JPH08115912A - 窒化ケイ素薄膜の作製方法 - Google Patents

窒化ケイ素薄膜の作製方法

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JPH08115912A
JPH08115912A JP24910394A JP24910394A JPH08115912A JP H08115912 A JPH08115912 A JP H08115912A JP 24910394 A JP24910394 A JP 24910394A JP 24910394 A JP24910394 A JP 24910394A JP H08115912 A JPH08115912 A JP H08115912A
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silicon nitride
thin film
film
nitride thin
gas
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Iwao Sugimoto
岩雄 杉本
Hiroki Kuwano
博喜 桑野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】反応性スパッタ法により、光学特性または耐薬
品性に優れ、薄膜堆積条件を制御して、形成される薄膜
の内部応力を圧縮応力から引っ張り応力に調整し、フリ
ースタンディングが可能な高品質の窒化ケイ素薄膜の作
製方法を提供する。 【構成】反応性スパッタ法により窒化ケイ素薄膜を作製
する方法において、窒素ガスプラズマ中に所定量のクリ
プトンガスを導入し、形成される薄膜の内部応力が引っ
張り応力となるスパッタ条件下で窒化ケイ素薄膜を堆積
する工程を少なくとも含む窒化ケイ素薄膜の作製方法。 【効果】LSI作製プロセスに組み込むことが可能であ
り、構造材料、光学材料、絶縁材料等の幅広い分野での
応用が期待できる。また、マイクロマシーニングやマイ
クロセンシング等の分野における窒化ケイ素薄膜構造体
やセンサプローブ等、またX線リソグラフィー用のマス
ク材料として有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は反応性スパッタ法によ
り、耐薬品性ならびに光学特性に優れ、下地基板を必要
としない自立性の窒化ケイ素薄膜を作製する方法に係
り、特に電気的、光学的保護膜としての利用以外に、近
年、センサ材料、マイクロ構造材料あるいはリソグラフ
ィー用マスク材料として注目されているフリースタンデ
ィングの窒化ケイ素薄膜の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ケイ素薄膜は、半導体〔特に、ガリ
ウム(Ga)−ヒ素(As)系化合物〕プロセスにおけ
る絶縁保護膜、あるいは薄膜レンズとして優れた物性を
有することから、主にプラズマプロセスによる窒化ケイ
素薄膜の作製方法が従来から検討されてきた。その中で
も、高温プロセスである化学的気相堆積法(CVD法)
による窒化ケイ素薄膜の形成方法が、大きな堆積速度
や、組成制御の有利性から数多く採り上げられている。
しかし、高温で薄膜の形成を行うことによる下地材料の
劣化、あるいは下地材料が分解してしまう恐れが生じ、
この方法を適用できる対象物が限定されるという問題が
あった。これに対して、低温プロセスによる薄膜の形成
については反応性スパッタ法が検討されているが、この
場合は薄膜形成の反応性の不十分さが重要な問題となっ
ている。しかし、低温プロセスによる薄膜の形成は、プ
ロセスの安全性や純度の高いものが得られる等の優れた
利点もある。なお、上記の反応性を向上させる従来技術
として、例えば「ヘリュムやネオンのペニング効果によ
るスパッタされた非晶質窒化珪素薄膜骨格における飽和
性の向上」〔Iwao Sugimoto, Satoko Nakano, and Hiro
ki Kuwano:“Enhanced saturation of sputtered amor
