JPH08158857A - 内燃機関における排気浄化触媒の性能回復装置 - Google Patents

内燃機関における排気浄化触媒の性能回復装置

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JPH08158857A
JPH08158857A JP6302293A JP30229394A JPH08158857A JP H08158857 A JPH08158857 A JP H08158857A JP 6302293 A JP6302293 A JP 6302293A JP 30229394 A JP30229394 A JP 30229394A JP H08158857 A JPH08158857 A JP H08158857A
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忠樹 太田
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彰 田山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】触媒の被毒物質蓄積による劣化に対して性能を
回復する。 【構成】触媒が被毒物質で一時的に劣化される設定温度
以上である時間を積算し (S3→S6) 、該積算時間が
設定時間に達すると触媒の性能劣化から被毒物質の蓄積
量を検出し (S7→S8) 、被毒物質の脱離が必要と判
定されたときに空燃比を過渡的に補正して被毒物質を脱
離させ、脱離が完了後に空燃比を元の値に戻す (S8→
S9) 。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の排気浄化触
媒に堆積するS (硫黄) 等の被毒物質を除去し、性能を
回復させる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、前記のような被毒物質に対する性
能回復の装置は存在せず、劣化検出についても触媒上流
と下流とに設けたO2 センサの出力値に基づいて通常の
意味での触媒の劣化を判定する方式が知られるのみであ
り (特開平4−116239号公報参照) 、被毒物質に
よる劣化を分離して検出できるものはない。
【0003】即ち、上記従来の触媒劣化検出は、触媒で
の酸素吸着能若しくは酸素使用に伴う残存O2 量の低下
に依存する触媒前後に装着されたO2 センサの出力の違
いから (具体的にはリッチ・リーン周期の違い) 触媒の
劣化判定を行ったものであり、触媒の永久劣化部分 (熱
履歴等により触媒機能が回復不能な劣化:所謂耐久劣化
部分) の大きさの判定に用いられたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように従来装置に
あっては、回復不能な永久劣化の判定のみを行ってお
り、S等の被毒物質堆積による可逆性を有した一過性の
劣化を検出するものではなく、堆積された被毒物質を脱
離して元の状態に戻す機能がないため、例えばPd(パ
ラジウム) を主原料とする触媒のように前記一過性の劣
化を受けやすい触媒を、特にS含有量の多い燃料を使用
する地域で使用する場合には、触媒容量、貴金属担持量
を増加させる等のコストが嵩む方式をとるか、場合によ
っては該触媒の使用を制限する等の対策が必要であっ
た。
【0005】本発明は、このような従来の問題点に鑑み
なされたもので、排気燃料中の被毒物質、特にSによる
一過性の性能劣化を使用中に解消できるようにした内燃
機関における排気浄化触媒の性能回復装置を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1の発
明は、図1に示すように、内燃機関の排気系に介装され
る排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記排気浄化触媒への被毒物質の蓄積量を設定温度領域
における設定時間内の触媒性能低下に基づいて推定する
被毒物質蓄積量推定手段と、前記推定された被毒物質の
蓄積量に基づいて機関に供給される混合気の空燃比を過
渡的に補正して触媒基材に蓄積された被毒物質の脱離を
行わせる被毒物質脱離手段と、を含んで構成したことを
特徴とする。
【0007】また、請求項2の発明では、前記被毒物質
脱離手段は、推定された被毒物質の蓄積量に基づいて、
前記過渡的に補正される空燃比と、該補正空燃比に維持
する時間とを設定して空燃比補正を行いつつ補正後の被
毒物質の蓄積量を検出し、被毒物質の蓄積量が所定レベ
