JPH10121222A - 光触媒作用を呈するステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents
光触媒作用を呈するステンレス鋼板及びその製造方法Info
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- JPH10121222A JPH10121222A JP27199396A JP27199396A JPH10121222A JP H10121222 A JPH10121222 A JP H10121222A JP 27199396 A JP27199396 A JP 27199396A JP 27199396 A JP27199396 A JP 27199396A JP H10121222 A JPH10121222 A JP H10121222A
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- oxide layer
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 抗菌作用,脱臭,油分解機能を呈するステン
レス鋼板を得る。 【解決手段】 このステンレス鋼板は、0.2〜3重量
%のTiを含むステンレス鋼を基材とし、その表面に酸
化チタンを含む厚み0.1〜20μmの酸化物層が形成
されており、酸化チタンとしてのTi濃度が3原子%以
上で且つ酸化チタン中のアナターゼの含有比率が1体積
%以上である。基材は、更に0.2〜4%のCu,Mo
及びMnの1種又は2種以上を含むことができる。酸化
物層を構成する酸化チタン中のTiとOとの原子比率を
Ti:O=1:2−X(ただし、X=0.01〜0.
4)の範囲に制御するとき、触媒活性が向上する。酸化
性雰囲気中で400〜1200℃にステンレス鋼板を加
熱する熱処理を施し、酸化チタンを含む酸化物層を厚く
成長させた後、水素を含む還元性雰囲気中で400〜1
000℃で熱処理することにより製造される。
レス鋼板を得る。 【解決手段】 このステンレス鋼板は、0.2〜3重量
%のTiを含むステンレス鋼を基材とし、その表面に酸
化チタンを含む厚み0.1〜20μmの酸化物層が形成
されており、酸化チタンとしてのTi濃度が3原子%以
上で且つ酸化チタン中のアナターゼの含有比率が1体積
%以上である。基材は、更に0.2〜4%のCu,Mo
及びMnの1種又は2種以上を含むことができる。酸化
物層を構成する酸化チタン中のTiとOとの原子比率を
Ti:O=1:2−X(ただし、X=0.01〜0.
4)の範囲に制御するとき、触媒活性が向上する。酸化
性雰囲気中で400〜1200℃にステンレス鋼板を加
熱する熱処理を施し、酸化チタンを含む酸化物層を厚く
成長させた後、水素を含む還元性雰囲気中で400〜1
000℃で熱処理することにより製造される。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた抗菌性を呈し、
脱臭,油分解等の有機物を分解する光触媒作用も有する
ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
脱臭,油分解等の有機物を分解する光触媒作用も有する
ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光触媒作用をもつ材料としてはチタン酸
化物の微粒子粉末が知られており、それらをコーティン
グしたタイル等が開発されている。ステンレス鋼をベー
スにした材料では、従来からの主な用途である厨房機器
に関連して抗菌性が着目されており、特開平5−228
202号公報,特開平6−10191号公報で開示され
ているようにオーステナイト系ステンレス鋼の表面に抗
菌剤を配合した樹脂を被覆することにより抗菌性を付与
していた。しかし、抗菌剤を配合した樹脂をステンレス
鋼に被覆する場合、ステンレス鋼特有の美麗な金属外観
が損なわれる。また、使用中に塗膜からの抗菌剤溶出に
伴って抗菌作用が低下するばかりでなく、抗菌剤が枯渇
した後に残った塗膜が却って栄養分となって雑菌の繁殖
を促進させることにもなる。このようなことから、抗菌
性成分含有塗膜に替えて、ステンレス鋼自体に抗菌性を
付与することが望まれている。
化物の微粒子粉末が知られており、それらをコーティン
グしたタイル等が開発されている。ステンレス鋼をベー
スにした材料では、従来からの主な用途である厨房機器
に関連して抗菌性が着目されており、特開平5−228
202号公報,特開平6−10191号公報で開示され
ているようにオーステナイト系ステンレス鋼の表面に抗
菌剤を配合した樹脂を被覆することにより抗菌性を付与
していた。しかし、抗菌剤を配合した樹脂をステンレス
鋼に被覆する場合、ステンレス鋼特有の美麗な金属外観
が損なわれる。また、使用中に塗膜からの抗菌剤溶出に
伴って抗菌作用が低下するばかりでなく、抗菌剤が枯渇
した後に残った塗膜が却って栄養分となって雑菌の繁殖
を促進させることにもなる。このようなことから、抗菌
性成分含有塗膜に替えて、ステンレス鋼自体に抗菌性を
付与することが望まれている。
【0003】本発明者等は、この種の材料として特開平
8−193218号公報及び特開平8−193219号
公報でステンレス鋼自体に抗菌性を付与した鋼板及びそ
の製造方法を紹介した。特開平8−193218号公報
では、酸素ポテンシャルが低い還元性雰囲気でステンレ
ス鋼を熱処理し、酸素との親和力が強いTiを表面に濃
化させることによって抗菌性を発現させている。また、
特開平8−193219号公報では、還元性雰囲気中の
加熱によりTiN等としたTiを濃化した後、酸化性雰
囲気で酸化物に変化させることによって抗菌性を発現さ
