JP3649215B2 - 高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法 - Google Patents

高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維に関する。さらに詳しくは、シートベルト、ロープ、或いは、タイヤ・ベルトなどのゴム補強用コードなどの産業資材用として好ましく用いられるポリブチレンテレフタレート繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートベルト、ロープ、ゴム補強用コードに用いられる産業資材用繊維には、主として高重合度のポリエチレンテレフタレートもしくはポリヘキサメチレンアジパミド(N66)、ポリカプラミド(N6)などのポリアミドからなる繊維が用いられてきている。
【0003】
シートベルト、ロープなどに対する要求特性としては、高い引張り強力と耐磨耗性、さらには強力保持率で表される耐光性、寸法安定性に関連する経日格納性、そしてエネルギー吸収能などが挙げられる。
【0004】
従来この分野では、ポリアミド系繊維が用いられてきたが、ポリアミドの比較的高い平衡水分率に起因する寸法安定性の不足、あるいは耐光性不良などのため、ポリエチレンテレフタレート繊維に置き換わってきている。確かに、ポリエチレンテレフタレート繊維は安価な上、低い吸水性を有するので寸法安定性に優れ、また耐光性に優れた好ましい素材である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シートベルトなどの用途においては、近年、衝撃の初期におけるエネルギー吸収能がより重要な要素となってきている。上記ポリエチレンテレフタレート繊維は、高い引張り強度を出すために通常破断伸度が17%以下と低く、また高い初期引張り抵抗を有しているため、衝撃の際に対象となる被保護物にかかる初期衝撃が大きく、エネルギー吸収能の点から満足のいく素材ではなかった。
【0006】
すなわち、これまで使用されてきた汎用のポリアミド繊維やポリエチレンテレフタレート繊維を含め、シートベルトなどの用途として前述の要求特性をすべて満たすものは得られていなかった。
【0007】
最近開発が活発化している“ケブラー”に代表される芳香族ポリアミド繊維や液晶性芳香族ポリエステル繊維、またゲル紡糸による超高分子量ポリエチレン繊維や高分子量ポリビニルアルコール繊維などは確かに強度は著しく高いものの、初期引張り抵抗はポリエチレンテレフタレート繊維よりもさらに高く、また破断伸度はポリエチレンテレフタレート繊維よりもさらに低いため、エネルギー吸収能は劣るものである。
【0008】
上記エネルギー吸収能を高めるために、特開平4−257336号公報には、超高強力糸と、破断伸度70%程度の汎用ポリマのPOYを混繊してエネルギー吸収能を高める手段が開示されている。しかし、この方法では初期引張り抵抗の高い繊維の特性に布帛性能は引張られ、エネルギー吸収能は期待するほど高くならないものであった。また、超高強力糸を用いるため価格も高いものとなっていた。
【0009】
また、タイヤコード用原糸においては、耐久性能が要求されるトラック、バスなどのバイアスタイヤ用にはポリアミド糸が、また乗用車用のラジアルタイヤにはより寸法安定性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が使用されている。一般にタイヤ用原糸の開発の流れはこれまでよりコードの寸法安定性を高めるために、繊維の初期引張り抵抗をより高める方向で検討されてきた。しかし、この特性は、走行安定性は著しく改良するものの、近来認識がより高まってきた走行中の振動や騒音を軽減する衝撃吸収性能とは相反する特性となり最近では新たな問題点として取り上げられるようになってきた。
【0010】
この走行中の振動や騒音をより軽減する目的で、特開平5−9831号公報にはポリエチレンテレフタレート繊維を用いたタイヤコードにおいてコード作製条件を最適化することでコードの低荷重下における破断伸度を高め、乗り心地性を向上させる提案がなされている。また、特開平5−195359号公報には初期引張り抵抗の異なる2種類の原糸を混撚することで同様にコードの低荷重下における破断伸度を高め、乗り心地性を向上させる提案がなされている。
【0011】
しかし、いずれの方法も原糸から改良したものではなくエネルギー吸収能の点からみると満足のいく改善策とはなっていない。
【0012】
一方、ブチレンテレフタレート単位を主成分とする繊維はこれまでも数多く提案されている。この繊維は、ポリエチレンテレフタレートとポリアミドの中間の特性を有する繊維として位置づけられており、水中での寸法安定性が優れている、捲縮糸とした場合のヘタリが小さい、パワー感のあるストレッチ性があるなどの特徴を生かし、水着やパンティストッキング、剛毛糸などへの用途開発が進められている。
【0013】
