JPH0790551A - 高負荷用すべり軸受材料およびその製造方法 - Google Patents

高負荷用すべり軸受材料およびその製造方法

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JPH0790551A JP5543094A JP5543094A JPH0790551A JP H0790551 A JPH0790551 A JP H0790551A JP 5543094 A JP5543094 A JP 5543094A JP 5543094 A JP5543094 A JP 5543094A JP H0790551 A JPH0790551 A JP H0790551A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 すべり軸受の耐摩耗性および非焼付性を、ス
パッタオーバレイの改善により、向上させる。 【構成】(1) Si0.5〜6%、Pb5〜40%、
Sn0.5〜10%、残部Al合金からなるオーバーレ
イ層が、Al─Si系合金およびPb─Sn合金の混合
粉末から製造されたターゲットを使用して作成され、優
れた耐摩耗性および非焼付性を同時に有するすべり軸受
材料、およびその製造方法。 (2)前記(1)に更に5%以下のCu、3%以下のM
n、およびV、Sb、Mg、Znの群から選ばれた少な
くとも1種を3%以下を含有。 【効果】 このスパッタオーバレイは、耐摩耗性、およ
び非焼付性に優れ、高負荷用すべり軸受に適用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はすべり軸受のオーバーレ
イ層の改良に関し、特に自動車、船舶、産業機器の内然
機関の高出力化に対応した耐摩耗性および非焼付性に優
れたオーバーレイを有するすべり軸受材料に好適なもの
である。
【0002】
【従来の技術】最近の内然機関の高出力化および高回転
化に伴って、軸受合金の表面に、電気メッキによりオー
バーレイ層を施して、なじみ性、埋収性、非焼付性等の
表面特性を改善してきた。また近年スパッタリングによ
りオーバーレイ層を施して耐摩耗性および耐食性を改善
し軸受性能の改良がなされてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電気メッキによるオー
バーレイとして、Pb−Sn,Pb−In−Sn,Pb
−Sn−Cu等があるが、Pb合金であるため軟らか
く、なじみ性、埋収性、非焼付性等は優れているが、耐
摩耗性、耐疲労性および耐食性に劣る。近年内然機関
は、高性能化および省エネルギー化のため出力が増大さ
れ、さらにコンパクトな設計がなされ軸受の幅が狭めら
れ、軸受にかかる面圧がますます大きくなってきてい
る。その結果、最近の内然機関の高出力化に対応出来な
くなってきた。またメッキ工程に要する処理液の廃液処
理にも莫大な費用がかかる。一方、前述の問題を解決す
るために、スパッタリングによりAl−20Sn合金の
オーバーレイを適用し、耐摩耗性および耐食性の向上が
なされてきたが、更により優れた耐摩耗性および非焼付
性が要求されるようになった。
【0004】
【問題を解決するための手段】オーバーレイの耐摩耗
性、非焼付性等の強度を向上させるためスパッタリング
技術に注目した。スパッタリングは目的とする成分のタ
ーゲットを作成することにより真空中で容易に基板上に
蒸着させることができる。従って、電気メッキでは困難
なアルミ合金もオーバーレイとして適用することが可能
である。真空中でアルゴンイオンがターゲットに衝突
し、その衝突エネルギーで弾き飛ばされたターゲットの
成分が基板上に衝突し蒸着されるものである。従ってオ
ーバーレイの成分は、ターゲットの成分と同等のものが
得られるが、オーバーレイの組織および硬度は、ターゲ
ットのそれと比べ非常に微細均一であり硬い。この微細
均一な組織および高い硬度が、オーバーレイの耐摩耗
性、耐疲労性等の強度を向上させる。しかし、さらに耐
摩耗性および非焼付性を向上させるために、本発明はA
l−Si系合金粉末とPb−Sn合金粉末の混合粉末か
ら製造されたターゲットを使用し改良をはかったもので
ある。Al−Pb合金は、Al軸受合金中でも最も優れ
た非焼付性をもつ合金であることが知られているが、A
lとPbの密度の差が大きく鋳造法では均一な組成の合
