JPH08170105A - 樹脂ボンド磁石の成形方法 - Google Patents

樹脂ボンド磁石の成形方法

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JPH08170105A
JPH08170105A JP6310893A JP31089394A JPH08170105A JP H08170105 A JPH08170105 A JP H08170105A JP 6310893 A JP6310893 A JP 6310893A JP 31089394 A JP31089394 A JP 31089394A JP H08170105 A JPH08170105 A JP H08170105A
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雅一 大北
Yoshihisa Kishimoto
芳久 岸本
Naoyuki Ishigaki
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 磁性粉末を熱硬化性樹脂で被覆したコンパウ
ンド粉末を、パンチで加圧するプレス成形用金型に充填
した後、周波数10〜40 kHz、振幅100 μm以下の超音波
振動を金型および/またはパンチに付与しながら、100
kg/cm2以下の加圧力で0.5 秒以上加圧し、次いで超音波
振動を停止して100 kg/cm2以上の加圧力で賦形する、樹
脂ボンド型永久磁石の成形方法。 【効果】 短時間の超音波振動でり、金型を加熱せずに
金型内のコンパウンド粉末を選択的に加熱して融解で
き、温間磁場中プレス成形が工業的に可能となる。コン
パウンド粉末の充填率および配向度が向上し、極めて低
い加圧力でのプレス成形が可能となるため、樹脂ボンド
磁石の磁気特性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレス成形による磁気
特性に優れた樹脂ボンド型永久磁石の成形方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】樹脂ボンド型永久磁石(以下、樹脂ボン
ド磁石という)は、ハードフェライトや希土類合金など
の磁性粉末を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエ
ステル樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリアミド樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹
脂などの熱可塑性樹脂をバインダーとして結合、賦形し
て製造される磁石である。
【0003】ハードフェライトや希土類合金などの磁性
粉末を焼結して製造される従来の焼結磁石に比べ、樹脂
ボンド磁石は、磁性を発現しない樹脂分を含むため磁気
特性は劣るが、焼結による収縮がないため寸法精度が良
く、種々の形状の磁石が簡単に得られるという特徴があ
る。そのため、一般家庭の各種電気製品から大型コンピ
ューターの周辺端末機器に至るまで広く応用されてお
り、特にスピンドルモーター、ステッピングモーター等
の小型モーターに近年多く用いられている。
【0004】この樹脂ボンド磁石の成形方法としては、
射出成形、押出成形、プレス成形などが可能である。射
出成形と押出成形では熱可塑性樹脂をバインダーとして
用いる。通常、このバインダーを加熱溶融状態にし、磁
性粉末をその中に混合、混練した後、この混合物を成形
機に供給できる粒 (ペレットと呼ばれる) 状に粉砕また
は造粒し、このペレットを射出成形機または押出成形機
に供給して成形を行う。成形温度はバインダーの種類に
より異なるが、ポリプロピレン樹脂の場合で 200〜250
℃、ポリアミド樹脂の場合では 250〜300 ℃であり、プ
レス成形に比べて高い。
