JPH08144070A - Alめっき鋼板のホーロー被覆方法 - Google Patents
Alめっき鋼板のホーロー被覆方法Info
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- JPH08144070A JPH08144070A JP30555394A JP30555394A JPH08144070A JP H08144070 A JPH08144070 A JP H08144070A JP 30555394 A JP30555394 A JP 30555394A JP 30555394 A JP30555394 A JP 30555394A JP H08144070 A JPH08144070 A JP H08144070A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 表面欠陥がなく平滑度の高いホーロー被覆層
をAlめっき鋼板の表面に形成する。 【構成】 Alめっき層の融点よりも低い軟化点をも
ち、線膨張係数がAlめっき鋼板より小さいフリットを
主成分とするスリップをAlめっき鋼板の表面に塗布し
た後、外気に連通した粒子間隙がフリットの間に維持さ
れる軟化点近傍の温度で予備加熱し、次いで前記Alめ
っき層の融点より低い温度まで昇温し焼成する。予備加
熱は、常温〜520℃の温度範囲を30〜40℃/分の
速度で昇温する加熱、或いは450〜520℃の範囲に
ある一定温度に5〜15分保持する加熱の何れであって
も良い。 【効果】 揮発成分が十分に除去されるため、表面欠陥
のないホーロー被覆層が得られ、品質が向上する。
をAlめっき鋼板の表面に形成する。 【構成】 Alめっき層の融点よりも低い軟化点をも
ち、線膨張係数がAlめっき鋼板より小さいフリットを
主成分とするスリップをAlめっき鋼板の表面に塗布し
た後、外気に連通した粒子間隙がフリットの間に維持さ
れる軟化点近傍の温度で予備加熱し、次いで前記Alめ
っき層の融点より低い温度まで昇温し焼成する。予備加
熱は、常温〜520℃の温度範囲を30〜40℃/分の
速度で昇温する加熱、或いは450〜520℃の範囲に
ある一定温度に5〜15分保持する加熱の何れであって
も良い。 【効果】 揮発成分が十分に除去されるため、表面欠陥
のないホーロー被覆層が得られ、品質が向上する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、泡状欠陥のない表面を
もつホーロー引きアルミメッキ鋼板製を製造する方法に
関する。
もつホーロー引きアルミメッキ鋼板製を製造する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】流し台,調理用レンジ,洗面化粧台,吊
り棚等の水回り器具には、ホーローがけした鋼板を目標
形状に組み立てたキャビネットが使用されている。ま
た、意匠性を高めた内装材,外装材,調理用器具にも、
ホーローがけ鋼板が使用されている。ホーロー被覆層
は、疵が付きにくく、長期間に渡り良好な表面状態を維
持する。ホーロー被覆鋼板は、たとえば普通鋼鋼板の表
面にフリットを塗布し、800〜900℃の高温に加熱
することによって製造される。高温加熱によってフリッ
トが溶融し、ホーロー層が形成される。
り棚等の水回り器具には、ホーローがけした鋼板を目標
形状に組み立てたキャビネットが使用されている。ま
た、意匠性を高めた内装材,外装材,調理用器具にも、
ホーローがけ鋼板が使用されている。ホーロー被覆層
は、疵が付きにくく、長期間に渡り良好な表面状態を維
持する。ホーロー被覆鋼板は、たとえば普通鋼鋼板の表
面にフリットを塗布し、800〜900℃の高温に加熱
することによって製造される。高温加熱によってフリッ
トが溶融し、ホーロー層が形成される。
【0003】普通鋼を下地としたホーロー被覆鋼板で
は、ホーロー被覆層で覆われていない表面部分やホーロ
