JPH08144139A - シルクトウ紡績糸の製造方法 - Google Patents

シルクトウ紡績糸の製造方法

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JPH08144139A
JPH08144139A JP28362194A JP28362194A JPH08144139A JP H08144139 A JPH08144139 A JP H08144139A JP 28362194 A JP28362194 A JP 28362194A JP 28362194 A JP28362194 A JP 28362194A JP H08144139 A JPH08144139 A JP H08144139A
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tow
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roller
spinning
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JP28362194A
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Masahiro Obo
正弘 於保
Akira Nakaya
昭 中屋
Tsuneko Akaha
恒子 赤羽
Mitsuo Yokozawa
三夫 横沢
Masahiro Nishikawa
雅弘 西川
Toshio Sakamoto
敏夫 坂本
Tadanobu Yamada
忠信 山田
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ISHIKAWA SENI KK
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
Original Assignee
ISHIKAWA SENI KK
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の製糸によるフィラメントシルク(生
糸)や絹糸紡績法によるスパンシルク(絹紡糸)には見
られない特性のもった、洋装用材料にも適する新しいシ
ルクトウ紡績方法を提供する。 【構成】 アニオン活性剤に非イオン活性剤を配合した
油剤、或いは炭素数が4〜18のアルコールをベースと
したエステル塩化物から成る油剤でオイリングしたシル
クトウから成る分繊フィラメント束を原料として、牽切
機のローラーをフロントローラーからバックローラーま
でを4対のローラで構成し、そのドラフト比を特定した
パーロック式牽切紡績方式によりシルクトウ紡績糸に紡
績する。 【効果】 シルクトウから成る分繊フィラメント束は、
分繊性がよく、しかも柔軟性もあり、静電気の帯電防止
効果に優れて、牽切機にかける際、シルクトウが牽切機
のローラーに巻き付かず、簡単に牽切機にかけることが
出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シルクトウから紡績糸
を得るシルクトウ紡績糸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、絹織物の和服用途は生活様式や消
費者志向の変化によって減少する傾向にある。その中
で、絹を洋装用に用いることによって高級なイメージと
着装の美しさを満たした各種の絹製品が登場してきてい
る。
【0003】従来、繭から採取される繊維(フィラメン
ト)の活用方法としては、製糸によるフィラメントシル
ク(生糸使い)と、絹糸紡績法によるスパンシルク(絹
紡糸)が知られている。
【0004】前者のフィラメントシルクは、主として和
服を中心とした着用方法や着用回数に制約のある用途に
用いられている。また、洋装用にはフォーマルドレスの
ような和服と近似の消費分野に限定されているのが実情
である。
【0005】後者のスパンシルクは、生糸のような光沢
はないが、スパン糸独特の温かみと柔らかさがあり、た
て・よこ糸に絹紡糸を用い、平組織に織り上げた絹織物
(富士絹)は、イージケアなシャツ、ブラウス等の洋装
素材として広く利用されている。また、他の絹糸との混
織で、帯地等に使われることも多い。
【0006】このスパンシルク(絹紡糸)の製造は図7
に示すような工程「開俵→選別→水洗→腐化精練→晒精
練→脱水→乾燥から成る洗練処理工程を経て精乾綿を得
る。この精乾綿を打繭→開繭→切綿→梳綿→精綿(梳綿
と精綿は十数回繰り返す)から成る工程を経てスライバ
ーを得る。このスライバーを練条→粗紡→精紡→撚糸→
ガス焼→かせ揚の工程」を経て作られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記スパンシルクにお
ける絹紡糸原料であるくず繭、汚れ繭、揚がり繭、キビ
ソ(生皮芋)、ビス(皮巣)、糸屑、毛羽といった養
蚕、製糸、織物工程から出る副蚕糸は塵埃、異物、蛹く
ず等の不純物を大量に含んでいるため、先ず、大量のき
れいな水で洗って脱水、乾燥したのちに精練を行う。絹
紡糸のよしあしは精練工程が完璧に出来るかどうかにか
かっているといっても過言ではない。そのために長時間
を要し、腐化による悪臭、排水汚染等の欠点はあるが、
薬品諸経費は安く、歩留まりがよく、繊維損傷の少ない
