JPH0790717A - 高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維 - Google Patents

高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維

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JPH0790717A
JPH0790717A JP5231578A JP23157893A JPH0790717A JP H0790717 A JPH0790717 A JP H0790717A JP 5231578 A JP5231578 A JP 5231578A JP 23157893 A JP23157893 A JP 23157893A JP H0790717 A JPH0790717 A JP H0790717A
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昭夫 田原
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 90モル%以上がブチレンテレフタレート
単位からなり、固有粘度が1.00以上である高重合度
ポリブチレンテレフタレート系重合体からなる繊維であ
って、引張り強度が5.8g/d以上、破断伸度が1
8.0%以上、かつ、10%伸び時における強度Tが
3.0g/d以下の特性を有する。さらに好ましくは、
複屈折率が0.140以上、DSCによる融点が210
℃以上である。 【効果】 高い引張り強度と優れたエネルギー吸収
能、および優れた寸法安定性を有し、シートベルト、ロ
ープ、ゴム補強用繊維などの産業資材用途において好ま
しく用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度ポリブチレンテ
レフタレート系繊維に関する。さらに詳しくは、シート
ベルト、ロープ、或いは、タイヤ・ベルトなどのゴム補
強用コードなどの産業資材用として好ましく用いられる
ポリブチレンテレフタレート繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】シートベルト、ロープ、ゴム補強用コー
ドに用いられる産業資材用繊維には、主として高重合度
のポリエチレンテレフタレートもしくはポリヘキサメチ
レンアジパミド(N66)、ポリカプラミド(N6)な
どのポリアミドからなる繊維が用いられてきている。
【0003】シートベルト、ロープなどに対する要求特
性としては、高い引張り強力と耐磨耗性、さらには強力
保持率で表される耐光性、寸法安定性に関連する経日格
納性、そしてエネルギー吸収能などが挙げられる。
【0004】従来この分野では、ポリアミド系繊維が用
いられてきたが、ポリアミドの比較的高い平衡水分率に
起因する寸法安定性の不足、あるいは耐光性不良などの
ため、ポリエチレンテレフタレート繊維に置き換わって
きている。確かに、ポリエチレンテレフタレート繊維は
安価な上、低い吸水性を有するので寸法安定性に優れ、
また耐光性に優れた好ましい素材である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シート
ベルトなどの用途においては、近年、衝撃の初期におけ
るエネルギー吸収能がより重要な要素となってきてい
る。上記ポリエチレンテレフタレート繊維は、高い引張
り強度を出すために通常破断伸度が17%以下と低く、
また高い初期引張り抵抗を有しているため、衝撃の際に
対象となる被保護物にかかる初期衝撃が大きく、エネル
ギー吸収能の点から満足のいく素材ではなかった。
【0006】すなわち、これまで使用されてきた汎用の
ポリアミド繊維やポリエチレンテレフタレート繊維を含
め、シートベルトなどの用途として前述の要求特性をす
べて満たすものは得られていなかった。
【0007】最近開発が活発化している“ケブラー”に
代表される芳香族ポリアミド繊維や液晶性芳香族ポリエ
ステル繊維、またゲル紡糸による超高分子量ポリエチレ
ン繊維や高分子量ポリビニルアルコール繊維などは確か
に強度は著しく高いものの、初期引張り抵抗はポリエチ
レンテレフタレート繊維よりもさらに高く、また破断伸
度はポリエチレンテレフタレート繊維よりもさらに低い