例えば、特開昭56−43404号公報にはポリブチレンテレフタレート繊維からなる水着が提案されているが、その実施例中に記載の繊維物性は、強度4.3g/d、破断伸度34.6%である。また、特開昭51−123316号公報には、一段目の延伸倍率2.2〜4.5倍で多段延伸を行うという、ポリブチレンテレフタレート繊維からなる剛毛糸の製法が提案されている。しかし、これらはいずれも高強度を必要としない分野への展開で、用いるポリマの固有粘度は0.8〜0.9と低く、得られる延伸糸の強度も5g/d以下と低いものであり、高強度が必要な産業用途で使用できるものではなかった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記の従来の技術における問題点を解決し、シートベルト、ロープ、ゴム補強用繊維などの産業資材用途において、高い強度および優れたエネルギー吸収能と優れた寸法安定性を有する繊維を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、本発明の高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法は、95〜100モル%がブチレンテレフタレート単位からなる高重合度ポリブチレンテレフタレート系重合体を用いて溶融紡糸するに際し、ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が1.30以上であり、口金から紡出した糸条を200〜350℃に加熱した10〜100cmの長さの加熱筒を通過させ、500〜3000m/分の紡糸速度で引き取り、1.5〜5.5倍に延伸し、160〜210℃の温度で熱処理をすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明においては、10%伸び時における強度Tが3.0g/d以下であることが好ましい。
【0017】
ここで、10%伸び時における強度Tは下記の式による値である。
【0018】
T=(10%伸び時の強力)/(0%伸び時の繊度)
また本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は、さらに、複屈折率が0.140以上、かつ、示差走査熱量分析(DSC)による融点が210℃以上であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は、シートベルト、ロープ、ゴム補強用コードなどエネルギー吸収性能が要求される分野に好適に用いられる繊維であって、特定の高重合度ポリブチレンテレフタレート系重合体からなり、特定の引張り強度、破断伸度を有し、かつ強度−伸長曲線における初期引張り抵抗が小さいことを特徴とする。これにより、高強度はもちろんのこと、高いエネルギー吸収能および優れた寸法安定性を得ることができる。
【0021】
このポリブチレンテレフタレート系繊維は、ブチレンテレフタレート成分から構成されるが、その性質を損ねない範囲の少量であれば、曵糸性を高めるなどの目的で共重合成分を含んでいても差し支えない。ブチレンテレフタレート単位は90モル%以上、より好ましくは95モル%以上から構成される。共重合成分の比率が10モル%を越えると、高強度が達成されないために好ましくない。また、曳糸性を損ねない範囲で、布帛の性能を高める目的で、難燃剤や酸化防止剤を添加することも何等差し支えない。
【0022】
10%未満の共重合成分としては、エステル形成性成分であれば特に限定されず、テレフタル酸およびプロピレングリコール、プロピレンオキサイドの他にエチレングリコール、エチレンオキサイド、ブチレングリコール、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸などが挙げられるがこの限りではない。
【0023】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート系繊維は、固有粘度が1.00以上であり、より好ましくは1.20以上である。1.00未満であると所望の強度及び破断伸度を得ることが困難となるばかりでなく、長期間の使用に対する耐久性も損なわれる。繊維の固有粘度を1.00以上にするためには、用いるチップの固有粘度を高くすればよく、通常1.30以上のポリブチレンテレフタレートチップを用いることで達成できる。このように高い固有粘度を有するチップは比較的低粘度のチップから公知の固相重合などの手法により得ることが可能である。
【0024】
従来のポリブチレンテレフタレート系繊維では、用いるチップの固有粘度が1.1を越えると、紡糸が困難になるとともに、紡糸中の熱分解などにより粘度低下が大きく、高IVの繊維を得ることは困難であると考えられていたが、チップの固有粘度が1.30以上と高くても、紡糸条件を後述のごとく適正化することで何等問題なく高い固有粘度の繊維を得ることが可能である。
【0025】
さらに、本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は、引張り強度5.8g/d以上、好ましくは6.5g/d以上、破断伸度が18.0%以上、より好ましくは20.0%以上35.0%以下である。前述の産業資材用においては、エネルギー吸収能や寸法安定性の他に、使用に耐えうる強伸度特性がもちろん必要であり、上記範囲を外れると布帛やコード形態として使用したとき、引張り特性、引裂き特性、屈曲特性などの力学特性が劣り、不適当である。また、破断伸度が18.0%未満であると、たとえばシートベルト用途などで布帛としたとき、硬く柔軟性が損なわれるとともに、紡糸、製織時にケバや糸切れを起こし易いので不適当である。また、伸度が大き過ぎる場合には、布帛自体の伸度が大きくなり、成形時にたわみやすいなどの問題を生じてくるので好ましくない。