ー被覆層に欠陥がある部分では、下地鋼が外気に露出
し、腐食し易い。腐食の結果として発生する赤錆は、ホ
ーロー被覆層の外観を著しく悪化させ、厨房等の雰囲気
を損ねる原因となる。また、800〜900℃の高温焼
成であるため、加熱・冷却に伴う熱変形が生じ、製品の
寸法精度が低下し易い。腐食発生は、下地鋼としてAl
めっき鋼板を使用することにより防止される。このとき
使用するフリットは、Alめっき層の融点により焼成温
度が制約され、500〜600℃で焼成される配合に選
定される。本発明者等は、このような低温焼成型のフリ
ットを使用してAlめっき鋼板をホーローがけする方法
を開発し、特開平1−100294号公報,特開平4−
280983号公報等に紹介した。低温焼成でホーロー
がけするとき、焼成に消費される熱エネルギーが節減さ
れることは勿論、焼成後の製品に生じる熱歪みや脆いA
l−Fe層の生成も抑制される。
は、ホーロー被覆層で覆われていない表面部分やホーロ
ー被覆層に欠陥がある部分では、下地鋼が外気に露出
し、腐食し易い。腐食の結果として発生する赤錆は、ホ
ーロー被覆層の外観を著しく悪化させ、厨房等の雰囲気
を損ねる原因となる。また、800〜900℃の高温焼
成であるため、加熱・冷却に伴う熱変形が生じ、製品の
寸法精度が低下し易い。腐食発生は、下地鋼としてAl
めっき鋼板を使用することにより防止される。このとき
使用するフリットは、Alめっき層の融点により焼成温
度が制約され、500〜600℃で焼成される配合に選
定される。本発明者等は、このような低温焼成型のフリ
ットを使用してAlめっき鋼板をホーローがけする方法
を開発し、特開平1−100294号公報,特開平4−
280983号公報等に紹介した。低温焼成でホーロー
がけするとき、焼成に消費される熱エネルギーが節減さ
れることは勿論、焼成後の製品に生じる熱歪みや脆いA
l−Fe層の生成も抑制される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】フリットの融点は、ア
ルカリ金属酸化物を配合することによって低温焼成に適
した温度まで下げることが可能である。しかし、アルカ
リ金属酸化物が多量になるに従って、生成したホーロー
被覆層の耐酸性,耐水性等の特性が低下する。そのた
め、アルカリ金属酸化物の配合によってフリットの融点
を下げることには限界がある。その結果、フリットの融
点からAlめっき層の融点までの温度幅が狭く、軟化し
たフリットが十分流動する前に焼成が完了することにな
る。すなわち、フリットの流動が十分に行われないこと
に起因し、生成したホーロー被覆層の表面にホーロー欠
陥が発生し易い。
ルカリ金属酸化物を配合することによって低温焼成に適
した温度まで下げることが可能である。しかし、アルカ
リ金属酸化物が多量になるに従って、生成したホーロー
被覆層の耐酸性,耐水性等の特性が低下する。そのた
め、アルカリ金属酸化物の配合によってフリットの融点
を下げることには限界がある。その結果、フリットの融
点からAlめっき層の融点までの温度幅が狭く、軟化し
たフリットが十分流動する前に焼成が完了することにな
る。すなわち、フリットの流動が十分に行われないこと
に起因し、生成したホーロー被覆層の表面にホーロー欠
陥が発生し易い。
【0005】フリットは、顔料,懸濁剤,止め薬,水等
と配合されたスリップとしてホーローがけに通常使用さ
れる。Alめっき鋼板に対するホーローがけでは焼成温
度が低いことから、スリップに含まれている揮発成分が
十分に放出されずに焼成反応が進行する。ホーロー層に
残留している揮発成分は、焼成の過程で膨張し、ホーロ
ー層の表面層を突き破って外気に放散される。揮発成分
の放散によってホーロー層に泡状の表面欠陥が発生し、
平滑な表面状態が要求されるホーロー被覆鋼板の商品価
値を低下させる。本発明は、このような問題を解消すべ
く案出されたものであり、焼成に先立ってスリップを所
定温度に保持し、スリップ中の揮発成分を十分に放散さ