せている。
8−193218号公報及び特開平8−193219号
公報でステンレス鋼自体に抗菌性を付与した鋼板及びそ
の製造方法を紹介した。特開平8−193218号公報
では、酸素ポテンシャルが低い還元性雰囲気でステンレ
ス鋼を熱処理し、酸素との親和力が強いTiを表面に濃
化させることによって抗菌性を発現させている。また、
特開平8−193219号公報では、還元性雰囲気中の
加熱によりTiN等としたTiを濃化した後、酸化性雰
囲気で酸化物に変化させることによって抗菌性を発現さ
せている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】熱処理によって表面濃
化させたTiは、抗菌性には有効であるものの、脱臭,
油分解等の有機物を分解する光触媒反応に関しては十分
な作用を呈するものではなかった。すなわち、従来の光
反応触媒における超微粒子の使用や厚いコーティングに
みられるように、脱臭や油分解にはある程度の反応面積
が必要とされるが、単にTiを表面濃化させるだけでは
必要な反応面積が得られない。また、微生物自体が電位
上昇等の活性作用を有する抗菌性と異なり、有機物の分
解には表面の活性化が必要であるが、従来の熱処理では
必要な程度に活性化された表面が得られない。たとえ
ば、特開平8−193219号公報では、濃化したTi
を酸化性雰囲気で酸化物に変化させているため、厚みと
しては問題ないレベルの酸化物層が形成されるが、表面
の活性化が不十分である。他方、特開平8−19321
8号公報では、水素を含む還元性雰囲気中での加熱のた
め、酸化物層の厚みが不十分である。本発明は、このよ
うな問題を解消すべく案出されたものであり、酸化チタ
ンが濃化した一定量の厚みをもち且つ活性化された表層
部をステンレス鋼表面に形成することにより、ステンレ
ス鋼自体に光触媒作用をもたせ、加工性を損なうことな
く長期にわたって優れた光触媒作用を呈するステンレス
鋼板を提供することを目的とする。
化させたTiは、抗菌性には有効であるものの、脱臭,
油分解等の有機物を分解する光触媒反応に関しては十分
な作用を呈するものではなかった。すなわち、従来の光
反応触媒における超微粒子の使用や厚いコーティングに
みられるように、脱臭や油分解にはある程度の反応面積
が必要とされるが、単にTiを表面濃化させるだけでは
必要な反応面積が得られない。また、微生物自体が電位
上昇等の活性作用を有する抗菌性と異なり、有機物の分
解には表面の活性化が必要であるが、従来の熱処理では
必要な程度に活性化された表面が得られない。たとえ
ば、特開平8−193219号公報では、濃化したTi
を酸化性雰囲気で酸化物に変化させているため、厚みと
しては問題ないレベルの酸化物層が形成されるが、表面
の活性化が不十分である。他方、特開平8−19321
8号公報では、水素を含む還元性雰囲気中での加熱のた
め、酸化物層の厚みが不十分である。本発明は、このよ
うな問題を解消すべく案出されたものであり、酸化チタ
ンが濃化した一定量の厚みをもち且つ活性化された表層
部をステンレス鋼表面に形成することにより、ステンレ
ス鋼自体に光触媒作用をもたせ、加工性を損なうことな
く長期にわたって優れた光触媒作用を呈するステンレス
鋼板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のステンレス鋼板
は、その目的を達成するため、0.2〜3重量%のTi
を含むステンレス鋼基材の表面に酸化チタンを含む厚み
0.1〜20μmの酸化物層が形成されており、酸化チ
タンとしてのTi濃度が3原子%以上で、且つ酸化チタ
ン中のアナターゼの含有比率が1体積%以上であること
を特徴とする。ステンレス鋼基材は、更に0.2〜4重
量%のCu,Mo及びMnの1種又は2種以上を含むこ
とができる。酸化チタンを含む酸化物層は、0.5〜1
0μmの厚みをもつことが好ましい。また、酸化物層を
構成する酸化チタン中のTiとOとの原子比率をTi:
O=1:2−X(ただし、X=0.01〜0.4)の範
囲に制御するとき、触媒活性が向上する。酸化物層を構
成する酸化チタンは、不純物含有量を10原子%以下に
規制することが好ましい。このステンレス鋼板は、酸化
性雰囲気中で400〜1200℃に加熱する熱処理を施
し、酸化チタンを含む酸化物層を厚く成長させた後、水
素を含む還元性雰囲気中で400〜1000℃で熱処理
することにより製造される。酸化性雰囲気中で熱処理し
た後、酸性水溶液中で0.1A/dm2 以上の電流密度
で電解処理し、表面皮膜中の酸化チタンを濃化させる製
造方法もある。電解処理は、ステンレス鋼板を交互に陽
極及び陰極とする交番電解が効果的である。電解処理さ
れたステンレス鋼板は、更に水素を含む還元性雰囲気中
で熱処理することができる。
は、その目的を達成するため、0.2〜3重量%のTi
を含むステンレス鋼基材の表面に酸化チタンを含む厚み
0.1〜20μmの酸化物層が形成されており、酸化チ
タンとしてのTi濃度が3原子%以上で、且つ酸化チタ
ン中のアナターゼの含有比率が1体積%以上であること
を特徴とする。ステンレス鋼基材は、更に0.2〜4重
量%のCu,Mo及びMnの1種又は2種以上を含むこ
とができる。酸化チタンを含む酸化物層は、0.5〜1
0μmの厚みをもつことが好ましい。また、酸化物層を
構成する酸化チタン中のTiとOとの原子比率をTi:
O=1:2−X(ただし、X=0.01〜0.4)の範
囲に制御するとき、触媒活性が向上する。酸化物層を構
成する酸化チタンは、不純物含有量を10原子%以下に
規制することが好ましい。このステンレス鋼板は、酸化
性雰囲気中で400〜1200℃に加熱する熱処理を施
し、酸化チタンを含む酸化物層を厚く成長させた後、水
