JPH08157493A - 改変タンパク質 - Google Patents

改変タンパク質

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JPH08157493A
JPH08157493A JP6339367A JP33936794A JPH08157493A JP H08157493 A JPH08157493 A JP H08157493A JP 6339367 A JP6339367 A JP 6339367A JP 33936794 A JP33936794 A JP 33936794A JP H08157493 A JPH08157493 A JP H08157493A
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誠 井上
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陽子 戸引
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彰 伊藤
Toru Kimura
徹 木村
Chikao Nakayama
智加男 中山
Hiroshi Noguchi
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Abstract

(57)【要約】 【構成】4本のヘリックス束構造を有するタンパク質の
アミノ酸配列中、D1キャップ領域に相当するアミノ酸
残基の少なくとも1つが、他のアミノ酸残基に置換され
ていることを特徴とする改変タンパク質、該改変タンパ
ク質をコードする塩基配列を含有するDNA、該DNA
を含有する発現ベクター、並びに該発現ベクターで形質
転換された原核細胞又は真核細胞。 【効果】本発明で予測される改変タンパク質は、天然型
タンパク質と同等あるいはそれ以上の活性を有するた
め、大量投与による自己抗体の出現等の副作用および、
その他の副作用を減じた有用な治療剤としての利用が期
待される。また更には、絶対投与量の低下に伴い、これ
ら天然型タンパク質に混在する有害物質の削減、及び製
造スケールの縮小が可能になると期待される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、改変タンパク質に関す
る。さらに詳しくは、4本のヘリックス束構造を有する
タンパク質のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換す
ることによって改変した改変タンパク質、それをコード
する塩基配列を含有するDNA、該DNAを含有する発
現ベクター、並びに該発現ベクターで形質転換された形
質転換体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生物活性を有する天然タンパク質
を各種疾患の治療薬として用いるための臨床開発が検討
されている。例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺
激因子(以下、GM−CSFと略す。)、マクロファー
ジコロニー刺激因子(以下、M−CSFと略す。)、イ
ンターロイキン3(以下、IL−3と略す。)、インタ
ーロイキン6(以下、IL−6と略す。)等、多くのサ
イトカイン類について臨床試験が実施され、あるいは臨
床試験が検討されている(造血因子(1994年)5巻、6
〜86頁)。
【0003】しかしながら、一般的には蛋白製剤を慢性
的に投与する場合、投与量が大量であるほど自己抗体の
出現による副作用や、製造コスト上の問題が生じやすく
なるといった問題点がある。このような問題点を改善す
るには、例えば天然型よりも比活性の高い改変タンパク
質を用いて投与量を抑制するといった方法を用いること
等が考えられる。ここで、比活性の高い改変タンパク質
を得るには構造活性相関解析等の基礎的データが必要と
なってくる。
【0004】サイトカイン類の中でも、GM−CSF、
M−CSF、成長ホルモン(以下、GHと略す。)、プ
ロラクチン(以下、PRLと略す。)、エリスロポエチ
ン(以下、EPOと略す。)、G−CSF、LIF、及
びIL−3、IL−6等の各種インターロイキン類等
は、いずれもαヘリックスに富み、共通構造として4本
のヘリックス束構造(4-Helix Bundle) (なお、個々の
ヘリックスはN末端側からそれぞれヘリックスA、B、
C、Dと呼ぶ。)を有すると言われている(J. F.Bazan,
Neuron (1991年)7巻、197 頁)。
【0005】4本のヘリックス束構造を有するタンパク
質は、160〜200アミノ酸残基からなる長鎖構造の
グループ(long-chain group) と105〜145アミノ
酸からなる短鎖構造のグループ(short-chain group) に
分類される(J. -L. Boulay &W. E. Paul, Curr. Biol.
(1993年)3巻、573 頁、S. Sprang & J. Bazan, Curr.
Opin. Struct. Biol.(1993年)3巻、815 頁)。前者
には、GH、PRL、EPO、G−CSF、LIF、及
びIL−6、インターロイキン4(以下、IL−4と省
略する)及びGM−CSF等を含む。
【0006】これらのサイトカイン類において、ヘリッ
クスAとヘリックスBの間のアミノ酸残基(以下、AB
ループ領域)及びヘリックスD領域に関しての生物活性
発現に対する重要性が示されている。IL−6に関して
も同様の報告がある (R. Sevino et al., Proc. Natl.
Acad. Sci. USA (1993年)90巻、4067頁、C. Luttick
en et al., FEBS Lett.(1991年)282 巻、265 頁、J.
P. J. Brakenhoff et al., J. Immunol.(1990年)145
巻、561 頁、X. Li et al., J. B. C. (1993年)268
巻、22377 頁)。GHに関しては、変異体作製による同
様の報告 (B. C. Cunningham et al., Science (1990
年)247 巻、1461頁)と共に、GHとGH受容体との複
合体のX線結晶解析により、直接の同定もなされている
(A. M. DeVos et al., Science (1992年)255 巻、306
頁)。
【0007】また、バザーンはαヘリックスに富むサイ
トカイン類の中で、ヘリックスCとヘリックスDの間の
アミノ酸残基(以下、CDループ領域)とヘリックスD
の境界領域(以下、D1キャップ領域と省略する)にお
いて、D1モチーフと呼ぶアミノ酸の類似配列があるこ
とを示した(J. F. Bazan, Neuron (1991年)7巻、197
頁)。D1モチーフの配列は−φ−(F/W)−(E/
Q)−(K/R)−(K/R)−φ−X−G−(φは疎
水性残基、Xはいずれの残基でも良いことを示す)であ
り、同領域は、例えばLIF(154〜161番目)、
OSM(159〜166番目)、IL−6(157〜1
64番目)、インターロイキン11(以下、IL−11
と省略する)(148〜155番目)のそれぞれのアミ
ノ酸に相当すると考えられる。このCDグループとヘリ
ックスDの境界領域に関しては、IL−6(J. P. J. B
rakenhoff et al., J. B. C. (1994年)269 巻、86頁)
及びLIF(R. C. Robinson et al., Cell (1994年)77
巻、1101頁)において、受容体結合への重要性が報告さ
れている。
【0008】しかしながら、IL−6のD1キャップ領
域のアミノ酸配列はD1モチーフとの類似性がないた
め、D1モチーフ上での改変に重要なアミノ酸の同定に
はならず、また、LIFの同領域のアミノ酸配列はD1
モチーフと類似性が高いものの改変に重要なアミノ酸残
基の同定はなされていない。また、他のαヘリックスに
富むサイトカイン類では、同領域が活性発現に重要であ
るという報告は無い。
【0009】一方、ヒトCNTFは、200個のアミノ
酸残基からなり、αヘリックスに富み、53%のαヘリ
ックス、9%のβターン構造の含量からなると言われて
いる(A. Negro et al., J. Neurosci. Res., (1991年)
29巻、251 頁)。2次構造解析から、ヒトCNTFはα
ヘリックスに富むサイトカイン類と類似した構造である
ことが予想され、D1モチーフの配列はヒトCNTFに
おいては151〜158番目のアミノ酸残基に相当す
る。このようにヒトCNTFは4本のヘリックス束構造
を有するタンパク質の中では長鎖構造のグループに属
し、同グループ内タンパク質とのより緊密な類似性が予
想される。
【0010】また、ヒトCNTFに関して、細胞内へシ
グナルを伝える為の受容体としては、CNTF受容体α
(以下、CNTF−Rαと省略する)、LIF受容体
(以下、LIF−Rと省略する)及びgp130の3種
から構成されていると考えられている。gp130は、
ヒトCNTFの場合と共に、IL−6、LIF、OSM
及びIL−11のシグナル伝達の場合にも共通な受容体
である(S. Davis et al., Science(1991年)253 巻、59
頁、S. Davis et al., Science (1993年)260 巻、1805
頁、D. P. Gearing et al., Science(1992年)255 巻、
1434頁、N. Y. Ipet al., Cell(1992年)69巻、1121
頁)。前述の構造の類似性と共に、同じ受容体を共有し
ているという点から、CNTF、IL−6、LIF、O
SM及びIL−11においては、それぞれのリガンド内
で、同じ部位に相当するアミノ酸残基が受容体との結合
に関わっている可能性が高いと考えられる。
【0011】ヒトCNTFは副交感神経である毛様体神
経節の生存維持効果を示す因子として、1979年にシ
ルビオ・バロン(S.Varon)らによって発見され(Brain R
es.(1979年)173 巻、29-45 頁)、その後、精製およ
びクローニングについて報告されている(G. Barbin et
al., J. Neurochem (1984 年)43巻、1468-1478 頁、L.
F. Lin et al., Science (1989 年)246 巻、1023頁、
P. Masiakowski et al., J. Neurochem (1991 年)57
巻、1003頁、A. Negro et al., Eur. J. Biochem. (199
1 年)201 巻、289 頁、J. R. McDonald et al., Bioch
im. Biophys. Acta.(1991年)、70巻、1090頁、国際公
開番号 WO90/7341号公報、国際公開番号WO91/4316号
公報)。
【0012】ヒトCNTFの薬理作用に関し、in v
itroにおいて、海馬、中隔GABA作動性神経(N.
Y. IP et al. J. Neursci. (1991) 11巻、3124-3134
頁)、視神経細胞(H. D. Hoffman J. Neurochem. (198
8) 51巻、109-113 頁)、知覚神経(G. Barbin et al.
J. Neurochem. (1984) 43 巻、1468-1478 頁)、副交感
神経(Y. Arakawa et al. J. Neursci. (1990) 10巻、35
07-3515 頁)および運動神経(M. Sendtner et al. J. C
ell Science. suppl. (1991) 15 巻、103-109 頁)に対
する生存維持効果、コリン作動性神経(S. Saadat et a
l. J. Cell Biol. (1989) 108巻、1807-1816 頁、U. Er
nsberger et al. Neuron (1989) 2巻、1275-1284
頁)、タイプ2Aアストロサイト(D. J. Anderson et a
l. TINS (1989) 12巻、83頁)への分化活性、in v
ivoにおいては、片側海馬−中隔野連絡路(F−F)
切除モデルにおいて、中隔のコリン作動性神経の生存維
持効果(T. Hagg et al. Neuron(1992年)8 巻、145
頁)、運動神経切断モデルにおける運動神経生存維持効
果(M. Sendtner et al. Nature (1990) 345 巻、440-44
1 頁)、遺伝性運動疾患マウスにおける運動神経生存維
持効果(M. Sendtner et al. Nature (1992) 358 巻、50
2-503 頁)、黒質−線条体切断モデルにおける黒質ドー
パミン作動性神経に対する保護効果(T. Hogg & S. Varo
n Proc. Natl. Acad. Sci,USA, (1993) 90 巻、6315-63
19 頁)、光受容体細胞の保護効果(M. M. LaVailet al.
