JPH08134579A

JPH08134579A - 飲料缶蓋用アルミニウム合金板

Info

Publication number: JPH08134579A
Application number: JP27921694A
Authority: JP
Inventors: Yoshinori Kato; 良則加藤; Fumito Okamoto; 文人岡本
Original assignee: Kobe Steel Ltd
Current assignee: Kobe Steel Ltd
Priority date: 1994-11-14
Filing date: 1994-11-14
Publication date: 1996-05-28

Abstract

(57)【要約】【目的】耐スコア割れ性に優れた飲料缶蓋用アルミニ
ウム合金板を提供するものである。【構成】 Mg 2.5〜 5.0wt％を必須成分として含有し、
さらにNi≦ 1.0wt％、Co≦ 1.0wt％のうち１種または２
種を含有し、且つNi＋Coが 0.2〜 1.5wt％であり、残部
がAlおよび不可避不純物からなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ビールや炭酸飲料用缶
蓋、または、飲料物と共に窒素を充填した飲料缶蓋用ア
ルミニウム合金板に関わり、具体的には、この種の用途
に適する耐スコア割れ性に優れた飲料缶蓋用アルミニウ
ム合金板に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、アルミニウム板あるいはアルミ
ニウム合金板（以下アルミニウム合金板と総称する）
は、表面に保護力の強い酸化皮膜を形成し、実用上優れ
た耐食性を示すために日用品や建材等の幅広い分野で使
用されている。また、アルミニウム合金板は耐食性に優
れている他に、軽量で且つ、成形性、開缶性に優れてお
り、ビール等の炭酸飲料や、果汁、コーヒー等の清涼飲
料缶等のイージーオープンエンドとしての有用性が認め
られ、その使用量は年々増加している。

【０００３】上記用途に使用されるアルミニウム合金板
は、耐食性をもたせるために化成処理が施され、溶剤系
塗料で塗装された後、蓋に加工される。加工された蓋は
飲料物を充填した缶胴に巻き締められ製品となる。

【０００４】ビール等の炭酸飲料用の缶、または、飲料
物と共に窒素を充填した飲料缶は陽圧缶と呼ばれ、缶内
部の圧力が大気圧よりも高くなっている。このような陽
圧缶用蓋材として、高強度および成形性に優れたJIS 51
82あるいはJIS 5082アルミニウム合金が汎用されてい
る。

【０００５】しかし、陽圧缶は、製品保管時において、
温度上昇と共に缶内の圧力が高くなるため、上記JIS 51
82あるいはJIS 5082アルミニウム合金製の蓋では、特殊
な環境下でスコア割れを起こすことがあった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記のスコア割れは、
内圧による応力と腐食環境が重なった場合に起きる応力
腐食割れと考えられていた。一方、特開昭64− 62435号
公報には、耐応力腐食割れ性に優れた飲料缶蓋用アルミ
ニウム合金板が提案されており、同公報によれば、スコ
ア割れは、スコア加工を受けた部分の微視的な割れが原
因で起こり、応力腐食割れは、リベット成形部分が成形
加工により塗膜の健全性が劣化するため、内容物と接触
して起こりやすくなるとされている。

【０００７】そこで、本発明者等が鋭意研究したところ
によれば、スコア割れの原因は、金属中への水素吸蔵に
よる水素脆性であることをつきとめた。すなわち、酸性
溶液中の金属上で起こる水素発生反応は、金属をＭとし
て下記の段階を経て起こる。Ｍ＋Ｈ⁺ → Ｍ−Ｈ -------- Ｍ−Ｈ＋Ｈ⁺→ Ｍ＋Ｈ₂ -------- ２（Ｍ−Ｈ） → ２Ｍ＋Ｈ₂-------- すなわち、金属と水素イオンとが反応し、結合する（式
）。その後、さらに、金属と水素イオンとが結合した
ものと水素イオンとが反応し、金属単体と水素ガスとな
る場合（式）と、金属と水素イオンとが結合したもの
同士が反応し、金属単体と水素ガスとなる場合（式）
とがある。通常ならば、このように式の反応が起きた
後に、式もしくは式の反応が起きるのであるが、金
属中への水素吸蔵とは、式の反応により金属と水素イ
オンとが結合したまま、式または式の反応が起こら
ない場合である。