【0005】成形に用いる金型は、原料粉末が超急冷法
により得たNd−Fe−B系などの磁気異方性のない磁性粉
末である場合には一般的な金型であるが、原料粉末が磁
気異方性を有する磁性粉末である場合には、磁場コイル
などを付設し磁気回路を形成させた金型を用いる。それ
により、異方性磁性粉末に磁場を印加し、その磁化容易
方向 (後述する) を揃えることで、特定方向に極めて高
い磁気特性を示す樹脂ボンド磁石を得ることができる。
【0006】射出成形や押出成形では、磁性粉末とバイ
ンダーとの混合物が成形温度で流動する必要があるた
め、通常、磁性粉末の混合割合がプレス成形に比べて少
なくなり、製品の磁気特性が低いという欠点がある。
【0007】他方、プレス成形では熱硬化性樹脂をバイ
ンダーとして用いる。通常、予め磁性粉末とバインダー
とを複合化させた原料粉末 (磁性粉末を熱硬化性樹脂で
被覆した「コンパウンド」と呼ばれる材料) を作製し、
それを金型内に投入し、パンチで加圧することによりプ
レス成形を行う。その後、加熱してバインダー樹脂を熱
硬化させると樹脂ボンド磁石が得られる。バインダーを
熱硬化させて製品の最終強度を付与するので、プレス後
の成形体 (圧粉体と呼ばれる) の強度は、加熱設備への
搬送に必要なハンドリングが可能な程度であればよい。
そのため、プレス成形の温度は通常は室温である。
【0008】成形に用いる金型は、前記の射出成形など
の場合と同様、磁気異方性の有無により使い分けされ
る。磁気回路により形成される金型内の磁場の方向は、
プレスの圧下方向に平行の場合と垂直の場合とがあり、
前者を平行磁場 (または、縦磁場) 、後者を垂直磁場
(または、横磁場) という。
【0009】プレス成形では、射出および押出成形に比
べて、磁性粉末の充填率を大きくすることができ、より
高い磁気特性を得ることが可能となる。しかし、この成
形法では、上下のパンチにより金型内で磁性粉末を圧密
するので、圧下力の伝達機構から粉末粒度は大きい方が
充填率増大には有利であるが、他方で不可避である成形
後の空孔のサイズが大きくなるため、塗装やメッキなど
の表面処理に対して問題を生じている。
【0010】プレス成形に対しては、磁性粉末の充填率
の増大による磁気特性のさらなる向上を目的として種々
の改良が加えられてきた。例えば、11 ton/cm2以上の高
い加圧力で圧縮成形する高圧プレス法 (特開昭60−2073
02号公報) 、磁性粉末の表面を潤滑剤でコーティングす
る等の手法で潤滑剤を添加して、プレス成形中における
磁性粉末間および磁性粉末とバインダー樹脂との間の摩
擦を低減させる方法 (特開昭60−220920号、特開昭62−
264602号、特開平3−74810 号各公報) 、常温で液状の
バインダーを用いる方法 (特開平2−262303号公報) 、
および常温で固形の樹脂を用いて高温でプレスすること
でバインダーを溶融し、潤滑性を高める高温プレス法
(特開平4−80901 号公報) などの方法が提案されてい
る。
【0011】また、磁性粉末の磁気特性向上についても
近年盛んに研究され、Sm2Co17 合金系やNd−Fe−B合金
系の磁性粉末では、どの方向に磁化しても同じ磁気特性
を発現する従来の等方性磁性粉末に比べて磁気特性に優
れている磁気異方性を示す磁性粉末 (以下、異方性粉末
という) が開発されている。しかし、この異方性磁性粉
末はある決まった特定方向 (磁化容易方向) にのみ磁気
特性が極めて高いので、磁性粉末を樹脂により結合させ
る際には磁化容易方向を揃える必要がある。従って、こ
の異方性磁性粉末を用いる場合には、磁化容易方向を揃
える (配向度を向上させる) 工夫が不可欠である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、プレス
成形で得られる樹脂ボンド磁石の磁性粉末充填率の向上
法として、金型を高温に加熱し、成形温度をバインダー
の融点以上の温度とする高温プレス法は大きな効果があ