Proc. Natl. Acad. Sci, USA, (1992) 89巻、11249-11
253 頁)、視神経細胞の保護効果(K. Unoki & M. M. La
Vail, Investigative Ophthalmology & Visual Science
(1994) 35巻、907-915 頁)等が報告されている。
【0013】このようにヒトCNTFは神経細胞に作用
して、その生存維持、突起伸展促進および神経伝達物質
合成促進活性を示すことから、外傷による神経障害、ア
ルツハイマー病、脳血管性痴呆症、筋萎縮性側索硬化症
など神経細胞の萎縮・変性疾患に対し、有用な治療剤と
なることが期待されている(J. E. Springer, DN & P(19
91) 4巻、394 頁、R. M. Lindsay, Neurobiol. of Agin
g (1994) 15巻、249-251 頁、R. M. Lindsay, TINS (19
94) 17 巻、182 頁)。
【0014】さらに、運動神経変性疾患のモデル動物
(Wobbler mice)における神経障害に対して、脳由来神
経栄養因子との併用によるより効果的な保護効果が示さ
れ(H.Mitsumoto et al., Science (1994)265 巻、11
07-1110 頁)、今後はヒトCNTF単独だけではなく、
他の神経栄養因子との併用による治療(R.Nishi, Scien
ce(1994)265 巻、1052-1053 頁)も含めて有用な治療
剤となることが期待されている。
【0015】しかしながら、現在、米国で行われている
筋萎縮性側索硬化症を対象とした天然型ヒトCNTFの
臨床治験(Bio World Today, Sep. 8(1993年))では、週
6mgとかなり大量のヒトCNTFが投与されている。
前記のように、一般的には蛋白製剤を慢性的に投与する
場合、投与量が大量であるほど自己抗体の出現による副
作用や、製造コスト上の問題が生じやすくなる。実際、
CNTFの米国のフェーズII、III 試験において、抗体
の出現が見られ(BIO World Today, Sep 8 (1993)) 、他
の副作用も問題となっている(BIO World Today, Jun 24
(1994)), Science (1994 年)264 巻、772-774 頁)。
従って、天然型よりも比活性の高いヒトCNTF改変体
が期待されている。
【0016】このように天然型よりも比活性の高い改変
タンパク質への期待は、ヒトCNTFのみならず、前記
のような各種のサイトカイン類に対しても同様に強いも
のであり、構造活性相関の解析等による種々の検討がな
されているものの、未だ効果的な改変体は見い出されて
いないのが実状である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、4本のヘリックス束構造を有するタンパク質に
関して天然型タンパク質よりも比活性の高い改変タンパ
ク質を提供することにある。本発明の他の目的は、当該
改変タンパク質をコードする塩基配列を含有するDNA
を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、当
該DNAを含有する発現ベクター、及び当該発現ベクタ
ーで形質転換された原核細胞又は真核細胞を提供するこ
とにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決すべく、4本のヘリックス束構造を有するタンパク
質のD1キャップ領域のアミノ酸残基に着目して鋭意研
究したところ、D1キャップ領域に相当するアミノ酸残
基の少なくとも1つを他のアミノ酸残基に置換すること
により、当該タンパク質の比活性が上昇することを見い
だし、本発明を完成するに到った。例えば、天然型ヒト
CNTFでは、D1キャップ領域である155番目のリ
ジン残基が活性発現に必須であることを発見した。また
153番目のアミノ酸残基の置換がCNTF活性の増加
に有効であり、この位置のアミノ酸残基であるグルタミ
ン酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより、天
然型ヒトCNTFの比活性を上昇できることを見出し
た。
【0019】即ち、本発明の要旨は、(1) 4本のヘ
リックス束構造(N末端側からヘリックスA、B、C、
Dと呼ぶ。)を有するタンパク質のアミノ酸配列中、D
1キャップ領域(但し、D1キャップ領域とはヘリック
スCとヘリックスDの間であるCDループ領域とヘリッ
クスDとの境界領域のことをいい、そのアミノ酸配列が
−φ−(F/W)−(E/Q)−(K/R)−(K/
R)−φ−X−G−(φは疎水性残基、Xはいずれの残
基でも良いことを示す)で表されるD1モチーフ配列を
有する領域をいう。)に相当するアミノ酸残基の少なく
とも1つが、他のアミノ酸残基に置換されていることを
特徴とする改変タンパク質、(2) 4本のヘリックス
束構造を有するタンパク質が、細胞内へのシグナル伝達
のための受容体としてgp130を利用するタンパク質
である前記(1)記載の改変タンパク質、(3) 4本
のヘリックス束構造を有するタンパク質が、細胞内への
シグナル伝達のための受容体としてgp130を利用す
るタンパク質であって、D1モチーフ配列のN末端側か
ら3番目のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基に置換さ
れていることを特徴とする前記(1)記載の改変タンパ
ク質、(4) 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
ク質が、ヒトCNTFであって、そのアミノ酸配列中、
天然型ヒトCNTFのアミノ酸配列の少なくとも153
位に相当するアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基に置換
されているヒトCNTF改変体であることを特徴とする
前記(1)記載の改変タンパク質、(5) 4本のヘリ
ックス束構造を有するタンパク質が、LIFであって、
そのアミノ酸配列中、天然型LIFのアミノ酸配列の少
なくとも156位に相当するアミノ酸残基が、他のアミ
ノ酸残基に置換されているLIF改変体であることを特
徴とする前記(1)記載の改変タンパク質、(6) 4
本のヘリックス束構造を有するタンパク質が、OSMで
あって、そのアミノ酸配列中、天然型OSMのアミノ酸
配列の少なくとも161位に相当するアミノ酸残基が、
他のアミノ酸残基に置換されているOSM改変体である
ことを特徴とする前記(1)記載の改変タンパク質、
(7) 4本のヘリックス束構造を有するタンパク質
が、G−CSFであって、そのアミノ酸配列中、天然型
G−CSFのアミノ酸配列の少なくとも146位に相当
するアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基に置換されてい
るG−CSF改変体であることを特徴とする前記(1)
記載の改変タンパク質、(8) 他のアミノ酸残基が天
然のアミノ酸残基又は非天然のアミノ酸残基であること
を特徴とする前記(1)〜(7)いずれか記載の改変タ
ンパク質、(9) 他のアミノ酸残基が中性又は塩基性
アミノ酸残基であることを特徴とする前記(8)記載の
改変タンパク質、(10) 中性又は塩基性アミノ酸残
基が、ヒスチジンを含む芳香族性アミノ酸残基又はアル
ギニン残基であることを特徴とする前記(9)記載の改
変タンパク質、(11) ヒスチジンを含む芳香族性ア
ミノ酸残基が、チロシン、フェニルアラニン、トリプト
ファン、又はヒスチジン残基であることを特徴とする前
記(10)記載の改変タンパク質、(12) 中性又は
塩基性アミノ酸残基が、アラニン、バリン、ロイシン、
イソロイシン、メチオニン、グルタミン、アスパラギ
ン、グリシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニ
ン、トリプトファン、ヒスチジン、リジン又はアルギニ
ン残基であることを特徴とする前記(9)記載の改変タ
ンパク質、(13) 天然型ヒトCNTFの63位に相
当するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基にさらに置換さ
れていることを特徴とする前記(4)記載の改変タンパ
ク質、(14) 63位に相当するアミノ酸残基がアル
ギニン残基に置換されていることを特徴とする前記(1
3)記載の改変タンパク質、(15) 前記(1)〜
(14)いずれか記載の改変タンパク質をコードする塩
基配列を含有するDNA、(16) 前記(15)記載
のDNAを含有する発現ベクター、並びに(17) 前
記(16)記載の発現ベクターで形質転換された原核細
胞又は真核細胞、に関する。以下、本発明についてさら
に詳細に説明する。
【0020】本発明において「4本のヘリックス束構造
を有するタンパク質」とは、LIF、OSM、G−CS
F、GM−CSF、GH、PRL、EPO、インターロ
イキン2、IL−3、IL−4、インターロイキン5、
IL−6、IL−11、骨髄単球成長因子(以下、MG
Fと略す。)、インターフェロンα(以下、IFNαと
略す。)等のαヘリックスに富むサイトカイン類、及び
ヒトCNTF等のタンパク質をいう。なかでも、細胞内
へのシグナル伝達のための受容体としてgp130を利
用するタンパク質が好適であり、ヒトCNTF、LI
F、OSM、IL−6、IL−11等が挙げられる。ま
た、個々のヘリックス構造は、N末端側からそれぞれヘ
リックスA、ヘリックスB、ヘリックスC、ヘリックス
Dという。本発明において「D1キャップ領域」とは、
CDループ領域(ヘリックスCとヘリックスDの間のア
ミノ酸残基をいう。)とヘリックスDとの境界領域のこ
とをいい、アミノ酸配列が−φ−(F/W)−(E/
Q)−(K/R)−(K/R)−φ−X−G−(φは疎
水性残基、Xはいずれの残基でも良いことを示す。)で
表される配列を有する領域をいう。この8個のアミノ酸
からなる配列は、本発明における4本のヘリックス束構
造を有するタンパク質において共通してみられるもので
あり、D1モチーフ配列と呼ばれる。表1に、上記4本
のヘリックス束構造を有するタンパク質中のD1キャッ
プ領域におけるD1モチーフのアミノ酸配列を示す。な
お、ILはインターロイキンを略記したものである。
【0021】
【表1】
【0022】さらに、本発明において、「天然型ヒトC
NTFのアミノ酸配列」とは、国際公開番号WO91/4
316号公報に記載されたものであり(配列番号:
1)、「天然型LIFのアミノ酸配列」とは、文献(R.
C.Robinson et al.,Cell,(1994)77巻1101頁)に記載さ
れたものであり、「天然型OSMのアミノ酸配列」と
は、文献(T.M.Rose and A.G.Bruce, Proc.Natl.Acad.S
ci.USA,(1991) 88巻8641頁,J.C.Kallestad et al., J.
