JP3838139B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等に搭載される内燃機関、特に酸素過剰状態の混合気(所謂、リーン空燃比の混合気)を燃焼可能とするディーゼル機関やリーンバーン・ガソリン機関では、該内燃機関の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する技術が望まれている。
【0003】
このような要求に対し、内燃機関の排気系にNOx吸蔵剤を配置する技術が提案されている。このNOx吸蔵剤の一つとして、流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸蔵(吸収、吸着)し、流入する排気の酸素濃度が低下し且つ還元剤が存在するときは吸蔵していた窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元する吸蔵還元型NOx触媒が知られている。
【0004】
吸蔵還元型NOx触媒が内燃機関の排気系に配置されると、内燃機関が希薄燃焼運転されて排気の空燃比が高くなるときは排気中の窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵され、吸蔵還元型NOx触媒に流入する排気の空燃比が低くなったときは吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されていた窒素酸化物(NOx)が窒素(N2)に還元される。
【0005】
ところで、吸蔵還元型NOx触媒には燃料に含まれる硫黄分が燃焼して生成される硫黄酸化物(SOx)もNOxと同じメカニズムで吸蔵される。このように吸蔵されたSOxはNOxよりも放出されにくく、NOx触媒内に蓄積される。これをSOx被毒といい、NOx浄化率が低下するため、適宜の時期にSOx被毒から回復させる被毒回復処理を施す必要がある。この被毒回復処理は、NOx触媒を高温(例えば600乃至650℃程度)にしつつ酸素濃度を低下させた排気をNOx触媒に流通させて行われている。
【0006】
ところで、適切な時期にSOx被毒回復処理を施すことができないと、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵能力を低下させエミッションが悪化する虞がある。従って、SOx被毒回復処理を施す時期を適切に設定することが重要となる。
【0007】
このSOx被毒回復処理を施す時期を判定する技術が知られている。例えば、特開2000−51662号公報記載の発明では、空燃比、燃料中の硫黄成分含有量、触媒温度の少なくとも一つに応じてSOxがNOx触媒に吸蔵される度合いを算出し、この値及び燃料噴射量に基づいてSOx吸蔵量を算出することができる。このようにして求めたSOx吸蔵量に基づいてSOx被毒回復制御を行うことが可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記公報に記載された発明では、予め求められた燃料中の硫黄成分含有量を用いてSOxの吸蔵度合いを算出するため、燃料が変わり該燃料中の硫黄成分含有量が変動すると精度の良い判定が困難となる。
【0009】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の排気浄化装置において、SOx被毒回復時期を判定する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明の内燃機関の排気浄化装置は、以下の手段を採用した。即ち、
排気の空燃比がリーンのときにNOxを吸蔵し、還元剤の存在下で吸蔵していたNOxを還元するNOx触媒と、
前記NOx触媒へ還元剤を供給してNOxを還元させるNOx還元手段と、
前記NOx触媒にNOxが吸蔵されているか否かを判定するNOx吸蔵判定手段と、
前記NOx触媒にSOx被毒が発生しているか否かを判定するSOx被毒判定手段と、
前記NOx触媒から流出する排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記SOx被毒判定手段によりSOx被毒が発生していないと判定された場合であって前記NOx還元手段が前記NOx触媒へ還元剤を供給したときの前記酸素濃度検出手段により検出される排気中の酸素濃度を記憶する酸素濃度記憶手段と、