ため、エネルギー吸収能は劣るものである。
【0008】上記エネルギー吸収能を高めるために、特
開平4−257336号公報には、超高強力糸と、破断
伸度70%程度の汎用ポリマのPOYを混繊してエネル
ギー吸収能を高める手段が開示されている。しかし、こ
の方法では初期引張り抵抗の高い繊維の特性に布帛性能
は引張られ、エネルギー吸収能は期待するほど高くなら
ないものであった。また、超高強力糸を用いるため価格
も高いものとなっていた。
【0009】また、タイヤコード用原糸においては、耐
久性能が要求されるトラック、バスなどのバイアスタイ
ヤ用にはポリアミド糸が、また乗用車用のラジアルタイ
ヤにはより寸法安定性の高いポリエチレンテレフタレー
ト繊維が使用されている。一般にタイヤ用原糸の開発の
流れはこれまでよりコードの寸法安定性を高めるため
に、繊維の初期引張り抵抗をより高める方向で検討され
てきた。しかし、この特性は、走行安定性は著しく改良
するものの、近来認識がより高まってきた走行中の振動
や騒音を軽減する衝撃吸収性能とは相反する特性となり
最近では新たな問題点として取り上げられるようになっ
てきた。
【0010】この走行中の振動や騒音をより軽減する目
的で、特開平5−9831号公報にはポリエチレンテレ
フタレート繊維を用いたタイヤコードにおいてコード作
製条件を最適化することでコードの低荷重下における破
断伸度を高め、乗り心地性を向上させる提案がなされて
いる。また、特開平5−195359号公報には初期引
張り抵抗の異なる2種類の原糸を混撚することで同様に
コードの低荷重下における破断伸度を高め、乗り心地性
を向上させる提案がなされているしかし、いずれの方法
も原糸から改良したものではなくエネルギー吸収能の点
からみると満足のいく改善策とはなっていない。
【0011】一方、ブチレンテレフタレート単位を主成
分とする繊維はこれまでも数多く提案されている。この
繊維は、ポリエチレンテレフタレートとポリアミドの中
間の特性を有する繊維として位置づけられており、水中
での寸法安定性が優れている、捲縮糸とした場合のヘタ
リが小さい、パワー感のあるストレッチ性があるなどの
特徴を生かし、水着やパンティストッキング、剛毛糸な
どへの用途開発が進められている。
【0012】例えば、特開昭56−43404号公報に
はポリブチレンテレフタレート繊維からなる水着が提案
されているが、その実施例中に記載の繊維物性は、強度
4.3g/d、破断伸度34.6%である。また、特開
昭51−123316号公報には、一段目の延伸倍率
2.2〜4.5倍で多段延伸を行うという、ポリブチレ
ンテレフタレート繊維からなる剛毛糸の製法が提案され
ている。しかし、これらはいづれも高強度を必要としな
い分野への展開で、用いるポリマの固有粘度は0.8〜
0.9と低く、得られる延伸糸の強度も5g/d以下と
低いものであり、高強度が必要な産業用途で使用できる
ものではなかった。
【0013】そこで、本発明の目的は、上記の従来の技
術における問題点を解決し、シートベルト、ロープ、ゴ
ム補強用繊維などの産業資材用途において、高い強度お
よび優れたエネルギー吸収能と優れた寸法安定性を有す
る繊維を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する
ため、本発明の高強度ポリブチレンテレフタレート系繊
維は、90モル%以上がブチレンテレフタレート単位か
らなり、固有粘度が1.00以上である高重合度ポリブ
チレンテレフタレート系重合体からなる繊維であって、
引張り強度が5.8g/d以上、破断伸度が18.0%
以上、かつ、10%伸び時における強度Tが3.0g/
d以下であることを特徴とする。
【0015】ここで、10%伸び時における強度Tは下
記の式による値である。
【0016】 T=(10%伸び時の強力)/(0%伸び時の繊度)
【0017】また本発明のポリブチレンテレフタレート
系繊維は、さらに、複屈折率が0.140以上、かつ、
示差走査熱量分析(DSC)による融点が210℃以上
であることが好ましい。
【0018】以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】本発明のポリブチレンテレフタレート系繊
維は、シートベルト、ロープ、ゴム補強用コードなどエ
ネルギー吸収性能が要求される分野に好適に用いられる