【0026】
さらに、本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は、強度−伸長曲線における10%伸び時における強度が3.0g/d以下と低いという特異な特性を有する。特に、0.5g/d以上2.0g/d以下であることが好ましい。
【0027】
この特性により、この原糸を用いた産業用資材は、著しく高いエネルギー吸収能を有することができる。従来、シートベルトなどの用途において高いエネルギー吸収能を持つ繊維は、強度−伸長曲線において、この曲線とX軸とで囲まれる面積が高いほどその性能が優れていると言われてきた。しかし衝撃の初期においてその衝撃を吸収するためには、面積ではなく低荷重時に高伸度を有する、すなわち10%伸び時における強度が3.0g/d以下であることの方が有効である。
【0028】
本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は上記のように特異な強度−伸長挙動を有し、かつ前述の力学特性、さらにはポリエステル特有の低吸水性とを合わせ持つので、高いエネルギー吸収能と優れた寸法安定性を合わせ持つことができる。
【0029】
さらに、10%伸び時における強度が3.0g/d以下であるという特性は、紡糸、延伸さらには製織時における毛羽発生や糸切れ抑制においても高い効果を発揮することができる。
【0030】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート系繊維の繊度構成は、用途に合わせて設定すればよい。一般には、総繊度250D以上1500D以下、単糸繊度1.0d以上20.0d以下、より好ましくは2.0d以上10.0d以下であることが本発明の特性を生かすために好ましい。もちろん、用途に応じて強力を高めるために、合糸し総繊度を増して使用することは何等差し支えない。繊維あるいはこの繊維を用いた布帛などの柔軟性を高めるためには、単糸繊度は小さい方が好ましいが、単糸繊度が1.0d未満と細くなると通常の直接紡糸では糸切れや繊度斑のため安定な紡糸が困難となるので実用的でない。
【0031】
次に、本発明にかかるポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法について説明する。
【0032】
本発明のポリブチレンテレフタレート系繊維は、通常の溶融紡糸法により口金より紡出される。このとき、ポリマの熱による劣化を防ぐために、紡糸機内におけるポリマの滞留時間は短いほど好ましく、通常10分以内、好ましくは1〜5分とすればよい。紡糸温度は通常260℃〜280℃であればよいが共重合成分の有無などにより適宜最適化すればよい。
【0033】
さらに、口金直下には加熱筒を配し、吐出糸条はこの加熱筒内を通過させることが必要である。この加熱筒は、一般に、10〜100cmの長さで、200℃〜350℃で温度制御された加熱筒であればよいが、その長さ及び温度条件は、得られる糸条の繊度やフィラメント数により最適化されればよい。この加熱筒は、溶融ポリマの固化を遅らせ高強度を発現させるために必要である。
【0034】
ここで、所望の強伸度特性を得るためには、ポリマは前述のごとく固有粘度が1.30以上のような高粘度ポリマを用いる。この固有粘度が1.30未満では、得られる糸の固有粘度を1.00以上とすることは困難であり、そのため、紡糸条件を適正化・改善しても所望の強伸度を得ることは難しい。
【0035】
なお、高温での熱劣化を防止するためには、必要に応じて加熱筒内雰囲気を高温不活性ガスでシールすることが好ましい。
【0036】
紡出糸条は、上記高温雰囲気中を通過した後、冷風で冷却固化され、ついで油剤が付与された後、紡糸速度を制御する引取りロールで引取られる。
【0037】
引取りロールに引取られた未延伸糸条は、通常連続して延伸されるが、一旦巻取った後に別工程で延伸してもよい。紡糸速度は、通常500m/min 〜3000m/min 、好ましくは1500m/min 以下であればよい。延伸は常法の熱延伸が採用されればよく、2段以上の多段延伸が好ましい。その延伸倍率は未延伸糸の複屈折、延伸温度、および多段延伸する際の延伸比配分等によって変化させうるが、1.5〜5.5倍、好ましくは2.0〜5.0倍のような高倍率がとられる。
【0038】
次いで、この延伸糸は熱固定される。熱固定は糸条を熱ローラや熱板に接触させたり、また高温気体中を通過させることなどの公知の方法により行えばよく、一般に160〜210℃、好ましくは180〜200℃の熱固定温度をとればよい。この熱固定時の張力および温度を変化させることで、乾熱収縮率をコントロールすることが可能である。150℃・30分における乾熱収縮率が9.0%以下であると、布帛やコードなどでの形態での使用においてもより寸法安定性が高くなり好ましい。
【0039】