素を含む還元性雰囲気中で400〜1000℃で熱処理
することにより製造される。酸化性雰囲気中で熱処理し
た後、酸性水溶液中で0.1A/dm2 以上の電流密度
で電解処理し、表面皮膜中の酸化チタンを濃化させる製
造方法もある。電解処理は、ステンレス鋼板を交互に陽
極及び陰極とする交番電解が効果的である。電解処理さ
れたステンレス鋼板は、更に水素を含む還元性雰囲気中
で熱処理することができる。
【0006】
【作用】抗菌性を示す金属や酸化物のうち、酸化チタン
は、太陽光,蛍光灯,紫外線等の照射によって酸素を活
性酸素に変換し、病原菌に含まれる酵素を分解し、細菌
を死滅させる光触媒として作用する。この作用を活用
し、衛生機器,食品加工場等で酸化チタンの使用が検討
されている。酸化チタンの抗菌作用は、光が照射された
ときだけに発現されるものの、他の抗菌剤と異なり半永
久的に持続する。本発明者等は、殺菌,悪臭の元となる
硫黄,窒素化合物等に分解能を示す酸化チタンに着目
し、ステンレス鋼の表面皮膜中に酸化チタンを形成させ
る方法について種々の調査・研究をしてきた。その結
果、Tiを含むステンレス鋼を素材とし、最終焼鈍とし
て水素を含む還元性の雰囲気で焼鈍することが有効であ
り、焼鈍雰囲気の組成及び焼鈍温度を制御することによ
って抗菌性を呈する酸化チタン皮膜が形成されることを
見い出した。しかし、形成された皮膜は、薄く、脱臭,
油分解等の有機物分解作用には不十分であった。そこ
で、還元処理の前処理を種々検討したところ、酸化性雰
囲気で酸化物層を成長させた後で還元処理するとき、脱
臭,油分解等の有機物分解作用に十分な厚み及び活性状
態をもつ皮膜が成長することが判った。更に、焼鈍後、
硝酸等の酸性水溶液中で電解処理すると、表面皮膜中の
酸化チタンの濃化が進行し、光触媒活性が向上する。光
照射がないときの抗菌性は、適量のCu,Mo,Mn等
をステンレス鋼に添加することによって補完される。
は、太陽光,蛍光灯,紫外線等の照射によって酸素を活
性酸素に変換し、病原菌に含まれる酵素を分解し、細菌
を死滅させる光触媒として作用する。この作用を活用
し、衛生機器,食品加工場等で酸化チタンの使用が検討
されている。酸化チタンの抗菌作用は、光が照射された
ときだけに発現されるものの、他の抗菌剤と異なり半永
久的に持続する。本発明者等は、殺菌,悪臭の元となる
硫黄,窒素化合物等に分解能を示す酸化チタンに着目
し、ステンレス鋼の表面皮膜中に酸化チタンを形成させ
る方法について種々の調査・研究をしてきた。その結
果、Tiを含むステンレス鋼を素材とし、最終焼鈍とし
て水素を含む還元性の雰囲気で焼鈍することが有効であ
り、焼鈍雰囲気の組成及び焼鈍温度を制御することによ
って抗菌性を呈する酸化チタン皮膜が形成されることを
見い出した。しかし、形成された皮膜は、薄く、脱臭,
油分解等の有機物分解作用には不十分であった。そこ
で、還元処理の前処理を種々検討したところ、酸化性雰
囲気で酸化物層を成長させた後で還元処理するとき、脱
臭,油分解等の有機物分解作用に十分な厚み及び活性状
態をもつ皮膜が成長することが判った。更に、焼鈍後、
硝酸等の酸性水溶液中で電解処理すると、表面皮膜中の
酸化チタンの濃化が進行し、光触媒活性が向上する。光
照射がないときの抗菌性は、適量のCu,Mo,Mn等
をステンレス鋼に添加することによって補完される。
【0007】以下、本発明で規定した条件等を説明す
る。 基材のTi含有量:0.2〜3重量% 酸化物を形成して光触媒作用を発現するステンレス鋼に
おいては、必須の合金成分である。必要な光触媒作用を
得るためには、0.2重量%以上のTi含有が必要であ
る。しかし、3重量%を超える多量のTiが含まれる
と、熱処理中又は熱間加工中にLaves相等の金属間
化合物が生成し、製造が極めて困難になる。 基材のCu,Mo,Mn含有量:0.3〜4重量% 溶出によって抗菌作用を発現する合金成分であり、光照
射のない条件下でも酸化チタンの光触媒作用を補完する
作用を呈する。Mo及びMnは、脱臭作用に対しても効
果がある。更に、Moは耐食性改善効果をもち、Mnは
意匠性のある黒色性酸化物層を生成する。このような作
用は、0.3重量%以上の含有量で顕著になる。しか
し、4重量%を超える多量のCu,Mo又はMnが含ま
れると、熱間加工性が低下する。
る。 基材のTi含有量:0.2〜3重量% 酸化物を形成して光触媒作用を発現するステンレス鋼に
おいては、必須の合金成分である。必要な光触媒作用を
得るためには、0.2重量%以上のTi含有が必要であ
る。しかし、3重量%を超える多量のTiが含まれる
と、熱処理中又は熱間加工中にLaves相等の金属間
化合物が生成し、製造が極めて困難になる。 基材のCu,Mo,Mn含有量:0.3〜4重量% 溶出によって抗菌作用を発現する合金成分であり、光照
射のない条件下でも酸化チタンの光触媒作用を補完する
作用を呈する。Mo及びMnは、脱臭作用に対しても効
果がある。更に、Moは耐食性改善効果をもち、Mnは
意匠性のある黒色性酸化物層を生成する。このような作
用は、0.3重量%以上の含有量で顕著になる。しか
し、4重量%を超える多量のCu,Mo又はMnが含ま
れると、熱間加工性が低下する。
【0008】酸化物層の厚み:0.1〜20μm(好ま
しくは0.5〜10μm) 抗菌性に加え脱臭,油分解等の光触媒反応に必要な反応
面積を確保するためには、酸化物層を厚く成長させるこ
とが重要である。脱臭作用の発現には0.1μm以上,
油分解の発現には0.5μm以上の厚みが必要である。
しかし、酸化物層を10μm以上を超えて厚く成長させ
ても紫外線の照射効率が急激に低下し、20μmを超え
る厚みでは皮膜に割れが発生し易くなる。したがって、
酸化物層の厚みは、0.1〜20μm,好ましくは0.
