JP4412533B2 - 高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法及び補修方法 - Google Patents

高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法及び補修方法 Download PDF

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Description

本発明は、腐食環境に接する高ニッケル合金溶接部の耐食性改善方法及び補修方法に係り、特に高ニッケル合金の溶接部にレーザ光を照射し溶融−急速凝固させ溶融層を形成することにより、耐応力腐食割れ性を改善する高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法及び高ニッケル合金の組織が鋭敏化領域に変化したことにより発生する開口欠陥の補修方法に関する。
沸騰水型原子炉の炉内構造物には、オーステナイト系ステンレス鋼や高ニッケル合金のインコネル600材(インコネル600材は、母材をインコネル600、被覆アーク溶接による溶接金属をインコネル182、TIG溶接あるいはMIG溶接等のガスシールドアーク溶接による溶接金属をインコネル82と呼び成分が若干異なる。)が使用されている。これら合金の溶接部では、母材と溶接金属の境界部及び溶接金属が多層盛の場合は溶接ビードの重なり部にあたる溶接熱影響部において、Cr炭化物の粒界析出が生じ、鋭敏化と呼ばれる現象が発生する。溶接の熱影響で形成されたCr炭化物の析出核は、ある温度環境下で成長し粒界近傍のCr濃度がある一定量以下にまで低下した場合に粒界腐食が生じ、溶接により発生した残留応力が大きい場合には応力腐食割れを発生する。例えば軽水炉プラントはその有効利用のため長寿命化を図る方向であり、40年の稼動期間が想定されている。従って沸騰水型原子炉の炉内構造物においては、約288℃の腐食環境下の高温高圧水に長期間さらされるため低温鋭敏化についても十分な配慮が必要である。つまり、炉内の高温腐食環境下では、鋭敏化による粒界近傍のCr欠乏層の形成が応力腐食割れの原因と考えられており、材料因子、応力因子、環境因子の3因子が重なる領域で発生するため各種の対策が行われている。
材料面からの検討として、インコネル材の耐SCC性の評価として下記式(1)の安定化パラメータと称する指数が活用されている。安定化パラメータに関しては例えば、特開2002−333397号公報を参照できる。安定化パラメータは、材料の耐SCC性(応力腐食割れ)に対する評価指数である。
Figure 0004412533
ニッケル基合金内において、十分な量のニオブ(Nb)あるいはチタン(Ti)は、炭素(C)を炭化ニオブ(NbC)、炭化チタン(TiC)として固定して安定化させることになるので、結晶粒界で炭素(C)とクロム(Cr)とが反応してCrの欠乏偏析を形成していわゆる鋭敏化することがないためである。
上記式(1)の安定化パラメータが12以上のインコネル600材及び溶接金属インコネル182、82では耐SCC性に優れることから、低炭素含有量でNb、Tiを添加した材料が開発され、現在使用されている。そこで、上記式(1)の安定化パラメータの値が12未満のものに対する、予防保全として耐応力腐食割れ性の改善を図る方法や、応力腐食割れが発生した場合の補修方法を確立しておくことは重要である。
オーステナイト系ステンレス鋼の耐応力腐食割れ性の改善方法としては、特許2657437号で、溶接熱影響部表面にレーザ光を照射エネルギー密度1.0〜100J/mmで照射して、平均セル間隔が0.1〜3.0μmの範囲にあるセル組織をもつ溶融凝固層を形成することにより耐食性を向上させる方法が発明されている。照射エネルギー密度が1.0〜100J/mmの範囲内に制御した場合、103〜107℃/sの冷却速度を有する平均セル間隔が0.1〜3.0μmの範囲にあるセル組織を持つ表面部が形成され、その場合、隣接ビードの熱影響による炭化物析出温度保持時間が短いため、析出核が形成されないか又は頻度が小さく、低温鋭敏化条件の下でも粒界腐食は発生しない。
