後
には、転化率は95%であり、溶液Cでは45時間後に
は、転化率は96%であり、PMの加水分解は1時間当
り0.07%であった。
【0066】比較例1 原料の量を以下の様にし、pHを6.0にする以外は、
実施例2と同様な実施例を繰り返した。:(L−PM・
HCl(4.04g;18.8mmol);Z−Asp
(5.34g;20.0mmol);水(44.35
g);22%NaOH(7.56g;41.6mmol
NaOH);NaCl(8.08g);CaCl2
2H2O(0.12g);サーモリシン(実施例2と同
様の天野製薬社製粉末、1.42g)。
【0067】この様にして、以下に示す構成からなる透
明な反応混合液が得られた。
【0068】全重量:70.1g 全容量:61.7ml [Z−Asp]0 :324mM(L−PMに対して6%
過剰) [L−PM]0 :305mM [NaCl] :13.4% [enzyme]:1.0% pH :6.0 反応混合液を試験管に分けて、さらに実施例1と同様の
方法で処理した。酵素の初期活性値は、61nmol・
min-1mg-1−粗酵素であった。最終転化率が3時間
の反応後にはL−PM基準で46%に達した。それ以
降、反応を続けても転化率は全く増加しなかった。3時
間反応後、初期の18mmolを基にして、1時間当り
約1.15%のL−PMの加水分解に相当する0.65
mmolのL−Pheが生成したことを確認した。
【0069】
【発明の効果】本発明のN−ベンジルカルボキシル−α
−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエス
テルの製造方法によれば、化学量論的又は実質的に化学
量論的反応原料の反応物を採用することにより、原料の
使用量が少なく、循環流も少なく、有機溶媒やアミンも
必要なく、高い転化率で濾過し得る生成物が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ピーター ヤン レオナルド クオデフリ ーグ オランダ国 ゲーレン ジェー ケー 6162、 スロートマーカーショフ 8

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】L−フェニルアラニンメチルエステルとN
    −ベンジルオキシカルボニル−L−アスパラギン酸との
    酵素法によるカップリング反応により、水性溶媒中で沈
    殿物として、N−ベンジルオキシカルボニル−α−L−
    アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルを
    製造する方法において、等モル又は実質等モルのL−フ
    ェニルアラニンメチルエステルとN−ベンジルオキシカ
    ルボニル−L−アスパラギン酸を使用して、酵素として
    中性プロテアーゼの作用下で、当初のpHが4.5〜
    6.0の範囲で、全反応物質基準で3〜25重量%のア
    ルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩
    の存在下でカップリング反応を実施することを特徴とす
    る高い転化率での酵素によるN−ベンジルオキシカルボ
    ニル−α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメ
    チルエステルの製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の製造方法において、当初
    のpHが4.7〜5.5の範囲であることを特徴とする
    N−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル
    −L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の製造方法に
    おいて、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアン
    モニウム塩が、全反応物質の10〜18重量%存在する
    ことを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニル−α−
    L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステ
    ルの製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の
    製造方法において、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩
    が、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫
    酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化アンモニウム、及び
    /又は硫酸アンモニウムであることを特徴とするN−ベ
    ンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−
    フェニルアラニンメチルエステルの製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の
    製造方法において、全反応物質の0.08〜1.5重量
    %、特に0.15〜0.75重量%の酵素の存在下で、
    カップリング反応を実施することを特徴とするN−ベン
    ジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フ
    ェニルアラニンメチルエステルの製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の
    製造方法において、溶解した酵素を使用することを特徴
    とするN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパ
    ルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方
    法。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれかの請求項に記載の
    製造方法において、N−ベンジルオキシカルボニル−L
    −アスパラギン酸とL−フェニルアラニンメチルエステ
    ルとのモル比が1:0.7〜0.7:1の範囲であるこ
    とを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニル−α−L
    −アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル
    の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項7に記載の製造方法において、N−
    ベンジルオキシカルボニル−アスパラギン酸とL−フェ
    ニルアラニンメチルエステルとのモル比が1:0.8〜
    1:1の範囲であることを特徴とするN−ベンジルオキ
    シカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェニルア
    ラニンメチルエステルの製造方法。
  9. 【請求項9】請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の
    製造方法において、カップリング反応の水性反応系のp
    Hを、6.2以下、好ましくは5.7以下に維持するこ
    とを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニル−α−L
    −アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル
    の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかの請求項に記載
    の製造方法において、少なくともカップリング反応時で
    は、反応混合液を流動させる条件下でカップリング反応
    を行うことを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニル
    −α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチル
    エステルの製造方法。
  11. 【請求項11】請求項1〜10のいずれかの請求項に記
    載の製造方法において、少なくともカップリング反応時
    では、反応混合液を振動により流動させることを特徴と
    するN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパル
    チル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方
    法。
  12. 【請求項12】請求項1〜11のいずれかの請求項に記
    載の製造方法において、当初の反応混合物の少なくとも
    60%転化した時点で反応生成物である沈殿を連続的に
    抜き出しながら、その実質的に同じ比率で反応原料を更
    に添加することにより、カップリング反応を半連続的に
    実施することを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニ
    ル−α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチ
    ルエステルの製造方法。
  13. 【請求項13】請求項1〜12のいずれかの請求項に記
    載の製造方法において、反応初期の転化率が約20〜6
    0%に達するまでは、カップリング反応を静置条件下で
    実施し、それ以降のカップリング反応の間、少なくとも
    時には、反応混合液を流動下に保って、反応を実施する
    ことを特徴とするN−ベンジルオキシカルボニル−α−
    L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステ
    ルの製造方法。
  14. 【請求項14】明細書及び実施例に実質的に記載された
    N−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル
    −L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法。
  15. 【請求項15】請求項1〜14のいずれかのN−ベンジ
    ルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェ
    ニルアラニンメチルエステルの製造方法により得られる
    N−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル
    −L−フェニルアラニンメチルエステル。
JP7007034A 1995-01-20 1995-01-20 酵素によるN−ベンジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法 Pending JPH08196292A (ja)

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