JPH08160943A - 電子弦楽器 - Google Patents

電子弦楽器

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JPH08160943A
JPH08160943A JP6302387A JP30238794A JPH08160943A JP H08160943 A JPH08160943 A JP H08160943A JP 6302387 A JP6302387 A JP 6302387A JP 30238794 A JP30238794 A JP 30238794A JP H08160943 A JPH08160943 A JP H08160943A
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Takashi Norimatsu
隆司 乗松
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピッチベンド奏法を可能とする電子弦楽器に
関し、ピッチベンド操作と撥弦操作を区別して検出する
ことができる電子弦楽器を提供することを目的とする。 【構成】 押圧部と撥弦部からなる弦(1)と、弦の長
手方向に互いに離隔して設けられ、演奏者が弦の押圧部
を押圧することにより該弦が少なくとも1つに接触可能
な複数のフレット(F0〜Fn)と、弦に超音波を発信
し、該弦を伝播する超音波が弦と接触するフレットで反
射して生じるエコーを受信する超音波センサ(5)と、
演奏者が撥弦操作をすることにより生じる弦振動の振動
幅を検出する弦振動検出手段(4)と、弦の撥弦部の両
端近傍にそれぞれ設けられ、演奏者が弦を変位させたと
きに該弦の変位量をそれぞれ検出するための弦変位検出
手段(2,3)とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子弦楽器に関し、特
にピッチベンド奏法を可能とする電子弦楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】図12は、従来技術による電子弦楽器の
外観を示す概略図である。弦1は、第0フレットF0と
ブリッジ6の間に張設されており、指板・フレット部4
1と撥弦部42を有する。指板・フレット部41は、発
音する音高を決めるために演奏者が指で弦を押さえる部
分である。撥弦部42は、演奏者が発音を目的として弦
を撥く部分である。
【0003】ベンドセンサ50は、弦1の変位を調べる
ことにより、ピッチベンド操作の検出を行う。電子弦楽
器に例えば6本の弦が張設されている場合には、6本の
各弦に対応して、別々にピッチベンド操作を検出する。
【0004】図13は、ピッチベンド操作(チョ−キン
グ)の演奏手法を説明するための概略図である。指板・
フレット部41は、複数のフレットを有する。演奏者が
弦1を押さえると、弦1は第iフレットFiの点65に
支持される。点65に弦1が支持されている間は、第i
フレットFiに対応する音高で発音が可能である。その
後、押さえている弦1を弦の長さ方向に対して垂直方向
に移動させると、弦1は点66で支持されるようにな
る。すると、弦1は伸長し、張力が増加するので、音高
が高くなる。
【0005】この性質を利用して、演奏者が第iフレッ
トFi付近で弦の長さ方向に対して垂直方向に弦1を反
復移動させることにより、周期的なピッチ変調を行うこ
とができる。このようにして、演奏者が第iフレットF
i上の弦の支点をスライドさせる操作をピッチベンド操
作という。
【0006】図12において、ベンドセンサ50は、弦
1の変位を調べることにより、ピッチベンド操作が行わ
れたか否かを検出する。しかし、弦1が変位するのは、
ピッチベンド操作のときだけではなく、演奏者が発音目
的に撥弦操作を行ったときにも生じる。次に、弦変位を
生じるピッチベンド操作と撥弦操作について詳しく説明
する。
【0007】図14(A)は、ピッチベンド操作を行っ
たときの弦変位を示し、図14(B)は撥弦操作を行っ
たときの弦変位を示す。図14(A)において、弦1は
第0フレットF0とブリッジ6の間に張設されている。
演奏者がピッチベンド操作を行うことにより、あるフレ
ット上で弦1を弦の長さ方向に対して垂直方向(点6
1)に移動させたとする。弦1の移動により、ベンドセ
ンサ50は弦1の変位を検出することができる。以上が
ピッチベンド操作により生じる弦変位である。
