JPH08104579A - 多孔質複合シートおよび多孔質炭素材の製造方法 - Google Patents

多孔質複合シートおよび多孔質炭素材の製造方法

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JPH08104579A
JPH08104579A JP6266229A JP26622994A JPH08104579A JP H08104579 A JPH08104579 A JP H08104579A JP 6266229 A JP6266229 A JP 6266229A JP 26622994 A JP26622994 A JP 26622994A JP H08104579 A JPH08104579 A JP H08104579A
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fiber
fibers
resin
sheet
carbon
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JP6266229A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Tajiri
博幸 田尻
Nobuhiro Iwasa
信弘 岩佐
Yoshiaki Iwaya
嘉昭 岩屋
Katsuyuki Toma
克行 當麻
Tetsuya Sawara
哲也 佐原
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Osaka Gas Co Ltd
Unitika Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 軽量であっても機械的強度が高く、均質性、
熱伝導性、ガス透過性などに優れる多孔質炭素材用の多
孔質複合シートを得る。 【構成】 炭素繊維化可能な繊維又は炭素繊維とフェノ
ール樹脂などの熱硬化性樹脂とを含み、繊維径又は繊維
含有量が異なる複数の抄紙体1a〜1cを作製する。繊
維径又は繊維含有量の順に厚み方向に複数の抄紙体1a
〜1cが積層された積層体をベルト2a,2b間で挾圧
し、樹脂の硬化を抑制しつつ加熱加圧成形し、成形シー
ト4を作製する。前記積層体に代えて、厚み方向に繊維
径又は繊維含有量が連続的又段階的に異なる抄紙体を用
いてもよい。成形シート4を、対向面が平滑面で構成さ
れた金型5a〜5c間にクリアランスを有するように配
置し、樹脂の溶融温度以上に加熱して膨脹・硬化させ、
多孔質複合シート6を得る。多孔質複合シートの炭化又
は黒鉛化により、平均気孔径が厚み方向に連続的又は段
階的に大きく、ガス透過性を有する多孔質炭素材を得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電極基板、電磁シール
ド材、導電性シート、炭素質クッション材、高温真空炉
壁断熱材などとして使用できる多孔質炭素材を得る上で
有用な多孔質複合シートの製造方法、および前記炭素材
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素材料は、耐熱性、耐蝕性、導電性や
機械的強度などに優れるため、電極材料、電磁シールド
材料などとして広く利用されている。炭素材料のうち、
フィルム又はシート状の炭素材、例えば、黒鉛シート
は、壁面などに貼合せることにより、耐熱性、耐蝕性、
電磁シールド性などを付与できる。
【0003】しかし、黒鉛シートは、天然リン状黒鉛を
酸処理及び熱処理し、結合剤と混合してシート又はフィ
ルム状に加圧成形して得られるので、非多孔質であると
共に、未だ、導電性、熱伝導性、機械的強度、緩衝性が
低く、その利用が大きく制限される。
【0004】一方、板状の炭素材は、炭化又は黒鉛化可
能な繊維及び/又は炭素繊維と、炭化又は黒鉛化可能な
粉粒状結合剤とを混合し、板状に加熱加圧成形し、炭化
又は黒鉛化処理することにより得ることもできる。例え
ば、特公平1−36670号公報には、燃料電池用電極
板の製造方法に関し、フェノール樹脂などの結合剤と、
炭素繊維と、粉粒状の熱可塑性樹脂とを乾式混合し、混
合物を熱ロールや熱プレスによりシート状に加圧成形
し、炭化又は黒鉛化処理する方法が開示されている。
【0005】しかし、この方法では、炭素繊維と、結合
剤及び熱可塑性樹脂とが、混合性の悪い繊維状と粉粒状
であるため、乾式混合により、炭素繊維と結合剤及び熱
可塑性樹脂とが偏析し易いだけでなく、加圧成形におい
て、偏析した結合剤及び熱可塑性樹脂が凝集し、成形物
がさらに不均質となる。さらに、炭化又は黒鉛化処理す
る際にも、偏析した熱可塑性樹脂が再び軟化する。その
ため、結合剤及び熱可塑性樹脂の偏析と、熱可塑性樹脂
の軟化とにより、炭素板の均質性が低下する。そして、
この不均質性に起因するためか、得られた炭素板は、導
電性、熱伝導率が小さいだけでなく、圧縮弾性率、曲げ
強度、圧縮強度およびガス透過性も炭素板の部位によっ
て変動する。また、結合剤及び熱可塑性樹脂の偏析に起
因して、炭素板の細孔径分布が不均一となる。特に厚み
の薄い炭素板を得る場合には、均質な細孔を形成させる
のが困難である。
【0006】特開平3−174359号公報には、炭素
繊維とバインダー粒子とを混合し、抄紙して得られたシ
ート状物を加圧成形した後、炭化又は黒鉛化する方法が
開示されている。しかし、この方法では、気孔率60〜
80%を確保するためには、加圧加熱成形時に低圧で成
形する必要がある。一方、低圧で成形すると繊維同士の
接合強度が低下し、焼成により得られる炭素材の曲げ強
度が1kgf/mm2以下、圧縮強度が0.4kgf/
mm2 以下に低下する。また、炭素板の厚み方向の体積
抵抗率も大きく、熱伝導率も小さい。
【0007】特開平3−76821号公報には、炭素繊