B.C.(1991) 266巻8940頁)に記載されたものであり、
「天然型G−CSFのアミノ酸配列」とは、文献(B.Lo
vejoy et al., J.Mol.Biol.(1993)234巻 640頁)に記載
されたものである。本明細書におけるアミノ酸の位置の
表記もこれらに従う。
【0023】本発明において、「改変タンパク質」と
は、天然型タンパク質のアミノ酸配列中の少なくともD
1キャップ領域に相当するアミノ酸残基(特にD1モチ
ーフ中のアミノ酸残基)の少なくとも1つが他のアミノ
酸残基に置換されたタンパク質をいう。ここで、D1キ
ャップ領域における改変、即ち、置換を受けるアミノ酸
残基の数、種類、D1キャップ領域における位置等は限
定されるものではない。しかしながら、改変タンパク質
の比活性を高くする観点から、D1モチーフのN末端側
から3番目のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換さ
れている改変体が好ましい。具体的には、ヒトCNTF
における153位、LIFにおける156位、OSMに
おける161位、G−CSFにおける146位が、ここ
でいうD1モチーフのN末端側から3番目のアミノ酸残
基に相当する。
【0024】本発明において、「他のアミノ酸残基」と
は、天然のアミノ酸残基又は非天然のアミノ酸残基を意
味する。他のアミノ酸残基が天然のアミノ酸残基の場
合、中性又は塩基性アミノ酸残基が好ましい。即ち、本
発明の改変タンパク質の好ましい例として、D1モチー
フのN末端側から3番目のアミノ酸残基が、アラニン、
バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、グルタ
ミン、アスパラギン、グリシン、プロリン、セリン、ス
レオニン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、
トリプトファン等の中性アミノ酸の残基や、ヒスチジ
ン、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸の残基に置
換されたものが挙げられる。なかでも、比活性の向上と
いう観点から、チロシン、フェニルアラニン、トリプト
ファン、ヒスチジンなどの芳香族性アミノ酸残基や、ア
ルギニン等の残基に置換されたものがとりわけ好まし
い。また、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、
プロリン等の疎水性アミノ酸残基等も好適である。
【0025】また、他のアミノ酸残基が非天然のアミノ
酸残基である場合としては、例えば蛋白質の合成段階で
非天然アミノ酸を導入した場合、又は蛋白質合成後化学
修飾された天然のアミノ酸残基等が挙げられる。蛋白質
の合成段階で導入する方法として、部位特異的に様々な
非天然アミノ酸を導入する一般的に有効な方法が報告さ
れており(Science, 244, 182 (1989))、実際にパラ位を
フッ素或いはニトロ基で修飾したフェニルアラニンを化
学的にtRNAにアシル化し、in vitroの蛋白
合成系で発現した結果が示されている。また他の方法と
して、非天然のアミノ酸であるフラノマイシン(Furanom
ycin) を認識する大腸菌のIsoleucyl-tRNA(J. B.
C., 265, 6931 (1990))を利用して目的の位置に導入し
たり、或いはCell−Freeの蛋白合成系(J. Biochem., 11
0, 166 (1991))において、目的の導入を行うことにより
非天然のアミノ酸残基に置換されたもの等が挙げられ
る。
【0026】また、精製蛋白を利用して、アミノ酸残基
特異的あるいは部位特異的に化学修飾したものも挙げら
れる(新生化学実験講座1,IV,11(1991)) 。例えばグ
ルタミン酸残基に対しては、アミド化する、リジン残基
に置換した後トリニトロフェニル化する、アルギニン残
基に置換した後フェニルグリオキサールと反応させる、
ヒスチジン残基に置換した後カルベトキシ化する、トリ
プトファン残基に置換した後アリールスルフェニルクロ
リドと反応させる、チロシン残基に置換した後ニトロ化
する等の方法による改変体が挙げられる。これらの化学
修飾は常法により行うことができる。
【0027】なお、本発明においては改変タンパク質の
活性を著しく損なわないかぎり、D1モチーフのN末端
側から3番目のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基の
置換に加え、その位置以外のアミノ酸残基に対する、通
常蛋白工学分野で行われる改変(アミノ酸置換、アミノ
酸削除、アミノ酸付加、およびドメイン置換等)を行う
ことも可能である。
【0028】例えば天然型ヒトCNTFにおいて、15
3位に加えて、さらに63位、136位、154位、1
56位、157位、160位、163位、164位、1
67位、177位、178位、184位などのアミノ酸
残基を他のアミノ酸残基に置換したものが挙げられる。
ここでいう153位以外のアミノ酸残基の置換は、前記
のように定義される「他のアミノ酸残基」で置換され
る。天然型ヒトCNTFでは、アミノ酸配列の63位の
アミノ酸残基をアルギニン残基に置換することによりC
NTF活性が上昇することが既に公表されているが(Pa
nayotatos et al., J.B.C., 268 巻,19000-19003頁(19
93))、このようなヒトCNTF上のCNTF活性増加
に有効な変異を組み合わせた置換を行うことにより、そ
れぞれの部位の単独置換体以上の比活性を有する改変体
をも得ることができる。例えば、153位に加えて63
位のアミノ酸残基も置換する場合、153位と63位を
共にアルギニンに置換したもの、153位はチロシンに
63位はアルギニンに置換したもの、153位をトリプ
トファンに63位はアルギニンに置換したもの等が好適
例として挙げられる。
【0029】本発明の改変タンパク質は、遺伝子工学分
野における常法により作成することができる。即ち、D
1モチーフのN末端側から3番目に相当するアミノ酸残
基を他のアミノ酸残基に置換する場合、当該天然型タン
パク質、又は当該改変体をコードするDNA含有ベクタ
ーの一部を合成オリゴヌクレオチドで置換して、当該天
然型タンパク質のアミノ酸配列において、D1モチーフ
のN末端側から3番目に相当するアミノ酸をコードする
DNAを他のアミノ酸をコードするDNAに変え、これ
を適当な発現ベクターに連結して宿主内に導入し、形質
転換させた宿主に目的の改変体を生産させることができ
る。以下、その詳細について述べる。
【0030】本発明の改変タンパク質の製造には、例え
ば、当該天然型タンパク質をコードする構造遺伝子を用
いることができる。ヒトCNTFを改変する場合、天然
型ヒトCNTFをコードするヒトCNTF構造遺伝子
は、例えばウサギあるいはヒトのゲノムDNAからのク
ローニングによって既に取得されており(K. A. Stockli
et al., Nature, 342, 316 (1989)., L. F. Lin et a
l., Science, 246, 1023(1989)., P. Masiakowski et a
l., J. Neurochem., 57, 1003(1991)., A. Negro et
al., Eur.J. Biochem., 201, 289(1991)., J. R. McDo
nald et al., Biochem. Biophys. Acta., 1090, 70(19
91)., A. Lam et al., Gene, 102, 271 (1991)) 、その
DNA配列及びアミノ酸配列も知られている。従って、
例えば常法(J. Sambrook et al., Molecular cloning
: A laboratory manual)に従って、天然型ヒトCNT
F遺伝子をクローニングすることができる。また、LI
F、OSM、G−CSFをコードする構造遺伝子も同様
に取得されているので(J.F.Moreau et al., Nature(19
88)336巻 690頁, M.N.Kallested et al., Mol.Cell.Bio
l.(1989) 9巻2847頁, H.Nomura et al., EMBO J.(1986)
5巻 871頁)、それらを用いてヒトCNTFと同様に行
えばよい。
【0031】プラスミド中にクローニングした天然型タ
ンパク質構造遺伝子の特定の配列を他の配列に置換する
方法は、既に一般的に行える状況にあり、本発明におい
ても常法により、D1モチーフのN末端側から3番目に
相当するアミノ酸残基を置換することができる。置換の
方法は、目的とする置換したアミノ酸配列をコードする
DNAを増幅し、得られたDNAフラグメントを当該天
然型タンパク質における置換の対象となる部分の配列
(以下、相当配列と省略する。)と置き換える方法が便
利である。
【0032】具体的には、例えば置換した塩基配列から
なるオリゴヌクレチドと、増幅に必要なタンパク質の配
列中、置換部位以外の塩基配列或いはベクター部分の配
列に相当するオリゴヌクレオチドをプライマーに用い、
天然型タンパク質の構造遺伝子を含むプラスミドを鋳型
にして、上記2種で挟まれた領域を増幅し、得られた増
幅フラグメントを天然型タンパク質の相当配列と置き換
える方法が便利である。2種のプライマーで挟まれた領
域の増幅方法としては、例えば遺伝子増幅法(PCR)
(Gene, 77, 61-68 (1989)) が行われ、またこの操作を
行うためには市販のDNA自動増幅装置が有効に用いら
れる。なお、1回の増幅反応で天然型タンパク質の相当
配列との置き換えに都合の良い制限酵素切断部位を有す
るフラグメントが得られない場合には、1回目の遺伝子
増幅産物を2回目の遺伝子増幅反応の1つのプライマー
として用い、目的の制限酵素切断部位を有するフラグメ
ントを調製することもできる。
【0033】図1に、その一例としてヒトCNTFを対
象とする場合を示す。図1に示されるように、2回の遺
伝子増幅反応を行うことによって目的の置換した塩基配
列が導入され、かつ天然型ヒトCNTFの相当配列との
置き換えに都合の良い制限酵素切断部位を有するフラグ
メントを得ることができる。さらに、2つの異なる部位
に置換を導入する場合には、別個にそれぞれの部位に変
異を導入した後、適当な制限酵素切断部位を利用してク
ローニングし、両変異を持つ遺伝子を構築するか、ある
いは一方の変異を導入したあと、その変異遺伝子をテン