【0008】一方、図14(B)では、演奏者が弦1を
押さえることにより、弦1は第iフレットFiに支持さ
れ、第iフレットFiとブリッジ6の間に張られる。そ
の後、演奏者が弦1に対して撥弦操作を行う際に、弦1
は一度点62の位置に引っ張られる。弦1が点62に移
動すると、ベンドセンサ50は弦1の変位を検出する。
演奏者は、弦1を点62に引っ張った後に、弦1を離す
ことにより弦1の振動が開始し、発音が開始する。当該
弦が発音中の場合、ベンドセンサ50の変位検出結果
を、そのまま反映させると、撥弦操作により音高が高く
なり、撥弦後急に元の音高に戻ることになる。ただし、
当該弦が発音中でない場合、音情報はないので問題はな
い。
【0009】図14(A)のピッチベンド操作と図14
(B)の撥弦操作を比べたときに、ベンドセンサ50
は、いずれも同じ弦変位検出結果を出力してしまう。つ
まり、ベンドセンサ50は、ピッチベンド操作による弦
変位と撥弦操作による弦変位を区別することができな
い。
【0010】本来、ピッチベンド操作による弦変位は、
音高を高くするためのものであり、撥弦操作による弦変
位は、発音目的に弦を振動させるための操作である。撥
弦操作をしたときに、ベンドセンサ50が誤認識により
ピッチベンド操作を検出してしまうと、結果として撥弦
時に音高が高くなる現象が生じてしまう。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】電子弦楽器は、ピッチ
ベンド操作を検出するためのベンドセンサを有する。し
かし、従来のベンドセンサは、ピッチベンド操作による
弦変位と撥弦操作による弦変位を区別することができな
い。ベンドセンサが撥弦操作を誤ってピッチベンド操作
であると検出してしまうと、例えば撥弦時に音高が高く
なってしまう等、演奏者の意図しない結果を招くことに
なってしまう。
【0012】本発明の目的は、ピッチベンド操作と撥弦
操作を区別して検出することができる電子弦楽器を提供
することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の電子弦楽器は、
押圧部と撥弦部からなる弦と、弦の長手方向に互いに離
隔して設けられ、演奏者が弦の押圧部を押圧することに
より該弦が少なくとも1つに接触可能な複数のフレット
と、弦に超音波を発信し、該弦を伝播する超音波が弦と
接触するフレットで反射して生じるエコーを受信する超
音波センサと、演奏者が撥弦操作をすることにより生じ
る弦振動の振動幅を検出する弦振動検出手段と、弦の撥
弦部の両端近傍にそれぞれ設けられ、演奏者が弦を変位
させたときに該弦の変位量をそれぞれ検出するための弦
変位検出手段とを有する。
【0014】
【作用】弦変位検出手段を弦の撥弦部の両端近傍に設け
ることにより、撥弦部の両端近傍における弦の変位量を
それぞれ検出することができる。撥弦部の両端近傍にお
ける弦の変位量を検出することができれば、演奏者が行
うピッチベンド操作と撥弦操作を区別して検出すること
が可能である。
【0015】
【実施例】図4は、本発明の実施例による電子弦楽器の
外観を示す概略図である。弦1は、第0フレットF0と
ブリッジ6の間に張設されており、指板・フレット部4
1と撥弦部42を有する。指板・フレット部41は、発
音する音高を決めるために演奏者が指で弦を押さえる部
分である。撥弦部42は、演奏者が発音を目的として弦
を撥く部分である。
【0016】ピッチベンド操作は、2つのベンドセンサ
2,3を用いることにより検出することができる。ベン
ドセンサ2,3は、撥弦部42の両端近傍にそれぞれ設
けられ、例えば6本の各弦についての変位を検出し、弦
毎にピッチベンド操作を検出することができる。
【0017】ベンドセンサ2,3は、撥弦部42の両端
の互いになるべく離れた位置にそれぞれ設ければ、演奏
者が撥弦可能な長手方向の弦位置の範囲が広がる。しか
し、ベンドセンサ2をブリッジ6の極めて近傍に設けて
しまうと、ほとんど弦の変位を検出をできずまたは弦変
位の検出感度が低くなってしまうので好ましくない。ベ
ンドセンサ2,3は、演奏者が撥弦を行う長手方向の弦
位置を挟むように両側にそれぞれ設ければよい。
【0018】ベンドセンサが1つだけでは、ピッチベン
ド操作と撥弦操作を区別することは難しいが、ベンドセ
ンサを2つ設けることにより、ピッチベンド操作と撥弦
操作を区別することが可能になる。
【0019】図5(A)は、ピッチベンド操作を行った
ときの弦変位を示し、図5(B)、図5(C)は撥弦操