5〜10μmの範囲に調整する。 酸化物層の酸化チタン含有量:Ti濃度として3原子%
以上 表面皮膜中の酸化チタンの反応面積を大きくするために
は、酸化物層の厚みに加え、酸化物に含まれる酸化チタ
ンの含有量も多くする必要がある。酸化チタン含有量が
Ti濃度として3原子%以上になると、有機物の効果的
な分解反応が促進される。
しくは0.5〜10μm) 抗菌性に加え脱臭,油分解等の光触媒反応に必要な反応
面積を確保するためには、酸化物層を厚く成長させるこ
とが重要である。脱臭作用の発現には0.1μm以上,
油分解の発現には0.5μm以上の厚みが必要である。
しかし、酸化物層を10μm以上を超えて厚く成長させ
ても紫外線の照射効率が急激に低下し、20μmを超え
る厚みでは皮膜に割れが発生し易くなる。したがって、
酸化物層の厚みは、0.1〜20μm,好ましくは0.
5〜10μmの範囲に調整する。 酸化物層の酸化チタン含有量:Ti濃度として3原子%
以上 表面皮膜中の酸化チタンの反応面積を大きくするために
は、酸化物層の厚みに加え、酸化物に含まれる酸化チタ
ンの含有量も多くする必要がある。酸化チタン含有量が
Ti濃度として3原子%以上になると、有機物の効果的
な分解反応が促進される。
【0009】酸化チタン中のアナターゼの含有比率:1
体積%以上 二酸化チタンには、水の分解反応に有効なルチル及び有
機物の分解反応に有効なアナターゼがある。脱臭や油分
解にはアナターゼが有効であるが、アナターゼは不安定
な物質であり、純粋なアナターゼを製造することは困難
である。しかし、脱臭,油分解の光触媒反応を確保する
上では、最低でも1体積%のアナターゼを含むことが必
要で、好ましくは50体積%以上の含有比率とする。 酸化チタン中のTiとOとの原子比率: Ti:O=1:2−X(X=0.01〜0.4) 酸化チタンを主体とする皮膜は、二酸化チタンにおける
酸素の化学量論的比率のズレに相当するX値を指標とし
て光触媒活性を表すことができる。X値が0.01以上
になると光触媒反応が促進される。しかし、X値が0.
4を超えると、二酸化チタンとは異なるTi2 O3 等の
化合物が生成する。
体積%以上 二酸化チタンには、水の分解反応に有効なルチル及び有
機物の分解反応に有効なアナターゼがある。脱臭や油分
解にはアナターゼが有効であるが、アナターゼは不安定
な物質であり、純粋なアナターゼを製造することは困難
である。しかし、脱臭,油分解の光触媒反応を確保する
上では、最低でも1体積%のアナターゼを含むことが必
要で、好ましくは50体積%以上の含有比率とする。 酸化チタン中のTiとOとの原子比率: Ti:O=1:2−X(X=0.01〜0.4) 酸化チタンを主体とする皮膜は、二酸化チタンにおける
酸素の化学量論的比率のズレに相当するX値を指標とし
て光触媒活性を表すことができる。X値が0.01以上
になると光触媒反応が促進される。しかし、X値が0.
4を超えると、二酸化チタンとは異なるTi2 O3 等の
化合物が生成する。
【0010】酸化チタン中に含まれる不純物:10原子
%以下 酸化チタンの光触媒反応の効率は、酸化物中に含まれる
不純物の割合に大きく影響される。たとえば、酸化チタ
ン中のTiがCr,Fe等に一部置換されると、光触媒
反応の効率が著しく低下する。しかし、熱処理等で表面
に酸化チタンを生成させる場合、純粋な酸化物の形成が
困難であるため、不純物は10原子%以下とした。 第一段の熱処理:酸化性雰囲気,400〜1200℃加
熱 酸化性雰囲気中での熱処理により、ステンレス鋼の表層
にTiが濃化する。Tiの濃化は、置換型原子の拡散速
度が大きくなる400℃以上の温度で熱処理することが
必要である。高温の熱処理は、Tiの濃化を迅速化する
ばかりでなく、生成する酸化物の純度を向上させること
にも効果的である。しかし、1200℃を超える高温の
熱処理では、材料が粗粒化し、また採用可能な実用的手
段も制約される。
%以下 酸化チタンの光触媒反応の効率は、酸化物中に含まれる
不純物の割合に大きく影響される。たとえば、酸化チタ
ン中のTiがCr,Fe等に一部置換されると、光触媒
反応の効率が著しく低下する。しかし、熱処理等で表面
に酸化チタンを生成させる場合、純粋な酸化物の形成が
困難であるため、不純物は10原子%以下とした。 第一段の熱処理:酸化性雰囲気,400〜1200℃加
熱 酸化性雰囲気中での熱処理により、ステンレス鋼の表層
にTiが濃化する。Tiの濃化は、置換型原子の拡散速
度が大きくなる400℃以上の温度で熱処理することが
必要である。高温の熱処理は、Tiの濃化を迅速化する
ばかりでなく、生成する酸化物の純度を向上させること
にも効果的である。しかし、1200℃を超える高温の
熱処理では、材料が粗粒化し、また採用可能な実用的手
段も制約される。
【0011】第二段の熱処理:還元性雰囲気,400〜
1000℃(好ましくは400〜800℃)加熱 ステンレス鋼の表層に濃化したTiの酸化物層は、水素
を含む還元性雰囲気中での熱処理によって活性化され、
光触媒として有効になる。すなわち、還元性雰囲気中で
の熱処理により酸化物中の一部の酸素が還元され、酸化
物が活性化される。この熱処理は、酸化性雰囲気中での
熱処理と同じ理由から下限が400℃に規制される。し
かし、必要以上の酸化物を還元することは好ましくない
ので、熱処理温度の上限を1000℃に設定する。なか
でも、ルチルの安定温度域である800℃以上を避けて
熱処理することが好ましい。 酸性水溶液中での電解処理:0.1A/dm2 以上の電