ペレートとして用いて、さらに遺伝子増幅反応による一
方の変異の導入を行い構築することができる。
【0034】目的の置換(あるいは挿入)が行われたD
NA配列を確認するためには、ジデオキシ法(Science,
214, 1205(1981))の原理を利用し、例えばシークナー
ゼDNAシークエンスキット(東洋紡社製)を用いて行
うことができる。その他、実施例に記載されているよう
な制限酵素によるDNAの切断、欠失、それらにより生
じるDNA断片の電気泳動による分離、回収、あるいは
連結等の遺伝子操作は全て公知の方法(T.Maniatis et
al., Molecular cloning, A Laboratory Manual, Cold
Spring Harbor Lab.(1982))に準じて行うことができ
る。
【0035】このようにして得られる改変タンパク質を
コードする塩基配列を含有するDNAは、例えばpKK
223−4(Pharmacia 社製、図2)等周知の発現ベク
ターに連結された後、適当な宿主に導入されることによ
り、本発明の目的物質である改変タンパク質を発現する
ことができる。宿主としては、原核細胞または真核細胞
のいずれでもよく、例えば大腸菌株や動物細胞株は、特
に記載のない限り既に広く普及しており入手は容易であ
る。例えば大腸菌宿主としては、JM109株等が挙げ
られる。また、動物細胞宿主としては、COS−1、C
HO細胞が挙げられる。
【0036】発現ベクターを用いてこれらの宿主を形質
転換するには、電気パルス法(高山伸一郎、細胞工学6、
771、 1987)、或いは塩化カルシウム法 (J. Mol. Bio
l. 53, 159 (1970)) を用いればよい。このような形質
転換された大腸菌株や動物細胞株等を用い、例えば常法
(T. Maniatis et al., Molecular cloning, A Laborato
ry Manual, Cold Spring Harbor Lab.(1982))に従っ
て、改変タンパク質を発現させることができる。さら
に、得られた菌株を常法に従い溶菌し、遠心分離(10
500×g)にかけて可溶性画分を得ることができる。
発現された改変タンパク質は、必要に応じて常法に従っ
て精製することも可能である。例えばヒトCNTF改変
体の場合は、J. Neurochem.,57, 1003(1991) に従って
精製することができる。
【0037】ヒトCNTF改変体の場合、具体的には、
例えば、発現誘導後の大腸菌を、集菌後リゾチーム処理
により溶解し、更に超音波処理を行う。遠心分離(11
000×g)を行い、ヒトCNTF改変体を含む不溶性
画分を得て、この画分を6Mの塩酸グアニジン溶液で可
溶化し、次いでβメルカプトエタノールを含むトリス−
塩酸緩衝液で透析し再生を行う。次に、陰イオン交換カ
ラムクロマトグラフィー(Asahipak-502NP: 旭化成社
製)にかけた後、NaCl直線濃度勾配により可溶化さ
れたヒトCNTF改変体を溶出する。更に、溶出した可
溶性タンパク質を疎水性カラムクロマトグラフィー(Et
her-5PW:東洋曹達社製)にのせ、洗浄後に硫酸アンモニ
ウム直線濃度勾配で溶出することにより、精製ヒトCN
TF改変体を得ることができる(J. Neurochem., 57, 10
04〜1005(1991)を参照し、一部改変した)。
【0038】発現された改変タンパク質の定量は、通常
用いられる公知の方法でよい。例えば、天然型タンパク
質を用いて得られる特異的抗体によるエンザイムイムノ
アッセイ(ELISA)やSDSポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動(SDS−PAGE)等が利用できる。EL
ISAによる場合、上述と同様の方法で調製した天然型
タンパク質の精製品を用い、例えば常法(Methods in En
zymology, 73, 46-52(1981))に従って、動物〔例えばニ
ュージーランドホワイトラビット(♂,1kg)等〕に
免疫して抗血清を取得することができる。抗血清からの
特異的抗体の精製は、例えば天然型タンパク質を標品と
してカラム担体〔例えば活性化セファロース(Pharmaci
a 社製, CNBr Activated Sepharose 等〕に結合させ、
これを用いてカラムクロマトグラフィーを行うことによ
り可能である。該方法により得られる特異的抗体を用い
て、改変タンパク質の定量のためのELISAを行うこ
とにより、未精製の状態で微量の改変タンパク質を検体
とした場合でも、充分に定量を行うことが可能となる。
【0039】また、改変タンパク質を定量する別の方法
として、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SD
S−PAGE)を利用することができる。即ち、公知の
方法(Nature, 227, 680(1970))でSDS−PAGEを
行い、当該タンパク質に由来するゲルバンドの濃度を画
像処理ソフト(例えば、NIH Image 1.4
7)を用いて、エンザイムイムノアッセイ(ELIS
A)の場合と同様に未精製の状態で改変タンパク質の定
量を行うことができる。
【0040】上述のようにして調製した改変タンパク質
の生物活性は、それぞれのタンパク質に応じた方法で測
定する。例えばヒトCNTF改変体タンパク質の生物活
性は、ニワトリ後根神経節(DRG)、毛様体神経節
(CG)又はラットDRG等を用いることにより公知の
方法(Nerve Growth Factors, 31-56,(1989))で測定す
ることができる。また、LIF改変体タンパク質の生物
活性は、胎性幹細胞等種々の細胞を利用して、公知の方
法(D.Metcalf, Growth Factors (1992) 7巻 169頁)で
測定することができる。OSM改変体タンパク質の生物
活性は、黒色腫細胞の成長阻害活性等(D.Horn et al.,
Growth Factors (1990) 2巻 157頁)を利用して測定す
ることができる。G−CSF改変体タンパク質の生物活
性は、造血系の腫瘍細胞であるNFS−60細胞の成長
促進活性(M.Tsuchiya et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.
S.A.(1986)83巻7633頁)等を利用して測定することがで
きる。
【0041】本発明のヒトCNTF改変体等の改変タン
パク質は、天然型タンパク質と同等あるいはそれ以上の
生物活性を有しているため、天然型に比べて有用な治療
剤となり得ることが期待される。更に、天然型タンパク
質の医薬品としての開発段階で問題になっている、大量
投与による問題点、即ち、必要量を生産することの量的
な難しさ、混在する物質による副作用、あるいは天然型
タンパク質自身に対する抗体出現の為の副作用等の問題
点を解決できる可能性があると考えられる。
【0042】例えばヒトCNTF改変体の生物活性とし
ては、後述の実施例において示されるように、153位
のアミノ酸残基がアラニン、バリン、ロイシン、メチオ
ニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、プロリ
ン、リジンの残基に置換された場合には、153位がグ
ルタミン酸(天然型)のものに対して2〜3倍のニワト
リDRGニューロンに対する生存維持活性を示し、15
3位のアミノ酸残基がチロシン、フェニルアラニン、ト
リプトファン、ヒスチジン、アルギニンの残基に置換さ
れた改変体は、ニワトリDRGニューロン、ニワトリC
Gニューロン及びラットDRGニューロンに対して天然
型ヒトCNTFの約10倍の生存維持活性を示す。ま
た、153位のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基(例え
ば、アルギニン、チロシン、トリプトファン残基)に置
換され、かつ63位のアミノ酸残基がアルギニン残基等
に置換された場合には、ニワトリDRGニューロンに対
してそれぞれの単独置換体よりもさらに高い比活性を示
す。このように本発明のヒトCNTF改変体は、天然型
ヒトCNTFと同等あるいはそれ以上の生物活性を有し
ているため、天然型ヒトCNTFと同様に、運動神経変
性疾患、末梢神経ニューロパチーなどの末梢神経関連疾
患、アルツハイマー病、脳血管性痴呆症、パーキンソン
病、ハンチング病などの中枢神経関連疾患、網膜色素変
性症、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜黄斑変性症などの
眼関連神経の治療剤となり得る。更に、天然型ヒトCN
TFの医薬品としての開発段階で問題になっている、大
量投与による問題点、即ち、必要量を生産することの量
的な難しさ、混在する物質による副作用、あるいはヒト
CNTF自身に対する抗体出現の為の副作用等の問題点
を解決できる可能性があると考えられる。
【0043】前述したように、バザーンが、CNTF類
縁タンパク質であるαヘリックスに富むサイトカイン類
の中でD1キャップ領域においてD1モチーフと呼ぶア
ミノ酸の類似配列があることを示したが(J. F. Bazan,
Neuron (1991年)7巻、197頁)、本発明者らは今回初
めてそのモチーフ内での各アミノ酸の役割を明らかにし
た。各タンパク質において、D1キャップ領域のD1モ
チーフとして予想されるアミノ酸配列を表1に示す。こ
の時、長鎖構造のグループ(IA、IB)と短鎖構造の
グループ(II)を分類して表記し、更に長鎖構造のグ
ループに関しては受容体としてgp130を利用するグ
ループ(IA;CNTFはこのグループに属する)とそ
れ以外のグループ(IB)に分類して表記した。ヒトC
NTFと同様に、D1モチーフと類似配列を持つタンパ
ク質は、長鎖構造のタンパク質に多く、特に受容体とし
てgp130を利用するLIF及びOSM、あるいはG
−CSFでの類似性が高い。
【0044】αヘリックスに富むサイトカイン類に関し
ては、現在までに多くの構造活性相関解析がなされてお
り、ヒトCNTFと、より構造の類似性の高い長鎖構造
のグループのタンパク質に関する構造活性相関解析の結
果について、図3に簡略にまとめた。受容体としてgp
130を利用するグループ(A)とそれ以外のグループ
(B)に分類して表記し、また、実験的に活性発現に重
要であることが既知の領域に関しては網掛けで、活性発
現への関与が予測される領域に関しては破線で囲って表
記した。
【0045】D1キャップを含むCDループとヘリック
スDの境界領域に関しては、前述のようにIL−6 (J.