phous SiNfilm frameworks using He-and Ne-Penning e
ffects”, Journal of Applied Physics, Vol.75, No.1
2, pp.7710−7717(1994)〕が挙げられる。しかし、従
来のスパッタ法で形成された窒化ケイ素薄膜は、内部応
力による反り、歪み、あるいは皺が発生する場合が多く
見られる。極端な場合には、薄膜にクラックが入った
り、基板から剥離したり、時には基板ごと破壊される場
合も見受けられる。この薄膜に形成される内部応力は、
基板を取り除いたフリースタンディング薄膜として利用
する場合に、特に本質的な問題となる。窒化ケイ素薄膜
の内部応力を緩和する方法として、堆積させる基板温度
を高くしたり、堆積後にアニーリングする方法等が知ら
れている。しかし、これらの高温処理は、スパッタ法の
基本的な長所である低温プロセスにより高純度の薄膜を
作製することができるという特長に反するものであり、
実用上有効な手段とは言えない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来技術における問題点を解消するものであって、
窒素ガスプラズマ中でシリコンをスパッタリングし、い
わゆる反応性スパッタ法により窒化ケイ素を堆積する方
法において、光学特性または耐薬品性に優れ、薄膜堆積
条件を制御して、形成される薄膜の内部応力を圧縮応力
から引っ張り応力に調整し、フリースタンディングが可
能な窒化ケイ素薄膜の作製方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、窒素ガスプラズマ中でシリコンをスパッタ
リングして窒化ケイ素薄膜を形成する反応性スパッタ法
により窒化ケイ素薄膜を作製する方法において、上記窒
素ガスプラズマ中に所定量のクリプトンガスを導入し、
形成される薄膜の内部応力が引っ張り応力となるスパッ
タ条件下で窒化ケイ素薄膜を堆積する工程を少なくとも
含む構成となし、フリースタンディングが可能な窒化ケ
イ素薄膜の作製方法である。また、本発明は請求項2に
記載のように、窒素ガスプラズマ中に導入するクリプト
ンガス濃度を、体積率(vol%)で、50〜90%の
範囲となし、自立が可能な窒化ケイ素薄膜の作製方法で
ある。また、本発明は請求項3に記載のように、窒素ガ
スプラズマの全ガス圧力を2〜5 Paの範囲に調整し
て、自立が可能な窒化ケイ素薄膜を作製する方法であ
る。
【0005】
【作用】反応性スパッタ法で形成された窒化ケイ素薄膜
は、体積膨張による圧縮応力を示すものが大部分であ
る。これは、薄膜堆積中に未反応の窒素が取り込まれた
り、不完全なケイ素−窒素結合の形成に起因した無秩序
な膜分子構造に主な原因があるものと考えられている。
また、本発明者らは先願である特願平4−316723
号(特開平6−158304号公報)等において、薄膜
形成の反応性を増大させ、薄膜の内部応力を減少させる
ためにヘリュウム(He)ガスやネオン(Ne)ガスな
どの希ガスを窒素プラズマ中に導入する方法を提案して
いるが、若干の圧縮応力が残留し、薄膜をフリースタン
ディングにした場合に皺の寄った薄膜となる問題があ
る。この圧縮応力が発生する根源は、J.A.Thorntonが提
唱したStructure Zone Modelの「Zone−T」に分類される
緻密な柱状構造にあって、高エネルギー粒子の釘打ち効
果により説明される〔H.Windischman,“Intrinsic stre
ssin sputtered thin films”,Jouranal of Vacuum Sci
ence and Technology, A,Vol,9 No4, pp.2431-2436(19
91)〕。一方、J.A.Thorntonが提唱したStructure Zon
e Modelの「Zone−1」に分類される狭い間隙に富んだ柱
状構造の薄膜は、柱状構造体間の相互作用によって引っ
張り応力が生じ易い。この「Zone−1」の柱状構造は、薄
