JPH0792122B2 - オ−トテンシヨナ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、オートテンショナ、さらに詳しくは、自動
車のエンジンのクランクシャフトのプーリとカムシャフ
トのプーリの間に掛けられたタイミングベルトなどに所
定の張力を付与するオートテンショナに関する。

従来の技術とその問題点 上記のようなタイミングベルトには、エンジンの温度変
化によるベルトの伸縮や使用によるベルトの伸びを吸収
して、ベルトに所定の張力を付与するために、アイドラ
をばねなどの弾性力によりベルトに押付けるオートテン
ショナが設けられる。また、このようなオートテンショ
ナには、ベルトの振動やエンジンの振動によるアイドラ
の共振を抑制するために、油圧ダンパが設けられてい
る。ところが、油圧ダンパ式のオートテンショナでは、
油洩れが生じるため、油を補給する必要があり、メンテ
ナンスが面倒である。また、油洩れを防止する機構、オ
リフィスの穴加工やその大きさを調節する機構などが必
要なため、油圧ダンパの構造が複雑で高価なものとな
る。

そこで、本出願人は、エンジンなどの固定部分に固定さ
れたブラケット支持軸に、先端部にアイドラが回転自在
に取付けられてアイドラをベルトに押付ける方向にばね
により付勢されたアイドラ取付ブラケットが回転自在に
取付けられ、ブラケット支持軸とブラケットの回転部分
の隙間に高粘度の油が介在させられているオートテンシ
ョナを提案した（特願昭61−101544号参照）。

このオートテンショナによれば、高粘度の油の粘性によ
る回転抵抗により、ベルトの振動やエンジンの振動によ
るアイドラの振動を抑制することができる。また、ベル
トの伸縮による緩やかな張力変化に対しては、油の粘性
による回転抵抗に抗してアイドラが張力を一定に保つ方
向に穏やかに移動して、ベルトの張力を所定の値に保持
する。ところが、エンジンの急加速などの要因でベルト
が急激に緩んだ場合、アイドラの移動が上記回転抵抗に
より緩やかであるから、アイドラがベルトの急激な緩み
に迅速に追従することは不可能である。とくにオートテ
ンショナをタイミングベルトに適用した場合、ベルトの
急激な緩みにアイドラが追従できなければ、タイミング
ベルトの歯とびの問題が生じることがあり、好ましくな
い。

この発明の目的は、上記の問題を解決し、ベルトの急激
な緩みに迅速に追従して張力を所定の値に保持でき、か
つ振動を抑制できる、構造が簡単で小形化の可能なオー
トテンショナを提供することにある 問題点を解決するための手段 この発明によるオートテンショナは、固定部分に対して
移動可能なアイドラが弾性力によりベルトに押付けられ
て、ベルトに所定の張力を付与するオートテンショナで
あって、固定部分側の第１の部材の周囲に第２の部材が
取付けられ、第２の部材の周囲にアイドラ側の第３の部
材が回転自在に取付けられており、第１の部材と第２の
部材の間にアイドラをベルトに押付ける方向の第２の部
材の回転は許容するがアイドラをベルトから離す方向の
第２の部材の回転は阻止する一方向クラッチが設けら
れ、第２の部材と第３の部材の相互に回転する部分に第
２の部材と第３の部材の相互の回転に抵抗を与えて振動
を抑制する振動抑制手段が介在させられているものであ
る。

作用 ベルトが急激に緩んだ場合、第２の部材が一方向クラッ
チの部分で第１の部材に対して回転し、アイドラがベル
トの緩みに迅速に追従して、張力が所定の値に保持され
る。逆に、ベルトが縮んで張力が大きくなった場合は、
第１の部材に対する第２の部材の回転が一方向クラッチ
により阻止されるので、第２の部材に対し第３の部材が
高粘度の油の粘性による回転抵抗に抗して張力を減じる
方向に緩やかに回転し、張力が所定の値に保持されるま
でアイドラが緩やかに移動する。そして、ベルトの振動
やエンジンの振動によるアイドラの振動は高粘度の油の
粘性による回転抵抗により抑制される。

油の粘度は、ベルドなどの振動の特性、第２の部材およ
び第３の部材の形状、寸法などを考慮して決定される
が、粘度の高いものを使用するほど回転抵抗を大きくで
き振動抑制手段を小形化できるので、オートテンショナ
を小形にすることができる。