流密度 電解処理は、酸化物層に含まれている不要な酸化物を除
去して酸化チタンを濃化すると共に、表面を活性化する
作用も呈する。この点、発生ガスとして水素ガスが生じ
る酸性水溶液を使用し、被処理材がガス発生極も兼ねる
交番電解が好ましい。活性化作用は、0.1A/dm2
以上の電流密度で顕著になる。
1000℃(好ましくは400〜800℃)加熱 ステンレス鋼の表層に濃化したTiの酸化物層は、水素
を含む還元性雰囲気中での熱処理によって活性化され、
光触媒として有効になる。すなわち、還元性雰囲気中で
の熱処理により酸化物中の一部の酸素が還元され、酸化
物が活性化される。この熱処理は、酸化性雰囲気中での
熱処理と同じ理由から下限が400℃に規制される。し
かし、必要以上の酸化物を還元することは好ましくない
ので、熱処理温度の上限を1000℃に設定する。なか
でも、ルチルの安定温度域である800℃以上を避けて
熱処理することが好ましい。 酸性水溶液中での電解処理:0.1A/dm2 以上の電
流密度 電解処理は、酸化物層に含まれている不要な酸化物を除
去して酸化チタンを濃化すると共に、表面を活性化する
作用も呈する。この点、発生ガスとして水素ガスが生じ
る酸性水溶液を使用し、被処理材がガス発生極も兼ねる
交番電解が好ましい。活性化作用は、0.1A/dm2
以上の電流密度で顕著になる。
【0012】
実施例1:表1に示す組成をもつステンレス鋼を真空溶
解し、インゴットを製造した。このインゴットを熱間圧
延した後、焼鈍酸洗し、板厚0.7mmに冷間圧延し
た。表中、A〜Eは本発明で規定した範囲にある鋼で、
A〜Dはフェライト系ステンレス鋼,Eはオーステナイ
ト系ステンレス鋼である。A及びBはTi含有量が異な
り、C〜EはTiの外にCu,Mo,Mn等の合金成分
も含んでいる。a,bは比較鋼であり、aはTi含有量
が少ないフェライト系ステンレス鋼,bはオーステナイ
ト系のSUS304に相当するステンレス鋼でありTi
を含んでいない。
解し、インゴットを製造した。このインゴットを熱間圧
延した後、焼鈍酸洗し、板厚0.7mmに冷間圧延し
た。表中、A〜Eは本発明で規定した範囲にある鋼で、
A〜Dはフェライト系ステンレス鋼,Eはオーステナイ
ト系ステンレス鋼である。A及びBはTi含有量が異な
り、C〜EはTiの外にCu,Mo,Mn等の合金成分
も含んでいる。a,bは比較鋼であり、aはTi含有量
が少ないフェライト系ステンレス鋼,bはオーステナイ
ト系のSUS304に相当するステンレス鋼でありTi
を含んでいない。
【0013】
【0014】鋼種Aのステンレス鋼を用い、表2に示す
種々の条件で熱処理した。試験番号1〜6は、本発明で
規定した条件で熱処理等を施したステンレス鋼板であ
る。熱処理条件は、(1)二段階の熱処理を行う場合
(試験番号1,3〜5),(2)二段階の熱処理の間に
電解処理する場合(試験番号2)及び(3)第一段の熱
処理と電解処理を行う場合(試験番号6)の3つのパタ
ーンに分類される。他方、比較例の熱処理条件は、酸化
性雰囲気中での焼鈍(試験番号11),還元性雰囲気中
での焼鈍(試験番号12)及び還元性雰囲気で焼鈍した
後、酸化性雰囲気で焼鈍(試験番号13)したものであ
る。試験番号1〜6について、酸化物層生成後の基材の
Ti含有量は本発明範囲を満足するものであった。
種々の条件で熱処理した。試験番号1〜6は、本発明で
規定した条件で熱処理等を施したステンレス鋼板であ
る。熱処理条件は、(1)二段階の熱処理を行う場合
(試験番号1,3〜5),(2)二段階の熱処理の間に
電解処理する場合(試験番号2)及び(3)第一段の熱
処理と電解処理を行う場合(試験番号6)の3つのパタ
ーンに分類される。他方、比較例の熱処理条件は、酸化
性雰囲気中での焼鈍(試験番号11),還元性雰囲気中
での焼鈍(試験番号12)及び還元性雰囲気で焼鈍した
後、酸化性雰囲気で焼鈍(試験番号13)したものであ
る。試験番号1〜6について、酸化物層生成後の基材の
Ti含有量は本発明範囲を満足するものであった。
【0015】
【0016】生成した酸化物層の組成,構造,厚み等を
測定した結果と、光触媒作用の代表例として抗菌性,脱
臭性,油分解特性を調査した結果を表3にまとめて示
す。TiO2 量は、ESCAによる皮膜組成の分析結果
によりFe,Cr,Si,Mn,Ti,Al,Oの濃度
を定量し、Tiの原子%で整理して求めた。アナターゼ
の比率は、薄膜X線回折による表層のチタン酸化物層を
分析し、その中のアナターゼの割合をピーク強度比から
求めた。X値の測定では、還元焼鈍等の活性化処理前後
における皮膜全体をHF水溶液中に加温溶解して溶解溶
液中のTi濃度を測定し、Ti濃度の活性化処理前後に
おける変化を酸素の化学量論値からのズレに換算した。
X値は経験的に求めた熱処理後の酸化物層表面の活性化
度に相当する指標であり、X値が大きいものほど酸化物
層がより光触媒反応に対して活性な状態にあると考えら
れる。
測定した結果と、光触媒作用の代表例として抗菌性,脱
臭性,油分解特性を調査した結果を表3にまとめて示
す。TiO2 量は、ESCAによる皮膜組成の分析結果
によりFe,Cr,Si,Mn,Ti,Al,Oの濃度
を定量し、Tiの原子%で整理して求めた。アナターゼ
の比率は、薄膜X線回折による表層のチタン酸化物層を
分析し、その中のアナターゼの割合をピーク強度比から
求めた。X値の測定では、還元焼鈍等の活性化処理前後
における皮膜全体をHF水溶液中に加温溶解して溶解溶
液中のTi濃度を測定し、Ti濃度の活性化処理前後に
おける変化を酸素の化学量論値からのズレに換算した。