方法である腐化精練が行われている。
【0008】このように絹紡糸を製造する絹紡糸加工は
前近代的な処理工程と、過激な処理方法で絹自体の物性
が著しく損なわれている状況にある。
【0009】また、絹紡糸の製造方法は前記のように幾
多の人手要する工程を30〜40も経て加工処理される
ので、生産性や原料収率(歩留まり)が低く、作業環境
も極めて悪い状況にある。
【0010】前記を更に詳しく述べると、 (1) 絹糸紡績は工程数が長く、しかも工程は人手を多く
要する重要な工程が多い。 (2) 腐化精練はバクテリヤを繁殖させ、そのバクテリヤ
が出す酵素によりセリシン、油脂類を分解除去する方法
であるので、精練に長時間を要し、腐化による悪臭や環
境、排水汚染等の問題を抱えている。 (3) 絹糸紡績ではカードリングが不可欠である。このた
めネップが発生する。ネップ除去や繊維をきれいに平行
に揃えるために、スライバー数十本余りをダブリングド
ラフトして練条およびコーマー工程を数回繰り返し、ス
ライバーの均整度、平行度を図る必要がある。このため
対原料収率(歩留まり)が低い(国内の紡績工場では歩
留まりが30数%といわれている)。 (4) 絹紡糸はその製造過程で苛酷な処理を受けるため、
擦過傷を負い、繊維内部構造も変化して絹本来の物性が
損傷される。その結果、絹紡糸は強度が弱く、絹本来の
光沢がない。 以上の点に加えて、(5)原料の副蚕糸の入手が困難な蚕
糸業事情もあり、産繭国と国際競合は厳しい情勢にあ
る。
【0011】そこで、従来の製糸によるフィラメントシ
ルク(生糸)や絹糸紡績法によるスパンシルク(絹紡
糸)には見られない、特性のもった新しい糸を生産効率
のよい近代システムによって生産することが絹の需要拡
大を図る上で重要である。
【0012】本発明は前記問題点を解消し、従来に見ら
れない特性をもった新しいシルクトウ紡績糸を製造する
方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の出願人の一人で
ある、農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所長は、先
に、特開平6-257008号(特願平5-41395号)で「煮繭方
法によって煮繭した煮熟繭を絹用精練剤の混入した繰繭
槽内で、浸透前処理を行った後、精減率5%ないし10
%の分練り精練を行いつつ同時に、繭糸同士が分繊した
状態で一斉繰糸と油剤付与を行って無抱合状態の繭糸束
を作製することを特徴とする精練繰糸による繭糸束の製
造方法」を提案した。
【0014】特開平6-257008号(特願平5-41395号)で
提案せる方法によれば、たるみ、つれ、よじれ、捩じれ
がなく、牽切、精条、紡績工程に耐えられ、よく分繊さ
れた無抱合状態の繭糸束を容易に効率よく製造すること
が出来る。
【0015】本発明は、生活様式や消費者志向の変化に
伴い絹を洋装用に用いるに適した「パーロック式牽切紡
績法によるシルクトウ紡績糸、シルクトウ複合紡績糸の
開発」並びに「シルクトウの生産と短繊維化技術の開
発」を目的に、従来に見られない特性をもった新しいシ
ルクトウ紡績糸を製造する方法である。
【0016】本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意
検討した結果、(1) 合理的な近代システムにより生産す
ることが出来ること、(2) 素材を痛めないでセリシン付
きのシルクトウ紡績糸が得られること、(3) 選除繭のよ
うな安価な繭を利用することが出来ること、(4) 繊維長
さの異なる他繊維との複合化が可能であること。
【0017】これらを満たす製造方法によって絹の短繊
維化素材を開発しようとした。この結果、繊維の分繊
性、平行度が良好で、“つれ”、“たるみ”、“ねじ
れ”、“よじれ”がなく、帯電防止効果の大きい油剤に
よって均一にかつ十分にオイリングされている分繊フィ
ラメント束としてのシルクトウを利用し、牽切機による
シルクトウのドラフトカットを、シルクトウによく適合
するように制御、管理された牽切速度、ドラフト比、ロ
ーラー圧、環境湿度の条件下で行うならば、合繊紡績法
であるパーロック式牽切紡績方式によってシルクトウ紡
績糸(絹のスパン素材糸)が合理的に製造出来ることを
知見した。
【0018】パーロック式牽切紡績法は天然繊維のよう
に不純物や短繊維を含まないビスコースレーヨン、アク
リル、ポリエステル、ナイロン等の合繊に適したトウ紡
績方法で、合理的な近代生産システムである。絹の紡績
にも原理的には採用可能と考えられるが、実用化される
ことはなかった。その理由は明らかではないが、牽切に
耐えられるようなよく分繊したシルクトウの生産が出来
なかったこと、効果のある帯電防止剤がなかったこと、
分繊性を低下させずに十分にオイリング出来る方法が解
決されていなかったこと、シルクトウの牽切工程を制
御、管理出来る満足な加工条件が明らかにされなかった
ことによると思われる。
【0019】本発明は前記知見並びに検討結果に基づい
てなされたものであり、シルクトウ紡績糸の製造方法
は、油剤でオイリングしたシルクトウから成る分繊フィ
ラメント束を原料として、パーロック式牽切紡績方式に
よりシルクトウ紡績糸に紡績することを特徴とする。
【0020】前記油剤はアニオン活性剤に非イオン活性
剤を配合した油剤、或いは炭素数が4〜18のアルコー
ルをベースとしたリン酸エステル塩化物を用いる。