膜堆積を行う粒子の基板に対する進入角が大きい程、つ
まり基板に対し斜め入射成分が多い程、また基板温度が
低い程形成され易い。これらは薄膜成長点の遮蔽効果と
堆積粒子の基板上での移動度の減少によるものと理解さ
れている。これらの知見により、スパッタ条件(放電電
力、ガス圧、基板温度、電極間隔等)が同一であれば、
窒素ガスプラズマ中に混入させる希ガスの原子半径が大
きい程、薄膜堆積粒子との衝突の確率が大きく散乱され
易く、基板に対する斜め入射成分が多くなる。これは、
引っ張り応力を発生させる「Zone−1」の構造を構築する
条件となる。従来は、アルゴン(Ar)よりも小さい原子
の希ガスについて、反応性スパッタ法による窒化ケイ素
薄膜形成時の希ガスの混入効果が検討されてきている
が、本発明では上記希ガスの重粒子による散乱効果を期
待して、クリプトン(Kr)を用いた窒化ケイ素薄膜の
形成方法を提供するものである。さらに、クリプトンガ
スを含む窒素プラズマ中では、基板に生じるセルフバイ
アスが小さく、高エネルギー粒子による釘打ち効果が緩
和されるため、引っ張り応力を有する薄膜が得られ易く
なる。上記のクリプトンの効果により、従来の圧縮応力
に加え、引っ張り応力をも有するスパッタ薄膜の成膜が
可能となり、窒化ケイ素薄膜の内部応力を広い範囲で制
御することが可能となる。本発明の窒化ケイ素薄膜の作
製方法は、請求項1に記載のように、クリプトンガスを
含む窒素プラズマ中で反応性スパッタ法により窒化ケイ
素薄膜の堆積を行うため、希ガスの重粒子による散乱効
果と、基板に生じるセルフバイアスが小さくなり、反応
性スパッタ法による成膜において、いわゆる高エネルギ
ー粒子による釘打ち効果が緩和されるので、引っ張り応
力を有する薄膜が得られ易くなり、フリースタンディン
グの窒化ケイ素薄膜の作製が可能となる。また、請求項
2に記載のように、窒素ガスプラズマ中に導入するクリ
プトン(Kr)の濃度を、図2に示すように、体積率で
50〜90%含有するように調整すると、堆積した薄膜
の内部応力をほぼ引っ張り応力とすることが可能とな
り、耐薬品性ならびに光学特性に優れた下地基板を必要
としない自立性の窒化ケイ素薄膜を形成することがで
き、特に電気的、光学的保護膜としての利用以外に、セ
ンサ材料、マイクロ構造材料あるいはリソグラフィー用
マスク材料として注目されているフリースタンディング
の良質の窒化ケイ素薄膜を得ることができる。また、請
求項3に記載のように、窒素ガスプラズマの全ガス圧力
を、図3に示すように、2〜5 Paの範囲に調整する
ことにより、反応性スパッタ法による成膜において、い
わゆる高エネルギー粒子による釘打ち効果が緩和される
ので、引っ張り応力を有する薄膜が得られ易く、上記と
同様に良質のフリースタンディング窒化ケイ素薄膜を効
果的に得ることができる。
【0006】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げ、図面を用いて
さらに詳細に説明する。図1は、本実施例において窒化
ケイ素薄膜の作製を行った反応性スパッタ装置である平
行平板2極タイプの高周波マグネトロンスパッタ装置の
構成を示す模式図である。図に示すごとく、真空容器
1、基板ホルダ2、基板3、スパッタターゲット4、シ
ャッタ5、高周波電極6、マッチングボックス7、高周
波電源8、油拡散ポンプ9、油回転ポンプ10、排気系
メインバルブ11、粗引きバルブ12、油拡散ポンプ用
吸引バルブ13、マスフローコントローラ14、クリプ
トンガスボンベ15、窒素ガスボンベ16およびヒータ
17、によって主に構成されている。次に、上記した反
応性スパッタ装置を用い窒化ケイ素薄膜の作製方法につ
いて説明する。まず、基板ホルダ2に基板3として、シ
リコンウエハまたはホウケイ酸ガラス板を設置する。さ
らに、スパッタターゲット4として、単結晶シリコンを
高周波電極6上に設置する。油回転ポンプ10を作動さ
せて、油回転ポンプ用吸引バルブ13を開いた後、油拡
散ポンプ9を作動させ、排気系の立ち上げを行う。油拡
