JPH08193218A - 抗菌性皮膜を有するステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
抗菌性皮膜を有するステンレス鋼の製造方法Info
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- JPH08193218A JPH08193218A JP2129195A JP2129195A JPH08193218A JP H08193218 A JPH08193218 A JP H08193218A JP 2129195 A JP2129195 A JP 2129195A JP 2129195 A JP2129195 A JP 2129195A JP H08193218 A JPH08193218 A JP H08193218A
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Abstract
ス又は90体積%以上のH2 とN2 との混合ガス中で、
0.1〜1重量%のTiを含むステンレス鋼素材又は
0.1〜1重量%のTi及び0.3〜4重量%のCuを
含むステンレス鋼素材を850〜1150℃の温度に熱
処理し、素材表面にTiO2 としてのTiを20原子%
以上を含む皮膜を形成させる。熱処理が施されたステン
レス鋼を更に0.5〜5重量%のフッ酸及び5〜20重
量%の硝酸を含む混酸溶液に浸漬するとき、表面皮膜中
のTiO2 が濃化され、抗菌性が向上する。 【効果】 光触媒として作用するTiO2 の機能を利用
し、半永久的に抗菌作用を呈する材料が得られる。
Description
って抗菌性が付与されたステンレス鋼の製造方法に関す
る。
食性を重視してステンレス鋼,クロム,ニッケル,亜鉛
等のめっき材が使用されてきた。しかし、厨房,浴室,
医療設備,食品工場等では、耐食性という材料面のみで
なく、雑菌の繁殖や悪臭,ぬめり等の環境問題や病原菌
の繁殖による人体,動物等への悪影響がクローズアップ
されてきた。また、クロム,ニッケル,亜鉛等のめっき
材では、腐食によって見栄えや機能が劣化する問題もあ
る。雑菌の繁殖を抑制した材料として、抗菌剤を配合し
た樹脂を被覆することによってオーステナイト系ステン
レス鋼に抗菌性を付与することが特開平5−22820
2号公報,特開平6−10191号公報等で紹介されて
いる。また、抗菌剤を配合した樹脂の被覆を、めっきと
併用することも試みられている。
した樹脂でステンレス鋼を被覆したものでは、ステンレ
ス鋼特有のメタリックな外観が損なわれる。また、使用
中に塗膜から抗菌剤が溶出するため、抗菌作用が低下す
る。しかも、抗菌剤が枯渇すると、残った塗膜が却って
雑菌の栄養源となり、繁殖を促進させる場合もある。抗
菌剤成分と金属の複合めっきをする場合、一般的にめっ
き層が剥離し易くなるため、加工性が低下する。その結
果、皮膜の溶解,摩耗,欠損等によって見栄えが損なわ
れると共に、抗菌作用が低下することがあった。しか
も、何れの方法も抗菌剤の使用を前提としている。その
ため、溶出した抗菌剤が人体や環境に悪影響を及ぼす虞
れがある。この点では、抗菌性成分の被覆に代えて、ス
テンレス鋼自体に抗菌性を付与することが望まれてい
る。本発明は、このような要求に応えるべく案出された
ものであり、抗菌作用のあるTiO2 含有皮膜をステン
レス鋼表面に形成することにより、ステンレス鋼自体に
抗菌性をもたせ、ステンレス鋼特有のきれいな外観や加
工性等の諸特性を損なうことなく、長期にわたり優れた
抗菌性を呈し、人体及び環境に安全なステンレス鋼を提
供することを目的とする。
の目的を達成するため、露点が+10〜−65℃に制御
されたH2 ガス又は90体積%以上のH2 とN2 との混
合ガス中で、0.1〜1重量%のTiを含むステンレス
鋼素材を850〜1150℃の温度に熱処理し、素材表