繊維であって、特定の高重合度ポリブチレンテレフタレ
ート系重合体からなり、特定の引張り強度、破断伸度を
有し、かつ強度−伸長曲線における初期引張り抵抗が小
さいことを特徴とする。これにより、高強度はもちろん
のこと、高いエネルギー吸収能および優れた寸法安定性
を得ることができる。
【0020】このポリブチレンテレフタレート系繊維
は、ブチレンテレフタレート成分から構成されるが、そ
の性質を損ねない範囲の少量であれば、曵糸性を高める
などの目的で共重合成分を含んでいても差し支えない。
ブチレンテレフタレート単位は90モル%以上、より好
ましくは95モル%以上から構成される。共重合成分の
比率が10モル%を越えると、高強度が達成されないた
めに好ましくない。また、曳糸性を損ねない範囲で、布
帛の性能を高める目的で、難燃剤や酸化防止剤を添加す
ることも何等差し支えない。
【0021】10%未満の共重合成分としては、エステ
ル形成性成分であれば特に限定されず、テレフタル酸お
よびプロピレングリコール、プロピレンオキサイドの他
にエチレングリコール、エチレンオキサイド、ブチレン
グリコール、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、
ジフェニルジカルボン酸、5−スルホン酸ナトリウムイ
ソフタル酸などが挙げられるがこの限りではない。
【0022】本発明におけるポリブチレンテレフタレー
ト系繊維は、固有粘度が1.00以上であり、より好ま
しくは1.20以上である。1.00未満であると所望
の強度及び破断伸度を得ることが困難となるばかりでな
く、長期間の使用に対する耐久性も損なわれる。繊維の
固有粘度を1.00以上にするためには、用いるチップ
の固有粘度を高くすればよく、通常1.30以上のポリ
ブチレンテレフタレートチップを用いることで達成でき
る。このように高い固有粘度を有するチップは比較的低
粘度のチップから公知の固相重合などの手法により得る
ことが可能である。
【0023】従来のポリブチレンテレフタレート系繊維
では、用いるチップの固有粘度が1.1を越えると、紡
糸が困難になるとともに、紡糸中の熱分解などにより粘
度低下が大きく、高IVの繊維を得ることは困難である
と考えられていたが、チップの固有粘度が1.30以上
と高くても、紡糸条件を後述のごとく適正化することで
何等問題なく高い固有粘度の繊維を得ることが可能であ
る。
【0024】さらに、本発明のポリブチレンテレフタレ
ート系繊維は、引張り強度5.8g/d以上、好ましく
は6.5g/d以上、破断伸度が18.0%以上、より
好ましくは20.0%以上35.0%以下である。前述
の産業資材用においては、エネルギー吸収能や寸法安定
性の他に、使用に耐えうる強伸度特性がもちろん必要で
あり、上記範囲を外れると布帛やコード形態として使用
したとき、引張り特性、引裂き特性、屈曲特性などの力
学特性が劣り、不適当である。また、破断伸度が18.
0%未満であると、たとえばシートベルト用途などで布
帛としたとき、硬く柔軟性が損なわれるとともに、紡
糸、製織時にケバや糸切れを起こし易いので不適当であ
る。また、伸度が大き過ぎる場合には、布帛自体の伸度
が大きくなり、成形時にたわみやすいなどの問題を生じ
てくるので好ましくない。
【0025】さらに、本発明のポリブチレンテレフタレ
ート系繊維は、強度−伸長曲線における10%伸び時に
おける強度が3.0g/d以下と低いという特異な特性
を有する。特に、0.5g/d以上2.0g/d以下で
あることが好ましい。
【0026】この特性により、この原糸を用いた産業用
資材は、著しく高いエネルギー吸収能を有することがで
きる。従来、シートベルトなどの用途において高いエネ
ルギー吸収能を持つ繊維は、強度−伸長曲線において、
この曲線とX軸とで囲まれる面積が高いほどその性能が
優れていると言われてきた。しかし衝撃の初期において
その衝撃を吸収するためには、面積ではなく低荷重時に
高伸度を有する、すなわち10%伸び時における強度が
3.0g/d以下であることの方が有効である。
【0027】本発明のポリブチレンテレフタレート系繊
維は上記のように特異な強度−伸長挙動を有し、かつ前
述の力学特性、さらにはポリエステル特有の低吸水性と
を合わせ持つので、高いエネルギー吸収能と優れた寸法
安定性を合わせ持つことができる。
【0028】さらに、10%伸び時における強度が3.