維製造用の有機繊維とパルプとバインダーとしての有機
高分子物質などを混合し、抄紙した得られたシートを成
形した後、焼成し、電極材を得る方法が開示されてい
る。しかし、焼成時における有機繊維の炭化収率(残炭
率)が10〜30%と小さい。そのため、得られた炭素
材は、成形体に比べて著しく収縮し、厚み1〜3mm、
大きさ1m角の電極板を製造しても、割れ、反り、捩れ
などが生じ、均一性に乏しい。また、厚み方向の収縮率
が大きいため、ガス透過性、体積抵抗率が電極材の部位
によって変動し、不均質となる。
【0008】また、これらの炭素材を軽量化するために
は、炭素材を多孔質化することが有用である。しかし、
軽量化すると、炭素材の機械的強度が大きく低下する。
【0009】なお、多孔質複合シートの製造に関し、特
公平4−55618号公報には、高い曲げ強度と曲げ剛
性を有する軽量樹脂シートとして有用な低密度繊維強化
可塑性複合体が開示されている。この複合体は、合成樹
脂と補強用繊維とを含む圧縮繊維強化複合体を加熱して
膨脹させることにより得られる。特公平5−17249
号公報には、ポリエステル繊維の不織布などの強化繊維
に特定のフェノール樹脂を含浸させ、乾燥した後、加圧
加熱してフェノール樹脂を硬化させることにより、連続
気孔を有し、機械的特性の大きな多孔性複合シートの製
造方法が開示されている。
【0010】しかし、これらの先行文献には、炭化又は
黒鉛化については何ら考慮されていない。また、これら
の複合体を炭化又は黒鉛化すると、炭化収率が小さいだ
けでなく、熱伝導性、導電性および機械的強度が小さ
く、炭素材としての特性が十分でない。
【0011】さらには、前記いずれの文献に記載の炭素
材や複合シートは、いずれも気孔径が全体に亘って均一
である。そのため、ガス透過性、電気的特性などを、炭
素材の内部構造により改善できず、炭素材の利用価値お
よび利用分野が制限される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、気孔径が厚み方向に変化し、ガス透過性、機械的、
電気的又は熱的特性を改善できる多孔質炭素材の製造方
法を提供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、軽量な多孔質材であ
るにも拘らず、機械的強度および熱的特性が高く、安定
した電気的特性を示す多孔質炭素材の製造方法を提供す
ることにある。
【0014】本発明のさらに他の目的は、一方の面から
他方の面の方向に平均気孔径が傾斜的に変化し、炭素材
の利用価値を高めることができる多孔質炭素材の製造方
法を提供することにある。
【0015】本発明の更に他の目的は、前記の如き優れ
た特性を有する多孔質炭素材を得る上で有用な多孔質複
合シートを効率よく製造できる方法を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、(1)抄紙構造を有す
る複数の抄紙体を、それぞれ繊維径が異なる繊維と熱硬
化性樹脂とで構成し、繊維径の大きさの順序に従って複
数の抄紙体を積層し、積層体の成形シートを、対向する
両面が平滑な金型にクリアランスを有するように配置し
て加熱すると、膨脹に伴なって、各抄紙体の繊維径に対
応して気孔が形成されるとともに、前記金型に対応する
平板状の多孔質シートが得られること、(2)この多孔
質シートを焼成すると、ガス透過性、電気伝導性、熱伝
導性に加えて、軽量であっても高い機械的強度を有し、
平均気孔径が厚み方向に変化した多孔質炭素材が得られ
ることを見いだし、本発明を完成した。
【0017】すなわち、多孔質炭素材を得る上で有用な
多孔質複合シートは、下記の抄紙体(1)又は積層体
(2)を、前記樹脂の硬化を抑制しつつシート状に加熱
加圧成形し、得られた成形シートを対向面が平滑面から
なる金型内にクリアランスを有するように配置し、前記
樹脂の溶融温度以上に加熱して膨脹させるとともに樹脂
を硬化させて成形する方法により製造できる。
【0018】抄紙体(1):炭素繊維化可能な繊維及び
/又は炭素繊維と、炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂
とを含む抄紙構造の抄紙体であって、厚み方向に前記繊
維の繊維径又は繊維含有量が連続的又段階的に異なる抄
紙体 積層体(2):炭素繊維化可能な繊維及び/又は炭素繊
維と、炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂とを含み、か
つ抄紙構造を有する複数の抄紙体で構成された積層体で
あって、前記繊維の繊維径又は繊維含有量が異なり、か
つ繊維径又は繊維含有量の順に厚み方向に積層された複
数の抄紙体で構成された積層体 このような方法において、一方の表層部を構成する繊維
に対して、他方の表層部を構成する繊維の平均繊維径
が、1.2〜10倍大きい抄紙体または積層体を加熱加
圧成形してもよい。例えば、一方の表層部を構成する繊
維の平均繊維径が1〜25μmであり、かつこの繊維径
に対して平均繊維径が1.5〜5倍大きい繊維を他方の
表層部に含む抄紙体または積層体を用いてもよい。他方
の表層部に含まれる繊維の平均繊維径は、10〜50μ
m程度であってもよい。さらに、積層体を用いる方法に
おいて、互いに隣接する抄紙体における平均繊維径は、
1.1〜5倍程度異なる場合が多い。前記抄紙体は、炭
素繊維化可能な繊維及び/又は炭素繊維、および炭化収
率40〜75重量%の熱硬化性樹脂で構成できる。
【0019】本発明の多孔質炭素材は、前記多孔質複合
シートを炭化または黒鉛化することにより製造できる。
【0020】このようにして得られた多孔質炭素材は、
一方の面から他方の面に向って、平均気孔径が連続的又
は段階的(すなわち、傾斜的)に増大しており、ガス透