【0021】また、前記パーロック式牽切紡績方式の牽
切機のローラーをフロントローラーからバックローラー
までを4対のローラーで構成し、全体のドラフト比を2
〜10倍に設定する。
【0022】
【作用】アニオン活性剤に非イオン活性剤を配合した油
剤でオイリングしたシルクトウから成る分繊フィラメン
ト束、或いは炭素数4〜18のアルコールをベースとし
たリン酸エステル塩化物の油剤でオイリングしたシルク
トウから成る分繊フィラメント束は、分繊性がよく、し
かも柔軟性もあり、静電気の帯電防止効果が優れるた
め、牽切機にかけるとき、シルクトウが牽切のローラー
に巻き付かず、簡単に牽切機にかけられる。
【0023】また、前記油剤でオイリングしたシルクト
ウを牽切機で牽切する際、牽切機のローラーをフロント
ローラー、セカンドローラー、サードローラー、バック
ローラーの4対のローラーで構成し、全体のドラフト比
を2〜10倍に設定することにより、良好に牽切するこ
とが出来る。
【0024】
【実施例】先ず、本発明のシルクトウ紡績糸の製造方法
における原料シルクトウ、油剤、シルクトウへのオイリ
ング、シルクトウへの牽切方法について述べる。
【0025】1. 本発明の原料シルクトウは、繊維の柔
らかい精練繰糸法で繰製した練減率5〜10%の精練ト
ウを用いることが望ましい。未精練のシルクトウであっ
ても、若干牽切しにくいことと、切断繊維の平行度が低
下する傾向はあるが適用可能である。ただし、精練ト
ウ、未精練トウを問わず、次のような性能を具備してい
なければならない。 (1) 均斉でよくそろい、繊維の分繊性、平行度が良好で
あること、(2) “つれ”、“たるみ”、“ねじれ”、
“よじれ”がないこと、(3) シルクトウの繰製中に帯電
防止効果の大きな油剤が均一に、かつ十分にオイリング
されていること。
【0026】2. シルクトウに付着させる油剤として
は、牽切工程で発生する静電気を抑制する効果が大であ
ることに加えて、シルクトウの分繊性、柔軟性が良好で
あることが必要である。
【0027】そこで、帯電防止効果に優れる商品名ゼレ
ックス112K(ミヨシ油脂株式会社:アルキルリン酸
エステル)を中心として各種表面活性剤について試験を
行った。
【0028】表1に試験に供した活性剤の種類、並びに
各種活性剤の摩擦帯電圧の結果を示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1におけるシルクトウへの油剤処理条件
は次の通りとした。 1) 給油量:0.5%/シルクトウ 2) 処理:50℃×5分浸漬処理 3) 浴比:1:30 4) 絞り:100%(遠心脱水機) 5) :80℃×120分 また、摩擦帯電圧の測定は温度25℃、湿度40%R.H.の条
件下で行った。
【0031】試験の結果、摩擦帯電圧が3000〜4000V以
上となると牽切が困難となることが分かった。即ち、表
1から明らかなように、精練、未精練のシルクトウとも
に、アニオン活性剤に非イオン活性剤を配合した油剤、
並びに炭素数4〜18のアルコールをベースとしたリン
酸エステル塩化物の油剤が良好な結果が得られた。尚、
本発明で炭素数4〜18のアルコールをベースとしたリ
ン酸エステル塩化物とは、一般式
【0032】
【化1】
【0033】(式中、n=4〜18である)で表わされ
るものをいう。
【0034】そこで、本発明で用いる油剤は、アニオン
活性剤に非イオン活性剤を配合したもの、或いは炭素数
4〜18のアルコールをベースにしたリン酸エステル塩
化物とした。
【0035】アニオン活性剤に非イオン活性剤を配合し
たものとしては、商品名ソフミンR−6(ミヨシ油脂株
式会社:ソフミンR−6は高級アルコール硫酸化物とエ
ーテル系非イオン活性剤と動植物油の配合油剤であり、
イオン性はアニオン・ノニオン、pHは6〜7、含水率
は55.2%である)が挙げられる。
【0036】また、炭素数4〜18のアルコールをベー
スにしたリン酸エステル塩化物としては、商品名ゼレッ
クス112K(ミヨシ油脂株式会社:C8アルコールリ
ン酸化カリウム塩)、商品名ゼレックスH−9K(ミヨ
シ油脂株式会社:C12アルコールリン酸化カリウム
塩)等が挙げられる。そして、ベースとなるアルコール
の炭素数を4〜18としたのは、炭素数が4に満たない
場合は、水との親和性が増大するためシルクトウへの油
剤付着が困難となり、また、炭素数が18を超えた場合
は、水に不溶性となるため操繭槽内に混入して精練シル
クトウを操製することが難しくなるからである。
【0037】3. 本発明における繰製段階におけるシル
クトウへの油剤のオイリング方式は次の通りである。
【0038】多粒の煮熟繭(1,000〜3,000粒)から一斉
に引出した繭糸を絡んだり、セリシンが固着しないよう
に、繰枠(幅2m)に幅広く広がった状態で掛けた後、繰
枠直後に設置したシングルオイリングローラー(直径12
mm)或いはダブルオイリングローラー(直径12mm)間に
通した。
【0039】表2に油剤の種類と油剤濃度、並びにこの
油剤を用いて繭糸の片面だけに油剤の付着を行うシング
ルローラー方式でのオイリングの場合と、繭糸の両面に
油剤の付着が行うダブルローラー方式でのオイリングの
場合の油剤付着量の測定結果を示す。
【0040】
【表2】
【0041】表2から明らかなように、ダブルローラー
方式でオイリングを行った場合の方が、油剤付着量は大
