JPH08102558A - 超伝導トランジスタおよびその製造方法 - Google Patents

超伝導トランジスタおよびその製造方法

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JPH08102558A
JPH08102558A JP6236848A JP23684894A JPH08102558A JP H08102558 A JPH08102558 A JP H08102558A JP 6236848 A JP6236848 A JP 6236848A JP 23684894 A JP23684894 A JP 23684894A JP H08102558 A JPH08102558 A JP H08102558A
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insulating film
superconducting
superconducting thin
bridge
thin films
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JP6236848A
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Masahiro Ueda
雅弘 上田
Megumi Shinada
恵 品田
Shinji Nagamachi
信治 長町
Mitsuyoshi Yoshii
光良 吉井
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Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 超伝導体のコヒーレンス長よりも短い理想的
なブリッジ長を持つ弱結合ブリッジを容易に得ることの
できる構造を持つ高性能の超伝導トランジスタと、その
ような超伝導トランジスタを良好な生産性のもとに、均
一な特性のもとに製造することのできる方法を提供す
る。 【構成】 2つの超伝導薄膜1,2を、金属超伝導体の
酸化物または窒化物、もしくは超伝導薄膜1,2に対し
近接効果を有する物質の酸化物または窒化物からなる絶
縁膜3を介して積層し、その絶縁膜3に、局所的な酸素
または窒素の低濃度領域4・・4を複数箇所において形成
し、その各領域4・・4に近接して、これらと磁気的に結
合された制御電流経路5を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速電子回路や超伝導
コンピュータ等に使用される超伝導トランジスタとその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2つの超伝導薄膜を複数の弱結合ブリッ
ジによって接合するとともに、その各弱結合ブリッジに
流れる電流を、各弱結合ブリッジに近接配置されて磁気
的にこれらと結合された電流経路に制御電流を流すこと
によって変調し、2つの超伝導薄膜間の電圧とこれらの
間にに流れる電流との関係を、半導体を用いた通常のト
ランジスタのコレクタ電圧とコレクタ電流との関係に近
似したものとした、いわゆる超伝導磁束フロートランジ
スタが知られている(D. S. Ginley et al., "Su-perco
nducting Flux Flow Digital Circuits" IEEE Transact
ion on ElectronDevice, Vol. 40 No. 3, March 199
3)。
【0003】このような超伝導磁束フロートランジスタ
には、従来、TlCaBaCuO やYBaCuOなどの酸化物高温超伝
導体が使われており、その構造は、図7に示すように、
基板70上に隣接して形成された2つの超伝導薄膜7
1,72を、同じく基板70上に形成された複数の弱結
合ブリッジ73・・73によって弱結合するとともに、そ
の各弱結合ブリッジ73・・73に対して磁気的に結合さ
れるよう、これらに隣接して制御電流が流されるコント
ロール線54を形成した構造を採っている(上記文
献)。
【0004】このような構成において、外部から超伝導
薄膜71,72を介して各ブリッジ73・・73に電流を