過性を有する。多孔質炭素材において、一方の面の平均
気孔径に対する他方の面の平均気孔径の割合は、例え
ば、1.2〜10倍程度であり、一方の面の平均気孔径
は、例えば、容積基準で5〜35μm程度である。前記
多孔質炭素材のガス透過率は、例えば、500ml・m
m/cm2 ・hr・mmAq以上である。前記多孔質炭
素材は、単一の層、または平均気孔径の異なる複数の層
で構成された平板状の炭素材である場合が多い。
【0021】なお、本明細書において、炭化とは、炭素
化可能な成分を、例えば、450〜1500℃程度の温
度で焼成処理することを言う。黒鉛化とは、例えば、1
500〜3000℃程度の温度で焼成することを言い、
黒鉛の結晶構造を有していないときでも黒鉛化の概念に
含める。また、炭化収率とは、炭素化可能な成分を炭化
又は黒鉛化したときの残炭率を言う。
【0022】炭素繊維とは炭化又は黒鉛化された繊維を
言う。耐炎化処理とは、ピッチ系繊維以外の繊維を、例
えば、酸素存在下、200〜450℃程度の温度で加熱
して表面に耐熱層を形成し、焼成時の溶融を防止する処
理を言う。不融化処理とは、例えば、ピッチ系繊維を、
酸素存在下、200〜450℃程度の温度で加熱して表
面に耐熱層を形成し、焼成時の溶融を防止する処理を言
う。
【0023】以下、必要に応じて添付図面を参照しつ
つ、本発明をより詳細に説明する。
【0024】多孔質炭素材を得る上で有用な予備成形体
としての多孔質複合シートは、抄紙体又は複数の抄紙体
で構成された積層体を加熱加圧してシート状に成形する
加熱加圧工程(A)と、成形シートを一対の金型内にク
リアランスをもって配置して加熱し、膨脹させるととも
に樹脂を硬化させる膨脹硬化工程(B)とを経ることに
より製造できる。
【0025】前記抄紙体は、炭素繊維化可能な繊維及び
/又は炭素繊維と、炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂
とを含んでいる。前記炭素繊維化可能な繊維としては、
炭素繊維の素材となり得る種々の繊維、例えば、ポリア
クリロニトリル繊維、フェノール樹脂繊維、再生セルロ
ース繊維(例えばレーヨン、ポリノジック繊維など)、
セルロース系繊維などの有機繊維、ピッチ系繊維などが
挙げられる。炭素繊維化可能な繊維は、耐炎化処理又は
不融化処理されていてもよい。炭素繊維化可能な繊維
は、一種又は二種以上使用できる。
【0026】炭素繊維としては、前記炭素繊維化可能な
繊維を炭化又は黒鉛化した繊維が挙げられる。炭素繊維
も、一種又は二種以上使用できる。
【0027】なお、炭素繊維化可能な繊維の残炭率は、
例えば、10〜50%程度である。そのため、炭化又は
黒鉛化に伴なって、繊維は、補強材として機能する炭素
繊維となると共に、例えば30〜70%程度の体積収縮
に伴なって、炭化又は黒鉛化した熱硬化性樹脂のマトリ
ックス内に間隙が生成し、ガス透過性が向上する。
【0028】また、前記炭素繊維は、多孔質炭素材の曲
げ強度、圧縮強度を向上させる補強材として機能すると
共に、炭化又は黒鉛化処理に伴なって炭素材が面方向に
収縮するのを抑制する。
【0029】本発明の特色は、(1)前記抄紙体とし
て、厚み方向に前記繊維の繊維径又は繊維含有量が連続
的又段階的に異なる抄紙体を用いる点、および(2)積
層体が、前記繊維径又は繊維含有量の順に厚み方向に積
層された複数の抄紙体で構成されている点にある。
【0030】このような抄紙体および積層体において、
一方の表層部を構成する繊維径と、他方の表層部を構成
する繊維径との割合は、厚み方向に炭素材の平均気孔径
が連続的に又は段階的に増加又は減少する範囲であれば
よい。前記繊維径の割合は、例えば、一方の表層部を構
成する繊維に対して、他方の表層部を構成する繊維の平
均繊維径は、例えば、1.2〜10倍、好ましくは1.
2〜5倍、さらに好ましくは1.3〜3倍程度大きく、
1.5〜5倍程度大きい場合が多い。
【0031】また、前記両表層部における繊維の平均繊
維径は、繊維の種類に応じて前記範囲内で適当に選択で
き、例えば、一方の表層部を構成する繊維の平均繊維径
は、1〜25μm、好ましくは2〜20μm、さらに好
ましくは3〜15μm程度であり、1〜10μm程度で
ある場合が多い。また、他方の表層部を構成する繊維の
平均繊維径は、例えば、10〜50μm、好ましくは1
0〜40μm、さらに好ましくは12〜30μm程度で
あり、10〜40μm程度である場合が多い。双方の表
層部における平均繊維径が前記範囲を外れると、ガス透
過性が低下したり、炭素材の気孔径が大きくなり易い。
【0032】より具体的には、炭素繊維化可能な繊維を
単独で用いる場合、繊維径は、一方の表層部において、
例えば、25μm以下(例えば、2〜20μm程度)、
好ましくは20μm以下(例えば、3〜15μm程
度)、さらに好ましくは10μm以下(例えば、6〜9
μm程度)であり、他方の表層部において、例えば、5
0μm以下(例えば、10〜40μm程度)、好ましく
は12μm以上(例えば、12〜30μm程度)、さら
に好ましくは13μm〜40μm(例えば、13〜30
μm)程度である。
【0033】また、炭素繊維を単独で用いる場合、繊維
径は、一方の表層部において、例えば、15μm以下
(例えば、2〜15μm程度)、好ましくは10μm以
下(例えば、2〜10μm程度)、さらに好ましくは4
〜8μm程度であり、他方の表層部において、50μm
以下(例えば、10〜40μm程度)、好ましくは12
μm以上(例えば、12〜30μm程度)、さらに好ま
しくは13μm〜40μm(例えば、13〜25μm)
程度である。
【0034】複数の抄紙体で構成された積層体を用いる
場合、互いに隣接する2つの抄紙体における平均繊維径
は、炭素材のガス透過性や機械的強度などを損わない範
囲で選択でき、例えば、1.1〜5倍、好ましくは1.