面にTiO2 を含む皮膜を形成させることを特徴とす
る。ステンレス鋼素材には、Tiの外に0.3〜4重量
%のCuを含むものも使用される。熱処理が施されたス
テンレス鋼を0.5〜5重量%のフッ酸及び5〜20重
量%の硝酸を含む混酸溶液に浸漬するとき、表面皮膜中
のTiO2 が濃化し、抗菌作用が一層高められる。
TiO2 は、太陽光,蛍光灯の光,紫外線等を照射する
と酸素を活性酸素に変え、病原菌に含まれている酵素を
分解し、細菌を死滅させる光触媒としての作用をもって
いることが知られている。TiO2 の抗菌作用は、光が
照射されたときに発現するものであるが、他の抗菌剤と
異なり半永久的に持続する。この作用に着目し、衛生機
器,食品加工工場等での使用が検討されている。本発明
者等も、殺菌や悪臭の原因となる硫黄や窒素化合物等を
分解させるTiO2 の機能に着目し、ステンレス鋼の表
面皮膜中にTiO2 を含ませる方法について詳細な検討
を行ってきた。その結果、0.1重量%以上のTiを含
むステンレス鋼を素材とし、最終焼鈍の条件を制御する
とき、抗菌性に有効なTiO2 を含む皮膜が形成される
ことを見い出した。しかし、1.0重量%を超えるTi
添加量では、表面欠陥等の原因となるクラスター状介在
物が形成され易くなる。最終焼鈍としては、BA焼鈍が
有効であり、焼鈍雰囲気の組成及び焼鈍温度の制御、更
にはBA焼鈍後に混酸浸漬するとき、表面皮膜中にTi
O2 が含まれ濃化される。このようにして、耐食性を損
なうことなく、TiO2 の殺菌機能及び悪臭分解機能が
活用される。
させるためには、本発明者等の実験によるとき、皮膜中
のTiO2 濃度を20原子%以上にする必要があること
が判った。このようなTiO2 濃度の皮膜を形成させる
条件として、本発明者等は多数の実験から焼鈍雰囲気の
露点が+10〜−65℃の範囲にあること、焼鈍温度が
850〜1150℃の範囲にあること、及び焼鈍雰囲気
のH2 濃度が90体積%以上であることが必要であるこ
とを解明した。焼鈍条件がこの範囲にないと、皮膜中の
TiO2 濃度が低下して十分な抗菌作用が付与できず、
或いは過度に厚く皮膜が成長し、TiO2 濃度の低い皮
膜になる欠点がみられる。TiO2 は、光が照射される
とき初めて殺菌機能及び悪臭分解機能を発揮する。そこ
で、光照射がない条件下で、或いは照射量が少ない条件
下で使用される場合には、ステンレス鋼に含ませたCu
によって殺菌作用を補完する。Cuは、TiO2 の抗菌
作用を補完するばかりでなく、TiO2 との共存によっ
て抗菌作用を著しく改善する。この点では、Cu含有量
を0.3〜4重量%の範囲に規制する必要がある。
量%,Al:0.014重量%及びNb:0.25重量
%を含むステンレス鋼A(SUS444鋼,ULCN,
18Cr−2Mo)とTi:0.06重量%,Si:
0.46重量%,Al:0.053重量%及びNb:
0.43重量%を含むステンレス鋼B(SUS444
鋼,ULCN 18Cr−2Mo)を使用した。各ステ
ンレス鋼の板に、露点−49〜−53℃の100%H2
ガス及び75%H2 −N2 混合ガス中で980℃に加熱
する熱処理を施した。ステンレス鋼表面に形成された皮
膜について、X線電子分光分析装置(ESCA)によっ
て皮膜組成を分析した。分析結果をCを除いた原子%で
整理し、金属状態の金属及び酸化物又は窒化物状態の金
属の総金属分及び酸素の合計を100%とした。図1
は、このようにして求められたステンレス鋼Aの元素分
布を深さ方向に示す。また、Cl- イオン濃度1000
ppm及び80℃の条件でJISG0577に準拠して
孔食電位を測定することにより、耐食性を調査した。
テンレス鋼Aでは、100%H2 ガス雰囲気中での熱処
理によってTi換算で20原子%以上のTiO2 を含む
表面皮膜が形成されている。しかし、75体積%のH2
及び25体積%のN2 を含む混合ガス中ではTiNが増
加し、TiO2 が減少している。孔食電位をみると、7