P. J. Brakenhoff et al., J. B. C. (1994年)269
巻、86頁)及びLIF(R. C. Robinson et al., Cell
(1994年)77巻、1101頁)において受容体結合への重要
性が報告されている(但し、IL−6のD1キャップ領
域のアミノ酸配列はD1モチーフとの類似性が無いた
め、D1モチーフ上での改変に重要なアミノ酸の同定に
はならず、また、LIFの同領域のアミノ酸配列はD1
モチーフと類似性が高いものの、改変に重要なアミノ酸
残基の同定はなされていない)。また、他のαヘリック
スに富むサイトカイン類で、同領域が活性発現に重要で
あるという報告は、後述するG−CSFを除くと報告さ
れていない。また今回、ヒトCNTFにおいてD1キャ
ップ領域の重要性が示されたことから、D1キャップ領
域を受容体結合に利用するタンパク質の1つの共通項目
として、gp130を受容体として利用するということ
が考えられる。同グループのタンパク質としては、CN
TF以外にLIF、OSM、IL−6、IL−11が知
られており、これらのタンパク質において、D1キャッ
プ領域に相当するアミノ酸残基が、活性発現のための受
容体結合に関与している可能性が高いと考えられる。
【0046】特に、LIF及びOSMはD1モチーフと
の類似性が高いことから、ヒトCNTFにおけるD1キ
ャップ領域での変異による効果と同じ効果が、それぞれ
のタンパク質での相当する部位の改変により起こること
が予想される。具体的には、ヒトCNTFの155位の
リジン残基に相当する、LIFの158位及びOSMの
163位のリジン残基の変異により、活性が激減するこ
とが予想され、またヒトCNTFの153位のグルタミ
ン酸残基に相当する、LIFの156位及びOSMの1
61位のグルタミン残基の変異により、ヒトCNTFの
場合と同じような活性の上昇が期待される。また、この
両残基に限らず、D1モチーフ内の他のアミノ酸の変異
でも活性の変化があることが予想される。
【0047】gp130を利用しない、あるいは利用す
るという報告がないタンパク質の中で、D1モチーフの
配列との類似性が顕著なものとしてG−CSFがある。
G−CSFにおいては、同領域周辺を認識するモノクロ
ーナル抗体が、G−CSFの活性を中和するという報告
もあり(J. E. Layton et al., J. B. C. (1991年)266
巻、23815 頁)、D1キャップ領域の受容体結合への関
与が予想される。即ち、ヒトCNTFの153位のグル
タミン酸残基に相当する、G−CSFの146位のグル
タミン残基の変異により、ヒトCNTFの場合と同じよ
うな活性の上昇が期待され、D1モチーフ内の他のアミ
ノ酸の変異により活性の変化が起こることが予想され
る。更に、G−CSFとの類似性が報告されているMG
Fについても同様のことが予想され、MGFのD1キャ
ップ領域内の変異により、活性の変化(あるいは上昇)
が起こることが予想される。gp130を受容体として
利用するタンパク質に限らず、D1モチーフという共通
配列での受容体結合は一般に見られることかも知れな
い。
【0048】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定
されるものではない。なお、本実施例において使用する
略語の名称を以下に示す。 PCR : 遺伝子増幅法 BAP : bacterial alkaline phosphatase IPTG : isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside PMSF : phenylmethanesulfonyl fluoride PBS : phosphate buffered saline BSA : bovine serum albumin ALP : alkaline phosphatase SA : streptoavidine PNPP : p-nitrophenyl phosphate DRG : dorsal root ganglion DMEM : dulbecco's modified eagle medium FCS : fetal calf serum MTT: 3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]2,5-diphenylt
etrazolium bromide CG : ciliary ganglion
【0049】実施例1 天然型ヒトCNTF遺伝子への変異導入及びヒトCNT
F改変体発現ベクターの調製 1)実験材料 大腸菌株JM109(lacIq : 宝酒造社製)をクローニ
ングのため、また天然型ヒトCNTFおよびヒトCNT
F改変体の発現のための宿主菌として使用した。天然型
ヒトCNTF発現ベクター(pKKCNTF )としては、ta
cプロモーターを有する大腸菌発現ベクターであるpKK2
23-4(Pharmacia 社製、図2)に天然型ヒトCNTF遺
伝子及び該CNTF遺伝子の5’側にリンカーDNAを
挿入して作製したものを使用した(図4)。
【0050】2)変異導入遺伝子の増幅反応 ランダムなアミノ酸の部位特異的変異の導入は、遺伝子
増幅法(PCR)を利用した。数種の合成DNAプライ
マーを使用し、2段階のPCR反応により調製した(図
1)。PCRには、テンペレートとして天然型ヒトCN
TF発現ベクター(pKKCNTF)を使用し、ポリメラーゼは
適合度(fidelity)の高いpfu ポリメラーゼ(Stratage
ne社製)を利用した。なお、使用したプライマーのシー
クエンスを図5に示した。変異部位のプライマーとして
は、天然型ヒトCNTFのアミノ酸配列における152
番目から157番目のそれぞれのアミノ酸残基を他のア
ミノ酸残基に置換したヒトCNTF改変体(以下、例え
ば153位を置換したヒトCNTF改変体を単に「E1
53位改変体」と省略する場合がある。)を得るための
プライマーを示したが、その相当部位において、第1コ
ドン及び第2コドンはG、A、T及びC、また第3コド
ンはG及びCの混合として、合成の段階で調製した。こ
れら32種の混合プライマーにより、目的の部位につい
ては20種のアミノ酸全てを網羅していることになる。
【0051】また、63位のグルタミン残基をアルギニ
ン残基に置換する場合は、目的の変異の単一のプライマ
ーとして、図5に示すpQ63Rを用いた。改変体作成
の手法、条件等は、変異部位のプライマーとしてpE1
53の代わりにpQ63Rを用いた以外は、上記と同様
である。また、63位のグルタミン残基をアルギニン残
基に置換したCNTF改変体を「Q63R改変体」と省
略する場合がある。なお、各ステップのPCRの反応条
件を図6に示した。
【0052】具体的にはまず、構造遺伝子の5’側或い
は3’側のプライマー1と、変異部位のプライマー2
(pE153又はpQ63R)の2種のプライマーを利
用して、1回目のPCR反応を行った。プライマー1
は、変異部位に近い方のプライマー(図5に記載の#
N)を用いた。増幅後、アガロースゲルにて電気泳動
し、目的遺伝子を切り出し精製した。次に、この生成産
物と図5に記載の#C(RV)をプライマーとして利用
し、ヒトCNTF全構造遺伝子を増幅するようにして2
回目のPCR反応を行った。この段階においては、1回
目のPCRによる生成産物をプライマーとして用いる
が、使用量は約1〜2pmolと、ある程度狭い範囲で
のみ増幅が可能であり、1回目のPCRの生成産物量
が、少な過ぎてもまた逆に多過ぎても増幅されなかっ
た。また、アニーリングの温度は60℃前後が適当であ
り、テンペレートにはpKKCNTF をPvuII で消化し線状
(linear)DNAとして調製したものを用いた。
【0053】3)ヒトCNTF改変体発現ベクターの調
製 天然型ヒトCNTF発現ベクター(pKKCNTF )をBamHI
及びPstIで切断し、パッセンジャー部分である天然型ヒ
トCNTF構造遺伝子部分を除き、ベクターとして用い
た。一方、このベクターに挿入するパッセンジャー(ヒ
トCNTF改変体構造遺伝子)部分には、BamHI 及びPs
tIの切断部位が構造遺伝子内にも存在する。そのため、
BamHI 及びPstIサイトは使用できないので、それらとそ
れぞれ相同な(cohesive)部分を生成する、Bgl II
(5’側)及び EcoT22I(3’側)の切断部位を遺伝子
増幅のプライマー内にデザインし(図5)、これらの制
限酵素による消化後、ベクターの BamHI、PstIサイトに
挿入した。即ち、具体的には、まずpKKCNTF をBamHI 及
びPstIで消化し、電気泳動後切り出し精製し、更に、B
AP処理を行った。一方、遺伝子増幅によって調製され
たパッセンジャーをBglIIとEcoT22I で切断し、このパ
ッセンジャー(約100ng:モル数でベクターの約1
0倍)と上記調製したベクター(100ng)を用いて
ライゲーションを行い、後述の方法でJM109株へ形
質転換した。得られたクローンについて塩基配列の決定
を行い、変異の同定を行なった。塩基配列決定には、シ
ークナーゼDNAシークエンスキット(東洋紡社製)を
利用した。このようにして、E153位改変体発現ベク
ターとQ63R改変体発現ベクターを得た。
【0054】4)両部位の置換(153位/63位)を
組み合わせた変異遺伝子及び発現ベクターの調製 pKKCNTF と同様、Q63R改変体の発現ベクター上に
は、制限酵素Hind IIIによる切断部位が2箇所存在する
(図7)。図7に示したパッセンジャー部分をE153
位改変体遺伝子の相当部分と置換することにより、両部
位の置換(153位/63位)を組み合わせた変異CN
TFの発現ベクターの調製を行った。具体的には、まず
上記で得たQ63R改変体の発現ベクターをHind IIIで
消化し、そのままライゲーションを行い、図7のパッセ
ンジャー遺伝子を欠失した遺伝子を調製した。この遺伝
子についてさらにHind IIIで消化を行い、消化されたD
NAを精製後BAP処理し、ベクター部分とした。ま
た、E153位改変体それぞれの発現ベクターをHind I
IIで消化後パッセンジャー部分(約400bp)を分離
精製し、上記調製したベクター部分を用いてライゲーシ
ョンを行い、同様に後述の方法でJM109株へ形質転
換した。得られたクローンについてパッセンジャー部分
の挿入及び挿入方向を確認し、目的の挿入のあったクロ
ーンについて塩基配列決定により変異の再確認を行っ
た。
【0055】その結果、表2に示すそれぞれ51種のヒ
トCNTF改変体を発現する発現ベクターを得た。
【0056】
【表2】
【0057】5)発現ベクターで形質転換された大腸菌
の調製 市販のJM109株のコンピテントセル(東洋紡社製)
100μLに、前記により調製したヒトCNTFまたは
ヒトCNTF改変体を発現するベクターのDNA(約1
00ng)を混合し、30分間氷中に放置した。次いで
42℃で30秒間熱処理を行った後、SOC培地(トリ
プトン20g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム0.5
85g、塩化カリウム0.186g、塩化マグネシウム
