JPH078549A - 医療用リン酸カルシウム - Google Patents

医療用リン酸カルシウム

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JPH078549A
JPH078549A JP5184417A JP18441793A JPH078549A JP H078549 A JPH078549 A JP H078549A JP 5184417 A JP5184417 A JP 5184417A JP 18441793 A JP18441793 A JP 18441793A JP H078549 A JPH078549 A JP H078549A
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calcium
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phosphoric acid
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Mitsuo Kondo
光雄 近藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】医療用リン酸カルシウムにおいて、その機械的
強さが大きい医療用リン酸カルシウムを提供することを
目的とする。 【構成】リン酸カルシウムにおいて主成分をリン酸四カ
ルシウムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比
が1.55以上1.98以下であることを特徴とする医
療用リン酸カルシウム、およびこの医療用リン酸カルシ
ウムとリン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リ
ン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウムの群からな
る少なくとも一つからなる医療用リン酸カルシウム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は医科や歯科などの医用領
域に用いられる医療用リン酸カルシウムで、その機械的
強さが大きいものである。詳しくは病的あるいは外的原
因等により生じた骨や歯などの硬組織の欠損部や空隙部
に充填する医療用リン酸カルシウムであり、その機械的
強さが大きい医療用リン酸カルシウムである。特に本発
明の医療用リン酸カルシウムが硬化性を示す場合には、
歯や骨など硬組織の欠損部や空隙部に適応し、当該個所
に所望の形態の機械的強さの大きい、リン酸カルシウム
硬化体を形成させ、欠損空隙部の機能を補綴することと
共に新生硬組織の発生を誘発する医療用リン酸カルシウ
ムである。
【0002】
【従来の技術】リン酸カルシウムは医療用材料として注
目されている。骨や歯などの生体硬組織の主成分はハイ
ドロキシアパタイトCa10(PO46(OH)2であ
り、化学合成したハイドロキシアパタイトも生体親和性
に優れることが知られている。またリン酸三カルシウム
Ca3(PO42も生体親和性に優れるリン酸カルシウ
ムとして臨床応用や研究が進められている。リン酸四カ
ルシウムCa4(PO42Oは塩基性のリン酸カルシウ
ムで加水分解によりハイドロキシアパタイトに相変化す
ることが知られている。他にも最近、リン酸四カルシウ
ムはリン酸水素カルシウムなどと混合すると、その混合
物を水で練和するとセメントのように硬化する硬化性組
成物となることがわかり注目を集めている。
【0003】これらのリン酸カルシウムは生体親和性に
優れる材料であるが、臨床応用を考えると、その機械的
強さには問題が残されていた。
【0004】リン酸カルシウムにおける機械的強さに関
する問題点を解決するために、例えば硬化性組成物にお
いてはアルミナなど硬材料を混合する方法が提案されて
いるが、硬化性組成物において硬化体の機械的強さの向
上を目的として硬材料を混合した場合、硬化体の強さが
逆に小さくなるなど解決法とは至らなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のリン酸カルシウ
ムは生体親和性に優れる材料、あるいは生体親和性に優
れる材料の構成成分となるが、機械的強さが不十分であ
った。本発明は生体親和性に優れ、かつ機械的強さが大
きい医療用リン酸カルシウムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前項に記載したリン酸カ
ルシウムにおける機械的強さに関する問題点を解決する
ために本発明者は新たなリン酸カルシウムを種々検討し
た結果、リン酸カルシウムにおいて主成分がリン酸四カ
ルシウムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比
が1.55以上1.98以下であることを特徴とする医
療用リン酸カルシウムが優れた機械的強さを示し、臨床
応用可能な医療用リン酸カルシウムであることを見いだ
し、またそのリン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウ
ム、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸
二水素カルシウムの群からなる少なくとも一つとを混合
した硬化性組成物が優れた機械的強さを示し、臨床応用
可能な硬化性の医療用リン酸カルシウムであることを見
いだし本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明の医療用リン酸カルシウムと
はリン酸カルシウムにおいて主成分がリン酸四カルシウ
ムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.
55以上1.98以下であることを特徴とする医療用リ
ン酸カルシウム、およびこの主成分がリン酸四カルシウ
ムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.
55以上1.98以下であることを特徴とする医療用リ
ン酸カルシウムと、リン酸水素カルシウム、リン酸三カ
ルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウ
ムの群からなる少なくとも一つとを混合した硬化性を持
つ医療用リン酸カルシウムである。
【0008】リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウ
ム、リン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウムの群
からなる少なくとも一つと、主成分がリン酸四カルシウ
ムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.
55以上1.98以下であることを特徴とする医療用リ
ン酸カルシウムを混合した硬化性をもつ混合物も医療用
リン酸カルシウムであるが、主成分がリン酸四カルシウ
ムであり、成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.