5体積%のH2 及び25体積%のN2 を含む混合ガス雰
囲気で熱処理した材料は、耐孔食性が著しく低下してい
る。この熱処理材の断面組織を観察したところ、表層近
傍において素地の粒界が部分的に鋭敏化していることが
判った。これに対し、100%H2 ガス雰囲気中で熱処
理したものでは、耐食性を低下させる鋭敏化現象はみら
れなかった。このことから、耐食性の低下は、Crの窒
化に伴って粒界近傍にCr欠乏層が生成したことに原因
があるものと考えられる。
は、100%H2 ガスが望ましく、N2 との混合ガスを
使用する場合でもH2 濃度を90体積%以上に維持する
必要があるといえる。なお、ステンレス鋼Bでは、10
0%H2 ガス雰囲気中で熱処理したものであるが、表面
皮膜中のTi(TiO2 )が10原子%に達しておら
ず、十分な抗菌作用が発揮されない。この点、素材のス
テンレス鋼に添加されるTiは、0.1重量%以上の添
加量が必要である。Ti添加量は、皮膜形成の面からす
ると多いほど良いが、過剰のTi添加はクラスター状の
介在物を形成し、表面傷の原因となる。この点から、T
i含有量の上限が1.0重量%に規制される。熱処理に
よってステンレス鋼の表面に形成された皮膜は、表1に
示すように、TiO2 の外にSiO2 ,Cr2 O3 ,A
l2 O3 等の酸化物を含んでいる。SiO2 は、TiO
2 よりも表層側に生成する傾向があるため、TiO2 の
抗菌作用をより有効に利用するためにはSiO2 を化学
的に溶解することが効果的である。たとえば、55℃の
1.0%HF+6%HNO3 混酸溶液に熱処理材を浸漬
したものでは、表面皮膜中のSiO2 含有量が少なくな
っており、TiO2 濃度が上昇している。また、酸浸漬
によって孔食電位も高くなっている。なお、SiO2 の
化学溶解は、HF濃度と関連しており、有効なSiO2
溶解を得るためには0.5%以上のHF濃度にする必要
があった。
れる。たとえば、ステンレス鋼Aを100%H2 ガス雰
囲気中で焼鈍したとき、表2に示すように露点及び焼鈍
温度に応じて皮膜の組成が変化した。
雰囲気中で850〜1150℃の温度に加熱する熱処理
を施すとき、20原子%以上のTi(TiO2 )を含む
皮膜が形成されていることが判る。焼鈍温度が850℃
に達しないとCr2 O3 を主体とする酸化物が形成さ
れ、1150℃を超える焼鈍温度ではAl2 O3 を主成
分とする酸化物が形成され、何れの場合も十分な抗菌作
用をもった皮膜にならない。また、露点が−68℃と低
い雰囲気では、熱処理温度1000℃でBA焼鈍しても
Al2 O3 主体の皮膜が形成されている。この点、本発
明においては、所定量のTiO2 を含む皮膜が形成され
るようにの露点の下限を−65℃に設定した。露点が高
い場合には、Fe2 O3 やMnO等の酸化物が形成さ
れ、ステンレス鋼表面が着色される。しかし、これら酸
化物は酸浸漬によって除去される。酸浸漬は、皮膜中に
TiO2 を濃化させることで有効であり、またステンレ
ス鋼特有の鈍い光沢を発現させる。しかし、過度に高い
露点は、形成される酸化物層を簡単な酸浸漬では除去で
きない程度に厚くする。この点から、熱処理後に酸浸漬
を施す場合の露点の上限を+10℃に設定した。なお、
酸浸漬を施さない場合の露点の上限は、熱処理での着色
を避けるために−35℃に設定する。
いて、抗菌性を調査した。本発明例1 0.16重量%のTiを含むステンレス鋼を100体積
%H2 雰囲気中で980℃に加熱する熱処理を施した。
ステンレス鋼表面に形成された皮膜のTiO2としての
Ti濃度は、23原子%であった。本発明例2 熱処理された本発明例1の試験片を、更に酸浸漬した。
酸浸漬によって最外層のSiO2 濃縮部が除去され、T
i濃度27原子%の表面層が露出した。本発明例3 Cu:2.12重量%,Ti:0.46重量%,Si:
0.26重量%,Ni:9.23重量%,Cr:17.