作を行ったときの弦変位を示す。図5(A)において、
まず、弦1は第iフレットFi上の点45’とブリッジ
6により支持される。その後、演奏者がピッチベンド操
作により、フレットFi上で弦の長さ方向に対して垂直
方向(点45)に弦1を移動する。弦1は、点45とブ
リッジ6により支持される直線を構成する。
【0020】変位量W1は、第1ベンドセンサ2により
検出される弦の変位量である。変位量W2は、第2ベン
ドセンサ3により検出される弦の変位量である。第1ベ
ンドセンサ2は、撥弦部42内において、ブリッジ6の
近傍に配置され、第2ベンドセンサ3は、撥弦部42内
において、第1ベンドセンサ2よりもブリッジ6から遠
い位置に配置される。第1ベンドセンサ2の位置は、第
2ベンドセンサ3よりもブリッジ6に近いので、ピッチ
ベンド操作が行われた際、変位量W1は、変位量W2よ
りも小さな値となる。
【0021】変位量W1と変位量W2の比は、ブリッジ
6から第1ベンドセンサ2までの距離L1とブリッジ6
から第2ベンドセンサ3までの距離L2の比と同じであ
り、以下の式が成り立つ。
【0022】W2=W1×L2/L1 図5(B)の撥弦操作時において、演奏者が弦1を押さ
えることにより、第iフレットFiとブリッジ6の間に
弦1が張られる。その後、演奏者が弦1に対して撥弦操
作を行う際に、弦1は点46の位置に引っ張られる。弦
1が点46で支えられると、ブリッジ6と第iフレット
Fiの間に2つの直線が構成される。1つは、ブリッジ
6と点46の間の直線であり、もう1つは点46と第i
フレットFiの間の直線である。
【0023】弦の変位量は、ブリッジ6から点46へ向
かうほど増加し、点46を越えると減少する。つまり、
ブリッジ6から点46までは、弦の変位量が直線的に増
加し、点46から第iフレットFiまでは、弦の変位量
が直線的に減少する。
【0024】2つのベンドセンサ2,3は、図4の示す
ように撥弦が可能な範囲である撥弦部42の両端近傍に
それぞれ設けられているので、撥弦操作を行う点46は
必ず2つのベンドセンサ2,3の間に位置する。
【0025】したがって、変位量W1は、ブリッジ6と
点46の間の位置で検出され、変位量W2は、点46と
第iフレットFiの間の位置で検出される。その結果、
変位量W1と変位量W2の比は、ブリッジ6から第1ベ
ンドセンサ2までの距離L1とブリッジ6から第2ベン
ドセンサ3までの距離L2の比と等しくならず、次式の
関係となる。
【0026】W2<W1×L2/L1 図5(C)の撥弦操作時において、演奏者が弦1を押さ
れることにより、第iフレットFi上において、弦1の
垂直方向に少しずれた位置に弦1が固定される。弦1
は、第iフレットFiとブリッジ6の間に張られる。そ
の後、演奏者が弦1に対して撥弦操作を行うと、弦1は
点46に支えられる。弦1が点46で支えられると、ブ
リッジ6と第iフレットFiの間に2つの直線が構成さ
れる。1つは、ブリッジ6と点46の間の直線であり、
もう1つは点46と第iフレットFiの間の直線であ
る。
【0027】ブリッジ6から点46にかけては、弦の変
位量が僅かに変化する直線状に増加し、点46から第i
フレットFiにかけては、弦の変位量が大きく変化する
直線状に増加する。
【0028】変位量W1は、ブリッジ6と点46の間の
位置で検出され、変位量W2は点46と第iフレットF
iの間の位置で検出されるので、変位量W1と変位量W
2の比は、ブリッジ6から第1ベンドセンサ2までの距
離L1とブリッジ6から第2ベンドセンサ3までの距離
L2の比と等しくならず、次式の関係になる。
【0029】W2>W1×L2/L1 以上のように、ピッチベンド操作を行ったときには、W
2=W1×L2/L1の関係が成り立ち、撥弦操作を行
ったときには、W2=W1×L2/L1の関係が成り立
たないので、変位量W1,W2と距離L1,L2の関係
を調べることにより、ピッチベンド操作と撥弦操作を区
別して検出することができる。
【0030】ピッチベンド操作を検出したときには、ピ
ッチベンド操作に応じたピッチ変調の楽音制御を行い、
撥弦操作を検出したときには、撥弦操作に応じた音量や
発音開始の楽音制御を行うことができる。
【0031】以上は、ピッチベンド操作と撥弦操作を区
別する方法について述べた。次は、撥弦操作を行ったと
きの撥弦位置を検出する方法について述べる。図6は、
ブリッジ6から撥弦位置46’までの距離L3の検出方
法を説明するための概略図である。