るが、生産性が極端に低下するという問題があった。
【0013】すなわち、金型を加熱した高温プレスで
は、1回のプレス成形の後、次回の原料 (コンパウン
ド) 粉末を金型に供給する前に、金型を樹脂の融点以下
に冷却するという対策を講じないと、金型に接触した次
回のコンパウンド粉末の樹脂が溶融し、金型に付着し
て、金型内に均一に充填できなくなるという問題を生じ
る。従って、金型の加熱・冷却がプレス1回毎に不可欠
であり、1回の成形に要する時間 (プレスサイクルタイ
ム) が長くなる。すなわち、単位時間当たりの生産個数
が著しく減少するのである。
【0014】別の対策として、温度が樹脂の融点以下で
ある予め準備された別の金型を順次交換するロータリー
プレス方式も知られている。この方式の場合、磁場コイ
ルを用いない等方性磁石では金型構造が簡単であり、工
業生産に適用可能であるが、磁場コイルを用いて磁場中
で成形する必要のある異方性磁石では、金型構造が複雑
になるなど種々の問題があり、工業生産には適用が困難
である。また、いずれにしても特殊なプレス設備が必要
であり、設備的制約が大きいか、または設備が大きくか
つ高価になる。
【0015】11 ton/cm2以上の高い加圧力でプレス成形
する場合、プレスの大型化は避けられず、コストが高く
なるうえに、高圧をかけることによってパンチやダイの
摩耗、損傷が著しいという問題が生じている。また、パ
ンチなどの強度の点から、プレス圧力をさらに上げるこ
とは困難であるので、圧力を従来以上に高くすることな
く、磁性粉末充填率を上げる方法が望まれている。さら
に、磁性粉末の種類によっては、プレス圧下により磁気
特性が低下することがあるため、高い圧力で成形できな
い場合もある。
【0016】潤滑剤を混合した場合、磁性粉末のバイン
ダーである熱硬化性樹脂の中に硬化に寄与しない潤滑剤
成分が混入するため、潤滑剤を用いない場合と比較して
磁気特性は優れるものの、機械的強度が低下するという
問題がある。
【0017】本発明は、上記の従来技術に存在する問題
点を解決し、磁気特性に優れた樹脂ボンド磁石を製造す
ることが可能な、成形性、生産性が向上した樹脂ボンド
磁石のプレス成形方法を提供することを目的としてい
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、樹脂ボン
ド磁石のプレス成形時に、特定の超音波振動を一定の条
件で金型および/またはパンチに付与することによっ
て、金型を加熱せずにコンパウンド粉末のみを加熱で
き、同時に金型内に投入されたコンパウンド粉末の金型
内での均一充填が達成されることを見出し、本発明を成
すに至った。
【0019】ここに、本発明の要旨は、熱硬化性樹脂に
より被覆された磁性粉末を、パンチで加圧するプレス成
形用金型に充填した後、周波数10〜40 kHz、振幅100 μ
m以下の超音波振動を金型および/またはパンチに付与
しながら、100 kg/cm2以下の加圧力で0.5 秒以上加圧
し、次いで超音波振動を停止して100 kg/cm2以上の加圧
力で賦形することを特徴とする、樹脂ボンド型永久磁石
の成形方法にある。
【0020】本発明の方法により、金型を加熱すること
なく、かつ低圧力で、磁性粉末が高密度に充填された樹
脂ボンド磁石のプレス成形を簡便に実施することができ
るので、高い生産性と成形性で磁気特性に優れた樹脂ボ
ンド磁石を製造することが可能となる。
【0021】
【作用】本発明の成形方法で用いる原料粉末は、従来の
樹脂ボンド磁石のプレス成形と同様に、磁性粉末をバイ
ンダーの熱硬化性樹脂と一体複合化したコンパウンド粉
末、即ち、熱硬化性樹脂により被覆された磁性粉末から
なる。
【0022】磁性粉末は特に制限されず、従来より樹脂
ボンド磁石に用いられてきたハードフェライトや、Sm−
Co系やNd−Fe−B系などの希土類合金の粉末が使用でき
る。磁気異方性についてもその有無は問わない。磁気異