【０００８】しかし、金属中に水素発生反応に対する触
媒活性が高い元素が存在すると式の反応の後、式も
しくは式の反応が早く起こるため、金属中への水素吸
蔵が起こりにくくなる。水素発生反応に対する触媒活性
が高いのは貴金属が多いが、これらは高価であり、コス
トが高くなることが問題であった。

【０００９】上述の特開昭64− 62435号公報に提案され
ているアルミニウム合金板では、添加成分がMg、Cu、Z
n、Mn、Cr、Zrであり、合金中への水素吸蔵を抑制する
元素が含有されていないために、スコア割れが防止でき
ないことが判明した。

【００１０】本発明は、上記の事情に基づいてなされた
ものであって、その目的は、耐スコア割れ性に優れた飲
料缶蓋用アルミニウム合金板を提供するものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明に係る飲料缶蓋用アルミニウム合金板は、Mg
2.5〜 5.0wt％を必須成分として含有し、さらにNi≦
1.0wt％、Co≦ 1.0wt％のうち１種または２種を含有
し、且つNi＋Coが 0.2〜 1.5wt％であり、残部がAlおよ
び不可避不純物からなるものである。

【００１２】そして、上記飲料缶蓋用アルミニウム合金
板においては、さらにMn0.05〜 0.4wt％、Cu0.05〜 0.6
wt％のうち１種または２種を含有したものであってもよ
いし、これに加えて、さらにSi0.07〜 0.3wt％、Fe 0.1
〜 0.6wt％のうち１種または２種を含有したものであっ
てもよい。

【００１３】

【作用】本発明では、Mgの含有量を規制することにより
基本的に強度を維持し、水素吸蔵を抑制する一方、Niお
よび／またはCoを積極的に含有させることにより水素吸
蔵をさらに抑制せしめたものである。以下に本発明にお
ける飲料缶蓋用アルミニウム合金板の成分組成範囲の限
定理由を詳細に説明する。

【００１４】Mg：Mgは強度向上には不可欠な元素であ
る。Mg量が 2.5wt％未満では、飲料缶蓋として十分な強
度が得られない。一方、Mg量が 5.0wt％を超えた場合、
強度が高すぎることにより、成形性の低下を招いたり、
あるいは伸びが低下していることもあって落下時の衝撃
によってスコア割れを生じるので好ましくない。また、
MgがAlより電位が卑であるため、アルミニウム合金への
水素吸蔵を促進させるので好ましくない。そこで、Mg量
は 2.5〜 5.0wt％の範囲とした。

【００１５】Co：Coは安価な卑金属で水素反応に対する
触媒活性が高い元素である。Coの水素発生反応に対する
交換電流密度は10^-5A/cm²程度であり、Alの交換電流密
度10 ^-8A/cm²に比べかなり高く、水素発生反応に対する
活性が高い。したがって、CoをAlと合金化した場合、Al
のみの場合と比べると、活性の高いCo上で水素発生が促
進され水素吸蔵が抑制される。このことから、Coは水素
発生反応を促進し、アルミニウム合金への水素吸蔵を抑
制するために重要な元素である。Co量が 1.0wt％を超え
ると晶出物が増大し成形性の低下を招くので好ましくな
い。そこで、Co量は 1.0wt％以下の範囲とした。

【００１６】Ni：NiはCoと同様に安価な卑金属で水素反
応に対する触媒活性が高い元素である。Niの水素発生反
応に対する交換電流密度はCoと同様に10^-5A/cm²程度で
あり、Alの交換電流密度10^-8A/cm²に比べかなり高く、
水素発生反応に対する活性が高い。したがって、NiをAl
と合金化した場合、Alのみの場合と比べると、活性の高
いNi上で水素発生が促進され水素吸蔵が抑制される。こ
のことから、NiはCoと同様に水素発生反応を促進し、ア
ルミニウム合金への水素吸蔵を抑制するために重要な元
素である。Ni量が 1.0wt％を超えると晶出物が増大し成
形性の低下を招くので好ましくない。そこで、Ni量は
1.0wt％以下の範囲とした。