10mM、硫酸マグネシウム10mM、グルコース20
mM:1リットルあたり)900μLに加え、37℃で
約1時間振盪培養した。50μg/mL濃度のアンピシ
リンを含有するLB寒天培地(トリプトン10g、酵母
エキス5g、塩化ナトリウム5g、寒天15g〔pH
7〕:1リットルあたり)に塗り広げ、形質転換された
大腸菌を選択した。
【0058】実施例2 1)大腸菌によるヒトCNTF改変体の発現 実施例1により得られた本発明のヒトCNTF改変体発
現ベクターを用いて、大腸菌を形質転換した後、この形
質転換された大腸菌を利用しヒトCNTF改変体を発現
させた。発現はTYGPN培地(トリプトン20g、酵
母エキス10g、グリセリン8mL、リン酸1ナトリウ
ム5g、硝酸カリウム1g〔pH6.1〕:1リットル
あたり)を用い、少量培養を行った。
【0059】即ち、50μg/mLのアンピシリンを含
むTYGPN培地900μLに大腸菌株JM109の形
質転換体の種培養100μLを加え、37℃で振盪培養
した。2時間後、終濃度1mMとなるようにIPTGを
加え、3時間培養した。遠心後、下記の溶菌操作を行っ
た。培養液ペレットに溶菌溶液(50mM トリス・H
Cl(pH8.0)、1mM EDTA、100mM
NaCl、リゾチーム0.27mg/mL、0.13m
M PMSF、60U DNaseI)100μLを添
加し、37℃で1時間消化した後、遠心(15000r
pm×15分)した。そのライセートの上清をSDS−
PAGEによる濃度検定及びDRGニュ−ロンの生存維
持活性測定のためのサンプルとした。なお、DRGニュ
−ロンの生存維持活性測定サンプルは50μLのライセ
ートの上清を、950μLのPBS(0.1%BSAを
含む。)に希釈し、ろ過除菌して調製した。
【0060】2)SDS−PAGEによるヒトCNTF
改変体の発現の確認と定量 SDS−PAGEは、以下の条件で行った。市販の15
%−25%ポリアクリルアミド濃度のグラジエントゲル
(第一化学薬品社製)を用いた。前記ライセートの上清
の4μLを各ウェルにのせ、定電流(40mA)で1時
間泳動を行った。
【0061】SDS−PAGEにより得られた、E15
3位の改変体における泳動パターンを例として図8
(A)及び(B)に示した。図8(A)中、レーン1は
分子量マーカー、レーン2及びレーン12は大腸菌発現
天然型精製ヒトCNTF、レーン3は天然型ヒトCNT
Fの前記ライセート上清、レーン4〜11は本実施例に
より得られたE153位改変体の前記ライセート上清
(4:E153R、5:E153K、6:E153A、
7:E153V、8:E153L、9:E153G、1
0:E153P、11:E153I)の泳動パターンを
示す。同様に図8(B)中、レーン1は分子量マーカ
ー、レーン2及びレーン12は大腸菌発現天然型精製ヒ
トCNTF、レーン3は天然型ヒトCNTFの前記ライ
セート上清、レーン4〜11は本実施例により得られた
E153位改変体の前記ライセート上清(4:E153
Y、5:E153F、6:E153W、7:E153
H、8:E153M、9:E153Q、10:E153
N、11:E153D)の泳動パターンを示す。また、
ヒトCNTFの位置を←で表記した。
【0062】SDS−PAGEにより得られた、E15
3位の改変体、Q63R改変体及び本発明の両部位の変
異の組み合わせ(E153/Q63R)による改変体に
おける泳動パターンを図9に示した。図9中、レーン1
は大腸菌発現天然型精製ヒトCNTF、レーン2は天然
型ヒトCNTFの前記ライセート上清、レーン3〜9は
本実施例により得られた各改変体の前記ライセート上清
(3:Q63R、4:E153R、5:E153Y、
6:E153W、7:E153R/Q63R、8:E1
53Y/Q63R、9:E153W/Q63R)の泳動
パターンを示す。また、天然型ヒトCNTFの泳動位置
を←(1)、Q63R改変体の泳動位置を←(2)で表
記した。
【0063】この結果から、スキャナーを利用して電気
泳動の画像を取り込み、CNTFに由来するゲルバンド
の濃度を画像処理ソフト(NIH Image 1.4
7)を用いて定量した。一例として、天然型ヒトCNT
F及びヒトCNTF改変体(E153R)の定量の結果
を示すと、それぞれ6.4μg/mL、7.0μg/m
Lであった。
【0064】3)ELISA法によるヒトCNTF改変
体の定量 精製抗天然型ヒトCNTF抗体を利用して、サンドイッ
チELISA法により、活性測定サンプル中のヒトCN
TF改変体の濃度を定量した。即ち、予め抗天然型ヒト
CNTF抗体を固定化しておいた96穴プレートに、5
0μLの測定サンプルをのせ、4℃で一晩放置した。P
BSで各ウェルを洗浄(200μL、3回)し、ビオチ
ン化抗天然型ヒトCNTF抗体(3%BSA/PBS/
NaN3に1000倍希釈したもの)50μLを反応さ
せた。200μLのPBSで3回洗浄した後、アルカリ
性ホスファターゼ結合ストレプトアビジン(3%BSA
/PBS/NaN3 に2000倍希釈したもの)(VE
C社)50μLを入れ、室温にて2時間放置した。再度
200μLのPBSで3回洗浄した後、0.5mg/m
L濃度のPNPPを含む0.1M炭酸ナトリウム、1m
M塩化マグネシウム(pH9.8)溶液に室温にて溶解
し、415nmの吸光度を測定した。なお、精製抗天然
型ヒトCNTF抗体の調製は、天然型ヒトCNTFをリ
ガンドとして用いたアフィニティークロマトグラフィー
により行った。
【0065】天然型ヒトCNTF及びヒトCNTF改変
体(E153R)の定量の結果はそれぞれ7.6μg/
mL、7.9μg/mLであり、SDS−PAGEの結
果から推定されたものとほぼ同程度であった。他の改変
体に関しても、SDS−PAGEから求めた定量値とE
LISA法から求めた定量値でほぼ同程度の結果が得ら
れた。図10〜17では、SDS−PAGEから求めた
定量値で表している。
【0066】実施例3 ヒトCNTF改変体の活性測定 ニワトリ後根神経節(DRG)ニューロンの生存維持活
性を指標として、実施例2により得られた各CNTF改
変体の活性測定を行った。即ち、10日令ニワトリ胚
(E10)からDRGニューロンを摘出し、トリプシン
(0.125%)及びDNaseIで処理した後、5%
FCSを含むDMEM培地で前培養(37℃、30分)
を行った。次に、ポリオルニチン(0.5mg/mL)
でコートした96穴プレートを用いて、5%FCSを含
むDMEM培地で分散培養(各ウェル100μL、37
℃、72時間)を行った。培養後の生存細胞について、
10μgのMTTを添加した際の還元能を指標として、
フォルマザンの生成量を570nmの吸光度で調べた。
なお、各CNTF改変体は前培養の後、最終濃度0.0
01ng/mL〜100ng/mLとして各々添加し
た。
【0067】また、対照として、天然型ヒトCNTFを
用いてDRGニューロンに対する生存維持活性を測定し
た。なお、活性測定に使用した天然型ヒトCNTF及び
各CNTF改変体サンプルは、同じ方法で同時に調製し
たものである。
【0068】また、153位のグルタミン酸残基をアル
ギニン残基に置換したE153R改変体、チロシン残基
に置換したE153Y改変体、ヒスチジン残基に置換し
たE153H改変体、フェニルアラニン残基に置換した
E153F改変体、トリプトファン残基に置換したE1
53W改変体については、以下のようにニワトリ毛様体
神経節(CG)ニューロンに対する生存維持活性も調べ
た。即ち、8日令ニワトリ胚(E8)からCGニューロ
ンを摘出し、トリプシン(0.125%)及びDNas
eIで処理した後、5%FCSを含むDMEM培地で前
培養(37℃、60分)を行った。次に、ポリオルニチ
ン(0.5mg/mL)及びラミニン(5μg/mL)
でダブルコートした96穴プレートを用いて、5%FC
Sを含むDMEM培地で分散培養(各ウェル100μ
L、37℃、24時間)を行った。培養後の生存細胞に
ついては、DRGの場合と同様にMTTを用いて吸光度
を測定し、生存維持活性の指標とした。
【0069】さらに、E153R改変体、E153Y改
変体、E153H改変体、E153F改変体、E153
W改変体については、以下のようにラットDRGニュー
ロンに対する生存維持活性も調べた。すなわち、21日
令ラット胚(E21)からDRGニューロンを摘出し、
トリプシン(0.125%)及びDNaseIで処理し
た後、5%FCSを含むDMEM培地で前培養(37
℃、30分)を行った。次に、ポリオルニチン(0.5
mg/mL)及びラミニン(5μg/mL)でダブルコ
ートした96穴プレートを用いて、5%FCSを含むD
MEM培地で分散培養(各ウェル100μL、37℃、
72時間)を行った。培養後の生存細胞については、ニ
ワトリDRGの場合と同様にMTTを用いて吸光度を測
定し、生存維持活性の指標とした。
【0070】また、本実施例における生存維持活性の測
定結果の一部として、上記と同様の方法により調製した
ライセートの上清希釈液中の組換え天然型ヒトCNTF
と精製天然型ヒトCNTFのニワトリDRGニューロン
に対する生存維持活性(図10)、E153位改変体の
ニワトリDRGニューロンに対する生存維持活性(図1
1〜14)、また、155番目のリジン残基に変異を導
入した改変体(K155位改変体)のニワトリDRGニ
ューロンに対する生存維持活性(図15)を示す。さら
に、E153R改変体、E153Y改変体、E153H
改変体、E153F改変体、E153W改変体のニワト
リCGニューロンに対する生存維持活性(図16)およ
びE153R改変体、E153Y改変体、E153H改
変体、E153F改変体、E153W改変体のラットD
RGニューロンに対する生存維持活性(図17)につい
ても、対応する図に示す。図10〜17において、縦軸
は570nmにおける吸光度(フォルマザンの生成を示
す。)を、横軸は添加したCNTFの濃度をそれぞれ示
す。
【0071】また、組換え天然型ヒトCNTFとE15
3位、Q63位の単独の置換体及び両部位の変異の組み
合わせによる、改変体のニワトリDRGニューロンに対
する生存維持活性の測定も行った。結果を図18に示
す。図18においては天然型CNTF及び各CNTF改
変体を終濃度1ng/mLで添加した場合の活性値を示
しており、縦軸はCNTF応答細胞の生存率(%)とし
て、570nmにおける吸光度を、100ng/mLの
CNTF或いはCNTF改変体を添加した場合を100
%とし(表記実験の場合は、A570 =0.19を100
%とする)、%表示したもの(フォルマザンの生成を示
す。)である。PBSはブランクテストとして、CNT
Fの代わりにPBS溶液(0.1%BSAを含む)を添
加したもの、Wildは天然型ヒトCNTFを添加した
ものである。
【0072】1)ライセート上清希釈液中の組換え天然
型ヒトCNTFの活性 図10は、ライセート上清希釈液中の組換え天然型ヒト
CNTFと精製天然型ヒトCNTFのニワトリDRGニ
ューロンに対する生存維持活性を比較したものである
が、両者はほぼ同等の活性を示したことから、ライセー
ト上清中の組換え天然型ヒトCNTFは活性型であるこ
とが定量的に確認された。