ルとなるまで前記空燃比補正を繰り返す動作を行うもの
であることを特徴とする。
【0008】また、請求項3の発明では、前記被毒物質
蓄積量推定手段は、触媒の形態が安定する所定の温度状
態で該触媒の性能回復不能な永久劣化による被毒物質の
蓄積量を検出し、該永久劣化分と前記設定温度領域にお
ける設定時間内の触媒性能低下に基づいて推定された被
毒物質の蓄積量とから性能回復可能な一時劣化による被
毒物質の蓄積量を推定し、前記被毒物質脱離手段は、前
記被毒物質の一時劣化による蓄積分が脱離されるまで脱
離処理を行うことを特徴とする。
【0009】また、請求項4の発明では、前記被毒物質
蓄積量推定手段における被毒物質の蓄積量の検出は、前
記排気浄化触媒の上流側に備えたO2 センサの出力値に
基づいて補正前の空燃比に制御するフィードバック制御
を行い、該上流側のO2 センサと触媒下流側に備えたO
2 センサとの出力値が反転する周期の比に基づいて検出
するものであることを特徴とする。
【0010】また、請求項5の発明では、前記被毒物質
脱離手段は、空燃比のリッチ化による触媒のメタル化傾
向の小さい温度領域では空燃比をリッチ化して被毒物質
の脱離を促進させ、前記触媒のメタル化傾向の大きい温
度領域では空燃比をリーン化して該メタル化を抑制する
ものであることを特徴とする。
【0011】
【作用】請求項1の発明によれば、触媒に被毒物質が蓄
積されると性能が低下し、該性能の低下は被毒物質の蓄
積量に比例的であると考えられるから、設定温度領域に
設定時間内での触媒性能の低下に基づいて被毒物質の蓄
積量を推定することができる。
【0012】一方、空燃比を補正することで被毒物質を
脱離できるので、過渡的に空燃比を補正することによ
り、前記推定された被毒物質の蓄積量に応じた被毒物質
が脱離処理を行って触媒の性能を回復させることができ
る。請求項2の発明によれば、燃料中に含有される被毒
物質の量が燃料毎に異なっていても、過渡的に補正され
る空燃比と該補正空燃比に維持する時間とを設定して処
理を行い、各回の処理毎に、補正後の被毒物質を検出し
て被毒物質の蓄積量が所定のレベルとなるまで処理が繰
り返されるので、十分に性能回復を図ることができる。
【0013】請求項3の発明によれば、所定の温度状態
では触媒の形態が安定し、一時的な被毒物質の蓄積が無
いので、該温度状態にて触媒の性能回復不能な永久劣化
による被毒物質の蓄積量を検出でき、該永久劣化分と前
記設定温度領域における設定時間内の触媒性能低下に基
づいて推定された被毒物質の蓄積量とから性能回復可能
な一時劣化による被毒物質の蓄積量を推定することがで
きる。
【0014】このようにして性能回復可能なつまり脱離
可能な被毒物質の蓄積量を推定できるので、該推定され
た蓄積分が脱離されたことを検出して効率良く脱離処理
を行うことができる。また、請求項4の発明によれば、
触媒に被毒物質が蓄積すると酸素ストレージ量が減少す
る結果、触媒下流側のO2 センサの出力値が反転する周
期が増大するので、上流側のO2 センサの出力値の反転
周期との比が変化し、それによって被毒物質の蓄積量を
推定することができる。
【0015】また、請求項5の発明によれば、空燃比を
リッチ化すると被毒物質を脱離できる一方で触媒のメタ
ル化傾向が増大するが、該メタル化傾向は温度領域によ
って異なるので、メタル化傾向の小さい温度領域では空
燃比をリッチ化して被毒物質の脱離を促進させ、前記触
媒のメタル化傾向の大きい温度領域では空燃比をリーン
化して該メタル化を抑制するようにする。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。一実施例の構成を示す図2において、内燃機関1の
排気通路2にはPd (パラジウム) を主成分とする排気
浄化触媒3が介装され、該排気浄化触媒3の上流側及び
下流側に排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する
2 センサ4,5が装着されている。
【0017】また、前記排気浄化触媒3には、触媒の温
度を検出する温度センサ6が装着されている。尚、触媒
温度を直接検出する代わりに触媒近傍の排気温度を検出
してもよい。前記O2 センサ4,5及び温度センサ6の
信号は、マイクロコンピュータを内蔵したコントロール
ユニット7に出力される。一方、機関1の吸気通路8に
は、燃料噴射弁9が装着され、前記コントロールユニッ
ト7は、前記上流側のO2 センサ4で検出された空燃比
を基本とし、下流側のO2 センサ5で検出された空燃比
による修正制御等を行って目標空燃比に近傍に維持する