せた後で焼成反応を行わせることにより、欠陥がなく平
滑度の高い表面をもつホーロー被覆層をAlめっき鋼板
の表面に形成することを目的とする。
と配合されたスリップとしてホーローがけに通常使用さ
れる。Alめっき鋼板に対するホーローがけでは焼成温
度が低いことから、スリップに含まれている揮発成分が
十分に放出されずに焼成反応が進行する。ホーロー層に
残留している揮発成分は、焼成の過程で膨張し、ホーロ
ー層の表面層を突き破って外気に放散される。揮発成分
の放散によってホーロー層に泡状の表面欠陥が発生し、
平滑な表面状態が要求されるホーロー被覆鋼板の商品価
値を低下させる。本発明は、このような問題を解消すべ
く案出されたものであり、焼成に先立ってスリップを所
定温度に保持し、スリップ中の揮発成分を十分に放散さ
せた後で焼成反応を行わせることにより、欠陥がなく平
滑度の高い表面をもつホーロー被覆層をAlめっき鋼板
の表面に形成することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のホーロー被覆方
法は、その目的を達成するため、Alめっき層の融点よ
りも低い軟化点をもち、線膨張係数がAlめっき鋼板よ
り小さいフリットを主成分とするスリップをAlめっき
鋼板の表面に塗布した後、外気に連通した粒子間隙が前
記フリットの間に維持される軟化点近傍の温度で予備加
熱し、次いで前記Alめっき層の融点より低い温度まで
昇温し焼成することを特徴とする。フリットは、P2 O
5 ,Al2 O3 ,Sb2 O3 ,Na2 O,B2 O3 ,L
i2 O等を配合した軟化点450〜500℃のP2 O5
−Al2 O3 系のフリットや、PbO,Na2 O,Si
O2 ,TiO2 ,K2 O,B2 O3 等を含む軟化点45
0〜500℃のPbO系のフリットを使用することがで
きる。二段階で焼成する場合には、焼成に先立って軟化
点近傍の温度450〜520℃に5〜15分間保持す
る。連続昇温で焼成する場合には、常温〜520℃の温
度範囲を30〜40℃/分の速度で昇温する加熱制御で
予備加熱する。
法は、その目的を達成するため、Alめっき層の融点よ
りも低い軟化点をもち、線膨張係数がAlめっき鋼板よ
り小さいフリットを主成分とするスリップをAlめっき
鋼板の表面に塗布した後、外気に連通した粒子間隙が前
記フリットの間に維持される軟化点近傍の温度で予備加
熱し、次いで前記Alめっき層の融点より低い温度まで
昇温し焼成することを特徴とする。フリットは、P2 O
5 ,Al2 O3 ,Sb2 O3 ,Na2 O,B2 O3 ,L
i2 O等を配合した軟化点450〜500℃のP2 O5
−Al2 O3 系のフリットや、PbO,Na2 O,Si
O2 ,TiO2 ,K2 O,B2 O3 等を含む軟化点45
0〜500℃のPbO系のフリットを使用することがで
きる。二段階で焼成する場合には、焼成に先立って軟化
点近傍の温度450〜520℃に5〜15分間保持す
る。連続昇温で焼成する場合には、常温〜520℃の温
度範囲を30〜40℃/分の速度で昇温する加熱制御で
予備加熱する。
【0007】
【作用】本発明では、低温焼成で良好なホーロー被覆層
を形成するために、Alめっき層よりも低い融点をも
ち、Alめっき鋼板よりも線膨張係数が小さいフリット
を主成分とするPbO系,P2 O5 −Al2 O3 系等の
フリットを主成分とする釉薬が使用される。フリットの
軟化点は、アルカリ金属酸化物等の配合割合によって4
50〜500℃の温度範囲に調整される。P2 O5 −A
l2 O3 系では軟化点が483℃,PbO系では軟化点
が480℃にある。フリットを顔料,懸濁剤,止め薬,
溶剤,水等と配合しスリップを調製する。懸濁剤や止め
薬は、フリットや顔料の分散状態を安定化させ、得られ
るホーロー層を均一組織にする作用を呈する。スリップ
1を、図1(a)に示すようにAlめっき鋼板2の表面