きい。また、付着油剤の抽出・定量試験から油剤の付着
状態も繭糸の両面に均一に付着し、油剤付着効果が良好
であると認められた。ダブルローラー方式の場合、油剤
濃度50〜80g/リットルでオイリング処理を行うと、油
剤付着量は3〜5%となり、牽切紡績の際の静電気発生が
ほぼ完全に抑制されて、牽切しやすく、ローラーへの巻
き付け障害が起こらず、まとまりのよいスライバーが得
られる。
【0042】4. 帯電防止剤を施す理由と課題との関係
について 紡績工程で発生する静電気をいかに制御するかは、各紡
績会社の最大の課題であり、使用する油剤や方法は秘中
の秘であり、適切な油剤処理を行うかどうかが、生産効
率と紡績糸の「質」を大きく左右する。シルクトウ紡績
糸においても牽切時に発生する静電気対策が最大の難関
であり、この問題をクリアー出来たことがシルクトウ紡
績糸およびこのシルクトウ紡績糸を用いた複合紡績糸の
製造に成功した要因である。
【0043】5. パーロック紡績を用いた理由について トウ紡績法は、化学繊維の誕生により開発された紡績法
である。多数の紡糸孔から紡出された連続繊維束(フィ
ラメント)をトウといい、このトウを原料として、トウ
をドラフトカット、スライバーとし、2工程以上で紡績
糸とする紡績法である。その特徴は、トウは理想的に平
行状態にある連続した繊維束であるから、この特性をそ
のまま生かし、従来行われて来た複雑で困難なスライバ
ーの均整度、平行化を図る紡績側の製条、練条工程を大
幅に短縮し、従来の紡績工程を合理化したものである。
パーロック紡績法はコンバーター方式のなかでも、最も
工程が短縮でき、小量生産向きな紡績法である。
【0044】紡績法としてはパーロック紡績法の他にタ
ーボステープラ紡績法、パシフィックコンバーター紡績
法があるが、ターボステープラ紡績法の場合はトウを加
熱延伸して張力を与えたまま冷却し、更にドラフトカッ
トしてスライバーを製造する必要があり、また、パシフ
ィックコンバーター紡績法の場合はカッターによって積
極的にトウを切断する方法のため、いずれもシルクトウ
紡績糸の製造に適しない。
【0045】6. シルクトウの牽切方法は、原料シルク
トウ1本のままのもの、数本〜数十本をダブリングした
もの、或いは牽切機直前でダブリングしながら牽切に供
給するもの等を、牽切機に通すことによってドラフト切
断する。所要の切断する長さはドラフト間隔(ゲージ
幅)を調節することによって、平均長さが数cm〜数十cm
とすることが出来る。牽切速度、ドラフト比、ローラー
圧、ローラーへのシルクトウの通し方は精練、未精練の
シルクトウともに精練程度、繊度、油剤付着量等に対応
して適切に管理する必要がある。
【0046】一般に、牽切機のドラフト比は、最初はド
ラフトゾーンでは小さくとり、徐々に大きくしていくこ
とが牽切むら、牽切スライバーの太さむら等が少ないの
で望ましい。2,000粒(約6,000デニール)〜10,000粒(約3
0,000デニール)のシルクトウは2〜4倍のドラフト比が適
切であるが、実験の結果からドラフト比を5〜10倍に上
げることも可能であると判断出来た。
【0047】牽切機上でのダブリングは、牽切機のバッ
クローラーからクリールまでの距離を十分に長くとっ
て、シルクトウ間の張力調整を行うことが重要である。
【0048】牽切したスライバーは絹単独、または練条
で他繊維のスライバーと混紡した以降、通常のバーロッ
ク式牽切紡績方法によりシルクトウ紡績糸およびシルク
トウ複合紡績糸に加工する。
【0049】7. 本発明において牽切機のローラー構成
をフロントローラーからバックローラーまでの4対のロ
ーラーで構成し、全体のドラフト比を2〜10倍に設定
したのは、平均繊維長さが3インチ(76.2mm)紡績に適合
するようなシルクスライバーが得られるようにする理由
からである。
【0050】次に本発明の具体的実施例を比較例と共に
説明する。
【0051】実施例1 シルクトウ紡績糸は、図1に示す如く、煮繭→トウ繰糸
(牽緒→繰枠掛リフト→乾燥→巻取)の工程を経てシル
クトウを作り、これを牽切してスライバーとし、このス
ライバーを練条→粗紡→精紡の工程を経て、シルクトウ
紡績糸を製造するものであり、繰糸の工程は図2並びに
図3に示す装置を用い、また、牽切は図4に示す牽切機
を用いて行う。
【0052】図2並びに図3の装置について説明する。
図中、1は繰糸槽、2は繰糸槽1内に浸漬した多数の
繭、3は繰糸槽1内の各繭2よれ引き出された繭糸を乾
燥するための例えば赤外線ヒーターから成る乾燥機、4
は各繭2より引き出され乾燥された繭糸を繰り出すため
の上下自在とした繰枠、5は各繭糸が纏絡しないように
帯電防止並びに分繊を付与するためのローラー式オイリ
ング装置、6はローラー式オイリング装置5により帯電
防止剤付与された分繊した無抱合状態のシルクトウ(繭
糸束)、7はトラバースガイド、8はシルクトウ6の巻
取枠、9は帯電防止剤付与と分繊されたシルクトウ6を
乾燥するための例えば熱源が蒸気から成る乾燥機を示
す。
【0053】また、ローラー式オイリング装置5につい
て詳しく説明すると、図3に示すように油剤11を満た
した油剤槽10と、上下1対のオイリングローラー1
2、12から成り、両ローラー12間にシルクトウ6を
通過させてシルクトウ6の両面に油剤11を付着させる
ようにした。
【0054】先ず、繰糸槽1内にたんぱく分解酵素とし
て商品名アルカラーゼ2.5L(ノボ・インダストリー社