前記NOx還元手段により前記NOx触媒へ還元剤が供給されているときであって前記NOx吸蔵判定手段によりNOxが吸蔵されていないと判定された場合に前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度とを比較してNOx触媒のSOx被毒量を推定するSOx被毒量推定手段と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の最大の特徴は、内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給時にNOx触媒から流出する排気中の酸素濃度とSOx被毒量との間に相関があることから、SOx被毒が発生していないときの還元剤供給時の酸素濃度と、現在の還元剤供給時の酸素濃度と、に基づいてSOx被毒量を推定することにある。
【0012】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、NOx触媒に排気中のSOxが吸蔵されてSOx被毒が発生する。ここで、NOx触媒のSOx被毒量が多くなるほど、吸蔵されたNOxを還元するための還元剤供給時にNOx触媒から流出する排気中の酸素濃度は高くなる。排気中の酸素濃度を用いてSOx被毒量を推定するために、酸素濃度記憶手段は、SOx被毒が発生していないときの還元剤供給時にNOx触媒から流出する排気中の酸素濃度を記憶する。そして、SOx被毒量推定手段は、NOxを全て還元した後の還元剤供給時にNOx触媒から流出する排気の酸素濃度を検出しつつ、この検出値を酸素濃度記憶手段に記憶されている酸素濃度と比較して、どれだけ酸素濃度が高くなっているかによりNOx触媒のSOx被毒量を推定することができる。ここで、NOxを全て還元した後の酸素濃度を検出しているのは、NOx触媒にNOxが吸蔵されているときよりも、NOx触媒に吸蔵されたNOxを全て還元した後のほうが還元剤供給時のNOx触媒から流出する排気中の酸素濃度が低くなるためである。
【0013】
本発明においては、前記NOx触媒へ還元剤を供給しSOx被毒を回復させるSOx被毒回復手段を更に備え、前記SOx被毒判定手段は、前記SOx被毒回復手段がSOx被毒を回復させた直後において前記NOx触媒にSOx被毒が発生していないと判定することができる。
【0014】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、SOx被毒回復手段は、例えば、NOx触媒を昇温しつつ排気中の酸素濃度を低下させてSOx被毒の回復を行う。SOx被毒の回復直後では、SOx被毒はほとんど回復されているので、SOx被毒判定手段は、このときにSOx被毒が発生していないと判定することが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記SOx被毒判定手段は、前記NOx触媒が新品状態のときに、前記NOx触媒にSOx被毒が発生していないと判定することができる。
【0016】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、NOx触媒が新品状態のときにはSOx被毒は発生していない。従って、SOx被毒判定手段は、このときにSOx被毒が発生していないと判定することが可能となる。
【0017】
本発明においては、前記SOx被毒回復手段によりSOx被毒が回復された直後で且つ前記NOx還元手段により前記NOx触媒へ還元剤が供給されているときであって、前記NOx吸蔵判定手段によりNOxが吸蔵されていないと判定された場合に前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度とを比較した値に平均化処理を行い、該平均化処理を行った値が所定値以上の場合に前記NOx触媒が劣化していると判定することができる。
【0018】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、NOx触媒の熱劣化や回復できないSOx被毒等により、NOx吸蔵能力が低下する。これに伴い、SOx被毒回復手段によりSOx被毒の回復が行われた直後であっても、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度とはその偏差が大きくなっていく。従って、SOx被毒回復直後であっても、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と、前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度と、を比較した値が所定値以上の場合にはNOx触媒に劣化が発生していると判定することが可能となる。また、SOx被毒回復手段によりSOx被毒の回復が行われた直後に前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と、前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度と、を比較した値に平均化処理を行うことにより、酸素濃度検出手段による検出値の変動分を除去することができ、精度の良い判定が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。ここでは、本発明に係る内燃機関を車両駆動用のディーゼル機関に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るエンジンとその吸排気系の概略構成を示す図である。