に塗布する。塗布状態のスリップ1は、調製されたまま
の配合割合が維持されており、懸濁剤,止め薬,水等の
揮発成分と共にフリットや顔料が分散している。
を形成するために、Alめっき層よりも低い融点をも
ち、Alめっき鋼板よりも線膨張係数が小さいフリット
を主成分とするPbO系,P2 O5 −Al2 O3 系等の
フリットを主成分とする釉薬が使用される。フリットの
軟化点は、アルカリ金属酸化物等の配合割合によって4
50〜500℃の温度範囲に調整される。P2 O5 −A
l2 O3 系では軟化点が483℃,PbO系では軟化点
が480℃にある。フリットを顔料,懸濁剤,止め薬,
溶剤,水等と配合しスリップを調製する。懸濁剤や止め
薬は、フリットや顔料の分散状態を安定化させ、得られ
るホーロー層を均一組織にする作用を呈する。スリップ
1を、図1(a)に示すようにAlめっき鋼板2の表面
に塗布する。塗布状態のスリップ1は、調製されたまま
の配合割合が維持されており、懸濁剤,止め薬,水等の
揮発成分と共にフリットや顔料が分散している。
【0008】スリップ1が塗布されたAlめっき鋼板2
を加熱すると、スリップ1中に含まれている溶剤,水等
が揮発し、図1(b)に示すようにフリット及び顔料の
充填密度が上昇する。更に高温になるとフリットが軟化
し、フリット及び顔料の粒子間隙が軟化したフリットで
埋められ、図1の(c)から(d)に示すように緻密な
ホーロー被覆層3が形成される。ホーロー被覆層3の形
成過程でスリップ1に含まれている揮発成分が十分に放
出されず、軟化が始まると、揮発成分が気化膨張し、大
きな気泡となる。気泡の圧力が高くなると、スリップ1
の表面を突き破って外気に放出され、その痕跡が泡状欠
陥となってホーロー被覆層3の表面に残る。
を加熱すると、スリップ1中に含まれている溶剤,水等
が揮発し、図1(b)に示すようにフリット及び顔料の
充填密度が上昇する。更に高温になるとフリットが軟化
し、フリット及び顔料の粒子間隙が軟化したフリットで
埋められ、図1の(c)から(d)に示すように緻密な
ホーロー被覆層3が形成される。ホーロー被覆層3の形
成過程でスリップ1に含まれている揮発成分が十分に放
出されず、軟化が始まると、揮発成分が気化膨張し、大
きな気泡となる。気泡の圧力が高くなると、スリップ1
の表面を突き破って外気に放出され、その痕跡が泡状欠
陥となってホーロー被覆層3の表面に残る。
【0009】焼成温度が800〜900℃と高い鉄ホー
ローでは、焼成温度に至る前に揮発成分が完全に除去さ
れるため、このような泡状欠陥の発生がみられない。し
かし、焼成温度500〜600℃の低温ホーローでは、
図1(b)から図1(d)までの温度幅が狭い。そのた
め、図2に示す焼成温度まで急速に昇温する加熱パター
ンでは、残留した揮発成分による影響が大きく現れ、
表面欠陥が発生し易くなる。また、狭い温度幅のため、
フリット1がレベリングする前に焼成反応が完了し、得
られたホーロー被覆層3は、平滑度が悪く、ホーロー感
に乏しいものとなる。
ローでは、焼成温度に至る前に揮発成分が完全に除去さ
れるため、このような泡状欠陥の発生がみられない。し
かし、焼成温度500〜600℃の低温ホーローでは、
図1(b)から図1(d)までの温度幅が狭い。そのた
め、図2に示す焼成温度まで急速に昇温する加熱パター
ンでは、残留した揮発成分による影響が大きく現れ、
表面欠陥が発生し易くなる。また、狭い温度幅のため、
フリット1がレベリングする前に焼成反応が完了し、得
られたホーロー被覆層3は、平滑度が悪く、ホーロー感
に乏しいものとなる。
【0010】そこで、本発明においては、図1(b)の
状態を比較的長時間維持し、スリット1中に含まれてい
る揮発成分を完全に排出する。図1(b)の状態では、
フリット1は軟化が始まっているものの依然として固相
を維持しており、フリット1及び顔料2の粒子間隙が外
気に連通している。したがって、水等の揮発成分が粒子
間隙を経て外部に放出される。揮発成分が放出された状