ように前記燃料噴射弁9からの燃料噴射量を制御してい
る。
【0018】図3は、前記コントロールユニット7によ
る制御ブロック図を示す。概要を説明すると、O2 セン
サ4,5の出力値の反転周期比を検出する反転周期比検
出部Aと、温度センサ6の出力から触媒温度を検出する
触媒温度検出部Bと、これら排気浄化触媒3の上流及び
下流の空燃比の反転周期の比と排気浄化触媒3の温度
(又は排気温度) とに基づいて、永久劣化と排気浄化触
媒3のS (硫黄) 蓄積による一時的劣化とを区別して判
定する劣化判定部Cと、該劣化判定結果に基づいて機関
に供給する燃料量のフィードバック補正係数の制御定数
の変更、ここでは通常のPI制御定数を変更することに
より空燃比の制御中心値をリッチ或いはリーンへと切り
換えて過渡的に補正される空燃比を設定すると共に該空
燃比に滞留する時間を設定する脱離条件決定部Dと、決
定さされた脱離条件にしたがって前記過渡的に空燃比を
補正して被毒物質の脱離を行わせる脱離処理部Eと、か
らなる。ここで、前記過渡的な空燃比補正を行いつつ前
記劣化判定部によりS蓄積による劣化判定を行い、S蓄
積が無くなるまで過渡的な空燃比補正による脱離処理を
繰り返し、S蓄積による劣化が見られず永久劣化部分の
みになったことが検出された後は、元の空燃比 (理論空
燃比) に戻すべく元のPI制御定数に戻す。
【0019】次に本発明を実施するに当り、考慮すべき
点について説明する。高濃度のSを含有する燃料で機関
を運転した場合 (ここで高濃度といっているのは、例え
ば北米等で使用されるもので300ppm程度の燃料が
珍しくない)、排気中のSO2 ,H2 S濃度が高くな
り、このような条件以下で触媒を使用した場合、Sは触
媒内の基材に蓄積し、触媒作用を阻害する。
【0020】Pd系触媒はこの影響が大きく、そのため
に低温活性が優れているにも関わらず、使用が制限を受
けると共に、拡大採用への大きな課題の一つとなってい
る (触媒が燃料を選ぶという点) 。先に述べた影響と
は、低温時の触媒のエミッション転換効率 (T50;50
°Cでの転換効率) の低下もさることながら、高温排気
下、例えば550°C以上の排気下でのエミッション転
換性能の低下 (排気への暴露時間の経過とともに性能が
低下する傾向) が顕著となり、排気性能を著しく低下さ
せるということである。そして、この性能劣化の程度に
関しては触媒内へのS蓄積量に比例する。
【0021】この550°C以上の領域での排気への長
時間暴露は、例えば基材へのS蓄積のないPd触媒でも
性能の低下がある。即ち、時間経過とともに触媒内Pd
が酸化形態から金属Pdに変化するにつれてこの傾向は
強まっていくため、時間経過当りの性能低下傾向が激し
くなる。更に、前述の“触媒内へのS蓄積量に比例す
る”とは、この現象が基材へのS蓄積により、更に顕著
になると共に、性能低下傾向が基材内S蓄積量に比例し
て悪化することを指している。
【0022】また、触媒内S蓄積量については、排気中
のS量に比例するばかりでなく、他の排気条件 (排気空
燃比,温度) 、排気への暴露時間により異なり、例え
ば、リッチよりリーンが、また高温より中間温が、更に
は時間経過が長いほど、触媒内へのS蓄積量が増加す
る。逆に、蓄積したS量を脱離 (飽和条件の変更) する
ためにはリーンよりリッチが、中間温域より高温域が適
している (尚、特に地域によっては燃料毎にSの含有量
に大きなばらつきがあるため、Sを含有していない燃料
下で上記指定の領域を設定しておいてこまめに劣化検出
を行いながら脱離を繰り返すようにすることが好まし
い) 。
【0023】本発明は、これらのことを考慮したもので
あり、現状の触媒内S蓄積量を知ってそれ以上の蓄積
を避けると共に、脱離しやすい条件で基材内Sの脱離
を実施するようにしたものである。つまり、先に述べた
例えば550°C以上での排気下でのエミッション転換
性能の低下 (排気への暴露時間の経過とともに性能が低
下《熱一時劣化》する) から、触媒内へのS蓄積量を推
定し、この量に応じて蓄積Sの脱離処理条件、脱離に要
する時間を算出するようにしたものである。
【0024】勿論先に述べたように、この領域における
性能低下はS蓄積に比例する《S蓄積による性能の熱一
時劣化》だけではなく、一般的に劣化と呼ばれている、
所謂回復しない《永久劣化》によっても助長されるた
め、この2種の現象の分離が必要であり、それによっ
て、S蓄積分による熱一時劣化部分を知って基材内S蓄
積量を算出し、それを基に脱離条件、時間を設定する。
【0025】現象の分離に当たっては、これもPd触媒