【0032】演奏者が弦1を押さえることにより、第i
フレットFiとブリッジ6の間に弦1が張られる。その
後、演奏者が弦1の点46’で撥弦操作を行うことによ
り、弦1は点46’から点46へ引っ張られる。
【0033】変位量W1は、第1ベンドセンサ2により
検出される値であり、変位量W2は第2ベンドセンサに
より検出される値である。距離L1は、ブリッジ6と第
1ベンドセンサ2の間の距離であり、距離L2は、ブリ
ッジ6と第2ベンドセンサ3の間の距離であり、共にベ
ンドセンサ2,3の取り付け位置により電子弦楽器固有
のものとして決まる。
【0034】距離Lは、ブリッジ6と第iフレットFi
の間の距離である。第iフレットFiは、演奏者により
押されたフレット位置であり、後に示す超音波センサを
用いてフレット検出(音高検出)することにより検出さ
れる。押されているフレット位置Fiが分かれば、電子
弦楽器の構成よりブリッジ6からフレットFiまでの距
離Lを導き出すことができる。
【0035】ブリッジ6から撥弦位置46に対応する距
離L3は、未知数であるが、以上の既知の変位量W1,
W2および距離L1,L2,Lを用いて、次式により算
出することができる。
【0036】L3=L1×W2×L/{W1×(L−L
2)+W2×L1} 距離L3は、ブリッジ6から撥弦位置46’までの距離
であるので、距離L3が分かれば撥弦位置46’を求め
ることができる。
【0037】撥弦位置46’が分かれば、演奏者が撥弦
する弦位置46’に応じて、音色等を変化させることが
できる。例えば、ブリッジ6に近い位置で撥弦を行った
ときには明るい音色にし、ブリッジ6から遠い位置で撥
弦を行ったときに甘い音色にすることができる。
【0038】図1は、本実施例による電子弦楽器を実現
するための構成図である。電子弦楽器の本体7には、n
+1(例えば、24)のフレットF0〜Fnが弦1の長
手方向に離隔して設けられ、弦1に略直角に固定されて
いる。弦1は、第0フレットF0とブリッジ6の間に例
えば6本並行に直径の異なるものが張設されている。演
奏時には、指板に対して弦1を押さえることにより、各
弦1がフレットF0〜Fnのいずれかに接触する。
【0039】超音波センサ5は、弦1のブリッジ6側に
おいて、6本の各弦に接触するように本体7に固定され
ている。電磁ピックアップ4は、超音波センサ5の近傍
において、6本の弦に対応して本体7に固定されてい
る。
【0040】ベンドセンサ2,3は、2つ設けられてい
る。ベンドセンサ2は、超音波センサ5と電磁ピックア
ップ4の間において、6本の弦に対応して本体1に固定
されている。ベンドセンサ3は、第nフレットFnの近
傍において、6本の弦に対応して本体1に固定されてい
る。
【0041】ベンドセンサ2,3と超音波センサ5と電
磁ピックアップ4は、インターフェース16を介して、
バス22に接続される。CPU11は、バス22を介し
て、インターフェース16、プログラムメモリ12、レ
ジスタ群13、各種テーブル14、スイッチ群17、表
示器18、トーンジェネレータ19に接続される。
【0042】プログラムメモリ12は、ROMで構成さ
れ、後に説明する図7〜図11のフローチャートを実現
するための演算プログラムを記憶している。レジスタ群
13は、RAMで構成され、書き換え可能な各種データ
を記憶している。CPU11は、プログラムメモリ12
に記憶されている演算プログラムに従って、レジスタ群
13を用いて、各種演算を行う。
【0043】各種テーブル14は、ROMで構成され
る。例えば、演奏者が音高指定のために弦を押圧したフ
レットFiを検出した後に、フレット位置Fiからブリ
ッジ6までの距離Lに変換するためのテーブル等を記憶
している。
【0044】スイッチ群17は、電源スイッチ、音色選
択スイッチ、音量調整用スイッチ等を有する。表示器1
8は、スイッチ群17に備えられたスイッチの状態等を
表示する。
【0045】クロック発生回路15は、タイマクロック
信号をCPU11とインターフェース16に供給する。
CPU11は、タイマクロック信号が供給されると、タ
イマ割り込みを発生させ、図8に示す割り込み処理を実
行する。インターフェース16は、タイマクロック信号
を受けると弦振動の最大振幅値を保持し、CPU11か
らのアクセスに備える。
【0046】ベンドセンサ2,3は、例えば6本の弦の
変位量をそれぞれ検出する。ベンドセンサ2,3が検出
する弦変位の周波数帯域は、直流分を含む低周波(直流
〜20Hz)である。ベンドセンサ2,3の詳細な構成