方性の磁性粉末を用いた場合、本発明方法ではプレス成
形中の超音波振動の付与により磁性粉末の回転が容易と
なり、配向度が向上するため、磁気特性が改善される。
また、金型の加熱を必要としないので、磁場中プレス成
形を容易に実施できる。
【0023】さらに、本発明方法では従来のプレス成形
圧力よりも低圧力で成形できるので、プレス成形時の磁
性粉末の損傷・破壊により磁気特性が低下し易い、希土
類合金系磁性粉末に対して特に有効である。
【0024】粉末の粒度も広範囲に適用可能であるが、
平均粒径が 0.5〜350 μmの範囲内が好適である。0.5
μm未満であると、加熱に時間を要し、生産性が悪くな
り、350 μmを越えると、磁石中の空孔サイズが大きく
なり、表面処理に対して問題となる。1〜200 μmの平
均粒径が特に好適である。
【0025】バインダーとして用いる熱硬化性樹脂も特
に制限されず、従来より樹脂ボンド磁石に使用されてき
たエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂な
どが使用できる。樹脂の常温での性状は液状でも固形で
もよいが、金型への投入のし易さからは固形が好まし
い。さらに、固形樹脂の融点が45〜90℃の範囲であるこ
とが特に好ましい。融点が45℃未満であると、超音波で
加熱されたコンパウンド粉末からの伝熱による金型表面
温度の上昇がある程度避けられないため、金型への投入
時にコンパウンド粉末が付着しやすく、投入しずらくな
る。逆に、融点が95℃を越えると、超音波による加熱に
時間を要するため、生産速度の低下が大きくなる。
【0026】バインダー樹脂による磁性粉末の被覆 (即
ち、複合化) は、押出機等を用いた溶融混練法や、溶液
法等の慣用の方法が適用できる。磁性粉末に対するバイ
ンダーの混合比率は1〜20wt%とするのが好ましい。こ
の混合比率が1wt%未満では、成形された樹脂ボンド磁
石内の磁性粉末の結合が不十分となり、成形性が悪く、
得られた圧粉体および最終的に得られる樹脂ボンド磁石
の機械的強度が著しく低下する。一方、バインダーの混
合比率が20wt%を越えると、磁性粉末の割合が低すぎ、
磁気特性の低下が著しくなる。バインダーのより好まし
い混合比率は2〜10wt%である。
【0027】原料粉末には、熱硬化性樹脂と磁性粉末の
他に、必要に応じて、カップリング剤、潤滑剤などの従
来より用いられてきた各種の添加剤を少量であれば添加
できる。
【0028】本発明によれば、原料のコンパウンド粉末
を、目的とする形状のプレス成形用金型に充填した後、
パンチにより加圧してプレス成形を行う前に、金型およ
び/またはパンチに超音波振動を付与して、コンパウン
ド粉末を振動させる。その結果、粉末間の摩擦および/
またはコンパウンド粉末のバインダーを構成する樹脂の
内部摩擦によって、金型を加熱することなく、コンパウ
ンド粉末のみを実質的に加熱することができ、この加熱
によりバインダー樹脂が溶融あるいは粘度低下するの
で、前記の金型加熱により樹脂を溶融させる高温プレス
法と同様の潤滑性向上および磁性粉末充填率の向上効果
を得ることができる。
【0029】金型は、コンパウンド粉末からの伝熱によ
る多少の表面温度の上昇は起こるものの、樹脂の溶融を
生ずるほどには昇温しないので、次回の成形までに冷却
を行う必要は一般になく、ロータリープレスの使用も必
要ないので、異方性磁性粉末の場合の磁場中成形にも容
易に適用できる。
【0030】超音波としては、周波数10〜40 kHz、振幅
1〜100 μmのものが適用できる。周波数が10 kHz未満
か、40 kHzを越える超音波あるいは振幅1μm未満の超
音波では、超音波振動によるコンパウンド粉末の加熱に
時間を要しすぎる。振幅が100 μmを越える超音波で
は、超音波振動により誘発される磁粉の破壊が著しくな
り、樹脂ボンド磁石の磁気特性が低下する。好ましく
は、周波数が15〜35 kHz、振幅が5〜50μmの超音波を