【００１７】ただし、上記CoとNiについては、上述の範
囲内での含有量の合計を以下のように規定することが必
要である。すなわち、Co＋Ni量はアルミニウム合金への
水素吸蔵を抑制する効果がある。しかし、Co＋Ni量が
0.2wt％未満では、十分にアルミニウム合金への水素吸
蔵を抑制できず、アルミニウム合金中に水素が多く取り
込まれ、水素脆性によってスコア割れが発生しやすい。
一方、Co＋Ni量が 1.5wt％を越えると、晶出物が増大し
成形性の低下を招くので好ましくない。そこで、Co＋Ni
量は 0.2〜 1.5wt％の範囲内とした。

【００１８】以上の条件を満たせば、飲料缶用蓋として
耐スコア割れ性に優れたアルミニウム合金板を得ること
ができる。また、以下の元素を添加することによって、
飲料缶用蓋として強度、開缶性がさらに向上する。

【００１９】Mn：請求項１記載の発明で得られるアルミ
ニウム合金板で、飲料缶用蓋としての強度は十分である
が、Mnは強度をさらに向上させるための元素である。Mn
量が0.05wt％未満では、十分に効果が得られない。一
方、Mn量が 0.4wt％を越えると、晶出物が増大し成形性
の低下を招くので好ましくない。そこで、Mn量は0.05〜
0.4wt％の範囲内とした。

【００２０】Cu：CuはMnと同様に強度をさらに向上させ
るための元素である。Cu量が0.05wt％未満では、十分に
効果が得られない。一方、Cu量が 0.6wt％を越えると、
耐食性の低下を招くので好ましくない。そこで、Cu量は
0.05〜 0.6wt％の範囲内とした。

【００２１】Si：請求項１又は２記載の発明で得られる
アルミニウム合金板で、飲料缶用蓋として開缶性は十分
であるが、Siは晶出物を形成し開缶性をさらに向上させ
るための元素である。Si量が0.07wt％未満では、十分に
効果が得られない。一方、Si量が 0.3wt％を越えると、
晶出物が増大し成形性の低下を招くので好ましくない。
そこで、Si量は0.07〜 0.3wt％の範囲内とした。

【００２２】Fe：FeはSiと同様に晶出物を形成し開缶性
をさらに向上させ、加えて、結晶粒を微細化させ、成形
性をさらに向上させる効果がある。Fe量が 0.1wt％未満
では、十分に効果が得られない。一方、Fe量が 0.6wt％
を越えると、晶出物が増大し成形性の低下を招くので好
ましくない。そこで、Fe量は 0.1〜 0.6wt％の範囲内と
した。

【００２３】次に、不可避不純物について説明する。ア
ルミニウム合金を工業的に製造する場合、Fe、Siは不可
避に添加されてしまうものであり、これらの添加量を必
要以上に制限するとかえってコストアップになってしま
うため、Feは0.05wt％以下、Siは0.03wt％以下であれ
ば、本発明の飲料缶蓋用アルミニウム合金板の性質に重
大な影響を及ぼすことはない。

【００２４】Fe、Si以外の元素では、Tiは0.05wt％以
下、 Bは0.05wt％以下であれば、本発明の飲料缶蓋用ア
ルミニウム合金板の性質に重大な影響を及ぼすことはな
い。

【００２５】上記では、代表的な不可避不純物を４つ列
挙したが、各請求項で特定した添加元素以外の元素につ
いては、不可避不純物の総量が 0.5wt％以下であれば、
本発明の飲料缶蓋用アルミニウム合金板の性質に重大な
影響を及ぼすことはない。

【００２６】

【実施例】表１は合金成分組成を示しているもので、N
o.1〜 3は本発明例で請求項１の成分組成に従うもので
あり、No.4〜 6は本発明例で請求項２の成分組成に従う
ものであり、No.7〜19は本発明例で請求項３の成分組成
に従うものである。 No.20〜31は比較例である。