態で更に昇温され、Alめっき層の融点以下の温度で焼
成される。この方法によって、泡等のホーロー欠陥の発
生が防止され、更にフリットの溶融及びレベリングによ
って平滑なホーロー層3が形成される。このときの水分
蒸発を模式的に図3に示す。ある温度までは、フリット
粒子間に存在する水分が比較的蒸発し易く(恒率蒸
発)、水分が迅速に減少する。従来の予備加熱は、この
温度領域における水分蒸発を促すことを目的として行わ
れている。しかし、予備加熱された後でもフリット粒子
間に依然として水分が残留しており、スリップ中の水分
減衰率は急激に低下する(減率蒸発)。
状態を比較的長時間維持し、スリット1中に含まれてい
る揮発成分を完全に排出する。図1(b)の状態では、
フリット1は軟化が始まっているものの依然として固相
を維持しており、フリット1及び顔料2の粒子間隙が外
気に連通している。したがって、水等の揮発成分が粒子
間隙を経て外部に放出される。揮発成分が放出された状
態で更に昇温され、Alめっき層の融点以下の温度で焼
成される。この方法によって、泡等のホーロー欠陥の発
生が防止され、更にフリットの溶融及びレベリングによ
って平滑なホーロー層3が形成される。このときの水分
蒸発を模式的に図3に示す。ある温度までは、フリット
粒子間に存在する水分が比較的蒸発し易く(恒率蒸
発)、水分が迅速に減少する。従来の予備加熱は、この
温度領域における水分蒸発を促すことを目的として行わ
れている。しかし、予備加熱された後でもフリット粒子
間に依然として水分が残留しており、スリップ中の水分
減衰率は急激に低下する(減率蒸発)。
【0011】本発明者等の調査によるとき、この高温域
においても残留する水分がホーロー被覆層に泡状の欠陥
を発生する原因であることが判った。本発明において
は、軟化点近傍の温度にスリップを保持することによ
り、高温域においても残留する水分を除去している。高
温保持は、フリットが未だ完全に軟化していない領域で
行われ、フリット粒子の間隙を介して水分の蒸発が促進
される。その結果、高温保持後に焼成されたホーロー被
覆層に泡状欠陥が発生することがなくなる。このときの
温度が高くなりすぎるとフリット粒子相互に溶着が生
じ、残留水分が除去し難くなることから、保持温度の上
限が520℃に規制される。図1(b)の状態は、使用
するフリット1の配合組成にもよるが、450〜520
℃の温度範囲に設定される。このときの温度が520℃
を超えると、フリット粒子が軟化溶融し、フリット1に
残留している揮発成分が十分に除去されず、泡状欠陥等
が生じる原因となる。
においても残留する水分がホーロー被覆層に泡状の欠陥
を発生する原因であることが判った。本発明において
は、軟化点近傍の温度にスリップを保持することによ
り、高温域においても残留する水分を除去している。高
温保持は、フリットが未だ完全に軟化していない領域で
行われ、フリット粒子の間隙を介して水分の蒸発が促進
される。その結果、高温保持後に焼成されたホーロー被
覆層に泡状欠陥が発生することがなくなる。このときの
温度が高くなりすぎるとフリット粒子相互に溶着が生
じ、残留水分が除去し難くなることから、保持温度の上
限が520℃に規制される。図1(b)の状態は、使用
するフリット1の配合組成にもよるが、450〜520
℃の温度範囲に設定される。このときの温度が520℃
を超えると、フリット粒子が軟化溶融し、フリット1に
残留している揮発成分が十分に除去されず、泡状欠陥等
が生じる原因となる。
【0012】揮発成分の除去,フリットのレベリング等
は主として560℃の焼成で生じるが、ホーローの膜厚
を変化させる程度にはならず、図2に示しているように
450〜520℃の範囲にある一定温度に所定時間維持
する加熱パターン,或いは常温〜520℃の温度範囲
を緩慢な速度で昇温する加熱パターンの何れによって
も可能である。加熱パターンでは、450〜520℃