流すことによりブリッジ73・・73に沿って電圧を発生
させた状態で、コントロール線74に流れる制御電流に
よって発生する磁界をブリッジ73・・73が発生する磁
界と結合させ、その制御電流が発生する磁界でブリッジ
73・・73の臨界電流と∂I/∂Vを変調させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、以上のよう
な高温超伝導体を用いた超伝導磁束フロートランジスタ
においては、まず、実際には、電気的に良質で化学的に
安定な薄膜の成膜方法が確立できていないため、実用的
な電子デバイスの作成は困難である。また、同様な理由
により、半導体デバイスやニオブ系超伝導デバイスと違
い、リソグラフィ技術による微細加工に種々の制約があ
り、製造が極めて困難である。更に、高温超伝導体に接
触してその性能を損なわせない適当な絶縁膜が未だ見つ
かっていないので、図7に例示したような単層構造のデ
バイスしか作成できない、等の問題があり、結局、高温
超伝導体を用いた超伝導磁束フロートランジスタは、現
時点において事実上、実用に供することはできないと考
えられる。
【0006】そこで、図7の構造をニオブ等の金属超伝
導体によって形成することにより、上記した各問題点の
うちの幾つかは解決できるが、金属超伝導体で図7の構
造を得る場合には、次のような問題がある。
【0007】すなわち、弱結合ブリッジの長さは、超伝
導体のコヒーレンス長よりも短いことが理想とされてい
る。例えばニオブのコヒーレンス長は、0Kで約400
Åであり、ニオブ系超伝導デバイスの通常の動作温度で
ある4.2Kではこれよりも短くなる。従って、サブミ
クロン程度の精度が限界と言われているフォトリソグラ
フィ技術によるパターニングでは、このような短い弱結
合ブリッジを平面的に形成することは不可能であり、結
局、図7の構造をニオブ系等の金属超伝導体によって形
成しても、良質な超伝導トランジスタはできない。
【0008】本発明はこのような実情に鑑みてなされた
もので、超伝導体のコヒーレンス長よりも短いブリッジ
長を持つ理想的な弱結合ブリッジを容易に得ることがで
きる構造を持つ高性能の超伝導トランジスタと、そのよ
うな超伝導トランジスタを良好な生産性で、かつ、均一
な特性のもとに製造することのできる方法の提供を目的
としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の超伝導トランジスタは、実施例図面である
図1〜図3に示すように、2つの超伝導薄膜1および2
が、金属超伝導体の酸化物または窒化物、もしくは、上
記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する物質の酸化物
または窒化物からなる絶縁膜3を介して積層され、か
つ、その絶縁膜3には、局所的な酸素または窒素の低濃
度領域4・・4が複数箇所において形成され、その複数の
酸素または窒素の低濃度領域4・・4のそれぞれが、2つ
の超伝導薄膜1,2を相互に弱結合する弱結合ブリッジ
を形成しているとともに、その各弱結合ブリッジ4・・4
の近傍に、これらと磁気的に結合してその各弱結合ブリ
ッジ4・・4を流れる電流を変調する制御電流経路5が配
設されていることによって特徴づけられる。
【0010】また、本発明の超伝導トランジスタの製造
方法は、以上のような構造を持つ超伝導トランジスタを
製造する方法において、2つの超伝導薄膜1,2と複数
の弱結合ブリッジを4・・4を作成する工程が、2つの超
伝導薄膜1,2を、金属超伝導体の酸化物または窒化
物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮
する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜3を介し
て積層した後、絶縁膜3に対して複数箇所に渡って局所
的に粒子を注入することにより、その注入部分に2つの
超伝導薄膜1,2を相互に弱結合する弱結合ブリッジ4
・・4を複数個形成することによって特徴づけられる。
【0011】
【作用】本発明方法において、絶縁膜3に局所的に粒子
を注入すると、その注入部分の酸素または窒素が反跳し