【0073】2)E153位改変体のニワトリDRGニ
ューロンに対する活性 図11〜図14において、153位のアミノ酸残基がメ
チオニン、ロイシン、バリン、アラニン、グルタミン、
アスパラギン、グリシン、プロリン、リジンの残基に置
換された場合(E153M、E153L、E153V、
E153A、E153Q、E153N、E153G、E
153P、E153K)、153位がグルタミン酸(天
然型)のものに対して2〜3倍の生存維持活性を示し、
153位のアミノ酸残基がアルギニン、ヒスチジン、チ
ロシン、フェニルアラニン、トリプトファン残基に置換
された場合(E153R、E153H、E153Y、E
153F、E153W)は、約10倍の生存維持活性を
示した。また、153位のアミノ酸残基がアスパラギン
酸またはイソロイシンに置換された場合(E153D、
E153I)は、天然型と同程度の生存維持活性を示し
た。
【0074】図18に示したE153位改変体及びQ6
3R改変体(それぞれ単独の変異)は天然型CNTFよ
りも高い生存維持活性を示し、また各単独の改変体は同
程度の比活性であることが確認された。さらに、両変異
を組み合わせた改変体は、天然型CNTFよりも、さら
にはそれぞれ単独の改変体よりも高い比活性を示した
(図18)。
【0075】3)K155位改変体のニワトリDRGニ
ューロンに対する活性 図15は、K155R改変体、K155A改変体、K1
55M改変体のニワトリDRGニューロンに対する生存
維持活性を示したものであるが、元々のリジン残基と同
様に正電荷を有するアルギニン残基への変異の時のみ、
天然型CNTFの1%弱の活性を保持しているが、他の
アミノ酸残基への変異では、いずれも活性を消失してし
まった。
【0076】4)D1キャップ領域に変異を導入した改
変体のニワトリDRGニューロンに対する活性 また、本実施例におけるヒトCNTFのD1キャップ領
域に変異を導入した改変体の、ニワトリDRGニューロ
ンに対する生存維持活性を図19にまとめた。前述の1
53位及び155位以外の改変体においても、変異によ
る活性の変動が大きかった。
【0077】5)E153位改変体のニワトリCGニュ
ーロンに対する活性 図16において、153位のアミノ酸残基がアルギニ
ン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、トリプ
トファン残基に置換された場合(E153R、E153
H、E153Y、E153F、E153W)、153位
がグルタミン酸(天然型)のものに対して10倍近い生
存維持活性を示した。DRGニューロンに対して高比活
性を示した改変体はCGニューロンに対しても天然型よ
り高い生存維持活性を示したことから、当該改変体は他
のニューロンに対しても天然型より高い生存維持活性を
示すことが考えられる。
【0078】6)E153位改変体のラットDRGニュ
ーロンに対する活性 図17において、153位のアミノ酸残基がアルギニ
ン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、トリプ
トファン残基に置換された場合(E153R、E153
H、E153Y、E153F、E153W)、153位
がグルタミン酸(天然型)のものに対して10倍近い生
存維持活性を示した。この結果から、鳥類であるニワト
リのニューロンに対して高比活性を示した改変体は、哺
乳類であるラットのニューロンに対しても天然型より高
い生存維持活性を示すと考えられる。さらにこの結果か
ら、ヒトのニューロンに対しても天然型より高い生存維
持活性を示すことが期待される。
【0079】これらの結果から以下のことが考察され
た。153位の位置がグルタミン酸(天然型)又はアス
パラギン酸の場合は活性が低いことから、153位の負
電荷の存在はヒトCNTFの活性発現には不利であると
考えられる。このことは、負電荷をなくす改変により活
性が上昇するという事実により支持される。さらに、E
153R改変体が非常に高い活性を示した理由として
は、グルタミン酸とは逆の電荷を持つアルギニンが15
3位に導入されたことによると考えられる。また、15
3位に芳香族性アミノ酸を導入した場合(E153Y、
E153F、E153W、E153H)にも非常に高い
生存維持活性を示した。その理由としては、受容体側と
の疎水的相互作用又はCNTF内の他の残基との活性発
現に有利な相互作用の可能性が予想される。
【0080】比活性上昇に効果のある変異として同定さ
れた部位(E153位及びQ63位)について、それぞ
れ単独の変異よりも両変異を組み合わせることによる相
加的な活性の上昇が示された。2つの部位は3次元的に
も異なる位置にあり(図20)、1分子中に2つの変異
を行っても、それぞれの部位の改変の効果が現れたもの
と予想された。
【0081】また、155位にアミノ酸の置換を施した
場合、元々のリジンと長さがほとんど同じメチオニン残
基、あるいは長さが短く立体的障害はないと考えられる
アラニン残基でも、155位のリジン残基の役割を補償
することが全くできないということから、155位のリ
ジン残基はCNTFの受容体に厳密に認識されていると
考えられた。更に、実施例としては示さないが、K15
5A改変体精製タンパク質は、天然型ヒトCNTF精製
タンパク質とほとんど同じ円偏光二色性(CD)スペク
トルを示すことから、活性を消失したK155A改変体
は天然型ヒトCNTFとほとんど同じ全体構造を保持し
ていると考えられた。また、このK155A改変体は天
然型ヒトCNTFの受容体への結合を阻害することか
ら、活性を消失したK155A改変体はCNTFの受容
体への結合能力は保持していると考えられた。以上のこ
とから、155位のリジン残基は細胞内へのシグナル伝
達に必須のアミノ酸残基であると予想された。
【0082】D1キャップ領域内の他のアミノ酸残基の
役割に関しては、前述の153位及び155位のアミノ
酸のように、明快に考察することはできないが、少なく
とも156位及び157位のアミノ酸残基は、D1キャ
ップ領域の活性構造形成に重要であると予想された。い
ずれにしろ、単一の残基で活性を発現できるものではな
く、CNTF受容体に厳密に認識される155位の周辺
残基であるD1キャップ領域全体で、1つの活性構造を
形成していると考えられ、当領域全体としての重要性が
考えられた。
【0083】なお、本発明のヒトCNTF改変体とヒト
成長ホルモン(hGH)に構造のホモロジーがあると仮
定し、hGHの3次構造上に変異導入部位(「D1キャ
ップ領域」及び「Q63」としてとして図中に記載)を
描き加えたものを図20に表した。図20中の各数字は
ヒトCNTFアミノ酸残基の番号を表す。
【0084】
【発明の効果】本発明で予測される改変タンパク質は、
天然型タンパク質と同等あるいはそれ以上の活性を有す
るため、大量投与による自己抗体の出現等の副作用およ
び、その他の副作用を減じた有用な治療剤としての利用
が期待される。また更には、絶対投与量の低下に伴い、
これら天然型タンパク質に混在する有害物質の削減、及
び製造スケールの縮小が可能になると期待される。
【0085】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:200 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Met Ala Phe Thr Glu His Ser Pro Leu Thr Pro His Arg Arg Asp Leu 1 5 10 15 Cys Ser Arg Ser Ile Trp Leu Ala Arg Lys Ile Arg Ser Asp Leu Thr 20 25 30 Ala Leu Thr Glu Ser Tyr Val Lys His Gln Gly Leu Asn Lys Asn Ile 35 40 45 Asn Leu Asp Ser Ala Asp Gly Met Pro Val Ala Ser Thr Asp Gln Trp 50 55 60 Ser Glu Leu Thr Glu Ala Glu Arg Leu Gln Glu Asn Leu Gln Ala Tyr 65 70 75 80 Arg Thr Phe His Val Leu Leu Ala Arg Leu Leu Glu Asp Gln Gln Val 85 90 95 His Phe Tyr Pro Thr Glu Gly Asp Phe His Gln Ala Ile His Thr Leu 100 105 110 Leu Leu Gln Val Ala Ala Phe Ala Tyr Gln Ile Glu Glu Leu Met Ile 115 120 125 Leu Leu Glu Tyr Lys Ile Pro Arg Asn Glu Ala Asp Gly Met Pro Ile 130 135 140 Asn Val Gly Asp Gly Gly Leu Phe Glu Lys Lys Leu Trp Gly Leu Lys 145 150 155 160 Val Leu Gln Glu Leu Ser Gln Trp Thr Val Arg Ser Ile His Asp Leu 165 170 175 Arg Phe Ile Ser Ser His Gln Thr Gly Ile Pro Ala Arg Gly Ser His 180 185 190 Tyr Ile Ala Asn Asn Lys Lys Met 195 200
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、遺伝子増幅法(PCR)による本発明
のヒトCNTF改変体発現ベクターの調製方法の概略を
示す。
【図2】図2は、本発明のヒトCNTF改変体の発現ベ
クターの作成に用いたベクター(pKK223-4)の構造を示
す。
【図3】図3は、αヘリックスに富むサイトカイン類の
中の、長鎖構造のグループに属するタンパク質に関し
て、構造活性相関解析の既知の結果、あるいは活性発現
に関与すると予想される部位を簡略に示したものであ
る。(A)はシグナル伝達にgp130を利用するタン
パク質のグループであり、(B)はそれ以外のグループ
である。実験的に活性発現に重要であることが既知の領
域に関しては網掛けで、活性発現への関与が予測される
領域に関しては破線で囲って表記した。各タンパク質に
おける構造活性相関解析の報告を以下に列挙する(R. S
avino et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1993
年)90巻、4067頁、C. Lutticken et al.,FEBS Lett.(1
991年)282 巻、265 頁、J. P. J. Brakenhoff et al.,
J. Immunol.(1990年)145 巻、561 頁、X. Li et al.,
J. B. C. (1993年)268 巻、22377 頁、B. C. Cunning
ham et al., Science (1990年)247巻、1461頁、A. M. D
evos et al., Science(1992年)255 巻、306 頁、J. P.