適用する。
【0031】超音波振動の付与は、上パンチ、下パン
チ、金型の少なくとも1つに超音波ホーンを取り付け、
それを超音波振動させることにより行うことができる。
また、リング形状のボンド磁石では、コア (リング状磁
石の成形時に、その内径部に相当する位置に配置した円
柱状の部材で、リング状の下パンチの中央にある) を超
音波振動させてもよい。
【0032】超音波振動の付与中は、金型内に充填され
たコンパウンド粉末に負荷する加圧力を100 kg/cm2以下
とする。この時の加圧力が100 kg/cm2を越えると、磁性
粉末の破壊による磁気特性の低下が生じ易く、また振動
が制限されるためコンパウンド粉末の加熱に要する時間
も長くなる。超音波振動付与中の加圧力の下限は特に制
限されないが、超音波振動エネルギーの伝播を達成する
ためには、通常は1kg/cm2以上の加圧力が必要である。
超音波印加中の好ましい加圧力は、5〜50 kg/cm2 、よ
り好ましくは10〜30 kg/cm2 の範囲内である。なお、超
音波振動の付与前に、コンパウンド粉末を上記の加圧力
で予備加圧しておくことは、磁性粉末の充填率、すなわ
ちボンド磁石の密度を向上する上で好ましい。
【0033】超音波振動の付与時間は0.5 秒以上とす
る。0.5 秒より短い時間では、所定の発振条件への立上
がりが急激となり、超音波発振の制御が困難で実際的で
はない。この付与時間は、コンパウンド粉末のバインダ
ー樹脂が固形樹脂である場合には、これが溶融するのに
必要な時間とすることが好ましい。このための超音波振
動付与時間は、周波数、振幅、バインダー樹脂の種類と
混合比率などの条件に応じて変動するが、通常は 0.5〜
10秒、好ましくは 0.5〜5秒の範囲内である。
【0034】超音波振動を付与して100 kg/cm2以下で短
時間の加圧を行った後、超音波振動を停止し、金型内の
コンパウンド粉末をさらに加圧して、プレス成形による
賦形を行う。このプレス成形圧力は、次の加熱硬化設備
までのハンドリングに必要な強度を持った圧粉体が得ら
れるように選択すればよく、特に制限されないが、一般
に100 kg/cm2以上である。本発明によれば、超音波振動
の付与によって、コンパウンド粉末が振動して粉末の充
填度が増大し、またバインダー樹脂が溶融しているた
め、従来のプレス成形より低い加圧力で賦形することが
できる。具体的には 100 kg/cm2 〜3ton/cm2 の範囲
内、好ましくは200 kg/cm2〜2.0 ton/cm2 の範囲内の加
圧力でプレス成形を行うことにより、十分な強度の圧粉
体を得ることができる。
【0035】磁性粉末が磁気異方性を有する粉末である
場合、従来と同様に、磁場コイルなどを付設した金型を
用いて、プレス成形中に金型内のコンパウンド粉末に所
定の横磁場または縦磁場を印加し、磁性粉末の磁化容易
方向が揃うようにコンパウンド粉末を回転させる。この
磁場の印加は、超音波振動の付与中も行うことが好まし
い。超音波振動の付与中に磁場をコンパウンド粉末に印
加することで、磁性粉末を磁化容易方向に揃え易くな
り、配向度、従って、磁気特性が向上する。
【0036】本発明の方法により成形された圧粉体を加
熱設備に移して、好ましくは不活性ガス雰囲気中加熱
し、バインダー樹脂を硬化させると、樹脂ボンド磁石が
得られる。加熱条件はバインダー樹脂の種類や磁石の寸
法に応じて当業者が適当に選択することができる。得ら
れた樹脂ボンド磁石には、必要により、常法に従って塗
装やメッキなどの表面処理を施す。
【0037】
【実施例】以下、実施例により本発明の効果を例証す
る。実施例および比較例で用いた磁性粉末は、下記の方
法により作製したNd異方性磁性粉末およびSm異方性磁性
粉末である。
【0038】Nd異方性磁性粉末 原子分率で13%のNd、12%のCo、1%のGa、6%のB、
残部がFeとなるNd−Fe−B合金を 970〜1170Kの水素ガ
