JPH08104949A - 表面処理層を有する構造物および表面処理層の形成方法 - Google Patents

表面処理層を有する構造物および表面処理層の形成方法

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JPH08104949A
JPH08104949A JP6241006A JP24100694A JPH08104949A JP H08104949 A JPH08104949 A JP H08104949A JP 6241006 A JP6241006 A JP 6241006A JP 24100694 A JP24100694 A JP 24100694A JP H08104949 A JPH08104949 A JP H08104949A
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Akira Konuma
昭 小沼
Mitsuo Nakamura
満夫 中村
Tsutomu Konuma
勉 小沼
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俊美 松本
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Eisaku Hayashi
英策 林
Tadashi Morinaka
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、表面処理施工時の高温割れ感
受性が低く、かつ施工後の耐食性の良好な表面層を有す
る構造物および表面処理層を形成する手段を提供するこ
とにある。 【構成】オーステナイト系ステンレス鋼からなる構造物
の表面部が、オーステナイト単相組織からなる上部層
と、初晶フェライトで凝固する組織からなる下部層より
形成される表面層を有することを特徴とする構造物及び
前記表面層を形成する形成方法。 【効果】本発明によれば、低温鋭敏化等に起因する耐食
性の劣化が生じない表面層を有する構造物を作製するこ
とが可能であり、かつ表面層を形成する施工の際に凝固
割れあるいは高温割れによる欠陥の発生を防止すること
が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼製の構造
物の構造物表面部の耐食性改善あるいは高温割れを防止
する表面処理を施したステンレス鋼製の構造物および表
面処理方法に係り、特に耐食性や耐応力腐食割れ性を改
善した原子炉炉内機器、あるいは原子力プラントの供用
期間中に原子炉圧力容器内部を構成する構造物及び機器
の耐食性や耐応力腐食割れ性を改善する表面処理方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス製の構造物は、その溶接熱影
響部等において、Cr炭化物の析出などに伴う結晶粒界
でのCr欠乏が生じた場合材料が鋭敏化して、耐食性あ
るいは耐応力腐食割れ性の劣化する要因となる。例えば
軽水炉炉内構造物などのような高温水中の腐食環境下に
ある機器は、原子炉の長期間の稼働運転中に材料が鋭敏
化した場合、応力腐食割れ感受性が高まる恐れがあり、
その対策が検討されている。
【0003】上記の構造物の耐食性あるいは耐応力腐食
割れ性改善技術として、構造物施工当該部表面に熱エネ
ルギーを投入して表面を融点以上に加熱した後冷却させ
て表面に凝固層を形成させる表面処理施工が考案されて
いる。例えば、特開昭63−53210号や特開平2−161397号
などの公知例では、ステンレス鋼製の構造物にレーザ光
を照射して表面を溶融させ、表面部にフェライトを微細
に析出させた組織とすることで耐食性を改善しようとす
るものである。また、特開平5−65530号では、レーザ照
射施工時の材料の冷却速度が103〜107℃/sとなる
施工条件あるいはセル径0.1〜3.0μmの範囲あるい
は初晶オーステナイト組織となる表面層の形成条件によ
って、表面処理による鋭敏化材の耐食性の改善のみなら
ず施工後の経年的な低温鋭敏化の発生を防止する表面処
理施工が公知となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術では、耐食性と高温割れ感受性の両立が困難で
あった。例えば、特開昭63−53210号や特開平2−161397
号などの公知例では、施工後の低温鋭敏化環境におい
て、フェライト相とオーステナイト相との相境界でCr
炭化物が析出しやすく、施工後の鋭敏化環境で耐食性が
劣化しやすい問題があった。また、特開平5−65530号の
公知例では、施工後の低温鋭敏化環境においても良好な
耐食性は維持されるが、レーザ照射して表面溶融部全体
を初晶オーステナイト組織となる表面層に改質した場
合、高温割れ感受性が増大する可能性があった。
【0005】本発明の目的は、上記の従来技術の問題点
を鑑み、表面処理施工時の高温割れ感受性が低く、かつ
施工後の耐食性の良好な表面層を有する構造物および表
面処理層を形成する手段を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼か
らなる構造物の表面部が、オーステナイト単相組織から
なる上部層と、初晶フェライトで凝固する組織からなる
下部層から構成される表面処理層を有する構造物が提供
される。
【0007】また、上記構造物の表面部が、オーステナ
イト単相組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固
する組織からなる下部層から構成される複数の溶融部か
らなる表面処理層を有する構造物が提供される。
【0008】また、上記構造物の表面部が、オーステナ
イト単相組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固
する組織からなる下部層から構成され、かつ前記上部層
と前記下部層および前記下部層と構造物母材部が金属結
合している表面処理層を有する構造物が提供される。
【0009】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物の組成が、重量%で、C:0.001
〜0.08%,Cr:16.0〜20.0%,Ni:7.0
〜16.0%,Mo:0.001〜6.0%,Mn:0.