【0021】
図1に示すエンジン1は、4つの気筒を有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。
【0022】
エンジン1には、吸気管2が接続されており、該吸気管2の途中には、該吸気管2内を流通する吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ3が取り付けられている。
【0023】
一方、エンジン1には、排気管4が接続され、該排気管4は、下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。
【0024】
前記排気管4の途中には、吸蔵還元型NOx触媒を担持したパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという。)20が設けられている。フィルタ5より上流の排気管4には、該排気管4内を流通する排気の温度に対応した電気信号を出力する排気温度センサ6が取り付けられている。また、フィルタ5より下流の排気管4には、該排気管4内を流通する排気の空燃比(酸素濃度)に対応した電気信号を出力する空燃比センサ7が取り付けられている。
【0025】
尚、本実施の形態では、フィルタ5より上流の排気管4を流通する排気中に還元剤たる燃料(軽油)を添加する還元剤供給機構を備え、この還元剤供給機構から排気中へ燃料を添加することにより、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度を低下させるとともに還元剤の濃度を高めるようにした。
【0026】
還元剤供給機構は、図1に示されるように、その噴孔が排気管4内に臨むように取り付けられ、ECU11からの信号により開弁して燃料を噴射する還元剤噴射弁8と、燃料を吐出する燃料ポンプ9と、燃料ポンプ9から吐出された燃料を前記還元剤噴射弁8へ導く還元剤供給路10と、を備えて構成されている。
【0027】
このような還元剤供給機構では、燃料ポンプ9から吐出された高圧の燃料が還元剤供給路10を介して還元剤噴射弁8へ供給される。そして、ECU11からの信号により該還元剤噴射弁8が開弁して排気管4内へ還元剤としての燃料が噴射される。還元剤噴射弁8から排気管4内へ噴射された還元剤は、排気管4の上流から流れてきた排気の酸素濃度を低下させる。その後、ECU11からの信号により還元剤噴射弁8が閉弁し、排気管4内への還元剤の添加が停止される。
【0028】
このようにして、フィルタ5に還元剤が供給された結果、フィルタ5に流入する排気は、比較的に短い周期で酸素濃度が変化することになる。そして、フィルタ5に流入した酸素濃度の低い排気は、フィルタ5に担持された吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されていた窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元する。
【0029】
以上述べたように構成されたエンジン1には、該エンジン1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)11が併設されている。このECU11は、エンジン1の運転条件や運転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御するユニットである。
【0030】
ECU11には、各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号がECU11に入力されるようになっている。一方、ECU11には、還元剤噴射弁8等が電気配線を介して接続され、制御することが可能になっている。また、前記ECU11は、各種アプリケーションプログラム及び各種制御マップを記憶し各種制御を行う。
【0031】
例えば、NOx浄化制御では、ECU11は、フィルタ5に流入する排気中の酸素濃度を比較的に短い周期でスパイク的に低くする、燃料添加制御(所謂リッチスパイク制御)を実行する。
【0032】
燃料添加制御では、ECU11は、所定の周期毎に燃料添加制御実行条件が成立しているか否かを判別する。この燃料添加制御実行条件としては、例えば、フィルタ5に担持された吸蔵還元型NOx触媒が活性状態にある、排気温度センサ6の出力信号値(排気温度)が所定の上限値以下である、後述するSOx被毒回復制御が実行されていない、等の条件を例示することができる。