また上記特許発明では、インコネル600においては、炭素の固溶度が小さいことからレーザ照射による溶融−急冷凝固のみでは脱鋭敏化が達成される照射条件では極めて速い凝固速度のため残留応力が集中し、割れを抑止することが困難であるとして、母材表面に重量比で18Cr−8Ni−74Feの組成を有する薄膜を、めっき、溶射又は粉末を有機物バインダで表面に塗布した後、レーザ光を照射し、薄膜と母材表面部とをともに溶融凝固させて母材表面部にオーステナイト単相微細セル組織を形成させて応力腐食割れ性を向上させる方法が発明されている。
しかし、原子炉建設現地での施工を考えた場合に原子炉内での作業になることから、装置は遠隔操作による自動装置にする必要があり、当然ながら作業工程は少ない方が良い。ところが、上記方法では、薄膜を形成するための工程が増え、また薄膜を形成する遠隔自動装置が必要になる。そのためインコネル材においても、ステンレス鋼と同様にレーザ光のみによる表面溶融改質方法が望ましい。
また、インコネル材溶接部の応力腐食割れ改善方法としては、特開平9−136172号公報でレーザ表面溶融法が発明されている。
この特許出願発明では、レーザ光により被処理材の金属表面をスポット状に加熱して容積の小さな溶融池を形成し、加熱点を溶融池からずらしながら溶融池を急冷して固化状態に導くことにより応力腐食割れの改善を図っている。具体的な溶融条件としては、レーザ光の移動速度を1.0m/min以上とし、冷却速度が5000℃/minにすればレーザの出力に関係なく耐SCC性が向上するとしている。上記特許発明の溶融条件0.5kw、1m/min(入熱量0.35kJ/cm)や0.7kw、1.5m/min(入熱量0.3kJ/cm)の条件ではビード幅が1〜2mm程度にしかならず、このビードを重ねて施工していくのは非効率的であり、また被処理材が複雑形状の場合に、その表面を均一に溶融することは難しく現実的でない。
特開平9−136172号公報 特許2657437号公報 特開2001−287062号公報 特開2001−79663号公報 「レーザ表面改質したAlloy600の耐食性」:材料と環境、48、207−213(1999)
上記従来技術の中で、特許2657437号公報に記載されている発明は、インコネル材溶接熱影響部の耐応力腐食割れ性の改善方法として、母材表面に薄膜を、めっき、溶射又は粉末を有機物バインダで表面に塗布した後、レーザ光を照射し、薄膜と母材表面部とをともに溶融凝固させて母材表面部にオーステナイト単相微細セル組織を形成させて応力腐食割れ性を向上させる方法である。
しかし、該合金を用いる原子炉の建設現地での施工を考えた場合に原子炉内での作業になることから、装置は遠隔操作による自動装置にする必要があり、当然ながら作業工程は少ない方が良い。ところが、上記方法では、薄膜を形成するための工程が増え、また薄膜を形成する遠隔自動装置が必要になる。そのためインコネル材においても、ステンレス鋼と同様にレーザ光のみによる表面溶融改質方法が望まれていた。
また、特開平9−136172号公報には、インコネル材においても、レーザ表面溶融方法が記載されているが、当該公報に記載されている溶接条件0.5kw、1m/minや0.7kw、1.5m/minの条件ではビード幅が1〜2mm程度にしかならず、このビードを重ねて施工していくのは非効率的であり、また被処理材が複雑形状の場合その表面を均一に溶融することは難しく現実的でない。
本発明の課題は、インコネル材などの高ニッケル合金の溶接部において、ステンレス鋼と同様に母材表面に薄膜を形成することなく、レーザ光の照射により耐食性を改善する表面溶融改質方法を提供することである。
また、本発明の課題は、インコネル材などの高ニッケル合金の表面に応力腐食割れが発生した場合に亀裂発生部をレーザ光の照射による溶接を行い、亀裂を溶融あるいは封止して亀裂の進展を抑止する亀裂発生部の補修方法を提供することである。
更に、本発明の課題は、上記式(1)の安定化パラメータの値が12未満のものに対する、予防保全として耐応力腐食割れ性の改善を図る方法や、応力腐食割れが発生した場合の補修方法を確立しておくことである。
上記本発明の課題は次の解決手段で達成される。
請求項1記載の発明は、高ニッケル合金の表面にレーザ光を照射移動して前記表面改質をする応力腐食割れ改善方法において、下記式(1)で示される安定化パラメータの値が4以上12未満である高ニッケル合金の溶接金属部を対象として、前記レーザ光の入熱量が0.45kJ/cm以上、7kJ/cm以下で照射することにより、前記高ニッケル合金溶接金属の表面に溶融ビード幅が3mm以上、溶融深さが0.4mm以上である溶融層を形成する高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法である。