製、アルカリ性細菌プロティアーゼ)0.4ml/リットル
と、炭酸水素ナトリウム0.5g/リットルを混入し、均一
に分散させた温度50℃に調整した繰糸湯280リットルを
満たした。また、ローラー式オイリング装置5の油剤槽
10内に油剤11として商品名ソフミンR−6(ミヨシ
油脂株式会社)を濃度80g/リットルで満たした。ま
た、オイリングローラー12は直径12mm、長さ750mmの
ローラーを用いた。
【0055】次に、蚕品種「錦秋×鐘和」の原料繭2
(繭数2,000粒)を常法に従って、煮繭機で煮繭し、索
緒した後、前記繰糸槽1に投入した。そして温度50℃の
繰糸槽1内の原料繭2から繭糸を一斉に引き出し、ステ
ンレス製繰枠(直径300mm、長さ1200mm)4に纏絡ない
ように並び掛けてから繰糸速度12m/分で一斉に繰糸を
行った。
【0056】続いて、油剤処理は各繭糸をオイリング装
置5の上下のオイリングローラー12間に通過、接触さ
せてオイリング処理を施した後、温度90℃の乾燥機9内
を通過させて強制乾燥して精練繰糸を得た。得られた精
練繰糸シルクトウの練減率は平均8.37%、油剤付着量は
3.45%であった。
【0057】図4の装置について説明する。牽切機13
のローラーはフロントローラー14、セカンドローラー
15、サードローラー16、バックローラー17の4対
のローラーで構成されており、ゲージ幅は他繊維スライ
バーとの複合化を考慮して、平均繊維長さが3インチ紡
績(76.2mm)に適合するようなスライバーが得られるよ
うに設定した。また、前記4対のローラー間で精練シル
クトウ6をランダムに切断して得られたスライバー18
をケンス19内に貯めるようにした。
【0058】そして、精練シルクトウ6を8本ダブリン
グしながら牽切機(大阪機工株式会社製、モデルAR−
V型のローラー構成を前記構成に改造した牽切機を用
い、また牽切機の全長Lは2600mmとした)13にフィー
ドした。尚、牽切機13に掛けたシルクトウの総重量は
6.8kgであった。牽切は静電気の発生を抑えるため牽切
機13の周辺をビニール囲いし、加湿機で放湿して、温
度24℃、湿度85%R.H.の温湿度の条件下で行った。ま
た、ドラフト比並びにゲージは次の通りである。 フロントローラー:セカンドローラー=1:2.17、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:1.84、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:2.06、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=8.23。
【0059】そして、この牽切機によって牽切したシル
クトウスライバーを合繊紡績法の生産システムに準じ
て、練条、粗紡、精紡の各工程を経て製造したシルクト
ウ紡績糸(単糸)は5.6kgであり、また、シルクトウと
ポリエステルおよびレーヨンとの複合紡績糸は4.3kgで
あった。このシルクトウ紡績糸(単糸)を2本合糸後、
S300T/mに加撚してガス焼き処理を行い、たて糸、よこ
糸用の織り糸とした。焼減りは8.57%であった。
【0060】紡績工程におけるシルクトウ繊維の特性変
化を表3に、また、シルクトウ粗糸スライバーのステー
プルダイアグラムを図5に示す。
【0061】
【表3】
【0062】原料シルクトウの牽切がスムーズに出来
て、まとまりのよいスライバーとなれば、パーロック式
牽切紡績方式によるシルクトウ紡績糸、および他の繊維
スライバーを混繊させた複合紡績糸の製造は何らの問題
もなく行うことが出来る。
【0063】また、シルクトウ粗糸スライバー並びに市
販絹紡糸のステープルダイヤグラムを図5に示す。図5
から明らかなように、製造されたシルクトウ粗糸スライ
バー(図5曲線A)の品質特性は平均繊維長さが71.1m
であり、グレードの高い市販絹紡糸(図5曲線B)の平
均繊維長さ77.4mに酷似したものであることが分かっ
た。また、ネップの発生はほとんど認められなかった。
【0064】次に本発明製造方法で製造されたシルクト
ウ紡績糸(40S/2G)と、市販絹紡糸の物性と外観性状を
調べ、その結果を表4に示すと共に、シルクトウ紡績糸
および市販絹紡糸のLとbを測定し、その結果を図6に
示す。尚、Lとは明度(LIGHTNESS)を、また、bとは黄
味(YELLOWNESS)を表わす。
【0065】
【表4】
【0066】表4から明らかなように、本発明のシルク
トウ紡績糸は市販絹紡糸に比して、引張強度が大きく、
糸むら、節、ネップの等級がすべて1級であり、市販絹
紡糸スライバーのように紡績工程において、ネップを除
去するための練条およびコーマーの紡績工程を繰り返し
て行う必要のないことが分かる。
【0067】また、図6はL,b測色法による結果を示
すが、市販絹紡糸との比較において本発明のシルクトウ
紡績糸の方が明度が高く、黄味が少ないため、精練白上
がりがよく、光沢も優れていることが分かる。
【0068】シルクトウ紡績糸にポリエステル、或いは
レーヨンを混紡したシルクトウ複合紡績糸の物性を調
べ、その結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】表5から明らかなように、引張り強さ、伸
長弾性率、磨耗強さ、収縮率、熱水収縮率に複合相手繊