本発明の高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維は、上述のように高粘度のポリブチレンテレフタレートチップを用い、かつ加熱筒を使用し、さらに高倍率で延伸し熱固定することにより初めて得られるものであり、従来のポリブチレンテレフタレート繊維の製造方法では得られない。
【0040】
さらに、本発明におけるポリブチレンテレフタレート系繊維は、工程上の毛羽発生を抑えるため、延伸工程および熱固定工程において、フィラメントに交絡処理を施すことは何等差支えない。交絡は、エア交絡など公知の方法が採用でき、例えばエア交絡の場合、用いる糸条の繊度や張力に応じて、エアの圧力を適宜変更する事で目的の交絡度を達成することができる。この場合、交絡度としては20以上さらには30以上が好ましい。
【0041】
また、このような条件を満足するポリブチレンテレフタレート系繊維は、複屈折が0.140以上、DSCによる融点が210℃以上の特性を有する。複屈折率が0.140未満である場合は所望の引張り強度が得られない場合が生じ、好ましくない。また、DSCによる融点が210℃未満の場合は、耐熱性や高温時の寸法安定性などが劣ったものになるので、好ましくない。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明における各物性は次のようにして測定した値である。
【0043】
(1) 固有粘度IV、相対粘度η:
(a) PBTの場合; ポリマ0.125gにオルソクロルフェノール25mlを加えて、120℃で30分間加熱して溶解する。その後、オストワルド粘度計にて相対粘度を測定し、IVを求める。
【0044】
(b) PETの場合; オストワルド粘度計を用いて、オルソクロロフェノール100mlに対し、試料3.0gを溶解した溶液の相対粘度ηrを25℃で測定し、次の近似式によりIVを算出する。
【0045】
IV=0.0242ηr+0.2634
ただし、ηr=(t×d)/(t0 ×d0 )、
t:溶液の落下時間(秒)、 t0 :オルソクロロフェノールの落下時間(秒)、 d:溶液の密度(g/cc)、 d0 :オルソクロロフェノールの密度(g/cc)である。
【0046】
(c) ナイロン66の場合; 試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計にて25℃で測定し、ηを求める。
【0047】
(2) 引張り強度、破断伸度: JIS−L−1017に準拠して測定する。
【0048】
(3) 複屈折率: 日本光学工業(株)製POH型偏光顕微鏡を用い、D線を光源として通常のベレックコンペンセーター法により求める。
【0049】
(4) 融点: Perkin-Elmer社製のDSC−1B型で、昇温速度20℃/min、試料量0.8mgで測定し、融解曲線の主ピーク温度を融点(Tm)とする。
【0050】
(5) 布帛の引張り強度: JIS−K−6328(ストリップ法)に準拠し、試料幅3cmで測定した。
【0051】
(6) 布帛のエネルギー吸収性能: 30cm四方の試料を空中で四隅を固定し、30cmの高さから、直径1cmの鉄球をその試料の中央部に落下させたときの鉄球の跳ね返り程度、ならびにJIS−L−1096(45°カンチレバー法)の剛軟度をもとに、相対評価し、○=良好、△=やや不良、×=不良でもって示した。
【0052】
(7) 布帛の寸法安定性: JIS−L−1096 6.9に準拠して測定した布帛水分率、及び、布帛を120℃で500 hr 熱処理した後の通気量変化をもとに、相対評価し、○=良好、△=やや不良、×=不良でもって示した。
【0053】
[実施例1]
IV=1.95のポリブチレンテレフタレートチップを通常の溶融紡糸法により、ホール数160の口金を用いて紡糸した。このとき紡糸温度は270℃とし、口金直下には、長さ300mm、温度300℃の加熱筒を配し、紡糸速度は600m/min とした。
【0054】
紡出糸を、巻取ることなく引続き2段延伸により、トータル延伸倍率4.1倍、最終延伸ロール温度180℃で延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリラックス処理を施し、500D、160フィラメントの延伸糸を得た。
【0055】
得られた繊維の複屈折率は0.159、DSCによる融点は219℃であった。また、その強度−伸長曲線は図1に(a)として示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様に、IV=1.95のポリブチレンテレフタレートチップを通常の溶融紡糸法により紡糸した。このとき紡糸速度を2000m/min とした。
【0057】
紡出糸は一旦巻取った後、次いで、実施例1と同様にして2.5倍の倍率で延伸を施した。さらに、最終延伸ロール温度180℃で延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリラックス処理を施し、350D、160フィラメントの延伸糸を得た。得られた延伸糸の複屈折率は0.161、DSCによる融点は220℃であった。
【0058】
[比較例1]