ス中に保持して、Nd水素介在物、Fe2B、Feに分解した。
次に、この温度領域で水素圧を下げ、Nd水素化物から水
素を解離させ、微細なNd2Fe14B結晶体の磁性粉末を得
た。得られた磁石粉末をさらに機械的に粉砕して、平均
粒径150 μmの磁性粉末を得た。
【0039】本実施例では、上記の方法で作製したNd2F
e14B系異方性磁性粉末を用いたが、Nd2Fe14B合金を後方
押出することにより得られる、例えばGM社から市販さ
れているMQ-3磁性粉末などを使用することもできる。
【0040】Sm異方性磁性粉末 Sm(Co0.59Cu0.07Fe0.22Zr0.02)8.3 で表されるSm2Co17
系金属間化合物合金を溶解、鋳造し、これをアルゴンガ
ス雰囲気炉中にて1160℃で4時間加熱した後、約200 ℃
まで毎分35℃の速度で急冷して析出硬化処理を行った。
常温まで冷却された鋳塊を、アルゴンガス雰囲気炉中に
て800 ℃で2時間、740 ℃で3時間の2段加熱により時
効処理し、常温まで毎分65℃の速度で冷却した。その
後、この鋳塊を機械的に粉砕して平均粒径50μmの磁性
粉末を得た。
【0041】上記の方法で作製したNdまたはSm異方性磁
性粉末を、熱硬化性樹脂で被覆してコンパウンド粉末と
し、次いで本発明の方法によりプレス成形し、加熱硬化
させて、樹脂ボンド磁石を作製した。各工程の詳細を次
に説明する。
【0042】コンパウンド粉末の作製 バインダー樹脂として、常温で固体のエポキシ化合物
(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂) に硬化剤とし
てポリアミン系化合物を配合した熱硬化性エポキシ樹脂
(融点57℃) を用いた。この熱硬化性エポキシ樹脂をメ
チルエチルケトンに溶解して樹脂液を調製し、得られた
樹脂液と上記のNdまたはSm異方性磁性粉末とを混合した
後、メチルエチルケトンを蒸発させ、次いで乳鉢で解砕
して、原料のコンパウンド粉末を得た。配合割合は、磁
性粉末100 重量部に対して樹脂が3重量部の割合とし
た。
【0043】樹脂ボンド磁石の作製 プレス成形は、図1に示す磁場中プレス成形機を用い
て、10 mm 立方の成形体を得るように行った。このプレ
ス成形機では、図1からわかるように、超音波振動子2
からブースター3、ホーン4を介して上パンチ5に超音
波振動を付与でき、また金型9内の原料粉末6に対して
は、磁化コイル7から圧下方向に垂直な横磁場を印加で
きる。
【0044】まず、上記の原料コンパウンド粉末を金型
内に投入した後、表1に示した周波数、発振時間、振幅
の超音波振動を上パンチに付与しながら、この上パンチ
を下降させて、表1に示した加圧力および時間だけ、13
kOe (Nd異方性磁性粉末の場合) または15.5 kOe (Sm異
方性磁性粉末の場合) の横磁場中で圧下した。その後、
超音波振動を停止し、横磁場を保持しながら、直ちに表
1に示す 0.2〜1ton/cm2 の範囲内の加圧力でプレス成
形を行った (圧力保持時間3秒) 。
【0045】このプレス成形時の成形体温度と金型温度
を、超音波加振の停止直後の時点で測定した。続いて、
脱型後、成形体をArガス雰囲気中で150 ℃に60分間加熱
してバインダー樹脂を硬化させ、10 mm 立方の樹脂ボン
ド磁石を得た。
【0046】従来例として、従来の高温プレス法に従っ
て、上記の原料コンパウンド粉末を常温の金型内に投入
した後、超音波振動を付与せずに、金型を熱媒により80
℃に加熱し、表1に示す加圧力で横磁場中にてプレス成
形を行い、脱型後に加熱して樹脂を硬化させ、樹脂ボン
ド磁石を作製した。ここに記載した以外の条件は、上記
と同様であった。
【0047】得られた樹脂ボンド磁石について、下記の
方法により、(1) 磁気特性と、(2)密度を測定した。試
験結果も表1に併せて示す。 (1) 磁気特性 得られた10 mm 立方の樹脂ボンド磁石を用いて、BHトレ