001〜2.00% を基本組成とし、選択成分としてN
b,Ti,Ta,Zrを添加上限値として各元素につき
2.0%以下、Pt,Pdを添加上限値として各元素に
つき1.0%以下、不可避不純物としてP:0.045
%以下、Si:1.00%以下,S:0.03%以下,
N:0.30% 以下,残部Feからなる構造物であるこ
とが好ましい。
【0010】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物の表面部のオーステナイト単相組織で
ある上部層が初晶オーステナイトで凝固して室温でほと
んどオーステナイト単相となる組織からなり、かつ初晶
フェライトで凝固する下部層の室温における組織がフェ
ライトとオーステナイトの2相の組織からなる表面層を
有する構造物が提供される。
【0011】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物において、初晶オーステナイトで凝固
する上部表面層組織の凝固セル径が0.1μm 以上、3
μm以下であることが望ましい。
【0012】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物の表面部のオーステナイト単相組織で
ある上部層が非セル型マッシブ組織からなり、かつ初晶
フェライトで凝固する下部層の室温における組織がフェ
ライトとオーステナイトの2相の組織からなる表面層を
有する構造物が提供される。
【0013】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物の表面部のオーステナイト単相組織で
ある上部層が初晶オーステナイトで凝固するセル型組織
と非セル型マッシブ組織の混合組織からなり、かつ初晶
フェライトで凝固する下部層の室温における組織がフェ
ライトとオーステナイトの2相の組織からなる表面層を
有する構造物が提供される。
【0014】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物の表面部のオーステナイト単相組織で
ある上部層が溶体化組織からなり、かつ初晶フェライト
で凝固する下部層の室温における組織がフェライトとオ
ーステナイトの2相の組織からなる表面層を有する構造
物が提供される。
【0015】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物において、前記表面処理層の層厚さが
母材厚さの0.2 〜50%の範囲であり、かつ前記上部
層の層厚さが表面処理層厚さの10〜50%の範囲であ
る表面層を有することが望ましい。
【0016】また、上記のオーステナイト系ステンレス
鋼からなる構造物が原子炉炉内構造物であることが望ま
しい。
【0017】また、上記目的を達成するために、本発明
によれば、オーステナイト系ステンレス鋼からなる構造
物の表面層の形成方法において、構造物施工当該部表面
に熱エネルギーを投入して表面を融点以上に加熱した後
冷却させる施工あるいは表面を溶体化温度以上に加熱し
た後冷却させる施工によって、オーステナイト単相の室
温組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固してフ
ェライトとオーステナイトの2相の室温組織からなる下
部層より構成される、2層の表面処理層を形成する表面
処理層の形成方法が提供される。
【0018】また、上記表面層の形成方法において、初
晶オーステナイトで凝固する組織からなる上部層と、初
晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナイトの
2相の室温組織からなる下部層より構成される、2層の
表面処理層を形成する表面処理層の形成方法が提供され
る。
【0019】また、上記表面処理層の形成方法におい
て、オーステナイト単相のマッシブ組織となる凝固組織
からなる上部層と、初晶フェライトで凝固してフェライ
トとオーステナイトの2相の室温組織からなる下部層よ
り構成される、2層の表面処理層を形成する表面処理層
の形成方法が提供される。
【0020】また、上記表面処理層の形成方法におい
て、初晶オーステナイトで凝固する組織とオーステナイ
ト単相のマッシブ組織となる凝固組織の混合組織からな
る上部層と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオ
ーステナイトの2相の室温組織からなる下部層より構成
される、2層の表面処理層を形成する表面処理層の形成
方法が提供される。
【0021】また、上記表面処理層の形成方法におい
て、オーステナイト単相の溶体化組織からなる上部層
と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナ
イトの2相の室温組織からなる下部層より構成される、
2層の表面処理層を形成する表面処理層の形成方法が提
供される。
【0022】また、上記表面層の形成方法において、表
面層を形成する構造物の表面に熱エネルギーを投入して
表面を融点以上に加熱した後冷却させて表面に凝固層を
形成させる施工によって、融点から500℃まで104
℃/sec以上107℃/sec以下の冷却速度で形成される
上部層と、101℃/sec以上104℃/sec以下の冷却速
度で形成される下部層より構成される2層の表面処理層
を形成する表面処理層の形成方法が提供される。
【0023】また、上記表面層の形成方法において、構
造物表面に熱エネルギーを投入する方法として構造物表
面にレーザ光を照射する方法を用いることが望ましい。
【0024】また、本発明によれば、上記表面処理層の
形成方法において、最初に構造物表面にレーザ光を照射
して初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナ
イトの2相の室温組織からなる層を形成した後、同領域
に再びレーザ光を照射してオーステナイト単相の室温組
織からなる上部層を形成する2段階処理を行う表面処理
層の形成方法が提供される。
【0025】また、上記表面処理層の形成方法におい
て、オーステナイト単相の室温組織からなる上部層と、
初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナイト
の2相の室温組織からなる下部層より構成される2層の
表面処理層を、一度のレーザ光の照射施工によって形成
してもよい。
【0026】また、上記記載のレーザ光を照射する手段
として、一度以上の施工段階においてパルスビームのレ
ーザ光を照射することが望ましい。
【0027】また、上記構造物のレーザ光の照射による
表面層の形成方法において、照射されるレーザ光のスポ
ット径あるいは幅が0.5mm 以上50mm以内で、かつス
ポット径内において照射されるレーザ光の単位面積当た
りのパワー密度が最大パワー密度の1/e以上である領
域における、レーザ光の強度分布と同領域内平均強度と
の偏差が60%未満にまで均一化されたレーザ光を照射
することが望ましい。
【0028】また、上記レーザ光を照射する手段とし
て、カライドスコープ構造を有するレーザ光の出射光学
系を用いてレーザ光を照射することが望ましい。
【0029】また、上記の表面処理層の形成方法を原子
炉炉内構造物に適用することが望ましい。
【0030】また、本発明は、原子炉内の上部格子板,
シュラウド,炉心支持板,シュラウドサポート,ICM
ハウジング,CRDハウジング,気水分離器、給水スパ
ージャ,炉心スプレイライン,炉心スプレイスパージ
ャ,ジェットポンプ,ジェットポンプライザ等のステン
レス製の炉内機器あるいは他の配管等の構造物におい
て、少なくともその一部が、上記のオーステナイト単相
の室温組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固し
てフェライトとオーステナイトの2相の室温組織からな
る下部層より構成される、2層の表面処理層を有するこ
とを特徴とする構造物である。また、本発明は、上記構
造物の表面処理層の形成する手段として、上記の手段に
よって施工を行うことを特徴として、オーステナイト単
相の室温組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固
してフェライトとオーステナイトの2相の室温組織から
なる下部層より構成される2層の表面処理層を形成す
る、炉内構造物の表面処理層の形成方法を提供するもの
である。
【0031】
【作用】本発明の作用を図5〜図12を用いて以下に説
明する。
【0032】図5はステンレス鋼の主要成分であるF
e,Cr,Niの3元系合金において、Fe〜70wt
%とした場合の、Cr量,Ni量に対する擬2元系の状
態図を模式的に示したものである。上記構造物の表面部
を溶融し凝固させて表面処理層を形成させるプロセスに
おける溶融状態からの凝固過程において、図中に示すA
の組成領域においては、平衡状態において、液相から初
晶でフェライトが晶出し、凝固終了時にフェライトとオ
ーステナイトの2相が共晶で凝固が完了するか、あるい
は凝固完了後の冷却過程でフェライトからオーステナイ
トへの固相変態が生じる。SUS304,SUS316鋼をはじめと
するオーステナイト系ステンレス鋼の多くは、上記の領
域内の組成である。通常、上記合金の溶接金属に見られ
るように、101〜104℃/sの比較的冷却速度の遅い
凝固部の組織は、上記の凝固完了後室温に到る過程での
固相変態によってフェライトの大部分がオーストナイト
となり、固相変態しきれなかったフェライトが残留して
いる、初晶フェライトとオーステナイトの2相組織から
なっている。一方、レーザ光や電子ビーム等の高密度の
エネルギービームを高速で照射して表面部が溶融した後
103℃/s 以上の冷却速度で急冷した凝固過程では、
液相から初晶でオーステナイトが晶出し、そのまま室温
に到って、初晶オーステナイト組織からなる凝固部が形
成されるか、または、凝固時の元素分配あるいは冷却時
の元素の長距離拡散をほとんど伴わないオーステナイト
単相のマッシブ組織が形成される。
【0033】表面溶融処理した表面層の耐食性を考慮し
た場合、冷却速度の速い条件の方が冷却時のCr炭化物
の核形成を防止できること、あるいはオーステナイト/
オーステナイト境界の方がフェライト/オーステナイト
境界よりCr炭化物の核形成が行われにくいことから、
後者の施工条件の方が望ましい。しかし、凝固時のP,
S等の不純物の粒界偏析等に起因する凝固割れあるいは
高温割れ感受性を考慮した場合、フェライトはオーステ
ナイトより上記不純物の固溶度が高いことから、前者の
初晶フェライトでフェライト中に不純物を固溶させる施
工条件の方が望ましい。
【0034】以上の知見に鑑み、本発明では、最初に不
純物固溶度が高く高温割れ感受性に優れた初晶フェライ
トとオーステナイトからなる2相組織を形成し、次にそ
の表面部を耐食性に優れたオーステナイト単相組織の2
層より構成される表面処理層を形成することによって、
高温割れ感受性が低く、かつ耐食性に優れた構造物を提
供することが可能である。また、溶融凝固処理を行った
場合、施工時の非溶融部と溶融凝固部とは金属結合を有
しているので、表面層の剥離等による材質劣化は生じな
い。
【0035】ここで、オーステナイト系ステンレス鋼に
おいて、その組成(wt%)が、C:0.001〜0.0
8%,Cr:16.0〜20.0%,Ni:7.0〜16.