実 施 例 以下、図面を参照して、この発明を自動車のエンジンの
タイミングベルトに適用した実施例を説明する。

第１図および第２図は、第１実施例を示す。

エンジンの固定部分（たとえばエンジンブロック）（1
0）に段付固定軸（11）の基端部（11a）が固定され、こ
の軸（11）の中間部（11b）の周囲に一方向クラッチ（1
2）を介して円筒状の中間部材（13）が同心状に取付け
られている。この一方向クラッチ（12）はたとえば公知
の一方向ころクラッチであり、軸（11）に対し中間部材
（13）の第１図時計方向の回転は許容するが、同図反時
計方向の回転は阻止するようになっている。中間部材
（13）の周囲に、短円柱状の扁心部材（14）が扁心状か
つ回転自在に取付けられている。扁心部材（14）には扁
心穴（15）が形成され、この扁心穴（15）に中間部材
（13）がはめられている。中間部材（13）の外周面と扁
心部材（14）の扁心穴（15）の内面との隙間は最小に押
えられており、この部分にはたとえば粘度が100000cst
（25℃）以上のシリコーンオイル（Ｏ）が介在させられ
て、扁心部材（14）の回転トルクが大きくされている。
なお、この回転トルクは、オイルの粘度の他に、中間部
材（13）の外径および長さ、扁心部材（14）との隙間の
大きさによって設定される。中間部材（13）の両端面に
それぞれ穴あき円板（16）（17）が同心状に固定されて
いる。円板（16）（17）の内径は軸（11）の中間部（11
b）の外径より少し大きく、外径は中間部材（13）の外
径より大きい。また、扁心部材（14）の長さは中間部材
（13）の長さと等しく、その内周部両端面が円板（16）
（17）の外周部に接している。そして、中間部材（13）
および扁心部材（14）の両端面には、円板（16）（17）
に圧接してオイル（Ｏ）を封止するＯリング（18）（1
9）（20）（21）が設けられている。扁心部材（14）の
外周に、円筒状のアイドラ（22）が複数の球状転動体
（23）を介して回転はしうるが軸方向にはほとんど移動
しないように取付けられている。軸（11）の先端部（11
c）の中間部（11b）との段部にカラー（24）がはめら
れ、先端部（11b）にねじはめられたナット（25）によ
る固定されている。そして、軸（11）の中間部（11b）
と基端部（11a）の間の段部とこのカラー（24）との間
に円板（16）（17）の内周部が挾まれ、これら全体が軸
方向にほとんど移動しないようになっている。軸（11）
の基端部（11a）の周囲にねじりコイルばね（26）がは
められ、その一端が固定部分（10）に、他端が扁心部材
（14）にそれぞれ固定されている。そして、このばね
（26）は、扁心部材（14）を第１図の時計方向に付勢
し、アイドラ（22）をタイミングベルト（27）の歯（2
8）のない面に押付けている。

エンジンの急加速などの要因でベルト（27）が急激に緩
んだ場合、ばね（26）の弾性力により扁心部材（14）が
第１図の時計方向に回転しようとし、オイル（Ｏ）の粘
性抵抗により中間部材（13）も同じ方向に回転しようと
する。そして、中間部材（13）のこの方向の回転は一方
向クラッチ（12）により許容されているので、扁心部材
（14）と中間部材（13）が一体となって第１図の時計方
向に急激に回転し、アイドラ（22）がベルト（27）の緩
みに迅速に追従してこれに押付けられ、所定の張力が保
持される。このため、タイミングベルト（27）の歯とび
の問題が生じることがない。逆に、ベルト（27）が縮ん
で張力が大きくなった場合、ばね（26）の弾性力に抗し
て扁心部材（14）が第１図の反時計方向に回転しようと
し、オイル（Ｏ）の粘性抵抗により中間部材（13）も同
じ方向に回転しようとする。ところが、中間部材（13）
のこの方向の回転は一方向クラッチ（12）により阻止さ
れるので、扁心部材（14）だけがオイル（Ｏ）の粘性抵
抗に抗して第１図の反時計方向に緩やかに回転し、ベル
ト（27）の張力が所定の値に保持されるまでアイドラ
（22）が緩やかに移動する。また、ベルト（27）の振動
やエンジンの振動によるアイドラ（22）の振動は、シリ
コーンオイル（Ｏ）の回転に対する粘性抵抗により抑制
される。

このようにシリコーンオイルの粘性抵抗により制振効果
が発揮されるので、性能が長期にわたって安定してお
り、オイルの補給の必要がない。また、構造はきわめて
簡単で小形であり、安価で、取付スペースが小さくてす
む。

中間部材（13）と扁心部材（14）の隙間にシリコーンオ
イル（Ｏ）を介在させるには、中間部材（13）の外周面
および扁心部材（14）の扁心穴（15）の内面のいずれか
一方または両方にシリコーンオイルを塗布したのち、こ
れをはめ合わせればよい。なお、中間部材（13）の外周
面または扁心部材（14）の扁心穴（15）の内面に螺旋状
の小さいみぞまたは軸芯と平行な小さいみぞを設け、こ
のみぞにシリコーンオイルを入れたのち扁心部材（14）
を中間部材（13）にはめて回転させることによりシリコ
ーンオイルを容易に全体に行きわたらせるようにするこ
ともできる。また、中間部材（13）の外周面または扁心
部材（14）の扁心穴（15）の内面に環状みぞを設けてシ
リコーンオイルを溜めておくようにすることもできる。