金を作ることは困難である。そこでAl合金とPb合金
の粉末を均一に混合し焼結および圧縮加工した合金板を
ターゲットとして使用した。また、こうして作成した合
金板はSiを含むため、オーバーレイの硬度を高め、耐
摩耗性を向上させる。また、Pbを含むため非焼付性を
向上させ、そのPb中にSnを含むため耐食性を向上さ
せる。また、オーバーレイの組成において、更に5%以
下のCu、3%以下のMn、およびV、Sb、Mg、Z
nの群から選ばれた少なくとも1種を3%以下を含むこ
とにより、オーバーレイの耐摩耗性、耐疲労性および非
焼付性を向上させるものである。
【0005】
【作用】次に、本発明のオーバーレイの組成を、前記特
許請求の範囲に記載のごとく限定する理由と、その作用
効果について、まとめて列記する。 (1)Pb:5〜40重量% 非焼付性、および親油性を改善する。この場合、5%未
満ではその効果が薄く、40%を越えるとAlマトリッ
クスの機械的強度が低下し、耐疲労性が低下する。 (2)Sn:0.5〜10重量% この合金からなるオーバーレイの耐食性を改善し、なじ
み性、非焼付性等の表面性能を改善させる。0.5%未
満では、その効果は薄く、20%を越えるとオーバーレ
イの機械的性質を低下させる。 (3)Si:0.5〜6重量% Alマトリックスの硬さを高め、耐摩耗性を改善する。
0.5%未満では、その効果は薄く、10%を越えると
脆くなるため軸受性能を低下させる。 (4)Cu:0〜5重量% Alマトリックスの機械的強度を改善するのに役立っ
て、かかるオーバーレイの耐疲労性、耐摩耗性、耐荷重
性等の機械的性質を改善する。5%を越えると著しく脆
くなり、オーバーレイの疲労強度を低下させる。 (5)Mn、V、Sb、MgおよびZnの中から選ばれ
た少なくとも1種:0〜3重量% (1)〜(4)の必須成分との相乗作用効果によりオー
バーレイの耐疲労性および非焼付性を改善する。3%を
越えると著しく脆くなり、オーバーレイの疲労強度を低
下させる。次に、Al−Si系合金粉末Pb−Sn合金
粉末の混合粉末から製造されるターゲットを使用する理
由と、その作用効果について、まとめて列記する。 (1)Al−Pb合金は、Al軸受合金中で、最も優れ
た非焼付性をもつ合金であることが知られているが、A
lとPbの密度の差が大きく鋳造法では均一な組成の合
金を作ることは困難である。そこでAl合金とPb合金
の粉末を均一に混合し、焼結および圧縮加工を施して、
ち密化した合金板を作成しターゲットとして使用する。 (2)こうして作成したターゲットは、Pb粒子が微細
でありマトリックス中に均一に分布しているため、スパ
ッタ皮膜中にも微細均一に分布し、非焼付性に優れたオ
ーバーレイを作る。 (3)Al−Si系合金粉末を使用することにより、A
lマトリックス中にSiを含むため、硬度を高め、耐摩
耗性を向上させる。 (4)Pb─Sn合金粉末を使用することにより、Pb
粒子中にSnが固溶しているため、Pbの耐食性を改善
する。 (5)合金粉末を焼結および圧縮加工した合金板を使用
するため、ち密で空孔がないため、スパッタ時にターゲ
ットからの異常放電もなく、容易にスパッタ皮膜が作成
される。またオーバーレイ層の厚さは、2〜50ミクロ
ンが有利であり、より好ましくは5〜20ミクロンであ
る。
【0006】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に
説明する。表1は本発明の軸受メタルに使用したオーバ
ーレイ層、中間層および軸受合金層の成分とオーバーレ
イ層の硬度、疲労試験および焼付試験の結果を示したも
のである。
【0007】
【表1】
【0008】表1に示される本発明のオーバーレイ層の
成分からなるアルミ合金のターゲットとして、Al─S
i系合金とPb─Sn合金の粉末を均一に混合し、焼結
および圧縮加工を施して、ち密化して作成した合金板を
使用した。次に表1に示される銅合金からなる合金層成
分を、低炭素鋼裏金に焼結、圧延工程によりバイメタル
を作成し、その後機械加工により半割メタルに成形し
た。このバイメタル製造方法を以下に示す。 1)厚さ1.3mmからなる低炭素鋼裏金に、鉛青銅粉
末(成分Cu−17Pb−3Sn、粒度150ミクロン
以下)を0.6mmの厚さに散布した。 2)850℃の焼結炉内(雰囲気ガス:30%水素−窒
素)で10分間の1次焼結を行った。 3)焼結合金のポーラスをなくすために圧延率0.5%