0%,Mo:0.001〜6.0%,Mn:0.001〜
2.00%、さらに上記基本組成に対し、選択的に添加
する元素としてNb,Ti,Ta,Zrを添加上限値と
して各元素につき0.5%以下とし、不可避不純物とし
てP:0.045%以下,Si:1.00%以下,S:
0.03%以下,N:0.30% 以下,残部Feからな
る合金の組成範囲において、融点からの冷却速度が遅い
場合には初晶フェライトで凝固してフェライトとオース
テナイトからなる2相組織が得られ、冷却速度が速い場
合には初晶オーステナイト組織あるいは上述のマッシブ
組織が得られやすい。本発明の表面層の室温における組
織は、上部層が98%以上のオーステナイト相からなる
実質的オーステナイト単相組織となっている。
【0036】次に、本発明による、オーステナイト単相
組織となる上部層と、初晶フェライトで凝固してフェラ
イトとオーステナイトからなる2相組織となる下部層よ
り構成される、2層の表面処理層の形成方法とその作用
について述べる。
【0037】図6は構造物表面に表面溶融部を形成する
表面処理施工において、初晶フェライトで凝固してフェ
ライトとオーステナイトからなる2相組織とする施工
と、オーステナイト単相組織となる施工の2段階からな
る施工によって、本発明の表面処理層を形成する施工を
表したものである。構造物1の表面に投入するエネルギ
ー源としては、初晶フェライトで凝固してフェライトと
オーステナイトからなる2相組織とする1度目の施工に
おいては、図6ではレーザ光2を用いているが、TIG
アーク,PTA,電子ビーム等通常の溶接に用いるエネ
ルギー源でもよい。上記エネルギーの投入によって、1
1〜104℃/sの比較的冷却速度の遅い条件で形成さ
れる初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナ
イトからなる2相組織となる凝固部3が形成され、ラッ
プさせていく施工によって、表面部の施工当該領域に初
晶フェライトで凝固してフェライト相63とオーステナ
イト相64からなる2相組織となる表面層が形成され
る。この表面層においては、初晶フェライトで凝固する
ため、凝固割れあるいは高温割れの原因となるP,S等
の不純物はフェライトに固溶されやすく、凝固割れある
いは高温割れが防止される。次に、同領域にオーステナ
イト単相組織となる2度目の施工を行う。2度目の施工
のエネルギー源としては、図6ではレーザ光2を用いて
いるが、パルスレーザや電子ビーム等の低入熱で急冷施
工の可能なエネルギー源が望ましい。上記エネルギーの
投入によって、表面部の施工当該領域のフェライトとオ
ーステナイトからなる2相組織となる表面層の表面部が
溶融し、104〜107℃/sの冷却速度の速い条件で形
成されるオーステナイト単相組織となる凝固部4が形成
される。このオーステナイト単相組織はセル境界を有す
るセル状の組織65であるか、または凝固時の元素分配
あるいは冷却時の長距離拡散をほとんど伴わない非セル
型のマッシブ組織66である。続いて、1度目の施工と
同様にラップさせていく施工によって、表面部の施工当
該領域のフェライトとオーステナイトからなる2相組織
となる層が下部層5となり、オーステナイト単相組織と
なる上部層6の2相からなる表面層が形成される。上部
層6のうちオーステナイト単相組織においては、冷却速
度が速くかつ上記冷却速度で形成される凝固組織内のC
rの均一分布のため、上記初晶オーステナイト組織は施
工後のCr炭化物の析出が防止される高耐食組織であ
り、かつP,S等の不純物は1度目の施工時にフェライ
トに固溶されている。したがって、2度目の施工時の溶
融部4内には上記不純物の濃度が低減されているため、
初晶オーステナイト凝固における凝固割れあるいは高温
割れの感受性は生じない。以上の作用によって、2度の
施工によって、オーステナイト単相組織となる上部層6
と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナ
イトからなる2相組織となる下部層4より構成される、
2層の表面処理層を形成する施工によって、表面処理時
の凝固割れや高温割れ感受性の低く、かつ耐食性に優れ
た構造物を提供することが可能である。
【0038】また、上記の2度目の施工時に表面部を約
900℃以上融点以下に加熱した場合でも、表面部のフ
ェライトが分解してオーステナイトに固溶して、オース
テナイト単相の溶体化層が上部層として形成され、表面
処理時の凝固割れや高温割れ感受性の低く、かつ耐食性
に優れた構造物を提供することが可能である。
【0039】次に、本発明の2層より構成される表面層
を、1度の施工によって形成する表面処理方法とその作
用を述べる。
【0040】図7は構造物表面に表面溶融部を形成する
表面処理施工において、1パス施工した状態を示したも
のである。ここでは投入するエネルギー源はレーザ光と
する。レーザ光が構造物の表面に照射されて表面部が融
点以上に加熱されて溶融する。溶融した部分は構造物母
材部との境界から凝固を開始し、表面部で凝固を終了す
る。この溶融−凝固過程において、凝固する際の冷却速
度は融液の過冷度や凝固核の成長速度に依存するが、上
記過冷度を考慮した場合、熱が母材部方向に移動するい
わゆる自己冷却する雰囲気では、過冷度は凝固開始時の
構造物母材部との境界部では小さく、凝固終了時の表面
部では大きい。すなわち、上記の組成範囲に有る均一な
1組の組成からなる構造物の凝固過程において、凝固開
始時の構造物母材部との境界部では冷却速度が小さく初
晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナイトか
らなる2相組織となる凝固組織が形成され、かつ凝固終
了時の表面部では冷却速度が大きく上記の初晶オーステ
ナイト組織あるいはマッシブ組織からなる凝固組織が形
成される可能性がある。このような組織においては、凝
固割れ等の原因となるP,S等の不純物は凝固の初期に
フェライト中に固溶され、凝固の末期では残留融液中の
上記不純物濃度が低くなって初晶オーステナイトで凝固
しても凝固割れは発生しない。さらに、上記凝固組織の
耐食性は、腐食環境に接する表面部がオーステナイト単
相組織であるため良好である。本発明では上記の知見を
鑑みて、構造物1にレーザ光2を照射して、凝固開始部
では101〜104℃/sの冷却速度とすることによって
初晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナイト
からなる2相組織となる凝固組織を形成し、凝固終了部
の表面部では104〜107℃/sの冷却速度とすること
によって上記初晶オーステナイト組織あるいは上記マッ
シブ組織あるいはその混合組織を形成することによっ
て、1度の施工で本発明による、オーステナイト単相組
織となる上部層6と、初晶フェライトで凝固してフェラ
イトとオーステナイトからなる2相組織となる下部層5
より構成される、2層の表面処理層を形成し、凝固割れ