1〜4倍、さらに好ましくは1.2〜3倍程度異なり、
1.3〜4倍程度異なる場合が多い。
【0035】平均繊維径Dの異なる複数の抄紙体1,
2,…nで構成された積層体では、炭素材における平均
気孔径を厚み方向に変化させるため、前記平均繊維径D
の大きさの順に抄紙体が積層される。その際、各抄紙体
1,2,…nに含まれる繊維の平均繊維径Dn が下記関
係式を満す積層体を用いるのが好ましい。
【0036】1≦D1 ≦25(μm)、好ましくは 3
≦D1 ≦15(μm) 10≦Dn ≦50(μm)、好ましくは10≦Dn ≦3
0(μm) D1 <D2 <…<Dn 前記積層体において、隣接する抄紙体における平均繊維
径は、通常、下記関係式を満す場合が多い。
【0037】D2 /D1 =1.1〜5、好ましくは1.
1〜4程度 Dn /Dn-1 =1.1〜5、好ましくは1.1〜4程度 平均繊維径Dの異なる繊維を含む抄紙体の数nは特に制
限されないが、通常、n=2〜50、好ましくは2〜2
5程度、さらに作業性の点で好ましくは2〜10(例え
ば、2〜5)程度である。このような積層体において、
隣接する各抄紙体の平均繊維径Dの相違の程度、および
平均繊維径Dの異なる前記抄紙体の数nを調整すること
により、炭素材において平均気孔径を厚み方向に連続的
又は段階的に変化させることができる。例えば、各抄紙
体の平均繊維径Dを漸増するとともに、平均繊維径Dの
異なる前記抄紙体の数nを増加させると、炭素材におい
て、平均気孔径を厚み方向に連続的に変化させることが
できる。
【0038】なお、積層体において、同じ平均繊維径D
の繊維を含む抄紙体は、少なくとも1つ用いてもよく、
複数用いてもよい。例えば、平均繊維径Dの異なる3種
類の抄紙体で構成された積層体(すなわちn=3の積層
体)は、平均繊維径D1 の繊維を含む少なくとも1つの
抄紙体P1 と、平均繊維径D2 の繊維を含む少なくとも
1つの抄紙体P2 と、平均繊維径D3 を有する繊維を含
む少なくとも1つの抄紙体P3 とを順次積層することに
より形成できる。その際、各抄紙体P1 〜P3は、それ
ぞれ複数用い、複数の第1の抄紙体P1 と、複数の第2
の抄紙体P2 と、複数の第3の抄紙体P3 とが順次積層
された積層体であってもよい。平均繊維径の異なる3種
類の抄紙体P1 〜P3 を用いる場合、積層体の一方の表
層部を構成する繊維の平均繊維径D1 は1〜10μm程
度、他方の表層部を構成する繊維の平均繊維径D3 は1
0〜40μm程度である場合が多い。
【0039】炭素繊維化可能な繊維および炭素繊維とし
ては、通常、短繊維が用いられる。短繊維の繊維長は、
例えば0.05mm〜10mm、好ましくは0.5mm
〜5mm程度である。炭素繊維の繊維長は、炭素材の曲
げ強度、電気伝導性や熱伝導度に大きく寄与する。繊維
長が10mmを越えると細孔径分布をコントロールしに
くくなり、0.05mm未満では強度などが低下し易
い。
【0040】炭素繊維化可能な繊維と炭素繊維とは単独
で用いてもよいが、少なくとも炭素繊維を含むのが好ま
しい。また、炭素繊維化可能な繊維と炭素繊維とを併用
すると、ガス透過性および強度が向上する。炭素繊維化
可能な繊維と炭素繊維との割合は、炭素材の強度や導電
性などに応じて選択でき、例えば、炭素繊維化可能な繊
維/炭素繊維比は10〜90/90〜10(重量%)、
好ましくは25〜75/75〜25(重量%)、さらに
好ましくは30〜70/70〜30(重量%)程度であ
る。炭素繊維の割合が10重量%未満では、圧縮弾性率
などの炭素材の機械的強度が低下すると共に、収縮が大
きくなる傾向を示し、90重量%を越えると、ガス透過
性が低下し易い。
【0041】炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂として
は、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラー
ル又はフラン樹脂変性フェノール樹脂、コプナ樹脂など
が挙げられる。フェノール樹脂には、フェノール類とア
ルデヒド類との反応により得られる熱硬化性フェノール
樹脂、フェノール類とアルデヒド類と含窒素化合物との
反応により得られる熱硬化性含窒素フェノール樹脂など
が含まれる。これらの熱硬化性樹脂のうち、特にフェノ
ール樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、粉粒状
や水分散液として使用する場合が多く、少なくとも一種
使用できる。
【0042】熱硬化性樹脂の炭化収率は、炭素材の機械
的強度の低下を防止し、気孔率を調整するため、40〜
75重量%、好ましくは50〜75重量%程度である。
なお、前記フェノール樹脂の炭化収率は、通常65〜7
5重量%程度と大きい。
【0043】熱硬化性樹脂の割合は、炭素材の強度など
に応じて適当に選択でき、例えば、前記炭素繊維化可能
な繊維および炭素繊維で構成された繊維100重量部に
対して、20〜250重量部、好ましくは25〜200
重量部程度である。熱硬化性樹脂の割合が20重量部未
満であると、炭素材の機械的強度が低下し易く、250
重量部を越えるとガス透過性が低下し易い。
【0044】なお、繊維に対する熱硬化性樹脂の割合を
変化させることによっても、炭素材の平均気孔径を調整
できる。そのため、繊維に対する熱硬化性樹脂の割合が
異なる複数の抄紙体を、樹脂の含有量の順序に積層した
積層体を用いることにより、平均気孔径が連続的又は段
階的に変化した炭素材を得ることができる。また、樹脂
含有量の異なる複数の抄紙体を用いて積層体を構成する
場合、平均繊維径Dを一定とし、樹脂含有量の異なる抄