の1次圧延を行った。 4)更に焼結性を高めるため、1次焼結と同様な条件で
2次焼結を行った。 5)合金および裏金の機械的性質向上と寸法仕上げのた
め、圧延率4.5%の2次圧延を行った。 6)最終バイメタル寸法は、総厚1.6mm、合金厚
0.35mmに仕上げられた。また機械加工により成形
後、合金表面を切削して総厚1.5mmの半割メタルに
仕上げられた。
【0009】次にこうして成形した半割メタルを、脱脂
清浄化した後、スパッタリング治具に組み付けチャンバ
ー内に挿入し、次の条件でスパッタリングを行った。 1)真空引きし10-5Torrに達した後アルゴンガス
を導入し10-2〜10 -3Torrに保持した。またチャ
ンバー内の温度はヒーターにより200℃に保ち、次に
示すイオンボンバード終了まで加熱を続けた。 2)半割メタルを陰極とし、陽極との間に300Vの電
位をかけ、グロー放電させ、正に電荷したアルゴンイオ
ンを陰極の半割メタルに衝突させ、イオンボンバードを
30分間行い、軸受合金層の表面酸化膜および表面変質
層を除去した。 3)Ni合金板(Ni−30%Cu)のターゲットを陰
極とし、陽極との間に500Vの電位をかけ、グロー放
電させ、正に電荷したアルゴンイオンを陰極のターゲッ
トに衝突させ衝突エネルギーにより飛び出した粒子を、
ターゲットと平行に配置した半割メタルの内面に蒸着し
た。時間は5分間で2ミクロンの中間層を作成した。ま
たターゲットは、マグネットにより磁場をかけターゲッ
ト成分を効率よく蒸着させた。 4)前述の方法で作成された粉末ターゲットを陰極と
し、前記中間層と同様な条件で蒸着した。時間は60分
間で15ミクロンのオーバーレイ層を作成した。なおこ
の工程では、緻密なオーバーレイ層を作成するため半割
メタルの背面を冷却しながらスパッタリングを行った。
また、前述の中間層は、オーバーレイ中のSn成分が、
経時変化で下地合金である銅合金中に拡散し、接着界面
に脆いCu−Sn化合物を作成し接着を害すること、お
よびSn成分の低下によりオーバーレイの性能を低下さ
せるため付着させるものである。また、この層は電気メ
ッキによりNiを付着させて使用することも可能であ
る。
【0010】次に表1に示されるアルミ合金からなる合
金層成分を、低炭素鋼裏金に鋳造および圧接工程により
バイメタルを作成し、その後機械加工により半割メタル
に成形した。このバイメタル製造方法を以下に示す。 1)アルミ合金(Al−5%Si−4%Zn−1%Cu
−1%Pb)を配合し溶解して連続鋳造によりビレット
を作成した。 2)ビレットを圧延し1.0mmの合金板に仕上げた。 3)2.25mm厚さの低炭素鋼裏金と前記合金板を圧
延機(圧下率45%)により接合した。 4)最終バイメタル寸法は、総厚1.65mm、合金厚
0.45mmに仕上げられた。また機械加工により成形
後、合金表面を切削して総厚1.5mmの半割メタルに
仕上げられた。次にこうして成形した半割メタルを、脱
脂清浄化した後、前述の銅合金の上のスパッタリングと
同様な方法で、表1に示された成分のオーバーレイをそ
れぞれ10ミクロン付着させた。この場合前述の中間層
は不要である。こうして作成した軸受メタルを、マイク
ロビッカース硬度計にてオーバーレイ表面の硬度を10
グラムの荷重にて測定した。次に、疲労試験および焼付
試験を実施した。疲労試験の試験条件はつぎの通りであ
る。 (1)試験機・・・動荷重疲労試験機 (2)軸受寸法・・・内径53mm・巾17mm・肉厚
1.5mm (3)回転数・・・4000rpm (4)試験時間・・・20Hr (5)周速度・・・11.1m/sec (6)給油温度・・・120℃ (7)給油圧力・・・3kg/cm2 (8)潤滑油・・・SAE20 (9)給油角度・・・前進角36° (10)軸・・・材質S55C・粗さRmax1.0μ
m・硬度HRC55以上 (11)評価方法・・・疲労部面積が軸受面積の5%以
内であったものを合格とし、その荷重を疲労強さとす
る。 また、焼付試験の試験条件はつぎの通りである (1)試験機・・・静荷重焼付試験機 (2)軸受寸法・・・内径53mm・巾13mm・肉厚
1.5mm (3)回転数・・・2000rpm (4)周速度・・・5.6m/sec (5)給油温度・・・100℃ (6)給油量・・・20cc/min (7)潤滑油・・・SAE20 (8)軸・・・材質S55C・粗さRmax1.0μm (9)試験方法・・・荷重を10分毎に50kg/cm