の特徴の一つである酸化Pdの形態でほぼ安定している
450°C以下の排気温度状態において、一般的に使用
されているデュアル・O2 センサ方式による触媒性能低
下 (永久劣化) 量の判定を行い、これによって予め永久
劣化により想定される熱一時劣化分を知って、この量か
らの低下分を基材内S蓄積による性能低下分として扱
う。
【0026】例えば、エミッション転換性能に関し、高
温排気に触媒が曝された場合の、新品時のS蓄積がない
触媒の性能、走行距離8万Km耐久に相当する場合の
S蓄積と性能低下の傾向 (〜) を示したものを図4
に示す。但し、本図は模式的に示したものであり、運転
条件等により異なる。このように、S蓄積量の増加に伴
い性能の低下が見られる。更に、この変化は一過性であ
り、後に示すS脱離方法を採用して脱離を行い、それに
より基材内S蓄積量が低下すると、各々〜、〜
、〜へと性能が回復する。
【0027】また、ここでいう新品との差が永久劣
化による部分であり、この部分に関しては、先に述べた
デュアル・O2 センサ方式、つまり触媒前後に設けたO
2 センサの信号を基に触媒の劣化を知る。これは、触媒
下流のO2 センサの信号が触媒の転換性能が高いほど、
触媒上流端部に設けたO2 センサ信号に比較して、リッ
チ・リーン周期が低下 (触媒の酸素吸着能による) する
ことを利用したものである。
【0028】この情報を基に、永久劣化部分を検出する
一方、設定温度域以上の積算時間が設定時間に達した時
に再度デュアル・O2 センサ方式で触媒性能 (劣化代)
の測定を実施する。そして、前記検出された永久劣化部
分と設定時間後に再度検出された触媒性能の劣化代とを
基に推定されたS蓄積量に対して過渡的な空燃比の補正
量と、該補正空燃比での滞留時間とを設定して脱離処理
を行い性能回復を図る。前記滞留時間経過後に当初の空
燃比に戻して再度前記同様の触媒前後に設けたO2 セン
サの信号を基に触媒の劣化判定を行い、前記脱離処理に
より一時的な劣化によるS蓄積量が無くなっているかを
調べて、無くなっていなければ再び劣化代に応じて過渡
的な空燃比の補正量と滞留時間とを設定して脱離処理を
行い、一時劣化によるS蓄積量が無くなるまでかかる脱
離処理を繰り返す。
【0029】このようにして一時劣化によるS蓄積量が
無くなり永久劣化分のみになった後は、空燃比を定常的
に元の空燃比に戻す。図5は、かかる処理の具体的な実
施例のフローチャートを示す。ステップ1では、一時劣
化判定に基づく脱離動作中であるか否かを判定し、脱離
動作中と判定されたときは該脱離動作が終了するのを待
ってから、また、脱離動作中でないと判定された場合
は、そのままステップ3へ進む。
【0030】ステップ3では、前記温度センサ6によっ
て検出される触媒温度が設定温度 (550°C) 以上で
あるかを判定する。そして設定温度以上と判定された場
合は、ステップ6へ進み該設定温度以上である時間を積
算する。ここで、検出された触媒温度のレベルに応じて
重みを付けて (高温であるほど重み付けを大とする)積
算すれば精度が向上するので望ましい。
【0031】また、ステップ3で設定温度未満と判定さ
れたときはステップ4へ進み、一時的に蓄積されたSが
脱離されて性能回復する温度 (400°C) 以下に低下
したか否かを判定し、低下したと判定された場合はステ
ップ5へ進んで前記設定温度以上にある時間の積算値を
クリアし再度最初から積算を行う。これは、この温度域
を通っている間に劣化が回復するためである。
【0032】ステップ7では、前記ステップ4で積算さ
れた設定温度以上ある積算時間が設定時間 (例えば10
分) に達したか否かを判定する。そして、設定時間に達
したときにステップ8へ進み、触媒の劣化検出を行う。
具体的には、図6に示したフローチャートにより、常時
行われている劣化判定の中の一時劣化判定の結果を読み
込む。
【0033】図6に従って説明すると、ステップ21で
は、上流側のO2 センサ4の出力値 (リッチ,リーン)
が反転する周期TF を算出し、ステップ22では同様に下
流側のO2 センサ5の出力値が反転する周期TR を算出
する。ステップ23で触媒温度が450°C以下であるか
否かを判定し、450°C以下と判定されたときは、ス
テップ24へ進んで前記触媒の永久劣化部分を判定する。
具体的には、前記上流側のO2 センサ4の反転周期TF
と下流側のO2 センサ5の反転周期TR との比 (=TR
/TF ) によって該永久劣化部分を例えば走行距離1万
Km相当、3万Km相当、5万Km相当、10万Km相
当の値に類別する。具体的には、図7に示したように反