は、後に説明する。CPU11は、インターフェース1
6を介して、ベンドセンサ2,3がそれぞれ検出した弦
の変位量を基に、ピッチベンド操作であるか否かを検出
する。ピッチベンド操作であれば、ピッチ変調の情報や
音色情報等をトーンジェネレータ19に供給する。ま
た、検出された弦の変位量を基に、演奏者が撥弦した弦
の位置を検出する。そして、検出された弦の位置に応じ
た音色等の情報をトーンジェネレータ19に供給する。
【0047】超音波センサ5は、超音波を各弦に発信
し、当該弦を伝搬する超音波が弦と接触しているフレッ
トで反射して生じるエコーを受信する。CPU11は、
超音波の発信からエコーの受信までの時間間隔に基づき
弦と接触しているフレットFiを判別する。弦と接触し
ているフレットFiが判別されると、フレットFiに対
応する音高をトーンジェネレータ19に供給する。
【0048】電磁ピックアップ4は、撥弦時の弦振動の
波形を検出する。ベンドセンサ2,3が検出する弦振動
の周波数帯域は、可聴周波数(20Hz〜20kHz)
である。CPU11は、検出された弦振動波形の振幅に
応じて、キーオン(発音)、キ−オフ(消音)、音量情
報をトーンジェネレータ19に供給する。
【0049】電磁ピックアップ4は、例えば磁石にコイ
ルを巻くことにより形成することができる。弦1は、例
えばピアノ線で形成されており、コイルが巻かれた磁石
と弦1は磁路を形成する。弦1が振動すると、磁路が変
化し、磁束が変化する。磁束が変化すると、電磁誘導に
よりコイルに起電力が生じる。電磁ピックアップ4のコ
イルに発生する起電力を測定することにより、弦振動波
形を検出することができる。
【0050】なお、超音波センサ5および電磁ピックア
ップ4は、例えば特開平1−183692号公報の第1
075頁左下欄〜第1077頁左上欄に開示されている
制御方法により制御可能である。
【0051】トーンジェネレータ19は、CPU11か
ら供給されるキーオン、キーオフ、音色、音高、音量等
の楽音制御データを受け、波形メモリ20から波形読み
出しを行う。読み出された波形は、楽音信号として、サ
ウンドシステム21に供給される。サウンドシステム2
1は、増幅器とスピーカを有し、供給される楽音信号に
応じた発音を行う。
【0052】図2は、ベンドセンサ2,3の構成を示す
ブロック図である。ベンドセンサ2,3は、発光素子3
1と受光センサ33を有する。以下に説明する遮蔽板3
5は、弦の移動に伴い、発光素子31と受光センサ33
の間の光路を遮る。受光センサ33が発光素子31から
受光する光量は、遮蔽板35の位置により変化する。A
/D変換器37は、受光センサ33が受光する光量をデ
ィジタル光量値に変換し、インターフェースに供給す
る。
【0053】図3は、遮蔽板35の位置と発光素子・受
光センサ間の光路面積34の関係を示す。図3(A)に
示すように、無演奏時には弦1が真中に位置し、遮蔽板
35は略垂直方向に位置している。この時、光路面積3
4は約1/2になる。
【0054】図3(B)に示すように、弦1が左に移動
すると、それに伴い遮蔽板35も左側に回転移動する。
最左端に移動すると、光路面積34は最大となる。図3
(C)に示すように、弦1が右に移動すると、それに伴
い遮蔽板35も右側に回転移動する。最右端に移動する
と、光路面積34は最小になる。
【0055】光路面積34は、弦1の位置に応じて変化
するので、受光センサ33は弦1の位置に応じた光量を
受光することができる。ベンドセンサ2,3は、受光セ
ンサ33が受光する光量を基に弦1の変位量を検出でき
る。
【0056】なお、第2ベンドセンサ3は、第1ベンド
センサ2よりもブリッジ6から遠い位置に設けられるの
で、ピッチベンド操作を行った際には、第2ベンドセン
サ3の方が第1ベンドセンサ2よりも大きな弦の変位量
を検出することになる。そのため、第2ベンドセンサ3
の弦変位検出幅を第1ベンドセンサ2のものより大きく
することが望ましい。
【0057】図7は、CPUが演算プログラムに従って
行うメインルーチンの処理を示すフローチャートであ
る。ステップSA1では、レジスタ群13に備えられて
いる各種レジスタの初期設定等の初期化を行う。
【0058】ステップSA2では、スイッチ群17の各
スイッチの状態を検出し、スイッチの状態に応じた各種
処理を行う。スイッチ群17は、例えば音色選択スイッ
チや音量調整用スイッチを有する。
【0059】ステップSA3では、スイッチ群17のス