0g/d以下であるという特性は、紡糸、延伸さらには
製織時における毛羽発生や糸切れ抑制においても高い効
果を発揮することができる。
【0029】本発明におけるポリブチレンテレフタレー
ト系繊維の繊度構成は、用途に合わせて設定すればよ
い。一般には、総繊度250D以上1500D以下、単
糸繊度1.0d以上20.0d以下、より好ましくは
2.0d以上10.0d以下であることが本発明の特性
を生かすために好ましい。もちろん、用途に応じて強力
を高めるために、合糸し総繊度を増して使用することは
何等差し支えない。繊維あるいはこの繊維を用いた布帛
などの柔軟性を高めるためには、単糸繊度は小さい方が
好ましいが、単糸繊度が1.0d未満と細くなると通常
の直接紡糸では糸切れや繊度斑のため安定な紡糸が困難
となるので実用的でない。
【0030】次に、本発明にかかるポリブチレンテレフ
タレート系繊維の製造方法について説明する。
【0031】本発明のポリブチレンテレフタレート系繊
維は、通常の溶融紡糸法により口金より紡出される。こ
のとき、ポリマの熱による劣化を防ぐために、紡糸機内
におけるポリマの滞留時間は短いほど好ましく、通常1
0分以内、好ましくは1〜5分とすればよい。紡糸温度
は通常260℃〜280℃であればよいが共重合成分の
有無などにより適宜最適化すればよい。
【0032】さらに、口金直下には加熱筒を配し、吐出
糸条はこの加熱筒内を通過させることが必要である。こ
の加熱筒は、一般に、10〜100cmの長さで、200
℃〜350℃で温度制御された加熱筒であればよいが、
その長さ及び温度条件は、得られる糸条の繊度やフィラ
メント数により最適化されればよい。この加熱筒は、溶
融ポリマの固化を遅らせ高強度を発現させるために必要
である。
【0033】ここで、所望の強伸度特性を得るために
は、ポリマは前述のごとく固有粘度が1.30以上のよ
うな高粘度ポリマを用いる。この固有粘度が1.30未
満では、得られる糸の固有粘度を1.00以上とするこ
とは困難であり、そのため、紡糸条件を適正化・改善し
ても所望の強伸度を得ることは難しい。
【0034】なお、高温での熱劣化を防止するために
は、必要に応じて加熱筒内雰囲気を高温不活性ガスでシ
ールすることが好ましい。
【0035】紡出糸条は、上記高温雰囲気中を通過した
後、冷風で冷却固化され、ついで油剤が付与された後、
紡糸速度を制御する引取りロールで引取られる。
【0036】引取りロールに引取られた未延伸糸条は、
通常連続して延伸されるが、一旦巻取った後に別工程で
延伸してもよい。紡糸速度は、通常500m/min 〜3
000m/min 、好ましくは1500m/min 以下であ
ればよい。延伸は常法の熱延伸が採用されればよく、2
段以上の多段延伸が好ましい。その延伸倍率は未延伸糸
の複屈折、延伸温度、および多段延伸する際の延伸比配
分等によって変化させうるが、1.5〜5.5倍、好ま
しくは2.0〜5.0倍のような高倍率がとられる。
【0037】次いで、この延伸糸は熱固定される。熱固
定は糸条を熱ローラや熱板に接触させたり、また高温気
体中を通過させることなどの公知の方法により行えばよ
く、一般に160〜210℃、好ましくは180〜20
0℃の熱固定温度をとればよい。この熱固定時の張力お
よび温度を変化させることで、乾熱収縮率をコントロー
ルすることが可能である。150℃・30分における乾
熱収縮率が9.0%以下であると、布帛やコードなどで
の形態での使用においてもより寸法安定性が高くなり好
ましい。
【0038】本発明の高強度ポリブチレンテレフタレー
ト系繊維は、上述のように高粘度のポリブチレンテレフ
タレートチップを用い、かつ加熱筒を使用し、さらに高
倍率で延伸し熱固定することにより初めて得られるもの
であり、従来の低強度を得るためのポリブチレンテレフ
タレート繊維の製造方法では得られない。
【0039】さらに、本発明におけるポリブチレンテレ
フタレート系繊維は、工程上の毛羽発生を抑えるため、
延伸工程および熱固定工程において、フィラメントに交
絡処理を施すことは何等差支えない。交絡は、エア交絡
など公知の方法が採用でき、例えばエア交絡の場合、用
いる糸条の繊度や張力に応じて、エアの圧力を適宜変更
する事で目的の交絡度を達成することができる。この場
合、交絡度としては20以上さらには30以上が好まし
い。
【0040】また、このような条件を満足するポリブチ
レンテレフタレート系繊維は、複屈折が0.140以
上、DSCによる融点が210℃以上の特性を有する。
複屈折率が0.140未満である場合は所望の引張り強
度が得られない場合が生じ、好ましくない。また、DS
Cによる融点が210℃未満の場合は、耐熱性や高温時
の寸法安定性などが劣ったものになるので、好ましくな
い。
【0041】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。本発明における各物性は次のようにして測定した値
である。
【0042】(1) 固有粘度IV、相対粘度η: (a) PBTの場合; ポリマ0.125gにオルソクロ
ルフェノール25mlを加えて、120℃で30分間加
熱して溶解する。その後、オストワルド粘度計にて相対