あるいは高温割れの発生を防止しかつ耐食性に優れた表
面層を形成することが可能である。
【0041】ここで、上記の効果を有するために、凝固
時の熱の移動方向は表面と垂直方向である方が望まし
い。そのために照射されるレーザ光のビーム強度分布
は、広い照射スポット領域内でできるだけ均一であるこ
とが望ましい。図8はレーザ光が照射されたスポット径
とスポット内の強度分布を示したものである。ここで同
図に示すように、スポット径内において、照射されたレ
ーザ光のビーム強度分布、すなわちパワー密度の分布を
ガウス分布としたときの、ピーク値(最大パワー密度)
の1/e以上のパワー密度で照射される領域を有効照射
領域(以下、有効領域)とする。eは自然対数である。
幅が50mm以上、厚さが6mm以上の構造物への適用を考
慮した場合、照射されるレーザ光のスポット7の径は
0.5mm 以上50mm以内であることが望ましく、かつス
ポット7の径内領域におけるレーザ光の強度分布が均一
である条件下で上述の2層組織が形成される。図9は、
図8に示したところのスポット径内の上記に定義した有
効領域におけるレーザ光の強度8と同領域内平均強度9
との偏差の違いによる表面層の形成条件を示したもので
ある。同図より、上記強度分布8における各パワー密度
と同領域内平均強度9との偏差の最大値(図9のdma
xで表される)が60%以上の施工条件では、凝固時に
熱が表面と垂直方向だけでなく水平方向にも移動するた
め、図10(a)に示すように凝固端部すなわち溶融部
周囲10の冷却速度が遅くなり、同領域では初晶フェラ
イトで凝固してフェライトとオーステナイトからなる2
相組織となってしまう恐れが有る。この様な凝固組織で
は、ラップさせて表面処理層を形成させた場合、一部の
領域で表面部がフェライトとオーステナイトからなる2
相組織となり、耐食性が劣化する恐れが有る。同表より
上記強度分布が同領域内平均強度の60%未満の偏差に
まで均一化された条件において、凝固時に熱が表面と垂
直方向に移動する割合が高くなるため、図10(b)に
示すように表面層の上部全域がオーステナイト単相組織
となる上部層6となり、下部が初晶フェライトで凝固し
てフェライトとオーステナイトからなる2相組織となる
下部層4となる本発明の2層からなる表面層が形成され
る。
【0042】上記のレーザ光の強度分布を均一化させる
手段としては、カライドスコープ構造を有するレーザ光
の出射光学系を用いた施工が有効である。図11に示す
ように光ファイバー11から伝送されファイバー端から
出射されたレーザ光2は集光レンズ12で収束される
が、レーザ光2が材料1の表面に到達する前にビームを
均一化して面状態で照射するカライドスコープ構造13
を具備することにより、ビームスポット7内のレーザ光
が均一化され、上記の適正条件で施工して、図10
(b)に示すような、本発明の、表面層の上部全域がオ
ーステナイト単相組織となり、下部が初晶フェライトで
凝固してフェライトとオーステナイトからなる2相組織
となる本発明の2層からなる表面層を形成することが可
能である。他の手段としては、シリンドリカルレンズや
インテグレーションミラーを用いて施工しても良い。
【0043】また、板厚6〜40mmの構造物への適用を
考えた場合、上記表面層の形成能あるいは母材部周囲へ
の影響を考慮して、上部層/下部層を含めた全体の表面
層厚さは、構造物の母材厚さの0.2 〜50%であるこ
とが望ましい。さらに上記表面層内の図6〜7あるいは
図10(b)に示した上部層6の厚さは、上部層/下部
層を含めた全体の表面層厚さの10〜50%であること
が望ましい。図12は上記表面層内の上部層の厚さの、
上部層/下部層を含めた全体の表面層厚さに占める割合
と、本発明の表面層の形成状態を示したものである。同
図に示すように、上記表面層内の上部層の厚さが上部層
/下部層を含めた全体の表面層厚さの10%以下では、
上部層のオーステナイト単相組織の形成が不安定とな
り、部分的に初晶フェライトで凝固してフェライトとオ
ーステナイトからなる2相組織が形成されてしまう。ま
た、上記表面層内の上部層の厚さが上部層/下部層を含
めた全体の表面層厚さの50%以上では、1度の施工に
よる表面層形成においては、上記のレーザ光の強度分布
条件で述べたように、凝固時に熱が表面と垂直方向だけ
でなく水平方向にも移動するため、凝固端部で初晶フェ
ライトで凝固してフェライトとオーステナイトからなる
2相組織となってしまう恐れが有る。従って、表面層内
の上部層の厚さは、上部層/下部層を含めた全体の表面
層厚さの10〜50%とすることによって、表面層の上
部全域がオーステナイト単相組織となり、下部が初晶フ
ェライトで凝固してフェライトとオーステナイトからな
る2相組織となる本発明の2層からなる表面層が安定し
て形成される。
【0044】
【実施例】
(実施例1)本発明の、オーステナイト単相組織となる
上部層と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオー
ステナイトからなる2相組織となる下部層より構成され
る、2層の表面処理層を1度の施工によって形成した施
工と、上記表面処理層の耐食性評価の実施例を以下に述
べる。
【0045】図1は、オーステナイト系ステンレス鋼で
あるSUS304鋼製の溶接部材にレーザ光を照射して、表面
層を形成した部位の断面図である。照射されたレーザ光
のエネルギー密度は、約60J/mmで施工した。レーザ
光はYAGレーザであり、光ファイバによって伝送され
て、出射光学系より照射された。出射光学系は図11に
示すように、カライドスコープ構造を具備させた。すな
わち、光ファイバー11から伝送されファイバー端から
出射されたレーザ光2は集光レンズ12で収束される
が、レーザ光2が材料表面に到達する前にビームを均一
化して面状態で照射するカライドスコープ構造13を具
備することにより、ビームスポット内のレーザ光が均一
化される。本実施例では、照射されるレーザ光のスポッ
ト径は約3.0mm であり、かつスポット径内75%以上
の領域におけるレーザ光の強度と同領域内平均強度との
偏差の割合は最大約30%であった。表面溶融部は溶融
幅の30%〜50%のピッチ幅でラップさせて施工し
た。
【0046】形成された表面層14の断面組織を観察し
たところ、表面層は最大溶融深さが約0.2mmであっ
た。表面溶融層の上部全面に凝固セル径約1.0μmの
初晶オーステナイト組織、および一部の施工条件では非
セル型のマッシブ組織あるいは初晶オーステナイト組織
とマッシブ組織の混合組織が上部層6として形成されて
おり、下部にはフェライトとオーステナイトからなる2
相組織が下部層5として形成されていた。上部層6は、
磁気型フェライトスコープにおいてもフェライトの検出
限界以下であり、実質的にオーステナイト単相組織であ
った。オーステナイト単相組織である上部層6の層厚さ
は、約20〜50μmの範囲であった。表面層14内に
は凝固割れ等の欠陥は認められなかった。