Figure 0004412533
請求項記載の発明は、高ニッケル合金の組織が鋭敏化領域に変化したことにより発生する開口欠陥に対してレーザ光を照射移動して前記開口欠陥の応力腐食割れを補修する方法において、下記式(1)で示される安定化パラメータの値が4以上12未満である高ニッケル合金の溶接金属部を対象として、前記レーザ光の入熱量が0.45kJ/cm以上、7kJ/cm以下で照射することにより、前記開口欠陥に溶融ビード幅が3mm以上、溶融深さが0.4mm以上である溶融層を形成して封止する高ニッケル合金開口欠陥の応力腐食割れ補修方法である。
Figure 0004412533
(作用)
一般にニッケル合金のインコネル材の溶接部では、母材と溶接金属の境界部及び溶接金属が多層盛の場合は溶接ビードの重なり部にあたる溶接熱影響部において、Cr炭化物の粒界析出が生じ、鋭敏化と呼ばれる現象が発生する。溶接の熱影響で形成されたCr炭化物の析出核は、ある温度環境下で成長し、粒界近傍のCr濃度がある一定量以下にまで低下した場合に粒界腐食が生じ、溶接により発生した残留応力が大きい場合には応力腐食割れを発生する。
そしてインコネル材の耐SCC性の評価として下記の安定化パラメータと称する指数が活用されている。
Figure 0004412533
ニッケル基合金内において、十分な量のニオブ(Nb)あるいはチタン(Ti)は、炭素(C)を炭化ニオブ(NbC)、炭化チタン(TiC)として固定して安定化させることになるので、結晶粒界で炭素(C)とクロム(Cr)とが反応してCrの欠乏偏析を形成していわゆる鋭敏化することがないためである。
上記式(1)の安定化パラメータが12以上のインコネル600材及び溶接金属インコネル182、82では耐SCC性に優れることから、低炭素含有量のNb、Tiを添加した材料が開発され現在使用されている。そこで、安定化パラメータが12未満のものに対する予防保全として耐応力腐食割れ性の改善を図る方法や、応力腐食割れが発生した場合の補修方法を確立しておくことは重要である。
従来技術による溶接金属インコネル182あるいはインコネル82においては、高炭素含有量のものがあるが、溶接性の点からNbが添加されており、式(1)の安定化パラメータの値が4〜9になっている。これらの安定化パラメータが12以下の材料を使用して、レーザ照射エネルギーを変化させて表面溶融を行い、ニッケル基合金の改良ASTMG28試験、いわゆる硫酸・硫酸第2鉄腐食試験(粒界腐食試験)による耐応力割れ性を評価した。
本発明によれば、高ニッケル合金の式(1)の安定化パラメータの値が4〜12のものに対して、レーザ光の照射入熱量が7kJ/cm以下のレーザ光を対象金属表面に照射し溶融急冷凝固させる表面改質層では、Nb、Tiの炭化物NbC、TiCの析出が促進し、Cr炭化物の粒界析出が抑制されて、隣接ビードの熱影響による鋭敏化やプラント運転時の低温鋭敏化が抑制されて耐応力割れ性を改善することができる。
また、レーザ溶融ビードを重ねて均一な深さの溶融層を形成させるには、溶融ビード幅の30〜50%を重ねる必要があり、複雑な形状の表面を施工することを考えると溶融ビード幅は3mm以上、溶融深さは0.4mm以上が好ましい。また、組織が鋭敏化して発生した開口欠陥を溶融し消失あるいは封止するためには溶融池を亀裂に合わせて大きくする必要があり、やはり溶融ビード幅は3mm以上、溶融深さは0.4mm以上が好ましい。溶融ビード幅を3mm以上、溶融深さを0.4mm以上にするためには、レーザ光の照射入熱量を0.45kJ/cm以上にする必要がある。
請求項1記載の発明によれば、レーザ表面溶融改質後の低温鋭敏化条件の下での応力腐食割れを防止する事ができるので、288℃の高温高圧水に接する軽水炉プラントを長寿命化させるのに大きな効果がある。また、現在想定されている上記プラントの稼動期間中の応力腐食割れを一度の施工で長期間防止することができるので、施工コストを大きく低下させる効果がある。さらに薄膜を形成する等の工程が無くなり、1回のビード幅も広くできるので効率よく表面改質を行うことができる。