【００２７】表１に示す化学成分を有するアルミニウム
合金の鋳塊を、 510℃× 4時間で均質化処理を施し、圧
延開始温度 450℃で熱間圧延し板厚を 2.5mmとした。そ
の後、冷間圧延により板厚を0.26mmとし、仕上げ焼鈍を
施したのち、 200℃×20分の塗装相当の熱処理を施し、
ここで得られたアルミニウム合金板を供試材として、機
械的性質および成形性を調査した。

【００２８】成形性は、クランププレスを使用し、 6.0
mm（１伸）→ 4.0mm（２伸）→ 3.2mm（３伸）のポンチ
径で限界張出高さを求めて評価した。また、仕上げ焼鈍
後に塗装し、蓋に成形した供試材を用いて、耐スコア割
れ性および開缶性を調査した。これらの結果を表２に併
せて示す。

【００２９】耐スコア割れ性は、蓋に成形した供試材を
用いた。 350mlの飲料用アルミニウム缶胴に炭酸水を充
填し、その際、缶内圧は 4kg／mm²になるように炭酸濃
度を調節し、供試材を巻き締めた。巻き締めた缶蓋表面
上に、0.01％の食塩水を 5ml滴下し、高分子フィルムで
缶蓋部を完全に密閉した。その後、40℃で保管し、保管
１ヵ月後のスコア割れ率を調査した。

【００３０】開缶性は、開缶時のスコアの切れ始めの荷
重POP とスコア切断中の最大荷重TEARを求めて行った。

【００３１】表２から分かるように、本発明に係る成分
組成のアルミニウム合金板の場合、いずれも、強度、リ
ベット張出限界、開缶荷重は従来のものと同レベルを維
持しつつ、スコア割れ発生率が格段に良いものが得られ
ている。一方、比較例では、 No.20はNi＋Co量が上限値
を越えているので、成形性が悪く、リベット張出限界が
低い。 No.21はNi＋Co量が下限値を下回っているので、
水素発生を促進できず、スコア割れ発生率が高い。 No.
22はMg量が下限値を下回っているので、強度が低く、耐
スコア割れ性の試験時の内圧に耐えられずバックリング
が発生してしまう。 No.23はMg量が上限値を越えてお
り、 No.24はSi量が上限値を越えており、 No.25はFe量
が上限値を越えており、 No.26はCu量が上限値を越えて
おり、 No.27はMn量が上限値を越えており、 No.28はCo
量が上限値を越えており、 No.29はNi量が上限値を越え
ており、それぞれ成形性が悪く、リベット張出限界が低
い。 No.30、31はそれぞれ、従来からあるJIS 5182アル
ミニウム合金板、JIS 5082アルミニウム合金板である
が、スコア割れ発生率が高い。以上のことから、 No.20
〜31の成分組成では飲料缶蓋としては使用できない。

【００３２】

【表１】

【００３３】

【表２】

【００３４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る飲料
缶蓋用アルミニウム合金板は、高強度、適性な開缶性を
有し、且つ優れた耐スコア割れ性などの特性を有するの
で、ビールや炭酸飲料、もしくは飲料物と共に窒素を充
填した飲料缶用蓋材とし好適に使用し得る。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】 Mg 2.5〜 5.0wt％を必須成分として含有
し、さらにNi≦ 1.0wt％、Co≦ 1.0wt％のうち１種また
は２種を含有し、且つNi＋Coが 0.2〜 1.5wt％であり、
残部がAlおよび不可避不純物からなることを特徴とする
飲料缶蓋用アルミニウム合金板。
【請求項２】 Mn0.05〜 0.4wt％、Cu0.05〜 0.6wt％の
うち１種または２種を含有する請求項１記載の飲料缶蓋
用アルミニウム合金板。
【請求項３】 Si0.07〜 0.3wt％、Fe 0.1〜 0.6wt％の
うち１種または２種を含有する請求項１または２記載の
飲料缶蓋用アルミニウム合金板。