JPH081328Y2 - 内燃機関用ガスケットのビード板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、内燃機関用の金属積層
形ガスケット等に使用されるビード板に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】例えば、内燃機関のシリンダヘッドガス
ケット等として用いられる金属積層形ガスケットでは、
積層される金属薄板のうちの少なくとも一枚をシールビ
ードを備えたビード板とし、該ビード板におけるシール
ビードによってシリンダ穴、水穴、油穴などの流体流通
穴の周囲、あるいはその他のシールを必要とする箇所の
ガス洩れ、液体洩れ等を防止している。

【０００３】ところが、このようにシールビードを備え
たガスケットにおいては、該シールビードが単純な均一
幅の一条ビードで形成されている場合には問題ないが、
例えば、シリンダ穴周囲のシールビードと水穴周囲のシ
ールビードとがＴ字状に交差するビード交差部を備えて
いる場合には、該ビード交差部の頂部におけるビードと
ビードとが衝合する部分の相互干渉により、十分な面圧
を発生させることが困難となり、該ビード交差部におけ
るシール性能が他の部分より劣るという欠点があった。
このことは、感圧試験紙を使用した感圧実験でも確認さ
れている。

【０００４】そこで、交差するビードを緩やかに湾曲す
る連結部を介して相互に連結し、ビード交差部の頂部に
おける面圧作用面積を拡大することにより、上記問題を
解決できると考えられるが、実際には、ただ単に面積を
多少拡大しても、単位面積当りに作用する面圧の大きさ
が他の部分より小さくなると共に、頂部の強度が低下す
るため、期待するほどのシール効果を得ることができな
い。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】本考案の課題は、内燃
機関用ガスケットを構成するシールビードを備えたビー
ド板において、シールビードが交差するビード交差部に
おける締付け時の面圧を改善することにあり、この課題
を解決すべく鋭意研究の結果、ビード同士を連結する連
結部の湾曲度を特定の大きさに設定することにより、ビ
ード交差部の拡大された頂面がガスケットの締め付けに
より変形し、その中央部に窪みが形成されて面圧有効作
用面積が適度の大きさに調整されると共に、頂面が強化
されることを見出し、本考案をなすに至ったものであ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】即ち本考案は、交差する
シールビードをビード交差部の中心に向かって湾曲する
連結部を介して相互に連結すると共に、該連結部のビー
ド交差部外側に位置する縁部の最小曲率半径をビード幅
の２倍以上とすることにより、ビード交差部の頂面に、
圧縮により変形して中央部に窪みを形成可能な、上記ビ
ードと連結部とで囲まれた平面状部を形成し、その周辺
部にシール面圧の均等な面圧発生領域を形成したことを
特徴とするものである。 上記面圧発生領域には、強化用の窪みを予め形成してお
くことができる。

【０００７】

【実施例】以下に本考案の実施例を図面を参照しながら
詳述する。 図１は本考案に係るビード板の実施例の要部を示してい
る。このビード板は、金属積層形ガスケットの中板とし
て用いられるもので、シリンダ穴１、冷却水流通用の水
穴２、オイル流通用の油穴３、締付けボルト挿通用のボ
ルト穴４等を有し、これらの穴の周囲には、シール部の
面圧を高めるためのシールビード５，６が形成されてい
る。

【０００８】上記シールビード５及び６が直角か又は直
角に近い角度をもって略Ｔ字形に交差しているビード交
差部においては、図２に示すように、ほぼ真直に延びる
シールビード５とその側面に先端が突き当たるシールビ
ード６とを、該シールビード６の先端から他方のシール
ビード５に沿って左右両方向に分岐して上記ビード交差
部の中心に向かって湾曲する連結部６ａ，６ａを介して
それぞれ連結し、該連結部６ａ，６ａのビード交差部外
側に位置する円弧状の縁部７ａ，７ａの曲率半径を少な
くともビード幅Ｗの２倍以上とすることにより、該ビー
ド交差部の頂面に、圧縮により変形して中央部に窪みを
形成可能な、連結部６ａ，６ａの頂部８とシールビード
の頂部９とによって囲まれた平面状部を形成し、その周
辺部にシール面圧の均等な面圧発生領域１０を形成して
いる。なお、上記連結部のビード交差部外側に位置する
縁部の最小曲率半径を、ビード幅の２倍以上とする旨を
先に説明したが、実用上はビード幅の４〜２０倍程度と
するのが望ましい。

【０００９】上記構成を有するビード板を備えたガスケ
ットにおいて、図３に鎖線で示す締め付け前の状態から
該ガスケットを締め付けると、実線で示す如く、面圧発
生領域１０における外側の傾斜面１０ａが押圧力により
内側に傾斜し、面圧発生領域１０の外周から中央に向け
て圧縮力が働くため、ビードと連結部とで囲まれた平面
状部の中央部が下向きに変形し、該中央部に窪み１１が
自動的に形成される。そして、この窪み１１により、ビ
ード交差部の面圧発生領域１０における有効作用面積が
適度の大きさに減少、調整されると共に、頂面が強化さ
れ、これによって所定の面圧が得られることになる。

【００１０】図４に示すように、Ｔ字状に交差するシー
ルビード５，６のビード幅は互いに異なっていても良
く、この場合には、シールビード６における連結部６
ａ，６ａのビード交差部外側の縁部７ａ，７ａの曲率半
径を、該シールビード６の幅Ｗの少なくとも２倍以上に
すれば良い。