【0033】
上記したような燃料添加制御実行条件が成立していると判定された場合は、ECU11は、還元剤噴射弁8からスパイク的に還元剤たる燃料を噴射させるべく当該還元剤噴射弁8を制御することにより、フィルタ5に流入する排気の空燃比を一時的に所定の目標リッチ空燃比とする。
【0034】
具体的には、ECU11は、記憶されている機関回転数、機関負荷(アクセル開度)、エアフローメータ3の出力信号値(吸入空気量)、空燃比センサ7の出力信号、燃料噴射量等を読み出す。
【0035】
ECU11は、前記した機関回転数と機関負荷と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータとして還元剤添加量制御マップへアクセスし、排気の空燃比を予め設定された目標空燃比とする上で必要となる還元剤の添加量(目標添加量)を算出する。
【0036】
続いて、ECU11は、前記目標添加量をパラメータとして還元剤噴射弁制御マップへアクセスし、還元剤噴射弁8から目標添加量の還元剤を噴射させる上で必要となる還元剤噴射弁8の開弁時間(目標開弁時間)を算出する。
【0037】
還元剤噴射弁8の目標開弁時間が算出されると、ECU11は、還元剤噴射弁8を開弁させる。
【0038】
ECU11は、還元剤噴射弁8を開弁させた時点から前記目標開弁時間が経過すると、還元剤噴射弁8を閉弁させる。
【0039】
このように還元剤噴射弁8が目標開弁時間だけ開弁されると、目標添加量の燃料が還元剤噴射弁8から排気管4内へ噴射されることになる。そして、還元剤噴射弁8から噴射された還元剤は、排気管4の上流から流れてきた排気と混ざり合って目標空燃比の混合気を形成してフィルタ5に流入する。
【0040】
この結果、フィルタ5に流入する排気の空燃比は、比較的に短い周期で酸素濃度が変化することになり、以て、フィルタ5に担持された吸蔵還元型NOx触媒が窒素酸化物(NOx)の吸蔵と還元とを交互に短周期的に繰り返すことになる。
【0041】
このように、フィルタ5に流入する排気の空燃比をスパイク的に目標リッチ空燃比とし、吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵された窒素酸化物(NOx)を還元することが可能となる。
【0042】
次に、被毒回復制御では、ECU11は、フィルタ5に担持された吸蔵還元型NOx触媒の酸化物による被毒を回復すべくSOx被毒回復処理を行うことになる。
【0043】
ここで、エンジン1の燃料には硫黄(S)が含まれている場合があり、そのような燃料がエンジン1で燃焼されると、二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)などの硫黄酸化物(SOx)が生成される。
【0044】
硫黄酸化物(SOx)は、排気とともにフィルタ5に流入し、窒素酸化物(NOx)と同様のメカニズムによって吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵される。
【0045】
具体的には、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度が高いときには、流入排気ガス中の二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)等の硫黄酸化物(SOx)が白金(Pt)の表面上で酸化され、硫酸イオン(SO4 2-)の形でフィルタ5に吸蔵される。更に、フィルタ5に吸蔵された硫酸イオン(SO4 2-)は、酸化バリウム(BaO)と結合して硫酸塩(BaSO4)を形成する。
【0046】
ところで、硫酸塩(BaSO4)は、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)に比して安定していて分解し難く、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度が低くなっても分解されずにフィルタ5内に残留してしまう。
【0047】
フィルタ5における硫酸塩(BaSO4)の量が増加すると、それに応じて窒素酸化物(NOx)の吸蔵に関与することができる酸化バリウム(BaO)の量が減少するため、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵能力が低下する、所謂SOx被毒が発生する。
【0048】
フィルタ5のSOx被毒を回復する方法としては、フィルタ5の雰囲気温度をおよそ600乃至650℃の高温域まで昇温させるとともに、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度を低くすることにより、フィルタ5に吸蔵されている硫酸バリウム(BaSO4)をSO3 -やSO4 -に熱分解し、次いでSO3 -やSO4 -を排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応させて気体状のSO2 -に還元する方法を例示することができる。