イッチ状態に応じて、表示器18に表示信号を供給し、
表示させる。ステップSA4では、その他必要な処理を
行う。その後、ステップSA2へ戻り、処理を繰り返
す。
【0060】図8は、タイマ割り込み処理を示すフロー
チャートである。CPU11は、クロック発生回路15
から所定の時間間隔でタイマクロック信号を受けて、以
下の割り込み処理を行う。
【0061】ステップSB1では、フレット検出を行
う。超音波センサ5が各弦に供給した超音波は、弦に接
触しているフレットで反射して、エコーが返ってくる。
CPU11は、超音波の発信からエコーの受信までの時
間間隔に基づいて、弦が接触しているフレットを判別す
る。フレットが判別されると、当該フレットに対応する
音高をトーンジェネレータ19に供給する。
【0062】ステップSB2では、ピッチベンド検出を
行う。弦変位量W1は、第1ベンドセンサ2により検出
され、弦変位量W2は第2ベンドセンサ3により検出さ
れる。CPU11は、弦変位量W1,W2を基に、ピッ
チベンド操作であるのか、または撥弦操作であるのかを
判別する。また、撥弦操作であると判別されたときに
は、演奏者が撥弦操作を行った弦位置の検出を行う。ピ
ッチベンド検出の詳細は、後にフローチャートを参照し
ながら説明する。
【0063】ステップSB3では、撥弦検出を行う。電
磁ピックアップ4が検出する撥弦時の弦振動波形の振幅
値を基に、キーオン、キーオフ、音量信号をトーンジェ
ネレータ19に供給する。トーンジェネレータ19にキ
ーオン信号が供給されると、発音が開始される。その
後、タイマ割り込み処理は終了し、割り込み前の処理が
再開される。
【0064】図9は、図8のステップSB2におけるピ
ッチベンド検出処理の詳細を示すフローチャートであ
る。ステップSC1では、第1ベンドセンサ2により検
出される弦の変位量をレジスタW1に格納する。
【0065】ステップSC2では、第2ベンドセンサ3
により検出される弦の変位量をレジスタW2に格納す
る。ステップSC3では、演奏者がピッチベンド操作を
行った場合の第2変位量の理論値W2’を求める。図5
(A)に示したように、ピッチベンド操作を行うと、ブ
リッジ6と点45の間に直線ができる。したがって、予
測される第2変位量理論値W2’は、次式で求められ
る。
【0066】W2’=W1×L2/L1 求められた第2変位量は、レジスタW2’に格納され
る。ステップSC4では、第2変位量の理論値W2’と
測定値W2の比較を行う。理論値W2’は、前ステップ
で理論的に求められた値であり、測定値W2はステップ
SC2で第2ベンドセンサ3により実際に検出された値
である。理論値W2’と測定値W2について、次式の関
係が成り立つか否かを調べる。
【0067】|W2−W2’|<TH しきい値THは、許容できる誤差範囲を表す値である。
なお、しきい値THは、固定値でもよく、演奏者がスイ
ッチ群17を用いて任意の値を設定できるようにしても
よい。
【0068】測定値W2と理論値W2’の差の絶対値が
しきい値THよりも小さければ、ピッチベンド操作であ
ると判断され、ステップSC5へ進む。ステップSC5
では、ピッチベンド操作に応じたピッチ変調等の処理が
行われる。詳細は、後に説明する。その後、ピッチベン
ド検出処理は終了する。
【0069】一方、測定値W2と理論値W2’の差の絶
対値がしきい値THよりも小さくなければ、図5
(B)、(C)のような撥弦操作であると判断され、ス
テップSC6へ進む。ステップSC6では、撥弦操作に
応じた処理を行う。まず、演奏者が撥弦操作を行った弦
位置を検出し、その後、弦位置に応じた音色制御等の処
理を行う。詳細は、後に説明する。その後、ピッチベン
ド検出処理は終了する。
【0070】図10は、図9のステップSC5における
ピッチベンド操作処理の詳細を示すフローチャートであ
る。ステップSD1では、現在発音中であるか否かをチ
ェックする。現在発音中でなければ、ベンド操作の処理
を行う必要はないので、そのまま処理を終了する。一
方、現在発音中であるときには、ベンド操作の処理を行
うために、ステップSD2へ進む。
【0071】ステップSD2では、第1変位量レジスタ
W1に所定の係数αを乗じて、αW1をピッチベンド情
報としてトーンジェネレータ(TG)19に送出する。
その後、ピッチベンド操作処理は終了する。なお、トー
ンジェネレータ19は、ピッチベンド情報を受けて、例
えばピッチ変調や音色変調等を行う。
【0072】図11は、図9のステップSC6における