維の特徴がよく現われており、シルクトウ複合紡績糸の
織物は精練することによって、その紡績糸の特徴が引き
出され、柔らかで膨らみのある新しい後練り紡績糸織物
となることが分かる。
【0071】本発明方法によって製造されたシルクトウ
紡績糸を表6
【0072】
【表6】
【0073】に示す織物設計に従って製織、酵素精練、
酸性染料による染色加工した後、男性用ブルゾン服と女
性用ブラウス服に縫製したところ、スパン糸独特の温か
みと柔らかさがあり、かつ織り上げた後、精練を行いセ
リシンを除去したため、織組織に適当な空隙が出来、弾
力性と嵩高性のある風合いが得られた。
【0074】また、本発明方法で製造したシルクトウ紡
績糸(40S/2G)を用い、シルクトウ紡績糸100%の絹織
物、また、ポリエステル或いはレーヨンを混織したシル
クトウ複合紡績糸織物の物性、力学的特性値、風合い特
性値を調べ、その結果を表7、表8、表9に示す。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】表7から明らかなように、シルクトウ紡績
糸を用いたシルクトウ紡績糸100%の絹織物は従来の絹
紡糸に比べて重量、厚さ、剛難度が小さく、保温性が高
く、軽くてソフトな暖かい絹織物であることが分かる。
【0079】また、表8から明らかなように、シルクト
ウ紡績糸100%の絹織物は、ポリエステル或いはレーヨ
ンを50%混織した複合紡績糸をよこ糸に使用した織物に
比べて、せん断剛性が小さく、せん断変形および圧縮に
対する回復力が最もよかったが、曲げ剛性は大きかっ
た。
【0080】また、表9から明らかなように、KES風
合い特性値は、シルクトウ50%とレーヨン50%の複合紡
績糸を用いた織物のふくらみ、しなやかさの値が一番大
きく、次いでシルクトウ紡績糸100%を用いた織物、シ
ルクトウ50%とポリエステル50%の複合紡績糸を用いた
織物の順であった。また、シルクトウ50%とレーヨン50
%の複合紡績糸を用いた織物にシルクトウ紡績糸100%
を用いた織物と同様の特徴が強調される結果が表れた。
これはレーヨン原糸がもつ高収縮性の特徴がバランスよ
く織物の風合い特性に生かされたものと考えられる。
【0081】表7、表8、表9の結果より、本発明方法
で製造されたシルクトウ紡績糸は柔らかさ、しなやか
さ、ふくらみのある絹織物に用いることが出来る紡績糸
であることが分かる。
【0082】実施例2 油剤として商品名ゼレックスOK(ミヨシ油脂株式会
社:炭素数4のアルコールをベースにしたリン酸エステ
ル塩化物)を用い、油剤濃度を100g/リットルとした
以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並びに
シルクトウ紡績糸を製造した。尚、油剤の付着量は0.86
%であった。製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは82.3mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは97
6.5gf、引張り強さ変動率は8.8%、伸び率は8.1%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0083】実施例3 油剤として商品名ミューロンAC(ミヨシ油脂株式会
社:炭素数18のアルコールをベースにしたリン酸エス
テル塩化物)を用い、油剤濃度を50g/リットルとした
以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並びに
シルクトウ紡績糸を製造した。尚、油剤の付着量は3.9
%であった。
【0084】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは74.6mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは93
2.7gf、引張り強さ変動率は8.3%、伸び率は8.6%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0085】実施例4 油剤として商品名ゼレックス112K(ミヨシ油脂株式
会社:炭素数8のアルコールをベースにしたリン酸エス
テル塩化物)を用い、油剤濃度を80g/リットルとした
以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並びに
シルクトウ紡績糸を製造した。尚、油剤の付着量は3.5
%であった。
【0086】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは77.1mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは94
1.9gf、引張り強さ変動率は8.6%、伸び率は8.5%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0087】実施例5 油剤として商品名ゼレックスH−9K(ミヨシ油脂株式
会社:炭素数12のアルコールをベースにしたリン酸エ
ステル塩化物)を用い、油剤濃度を80g/リットルとし
た以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並び
にシルクトウ紡績糸を製造した。尚、油剤の付着量は4.