【0049】
そこで、本実施の形態に係るSOx被毒回復処理では、ECU11は、先ずフィルタ5の床温を高める触媒昇温制御を実行した上で、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度を低くするようにした。
【0050】
触媒昇温制御では、ECU11は、例えば、各気筒の膨張行程時に燃料噴射弁(図示省略)から副次的に燃料を噴射させるとともに還元剤噴射弁8から排気中へ燃料を添加させることにより、それらの未燃燃料成分をフィルタ5において酸化させ、酸化の際に発生する熱によってフィルタ5の床温を高めるようにしてもよい。
【0051】
上記したような触媒昇温処理によりフィルタ5の床温が600℃乃至650℃程度の高温域まで上昇すると、ECU11は、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度を低下させるべく還元剤噴射弁8から燃料を噴射させる。
【0052】
このように被毒回復処理が実行されると、フィルタ5の床温が高い状況下で、フィルタ5に流入する排気の酸素濃度が低くなるため、フィルタ5に吸蔵されている硫酸バリウム(BaSO4)がSO3 -やSO4 -に熱分解され、それらSO3 -やSO4 -が排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応して還元され、以てフィルタ5のSOx被毒が回復されることになる。
【0053】
ところで、前記したように吸蔵還元型NOx触媒にSOxが所定量以上吸蔵されるとNOx吸蔵能力が低下して、エミッション悪化を誘引する。また、SOx被毒量が少量にもかかわらずSOx被毒回復処理を頻繁に行うと、吸蔵還元型NOx触媒の昇温に燃料を要することから燃費の悪化を誘引する。従って、SOx回復処理の実行時期を適切に設定することが重要となる。
【0054】
ここで、従来の内燃機関の排気浄化装置では、空燃比、触媒温度、燃料性状からSOxの被毒度合いを求め、SOxの被毒量をSOxの被毒度合い及び燃料噴射量に基づいて推定していた。しかし、燃料中に含有される硫黄成分の量は燃料によって異なるため、硫黄成分量が異なる燃料が使用されると正確なSOx被毒量を推定することは困難であった。
【0055】
そこで、本実施の形態では、NOx還元のための燃料添加時にフィルタ5下流に設けた空燃比センサ7の出力信号に基づいて、実際にどれだけのSOxが吸蔵させているのかを精度良く検出する。
【0056】
図2は、複数回燃料添加を行ったときの空燃比センサ7の出力信号及びNOx量の時間推移を指し示すタイムチャート図である。図2中領域Aは、SOx被毒が発生していないときの各値を示し、一方、図2中領域Bは、SOx被毒が発生しているときの各値を示している。ここで、燃料添加が行われていないときの排気の空燃比は、領域A及び領域Bで等しい。
【0057】
図2に示されるように、NOx還元のための燃料添加を行うと、フィルタ5下流の空燃比は低下し、このときの最小空燃比は理論空燃比近傍となる。しかし、吸蔵還元型NOx触媒にSOx被毒が発生していると、SOx被毒が発生していないときと比較して最小空燃比はリーン側へずれて大きくなる。このリーン空燃比側にずれる値とSOxの被毒量とには相関関係があるため、空燃比がどれだけリーン側へずれたかを検出すれば、吸蔵還元型NOx触媒のSOx被毒量を求めることができる。このときに、触媒新品時やSOx被毒を回復させた直後の燃料添加時の空燃比を基準として、どれだけ空燃比がずれているのかによりSOx被毒量を求める。
【0058】
一方、吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されているNOx量が多い程、燃料添加時の触媒下流の最小空燃比は大きくなる。そこで、本実施の形態では、判定時の条件を揃えるために、吸蔵されているNOxを全て還元した後の燃料添加時に検出される最小空燃比に基づいてSOx被毒量の推定を行う。ここで、NOxが全て還元された後であっても、リーン空燃比で運転されていればNOxは新たに吸蔵されるため、その後にも燃料添加が行われる。
【0059】
また、本実施の形態では、燃料添加時の排気の空燃比の変動を除去するために、複数回の燃料添加時に検出されたフィルタ5下流の最小空燃比に平均化処理を加えてSOx被毒量を推定し、推定精度を高めている。
【0060】
次に、SOx被毒量の推定方法のフローについて説明する。
【0061】
図3は、SOx被毒回復制御実行条件の判定フローを示したフローチャート図である。