撥弦操作処理の詳細を示すフローチャートである。ステ
ップSE1では、フレット(Fi)/距離(L)の変換
を行う。図8のタイマ割り込み処理内のフレット検出
(ステップSB1)において、弦1が接触しているフレ
ット番号Fiが既に検出されている。CPU11は、各
種テーブル14に記憶されているフレット(Fi)/距
離(L)テーブルを用いて、検出されたフレット番号F
iを基に、距離(L)を表引きする。距離Lは、図6に
示すように、フレットFiからブリッジ6までの距離で
ある。変換された距離Lは、レジスタLに格納される。
【0073】ステップSE2では、距離L3を求める。
距離L3は、図6に示すように、演奏者が撥弦操作を行
った弦位置46’からブリッジ6までの距離である。距
離L3は、前述のように、次式を用いて求めることがで
きる。
【0074】L3=L1×W2×L/{W1×(L−L
2)+W2×L1} ここで、距離Lは、前ステップでテーブルを用いて求め
られた値である。距離L1,L2は、それぞれ第1ベン
ドセンサ2からブリッジ6までの距離と、第2ベンドセ
ンサ3からブリッジ6までの距離であり、共に電子弦楽
器固有の値である。弦変位量W1,W2は、それぞれ第
1ベンドセンサ2、第2ベンドセンサ3から検出された
値である。
【0075】求められた距離L3は、レジスタL3に格
納される。ステップSE3では、距離L3に応じて、適
切な音色情報(TC)を修飾する。
【0076】ステップSE4では、現在発音中であるか
否かをチェックする。現在発音中でなければ、音色情報
(TC)は発音処理に必要ないので、そのまま処理を終
了する。一方、現在発音中であるときには、発音処理を
行うために、ステップSE5へ進む。
【0077】ステップSE5では、音色情報(TC)を
トーンジェネレータ(TG)19に送出し、処理を終了
する。トーンジェネレータ19には、音色情報以外の音
高等その他の楽音制御データを送出することもできる。
【0078】距離L3に応じて音色を変化させるには、
波形メモリ20に、撥弦位置(距離L3)に対応した複
数の波形を記憶しておけば、距離L3に応じて読み出す
波形を変えることにより実現することもできる。
【0079】また、ローパスフィルタ(LPF)を用い
て、撥弦位置(距離L3)に応じて、カットオフ周波数
を変化させ、音色を変えるようにしてもよい。以上のよ
うにして、撥弦位置を検出することにより、撥弦位置に
応じた音色を発音させることができる。
【0080】本実施例による電子弦楽器は、ベンドセン
サを撥弦部の両端に2つ設けているので、ピッチベンド
操作と撥弦操作を区別して検出することができる。これ
により、撥弦操作を行った際、撥弦時に音高が高くなる
等の意図しないピッチベンド制御を排除することができ
る。
【0081】また、演奏者が撥弦操作を行った撥弦位置
を検出することができるので、撥弦位置に応じた音色等
の楽音制御データを設定することができる。なお、本実
施例では、ベンドセンサを2つ用いる場合について説明
したが、3つ以上を用いて弦の変位を検出するようにし
てもよい。
【0082】また、ベンドセンサ2,3は、低周波の弦
変位を検出し、電磁ピックアップ4は、可聴周波数の弦
変位(弦振動)を検出するものとして、別々に構成を示
したが、低周波数から可聴周波数までの範囲(直流〜2
0kHz)を検出することができるセンサを用いれば、
ベンドセンサ2,3と電磁ピックアップ4を1つの構成
で実現することもできる。
【0083】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0084】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
撥弦部の両端における弦の変位量をそれぞれ検出するこ
とができるので、演奏者が行うピッチベンド操作と撥弦
操作を区別して検出することが可能であり、適切なピッ
チベンド制御および撥弦制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による電子弦楽器を実現する
ための構成図である。
【図2】 ベンドセンサの構成を示すブロック図であ
る。
【図3】 ベンドセンサの遮蔽板の位置と発光素子・受
光センサ間の光路面積の関係を示す動作説明図である。
【図4】 本実施例による電子弦楽器の外観を示す概略
図である。
【図5】 図5(A)はピッチベンド操作を行ったとき
の弦変位を示し、図5(B)、図5(C)は撥弦操作を