X値は経験的に求めた熱処理後の酸化物層表面の活性化
度に相当する指標であり、X値が大きいものほど酸化物
層がより光触媒反応に対して活性な状態にあると考えら
れる。
【0017】抗菌性試験では、予め普通ブイヨン培地で
35℃,16〜20時間振盪培養した黄色ブドウ球菌の
培養液を減菌リン酸緩衝液で20,000倍に希釈した
菌液を調製した。この菌液を試験片表面に1ml滴下
し、ブラックライトを用いUV強度3.0mW/cm2
で光照射し、24時間後の生菌数をコロニー法で測定し
た。これらの実験は、室温で行った。脱臭性試験では、
9リットルのガラス容器中にホルムアルデヒドを50p
pm注入し、ブラックライトを用いUV強度3.0mW
/cm2 で光照射し、4時間後のホルムアルデヒドの残
存濃度をガスクロマトグラフで分析した。油分解試験で
は、サラダ油を対象油として使用した。サラダ油を塗布
した試験片にブラックライトを用いUV強度3.0mW
/cm2 で光照射し、24時間光照射後における重量変
化を測定した。
35℃,16〜20時間振盪培養した黄色ブドウ球菌の
培養液を減菌リン酸緩衝液で20,000倍に希釈した
菌液を調製した。この菌液を試験片表面に1ml滴下
し、ブラックライトを用いUV強度3.0mW/cm2
で光照射し、24時間後の生菌数をコロニー法で測定し
た。これらの実験は、室温で行った。脱臭性試験では、
9リットルのガラス容器中にホルムアルデヒドを50p
pm注入し、ブラックライトを用いUV強度3.0mW
/cm2 で光照射し、4時間後のホルムアルデヒドの残
存濃度をガスクロマトグラフで分析した。油分解試験で
は、サラダ油を対象油として使用した。サラダ油を塗布
した試験片にブラックライトを用いUV強度3.0mW
/cm2 で光照射し、24時間光照射後における重量変
化を測定した。
【0018】
【0019】光触媒作用に及ぼす熱処理の影響は、表3
の試験番号1と2との比較からパターン(2)が最も有
効であり、試験番号6の結果からパターン(3)が若干
小さくなる傾向がみられる。他方、試験番号12及び1
3は、それぞれ特開平8−193218号公報及び特開
平8−193219号公報に対応しており、抗菌性に関
して改善の効果がみられるものの、何れも脱臭,油分解
等の有機物分解反応には十分でなかった。これは、試験
番号12では酸化物層が薄く、試験番号13では表面の
活性化が不十分であったことに原因があるものと推察さ
れる。光触媒反応に及ぼす皮膜の影響は、複雑に関連し
ており、現段階では要因を完全には絞り込めていない。
しかし、表3の結果から、酸化皮膜中の酸化チタン活性
化の程度、X値やアナターゼの割合が光触媒反応に大き
く影響を及ぼしていることが推察される。これは、試験
番号11〜13でTiO2 量が条件を満足しており、試
験番号13は厚みも本発明で規定した条件を満足する
が、十分な光触媒作用が得られていないことからも窺わ
れる。表2で良好な結果が得られた試験番号4の条件下
で、表1に掲げた各鋼種を熱処理し、同様に皮膜及び光
触媒作用を調査した。鋼A〜Eの酸化物生成後の基材の
Ti,Cu,Mo,Mn含有量は、本発明範囲を満足す
るものであった。調査結果を示す表4にみられるよう
に、鋼AよりもTi含有量の多い鋼Bは、鋼Aと同等以
上の特性を呈している。鋼C,Dは、Ti含有量が下限
に近く、鋼Aと比較して特性上で若干劣る傾向がみられ
る。しかし、鋼種C〜Eは、チタン酸化物以外にCu等
の金属イオンの溶出による作用もあるため、光照射時以
外にも良好な抗菌性を呈していた。
の試験番号1と2との比較からパターン(2)が最も有
効であり、試験番号6の結果からパターン(3)が若干
小さくなる傾向がみられる。他方、試験番号12及び1
3は、それぞれ特開平8−193218号公報及び特開
平8−193219号公報に対応しており、抗菌性に関
して改善の効果がみられるものの、何れも脱臭,油分解
等の有機物分解反応には十分でなかった。これは、試験
番号12では酸化物層が薄く、試験番号13では表面の
活性化が不十分であったことに原因があるものと推察さ
れる。光触媒反応に及ぼす皮膜の影響は、複雑に関連し
ており、現段階では要因を完全には絞り込めていない。
しかし、表3の結果から、酸化皮膜中の酸化チタン活性
化の程度、X値やアナターゼの割合が光触媒反応に大き
く影響を及ぼしていることが推察される。これは、試験
番号11〜13でTiO2 量が条件を満足しており、試
験番号13は厚みも本発明で規定した条件を満足する
が、十分な光触媒作用が得られていないことからも窺わ
れる。表2で良好な結果が得られた試験番号4の条件下
で、表1に掲げた各鋼種を熱処理し、同様に皮膜及び光
触媒作用を調査した。鋼A〜Eの酸化物生成後の基材の
Ti,Cu,Mo,Mn含有量は、本発明範囲を満足す
るものであった。調査結果を示す表4にみられるよう
に、鋼AよりもTi含有量の多い鋼Bは、鋼Aと同等以
上の特性を呈している。鋼C,Dは、Ti含有量が下限
に近く、鋼Aと比較して特性上で若干劣る傾向がみられ
る。しかし、鋼種C〜Eは、チタン酸化物以外にCu等
の金属イオンの溶出による作用もあるため、光照射時以
外にも良好な抗菌性を呈していた。
【0020】
【0021】実施例2:750℃に加熱した公称100
%のH2 ガス雰囲気中に水蒸気を送り込んで露点を+5
0℃に上昇させ、この雰囲気中で表1に掲げた鋼B及び
aの冷延鋼板に均熱6時間の熱処理を施した後、公称1
00%のH2 ガス雰囲気中で700℃で1時間の均熱処
理を施した。鋼Bの酸化物層生成後の基材のTi含有量