35重量%及びN:0.012重量%を含むオーステナ
イト系ステンレス鋼Cに、93体積%H2 雰囲気中で1
040℃の熱処理を施した。ステンレス鋼表面に形成さ
れた皮膜のTi濃度は、21原子%であった。比較例 ステンレス鋼Bに100%H2 雰囲気中で1040℃の
熱処理を施した。比較例の試験片表面には、Ti濃度が
4原子%の皮膜が形成されていた。抗菌性試験 予め普通ブイヨン培地で35℃,16〜20時間振盪培
養した病原性大腸菌 (Esherichia coli)の培養液を滅菌
リン酸緩衝液で20,000倍に希釈した菌液を調製し
た。この菌液を試験片表面に1ml滴下し、約8,00
0ルックスのハロゲンランプで光照射した。光照射6時
間継続後、生菌数をコロニー法によって測定した。な
お、抗菌性試験は、室温条件下で行った。
(TiO2 )濃度が10原子%未満のものでは6時間後
の生菌数はほとんど変化していない、一方、皮膜中のT
iO2濃度が20原子%以上のものでは、生菌数に明ら
かな減少がみられた。特に、Cuを添加した本発明例3
の試験片では、光照射した場合に生菌数が大幅に減少し
ており、TiO2 とCu添加に相乗効果あることが確認
された。また、本発明例3では、光照射しなかった場合
でも生菌数が減少しており、Cu添加ステンレス鋼を素
材として使用することによりTiO2 皮膜の欠点が補わ
れていることが判る。
は、殺菌機能及び悪臭分解機能を半永久的に示すTiO
2 を含む皮膜をステンレス鋼表面に形成することによ
り、雑菌が発生し易い場所や雑菌の発生が好ましくない
場所に使用される材料として好適な耐食性及び抗菌性を
もつステンレス鋼が得られる。また、コストも従来鋼に
比較して同程度又はわずかなコストアップ程度に止ま
り、比較的安価に製造できる。しかも、ステンレス鋼自
体に抗菌作用を付与しているので、加工後に抗菌処理を
する必要がなく、ユーザの経済的負担が最小限に押さえ
られる。このようにして得られたステンレス鋼は、キッ
チンに取り付けるシンク,ごみだめ,水栓金具,ボウ
ル,コップ等の厨房機器・器具,浴室の手摺,便器,洗
濯槽,上水器容器等の衛生器具,滅菌装置,手洗器,パ
ット等の医療用機械,器具,病院手術室,無菌室等の内
装器材や建材,パン,麺類を初めとする各種食品の製造
・加工機器,器材,容器等,各種キャビネット,ドア,
ノブ,時計ケース,時計バンド,動物や魚類の飼育機や
飼育槽,循環式の給湯システム,貯水タンク,プール,
工場や一般家庭から廃水される下水処理設備等、抗菌性
が要求される用途に使用される。また、水処理,大気処
理,土壌処理等の分野においても、有害物や悪臭物に対
して半永久的に分解機能及び殺菌機能を呈する材料とし
て使用することもできる。
表面の元素濃度分布
Claims (3)
- 【請求項1】 露点が+10〜−65℃に制御されたH
2 ガス又は90体積%以上のH2 とN2 との混合ガス中
で、0.1〜1重量%のTiを含むステンレス鋼素材を
850〜1150℃の温度に熱処理し、素材表面にTi
O2 としてのTiを20%以上を含む皮膜を形成させる
ことを特徴とする抗菌性皮膜を有するステンレス鋼の製
造方法。 - 【請求項2】 露点が+10〜−65℃に制御されたH
2 ガス又は90体積%以上のH2 とN2 との混合ガス中
で、0.1〜1重量%のTi及び0.3〜4重量%のC
uを含むステンレス鋼を850〜1150℃の温度に熱
処理し、素材表面にTiO2 としてのTiを20原子%
以上を含む皮膜を形成させることを特徴とする抗菌性皮
膜を有するステンレス鋼の製造方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の熱処理が施された
ステンレス鋼を、0.5〜5重量%のフッ酸及び5〜2
0重量%の硝酸を含む混酸溶液に浸漬し、表面皮膜中の
TiO2 を濃化させることを特徴とする抗菌性皮膜を有
するステンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP02129195A JP3675868B2 (ja) | 1995-01-13 | 1995-01-13 | 抗菌性皮膜を有するステンレス鋼の製造方法 |
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JPH08193218A true JPH08193218A (ja) | 1996-07-30 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001292902A (ja) * | 2000-04-14 | 2001-10-23 | Takuro Ishibashi | 二酸化チタン光触媒による水質浄化ポット |
JP2010202923A (ja) * | 2009-03-02 | 2010-09-16 | Nisshin Steel Co Ltd | 意匠性を改善した軟磁性ステンレス鋼およびその製造方法 |
CN114214618A (zh) * | 2021-12-04 | 2022-03-22 | 深圳市波尔顿科技有限公司 | 一种高强韧抗菌刀具用不锈钢及其制备方法 |
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1995
- 1995-01-13 JP JP02129195A patent/JP3675868B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN114214618A (zh) * | 2021-12-04 | 2022-03-22 | 深圳市波尔顿科技有限公司 | 一种高强韧抗菌刀具用不锈钢及其制备方法 |
CN114214618B (zh) * | 2021-12-04 | 2023-08-08 | 深圳市波尔顿科技有限公司 | 一种高强韧抗菌刀具用不锈钢及其制备方法 |
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