紙体を積層してもよく、平均繊維径とともに樹脂含有量
の異なる複数の抄紙体を積層してもよい。
【0045】例えば、積層体の一方の表層部を、平均繊
維径の小さな繊維と、この繊維に対する割合が大きな熱
硬化性樹脂との抄紙体で構成し、他方の表層部を、上記
とは逆に、前記繊維よりも平均繊維径の大きな繊維と、
この繊維に対する割合が、上記表層部よりも小さな熱硬
化性樹脂との抄紙体で構成してもよい。このような積層
体を用いると、多孔質炭素材の前記一方の表層部の平均
気孔径が小さく、前記他方の表層部の平均気孔径が大き
な多孔質炭素材を形成できる。
【0046】前記抄紙体は、湿式複合化された抄紙構造
を有する。抄紙構造とは、洋紙や和紙の如く、繊維がラ
ンダムに配向している構造を意味する。このような抄紙
体は、慣用の方法、例えば、抄紙法、吸引成形法、手す
きなどにより得ることができる。
【0047】なお、スラリーの調製に際しては、炭素繊
維化可能な繊維及び/又は炭素繊維を叩解し、前記短繊
維としてもよい。スラリーの固形分濃度は、抄紙性を損
わない範囲で選択でき、例えば、0.1〜2重量%程度
である。また、スラリーには、前記繊維、熱硬化性樹脂
などを均一に分散させるため、分散剤、安定剤、粘度調
整剤、沈降防止剤などを添加してもよく、増粘剤、紙力
増強剤、凝集作用を有する界面活性剤、特に高分子凝集
剤や歩留り向上剤などの種々の添加剤を添加してもよ
い。抄紙した湿潤状態の抄紙体は、常圧又は減圧下、熱
硬化性樹脂の硬化温度よりも低い温度、例えば、50〜
130℃程度の温度で加熱乾燥することができる。
【0048】前記のような抄紙法によると、従来の乾式
混合法では均一に混合することが困難な繊維状物質と粉
粒状物質などを用いても、偏析のない均質な抄紙体が得
られる。また、繁雑な乾式混合の工程が不要であるた
め、前記抄紙体を簡易に製造できる。例えば、平均繊維
径及び/又は樹脂含有量が連続的又は段階的に異なる抄
紙体は、スラリーの組成とその割合、および抄紙量を調
整しつつ順次抄紙することにより調製できる。また、平
均繊維径及び/又は樹脂含有量が連続的又は段階的に変
化した積層体を形成するための抄紙体も、平均繊維径及
び/又は樹脂含有量の異なるスラリーを用いることによ
り容易に製造できる。
【0049】また、抄紙体を圧縮成形しても、成形体の
均質性は維持される。また、抄紙体を圧縮成形する場合
には、厚みが1mm未満であっても組成、密度及び厚み
が均質な成形体が得られる。
【0050】特に、前記熱硬化性樹脂を含むので、抄紙
体はプリプレグとして機能する。このプリプレグとして
の抄紙体は、ロール状に巻き取り、加熱加圧成形工程に
連続的に供してもよい。
【0051】図1は本発明の多孔質複合シートの製造方
法を示す工程図である。
【0052】前記加熱加圧工程(A)では、抄紙により
湿式複合化された複数のシート状抄紙体1を積層し、前
記熱硬化性樹脂の硬化を抑制しつつシート状に加熱加圧
成形する。この例では、積層シートの一方の表層を構成
する平均繊維径D1 の繊維を含む第1の抄紙体1aと、
中間層を構成する平均繊維径D2 の繊維を含む第2の抄
紙体1bと、他方の表層を構成する平均繊維径D3 の繊
維を含む第3の抄紙体1cとを積層しつつ加熱加圧成形
している。その際、各抄紙体1a〜1cにおける平均繊
維径D1 〜D3 は、D1 >D2 >D3 の関係を充足す
る。
【0053】さらにこの例では、複数の前記抄紙体1を
繰出し、上流側の加熱ゾーンと下流側の冷却ゾーンとを
有する一対のエンドレスベルト2a、2b間に供給して
挾圧し、前記樹脂の硬化を抑制しつつシート状に連続的
に加熱加圧成形し、未硬化の熱硬化性樹脂を含む成形シ
ート4を作製している。この成形シート4は、高密度プ
リプレグシートを構成する。なお、エンドレスベルトに
おいては、少なくとも1つの抄紙体1を挾圧すればよ
い。
【0054】各エンドレスベルト2a、2b内の対向面
側には、対向するエンドレスベルト2a、2b間の距離
を保つため、複数のローラ3a、3bが回転可能に配設
されているとともに、上流側には加熱手段としてのヒー
ターが配設され、下流側には冷却手段としてのファンが
配設されている。
【0055】なお、抄紙体1の進行方向に行くに従っ
て、対向する複数のローラ間の距離は順次小さくしても
よい。このようにすると、一対のエンドレスベルト2
a、2b間で抄紙体1を挾圧しながら搬送することによ
り、前記抄紙体1を連続的かつ効率よく加圧でき、均一
な高密度プリプレグを調製できる。
【0056】前記加熱ゾーンの温度は、熱硬化性樹脂の
硬化を抑制し、かつ溶融可能な温度、例えば、100〜
150℃、好ましくは110〜140℃程度に設定でき
る。また、ベルト2a、2bによる加圧力は、高密度プ
リプレグの密度に応じて、プリプレグの均一性などを損
わない範囲で選択でき、例えば、3〜30kg/c
2 、好ましくは5〜20kg/cm2 程度である。な
お、ベルト2a、2bによる搬送速度は、成形効率や生
産効率を考慮して適当に選択できる。
【0057】このような方法で抄紙体1を加熱加圧成形
すると、従来のように粉粒状の混合物を金型内に均一に
装填することなく、熱硬化性樹脂の硬化を抑制しつつ、
高密度、例えば、0.6〜1.5g/cm3 、好ましく
は0.7〜1.4g/cm3程度のシート状プリプレグ
を連続的に製造できる。得られた成形シート4の空隙率
は、例えば、0〜40%程度である。
【0058】なお、加熱加圧工程(A)では、前記一対
のエンドレスベルトに限らず、一対の平板状成形型など
により、熱硬化性樹脂の硬化を抑制しつつ、抄紙体をシ
ート状に加熱加圧成形し高密度化してもよい。