は、本発明範囲に入っていた。熱処理によって生成した
皮膜を実施例1と同様に回折したところ、鋼BにはTi
O2 量がTi濃度として28原子%,アナターゼの比率
が75体積%,X値が0.08,厚みが3.8μmの酸
化物層が生成していた。他方、鋼aでは、皮膜厚みは
2.5μmで問題はないが、酸化物層中に存在するTi
O2 量がTi濃度として2原子%で少なく、それに伴っ
てアナターゼの割合やX値が十分に回折できなかった。
また、光触媒作用については、鋼Bが抗菌,脱臭,油分
解の何れにおいても表4の評価で○に相当する良好な結
果を示したのに対し、鋼aでは表4の評価で×に相当す
る結果が得られ、光触媒作用がほとんどみられなかっ
た。
%のH2 ガス雰囲気中に水蒸気を送り込んで露点を+5
0℃に上昇させ、この雰囲気中で表1に掲げた鋼B及び
aの冷延鋼板に均熱6時間の熱処理を施した後、公称1
00%のH2 ガス雰囲気中で700℃で1時間の均熱処
理を施した。鋼Bの酸化物層生成後の基材のTi含有量
は、本発明範囲に入っていた。熱処理によって生成した
皮膜を実施例1と同様に回折したところ、鋼BにはTi
O2 量がTi濃度として28原子%,アナターゼの比率
が75体積%,X値が0.08,厚みが3.8μmの酸
化物層が生成していた。他方、鋼aでは、皮膜厚みは
2.5μmで問題はないが、酸化物層中に存在するTi
O2 量がTi濃度として2原子%で少なく、それに伴っ
てアナターゼの割合やX値が十分に回折できなかった。
また、光触媒作用については、鋼Bが抗菌,脱臭,油分
解の何れにおいても表4の評価で○に相当する良好な結
果を示したのに対し、鋼aでは表4の評価で×に相当す
る結果が得られ、光触媒作用がほとんどみられなかっ
た。
【0022】実施例3:実施例2と同様に鋼B及びaの
冷延鋼板を用い、大気中で950℃,5分間の熱処理を
行った後、10%硝酸水溶液中で電流密度を2.5A/
dm2 に制御して交番電解処理した。更に、公称100
%のH2 ガス雰囲気中で700℃,均熱1時間の熱処理
を施した。熱処理された各試験片について実施例1と同
様に光触媒試験に供したところ、実施例1と同様な結果
が得られ、酸化チタンの濃化処理条件として必ずしも高
水素濃度で長時間熱処理する必要がなく、高温短時間の
熱処理後に電解処理しても同様な効果が得られることが
判った。
冷延鋼板を用い、大気中で950℃,5分間の熱処理を
行った後、10%硝酸水溶液中で電流密度を2.5A/
dm2 に制御して交番電解処理した。更に、公称100
%のH2 ガス雰囲気中で700℃,均熱1時間の熱処理
を施した。熱処理された各試験片について実施例1と同
様に光触媒試験に供したところ、実施例1と同様な結果
が得られ、酸化チタンの濃化処理条件として必ずしも高
水素濃度で長時間熱処理する必要がなく、高温短時間の
熱処理後に電解処理しても同様な効果が得られることが
判った。
【0023】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のステン
レス鋼板は、アナターゼ比率が調整された特定厚みの酸
化チタン含有酸化物層を鋼板表面に形成しているので、
殺菌だけでなく、大気中の有害物,悪臭物の分解や油付
着に伴う汚染を防止する機能を半永久的に呈する光触媒
機能をもつ材料となる。しかも、ステンレス鋼自体に光
触媒作用を付与しているので、加工後に抗菌処理等の後
処理をする必要がなく、ユーザの経済的負担も最少限に
抑えられる。更には、従来の鋼と比較して同程度又は僅
かなコストアップで製造できるため、比較的安価な機能
材料として提供される。このようにして、本発明に従っ
たステンレス鋼板は、厨房機器,衛生機器等の外、悪臭
や有害ガスが発生する室内や屋外に用いられる内装用建
材,外装用建材,レンジフードや換気扇等の油が付着し
易い部位の構造材等として広範な分野で使用される。
レス鋼板は、アナターゼ比率が調整された特定厚みの酸
化チタン含有酸化物層を鋼板表面に形成しているので、
殺菌だけでなく、大気中の有害物,悪臭物の分解や油付
着に伴う汚染を防止する機能を半永久的に呈する光触媒
機能をもつ材料となる。しかも、ステンレス鋼自体に光
触媒作用を付与しているので、加工後に抗菌処理等の後
処理をする必要がなく、ユーザの経済的負担も最少限に
抑えられる。更には、従来の鋼と比較して同程度又は僅
かなコストアップで製造できるため、比較的安価な機能
材料として提供される。このようにして、本発明に従っ
たステンレス鋼板は、厨房機器,衛生機器等の外、悪臭
や有害ガスが発生する室内や屋外に用いられる内装用建
材,外装用建材,レンジフードや換気扇等の油が付着し
易い部位の構造材等として広範な分野で使用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C22C 38/00 302 C22C 38/00 302Z 38/28 38/28
Claims (9)
- 【請求項1】 0.2〜3重量%のTiを含むステンレ
ス鋼基材の表面に酸化チタンを含む厚み0.1〜20μ
mの酸化物層が形成されており、酸化チタンとしてのT
i濃度が3原子%以上で、且つ酸化チタン中のアナター
ゼの含有比率が1体積%以上であることを特徴とする光
触媒作用を呈するステンレス鋼板。 - 【請求項2】 更に0.2〜4重量%のCu,Mo及び
Mnの1種又は2種以上を含むステンレス鋼を基材とす
る光触媒作用を呈する請求項1記載のステンレス鋼板。 - 【請求項3】 酸化チタンを含む酸化物層の厚みが0.