粘度を測定し、換算表よりIVを求める。
【0043】(b) PETの場合; オストワルド粘度計
を用いて、オルソクロロフェノール100mlに対し、
試料3.0gを溶解した溶液の相対粘度ηrを25℃で
測定し、次の近似式によりIVを算出する。
【0044】IV=0.0242ηr+0.2634 ただし、ηr=(t×d)/(t0 ×d0 )、t:溶液
の落下時間(秒)、 t0 :オルソクロルフェノールの
落下時間(秒)、 d:溶液の密度(g/cc)、 d
0 :オルソクロルフェノールの密度(g/cc)であ
る。
【0045】(c) ナイロン66の場合; 試料0.25
gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計
にて25℃で測定し、ηを求める。
【0046】(2) 引張り強度、破断伸度: JIS−L
−1017に準拠して測定する。
【0047】(3) 複屈折率: 日本光学工業(株)製P
OH型偏光顕微鏡を用い、D線を光源として通常のベレ
ックコンペンセーター法により求める。
【0048】(4) 融点: Perkin-Elmer社製のDSC−
1B型で、昇温速度20℃/min、試料量0.8mgで測定
し、融解曲線の主ピーク温度を融点(Tm)とする。
【0049】(5) 布帛の引張り強度: JIS−K−6
328(ストリップ法)に準拠し、試料幅3cmで測定し
た。
【0050】(6) 布帛のエネルギー吸収性能: 30c
m四方の試料を空中で四隅を固定し、30cmの高さか
ら、直径1cmの鉄球をその試料の中央部に落下させた
ときの鉄球の跳ね返り程度、ならびにJIS−L−10
96(45°カンチレバー法)の剛軟度をもとに、相対
評価し、○=良好、△=やや不良、×=不良でもって示
した。
【0051】(7) 布帛の寸法安定性: JIS−L−1
096 6.9に準拠して測定した布帛水分率、及び、
布帛を120℃で500 hr 熱処理した後の通気量変化
をもとに、相対評価し、○=良好、△=やや不良、×=
不良でもって示した。
【0052】[実施例1]IV=1.95のポリブチレ
ンテレフタレートチップを通常の溶融紡糸法により、ホ
ール数160の口金を用いて紡糸した。このとき紡糸温
度は270℃とし、口金直下には、長さ300mm、温度
300℃の加熱筒を配し、紡糸速度は600m/min と
した。
【0053】紡出糸を、巻取ることなく引続き2段延伸
により、トータル延伸倍率4.1倍、最終延伸ロール温
度180℃で延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリ
ラックス処理を施し、500D、160フィラメントの
延伸糸を得た。
【0054】得られた繊維の複屈折率は0.159、D
SCによる融点は219℃であった。また、その強度−
伸長曲線は図1に(a)として示す。
【0055】[実施例2]実施例1と同様に、IV=
1.95のポリブチレンテレフタレートチップを通常の
溶融紡糸法により紡糸した。このとき紡糸速度を200
0m/min とした。
【0056】紡出糸は一旦巻取った後、次いで、実施例
1と同様にして2.5倍の倍率で延伸を施した。さら
に、最終延伸ロール温度180℃で延伸熱処理した後、
3.0%の弛緩率でリラックス処理を施し、350D、
160フィラメントの延伸糸を得た。得られた延伸糸の
複屈折率は0.161、DSCによる融点は220℃で
あった。
【0057】[比較例1]実施例1において、固有粘度
が1.1のポリブチレンテレフタレートチップを用い
た。紡糸温度は270℃とし、口金直下には、長さ30
0mm、温度300℃の加熱筒を用い、紡糸速度は600
m/min した。
【0058】紡出糸を、巻き取ることなく引き続きトー
タル延伸倍率3.0倍、最終延伸ロール温度180℃で
延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリラックス処理
を施し、500D、160フィラメントの延伸糸を得
た。
【0059】得られたフィラメントの強度−伸長曲線を
図1に(b)として示す。
【0060】[比較例2]実施例2において、紡糸速度
を2500m/min とし、そのまま巻取った。
【0061】[比較例3]IV=1.27のポリエチレ
ンテレフタレートチップを通常の溶融紡糸法により、ホ
ール数144の口金を用いて紡糸した。このとき紡糸温
度は300℃であり、口金直下には、長さ300mm、温
度300℃の加熱筒を用い、紡糸速度は500m/min
とした。
【0062】紡出糸を、巻取ることなく引き続き210
℃の温度で5.4倍に延伸熱処理した後、3.0%の弛
緩率でリラックス処理を施し、420D、144フィラ
メントの延伸糸を得た。
【0063】得られたフィラメントの物性は、単糸繊度
2.9dであり、強度8.8g/d、破断伸度14.2
%であった。また、10%伸び時の強度は6.1g/d
であった。得られたフィラメントの強度−伸長曲線を図
1に(c)として示す。
【0064】[比較例4]硫酸相対粘度η=3.50の
ナイロン66チップを用い、比較例3と同様にして、常
法の溶融紡糸法により、総繊度420D、単糸繊度2.