の範囲にある一定温度に5〜15分維持する。加熱パタ
ーンでは、常温から520℃までの間を10〜15分
かけて通過するように、昇温速度を30〜45℃/分に
設定する。ホーロー被覆層3は、揮発成分が除去された
フリット1とフリット中に分散された顔料によって形成
されたものであるから、平滑な表面を持ち、欠陥のない
被覆層となる。しかも、下地がAlめっき鋼板2である
ことから、鉄ホーローの場合のようなNi置換等の前処
理を必要とせず、意匠性は勿論として耐食性,耐熱性,
耐汚染性等に優れたホーロー被覆Alめっき鋼板が得ら
れる。また、下地のAlめっき鋼板2に対するホーロー
被覆層3の密着性が優れているため、切断,孔開け等の
加工によってもホーロー被覆層3に剥離,亀裂等の欠陥
を発生させることが少ない特長をもっている。
は主として560℃の焼成で生じるが、ホーローの膜厚
を変化させる程度にはならず、図2に示しているように
450〜520℃の範囲にある一定温度に所定時間維持
する加熱パターン,或いは常温〜520℃の温度範囲
を緩慢な速度で昇温する加熱パターンの何れによって
も可能である。加熱パターンでは、450〜520℃
の範囲にある一定温度に5〜15分維持する。加熱パタ
ーンでは、常温から520℃までの間を10〜15分
かけて通過するように、昇温速度を30〜45℃/分に
設定する。ホーロー被覆層3は、揮発成分が除去された
フリット1とフリット中に分散された顔料によって形成
されたものであるから、平滑な表面を持ち、欠陥のない
被覆層となる。しかも、下地がAlめっき鋼板2である
ことから、鉄ホーローの場合のようなNi置換等の前処
理を必要とせず、意匠性は勿論として耐食性,耐熱性,
耐汚染性等に優れたホーロー被覆Alめっき鋼板が得ら
れる。また、下地のAlめっき鋼板2に対するホーロー
被覆層3の密着性が優れているため、切断,孔開け等の
加工によってもホーロー被覆層3に剥離,亀裂等の欠陥
を発生させることが少ない特長をもっている。
【0013】
実施例1:板厚0.6mmの普通鋼鋼板に厚み15μm
のAlめっき層を形成した溶融Alめっき鋼板をホーロ
ーがけ用原板として使用した。原板を脱脂した後、56
0℃に5分間加熱する空焼きを施した。そして、表1に
組成を示すスリップを300g/m2 の割合で原板に塗
布した。このフリットは、Alめっき鋼板の線膨張係数
1.45×10-5に近似した線膨張係数1.2×10-5
をもち、軟化点が483℃であった。スリップが塗布さ
れた原板を、マッフル炉を使用し加熱パターンで昇温
・冷却した。すなわち、フリットの軟化点より若干低い
450℃に5分保持し、次いで焼成温度560℃に5分
保持した。
のAlめっき層を形成した溶融Alめっき鋼板をホーロ
ーがけ用原板として使用した。原板を脱脂した後、56
0℃に5分間加熱する空焼きを施した。そして、表1に
組成を示すスリップを300g/m2 の割合で原板に塗
布した。このフリットは、Alめっき鋼板の線膨張係数
1.45×10-5に近似した線膨張係数1.2×10-5
をもち、軟化点が483℃であった。スリップが塗布さ
れた原板を、マッフル炉を使用し加熱パターンで昇温
・冷却した。すなわち、フリットの軟化点より若干低い
450℃に5分保持し、次いで焼成温度560℃に5分
保持した。
【0014】
【表1】
【0015】形成されたホーロー被覆層を観察したとこ
ろ、揮発成分の痕跡である泡状欠陥はなんら観察されな
かった。また、厚みも80±5μmと極めて均一であ
り、非常に平滑度の高いホーロー被覆層であった。これ
に対し、加熱パターンを採用する外は同じ条件下で焼
成したところ、径が約0.1mm以下の泡状欠陥が10
個/cm2 の割合で発生したホーロー被覆層が形成さ
れ、表面外観が著しく劣っていた。以上の対比から明ら
かなように、450℃に5分保持する加熱により、揮発
成分の除去が促進され、Alめっき鋼板の表面に泡状の
表面欠陥が存在しない高品質のホーロー被覆層が形成さ
れることが確認された。