5〜10μmである請求項1又は2記載の光触媒作用を
呈するステンレス鋼板。 - 【請求項4】 酸化物層を構成する酸化チタン中のTi
とOとの原子比率がTi:O=1:2−X(ただし、X
=0.01〜0.4)である請求項1〜3の何れかに記
載の光触媒作用を呈するステンレス鋼板。 - 【請求項5】 酸化物層を構成する酸化チタン中に含ま
れる不純物が10原子%以下に規制されている光触媒作
用を呈する請求項1〜4の何れかに記載のステンレス鋼
板。 - 【請求項6】 ステンレス鋼に酸化性雰囲気中で400
〜1200℃に加熱する熱処理を施し、酸化チタンを含
む酸化物層を厚く成長させた後、水素を含む還元性雰囲
気中で400〜1000℃で熱処理することを特徴とす
る請求項1〜5の何れかに記載の光触媒作用を呈するス
テンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 ステンレス鋼に酸化性雰囲気中で400
〜1200℃に加熱する熱処理を施し、酸化チタンを含
む酸化物層を厚く成長させた後、酸性水溶液中で0.1
A/dm2 以上の電流密度で電解処理し、表面皮膜中の
酸化チタンを濃化させることを特徴とする請求項1〜5
の何れかに記載の光触媒作用を呈するステンレス鋼板の
製造方法。 - 【請求項8】 ステンレス鋼に酸化性雰囲気中で400
〜1200℃に加熱する熱処理を施し、酸化チタンを含
む酸化物層を厚く成長させた後、酸性水溶液中で0.1
A/dm2 以上の電流密度で電解処理し、表面皮膜中の
酸化チタンを濃化させ、更に水素を含む還元性雰囲気中
で400〜1000℃で熱処理することを特徴とする請
求項1〜5の何れかに記載の光触媒作用を呈するステン
レス鋼板の製造方法。 - 【請求項9】 請求項7又は8記載の電解処理を交番電
解で行う光触媒作用を呈するステンレス鋼板の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27199396A JPH10121222A (ja) | 1996-10-15 | 1996-10-15 | 光触媒作用を呈するステンレス鋼板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27199396A JPH10121222A (ja) | 1996-10-15 | 1996-10-15 | 光触媒作用を呈するステンレス鋼板及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10121222A true JPH10121222A (ja) | 1998-05-12 |
Family
ID=17507662
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27199396A Withdrawn JPH10121222A (ja) | 1996-10-15 | 1996-10-15 | 光触媒作用を呈するステンレス鋼板及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10121222A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007000828A1 (en) * | 2005-06-28 | 2007-01-04 | Yasuo Sakakura | Oxygen activating material, combustion efficiency improving material, plant growth promoting material, aerobic microorganism activating material, animal growth promoting and activating material, muscle softening material, rust removing and preventing material, and oxygen activating method |
CN101886285A (zh) * | 2010-06-25 | 2010-11-17 | 广东工业大学 | 一种制备表面抗菌不锈钢的方法 |
JP2014192012A (ja) * | 2013-03-27 | 2014-10-06 | Nisshin Steel Co Ltd | 接触抵抗の低いステンレス鋼板 |
-
1996
- 1996-10-15 JP JP27199396A patent/JPH10121222A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007000828A1 (en) * | 2005-06-28 | 2007-01-04 | Yasuo Sakakura | Oxygen activating material, combustion efficiency improving material, plant growth promoting material, aerobic microorganism activating material, animal growth promoting and activating material, muscle softening material, rust removing and preventing material, and oxygen activating method |
US8079346B2 (en) | 2005-06-28 | 2011-12-20 | Yasuo Sakakura | Oxygen activating material, combustion efficiency improving material, plant growth promoting material, aerobic microorganism activating material, animal growth promoting and activating material, muscle softening material, rust removing and preventing material, and oxygen activating method |
CN101886285A (zh) * | 2010-06-25 | 2010-11-17 | 广东工业大学 | 一种制备表面抗菌不锈钢的方法 |
JP2014192012A (ja) * | 2013-03-27 | 2014-10-06 | Nisshin Steel Co Ltd | 接触抵抗の低いステンレス鋼板 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20040106 |