【0047】上述の表面層14を有するSUS304鋼製構造
物49から、溶接部50および溶接熱影響部51を含む
ように試験片を採取し、耐食性評価試験に供した。比較
のために非改質の溶接熱影響部を含む試験片の耐食性も
評価した。母材の溶接部材は表面処理施工前に500℃
×24hの熱処理を行っている。試験片は、改質したま
まの状態の耐食性と、改質後の低温鋭敏化感受性を調べ
るため、それぞれ採取後、熱処理なしの状態と、500
℃×24hの熱処理した状態の2種類の試験片を耐食性
評価試験に供した。耐食性評価試験としては、鋭敏化感
受性を評価するため、沸騰状態の硫酸−硫酸銅溶液に7
2時間浸漬させる試験を行い、試験後試験片を50Rに
曲げ荷重を加えて断面を観察し、腐食割れの有無を調べ
た。図2はその試験結果である。非改質の溶接部材は、
溶接熱影響部51において鋭敏化に起因する腐食割れが
認められた。一方、上記の表面処理によって形成した表
面層を有する試験片では、表面処理後熱処理なしの状態
および500℃×24hの熱処理した状態のどちらにお
いても腐食割れは認められなかった。
【0048】(実施例2)本発明の、オーステナイト単
相組織となる上部層と、初晶フェライトで凝固してフェ
ライトとオーステナイトからなる2相組織となる下部層
より構成される、2層の表面処理層を2度の施工によっ
て形成した施工と、上記表面処理層の耐食性評価の実施
例を以下に述べる。
【0049】図3は、オーステナイト系ステンレス鋼で
あるSUS304鋼製の溶接部材にレーザ光を照射して、表面
層を形成した部位の断面図である。まず、1度目の施工
を行った。本実施例では、連続ビームのYAGレーザ光
を照射して形成した。照射されたレーザ光のエネルギー
密度は、約600J/mmで施工した。表面溶融部は溶融
幅の50%のピッチ幅でラップさせて施工した。次に2
度目の施工を行った。本実施例ではパルスビームのYA
Gレーザ光を照射して形成した。照射されたパルス周波
数は50Hzであり、レーザ光のエネルギー密度は約1
0J/mmで施工した。表面溶融部は溶融幅の30%〜5
0%のピッチ幅でラップさせて施工した。
【0050】形成された表面層14の断面組織を観察し
たところ、表面層14は最大溶融深さが約0.5mmであ
った。表面溶融層の上部全面に凝固セル径約1.0μm
の初晶オーステナイト組織、および一部の施工条件では
非セル型のマッシブ組織あるいは初晶オーステナイト組
織とマッシブ組織の混合組織が上部層6として形成され
ており、下部にはフェライトとオーステナイトからなる
2相組織が下部層5として形成されていた。オーステナ
イト単相組織である上部層6の層厚さは、約100〜20
0μmの範囲であった。表面層14内には凝固割れ等の
欠陥は認められなかった。
【0051】上述の表面層14を有するSUS304鋼製構造
物49から、溶接部50および溶接熱影響部51を含む
ように試験片を採取し、耐食性評価試験に供した。比較
のために非改質の溶接熱影響部を含む試験片の耐食性も
評価した。母材の溶接部材は表面処理施工前に500℃
×24hの熱処理を行っている。試験片は、改質したま
まの状態の耐食性と、改質後の低温鋭敏化感受性を調べ
るため、それぞれ採取後、熱処理なしの状態と、500
℃×24hの熱処理した状態の2種類の試験片を耐食性
評価試験に供した。耐食性評価試験としては、鋭敏化感
受性を評価するため、沸騰状態の硫酸−硫酸銅溶液に7
2時間浸漬させる試験を行い、試験後試験片を50Rに
曲げ荷重を加えて断面を観察し、腐食割れの有無を調べ
た。図4はその試験結果である。非改質の溶接部材は、
溶接熱影響部51において鋭敏化に起因する腐食割れが
認められた。一方、上記の2度の施工による表面処理に
よって形成した表面層を有する試験片では、表面処理後
熱処理なしの状態および500℃×24hの熱処理した
状態のどちらにおいても腐食割れは認められなかった。
【0052】(実施例3)また、実施例2と同様の2段
階施工において、2度目の施工の際、連続ビームのYA
Gレーザを焦点位置を外して照射して表面を溶融させず
に溶体化処理してオーステナイト単相である溶体化層と
なる上部層6と下部層5の2層からなる表面層14を形
成した場合でも、表面層14内には凝固割れ等の欠陥は
認められなかった。かつ耐食性評価試験でも、表面処理
後熱処理なしの状態および500℃×24hの熱処理し
た状態のどちらにおいても腐食割れは認められなかっ
た。
【0053】(実施例4)本発明を軽水炉圧力容器内の
ステンレス製構造物に適用する一例として、圧力容器外
部からの遠隔操作によって、シュラウド内面の溶接熱影
響部を含む領域に本発明の表面処理を施す例を、図13
〜図14を用いて以下に述べる。
【0054】図13(a)はシュラウド内面へのアクセ
ス状態を示した断面図である。まず、圧力容器15の上
蓋を取外し、蒸気乾燥器、気水分離器、燃料チャンネル
を順次外し、さらに制御棒を圧力容器15の下方から抜
き出す。必要に応じて中性子計測管も圧力容器の下方か
ら抜き出して、炉心部を炉水16で満たされた状態にす
る。次にシュラウド17内面の施工対象部位に対して、
施工対象部位表面の酸化皮膜及び表面の金属光沢を機械
的に除去処理する。この機械的表面処理は、紙やすりが
電動回転によって、機械的に表面の酸化皮膜及び表面の
金属光沢を機械的に除去する処理である。
【0055】上記の機械的表面処理後、レーザ照射装置
をアクセスする。本実施例では、実施例1と同様に、カ
ライドスコープ構造を有するレーザ光の出射光学系を用
い、かつ水中で施工するためのチャンバ構造を有するレ
ーザ照射装置を用いて施工する場合について説明する。
【0056】まず、炉心部に伸縮機構を有する2次アー
ム18を有する支持ピラー19を挿入する。支持ピラー
19は上部格子板44を通過可能な太さであり、2次ア
ーム18が付属している。2次アーム18は支持ピラー
19に垂直な方向への伸縮機構を有し、かつアーム先端
は水排除チャンバ20と電磁石機構21で合体可能であ
り、さらにチャンバ20と合体した後チャンバ20がス
ライドして移動可能なスライド機構21および垂直に導
入されたスライド機構21をシュラウド周溶接部に沿っ
てチャンバをスライドさせる方向への回転機構22を有
している。
【0057】次にチャンバ駆動機構23によってレーザ
照射装置を有するチャンバ20をシュラウド17内面の
施工当該部に設置する。チャンバ駆動ロボット24とチ
ャンバ20は電磁石機構で合体している。また、本実施
例のレーザ照射装置は、図14に示すように、カライド
スコープ構造13を具備したレーザ光の出射光学系を有
するレーザトーチ25,出射光学系の位置調整及び駆動
機構26,シールド板の開閉機構27,シールドガス注
入機構28,レーザ照射部の監視機構29,レーザ照射
部の照明機構30を具備して常時気中あるいはガス雰囲
気となっている室31と、水排除機構32,ガス注入機
構33,排ガスあるいは排塵機構34,ガス流量監視機