てその近傍の超伝導薄膜1まはた2に捕獲される結果、
絶縁膜3にはその部分に酸素または窒素の低濃度領域が
形成され、その部分の絶縁が破壊される。絶縁膜3は超
伝導体もしくは超伝導薄膜1ないし2に近接効果を発揮
する物質の酸化物または窒化物であるため、絶縁破壊さ
れた領域により超伝導薄膜1と2が弱く結合され、弱結
合ブリッジ4が得られる。このような局所的な粒子注入
を複数領域において行うことにより、超伝導薄膜1と2
が複数の弱結合ブリッジ4・・4によって弱結合された構
造が得られる。
【0012】以上の方法では、弱結合ブリッジ4・・4の
寸法、すなわちブリッジ長と幅は、絶縁膜3の膜厚と粒
子注入領域によって制御されるため、良好な生産性のも
とに特性の均一な弱結合ブリッジ4・・4を再現性良く得
ることができ、また、平面上での微細加工精度の限界に
比して、膜厚制御精度の限界はより微細であるため、図
6に示した構造のものに比して、ブリッジ長を大幅に短
くすることが可能である。
【0013】そして本発明の超伝導トランジスタの構造
は、以上のような本発明方法の採用を可能とする構造で
あり、例えば電気的および化学的に安定したニオブ系の
超伝導体を超伝導薄膜1および2として用いる等によ
り、実用的でしかも弱結合ブリッジ4・・4の長さを理想
的なレベルにまで短くすることが容易であり、所期の目
的を達成できる。
【0014】
【実施例】図1は本発明実施例の全体的な構造の説明図
で、(A)模式的外観図、(B)および(C)はそれぞ
れそのB矢視部分拡大図およびC矢視部分拡大図であ
る。
【0015】基板10上に直線状の下部電極1が形成さ
れ、その表面を部分的に跨ぐよう、絶縁膜3を介して上
部電極2が積層されている。上部電極2は、3本の枝部
2a〜2cがその根元部において一体化された、上面よ
り見て全体としてE字形のパターンを有し、各枝部2a
〜2cが下部電極1を跨ぎ、その間にそれぞれ絶縁膜3
が介在している。
【0016】基板10上には、下部電極1に近接して、
その長手方向に平行にコントロール線5が形成されてお
り、このコントロール線5には、後述する制御信号が流
される。
【0017】下部電極1と上部電極2、およびコントロ
ール線5は、この例においていずれもNb超伝導薄膜であ
り、絶縁膜3はその酸化物、例えばNb2O5 である。下部
電極1、絶縁膜3および上部電極2の全ての端面部は、
基板10の法線方向に対して所定角度で傾斜した斜面に
よって形成されており、このうち、図示のように下部電
極1の長手方向に沿った一端面を斜面E1 、上部電極2
の枝部2aの長手方向に沿った一端面をE2 と称する。
絶縁膜3の膜厚は、下部電極1の平坦な上面上で400
Å、長手方向に沿った斜面E1 上およびこれに対向する
斜面上でそれそれ100Å程度である。
【0018】そして、図1(A)に示すように、上部電
極2の各枝部2a〜2cと下部電極1との間に介在する
各絶縁膜3には、上部電極2の各枝部2a〜2cが下部
電極1を跨いでいる部分における四隅部近傍に対応する
位置に、従って合計12箇所に、以下に示すように、そ
れぞれ酸素低濃度領域からなる弱結合ブリッジ4が形成
されている。
【0019】図2は、図1(B)にA−Aで示した切断
面に沿って切断した、斜面E1 と斜面E2 との交差部の
近傍の断面拡大図である。斜面E1 上の絶縁膜3には、
斜面E2 に沿って露出する面Pから僅かに内側に入った
部分に、酸素の低濃度領域4が形成されており、この酸
素低濃度領域4が下部電極1と上部電極2間を接合する
弱結合ブリッジ4を形成している。すなわち、絶縁膜3
中の酸素低濃度領域4は、絶縁膜3がNbの酸化物である
関係上、絶縁が壊れてその組成はNbが支配的となり、下
部電極1と上部電極2とが微小なNb超伝導体によって接
合されることになる。なお、Sは後述する製造工程によ
り生じる段差であり、この段差Sは存在していても存在
していなくてもよい。
【0020】以上のような酸素の低濃度領域4、すなわ
ち弱結合ブリッジ4は、上部電極2の枝部2aと下部電
極1との間の絶縁膜3に関しては、上述した下部電極1
の斜面E1 と上部電極2の枝部2aの斜面E2 との交差
部の近傍のほか、枝部2aにおいて斜面E2 と対向する