【0059】得られた成形シート4は、熱硬化性樹脂が
未硬化であるため、熱硬化性樹脂の溶融温度よりも高い
温度で加熱すると、熱硬化性樹脂の溶融に伴なって、内
部応力の解放により膨脹(ロフト)する性質を有してい
る。
【0060】本発明では、このような膨脹力を有効に利
用して多孔質複合シートを得るため、成形シート4を膨
脹硬化工程(B)に供する。すなわち、成形シート4
を、対向面が平滑面で構成された複数対の板状成形型内
に、それぞれクリアランスをもって配置し、前記熱硬化
性樹脂の溶融温度以上に加熱している。この膨脹硬化工
程において、成形シートを形成する各抄紙体の境界域が
消失し、気孔径を連続的に変化させることができるとと
もに、略均一な嵩密度の多孔質複合シートを生成させる
ことができる。
【0061】図示する例では、複数対の板状成形型は、
両面に成形面としての平坦面を有し、互いに所定間隔を
隔てて固定された第1〜第3の平板状成形型5a、5
b、5cで構成されている。また、前記各成形型5a、
5b、5c間には、それぞれ、成形シート4が所定のク
リアランスを有するように配設されている。そのため、
複数の成形シート4を成形型5a、5b、5c間に介在
させた積層状態で膨脹・硬化させることができる。
【0062】なお、膨脹硬化工程(B)において、複数
の成形型を用いる必要はなく、少なくとも一対の成形型
を構成する金型を用いればよい。成形型は、対向する面
に平滑面を有する限り、板状である必要はなく、多孔質
炭素材の用途によっては、湾曲面を構成してもよい。平
板状の多孔質炭素材を得る場合には、通常、成形型の対
向する面を平面で構成する場合が多い。
【0063】なお、溝又はリブが形成された炭素板を形
成する場合、前記成形型として、一方の面に溝又は突条
が形成された平板状成形型を用い、成形型に対して所定
のクリアランスを有するように成形シートを配設して膨
脹・硬化させてもよい。
【0064】このような膨脹硬化工程(B)では、主に
厚み方向への膨脹(ロフト)に伴なって、前記抄紙体1
a〜1cの平均繊維径D1 〜D3 に応じて成形シート4
が多孔質化すると共に、成形型面に成形シート4が密着
し、成形型5a、5b、5cの平滑面に対応して表面が
平滑な多孔質複合シート6が得られる。また、熱硬化性
樹脂の硬化に伴なって、一体化した複数の多孔質複合シ
ート6が得られる。
【0065】加熱温度は、熱硬化性樹脂の溶融温度およ
び硬化温度に応じて適当に選択できるが、通常、150
〜250℃、好ましくは160〜200℃程度である。
加熱による成形シート4の膨脹倍率は、例えば1.2〜
5倍、好ましくは1.5〜3倍程度である。成形型5
a、5b、5cと成形シート4とのクリアランスは、成
形シートの膨脹度に応じて選択できるが、例えば、成形
シート4の厚みの0.1〜4倍、好ましくは0.3〜
2.5倍程度である。
【0066】熱硬化性樹脂を硬化させた後、冷却し、成
形型で構成された金型から取出すことにより、多孔質複
合シート6が得られる。
【0067】多孔質複合シート6は、軽量で圧縮弾性率
などの機械的強度が大きく、熱伝導率、ガス透過率の大
きな板状の多孔質炭素材を製造する上で有用である。前
記多孔質炭素材は、前記多孔質複合シートを炭化又は黒
鉛化する焼成工程に供することにより製造できる。
【0068】焼成温度は、800℃以上、好ましくは1
000〜3000℃程度であり、2000〜3000℃
程度で焼成する場合が多い。焼成は、真空下または不活
性ガス雰囲気中で行われる。不活性ガスとしては、窒
素、ヘリウム、アルゴンなどが使用できる。
【0069】このような方法では、熱硬化性樹脂が硬化
した前記多孔質複合シートを炭化又は黒鉛化するので、
厚みが1mm未満であっても、圧縮弾性率などの機械的
強度が大きく、優れたガス透過性、導電性および熱伝導
性を有する多孔質炭素材を製造できる。また、膨脹硬化
させているので、気孔径が一方の面から他方の面に連続
的又は段階的に変化した炭素材が生成し、しかも各抄紙
体などに対応する部位の嵩密度の比が1.2倍以内の均
一な炭素材を生成させることができる。さらにまた、生
成した炭素材は、炭素繊維により補強された均質な構造
を有し、多孔質で嵩密度が小さくても機械的特性が高
い。しかも、炭素繊維により炭素材の面方向及び厚み方
向に収縮するのを抑制できる。
【0070】前記のような方法で得られた多孔質炭素材
は、互いに対向する面を有しており、一方の面から他方
の面に向って、平均気孔径が連続的又は段階的に大きい
という特色がある。すなわち、傾斜した平均気孔径を有
するガス透過性傾斜機能炭素材である。前記多孔質炭素
材は、平板状又はシート状である場合が多く、以下のよ
うな特性を有している。
【0071】(1)一方の面の平均気孔径に対する他方
の面の平均気孔径の割合:1.2〜10倍、好ましくは
1.3〜7倍、さらに好ましくは1.5〜5倍程度であ
り、1.5〜5倍程度である場合が多い。
【0072】(2)一方の面の容積基準平均気孔径(μ
m):5〜35μm、好ましくは7〜35μm、さらに
好ましくは10〜30μm程度であり、10〜35μm
程度である場合が多い。
【0073】(3)他方の面の容積基準平均気孔径(μ
m):25〜60μm、好ましくは30〜50μm、さ
らに好ましくは35〜45μm程度であり、30〜45
μm程度である場合が多い。
【0074】(4)ガス透過率(ml・mm/cm2
hr・mmAq):500以上、好ましくは700〜2
500、さらに好ましくは800〜2000程度であ
り、800以上(例えば、800〜2500程度)であ
る場合が多い。
【0075】多孔質炭素材は、一方の面の平均気孔径が