ーサーにより残留磁束密度(Br)、保磁力(iHc) ならびに
最大エネルギー積 (BHmax)を測定した。 (2) 密度 得られた樹脂ボンド磁石の重量と体積を測定し、その密
度を算出した。
【0048】
【表1】
【0049】表1から明らかなように、本発明によれ
ば、プレス成形前にパンチに超音波振動を付与すること
で、金型をさほど昇温させずに、原料のコンパウンド粉
末を選択的に加熱することができる。その結果、超音波
振動付与時の加圧力、周波数、振幅を本発明の範囲に制
限した場合には、3秒以下というごく短時間の超音波振
動の付与によってバインダー樹脂を融解させることがで
き、プレス成形と加熱・硬化後に、磁気特性に優れ、か
つ高密度に充填された樹脂ボンド磁石を得ることができ
る。
【0050】また、従来例として示す金型加熱による従
来の高温プレス法に比べて、極めて低いプレス圧力で高
い磁性粉末充填率が得られるので、プレス成形時の磁性
粉末の損傷とそれによる磁気特性の劣化が抑制される。
従って、特に損傷し易いNd異方性磁性粉末の場合に、従
来の高温プレス法に対する磁気特性の向上効果が大きく
なった。
【0051】超音波振動を付与しても、条件が本発明の
範囲外である比較例では、BHmax が本発明例の実施例に
比べて低く、またBrおよび磁石密度か、或いはiHc の一
方も低下した。
【0052】
【発明の効果】本発明により、次のような効果を得るこ
とができる。 (1) 超音波振動を付与することで、金型を加熱すること
なくコンパウンド粉末を選択的に加熱できるので、金型
加熱によりバインダー樹脂を融解させる高温プレス法と
同じ潤滑性向上効果を、金型を加熱せずに得ることがで
きる。従って、生産効率と設備的制約の障害のため従来
は困難であった、磁場中での樹脂ボンド磁石の高温プレ
ス成形 (温間磁場中プレス成形という) が工業的に可能
となる。
【0053】(2) 樹脂の加熱・融解に伴う、高温プレス
法と同様の潤滑性向上効果に加えて、超音波振動の機械
的作用によりコンパウンド粉末の充填率および配向度の
向上という効果が同時に得られるので、従来の金型加熱
による同じ温度での温間磁場中プレス成形に比べて、相
対的に高い磁気特性を示す磁気異方性樹脂ボンド磁石が
得られる。
【0054】(3) 超音波振動を予め付与することで、プ
レス成形前にコンパウンド粉末の充填率が向上する結
果、従来の高温プレス法に比べて、極めて低いプレス圧
力でプレス成形を行うことができ、プレス成形時の磁性
粉末の損傷とそれによる磁気特性の劣化が抑制される。
従って、特に高圧成形で損傷し易い希土類合金系磁性粉
末では、高温プレス法に比べて磁気特性の向上が大きく
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いた磁場中プレス成形機の略式断面
図である。
【符号の説明】
1:プレス用ラム 2:振動子 3:ブースター 4:ホーン 5:上パンチ 6:コンパウンド粉末 (金
型ホール) 7:磁化コイル 8:下パンチ 9:金型
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/08 41/02 G H01F 1/08 A (72)発明者 石垣 尚幸 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱硬化性樹脂により被覆された磁性粉末
    を、パンチで加圧するプレス成形用金型に充填した後、
    周波数10〜40 kHz、振幅100 μm以下の超音波振動を金
    型および/またはパンチに付与しながら、100 kg/cm2
    下の加圧力で0.5 秒以上加圧し、次いで超音波振動を停
    止して100 kg/cm2以上の加圧力で賦形することを特徴と
    する、樹脂ボンド型永久磁石の成形方法。
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