側の斜面と下部電極1の斜面E1 との交差部の近傍、下
部電極1において斜面E1 と対向する側の斜面と枝部2
aの斜面E2 との交差部の近傍、および、下部電極1に
おいて斜面E1 と対向する側の斜面と、枝部2aにおい
て斜面E2 と対向する側の斜面との交差部の近傍にも形
成されており、枝部2aと下部電極1とは合計4箇所の
弱結合ブリッジ4によって接合されている。
【0021】また、他の枝部2bおよび2cと下部電極
1との間の絶縁膜3についても全く同様であり、各枝部
2b,2cも、枝部2aにおける弱結合ブリッジ4と同
じ位置関係のもとにそれぞれ4箇所ずつ形成された弱結
合ブリッジ4によって、下部電極1と接合されている。
【0022】以上の合計12箇所の弱結合ブリッジ4
は、下部電極1に近接してこれと平行に基板10上に形
成されたコントロール線5に近接することになり、各弱
結合ブリッジ4に電流が流れることによって発生する磁
界と、コントロール線5に電流が流れることによって発
生する磁界とは相互に結合する。
【0023】このような本発明実施例において、各弱結
合ブリッジ4に電流が流れている状態で、コントロール
線5に制御電流を流すと、その制御電流が作る磁界によ
って各弱結合ブリッジ4に流れる電流が変調され、この
制御電流をベース電流に見立てた場合、下部電極1と上
部電極2間の電圧Vと、各弱結合ブリッジ4を流れる合
計電流Iとの関係は、通常のトランジスタにおけるコレ
クタ電圧とコレクタ電流との関係に類似したものとな
り、いわゆる超伝導磁束フロートランジスタとなる。し
かも、各弱結合ブリッジ4の長さは、以下の製造方法の
例から明らかなように、コヒーレンス長よりも短くする
ことが可能であり、従ってこの本発明実施例の超伝導磁
束フロートランジスタは、理想的な弱結合ブリッジを多
数個有する高性能の超伝導磁束フロートランジスタとな
る。
【0024】さて、次に以上の構造の超伝導トランジス
タの製造方法について述べる。まず、基板10上にNb超
伝導薄膜を成膜し、表面を400Å程度酸化した後、フ
ォトリソグラフィ技術等を用いて下部電極1をパターニ
ングする。このとき同時に、コントロール線5をパター
ニングすることが望ましい。次に、その表面を更に10
0Å程度酸化させ、下部電極1の表面全面をNb2O5 等の
Nb酸化物膜からなる絶縁膜で覆う。このとき、その絶縁
膜の厚さは下部電極1の上面平坦部で400Å、斜面E
1 を含む各斜面部分で100Å程度となる。その後、そ
の上から一様にNb超伝導薄膜を成膜した後、枝部2a〜
2cを有する上部電極2のパターンが残るようにその超
伝導薄膜および下部電極1とコントロール線5上の不要
な絶縁膜をエッチングにより除去する。これにより、下
部電極1の上に絶縁膜3を介して各枝部2a〜2cが部
分的に積層された図1に示した形状の構造が得られる。
また、この最終のエッチング工程により、図2に示した
段差Sが生じる。
【0025】次に、この状態で、図3に示すように、斜
面E1 上の斜面E2 の部分に、例えばNbイオン等のイオ
ンを、20〜40keV程度のエネルギで基板10の法
線方向から注入する。これにより、斜面E2 の表面から
50〜200Å程度入ったところ(イオン種および注入
エネルギに依存する)に、表面に沿ったイオン注入層6
が形成される。このとき、イオン注入層6と絶縁膜3と
が重なった領域4では、注入イオンにより酸素イオンが
反跳し、その反跳した酸素イオンはその上下のNb層であ
る下部電極1および上部電極2に捕獲される。これによ
り、この領域4は酸素濃度の低下により絶縁が破壊さ
れ、その組成はNbが支配的となり、弱結合ブリッジ4が
形成される。
【0026】以上のイオン注入工程を、前記した合計1
2箇所に施すことにより、合計12箇所の弱結合ブリッ
ジ4が得られる。ここで、イオン注入層6と重ならせる
べき絶縁膜3の厚さは本質的に重要であり、薄すぎると
(50Å程度以下)トンネル電流が流れてトンネル形の
接合となってしまい、厚すぎると(例えば400Å程
度)有効な弱結合が形成されないことが確かめられてい
る。そして、50Å以上で100Å以下の絶縁膜3は、
再現性よく得られることも確かめられている。
【0027】また、注入すべきイオンは、Nbのほか、A