転周期比TR /TF に応じて永久劣化分相当の走行距離
を予め定めたマップから検索して求める。
【0034】また、ステップ23で触媒温度が450°C
より高いと判定された場合は、ステップ25へ進み一時劣
化判定を行う。そして、前記図5のステップ8へ進んだ
ときに、前記設定時間経過前にステップ23で判定された
永久劣化分と設定時間後におけるステップ25での一時劣
化の判定結果 (=TR /TF ) とを読み込み、ステップ
9で該一時劣化の判定結果によって推定されるS蓄積量
が永久劣化分 (走行距離相当値) より増大して脱離処理
が必要か否かを判定する。
【0035】一時劣化によりS蓄積量が増大して脱離が
必要と判定されたときは、ステップ10へ進んで脱離処理
条件を設定して脱離処理を行わせる。以下、具体的な脱
離処理条件の設定について説明する。基本的には排気の
リッチ化により基材内に蓄積されたSが脱離することを
利用するが、リッチ化は一方でPdのメタル化を促進し
て性能低下をもたらすため、これらを加味して、以下の
制御を行う。まず、500°C以下の条件においてはS
蓄積量に応じて現行設定空燃比を1%〜5%程度までリ
ッチ化する。この領域はPdのメタル化傾向が少ない領
域であるため、リッチ化を行っても性能低下が少なく、
効果的にS脱離処理を行えるためである。前記空燃比の
リッチ化 (%)の設定は、前記ステップ24で求めた永久
劣化分 (走行距離相当値) と一時劣化の判定結果 (=T
R /TF ) とに基づいて例えば図8に示したようなマッ
プからの検索により行う。尚、図示しないが後述するよ
うに該温度領域ではリッチ化の設定と共に滞留時間を同
時に設定する。
【0036】これに比べて500°C以上〜600°C
以下の領域においては、Pdのメタル化傾向が強く、リ
ッチ化させて還元雰囲気中のH2 によりH2 Sに化学変
化させて脱離処理を行うよりもむしろリーン化すること
により、酸素の量を多くすることでPdOがPdに化学
変化することを阻止してメタル化傾向の加速傾向を鈍ら
す方が得策であるので、制御もS蓄積量に応じて更にリ
ーン化する。これもS蓄積量に応じて1%〜5%程度で
あり前記同様にして設定されたリーン化のマップ (図示
せず) からの検索により行う。
【0037】更に、600°C以上の条件では、リッチ
化による性能回復が比較的短時間で行え、リッチ化によ
るPdのメタル化の加速よりも、S脱離量の増加による
性能回復が勝っており、先の場合と違って500°C以
下同様にリッチ化を行う。これもS蓄積量に応じて1%
〜5%程度であり、滞留時間と共にマップからの検索に
より設定する。
【0038】これらリッチ化に維持する滞留時間は各々
の温度範囲、例えば400°C〜500°Cの領域にお
いては実時間で、1%:10分〜5%:15分まで決定
する。また、600°C以上の領域においては実時間を
1/2倍し、1%:5分〜5%:8分まで決定する。
【0039】これら設定時間が経過したときは、当初の
空燃比に戻し先と同様な動作をもって、再度S蓄積量の
検出を行い、まだ、脱離が必要であるときは検出された
S蓄積量に応じて前記の脱離処理を繰り返す。尚、検出
時に空燃比を当初の値に戻すのはO2 センサの反転周期
比による検出を正確に行うためには理論空燃比で実行す
る必要があるためである。
【0040】このようにして、永久劣化分のみになるま
で脱離処理を繰り返して触媒性能を回復させる。その後
はステップ7で脱離処理が不要と判定されて、ステップ
9へ進み、空燃比を元の値 (理論空燃比) に戻し、前記
積算時間をクリアする。この後は同様にして再度設定温
度域 (550°C以上) に設定時間以上留まる毎にS蓄
積量の検出を行い必要に応じて脱離処理を行う。
【0041】このように、一時劣化により蓄積されるS
分を検出して脱離を行い、触媒性能を回復させることが
できるので、該Pd系の触媒の使用の制限を回避でき、
貴金属担持量を増加させる必要もなくコスト性も維持で
きる。
【0042】
【発明の効果】請求項1の発明によると、設定温度領域
に設定時間内での触媒性能の低下に基づいて被毒物質の
蓄積量を推定し、該推定された蓄積量に応じて過渡的に
空燃比補正を行うことにより被毒物質を脱離して触媒の
性能を回復させることができる。
【0043】請求項2の発明によると、燃料中に含有さ
れる被毒物質の量が燃料毎に異なっていても、被毒物質
の蓄積量が所定のレベルとなるまで脱離処理が繰り返さ
れるので、十分に性能回復を図ることができる。請求項
3の発明によると、被毒物質蓄積の永久劣化分と一時劣
化が生じる設定条件下で推定された被毒物質の蓄積量と