9dのフィラメント糸を得た。このとき紡糸温度は29
5℃であった。得られた繊維の物性は、強度9.5g/
d、破断伸度22.5%であった。また、10%伸び時
の強度は、4.0g/dであった。得られたフィラメン
トの強度−伸長曲線を図1に(d)として示す。
【0065】上記実施例1〜2および比較例1〜4の繊
維物性、ならびにこの繊維を用いて製織した布帛の引張
り強度、エネルギー吸収性能、寸法安定性を表1に示
す。
【0066】なお、その布帛組織は平織りとし、製織に
際しては原糸の繊度に合わせて布帛のカバーファクタが
一定になるように打込み本数をコントロールした。
【0067】
【表1】 表1より明らかなように、本発明による場合(実施例1
〜2)は、強度ならびにエネルギー吸収性、寸法安定性
のいずれにおいても優れており、産業資材用繊維として
バランスがとれていた。
【0068】一方、比較例1は、用いるポリマの固有粘
度が低過ぎたため繊維強度が弱く、布帛としての引張り
強度に劣っていた。
【0069】また、比較例2は比較的高紡速で得た繊維
であるが、延伸していないために比較例1同様に強度が
不足していた。
【0070】比較例3および4は、10%伸び時の強度
が本発明の要求特性範囲よりも高く、布帛の柔軟性が低
いとともに、工程中のケバ・糸切れが同等繊度構成の実
施例の場合に比較して劣るものであった。
【0071】
【発明の効果】本発明に係るポリブチレンフレフタレー
ト系繊維は、90モル%以上がブチレンテレフタレート
単位からなり、固有粘度が1.00以上の高重合度の繊
維であって、引張り強度が5.8g/d以上、破断破断
伸度が18.0%以上、10%伸び時における強度Tが
3.0g/d以下であることによって、優れたエネルギ
ー吸収能と優れた寸法安定性を有し、シートベルト、ロ
ープ、ゴム補強用繊維などの産業資材用途において好ま
しく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維の強度−伸長曲線を例示する図である。
【符号の説明】
(a) :本発明の高強度ポリブチレンテレフタレートフィ
ラメント(実施例1)、 (b) :従来の低強度ポリブチ
レンテレフタレートフィラメント(比較例1)、 (c)
:比較として用いたポリエチレンテレフタレートフィ
ラメント(比較例3)、 (d) :比較として用いたナイ
ロン66フィラメント(比較例4)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 90モル%以上がブチレンテレフタレ
    ート単位からなり、固有粘度が1.00以上である高重
    合度ポリブチレンテレフタレート系重合体からなる繊維
    であって、引張り強度が5.8g/d以上、破断伸度が
    18.0%以上、かつ、10%伸び時における強度Tが
    3.0g/d以下であることを特徴とする高強度ポリブ
    チレンテレフタレート系繊維。[ここで、10%伸び時
    における強度Tは下記の式による値である。 T=(10%伸び時の強力)/(0%伸び時の繊度)]
  2. 【請求項2】 複屈折率が0.140以上、かつ、示
    差走査熱量分析による融点が210℃以上であることを
    特徴とする請求項1記載の高強度ポリブチレンテレフタ
    レート系繊維。
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