【００１１】また、上記各実施例においては、連結部６
ａ，６ａを均一な曲率を持つ円弧に形成しているが、例
えば楕円の一部のような不均一な曲率を持つ曲線や、図
５に示すように一部に直線部分を含むような曲線とする
こともできる。要するに上記連結部６ａ，６ａは、全体
として交差部の中心に向って凸であるように湾曲し、且
つ、縁部７ａを構成する曲線部分の中で曲率半径の最も
小さい部分がビード幅の２倍以上の曲率半径を持ってい
れば良いのである。

【００１２】上記ビード交差部における面圧発生領域１
０の中央部には、図６に示すように窪み１１を予め形成
しておくこともでき、この場合の窪み１１は次のように
して自動的に形成することができる。即ち、図６におい
て、シールビード５とその側面に先端が突き当たるシー
ルビード６とを、該シールビード６の先端から他方のシ
ールビード５に沿って左右両方向に分岐して上記ビード
交差部の中心に向かって湾曲する円弧状の連結部６ａ，
６ａを介してそれぞれ連結するに当り、該連結部分６
ａ，６ａをシールビード６がそのまま延長する形、即ち
シールビード６と同じ幅Ｗの溝形に形成すると共に、該
連結部６ａ，６ａのビード交差部外側に位置する縁部７
ａ，７ａの曲率半径を少なくともビード幅Ｗの２倍以上
とすることにより、該ビード交差部の頂部に、連結部６
ａ，６ａの頂部８，８とシールビードの該連結部６ａ，
６ａで挟まれた部分５ａの頂部９とで囲まれた面圧発生
領域１０を形成すると共に、該面圧発生領域１０の中央
部に、上記連結部６ａ，６ａのビード交差部側に位置す
る縁部７ｂ，７ｂと、シールビード５の部分５ａにおけ
るビード交差部内側に位置する縁部１２ｂとの間に囲ま
れた、強化用の窪み１１を形成している。

【００１３】このように、面圧発生領域１０の中央部に
予め窪み１１を形成しておくことにより、ビード交差部
の強化と面圧発生領域１０におけるシール面圧の均等化
とを一層確実なものにして、シール性能を一段と高める
ことができる。

【００１４】上記窪み１１の深さに特に制限はなく、そ
の底面がビード板のビード非形成部分と同じ高さあるよ
うに深いものであっても、僅かに窪み程度に浅いもので
あっても構わない。

【００１５】上記の如く面圧発生領域１０の中央部に予
め窪み１１を形成する場合においても、図４に示すよう
に、Ｔ字状に交差するシールビード５，６のビード幅が
互いに異なっていても良い。この場合には、連結部６
ａ，６ａをシールビード６と同幅Ｗの溝形に形成すると
共に、該連結部６ａ，６ａのビード交差部外側の縁部７
ａ，７ａの曲率半径を該シールビード６の幅Ｗの少なく
とも２倍にすることにより、図４に鎖線で示すように、
面圧発生領域１０の中央部に強化用の窪み１１を形成す
ることができる。

【００１６】また、連結部６ａ，６ａが楕円の一部のよ
うな不均一な曲率を持つ曲線や、図５に示すように一部
に直線部分を含むような曲線であっても、同様にして面
圧発生領域１０の中央部に強化用の窪み１１を形成する
ことができる。

【００１７】

【考案の効果】以上に詳述した本考案によれば、交差す
るシールビードをビード交差部の中心に向かって湾曲す
る連結部を介して相互に連結すると共に、該連結部のビ
ード交差部外側に位置する縁部の最小曲率半径をビード
幅の２倍以上とすることにより、ビード交差部の頂面
に、交差するビードと連結部とで囲まれた平面状部を形
成し、周辺部にシール面圧の均等な面圧発生領域を形成
し、ガスケットの締め付け時に圧縮により該面圧発生領
域を変形させてその中央部に窪みが形成されるように構
成したので、ビード交差部における面圧有効作用面積を
適度の大きさに調整することができると共に、頂面を強
化することができ、これによって所定の大きさの面圧を
確実に発生させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を適用すべきビード板の要部平面図であ
る。

【図２】本考案に係るビード板の第１実施例の部分拡大
図である。

【図３】上記ビード板の使用状態での要部拡大断面図で
ある。

【図４】本考案に係るビード板の第２実施例の拡大図で
ある。

【図５】本考案に係るビード板の第３施例の部分拡大図
である。

【図６】本考案に係るビード板の第４施例の部分拡大図
である。

【符号の説明】

５ シールビード ６ シールビード ６ａ 連結部 ７ａ 縁部 １０ 面圧発生領域 １１ 窪み

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シール部の面圧を高めるためのシールビー
   ドを備えたガスケット用ビード板において、 交差するシールビードをビード交差部の中心に向かって
   湾曲する連結部を介して相互に連結すると共に、該連結
   部のビード交差部外側に位置する縁部の最小曲率半径を
   ビード幅の２倍以上とすることにより、ビード交差部の
   頂面に、圧縮により変形して中央部に窪みを形成可能
   な、上記ビードと連結部とで囲まれた平面状部を形成
   し、その周辺部にシール面圧が均等な面圧発生領域を形
   成した、 ことを特徴とする内燃機関用ガスケットのビード板。
2. 【請求項２】面圧発生領域の中央に窪みを形成してある
   ことを特徴とする請求項１に記載の内燃機関用ガスケッ
   トのビード板。