構35,ガス圧監視機構36,温度監視機構37,湿度
監視機構38、を具備した水環境下の構造物表面に接す
る室39の2室より構成され、かつ2室が開閉機構を有
するシールド板40で区切られているチャンバ20を有
している。ここで、各種駆動/制御は遠隔操作室41内
より操作される。圧力容器15外部の遠隔操作室41内
には、レーザ発信器,各種制御系,チャンバ内の温度,
湿度,圧力,ガス流量の計測/調整系,排水機構,排ガ
ス/排塵機構,各種ガス機構等の調整系,監視モニター
等が設置されている。レーザ光はレーザ発振器より発振
され、伝送系である光ファイバーへの入射光学系を通じ
て光ファイバーに伝送され、ファイバ接続機構を経て出
射光学系から照射されるが、図14に示すように、カラ
イドスコープ構造13を具備することによってシュラウ
ド17表面に照射されたときのレーザ光の強度分布は均
一化される。また、支持ピラー導入,2次アームの駆
動,チャンバの駆動,出射光学系の位置調整及び駆動,
シールド板の開閉,シールドガス注入,レーザ照射部の
監視,レーザ照射部の照明,水排除,ガス注入,排ガス
あるいは排塵,ガス流量監視,ガス圧監視,温度監視,
湿度監視もまた同遠隔操作室41に設置の各制御機構に
よって遠隔操作される。
【0058】次に図14に示すように、支持ピラー19
に付属の2次アーム18を伸ばしてアーム先端の電磁石
機構21とチャンバ20を合体させる。さらに、2次ア
ーム18の伸縮機構によって、チャンバ20に荷重を付
与してシュラウド17表面に密着させる。荷重はロード
セルによって測定され、適正荷重となるように調整され
る。チャンバ20がアーム先端42と合体した後は、チ
ャンバ駆動用ロボットは電磁石機構をoffにして切り
離され、水面上に戻され、以降2次アームの駆動機構や
先端部のスライド機構によってチャンバは移動する。図
15に示すように、シュラウド17内面の周溶接部43
に沿った施工を行う場合には、2次アーム18を伸ばし
た後、チャンバスライド機構21の回転機構22によっ
て溶接部43に沿うようにスライド機構21を回転して
アクセスする。
【0059】次にチャンバ内の排水,ガスシールド,雰
囲気制御,チャンバ内のシールド板開口,レーザトーチ
アクセス,レーザ照射と一連の施工を行う。実施例1に
て述べたレーザ照射施工によって、1度の施工でシュラ
ウド内面の施工当該部に、本発明の、オーステナイト単
相組織となる上部層と、初晶フェライトで凝固してフェ
ライトとオーステナイトからなる2相組織となる下部層
より構成される、2層の表面処理層が形成される。
【0060】レーザ照射によってチャンバ内で表面処理
領域を形成する施工の完了後、チャンバ20を移動可能
な状態にし、アーム先端のスライド機構21によってチ
ャンバ20を次の施工位置に移動させる。チャンバ20
を移動した後、上記の一連の施工を繰り返すことによっ
てシュラウド17内面に表面処理領域が形成される。
【0061】2次アーム先端のスライド機構21による
移動限界までチャンバ20が移動して施工した後、チャ
ンバ20を初期位置に戻す。次の施工位置にアクセスす
る場合には、支持ピラー19を回転して上記の一連の施
工を繰り返してもよいが、図13(c)に示すようなシ
ュラウド周溶接部43近傍の溶接熱影響部を一周する施
工を行う際、最初にアクセスした時の上部格子板44を
通過している伝送管が同格子板と接触して損傷を生じる
恐れのある場合や、長時間施工によって構成部品の交換
が必要となる場合には、以下の方法で施工を行う。
【0062】まず、上述したチャンバ駆動ロボット24
を再びアクセスしてチャンバ20と合体し、2次アーム
先端42とチャンバ20を切り離す。チャンバ20はチ
ャンバ駆動機構24によって上部格子板44の間を通過
して圧力容器15外部の遠隔操作場所に戻される。光フ
ァイバ等構成部品の劣化が認められる場合には当該部品
を交換する。次に再びチャンバ駆動ロボット24を移動
して、以降の施工に最も都合のよい上部格子板44の間
を通過する位置からアクセスし、チャンバ24をシュラ
ウド17内面の未処理の施工当該部に設置する。次に再
び2次アーム18を伸ばして先端部42とチャンバ20
を合体し、荷重付与後チャンバ駆動ロボット24を切り
離す。以降は上記の施工を繰り返して行う。
【0063】以上の施工によって、シュラウド内面を一
周する周溶接部近傍の溶接熱影響部全体に、図1に示し
たような本発明によるオーステナイト単相組織となる上
部層6と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオー
ステナイトからなる2相組織となる下部層4より構成さ
れる、2層からなる表面処理層14が形成され、割れ感
受性が低く、かつ施工当該領域の耐食性あるいは耐応力
腐食割れ性が改善される。
【0064】また、本実施例ではシュラウド内面の施工
を説明したが、シュラウド外面と原子炉圧力容器15と
の間にアクセスするロボットを用いることで、上記と同
じ施工方法でシュラウド外面や他の構造物への施工も可
能である。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、低温鋭敏化等に起因す
る耐食性の劣化の生じない表面層を有する構造物を作製
することが可能であり、かつ表面層を形成する施工の際
に凝固割れあるいは高温割れによる欠陥の発生を防止す
ることが可能である。
【0066】また、本発明を原子炉炉内構造物等のプラ
ント構造物に適用した場合、当該構造物の耐食性あるい
は耐応力腐食割れ性が向上し、プラントの長寿命化に効
果が有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による表面層をレーザ光の1度照射によ
り形成した部位の断面図。
【図2】耐食性評価試験結果。
【図3】本発明による表面層をレーザ光の1度照射によ
り形成した部位の断面図。
【図4】その耐食性評価試験結果。
【図5】図5は、Fe〜70%とした場合のCrとNi
に対する擬2元系状態図。
【図6】本発明による2段階のレーザ光の照射による施
工時の断面図。
【図7】本発明による表面層を1度のレーザ光の照射に
よる施工時の1パス施工した断面。
【図8】スポット内におけるレーザ光の強度分布を表し
たもの。
【図9】スポット径内75%の領域におけるレーザ光の
強度の同領域内の平均強度との各割合に対する、本発明
の2層からなる表面層の形成状態をまとめたもの。
【図10】本発明による1度のレーザ光の照射による施
工時の1パス施工した表面溶融部の表面および断面図。
【図11】本発明のカライドスコープ構造を有するレー
ザ出射光学系の断面図。
【図12】本発明の表面層内の上部層の層厚さの前表面
層厚さとの比と表面層の形成状態との関係。
【図13】本発明の原子炉炉内構造物のシュラウドにア
クセスしている状態の一例を示したもの。
【図14】本発明の原子炉炉内構造物のシュラウドにア
クセスしている状態の一例を示したもの。
【図15】本発明の原子炉炉内構造物のシュラウドにア