容積基準で5〜35μmであり、他方の面の平均気孔径
が容積基準で25〜60μmであるのが好ましい。ま
た、多孔質炭素材は、平板状の炭素材であって、一方の
面の平均気孔径が容積基準で7〜35μmであり、他方
の面の平均気孔径が容積基準で30〜50μmであり、
前記一方の面から他方の面へ平均気孔径が連続的又は段
階的に変化しているとともに、ガス透過率が700〜2
500ml・mm/cm2 ・hr・mmAq程度である
場合が多い。さらに、多孔質炭素材は、平均気孔径の異
なる複数の層で構成された平板状の炭素材であって、炭
素材の一方の面の平均気孔径が10〜35μmであり、
他方の面の平均気孔径が30〜50μmであり、前記一
方の面の平均気孔径に対する他方の面の平均気孔径の割
合が1.2〜5倍程度であってもよい。
【0076】前記平均気孔径は、一方の面から他方の面
に向って、連続的又は段階的に増加していればよい。例
えば、多孔質炭素材は、平均気孔径が互いに異なる複数
の層で構成され、隣接する層の平均気孔径が略連続的又
は段階的に増加又は減少していてもよい。なお、炭素材
において、厚み1mm当りの平均気孔径の勾配(増加又
は減少割合)は、例えば、1〜30μm、好ましくは2
〜20μm、さらに好ましくは3〜15μm程度であ
る。
【0077】また、多孔質炭素材は、次のような特性を
有する場合が多い。
【0078】熱伝導率(kcal/m・hr・℃):
2.0以上、好ましくは3〜10程度、さらに好ましく
は4〜10程度 電気抵抗(厚み方向)(mΩ・cm):40以下、好
ましくは5〜35程度、さらに好ましくは10〜30程
度 かさ密度(g/cm3 ):0.4〜0.85、好まし
くは0.45〜0.8程度、さらに好ましくは0.5〜
0.75程度 曲げ強度(kg/cm2 ):130以上、好ましくは
140〜500程度、さらに好ましくは150〜400
程度、 圧縮強度(kg/cm2 ):40以上、好ましくは5
0〜200(例えば、60〜150)程度 300mA/cm2 の通電による1000時間当りの
電圧降下(mA/1000hr):5以下、好ましくは
0.5〜5程度、さらに好ましくは0.7〜3.5程度 なお、得られた多孔質炭素材は、燃料電池を含めて種々
の電極基板に限らず、電磁シールド材、導電性シート、
炭素質クッション材、高温真空炉用炉壁断熱材などの広
い用途に利用できる。なお、多孔質炭素材をリン酸型燃
料電池の電極基板として利用すると、炭素材に含浸され
たリン酸が、触媒層が形成された小さな気孔径側に連続
的に円滑に移動するので、安定に補給されるリン酸によ
り高い出力電圧を長時間維持できる。
【0079】
【発明の効果】本発明の製造方法では、抄紙体や積層体
の加熱加圧成形により形成された成形シートを金型内で
加熱して膨脹・硬化させるだけで、下記の如き多孔質炭
素材を得る上で有用な多孔質複合シートを製造できる。
また、本発明の製造方法では、前記多孔質複合シートを
焼成するので、優れた特性を有する多孔質炭素材を生産
性よく製造できる。
【0080】このようにして得られた多孔質炭素材は、
一方の面から他方の面の方向へ平均気孔径が傾斜的に変
化しているので、ガス透過性、機械的、電気的又は熱的
特性を改善できる。また、軽量な多孔質材であるにも拘
らず、機械的強度および熱的特性が高く、安定した電気
的特性を発現させることができる。さらに、平均気孔径
の傾斜的な変化により、炭素材の利用価値を高めること
ができる。
【0081】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。
【0082】実施例1〜9 平均繊維径の小さな繊維および熱硬化性樹脂を含む抄紙
体(厚み8mm、嵩密度0.05g/cm3 )3層で一
方の表層部を構成し、平均繊維径の大きな繊維および熱
硬化性樹脂を含む抄紙体3層で他方の表層部を構成した
積層体(かさ密度0.05g/cm3 )を140℃で加
熱しながら加圧し、フェノール樹脂を溶融させて、厚み
1mmおよびかさ密度1.2g/cm3 の成形シートを
得た。なお、各抄紙体は、表1に示す成分を含むスラリ
ーを用い抄紙法により調製した。抄紙体の製造に用いた
材料は次の通りである。
【0083】炭素繊維:ピッチ系炭素繊維[(株)ドナ
ック製、ドナカーボS−231、繊維径13μm×繊維
長3mm] 炭素繊維:ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維
[東レ(株)、トレカ、繊維径7μm×繊維長3mm] 炭素繊維化可能な繊維:レーヨン繊維[大和紡績(株)
製、1.5デニール又は15デニール×繊維長3mm] 炭素繊維化可能な繊維:アクリル繊維[東邦レーヨン
(株)製、パイロメックス、繊維径9μm又は12μ
m] 熱硬化性樹脂:フェノール樹脂[鐘紡(株)製、ベルパ
ールS−895] そして、成形シートを、両面に平坦面を有する2つの平
板状成形型で構成された金型内にクリアランス1.8m
mで配置し、170℃で30分間加熱膨脹させると共に
硬化させ、多孔質シートを得た。多孔質シートを、不活
性ガス雰囲気下、2400℃で黒鉛化処理したところ、
反りや歪のない多孔質の黒鉛化炭素板が得られた。
【0084】実施例10 一方の表層部を構成し、かつ平均繊維径の小さな繊維お
よび熱硬化性樹脂を含む抄紙体3層と、中間層を構成
し、かつ平均繊維径が中間径である繊維および熱硬化性
樹脂を含む抄紙体3層と、他方の表層部を構成し、かつ
平均繊維径の大きな繊維および熱硬化性樹脂を含む抄紙
体3層とを順次積層した積層体(かさ密度0.05g/
cm3 )を140℃で加熱しながら加圧し、フェノール
樹脂を溶融させて、厚み1.5mmおよびかさ密度1.