から性能回復可能な一時劣化による被毒物質の蓄積量を
推定し、該推定された一時劣化分を効率良く脱離処理を
行うことができる。
【0044】請求項4の発明によると、触媒上流側と下
流側とに備えたO2 センサの出力値の反転周期の比によ
って被毒物質の蓄積量を推定することができる。また、
請求項5の発明によると、メタル化傾向の小さい温度領
域では空燃比をリッチ化して被毒物質の脱離を促進さ
せ、前記触媒のメタル化傾向の大きい温度領域では空燃
比をリーン化して該メタル化を抑制することにより永久
劣化を抑制しつつ性能回復を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成・機能を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施例のシステム構成を示す図。
【図3】同上実施例の制御ブロック図。
【図4】S蓄積量と熱一時劣化の傾向を示す図。
【図5】同上実施例の脱離条件を設定するルーチンのフ
ローチャート。
【図6】同じく劣化判定ルーチンのフローチャート。
【図7】同上実施例で使用する永久劣化分検出用のマッ
プ。
【図8】同じく総合劣化検出用のマップ。
【符号の説明】
1 内燃機関 2 排気通路 3 排気浄化用触媒 4 上流側のO2 センサ 5 下流側のO2 センサ 6 温度センサ 7 コントロールユニット 9 燃料噴射弁

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の排気系に介装される排気浄化触
    媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、 前記排気浄化触媒への被毒物質の蓄積量を設定温度領域
    における設定時間内の触媒性能低下に基づいて推定する
    被毒物質蓄積量推定手段と、 前記推定された被毒物質の蓄積量に基づいて機関に供給
    される混合気の空燃比を過渡的に補正して触媒基材に蓄
    積された被毒物質の脱離を行わせる被毒物質脱離手段
    と、 を含んで構成したことを特徴とする内燃機関における排
    気浄化触媒の性能回復装置。
  2. 【請求項2】前記被毒物質脱離手段は、推定された被毒
    物質の蓄積量に基づいて、前記過渡的に補正される空燃
    比と、該補正空燃比に維持する時間とを設定して空燃比
    補正を行いつつ補正後の被毒物質の蓄積量を検出し、被
    毒物質の蓄積量が所定レベルとなるまで前記空燃比補正
    を繰り返す動作を行うものであることを特徴とする請求
    項1に記載の内燃機関における排気浄化触媒の性能回復
    装置。
  3. 【請求項3】前記被毒物質蓄積量推定手段は、触媒の形
    態が安定する所定の温度状態で該触媒の性能回復不能な
    永久劣化による被毒物質の蓄積量を検出し、該永久劣化
    分と前記設定温度領域における設定時間内の触媒性能低
    下に基づいて推定された被毒物質の蓄積量とから性能回
    復可能な一時劣化による被毒物質の蓄積量を推定し、 前記被毒物質脱離手段は、前記被毒物質の一時劣化によ
    る蓄積分が脱離されるまで脱離処理を行うことを特徴と
    する請求項1又は請求項2に記載の内燃機関における排
    気浄化触媒の性能回復装置。
  4. 【請求項4】前記被毒物質蓄積量推定手段における被毒
    物質の蓄積量の推定は、前記排気浄化触媒の上流側に備
    えたO2 センサの出力値に基づいて補正前の空燃比に制
    御するフィードバック制御を行い、該上流側のO2 セン
    サと触媒下流側に備えたO2センサとの出力値が反転す
    る周期の比に基づいて検出するものであることを特徴と
    する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機
    関における排気浄化触媒の性能回復装置。
  5. 【請求項5】前記被毒物質脱離手段は、空燃比のリッチ
    化による触媒のメタル化傾向の小さい温度領域では空燃
    比をリッチ化して被毒物質の脱離を促進させ、前記触媒
    のメタル化傾向の大きい温度領域では空燃比をリーン化
    して該メタル化を抑制するものであることを特徴とする
    請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関に
    おける排気浄化触媒の性能回復装置。
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