クセスしている状態の一例を示したもの。
【図16】カライドスコープ構造を有するレーザ出射光
学系と水排除チャンバを有するレーザ照射装置の断面
図。
【符号の説明】
1…構造物、2…レーザ光、3…初晶フェライトで凝固
してフェライト相とオーステナイト相の2相の室温組織
となる凝固部、4…初晶オーステナイト相組織となる凝
固部、5…初晶フェライトで凝固してフェライト相とオ
ーステナイト相の2相の室温組織となる下部層、6…初
晶オーステナイト相組織となる上部層、7…照射された
レーザ光のスポット、8…レーザ光の強度分布、9…ス
ポット径内のレーザ光の強度分布を測定した領域内のレ
ーザ光の平均強度、10…表面溶融部周囲、11…光フ
ァイバ、12…集光レンズ、13…カライドスコープ構
造、14…表面層、15…原子炉圧力容器、16…炉
水、17…シュラウド、18…2次アーム、19…支持
ピラー、20…チャンバ、21…スライド機構、22…
回転機構、23…チャンバ駆動機構、24…チャンバ駆
動ロボット、25…レーザトーチ、26…レーザトーチ
駆動機構、27…シールドガス開閉機構、28…シール
ドガス注入機構、29…レーザ照射部監視機構、30…
レーザ照射部照明機構、31…レーザトーチを有する
室、32…水排除機構、33…ガス注入機構、34…排
ガスあるいは排塵機構、35…ガス流量監視機構、36
…ガス圧監視機構、37…温度監視機構、38…湿度監
視機構、39…構造物に接する室、40…シールド板、
41…遠隔操作室、42…2次アーム先端、43…シュ
ラウド周溶接部、44…上部格子板、45…支持ピラー
駆動機構、46…センターガスシールド機構、47…レ
ンズ保護板、48…ノズル、49…SUS304鋼製構造物、
50…溶接部、51…溶接熱影響部、52…クレーン、
53…支持ピラー駆動ロボット、54…オペレーティン
グフロア、55…炉心支持板、56…ジットポンプビー
ム、57…CRDハウジング、58…電磁石、59…距
離センサ、60…伝送管、61…密封型リング、62…
チャンバ底部(パッキン)、63…フェライト相、64
…オーステナイト相、65…セル状オーステナイト組
織、66…マッシブ組織。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 1/09 H 6/00 102 U 9269−4K C22C 38/44 38/58 G21C 19/02 Z // B23K 26/06 A (72)発明者 中村 満夫 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 小沼 勉 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 松本 俊美 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 加藤 隆彦 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 服部 成雄 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 林 英策 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 守中 廉 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 玉井 康方 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オーステナイト系ステンレス鋼からなる構
    造物の表面部が、オーステナイト単相組織からなる上部
    層と、初晶フェライトで凝固する組織からなる下部層か
    ら構成されることを特徴とする表面処理層を有する構造
    物。
  2. 【請求項2】オーステナイト系ステンレス鋼からなる構
    造物の表面部が、オーステナイト単相組織からなる上部
    層と、初晶フェライトで凝固する組織からなる下部層か
    ら構成される複数の溶融部からなることを特徴とする表
    面処理層を有する構造物。
  3. 【請求項3】オーステナイト系ステンレス鋼からなる構
    造物の表面部が、オーステナイト単相組織からなる上部
    層と、初晶フェライトで凝固する組織からなる下部層か
    ら構成され、かつ前記上部層と前記下部層および前記下
    部層と構造物母材部が金属結合していることを特徴とす
    る、表面処理層を有する構造物。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物の組成(wt%)
    が、 C:0.08以下 Cr:16.0〜20.0 Ni:7.0〜16.0 Mo:0〜6.0 Mn:2.00以下 さらに上記基本組成に対し選択的に添加する元素として
    Nb,Ti,Ta,Zrを添加上限値として各元素につ
    き2.0 %以下、Pt,Pdを添加上限値として各元素
    につき1.0%以下とし、不可避不純物としてP:0.0
    45%以下、Si:1.00%以下、S:0.03%以
    下、N:0.30% 以下、残部Feからなることを特徴
    とする表面層を有する構造物。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、該構造
    物の表面部のオーステナイト単相組織である上部層が初
    晶オーステナイトで凝固して室温でほとんどオーステナ
    イト単相となる組織からなり、かつ初晶フェライトで凝
    固する下部層の室温における組織がフェライトとオース
    テナイトの2相の組織からなることを特徴とする表面層
    を有する構造物。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、初晶オ
    ーステナイトで凝固する上部表面層組織の凝固セル径が
    0.1μm以上、3μm以下であることを特徴とする表面
    層を有する構造物。
  7. 【請求項7】請求項1〜4のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、該構造
    物の表面部のオーステナイト単相組織である上部層が非
    セル型マッシブ組織からなり、かつ初晶フェライトで凝
    固する下部層の室温における組織がフェライトとオース
    テナイトの2相の組織からなることを特徴とする表面層
    を有する構造物。
  8. 【請求項8】請求項1〜4のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、該構造
    物の表面部のオーステナイト単相組織である上部層が初
    晶オーステナイトで凝固するセル型組織と非セル型マッ
    シブ組織の混合組織からなり、かつ初晶フェライトで凝
    固する下部層の室温における組織がフェライトとオース