そして、安定化パラメータが4から12未満のインコネル材において、レーザ光の入熱量が0.45〜7kJ/cmの条件で表面溶融を行うことで、低温鋭敏化条件に耐え得る表面改質層が形成され、耐応力割れ性を改善することができる。
また、請求項記載の発明によれば、安定化パラメータが4〜12未満のインコネル材において、レーザ光の入熱量が7kJ/cm以下のレーザ光を応力腐食割れが発生している対象金属表面に照射し、溶融急冷凝固させる表面改質層では、割れを溶融により消失あるいは封止することができ、隣接ビードの熱影響による鋭敏化やプラント運転時の低温鋭敏化が起こらず耐応力割れ性に優れる補修を行うことができる。
以下に本発明の実施例を挙げ、図面を用いてさらに詳細に説明する。
図1は本発明の表面溶融条件を示す図である。図2は、本発明の実施例に係る高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法及び高ニッケル合金の組織が鋭敏化して発生した開口欠陥を溶融し、消失あるいは封止する補修方法の一実施例を示す図である。
インコネル600の母材1a、1bの間にすでに加工されている開先を被覆アーク溶接またはTIG溶接によりインコネル182あるいは82の溶接金属が形成されている。
図示していないレーザ発信器で発振されたYAGレーザ光を光ファイバ6によりレーザ加工ヘッド5に導光して、光ファイバ6端よりレーザ加工ヘッド5内部に出射する。出射したレーザ光9は、コリメートレンズ7と集光レンズ8により集光して被加工物の加工点近傍で焦点を結ぶようにして、被加工物の表面を溶融し溶融池を形成する。
レーザ加工ヘッド5を被加工物に対して移動させることにより、溶融池が移動して溶融ビード3が形成される。YAGレーザ発信器は、出力が1kWないし5kw程度の大出力のものを使用する。また、溶接部はアルゴンガスあるいは窒素ガス等のガスでシールドする。溶融ビード幅は、3mmないし10mm程度になり、溶融ビードは30%ないし50%程度重ねて溶融層を形成する。溶融深さはビードの重なり部が浅くなるが0.4mm以上になるようにする。
インコネル材の耐SCC性の評価として下記式(1)の安定化パラメータと称する指数が活用されている。
Figure 0004412533
従来から用いられている溶接金属インコネル182あるいはインコネル82においては、高炭素含有量のものがあるが、溶接性の点からNbが添加されており、上記安定化パラメータの値が4〜9になっている。
このような式(1)の安定化パラメータが12未満のものに対する、予防保全として耐応力腐食割れ性の改善を図る方法や、応力腐食割れが発生した場合の補修方法を確立しておくことは重要である。
式(1)の安定化パラメータが12以下の材料を使用して、レーザ照射エネルギーを変化させて表面溶融を行い、ニッケル基合金の改良ASTMG28試験、いわゆる硫酸・硫酸第2鉄腐食試験(粒界腐食試験)による耐応力腐食割れ性を評価した。
耐応力腐食割れ性の評価としては、被覆アーク溶接で得られた溶接金属(インコネル182)を溶接後の歪取り焼鈍を模擬した625℃、24時間の熱処理を行い、更に500℃、24時間の低温鋭敏化処理(LTS)を行った後に、機械加工して板材を製作し、照射エネルギーを変化させたレーザビームによって表面を改質した。試験片はそれぞれ軽水炉プラントの稼働期間である288℃、40年の低温鋭敏化条件を加速模擬した500℃、24時間の熱履歴を与え、沸騰硫酸−硫酸第二鉄溶液に24時間浸漬した後、50Rに曲げて割れの状況を観察した。試験結果を図1に示す。
試験に使用したインコネル182の式(1)の安定化パラメータは6.2であり、レーザ照射入熱量が0.45〜3.6kJ/cmで耐食性が良好であった。また、レーザ照射入熱量が0.45kJ/cm以下では、溶融ビードの重ね合わせに十分な均一な深さの溶融層が形成されなかった。
また、式(1)の安定化パラメータが1以下のインコネル600でレーザ光の入熱量が0.9kJ/cm(図1の「▲印」のレーザ溶融)で試験を行ったが耐食性を改善することはできなかった。
さらに、比較のために、安定化パラメータ6.2のインコネル182材を使用して、TIG溶接でレーザ光の入熱量が7.3kJ/cmの条件で表面溶融(図1の「▲印」のTIG溶接)を行って同様の試験を行ったが耐食性を改善することはできなかった。