ろ、揮発成分の痕跡である泡状欠陥はなんら観察されな
かった。また、厚みも80±5μmと極めて均一であ
り、非常に平滑度の高いホーロー被覆層であった。これ
に対し、加熱パターンを採用する外は同じ条件下で焼
成したところ、径が約0.1mm以下の泡状欠陥が10
個/cm2 の割合で発生したホーロー被覆層が形成さ
れ、表面外観が著しく劣っていた。以上の対比から明ら
かなように、450℃に5分保持する加熱により、揮発
成分の除去が促進され、Alめっき鋼板の表面に泡状の
表面欠陥が存在しない高品質のホーロー被覆層が形成さ
れることが確認された。
【0016】実施例2:実施例1と同じ原板を脱脂及び
空焼きした後、表2に組成を示すスリップを500g/
m2 の割合で原板に塗布し、加熱パターンで昇温・冷
却した。このフリットは、線膨張係数が1.19×10
-5,軟化点が480℃であった。
空焼きした後、表2に組成を示すスリップを500g/
m2 の割合で原板に塗布し、加熱パターンで昇温・冷
却した。このフリットは、線膨張係数が1.19×10
-5,軟化点が480℃であった。
【0017】
【表2】
【0018】形成されたホーロー被覆層を観察したとこ
ろ、泡状欠陥はなんら観察されなかった。また、厚みも
100±5μmmmと極めて均一であり、非常に平滑度
の高いホーロー被覆層であった。これに対し、加熱パタ
ーンを採用する外は同じ条件下で焼成したところ、径
が約0.1mm以下の泡状欠陥が5個/cm2 の割合で
発生したホーロー被覆層が形成され、表面外観が著しく
劣るものであった。以上の対比から明らかなように、こ
の場合にも450℃×5分保持が高品質のホーロー被覆
層の形成に有効であることが確認された。
ろ、泡状欠陥はなんら観察されなかった。また、厚みも
100±5μmmmと極めて均一であり、非常に平滑度
の高いホーロー被覆層であった。これに対し、加熱パタ
ーンを採用する外は同じ条件下で焼成したところ、径
が約0.1mm以下の泡状欠陥が5個/cm2 の割合で
発生したホーロー被覆層が形成され、表面外観が著しく
劣るものであった。以上の対比から明らかなように、こ
の場合にも450℃×5分保持が高品質のホーロー被覆
層の形成に有効であることが確認された。
【0019】実施例3:加熱パターンを採用する外
は、実施例1と同じ条件下でAlめっき鋼板をホーロー
がけした。この場合、常温から520℃まで13分かけ
て昇温するように、昇温速度を40℃/分に設定した。
そして、焼成温度560℃に7分間保持した。形成され
たホーロー被覆層を観察したところ、揮発成分の痕跡で
ある泡状欠陥はなんら観察されなかった。また、厚みも
80±5μmと極めて均一であり、非常に平滑度の高い
ホーロー被覆層であった。
は、実施例1と同じ条件下でAlめっき鋼板をホーロー
がけした。この場合、常温から520℃まで13分かけ
て昇温するように、昇温速度を40℃/分に設定した。
そして、焼成温度560℃に7分間保持した。形成され
たホーロー被覆層を観察したところ、揮発成分の痕跡で
ある泡状欠陥はなんら観察されなかった。また、厚みも
80±5μmと極めて均一であり、非常に平滑度の高い
ホーロー被覆層であった。
【0020】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、低温焼成型のスリップを使用してAlめっき鋼板を
ホーローがけする際、フリットの軟化点近傍の温度又は
温度範囲にスリップを所定時間保持することにより、ス
リップに含まれている揮発成分は完全に排出されてい
る。そのため、焼成温度からAlめっき層の融点までの
温度幅が狭いにも拘らず、泡状欠陥等がなく平滑度の高
いホーロー被覆層が形成される。このホーロー被覆鋼板
は、下地のAlめっき鋼板とホーロー層の耐熱性,耐汚
染性,耐疵付き性等を有し、意匠性及び耐久性に優れた
ものとなる。得られたホーロー被覆鋼板は、その優れた
長所を活用し、外装材,内装材,調理用器具,厨房家具