    テナイトの2相の組織からなることを特徴とする表面層
    を有する構造物。
  9. 【請求項9】請求項1〜4のいずれかに記載のオーステ
    ナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、該構造
    物の表面部のオーステナイト単相組織である上部層が溶
    体化組織からなり、かつ初晶フェライトで凝固する下部
    層の室温における組織がフェライトとオーステナイトの
    2相の組織からなることを特徴とする表面層を有する構
    造物。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載のオース
    テナイト系ステンレス鋼からなる構造物において、前記
    表面処理層の層厚さが母材厚さの0.2 〜50%の範囲
    であり、かつ前記上部層の層厚さが表面処理層厚さの1
    0〜50%の範囲である表面層を有することを特徴とす
    る表面処理層を有する構造物。
  11. 【請求項11】請求項1〜10のいずれかに記載のオー
    ステナイト系ステンレス鋼からなる構造物が原子炉炉内
    構造物であることを特徴とする表面処理層を有する構造
    物。
  12. 【請求項12】オーステナイト系ステンレス鋼からなる
    構造物の表面層の形成方法において、構造物施工当該部
    表面に熱エネルギーを投入して表面を融点以上に加熱し
    た後冷却させる施工によって、オーステナイト単相の室
    温組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固してフ
    ェライトとオーステナイトの2相の室温組織からなる下
    部層より構成される、2層の表面処理層を形成すること
    を特徴とする表面処理層の形成方法。
  13. 【請求項13】請求項12に記載の表面処理層の形成方
    法において、初晶オーステナイトで凝固する組織からな
    る上部層と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオ
    ーステナイトの2相の室温組織からなる下部層より構成
    される、2層の表面処理層を形成することを特徴とする
    表面処理層の形成方法。
  14. 【請求項14】請求項12に記載の表面処理層の形成方
    法において、オーステナイト単相のマッシブ組織となる
    凝固組織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固して
    フェライトとオーステナイトの2相の室温組織からなる
    下部層より構成される、2層の表面処理層を形成するこ
    とを特徴とする表面処理層の形成方法。
  15. 【請求項15】請求項12に記載の表面処理層の形成方
    法において、初晶オーステナイトで凝固する組織とオー
    ステナイト単相のマッシブ組織となる凝固組織の混合組
    織からなる上部層と、初晶フェライトで凝固してフェラ
    イトとオーステナイトの2相の室温組織からなる下部層
    より構成される、2層の表面処理層を形成することを特
    徴とする表面処理層の形成方法。
  16. 【請求項16】請求項12に記載の表面処理層の形成方
    法において、オーステナイト単相の溶体化組織からなる
    上部層と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオー
    ステナイトの2相の室温組織からなる下部層より構成さ
    れる、2層の表面処理層を形成することを特徴とする表
    面処理層の形成方法。
  17. 【請求項17】オーステナイト系ステンレス鋼からなる
    構造物の表面層の形成方法において、表面層を形成する
    構造物の表面に熱エネルギーを投入して表面を融点以上
    に加熱した後冷却させて表面に凝固層を形成させる施工
    によって、融点から500℃まで104℃/sec以上10
    7℃/sec以下の冷却速度で形成される上部層と、101
    ℃/sec以上104℃/sec 以下の冷却速度で形成される
    下部層より構成される2層の表面処理層を形成すること
    を特徴とする表面処理層の形成方法。
  18. 【請求項18】請求項12〜17のいずれかに記載の表
    面処理層の形成方法において、構造物表面に熱エネルギ
    ーを投入する方法として、構造物表面にレーザ光を照射
    する方法を用いることを特徴とする表面処理層の形成方
    法。
  19. 【請求項19】請求項18に記載の表面処理層の形成方
    法において、最初に構造物表面にレーザ光を照射して初
    晶フェライトで凝固してフェライトとオーステナイトの
    2相の室温組織からなる層を形成した後、同領域に再び
    レーザ光を照射してオーステナイト単相の室温組織から
    なる上部層を形成する2段階処理を行うことを特徴とす
    る、表面処理層の形成方法。
  20. 【請求項20】請求項18に記載の表面処理層の形成方
    法において、オーステナイト単相の室温組織からなる上
    部層と、初晶フェライトで凝固してフェライトとオース
    テナイトの2相の室温組織からなる下部層より構成され
    る2層の表面処理層を、一度のレーザ光の照射施工によ
    って形成することを特徴とする表面処理層の形成方法。
  21. 【請求項21】請求項18〜20のいずれかに記載のレ
    ーザ光を照射する手段として、いずれか1度以上の段階
    で一度以上の施工段階においてパルスビームのレーザ光
    を照射することを特徴とする表面処理層の形成方法。
  22. 【請求項22】オーステナイト系ステンレス鋼からなる
    構造物のレーザ光の照射による表面層の形成方法におい
    て、照射されるレーザ光のスポット径あるいは幅が0.
    5mm 以上50mm以内で、かつスポット径内において照
    射されるレーザ光の単位面積当たりのパワー密度が最大
    パワー密度の1/e以上である領域における、レーザ光
    の強度分布と同領域内平均強度との偏差が60%未満に
    まで均一化されたレーザ光を照射することを特徴とす
    る、表面処理層の形成方法。
  23. 【請求項23】請求項22に記載のレーザ光を照射する
    手段として、カライドスコープ構造を有するレーザ光の
    出射光学系を用いてレーザ光を照射することを特徴とす
    る、表面処理層の形成方法。
  24. 【請求項24】請求項12〜23のいずれかに記載の表
    面処理層の構成方法を原子炉炉内構造物に適用すること
    を特徴とする、表面処理層の形成方法。
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