以上より図1の斑点領域の条件、すなわち安定化パラメータが4から12未満のインコネル材において、レーザ照射入熱量が0.45〜7kJ/cmの条件で表面溶融を行えば、低温鋭敏化条件に耐え得る表面改質層が形成されることが判った。
式(1)の安定化パラメータが4から12未満のインコネル材において、レーザ光の入熱量が0.45〜7kJ/cm以下のレーザ光を対象金属表面に照射し溶融急冷凝固させる表面改質層では、Nb、Tiの炭化物NbC、TiCの析出が促進し、Cr炭化物の粒界析出が抑制されて、隣接ビードの熱影響による鋭敏化やプラント運転時の低温鋭敏化現象が抑制されて耐応力割れ性を改善することができる。
また、レーザ溶融ビードを重ねて均一な深さの溶融層を形成させるには、溶融ビード幅の30〜50%を重ねる必要があり、複雑な形状の表面を施工することを考えると溶融ビード幅は3mm以上、溶融深さは0.4mm以上が好ましい。溶融ビード幅を3mm以上、溶融深さを0.4mm以上にするためには、レーザ光の照射入熱量を0.45kJ/cm以上にする必要がある。
(その他の実施例)
本発明のその他の実施例を図3を用いて説明する。図3は、応力腐食割れ4を生じたインコネル材2にレーザ光を照射して表面溶融処理を行った断面模式図である。
インコネル材2の組織が鋭敏化して発生した開口欠陥を溶融し、消失あるいは封止するためには溶融ビード3をビード幅の30〜50%で重ねて施工する必要があり、また、溶融池を亀裂に合わせて大きくする必要がある。溶融ビード3の幅は3mm以上、溶融深さは0.4mm以上が好ましく、レーザ光の照射入熱量を0.45kJ/cm以上にする必要がある。
安定化パラメータが4〜12未満のインコネル材において、照射入熱量が7kJ/cm以下のレーザ光を応力腐食割れが発生している対象金属表面に照射し、溶融急冷凝固させる表面改質層では、割れ4を溶融により消失あるいは封止することができ、Nb、Tiの炭化物NbC、TiCの析出が促進し、Cr炭化物の粒界析出が抑制されて、隣接ビードの熱影響による鋭敏化やプラント運転時の低温鋭敏化が起こらず耐応力割れ性に優れる補修を行うことができる。
本発明のレーザ溶融処理方法は、腐食環境に接する式(1)の安定化パラメータが4〜12未満のインコネル材などの高インコネル合金溶接部の耐食性改善方法及び高ニッケル合金の組織が鋭敏化領域に変化したことにより発生する開口欠陥の補修方法に適し、高インコネル合金溶接部端部の耐SCC性改善方法として利用可能性がある。
本発明の表面溶融条件を示す図である。 本発明の実施例に係る高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法及び補修方法の一実施例を示す図である。 割れを生じたインコネル材にレーザ光を照射して表面溶融処理を行った断面模式図である。
符号の説明
1a 母材インコネル600 1b 母材インコネル600
2 溶接金属インコネル182 3 溶融ビード
4 応力腐食割れ 5 レーザ加工ヘッド
6 光ファイバ 7 コリメートレンズ
8 集光レンズ 9 レーザ光

Claims (2)

  1. 高ニッケル合金の表面にレーザ光を照射移動して前記表面改質をする応力腐食割れ改善方法において、
    下記式(1)で示される安定化パラメータの値が4以上12未満である高ニッケル合金の溶接金属部を対象として、前記レーザ光の入熱量が0.45kJ/cm以上、7kJ/cm以下で照射することにより、前記高ニッケル合金溶接金属の表面に溶融ビード幅が3mm以上、溶融深さが0.4mm以上である溶融層を形成することを特徴とする高ニッケル合金の応力腐食割れ改善方法。
    Figure 0004412533
  2. 高ニッケル合金の組織が鋭敏化領域に変化したことにより発生する開口欠陥に対してレーザ光を照射移動して前記開口欠陥の応力腐食割れを補修する方法において、
    下記式(1)で示される安定化パラメータの値が4以上12未満である高ニッケル合金の溶接金属部を対象として、前記レーザ光の入熱量が0.45kJ/cm以上、7kJ/cm以下で照射することにより、前記開口欠陥に溶融ビード幅3mm以上、溶融深さ0.4mm以上である溶融層を形成して封止することを特徴とする高ニッケル合金開口欠陥の応力腐食割れ補修方法。
    Figure 0004412533
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