散ポンプ用吸引バルブ13を閉じた後、粗引きバルブ1
2を開いて真空排気を開始する。10 Pa程度にまで
真空度が上昇すると、粗引きバルブ12を閉じて、油拡
散ポンプ用吸引バルブ13および排気系メインバルブ1
1を開けて高真空排気を行う。ヒータ17を用いた真空
容器1のベーキングや油拡散ポンプ9付属の液体窒素ト
ラップを働かせて排気効果を高め、5×10-6Pa程度
の真空度が得られるまで排気を行う。この高真空排気を
行った後、クリプトンガスボンベ15および窒素ガスボ
ンベ16を開き、所定の混合比となるように各々独立に
マスフローコントローラー14により1〜50cc(c
3)/分の流量で導入し、真空容器1内のガス圧を調
節する。ここで、高周波電源8により高周波電極6に高
周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。安定したプ
ラズマ状態が得られるようにマッチングボックス7内の
コンデンサを調節する。数分間放電を行ってスパッタタ
ーゲット4表面の汚染物をスパッタクリーニングした
後、シャッタ−5を開け所定の時間、基板3上に窒化ケ
イ素薄膜の堆積を行い、その後シャッタ−5を閉じて、
高周波電圧の印加を止め成膜プロセスを終える。成膜
中、基板ホルダ2は50℃に保持し、印加電力密度は
2.83W/cm2とした。プラズマ状態を把握するた
めに真空容器1に取り付けられたサファイヤ窓より輻射
されるプラズマ発光を、石英ファイバーを通してツエル
ニ・ターナ型回折格子分光器に導入し、分光測定を20
0〜800nmの波長範囲で行った。得られた窒化ケイ
素薄膜の膜応力は、膜堆積前後でのシリコンウエハ基板
の曲率の変化量により算出した。窒化ケイ素薄膜の分子
構造は、水銀・カドミュウム・テルル(MCT)検出器
を備えたフーリエ変換赤外分光光度計(JASCO、F
T/IR−5M)により分析した。さらに、光学特性は
シリコンフォトダイオード検出器を備えた紫外−可視分
光光度計(SHIMAZU、UV−160A)により計
測した。プロセスガス圧(窒素ガスプラズマ全ガス圧
力)を4 Paに固定して、クリプトン(Kr)−窒素
(N2)混合ガス中のクリプトンガス濃度を変化させて
Kr−N2膜の形成を行って得られた膜応力変化を図2
に○印で示す。なお、比較のためにHe−N2混合ガス
中のHeガス濃度を変化させてHe−N2膜の形成を行
って得られた膜応力変化を図2に△印で示した。図2の
○印で示すように、クリプトンガス濃度(体積率:vo
l%)が大きくなるにつれて、Kr−N2膜は圧縮応力
からストレスフリーの状態を経て引っ張り応力に連続的
に変化し、クリプトンガスの導入による引っ張り応力へ
の移行が見られた。しかし、比較例であるHe−N2
の応力変化は△印で示すようにすべてにおいて圧縮応力
を示した。さらに、クリプトンガス濃度を83vol%
に固定し、プロセスガス圧(窒素ガスプラズマ全ガス圧
力)Paを変化させた場合のKr−N2膜(○印)の膜
応力変化を図3に示す。なお、比較のために、上記Kr
−N2膜と成膜条件を同じとして、Ar−N2膜(△印)
およびHe−N2膜(□印)の場合の膜応力変化を同時
に示す。図から明らかなように、Kr−N2膜(○印)
において、低ガス圧領域(約5 Pa以下)では、ガス
圧の増加に伴う圧縮応力から引っ張り応力への変化が見
られクリプトンガスの導入効果が現われている。約5
Paよりガス圧が増大すると、引っ張り応力は減少し、
応力がゼロ(0)付近に収斂する傾向を示す。この応力
のガス圧依存曲線は、多くのアルゴンガスによる金属ス
パッタ薄膜において見受けられるが、窒化ケイ素スパッ
タ膜では初めてのものである。このように、クリプトン
ガスを窒素プラズマ中に混入することにより、反応性ス
パッタ法で得られる窒化ケイ素薄膜の膜応力を、圧縮か
ら引っ張り応力にまで変化させることが可能であること
を示している。次に、クリプトンガス濃度(vol%)
を変化させて、発光分光によるプラズマ状態の解析を行
った。図4に、391.4nmに観測されるN2 +イオン
による発光ラインの強度変化を示し、図5に、746.