3%であった。
【0088】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは75.0mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは95
3.2gf、引張り強さ変動率は8.4%、伸び率は8.9%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0089】実施例6 牽切機のローラーのドラフト比並びにゲージを フロントローラー:セカンドローラー=1:1.45、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:1.23、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:1.38、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=2.5 とした以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー
並びにシルクトウ紡績糸を製造した。
【0090】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは91.5mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは10
16.3gf、引張り強さ変動率は9.4%、伸び率は7.5%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0091】実施例7 牽切機のローラーのドラフト比並びにゲージを フロントローラー:セカンドローラー=1:2.30、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:1.95、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:2.18、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=9.8 とした以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー
並びにシルクトウ紡績糸を製造した。
【0092】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは67.2mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは62
9.0gf、引張り強さ変動率は9.8%、伸び率は9.3%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0093】実施例8 牽切機のローラーのドラフト比並びにゲージを フロントローラー:セカンドローラー=1:1.87、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:1.58、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:1.77、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=5.2 とした以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー
並びにシルクトウ紡績糸を製造した。
【0094】製造されたシルクトウ粗糸スライバーの平
均繊維長さは77.3mmであった。また、シルクトウ紡績糸
の物性並びに外観性状を調べたところ、引張り強さは73
2.0gf、引張り強さ変動率は8.3%、伸び率は7.9%であ
った。また、糸むらは1、節は1、ネップは1であっ
た。
【0095】比較例1 牽切機のローラーのドラフト比並びにゲージを フロントローラー:セカンドローラー=1:1.15、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:0.98、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:1.09、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=1.2 とした以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー
並びにシルクトウ紡績糸を製造しようとしたところ、牽
切むらや牽切不能な繊維が著しく、とても紡績工程に供
給することが出来るようなスライバーとはならなかっ
た。
【0096】比較例2 牽切機のローラーのドラフト比並びにゲージを フロントローラー:セカンドローラー=1:2.43、ゲージ107m/m セカンドローラー:サードローラー =1:2.06、ゲージ117m/m サードローラー:バックローラー =1:2.30、ゲージ146m/m 全体(トータル)ドラフト比=11.5 とした以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー
並びにシルクトウ紡績糸を製造しようとしたところ、牽
切工程で静電気発生のため、まとまりのあるスライバー
を製造することが出来なかった。
【0097】比較例3 油剤として商品名ゼレックスS−2K(ミヨシ油脂株式
会社:炭素数2のアルコールをベースにしたリン酸エス
テル塩化物)を用い、油剤濃度を100g/リットルとし
た以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並び
にシルクトウ紡績糸を製造しようとしたところ、シルク
トウの牽切の際に静電気の発生が極めて大きく、ドラフ
トローラーへの巻き付きのためにトウ牽切が出来ず、ス
ライバーは勿論、シルクトウ紡績糸を得ることが出来な
かった。尚、油剤の付着量は0.45%であった。
【0098】比較例4 油剤として商品名ゼレックスS−20K(ミヨシ油脂株
式会社:炭素数20のアルコールをベースにしたリン酸
エステル塩化物)を用い、油剤濃度を50g/リットルと
した以外は、前記実施例1と同様の方法でスライバー並
びにシルクトウ紡績糸を製造しようとしたところ、製造
されたシルクトウは分繊性がなく、トウ牽切が出来ず、
しかも油剤の付着むらも認められ、紡績工程にとても耐
えられるシルクトウではなかった。尚、油剤の付着量は
8.9%であった。
【0099】比較例5 油剤として商品名ソフロンFW(ミヨシ油脂株式会社:
ソフロンFWはカチオン活性剤とエーテル系非イオン活
性剤の配合比率1:1の混合物から成る油剤)を用い、
油剤濃度を80g/リットルとした以外は、前記実施例1
と同様の方法でスライバー並びにシルクトウ紡績糸を製
造したところ、牽切工程での繊維の静電気発生が顕著で
あったため、まとまりのあるスライバーを得ることが出
来なかった。尚、油剤の付着量は3.5%であった。
【0100】本発明はトウ紡績法の特徴のところで述べ
たように、数千ないし数万デニールのシルクトウを表面
速度の異なる4対のローラー間に供給し、その速度差に
よって繊維一本、一本を延伸切断し、連続スライバーを