実施例1において、固有粘度が1.1のポリブチレンテレフタレートチップを用いた。紡糸温度は270℃とし、口金直下には、長さ300mm、温度300℃の加熱筒を用い、紡糸速度は600m/min とした。
【0059】
紡出糸を、巻き取ることなく引き続きトータル延伸倍率3.0倍、最終延伸ロール温度180℃で延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリラックス処理を施し、500D、160フィラメントの延伸糸を得た。
【0060】
得られたフィラメントの強度−伸長曲線を図1に(b)として示す。
【0061】
[比較例2]
実施例2において、紡糸速度を2500m/min とし、そのまま巻取った。
【0062】
[比較例3]
IV=1.27のポリエチレンテレフタレートチップを通常の溶融紡糸法により、ホール数144の口金を用いて紡糸した。このとき紡糸温度は300℃であり、口金直下には、長さ300mm、温度300℃の加熱筒を用い、紡糸速度は500m/min とした。
【0063】
紡出糸を、巻取ることなく引き続き210℃の温度で5.4倍に延伸熱処理した後、3.0%の弛緩率でリラックス処理を施し、420D、144フィラメントの延伸糸を得た。
【0064】
得られたフィラメントの物性は、単糸繊度2.9dであり、強度8.8g/d、破断伸度14.2%であった。また、10%伸び時の強度は6.1g/dであった。得られたフィラメントの強度−伸長曲線を図1に(c)として示す。
【0065】
[比較例4]
硫酸相対粘度η=3.50のナイロン66チップを用い、比較例3と同様にして、常法の溶融紡糸法により、総繊度420D、単糸繊度2.9dのフィラメント糸を得た。このとき紡糸温度は295℃であった。得られた繊維の物性は、強度9.5g/d、破断伸度22.5%であった。また、10%伸び時の強度は、4.0g/dであった。得られたフィラメントの強度−伸長曲線を図1に(d)として示す。
【0066】
上記実施例1〜2および比較例1〜4の繊維物性、ならびにこの繊維を用いて製織した布帛の引張り強度、エネルギー吸収性能、寸法安定性を表1に示す。
【0067】
なお、その布帛組織は平織りとし、製織に際しては原糸の繊度に合わせて布帛のカバーファクタが一定になるように打込み本数をコントロールした。
【0068】
【表1】
Figure 0003649215
【0069】
表1より明らかなように、本発明による場合(実施例1〜2)は、強度ならびにエネルギー吸収性、寸法安定性のいずれにおいても優れており、産業資材用繊維としてバランスがとれていた。
【0070】
一方、比較例1は、用いるポリマの固有粘度が低過ぎたため繊維強度が弱く、布帛としての引張り強度に劣っていた。
【0071】
また、比較例2は比較的高紡速で得た繊維であるが、延伸していないために比較例1同様に強度が不足していた。
【0072】
比較例3および4は、10%伸び時の強度が本発明の要求特性範囲よりも高く、布帛の柔軟性が低いとともに、工程中のケバ・糸切れが同等繊度構成の実施例の場合に比較して劣るものであった。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係るポリブチレンフレフタレート系繊維は、90モル%以上がブチレンテレフタレート単位からなり、固有粘度が1.00以上の高重合度の繊維であって、引張り強度が5.8g/d以上、破断破断伸度が18.0%以上、10%伸び時における強度Tが3.0g/d以下であることによって、優れたエネルギー吸収能と優れた寸法安定性を有し、シートベルト、ロープ、ゴム補強用繊維などの産業資材用途において好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維の強度−伸長曲線を例示する図である。
【符号の説明】
(a):本発明の高強度ポリブチレンテレフタレートフィラメント(実施例1)、
(b):従来の低強度ポリブチレンテレフタレートフィラメント(比較例1)、
(c):比較として用いたポリエチレンテレフタレートフィラメント(比較例3)、
(d):比較として用いたナイロン66フィラメント(比較例4)

Claims (2)

  1. 95〜100モル%がブチレンテレフタレート単位からなる高重合度ポリブチレンテレフタレート系重合体を用いて溶融紡糸するに際し、ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が1.30以上であり、口金から紡出した糸条を200〜350℃に加熱した10〜100cmの長さの加熱筒を通過させ、500〜3000m/分の紡糸速度で引き取り、1.5〜5.5倍に延伸し、160〜210℃の温度で熱処理をすることを特徴とする高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法。
  2. 得られる繊維の引張強度が5.8〜7.1g/d、破断伸度が18.0〜35.0%であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポリブチレンテレフタレート系繊維の製造方法。
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