9nmに観測されるN原子による発光ラインの強度変化
を示す。N2 +イオンはプラズマ中で加速され、シリコン
ターゲットへ衝突し、シリコンの窒化反応と生じた窒化
ケイ素のスパッタリングを担い、高エネルギーの反跳粒
子やスパッタ粒子は堆積基板上で釘打ち効果を及ぼす。
さらにセルフバイアスのかかった基板へも直接流入し釘
打ち効果を助長する。このことからN2 +イオン濃度の増
加は圧縮応力を誘起させる影響を及ぼす。一方、中性励
起種であるN原子はバイアスによる加速を受けず、遅い
励起種ではあるが極めて反応性に富んだものであり、シ
リコンターゲットおよび堆積基板上での窒化反応に大き
な寄与を与える。つまり、釘打ち効果は示さないが、緻
密な窒化珪素骨格を形成するのに貢献し、引っ張り応力
を発生させることに寄与する。上記の図2と図4を比較
すると、ほぼ逆に相関した変化を示しており、クリプト
ンガスによる重粒子散乱効果に加え、N2 +イオン濃度の
減少による釘打ち効果の緩和がクリプトンガス濃度を増
加した場合に確認され、引っ張り応力の出現に寄与して
いることが分かる。また、クリプトンガス濃度を増加し
た場合に、N原子濃度はやや増大して行く傾向にある。
図6に、フーリエ変換赤外分光光度計により、880c
-1付近に観測されるSi−N結合の伸縮振動モードの
吸光計数の変化を示す。上記の図4で示した反応性N原
子の増加と対応して、堆積した薄膜中のSi−N結合の
密度が増大し、緻密な膜構造が生じていることが示唆さ
れる。これらプロセス中の窒素種の挙動は、クリプトン
の導入に伴い引っ張り応力の発現を助長するように働い
ていることが理解される。本実施例で得られた窒化ケイ
素薄膜は、ほぼ透明であり光学的応用が可能であること
を示している。光学特性として、紫外−可視分光分析よ
り評価した屈折率変化を図7に示す。クリプトンガス濃
度の増加に伴い屈折率は増加する傾向を示すが、ほぼ
2.0〜2.2の範囲内にあり、これは化学量論比で構
成されるSi34が示す1.98に近く、優れた光学特
性を有していることを示している。 そして、4 Pa
の窒素ガスプラズマ全ガス圧で、83vol%のクリプ
トンガス濃度の成膜条件で、3インチのシリコンウエハ
上に、2μmの膜厚で窒化ケイ素薄膜を堆積した引っ張
り応力を有する窒化ケイ素薄膜を用いて、1cm角の窓
をLSIプロセスでパターニングし、下地シリコンをエ
ッチング除去すると、フリースタンディングの窒化ケイ
素薄膜が形成できた。この薄膜は透明で、皺や撓みが無
く、平坦性に優れた高品質の薄膜構造体が得られた。本
実施例において、窒化ケイ素薄膜の作製時における希ガ
スの効果として、窒素ガスプラズマ中にKrガスを導入
することにより、フリースタンディング薄膜の作製に必
要な引っ張り応力を有する窒化ケイ素薄膜を形成するこ
とが可能である。これは、Krガスのみが持つ作用効果
であり、形成される薄膜の物性もバルクの窒化ケイ素に
近いものが得られ実用に適したものである。これは、光
学物性において屈折率がほぼ2.2以下に抑えられるこ
とが可能であり、フリースタンディング窒化ケイ素薄膜
の重要な適応対象物であるセンサやマイクロマシン、さ
らにX線マスクとして極めて有効である。これに対し、
Arガスを用いた窒化ケイ素薄膜は屈折率が大きく不透
明となり、フリースタンディング薄膜を作製する時、化
学エッチングに対する耐久性が低く、圧縮応力も伴って
皺が生じ易く、膜質が悪いという問題がある。また、H
eガスを用いた場合には、形成される窒化ケイ素薄膜の
光学的物性は透明であり、Krガスを用いた場合と同程
度に優れているが、膜の内部応力が圧縮となりフリース
タンディング薄膜を作製する場合に皺が寄り実用上問題
が生じる。これら窒化ケイ素薄膜の作製は、化学的気相
堆積法(CVD)での検討が主流であるが、高温プロセ
スであるため他の部分に悪影響を及ぼしたり、また危険
なプロセスガス(シランガスやアンモニヤガス等)を使