等として広範な用途に使用される。
は、低温焼成型のスリップを使用してAlめっき鋼板を
ホーローがけする際、フリットの軟化点近傍の温度又は
温度範囲にスリップを所定時間保持することにより、ス
リップに含まれている揮発成分は完全に排出されてい
る。そのため、焼成温度からAlめっき層の融点までの
温度幅が狭いにも拘らず、泡状欠陥等がなく平滑度の高
いホーロー被覆層が形成される。このホーロー被覆鋼板
は、下地のAlめっき鋼板とホーロー層の耐熱性,耐汚
染性,耐疵付き性等を有し、意匠性及び耐久性に優れた
ものとなる。得られたホーロー被覆鋼板は、その優れた
長所を活用し、外装材,内装材,調理用器具,厨房家具
等として広範な用途に使用される。
【図1】 スリップが加熱・焼成されてホーロー被覆層
になる過程
になる過程
【図2】 従来の加熱パターンと本発明に従った加熱
パターン及びを対比して示すグラフ
パターン及びを対比して示すグラフ
【図3】 2段階焼成における水分蒸発状況を示すモデ
ル
ル
1:フリット 2:Alめっき鋼板(下地) 3:
ホーロー被覆層
ホーロー被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 輿石 謙二 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社鉄鋼研究所内 (72)発明者 増原 憲一 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社鉄鋼研究所内
Claims (3)
- 【請求項1】 Alめっき層の融点よりも低い軟化点を
もち、線膨張係数がAlめっき鋼板より小さいフリット
を主成分とするスリップをAlめっき鋼板の表面に塗布
した後、外気に連通した粒子間隙が前記フリットの間に
維持される軟化点近傍の温度で予備加熱し、次いで前記
Alめっき層の融点より低い温度まで昇温し焼成するA
lめっき鋼板のホーロー被覆方法。 - 【請求項2】 軟化点450〜500℃のP2 O5 −A
l2 O3 系又はPbO系のフリットを使用し、軟化点近
傍の温度450〜520℃に5〜15分間保持する請求
項1記載のAlめっき鋼板のホーロー被覆方法。 - 【請求項3】 請求項1記載の予備加熱として、常温〜
520℃の温度範囲を30〜40℃/分の速度で昇温す
るAlめっき鋼板のホーロー被覆方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30555394A JPH08144070A (ja) | 1994-11-15 | 1994-11-15 | Alめっき鋼板のホーロー被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30555394A JPH08144070A (ja) | 1994-11-15 | 1994-11-15 | Alめっき鋼板のホーロー被覆方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08144070A true JPH08144070A (ja) | 1996-06-04 |
Family
ID=17946548
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30555394A Withdrawn JPH08144070A (ja) | 1994-11-15 | 1994-11-15 | Alめっき鋼板のホーロー被覆方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08144070A (ja) |
-
1994
- 1994-11-15 JP JP30555394A patent/JPH08144070A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20020115 |