【0062】
ステップS101では、NOx還元のために燃料添加制御(リッチスパイク制御)が行われる。
【0063】
ステップS102では、燃料添加制御により吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されていたNOxが全て還元されたか否か判定される。この判定では、予め定められた時間燃料添加が行われた場合にNOxの還元が完了したとしても良いし、また、燃料添加時の空燃比センサ7により検出される最小空燃比が略一定の値となった場合にNOxの還元が完了したと判定しても良い。
【0064】
ステップS102で肯定判定がなされた場合には、ステップS103へ進み、一方、否定判定がなされた場合には、ステップS101へ戻る。
【0065】
ステップS103では、前回のSOx被毒回復制御完了直後の燃料添加制御時に検出された最小空燃比を読み込む。
【0066】
SOx被毒回復制御実行時にはNOxの放出後にSOxが放出されるため、SOx被毒回復制御完了直後には、吸蔵還元型NOx触媒にNOx及びSOxが吸蔵されていない状態となる。
【0067】
ここで、SOx被毒回復制御完了直後の燃料添加制御時に空燃比センサ7により検出される最小空燃比はECU11に記憶させておく。
【0068】
また、フィルタ5の新品時には、SOx被毒回復制御が行われていないため、この場合には、新品時の最小空燃比をECU11に記憶させておき、ステップS103で読み込むようにする。
【0069】
ステップS104では、ステップS101で行われた燃料の添加によりフィルタ5から流出する排気の最小空燃比が検出される。ECU11は、空燃比センサ7の出力信号から最小空燃比を求めて記憶する。
【0070】
ステップS105では、リーンずれ割合を算出する。ここで、リーンずれ割合とは、ステップS104で検出した最小空燃比をステップS103で読み込んだ最小空燃比で除した値であり、SOx被毒の発生していないときの最小空燃比から実際の最小空燃比がどれだけの割合でずれているのかを示す値である。
【0071】
ステップS106では、吸蔵還元型NOx触媒の温度が所定温度以上であるか否か判定する。吸蔵還元型NOx触媒には浄化能力が高くなる温度領域(以下、活性領域という。)があるため、吸蔵還元型NOx触媒の温度がこの活性領域の範囲外である場合には排気の浄化率が低下してしまう。従って、SOxの吸蔵量が同一であったとしても、吸蔵還元型NOx触媒の温度が活性領域外であると空燃比センサ7の出力信号が変化してしまい、SOx被毒量の判定が困難となってしまう。従って、吸蔵還元型NOx触媒が活性化する温度(例えば、250℃)以上である場合に限りSOx被毒の判定を行うこととする。吸蔵還元型NOx触媒の温度は、排気温度センサ6の出力信号により求められる。
【0072】
ステップS106で肯定判定がなされた場合にはステップS107へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0073】
ステップS107では、リーンずれ割合の平均化処理を行う。これは、ステップS104で検出された最小空燃比は変動することがあり、その変動した値に基づいてSOx吸蔵量を求めても正確な値が得られないためである。平均化処理は、例えば、数十乃至数千の重み付けによるなまし処理により行われ、次式により示すことができる。
【0074】
平均化処理後のリーンずれ割合={(n−1)/n}・(前回平均化処理後のリーンずれ割合)+(1/n)・(今回算出したリーンずれ割合)
ここで、nは、数十乃至数千の値とする。
【0075】
ステップS108では、ステップS107で平均化されたリーンずれ割合が判定値よりも大きいか否か判定する。判定値は、予め実験等により求まる値である。
【0076】
ここで、図4は、吸蔵還元型NOx触媒のSOx被毒量とリーンずれ割合との関係を示した図である。例えば、SOxの被毒量が1gのとき、即ち、リーンずれ割合が1.1のときにSOx被毒回復が必要であり、この値を判定値として用いることができる。
【0077】
ステップS108で肯定判定がなされた場合にはステップS109へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0078】
ステップS109では、SOx被毒回復制御を行う。このSOx被毒回復制御完了後の燃料添加時に検出される最小空燃比が新たにECU11に記憶される。
【0079】
このようにして、SOx被毒回復を行う時期を判定することが可能となり、SOxの吸蔵過多を抑制し、若しくは、不必要なSOx被毒回復による燃費の悪化を抑制することができる。
【0080】