u、Cu、Siイオンであってもよく、これらのイオン種と
その単位面積当たりの注入量と、得られた弱結合ブリッ
ジ(1個)の臨界電流値の関係を図4に示す。なお、こ
れらのイオンの注入エネルギは、1価イオンについては
20keV、2価イオンについては40keVである。
【0028】この図4から明らかなように、臨界電流値
とイオン注入量はほぼ直線的な関係を示す、制御性およ
び再現性に優れていることが確かめられた。また、注入
するイオン種によりその傾きは若干異なることも確かめ
られている。
【0029】ところで、上述の弱結合ブリッジ4の形成
メカニズムは、現時点において推測に止まるが、本発明
実施例方法により得られる弱結合ブリッジが電流−電圧
特性にヒステリシスを持たない弱結合ブリッジであるこ
とが確かめられたことと、注入するイオンはNbのほかに
Au、Cu、Siであってもよいこと、および絶縁膜3の厚さ
がある程度以上に厚い部分にイオン注入を施しても弱結
合ブリッジが形成されないこと等の根拠により、上述の
推測は確からしいと言える。すなわち、絶縁膜3の厚さ
が適当である場合には任意のイオン注入によって確実に
弱結合ブリッジが形成され、絶縁膜3の膜厚が厚すぎた
ときにどのようなイオンを注入しても有効な弱結合ブリ
ッジが形成されないのは、イオン注入により酸素イオン
が反跳し、その反跳した酸素イオンが、絶縁膜3の膜厚
が適度であれば上下のNb層にまで至ってそこに捕獲さ
れ、膜厚が厚すぎると反跳した酸素イオンが上下のNb層
にまで至らずに絶縁膜3内に止まるためであると考えら
れる。
【0030】このような弱結合ブリッジの形成メカニズ
ムからすると、絶縁膜3に向けて注入するイオンは、実
際に確認された前記したようなイオンのほか、酸素ある
いは後述する窒素を反跳させることのできるイオンなら
ば何でもよく、更にはイオンに限らず高速中性原子を注
入してもよいことになる。
【0031】また、同じような理由により、絶縁膜3と
しては、Nb2O5 等の金属超伝導体の酸化物のほか、下部
および上部電極1および2を形成する超伝導体に対して
近接効果を発揮する物質、例えばAl等の金属やSi等の半
導体、の酸化物または窒化物であってもよく、これらの
材質のうちの任意の材質からなる絶縁膜3に対して、酸
化物の場合には酸素を、窒化物の場合は窒素を、それぞ
れ反跳させることのできる任意のイオンまたは中性原子
を注入することにより、酸素または窒素の低濃度領域を
形成して弱結合ブリッジとすることができる。
【0032】更に、先に述べた実施例では、イオン注入
層6と絶縁膜3とを交差させるため、基板10の法線に
対して傾斜している部分の絶縁膜3に対して、基板10
の法線方向からイオンを注入した例を示したが、本発明
はこれに限らず、例えば図5に部分的に模式図を示すよ
うに、基板10の表面に平行に形成された絶縁膜3に対
して、例えば基板10を傾ける等の方法によって、基板
10の法線方向に対して斜め方向からイオンを注入する
ことによって、絶縁膜3とイオン注入層6とを交差させ
てもよい。
【0033】一方、素子の全体構造については、下部お
よび上部電極1および2、並びにコントロール線5をNb
超伝導薄膜で形成する場合において、Nb超伝導薄膜は絶
縁膜を挟んで容易に多層化できることを利用して、図6
に平面図で示すように、コントロール線5を基板10上
に形成せず、上部ないしは下部電極2ないしは1の上に
積層し、あるいは、この図5とは逆にコントロール線5
を下部電極1の下に積層することも可能である。この場
合、コントロール線5と弱結合ブリッジ4との磁気的結
合度をより向上できるばかりでなく、素子の集積度も高
くできるという利点がある。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明方法によれ
ば、2つの超伝導薄膜を、金属超伝導体の酸化物または
窒化物、あるいは上記の超伝導薄膜に対して近接効果を
発揮する物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜を介
して積層し、その絶縁膜に対して、複数箇所にわたって
局所的に粒子を注入することにより、絶縁膜中に酸素ま