用するといった本質的な問題がある。したがって、本発
明のKrガスを用いた窒化ケイ素薄膜の作製は、100
℃以下の低温プロセスで、危険な原料ガスを用いること
なく、スパッタリング法により、特に引っ張りの内部応
力を有する自立性の窒化ケイ素薄膜の作製が可能であり
技術的効果は極めて大きい。
【0007】
【発明の効果】以上詳細に説明したごとく、本発明の窒
化ケイ素薄膜の作製方法は、LSI作製プロセスに組み
込むことが可能であり、構造材料、光学材料、絶縁材料
等の幅広い分野での応用が期待できる。特に近年、研究
開発が加速されているマイクロマシーニングやマイクロ
センシング等の分野において基盤をなす窒化ケイ素薄膜
構造体やセンサプローブなどに適応性の高いものが得ら
れる。また、X線リソグラフィー用のマスク材料として
利用する場合においても本発明のフリースタンディング
窒化ケイ素薄膜は極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で例示した反応性スパッタ薄膜
の形成装置の構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施例で例示したプロセスガス圧を一
定とした時の窒化ケイ素薄膜の内部応力とプロセスガス
中の希ガス(KrまたはHe)濃度との関係を示す図。
【図3】本発明の実施例で例示したプロセスガス中の希
ガス(Kr、ArまたはHe)ガス濃度を一定とした時
の窒化ケイ素薄膜の内部応力とプロセスガス圧との関係
を示す図。
【図4】本発明の実施例で例示したプロセスガス圧を一
定とした時の窒素ガスプラズマ中の窒素分子イオンの発
光強度とプロセスガス中のクリプトンガス濃度との関係
を示す図。
【図5】本発明の実施例で例示したプロセスガス圧を一
定とした時の窒素ガスプラズマ中の窒素原子の発光強度
とプロセスガス中のクリプトンガス濃度との関係を示す
図。
【図6】本発明の実施例で例示したプロセスガス圧を一
定として形成した窒化ケイ素薄膜の赤外分光測定より得
られたSi−N伸縮振動モードの吸光係数とプロセスガ
ス中のクリプトンガス濃度との関係を示す図。
【図7】本発明の実施例で例示したプロセスガス圧を一
定として形成した窒化珪素薄膜の紫外−可視分光測定よ
り評価した屈折率とプロセスガス中のクリプトンガス濃
度との関係を示す図。
【符号の説明】
1…真空容器 2…基板ホルダ 3…基板 4…スパッタターゲット 5…シャッタ 6…高周波電極 7…マッチングボックス 8…高周波電源 9…油拡散ポンプ 10…油回転ポンプ 11…排気系メインバルブ 12…粗引きバルブ 13…油拡散ポンプ用吸引バルブ 14…マスフローコントローラ 15…クリプトンガスボンベ 16…窒素ガスボンベ 17…ヒータ 18…冷却水

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒素ガスプラズマ中でシリコンをスパッタ
    リングして窒化ケイ素薄膜を形成する反応性スパッタ法
    により窒化ケイ素薄膜を作製する方法において、上記窒
    素ガスプラズマ中に所定量のクリプトンガスを導入し、
    形成される薄膜の内部応力が引っ張り応力となるスパッ
    タ条件下で窒化ケイ素薄膜を堆積する工程を少なくとも
    含むことを特徴とする窒化ケイ素薄膜の作製方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、窒素ガスプラズマ中に
    導入するクリプトンガス濃度は、体積率で、50〜90
    %の範囲であることを特徴とする窒化ケイ素薄膜の作製
    方法。
  3. 【請求項3】請求項1において、窒素ガスプラズマの全
    ガス圧力は2〜5 Paの範囲であることを特徴とする
    窒化ケイ素薄膜の作製方法。
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