55以上1.98以下であることを特徴とする医療用リ
ン酸カルシウムと区別するために、以下の記述において
は医療用リン酸カルシウム硬化性組成物という。
【0009】本発明でいうリン酸カルシウムとはリン酸
PO4、ならびにカルシウムCaを主成分として含有す
る化合物、あるいはその混合物である。本発明の場合、
主成分はリン酸カルシウムであり、添加物として他の元
素が固溶されている場合もリン酸カルシウムという。
【0010】本発明でいう固溶とは、異なる物質が互い
に溶け合った状態をいう。本発明で用いられる場合、固
溶とは全組成にわたって元素が均一である必要はなく一
部分が溶け合った状態もこれに含まれる。
【0011】本発明でいうリン酸四カルシウムはCa4
(PO42Oであり、一般的な合成方法としては、原料
中のカルシウムとリン酸のモル比が2:1になるように
混合し1200度以上で焼成後急冷あるいは窒素等不活
性ガス雰囲気下で1200度に焼成すれば得られる。例
えば原料としてリン酸水素カルシウムと炭酸カルシウム
を等モル混合したものが例示される。
【0012】本発明でいうリン酸三カルシウムはCa3
(PO42でありα−Ca3(PO42、β−Ca3(P
42のいずれでもよいが、α−Ca3(PO42がよ
り生体活性な材料として知られている。リン酸三カルシ
ウムの製造法としてはカルシウム源とリン酸源を3:2
のモル比に混合し加熱する。1200度以上ではα型リ
ン酸三カルシウムが1000度以下ではβ型リン酸三カ
ルシウムが主に生成することが公知となっている。
【0013】本発明でいうハイドロキシアパタイトはC
10(PO46(OH)2であり、カルシウム源とリン
酸源を5:3のモル比に混合し加熱する。原料により多
少異なるが800度から1200度でハイドロキシアパ
タイトが生成する。
【0014】本発明でいうリン酸水素カルシウムとはC
aHPO4、CaHPO4・2H2Oなどであり化学薬品
として購入可能である。
【0015】本発明でいうリン酸八カルシウムはCa8
2(PO46・5H20であり公知の方法で合成され
る。
【0016】本発明でいうリン酸二水素カルシウムはC
a(H2PO42、Ca(H2PO42・2H20などで
あり化学薬品として購入可能である。
【0017】本発明においてカルシウムとリン酸のモル
比とはカルシウムのモル数をリン酸のモル数で割った
値、すなわちCa/PO4をいう。
【0018】本発明は下に記述する原理で構成される。
リン酸カルシウムの多くは乾式法によって製造される。
すなわちリン酸源およびカルシウム源となる原料粉末を
混合し、高温で熱処理して製造する。リン酸カルシウム
の製造方法としては他にも水溶液中におけるカルシウム
イオンとリン酸イオンの反応による湿式法があるが、リ
ン酸四カルシウムおよびリン酸三カルシウムなどは乾式
法によってしか製造されない。
【0019】乾式法でリン酸カルシウムを製造する場
合、熱処理温度および、冷却速度ならびに、原料中のカ
ルシウムとリン酸のモル比が生成物を決定する重要な要
素となる。
【0020】原料中のカルシウムとリン酸のモル比が製
造しようとするリン酸カルシウムと異なる場合、その差
異が小さい場合には製造しようとするリン酸カルシウム
のカルシウム元素あるいはリン酸基の格子欠損となる
が、その差異が大きい場合には異なるリン酸カルシウム
も製造され、二つ以上のリン酸カルシウムが固溶したリ
ン酸カルシウムが製造される。製造されるリン酸カルシ
ウムにおいて主成分がリン酸四カルシウムであり、成分
中のカルシウムとリン酸のモル比が1.55以上1.9
8であることは本発明において必須である。製造される
主成分がリン酸四カルシウムである医療用リン酸カルシ
ウムにおいてさらに機械的強さを大きくするためには、
製造される主成分がリン酸四カルシウムである医療用リ
ン酸カルシウムにおける成分中のカルシウムとリン酸の
比が1.6以上1.94以下がより好ましく、1.7以
上1.94以下が更に好ましい。このようなリン酸カル
シウムは化学用試薬としては問題があるものの医療用リ
ン酸カルシウムとして用いる場合、その生成する両方の
リン酸カルシウムが優れた生体親和性を示すものであれ
ば問題がない。
【0021】例えば、原料中のカルシウムとリン酸のモ
ル比を2.0として混合し、所定の高温で処理した後、
室温まで急冷すればリン酸四カルシウムが製造される。
原料中のカルシウムとリン酸のモル比を2.0未満で
1.98より大きくすればカルシウムの格子欠損を持つ
リン酸四カルシウムが製造される。しかし原料中のカル
シウムとリン酸のモル比を1.55以上で1.98以下
として混合し、所定の温度で処理した後、室温まで急冷
すればリン酸四カルシウムとリン酸三カルシウムが固溶