たは窒素の低濃度領域を複数箇所形成して、これらの各
領域により2つの超伝導薄膜間の弱結合ブリッジを形成
するので、弱結合ブリッジのブリッジ長は、比較的容易
に制御可能な絶縁膜の膜厚とほぼ等しくなり、良好な生
産性のもとに均一な弱結合ブリッジを再現性良く得るこ
とができ、しかも、平面上での微細加工に頼るブリッジ
に比して、著しく短いブリッジ長を実現でき、トンネル
効果が生じず、しかも100Å以下のブリッジ長が得ら
れる。
【0035】このような製造方法を採用可能とした構造
を有する本発明の超伝導トランジスタは、従って、それ
ぞれが100Å以下程度のブリッジ長を持つ複数の弱結
合ブリッジにより2つの超伝導薄膜を接合することが可
能となり、このブリッジ長は、例えば超伝導薄膜として
ニオブ薄膜を用いた場合、そのコヒーレンス長(0Kで
約400Å)に比較して十分にに短く、理想的なブリッ
ジを持つ素子となり、高温超伝導薄膜を用いた従来の報
告に基づく素子に比して、電気的並びに化学的に安定
で、しかも高性能の素子となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の全体的な構造の説明図で、
(A)は模式的外観図、(B)および(C)はそれぞれ
そのB矢視部分拡大図およびC矢視部分拡大図
【図2】図1(B)のA−A断面で示した部分拡大断面
【図3】本発明実施例の弱結合ブリッジ4の製造工程の
説明図
【図4】本発明の製造方法を適用して弱結合ブリッジを
作成したときの、注入イオン種およびその注入量と、得
られたブリッジの臨界電流との関係を示すグラフ
【図5】本発明の他の実施例方法の説明図
【図6】本発明の他の実施例構造を示す平面図
【図7】従来の超伝導磁束フロートランジスタの構造を
示す模式図
【符号の説明】
1 下部電極 2 上部電極 2a〜2c 枝部 3 絶縁膜 4 弱結合ブリッジ(酸素低濃度領域) 5 コントロール線 6 イオン注入層 10 基板
フロントページの続き (72)発明者 吉井 光良 京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所三条工場内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2つの超伝導薄膜が、金属超伝導体の酸
    化物または窒化物、もしくは、上記超伝導薄膜に対して
    近接効果を発揮する物質の酸化物または窒化物からなる
    絶縁膜を介して積層され、かつ、その絶縁膜には、局所
    的な酸素または窒素の低濃度領域が複数箇所において形
    成され、その複数の酸素または窒素の低濃度領域のそれ
    ぞれが、上記2つの超伝導薄膜を相互に弱結合する弱結
    合ブリッジを形成しているとともに、その各弱結合ブリ
    ッジの近傍に、これらと磁気的に結合してその各弱結合
    ブリッジを流れる電流を変調する制御電流経路が配設さ
    れてなる超伝導トランジスタ。
  2. 【請求項2】 2つの超伝導薄膜が複数の弱結合ブリッ
    ジによって相互に接合され、かつ、その各弱結合ブリッ
    ジの近傍には、これらと磁気的に結合してその各ブリッ
    ジを流れる電流を変調する制御電流経路が配設された超
    伝導トランジスタの製造方法において、上記2つの超伝
    導薄膜と複数の弱結合ブリッジを作成する工程が、2つ
    の超伝導薄膜を、金属超伝導体の酸化物または窒化物、
    もしくは、上記超伝導薄膜に対して近接効果を発揮する
    物質の酸化物または窒化物からなる絶縁膜を介して積層
    した後、上記絶縁膜に対して複数箇所に渡って局所的に
    粒子を注入することにより、その注入部分に上記2つの
    超伝導薄膜を相互に弱結合する弱結合ブリッジを複数個
    形成することを特徴とする、超伝導トランジスタの製造
    方法。
JP6236848A 1994-02-24 1994-09-30 超伝導トランジスタおよびその製造方法 Pending JPH08102558A (ja)

Priority Applications (7)

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