2 ずつ上げるステップアップ方式 (10)評価方法・・・軸受背面温度が200℃を超え
るか、又は電流値が20Aを超えた場合焼付とする。 表1に示されるように、比較品1、2と比べて、本発明
品3〜14は、各成分の効果でオーバーレイ硬度が高
く、耐摩耗性が改善され、疲労強さも向上した。またP
bの効果で非焼付性が改善されていることがわかる。
【0011】
【発明の効果】
(1)オーバーレイ層であるAl合金中にPbが多く含
まれ、さらにSn、Siが含まれるため、硬度が高く、
耐摩耗性が改善され優れた疲労強度、非焼付性および耐
食性を有する。 (2)オーバーレイ層であるAl合金中にPb、Sn、
Siが含まれ、さらに、CuおよびMn、V、Sb、M
g、Znの中から1種以上が含まれるため、硬度が高
く、耐摩耗性が改善され優れた疲労強度、非焼付性およ
び耐食性を有する。 (3)均一な組成からなる粉末ターゲットを使用して製
造されるため、耐摩耗性および非焼付性をいっそう改善
し、内燃機関の高出力化に適したすべり軸受材料を提供
するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 14/34 A 8414−4K

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼裏金層、軸受合金層およびスパッタリ
    ングによるオーバーレイ層から構成される3層すべり軸
    受材料において、該スパッタオーバーレイ層が2〜50
    ミクロンの厚さであり、Si0.5〜6%、Pb5〜4
    0%、Sn0.5〜10% 、残部Al合金からなり、さら
    に該オーバーレイ層が、Al−Si系合金粉末とPb−
    Sn合金粉末の混合粉末から作成されたターゲットを使
    用したもので、かつ該オーバーレイ層の硬さが、Hv1
    00以上を有することにより、耐摩耗性および非焼付性
    を同時に有することを特徴とする高負荷用すべり軸受材
    料。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のオーバーレイの組成に
    おいて、5%以下のCu、3%以下のMn、およびV、
    Sb、Mg、Znの群から選ばれた少なくとも1種を3
    %以下を含み耐摩耗性および非焼付性を同時に有するこ
    とを特徴とする高負荷用すべり軸受材料。
  3. 【請求項3】 請求項1および請求項2に記載のオーバ
    ーレイの組成をSi1.5〜7%を含むAl合金粉末と
    Sn5〜35%を含むPb合金粉末を混合し、焼結およ
    び圧縮加工を施す事により作成したターゲットを使用し
    てスパッタリングを行う事を特徴とする高負荷用すべり
    軸受材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 軸受合金が銅合金であり、その上にNi
    またはNi合金の中間層をもうけ、さらにその上に請求
    項1から請求項3までのいずれか一項に記載のオーバー
    レイをもうけた、耐摩耗性および非焼付性を同時に有す
    ることを特徴とする高負荷用すべり軸受材料。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の銅合金が、Pb15〜2
    5%、Sn0.5〜10%、Cu残部の組成からなる、
    耐摩耗性および非焼付性を同時に有することを特徴とす
    る高負荷用すべり軸受材料。
  6. 【請求項6】 軸受合金がアルミ合金であり、その上に
    請求項1、請求項2および請求項3に記載のオーバーレ
    イをもうけた、耐摩耗性および非焼付性を同時に有する
    ことを特徴とする高負荷用すべり軸受材料。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のアルミ合金が、Zn1〜
    10%、Si1〜15%、Cu0.1〜5%、Pb0.
    1〜5%の組成からなる、耐摩耗性および非焼付性を同
    時に有することを特徴とする高負荷用すべり軸受材料。
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