J. Brakenhoff et al., J.B. C. (1994年)269 巻、86
頁、R. C. Robinson et al., Cell(1994年)77巻、1101
頁、J. C. Kallestad et al., J. B. C. (1991年)266
巻、8940頁、I. Kawashima et al., FEBS Lett.(1991
年)283 巻、199 頁、V. Goffin et al., Eur. J. Bioc
hem. (1993年)214 巻、199 頁、B. Lovejoy et al.,
J. Mol. Biol. (1993年)234 巻、640 頁、D. Wen et a
l., J. B. C.(1994年)269 巻、22839 頁、B. F. Cheet
han et al., Antiviral Res.(1991年)15巻、27頁)。
【図4】図4は、天然型ヒトCNTF発現ベクター(pK
KCNTF )の構築図を示す。
【図5】図5は、実施例1において用いたプライマーを
示す。なお、下線部分は、導入した制限酵素認識部位を
示し、!はミスマッチ位置を表す。・・はG、A、T及
びCの混合を、*はG及びCの混合を表す。
【図6】図6は、実施例1において用いたPCRによる
各ステップの遺伝子増幅反応条件を示す。
【図7】図7は、両部位の置換(153位/63位)を
組み合わせた本発明のヒトCNTF改変体発現ベクター
の調製方法の概略を示す。
【図8】図8は、ヒトCNTF改変体におけるSDS−
PAGEによる電気泳動の結果を示す写真である。図8
(A)〔レーン1: 分子量マーカー、レーン2: 大腸菌
発現天然型精製ヒトCNTF、レーン3: 天然型ヒトC
NTFのライセート上清、レーン4〜11: E153位
改変体のライセート上清(4:153R、5:E153
K、6:E153A、7:E153V、8:E153
L、9:E153G、10:E153P、11:E15
3I)、レーン12:大腸菌発現天然型精製ヒトCNT
F〕、図8(B)〔レーン1: 分子量マーカー、レーン
2: 大腸菌発現天然型精製ヒトCNTF、レーン3: 天
然型ヒトCNTFのライセート上清、レーン4〜11:
E153位改変体のライセート上清(4:153Y、
5:E153F、6:E153W、7:E153H、
8:E153M、9:E153Q、10:E153N、
11:E153D)、レーン12:大腸菌発現天然型精
製ヒトCNTF〕。
【図9】図9は、本発明のヒトCNTF改変体のSDS
−PAGEによる電気泳動の結果を示す写真である。図
9中、レーン1は大腸菌発現天然型精製ヒトCNTF、
レーン2は天然型ヒトCNTFのライセート上清、レー
ン3〜9は本実施例により得られた各改変体のライセー
ト上清(3:Q63R、4:E153R、5:E153
Y、6:E153W、7:E153R/Q63R、8:
E153Y/Q63R、9:E153W/Q63R)の
泳動パターンを示す。また、天然型ヒトCNTFの泳動
位置を←(1)、Q63R改変体の泳動位置を←(2)
で表記する。
【図10】図10は、大腸菌発現天然型精製ヒトCNT
F(○)と大腸菌のライセート上清希釈液中の組換え天
然型ヒトCNTF(●)のニワトリDRGニューロンに
対する生存維持活性を示す。
【図11】図11は、E153位改変体のニワトリDR
Gニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(A)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153R(○)を示し、(B)における各デ
ーターは、天然型ヒトCNTF(●)、E153H
(▲)、E153Y(△)、E153F(○)、E15
3W(□)を示す。
【図12】図12は、E153位改変体のニワトリDR
Gニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(C)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153A(□)、E153V(■)、E15
3L(△)を示し、(D)における各データーは、天然
型ヒトCNTF(●)、E153G(□)、E153P
(■)を示す。
【図13】図13は、E153位改変体のニワトリDR
Gニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(E)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153M(□)、E153I(△)を示し、
(F)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153K(□)を示す。
【図14】図14は、E153位改変体のニワトリDR
Gニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(G)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153Q(○)、E153N(□)、E15
3D(■)を示す。
【図15】図15は、K155位改変体のニワトリDR
Gニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
における各データは、天然型ヒトCNTF(●)、K1
55R(○)、K155A(△)、K155M(□)を
示す。
【図16】図16は、E153位改変体のニワトリCG
ニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(A)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153R(○)、E153Y(△)、E15
3F(□)を示し、(B)における各データは、天然型
ヒトCNTF(●)、E153H(△)、E153W
(○)を示す。
【図17】図17は、E153位改変体のラットDRG
ニューロンに対する生存維持活性を示す。なお、図中
(A)における各データーは、天然型ヒトCNTF
(●)、E153R(○)、E153Y(□)、E15
3F(■)を示し、(B)における各データは、天然型
ヒトCNTF(●)、E153H(△)、E153W
(▲)を示す。
【図18】図18は、天然型CNTF及び各CNTF改
変体を終濃度1ng/mLで添加した場合の活性値を示
す。縦軸は、CNTF応答細胞の生存率(%)として、
570nmにおける吸光度(フォルマザンの生成を示
す)で、100ng/mLのCNTF或いはCNTF改
変体を添加した場合を100%として(表記実験の場
合、A570 =0.19を100%とする)、その値に対
する比率で表した。
【図19】図19は、ヒトCNTFにおけるD1キャッ
プ領域の変異による改変体の、ニワトリDRGニューロ
ンに対する生存維持活性を示す。各点(●)が、それぞ
れの改変体を表し、50%有効濃度(EC50)の比較
による、天然型ヒトCNTFに対する活性百分率(%)
で表記した。
【図20】図20は、ヒト成長ホルモン(hGH)の3
次構造上に、本発明におけるヒトCNTF改変体の変異
導入部位(「D1キャップ領域」及び「Q63」)を表
記したものを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07K 14/54 14/575 C12N 1/21 8828−4B 15/09 ZNA C12P 21/02 C 9452−4B // A61K 38/00 C07K 1/107 (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 伊藤 彰 大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住 友製薬株式会社内 (72)発明者 木村 徹 大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住 友製薬株式会社内 (72)発明者 中山 智加男 大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住 友製薬株式会社内 (72)発明者 野口 浩 大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住 友製薬株式会社内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 4本のヘリックス束構造(N末端側から
    ヘリックスA、B、C、Dと呼ぶ。)を有するタンパク
    質のアミノ酸配列中、D1キャップ領域(但し、D1キ
    ャップ領域とはヘリックスCとヘリックスDの間である
    CDループ領域とヘリックスDとの境界領域のことをい
    い、そのアミノ酸配列が−φ−(F/W)−(E/Q)
    −(K/R)−(K/R)−φ−X−G−(φは疎水性
    残基、Xはいずれの残基でも良いことを示す)で表され
    るD1モチーフ配列を有する領域をいう。)に相当する
    アミノ酸残基の少なくとも1つが、他のアミノ酸残基に
    置換されていることを特徴とする改変タンパク質。
  2. 【請求項2】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、細胞内へのシグナル伝達のための受容体として
    gp130を利用するタンパク質である請求項1記載の
    改変タンパク質。
  3. 【請求項3】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、細胞内へのシグナル伝達のための受容体として
    gp130を利用するタンパク質であって、D1モチー
    フ配列のN末端側から3番目のアミノ酸残基が、他のア
    ミノ酸残基に置換されていることを特徴とする請求項1
    記載の改変タンパク質。
  4. 【請求項4】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、ヒト毛様体神経栄養因子(以下、ヒトCNTF
    と略す。)であって、そのアミノ酸配列中、天然型ヒト
    CNTFのアミノ酸配列の少なくとも153位に相当す
    るアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基に置換されている
    ヒトCNTF改変体であることを特徴とする請求項1記
    載の改変タンパク質。
  5. 【請求項5】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、白血球遊走阻止因子(以下、LIFと略す。)
    であって、そのアミノ酸配列中、天然型LIFのアミノ
    酸配列の少なくとも156位に相当するアミノ酸残基
    が、他のアミノ酸残基に置換されているLIF改変体で
    あることを特徴とする請求項1記載の改変タンパク質。
  6. 【請求項6】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、オンコスタチンM(以下、OSMと略す。)で
    あって、そのアミノ酸配列中、天然型OSMのアミノ酸
    配列の少なくとも161位に相当するアミノ酸残基が、
    他のアミノ酸残基に置換されているOSM改変体である
    ことを特徴とする請求項1記載の改変タンパク質。
  7. 【請求項7】 4本のヘリックス束構造を有するタンパ
    ク質が、顆粒球コロニー刺激因子(以下、G−CSFと
    略す。)であって、そのアミノ酸配列中、天然型G−C
    SFのアミノ酸配列の少なくとも146位に相当するア
    ミノ酸残基が、他のアミノ酸残基に置換されているG−
    CSF改変体であることを特徴とする請求項1記載の改
    変タンパク質。
  8. 【請求項8】 他のアミノ酸残基が天然のアミノ酸残基
    又は非天然のアミノ酸残基であることを特徴とする請求
    項1〜7いずれか記載の改変タンパク質。
  9. 【請求項9】 他のアミノ酸残基が中性又は塩基性アミ
    ノ酸残基であることを特徴とする請求項8記載の改変タ
    ンパク質。
  10. 【請求項10】 中性又は塩基性アミノ酸残基が、ヒス
    チジンを含む芳香族性アミノ酸残基又はアルギニン残基
    であることを特徴とする請求項9記載の改変タンパク
    質。
  11. 【請求項11】 ヒスチジンを含む芳香族性アミノ酸残
    基が、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、
    又はヒスチジン残基であることを特徴とする請求項10
    記載の改変タンパク質。
  12. 【請求項12】 中性又は塩基性アミノ酸残基が、アラ
    ニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、
    グルタミン、アスパラギン、グリシン、プロリン、チロ
    シン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジ
    ン、リジン又はアルギニン残基であることを特徴とする
    請求項9記載の改変タンパク質。
  13. 【請求項13】 天然型ヒトCNTFの63位に相当す
    るアミノ酸残基が他のアミノ酸残基にさらに置換されて
    いることを特徴とする請求項4記載の改変タンパク質。
  14. 【請求項14】 63位に相当するアミノ酸残基がアル
    ギニン残基に置換されていることを特徴とする請求項1
    3記載の改変タンパク質。
  15. 【請求項15】 請求項1〜14いずれか記載の改変タ
    ンパク質をコードする塩基配列を含有するDNA。
  16. 【請求項16】 請求項15記載のDNAを含有する発
    現ベクター。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の発現ベクターで形質
    転換された原核細胞又は真核細胞。
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