得るようにしたので、従来の絹糸紡績法に比べて工程を
簡略化することが出来る。
【0101】従来の絹紡糸の原料には、不純物や混入物
が混じっているために鋼鉄製のかぎに原料をひっかけて
引っ張り、繊維を解き開くと同時に混入物等を手で取り
除く工程等があるため、スライバーの太さ、均整度、平
行度を向上させるカードリング工程、練条工程で苛酷な
処理を受けて絹繊維自体の損傷も大きい。更に、精練時
に殆どセリシンを除去してしまうためにフィブロインが
むき出し状態となり、摩擦等によって精練工程でネップ
や毛羽が発生しやすい。また、そ綿工程でもネップが発
生しやすい。
【0102】その点、本発明のシルクトウ紡績糸は多粒
繰糸法による繊維に損傷を与えない製法であり、精練繰
糸法で行ってもセリシンは三分の二が残っておりフィブ
ロインへの影響はない。
【0103】また、従来の絹紡糸の精練方法の一つであ
る腐化精練法は、おけまたはかめを用いて、これに原料
を仕込み、水を小量入れてバクテリヤの繁殖に適した温
度に保って、自然発酵させて精練を行う方法であるの
で、精練が完了するまでには長時間かかる上に悪臭を放
つため作業環境が極めて悪い。
【0104】本発明のシルクトウ製造時(精練繰糸法)
に用いる精練剤はたんぱく質分解酵素(アルカラーゼ2,
5L)で、臭いは無臭に近く、一回の使用量も少なく、排
水汚染の心配もない。
【0105】また、従来は油剤対策(開発)が十分に出
来ていなかったこと、更に、絹の需要が和服中心の時は
長繊維としての生糸使いが主体になるのは当然のことで
あり、せっかくの長繊維を短繊維化すること等は必要も
なかったし、発想もなかった。
【0106】前述のように、ネップや毛羽の発生がなけ
れば糸の表面はなめらかで、明度は向上し、光沢もよ
い。また、従来の絹紡糸が最初の工程で精練が行われる
ので、繊維が傷つけられている上、過剰精練気味の場合
が多く、その結果フィブロインが損傷されやすいという
問題があるが、本発明の精練繰糸法で製造するシルクト
ウ紡績糸は三分の二近くのセリシンが残っているため利
用目的に合わせて、五分練り、七分練り、完全精練とセ
リシン制御が可能であるので、完全精練でもフィブロイ
ンを損傷せずに精練を行うことが出来る。そのため白上
がりのよい光沢に優れた糸が得られる。
【0107】
【発明の効果】本発明の分繊フィラメント束としてのシ
ルクトウを利用したパーロック式牽切紡績法によるシル
クトウ紡績糸の製造方法は次のような特長がある。 (1) 合理的な近代生産システムである合繊紡績法のパー
ロック式牽切紡績法によって、絹の紡績糸が製造出来
る。 (2) 従来の絹糸紡績法に比べて腐化精練、製綿工程の人
手を要する工程が不要で、大幅な工程の簡略化が実現出
来る。 (3) 梳綿工程、即ちカードリングを必要としないので、
絹紡糸のようにカード詰まりがなく、スラブやネップの
発生がなく、繊維減耗が低い。 (4) シルクトウの構成繊維は均斉でよく揃っており、紡
績工程の可紡性がよい。 (5) シルクトウのほぼ100%が紡績糸に加工出来る。対
原料収率(歩留まり)が高い。 (6) 絹繊維本来の物性をほとんど損なっていない。絹紡
糸よりも強度があり、絹特有の光沢がある。 (7) 牽切紡績法によって製造出来るため、繊維長さを自
由に調節出来る。このため複合紡績糸の複合マテリアル
の繊維長さに合わせた製造が可能で、高品質で多様な複
合紡績糸を製造することが出来る。 (8) シルクトウ紡績糸およびシルクトウ複合紡績糸は、
ソフトな感触で暖かみがあり、ボリューム感に富む。
【0108】また、オイリング処理する際、油剤として
アニオン活性剤に非イオン活性剤を配合した油剤、或い
は炭素数が4〜18のアルコールをベースとしたリン酸
エステル塩化物から成る油剤を用いるとシルクトウから
成る分繊フィラメント束は、分繊性がよく、しかも柔軟
性もあり、静電気の帯電防止効果に優れて、牽切を行う
際にはシルクトウが牽切機のローラーに巻き付かず、簡
単に牽切機にかけることが出来る。
【0109】また、前記油剤でオイリングしたシルクト
ウを牽切機で牽切する際、牽切機のローラーをフロント
ローラー、セカンドローラー、サードローラー、バック
ローラーの4対のローラーで構成し、全体のドラフト比
を2〜10倍に設定することにより、良好に牽切するこ
とが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法の1実施例の工程図、
【図2】 本発明の製造方法を実施するための製造装置
の1例を示す説明図であり、(A)は平面説明図、
(B)は側面説明図、
【図3】 本発明の製造方法を実施するための製造装置
のローラー式オイリング装置の拡大説明図、
【図4】 本発明の製造方法を実施するためのパーロッ
ク式牽切紡績方式の牽切機のローラー構成の1例を示す
説明図、
【図5】 スライバーのステープルダイアグラム、
【図6】 シルクトウ紡績糸および市販絹紡糸のL,b
測色図、
【図7】 従来の絹紡糸の製造方法の工程図、
【符号の説明】
1 繰繭槽、 4 繰枠、 5 ローラー
式オイリング装置、6 繭糸束、 8 巻取枠、
10 油剤槽、11 油剤、 12 オイリ
ングローラー、 13 牽切機、14 フロント
ローラー、 15 セカンドローラー、16 サ
ードローラー、 17 バックローラー、18
スライバー。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横沢 三夫 茨城県つくば市並木3丁目7番地の1 618 (72)発明者 西川 雅弘 石川県金沢市泉野出町4丁目9番20号 (72)発明者 坂本 敏夫 石川県河北郡内灘町字緑台1丁目225番地 (72)発明者 山田 忠信 石川県小松市安宅町タ78番地5号

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油剤でオイリングしたシルクトウから成
    る分繊フィラメント束を原料として、パーロック式牽切
    紡績方式によりシルクトウ紡績糸に紡績することを特徴
    とするシルクトウ紡績糸の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記油剤はアニオン活性剤に非イオン活
    性剤を配合した油剤であることを特徴とする請求項第1
    項に記載のシルクトウ紡績糸の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記油剤は炭素数が4〜18のアルコー
    ルをベースとしたリン酸エステル塩化物であることを特
    徴とする請求項第1項に記載のシルクトウ紡績糸の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記パーロック式牽切紡績方式の牽切機
    のローラーをフロントローラーからバックローラーまで
    を4対のローラーで構成し、全体のドラフト比を2〜1
    0倍に設定したことを特徴とする請求項第1項ないし第
    3項のいずれか1項に記載のシルクトウ紡績糸の製造方
    法。
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