第３図および第４図は、第２実施例を示し、第１実施例
と同じ部分には同一の符号を付している。

第２実施例の場合、固定軸（11）は、２本のボルト（3
5）により固定部分（10）に固定された略ひし形のベー
ス（36）の中央に一体に形成されており、中間部材（1
3）の周囲には、アイドラ取付ブラケット（30）の基端
部（30a）が回転自在に取付けらている。そして、中間
部材（13）の外周面とブラケット（30）の穴（31）の内
面との小さい隙間にシリコーンオイル（Ｏ）が介在させ
られて、ブラケット（30）の揺動トルクが大きくされて
いる。ブラケット（30）の中間部には軸（32）が固定さ
れ、この軸（32）のアイドラ（33）が回転自在に取付け
られている。また、ブラケット支持用固定軸（11）には
ばねが設けられておらず、固定部分（10）とブラケット
（30）の先端部との間に引張りコイルばね（34）が設け
られている。そして、これにより、アイドラ（33）がタ
イミングベルト（27）の歯（28）のない面に押付けられ
ている。

第２実施例の場合も、アイドラ（33）をベルト（27）に
押付ける第３図時計方向の中間部材（13）の回転が一方
向クラッチ（12）により許容され、アイドラ（33）がベ
ルト（27）から離れる同図反時計方向の中間部材（13）
の回転が一方向クラッチ（12）により阻止されるので、
第１実施例と同様に作動し、ベルト（27）の急激な緩み
に迅速に追従して張力が所定の値に保持され、かつアイ
ドラ（33）の振動がシリコーンオイル（Ｏ）の粘性抵抗
により抑制される。

なお、この発明によるオートテンショナは、自動車のエ
ンジンのタイミングベルト以外のベルトにももちろん適
用できる。

発明の効果 この発明のオートテンショナによれば、上述のように、
ベルトの急激な緩みに迅速に追従して張力を所定の値に
保持することができるとともに、ベルトの緩みが元に戻
ることによるベルトの張力の増加に対しても追従でき、
振動抑制手段によりアイドラの振動を抑制することがで
きる。そして、振動抑制手段によりアイドラの振動が抑
制されるので、性能が長期間にわたって安定しており、
また、構造が簡単で安価に製作することができる。

【図面の簡単な説明】 第１図はこの発明の第１実施例を示すオートテンショナ
の垂直断面図、第２図は第１図II−II線の断面図、第３
図はこの発明の第２実施例を示すオートテンショナの部
分切欠き正面図、第４図は第３図IV−IV線の断面図であ
る。 （10）……固定部分、（11）……固定軸、（12）……一
方向クラッチ、（13）……中間部材、（14）……扁心部
材、（22）（23）……アイドラ、（26）（34）……ば
ね、（27）……タイミングベルト、（30）……アイドラ
取付ブラケット。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定部分に対して移動可能なアイドラが弾
   性力によりベルトに押付けられて、ベルトに所定の張力
   を付与するオートテンショナであって、固定部分側の第
   １の部材の周囲に第２の部材が取付けられ、第２の部材
   の周囲にアイドラ側の第３の部材が回転自在に取付けら
   れており、第１の部材と第２の部材の間にアイドラをベ
   ルトに押付ける方向の第２の部材の回転は許容するがア
   イドラをベルトから離す方向の第２の部材の回転は阻止
   する一方向クラッチが設けられ、第２の部材と第３の部
   材の相互に回転する部分に第２の部材と第３の部材の相
   互の回転に抵抗を与えて振動を抑制する振動抑制手段が
   介在させられているオートテンショナ。
2. 【請求項２】前記振動抑制手段が高粘度の油である特許
   請求の範囲第１項に記載のオートテンショナ。
3. 【請求項３】前記第１の部材が固定部分に固定された固
   定軸であり、前記第３の部材が第２の部材に扁心状に取
   付けられた円柱状の扁心部材であって、この扁心部材の
   周囲にアイドラが回転自在に取付けられており、アイド
   ラをベルトに押付ける方向に扁心部材を付勢するばねが
   固定軸に取付けられている特許請求の範囲第１項に記載
   のオートテンショナ。
4. 【請求項４】前記第１の部材が固定部分に固定されたブ
   ラケット支持用固定軸であり、前記第３の部材が先端部
   にアイドラが取付けられたアイドラ取付ブラケットであ
   る特許請求の範囲第１項に記載のオートテンショナ。