した医療用リン酸カルシウムが製造できる。このリン酸
四カルシウムとリン酸三カルシウムが固溶した医療用リ
ン酸カルシウムはリン酸四カルシウムとリン酸三カルシ
ウムの複合材料と考えられ、そのため純粋なリン酸四カ
ルシウムと比較して機械的強さが大きいなる。
【0022】熱処理温度および冷却速度によっても二種
類以上のリン酸カルシウムが固溶している医療用リン酸
カルシウムを製造する事が可能である。例えばリン酸四
カルシウムは高温安定相であり、所定の温度で熱処理し
ても急冷せず徐冷すれば、低温安定相であるハイドロキ
シアパタイトと酸化カルシウムが生成する。従って、こ
の場合はリン酸四カルシウム、ハイドロキシアパタイト
の二種類のリン酸カルシウムに加えて酸化カルシウムが
生成する。酸化カルシウムは生体親和性が必ずしも良好
とは報告されておらず、また固溶してもリン酸カルシウ
ムの機械的強さを大きくしない。酸化カルシウムの生成
を抑制するには原料のカルシウムとリン酸のモル比を
2.0より小さくすることが有効である。原料のカルシ
ウムとリン酸のモル比を1.98以下にして、所定の温
度で熱処理し、やや徐冷すればリン酸四カルシウムとハ
イドロキシアパタイトが固溶している医療用リン酸カル
シウムあるいはリン酸四カルシウムとハイドロキシアパ
タイトとリン酸三カルシウムが固溶している医療用リン
酸カルシウムが製造できる。
【0023】一般的に医療用リン酸カルシウムの製造に
あたり、リン酸三カルシウムの量を増やそうとする場合
には原料中のカルシウムとリン酸のモル比を1.55以
上1.98以下の範囲で小さくすれば、すなわちカルシ
ウムを少なくすれば達成できる。また医療用リン酸カル
シウムの製造にあたり、ハイドロキシアパタイトの量を
増やそうとする場合には所定の温度で熱処理した後、冷
却速度を小さく、すなわちゆっくり冷却するか、ある4
00度以上の低い温度で冷却を一定時間停止すればよ
い。
【0024】これは約1200度以上の高温では安定相
であるリン酸四カルシウムが1200度より低く、40
0度より高い低温においては、低温安定相のハイドロキ
シアパタイトに相変化しようとする性質を利用したもの
である。従って約1200度から400度より低い温
度、例えば室温まで急冷した場合には高温安定相である
リン酸四カルシウムから低温安定相であるハイドロキシ
アパタイトに相変化する時間がなく、リン酸四カルシウ
ムが最終的に製造されるが、約1200度から400度
の温度領域においては高温安定相であるリン酸四カルシ
ウムから低温安定相であるハイドロキシアパタイトへの
相変化が進行する。従って1200度から400度への
冷却速度を遅くすれば、相変化の時間が長くなりハイド
ロキシアパタイト生成量が増大する。1200度から4
00度の途中で冷却を一定時間停止しても、高温安定相
のリン酸カルシウムから低温安定相のハイドロキシアパ
タイトへの相変化は進行しているので、二つの方法、あ
るいは他の方法でも1200度から400度までの冷却
時間を長くする方法は本質的に同じである。
【0025】本発明において重要な要素は製造された主
成分がリン酸四カルシウムである医療用リン酸カルシウ
ムにおいて成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.
55以上1.98以下であることであり、合成法の制約
は受けない。
【0026】本発明の医療用リン酸カルシウムは以下に
記載する方法で製造される。
【0027】本発明の医療用リン酸カルシウムを製造す
る場合、上述した様に、原料におけるカルシウムとリン
酸のモル比が1.55以上1.98以下になるように混
合する。
【0028】カルシウム源となる原料としては炭酸カル
シウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、シュウ酸
カルシウム、乳酸カルシウム、レブリン酸カルシウム、
ナフテン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸
カルシウムなどカルシウムを含む化合物が例示される。
またリン酸源として五酸化二リン、正リン酸、リン酸ア
ンモニウム、リン酸水素アンモニウムなどリン酸を含む
化合物が例示される。カルシウムとリン酸とを両方含有
する原料としてはリン酸水素カルシウム、ホスフィン酸
カルシウムなどが例示される。
【0029】このリン酸カルシウムの原料は乳鉢、ボー
ルミル、ミキサーなど公知の方法で混合される。混合が
十分でないと均一な医療用リン酸カルシウムが製造しに
くい。また混合する際に水、アルコール類、グリセリ
ン、ポリエチレングリコールなど公知の混合助材として
使用しても良い。
【0030】原料のカルシウムとリン酸をモル比で1.