2g/cm3 の成形シートを得た。なお、各抄紙体は、
表2に示す成分を含むスラリーを用い、抄紙法により調
製した。そして、前記成形シートを用い、実施例1と同
様にして、多孔質の黒鉛化炭素板を得た。
【0085】得られた多孔質の黒鉛化炭素板の厚み方向
の特性を表1及び表2に示す。表に示されるように、炭
素板の熱伝導率は3.1〜8.2kcal/m・hr・
℃、厚み方向の電気抵抗率は20〜30mΩ・cmであ
った。
【0086】また、電極性能を調べるため、図2に示す
小型セル(150mm×150mm)を作製し、300
mA/cm2 の一定電流密度での電圧降下を測定したと
ころ、1000時間当りの電圧降下は1.0〜3.0m
Vであった。
【0087】なお、図2に示すセルは、電解液としてリ
ン酸を含浸した電解質層11と、この電解質層の両面に
配設された触媒担持の支持層12a,12bと、これら
の支持層にそれぞれ積層され、ガス流路13a,14b
を有する正極13および負極14と、前記正極13およ
び負極14の外面側に配設されたセパレータ15とで構
成されている。前記正極13および負極14は、ガス流
路13a,14aが互いに交差する方向に伸びたリブ付
き多孔質黒鉛化炭素板(電極基材)で構成されている。
また、前記正極13と負極14との間には、電子負荷装
置16が設けられている。
【0088】さらに、ガス透過率は950〜1600m
l・mm/cm2 ・hr・mmAqであり、電極基材と
しての要求性能を満足するととともに、一方の面と他方
の面の嵩密度の比は、1.0〜1.19であり、一方の
面の平均気孔径と他方の面の平均気孔径は表に示す通り
であった。
【0089】比較例1〜5 平均繊維径を変化させることなく、表2に示す1種類の
抄紙体(かさ密度0.05g/cm3 )を6層に重ね、
170℃で1時間加熱加圧して、フェノール樹脂を硬化
させ、得られた平板状シートを、不活性ガス雰囲気下、
2400℃で黒鉛化処理し、黒鉛化炭素板を得た。そし
て、得られた炭素板の特性を測定したところ、表2に示
す結果を得た。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】 実施例を比較例との対比から明らかなように、実施例の
炭素板は、比較例の炭素板に比べて、ガス透過性、機械
的強度、熱的特性および電気的特性に優れている。ま
た、実施例で得られた炭素板は、比較例の炭素板に比べ
て、3000時間運転において、1000時間当たりの
電圧降下が少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の多孔質複合シートの製造方法を
示す工程図である。
【図2】図2は実施例において電圧降下の測定に用いた
セルの構造を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c…抄紙体 2a,2b…エンドレスベルト 3a,3b…ローラー 4…成形シート 5a,5b,5c…金型 6…多孔質複合シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C04B 35/83 (72)発明者 岩屋 嘉昭 京都府宇治市宇治小桜23 ユニチカ株式会 社中央研究所内 (72)発明者 當麻 克行 京都府宇治市宇治小桜23 ユニチカ株式会 社中央研究所内 (72)発明者 佐原 哲也 京都府宇治市宇治小桜23 ユニチカ株式会 社中央研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素繊維化可能な繊維及び/又は炭素繊
    維と、炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂とを含む抄紙
    構造の抄紙体を、前記樹脂の硬化を抑制しつつシート状
    に加熱加圧成形し、得られた成形シートを対向面が平滑
    面からなる金型内にクリアランスを有するように配置
    し、前記樹脂の溶融温度以上に加熱して膨脹させるとと
    もに樹脂を硬化させて成形する方法であって、厚み方向
    に前記繊維の繊維径又は繊維含有量が連続的又段階的に
    異なる抄紙体を用いる多孔質複合シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 炭素繊維化可能な繊維及び/又は炭素繊
    維と、炭化又は黒鉛化可能な熱硬化性樹脂とを含み、か
    つ抄紙構造を有する複数の抄紙体で構成された積層体
    を、前記樹脂の硬化を抑制しつつシート状に加熱加圧成
    形し、得られた成形シートを対向面が平滑面からなる金
    型内にクリアランスを有するように配置し、前記樹脂の
    溶融温度以上に加熱して膨脹させるとともに樹脂を硬化
    させて成形する方法であって、前記積層体が、前記繊維
    の繊維径又は繊維含有量が異なり、かつ繊維径又は繊維
    含有量の順に厚み方向に積層された複数の抄紙体で構成
    されている多孔質複合シートの製造方法。
  3. 【請求項3】 一方の表層部を構成する繊維に対して、
    他方の表層部を構成する繊維の平均繊維径が、1.2〜
    10倍大きい抄紙体または積層体を加熱加圧成形する請
    求項1又は2記載の多孔質複合シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 炭素繊維化可能な繊維及び/又は炭素繊
    維の平均繊維径Dの異なる複数の抄紙体1,2,…n
    が、前記平均繊維径Dの大きさの順に積層された積層体
    であって、各抄紙体1,2,…nに含まれる繊維の平均
    繊維径Dn が下記関係式を満す積層体を用いる請求項2
    記載の多孔質複合シートの製造方法。 1≦D1 ≦25(μm) 10≦Dn ≦50(μm) D1 <D2 <…<Dn
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載の多孔質複合シート
    を炭化または黒鉛化する多孔質炭素材の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008123729A (ja) * 2006-11-09 2008-05-29 Fuji Electric Holdings Co Ltd リン酸型燃料電池

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