ここで、従来の内燃機関の排気浄化装置では、燃料消費量等から吸蔵還元型NOx触媒のSOx被毒量を推定していた。しかし、燃料中に含有される硫黄成分の量は燃料によって異なるため、燃料が変更されると正確なSOx吸蔵量を推定することは困難であった。従って、最適な時期にSOx被毒回復が行われず、触媒能力が低下する虞があった。また、被毒回復を実施しても、実際にSOx被毒が回復されたか確認することができなかった。
【0081】
これに対し、NOxセンサをフィルタ5下流に設けてNOxの浄化率からSOx被毒再生時期を判定することも考えられる。
【0082】
ここで、図5は、SOx被毒量とNOx浄化率との関係を新品及び劣化品の吸蔵還元型NOx触媒について夫々指し示した図である。
【0083】
例えば、SOx被毒量が1gの場合は、新品では90パーセント以上のNOxを浄化することができるが、劣化品では75パーセント程度しかNOxを浄化することができない。このように吸蔵還元型NOx触媒の新品時と劣化時とではNOxの浄化率が異なり、劣化の度合いが小さいほどSOx被毒量が小さく検出される。従って、劣化の度合いが小さいほどSOx被毒回復の間隔が長くなってしまい、SOx被毒量が過多となる虞がある。
【0084】
また、NOxセンサを設けるとコストアップとなってしまう。
【0085】
その点、本実施の形態では、NOx還元のための燃料添加時にフィルタ5下流に設けた空燃比センサ7の出力信号に基づいて、実際にどれだけのSOxが吸蔵させているのかを精度良く検出することができる。従って、SOx被毒回復実行時期を精度良く求めることができる。
【0086】
尚、本実施の形態では、SOx被毒回復直後の燃料添加時の空燃比を基準として、SOx被毒量を算出したが、これに代えて、フィルタ5が新品状態のときの燃料添加時の空燃比を基準としてSOx被毒量を算出しても良い。
【0087】
更に、機関回転数及び機関負荷に基づいて基準となる空燃比を算出しても良い。
【0088】
ここで、図6は、機関回転数、機関負荷及び最小空燃比の関係を示したマップである。このマップは、実験等により求めてECU11に記憶させておく。そして、ECU11は、機関回転数及び機関負荷を検出してこのマップに代入し、基準となる最小空燃比を算出することができる。
【0089】
この場合、図3中ステップS103では、ステップS101で行われた燃料の添加のときにフィルタ5から流出する排気の最小空燃比の予測値が読み込まれる。
【0090】
また、本実施の形態では、フィルタ5が新品状態のときの燃料添加時の空燃比を基準として、SOx被毒回復処理実行直後の燃料添加時の最小空燃比のリーンずれ割合を求めることにより、吸蔵還元型NOx触媒の劣化を判定することができる。
【0091】
図7は、車両走行距離とSOx被毒回復直後のリーンずれ割合に平均化処理を施した値との関係を指し示した図である。ここで、実線は通常起こり得るリーンずれ割合の増加を示し、一方、破線は、熱劣化等による急激なリーンずれ割合の増加を示している。また、このときのリーンずれ割合とは、燃料添加時に実際に検出した最小空燃比をフィルタ5新品時の燃料添加時の最小空燃比で除した値であり、新品状態の最小空燃比からどれだけ実際の最小空燃比がずれているのかを示す値である。
【0092】
吸蔵還元型NOx触媒では、SOx被毒回復制御を行っても完全にSOx被毒を回復させることは困難で、ある程度の硫黄成分は吸蔵還元型NOx触媒に残留してしまう。また、吸蔵還元型NOx触媒は、高温になると熱劣化を生じることがある。このような状態では、硫黄成分の残留や熱劣化によりNOxの吸蔵能力が低下し、大気中へNOxを放出させる虞がある。従って、触媒劣化を検出することは重要である。ここで、図7に示されるように、吸蔵還元型NOx触媒が劣化するとSOx被毒回復直後であってもリーンずれ割合が大きくなる。従って、SOx被毒回復直後にNOx還元のための燃料添加を行った場合に検出されるSOx被毒量は、回復困難な触媒劣化として検出することができる。本実施の形態では、SOx被毒回復処理完了直後に燃料添加を行い、このときに検出されるSOx被毒量が予め実験等により求めた所定値よりも多い場合に触媒が劣化していると判定する。
【0093】
更に、本実施の形態では、NOx還元時に検出される空燃比から算出されるSOx被毒量と、燃料消費量から推定されるSOx被毒量との偏差により燃料中の硫黄成分含有量を推定して、この含有量が許容範囲以上の場合には、運転者に警告灯(図示省略)の点灯等により警告しても良い。
【0094】
ここで、燃料中に含まれる硫黄成分量は、供給される燃料により異なることがあるが、この硫黄成分量が多くなると排気中のSOx量が多くなるため、吸蔵還元型NOx触媒のSOx被毒が進行する速度が速くなる。従って、SOx被毒回復に必要となる燃料量が増加して燃費が悪化すると共に、回復されないSOx被毒量も多くなりフィルタの寿命を短縮してしまう。そこで、本実施の形態では、許容される硫黄成分量を定めておき、供給された燃料の硫黄成分量が許容される量よりも多い場合に警告することとした。