行ったときの弦変位を示す概略図である。
【図6】 ブリッジから撥弦位置までの距離L3の検出
方法を説明するための概略図である。
【図7】 CPUが演算プログラムに従って行うメイン
ルーチンの処理を示すフローチャートである。
【図8】 タイマ割り込み処理を示すフローチャートで
ある。
【図9】 図8のステップSB2におけるピッチベンド
検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】 図9のステップSC5におけるピッチベン
ド操作処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】 図9のステップSC6における撥弦操作処
理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】 従来技術による電子弦楽器の外観を示す概
略図である。
【図13】 ピッチベンド操作(チョ−キング)の演奏
手法を説明するための概略図である。
【図14】 図14(A)はピッチベンド操作を行った
ときの弦変位を示し、図14(B)は撥弦操作を行った
ときの弦変位を示す概略図である。
【符号の説明】
1 弦、 2,3 ベンドセンサ、 4 電磁ピッ
クアップ、 5 超音波センサ、 6 ブリッジ、
7 本体、 11 CPU、 12プログラム
メモリ、 13 レジスタ群、 14 各種テーブ
ル、 15クロック発生回路、 16 インターフ
ェース、 17 スイッチ群、18 表示器、 1
9 トーンジェネレータ、 20 波形メモリ、21
サウンドシステム、 22 バス、 31 発光
素子、 33 受光センサ、 34 光路面積、
35 遮光板、 37 A/D変換器、41 指板
・フレット部、 42 撥弦部、 50 ベンドセ
ンサ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 押圧部と撥弦部からなる弦(1)と、 前記弦の長手方向に互いに離隔して設けられ、演奏者が
    前記弦の押圧部を押圧することにより該弦が少なくとも
    1つに接触可能な複数のフレット(F0〜Fn)と、 前記弦に超音波を発信し、該弦を伝播する超音波が弦と
    接触するフレットで反射して生じるエコーを受信する超
    音波センサ(5)と、 演奏者が撥弦操作をすることにより生じる弦振動の振動
    幅を検出する弦振動検出手段(4)と、 前記弦の撥弦部の両端近傍にそれぞれ設けられ、演奏者
    が前記弦を変位させたときに該弦の変位量をそれぞれ検
    出するための弦変位検出手段(2,3)とを有する電子
    弦楽器コントローラ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電子弦楽器コントローラ
    と、 前記超音波センサが発信する超音波とそれに対応して受
    信するエコーの伝播時間に基づき、該弦が接触する前記
    フレットの位置を判別し、該フレット位置に対応する音
    高情報を出力する音高情報出力手段と、 前記弦振動検出手段により検出される振動幅に応じて音
    量情報を出力する音量情報出力手段と、 前記弦変位検出手段により検出される弦の変位量に応じ
    て楽音制御情報を出力する楽音制御情報出力手段とを有
    する電子弦楽器。
  3. 【請求項3】 前記楽音制御情報出力手段は、前記弦の
    撥弦部の両端においてそれぞれ検出される弦の変位量に
    基づいて、前記弦の押圧部または撥弦部のいずれにおけ
    る弦変位であるのかを判断する手段を含み、弦変位が弦
    の押圧部または撥弦部のいずれで生じたかに基づいて異
    なる楽音制御情報を出力する請求項2記載の電子弦楽
    器。
  4. 【請求項4】 前記楽音制御情報出力手段は、弦変位が
    弦の撥弦部で生じたと判断されたときには、撥弦部内の
    どの位置で弦変位が生じたかを判断する手段と、弦変位
    が生じた撥弦部内の弦位置に応じて楽音制御情報を出力
    する手段を含む請求項3記載の電子弦楽器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2023085598A (ja) * 2021-12-09 2023-06-21 カシオ計算機株式会社 電子弦楽器

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