【0095】
許容される硫黄成分量を含有する燃料が供給されたとした場合のSOx被毒量は、機関運転のために供給された燃料の消費量から求めることができる。この燃料消費量から求めたSOx被毒量よりも、前記した燃料添加時の最小空燃比から求めたSOx被毒量が多い場合には燃料中硫黄成分量が許容値よりも多いと考えられる。
【0096】
このようにして、許容値よりも多量の硫黄成分を含有した燃料が供給されたと判定された場合には、運転者に警告し、吸蔵還元型NOx触媒の寿命が短縮されることを抑制することができる。
【0097】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、燃料添加時にNOx触媒下流の空燃比を検出してSOx被毒量を推定することができる。従って、SOx被毒の回復時期を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置を適用するエンジンとその吸排気系とを併せ示す概略構成図である。
【図2】 燃料添加時の空燃比センサの出力信号及びNOx量の時間推移を指し示すタイムチャート図である。
【図3】 SOx被毒回復制御実行条件の判定フローを示したフローチャート図である。
【図4】 NOx触媒のSOx被毒量(吸蔵量)とリーンずれ割合との関係を示した図である。
【図5】 SOx被毒量とNOx浄化率との関係を新品及び劣化品のNOx触媒について夫々指し示した図である。
【図6】 機関回転数、機関負荷及び最小空燃比の関係を示したマップである。
【図7】 車両走行距離とSOx被毒回復直後のリーンずれ割合との関係を指し示した図である。
【符号の説明】
1・・・・エンジン
2・・・・吸気管
3・・・・エアフローメータ
4・・・・排気管
5・・・・パティキュレートフィルタ
6・・・・排気温度センサ
7・・・・空燃比センサ
8・・・・還元剤噴射弁
9・・・・燃料ポンプ
10・・・還元剤供給路
11・・・ECU
Claims (4)
- 排気の空燃比がリーンのときにNOxを吸蔵し、還元剤の存在下で吸蔵していたNOxを還元するNOx触媒と、
前記NOx触媒へ還元剤を供給してNOxを還元させるNOx還元手段と、
前記NOx触媒にNOxが吸蔵されているか否かを判定するNOx吸蔵判定手段と、
前記NOx触媒にSOx被毒が発生しているか否かを判定するSOx被毒判定手段と、
前記NOx触媒から流出する排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記SOx被毒判定手段によりSOx被毒が発生していないと判定された場合であって前記NOx還元手段が前記NOx触媒へ還元剤を供給したときの前記酸素濃度検出手段により検出される排気中の酸素濃度を記憶する酸素濃度記憶手段と、
前記NOx還元手段により前記NOx触媒へ還元剤が供給されているときであって前記NOx吸蔵判定手段によりNOxが吸蔵されていないと判定された場合に前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度とを比較してNOx触媒のSOx被毒量を推定するSOx被毒量推定手段と、
を具備することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記NOx触媒へ還元剤を供給しSOx被毒を回復させるSOx被毒回復手段を更に備え、前記SOx被毒判定手段は、前記SOx被毒回復手段がSOx被毒を回復させた直後において前記NOx触媒にSOx被毒が発生していないと判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記SOx被毒判定手段は、前記NOx触媒が新品状態のときに、前記NOx触媒にSOx被毒が発生していないと判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記SOx被毒回復手段によりSOx被毒が回復された直後で且つ前記NOx還元手段により前記NOx触媒へ還元剤が供給されているときであって、前記NOx吸蔵判定手段によりNOxが吸蔵されていないと判定された場合に前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と前記酸素濃度記憶手段により記憶されている酸素濃度とを比較した値に平均化処理を行い、該平均化処理を行った値が所定値以上の場合に前記NOx触媒が劣化していると判定することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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