55以上1.98以下に混合した混合物は、そのままあ
るいは任意の成形圧をかけた後、所定の温度で熱処理さ
れる。1200度以上で熱処理し、急冷するとリン酸四
カルシウムを主成分とし、リン酸四カルシウムにリン酸
三カルシウムが固溶した医療用リン酸カルシウムが製造
でき、1200度以上での熱処理の後、徐冷すればリン
酸四カルシウムを主成分とし、リン酸四カルシウムにリ
ン酸三カルシウムとハイドロキシアパタイトが固溶した
医療用リン酸カルシウムが製造できる。
【0031】熱処理の温度は1200度以上でないと本
発明の医療用リン酸カルシウムは製造できない。これは
リン酸四カルシウムが1200度以上で安定相となるた
めである。1200度以上であれば本発明の医療用リン
酸カルシウムが製造できるが、熱処理温度によって、そ
の機械的性質などは異なるものが得られる。本発明にお
いては熱処理の温度に条件をつけるものではないが高温
になると、比表面積の小さい医療用リン酸カルシウムが
製造されるので機械的強さの大きい医療用リン酸カルシ
ウムが製造できる。しかし高温になれば電気炉、ガス炉
などの温度制御が困難になるため製造コスト的には不利
なものとなる。
【0032】本発明は熱処理時間に制限をつけるもので
はない。しかし、本発明において優れた医療用リン酸カ
ルシウムを製造するには、ある程度の熱処理時間が必要
である。この熱処理の間に原料中のカルシウムあるいは
リン酸が、拡散移動し、均一な高温安定相であるリン酸
四カルシウムを主成分とする医療用リン酸カルシウムが
製造できる。一般的に熱処理温度が高い方が、カルシウ
ムあるいはリン酸の拡散速度が大きいので短時間での熱
処理が可能である。
【0033】熱処理の後、冷却する。冷却方法について
は、室温まで急冷するなど、上述したとおりであるが、
本発明において本質的な要件はリン酸四カルシウムを主
成分とする医療用リン酸カルシウムにおいてカルシウム
とリン酸のモル比を1.55以上1.98以下とするこ
と、すなわち原料における、合計のカルシウムとリン酸
のモル比を1.55以上1.98以下とすることである
ので冷却方法などの制限はうけない。
【0034】冷却後、製造されたリン酸カルシウムは、
そのままあるいは粉砕され最終製造物となる。粉砕には
乳鉢、ボールミル、エアーミルなど公知の粉砕機が使用
される。
【0035】本発明により製造された医療用リン酸カル
シウムに硬化性を持たせたい場合には、リン酸水素カル
シウム、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、リ
ン酸二水素カルシウムの群からなる少なくとも一つと上
述の方法で製造されたリン酸四カルシウムを主成分と
し、成分中のカルシウムとリン酸のモル比が1.55以
上1.98以下であることを特徴とする医療用リン酸カ
ルシウムを、混合して医療用リン酸カルシウム硬化性組
成物とする。医療用リン酸カルシウム硬化性組成物の混
合が十分でない場合には医療用リン酸カルシウム硬化性
組成物である粉末部を水などの練和液で練和しても不均
一な硬化反応がおこり、硬化速度が遅くなったり、硬化
体の機械的強さが低下する。
【0036】本発明における医療用リン酸カルシウムに
おける医療用リン酸カルシウム硬化性組成物において必
須条件はカルシウムとリン酸のモル比が1.55以上
1.98以下であることを特徴とする主成分がリン酸四
カルシウムを使用することである。ただし、臨床応用に
おける硬化体の機械的強さの観点からすれば医療用リン
酸カルシウム硬化性組成物は混合物中の合計のカルシウ
ムとリン酸のモル比が0.5から1.9なるように混合
するのが好ましく、より好ましくはカルシウムとリン酸
のモル比が0.8から1.8であり、カルシウムとリン
酸の比が1.0から1.8が更に好ましい。
【0037】医療用リン酸カルシウム硬化性組成物は粉
末部あるいは練和液にX線造影性、練和性向上、薬物等
の除放等を目的として第三の成分を添加することができ
る。第三の成分としてはハイドロキシアパタイト、フル
オロアパタイト、リン酸三カルシウム、シリカ、硫酸バ
リウム、酸化ジルコニウム、次炭酸ビスマス、フッ化カ
ルシウム、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、ケイフッ化
ナトリウムなどの無機物あるいはポリメタクリル酸メチ
ル、グリセリン、シリコ−ンオイル等の有機物さらに薬
品の薬物の除放性を期待するために抗生物質などの医薬
品を粉末部あるいは練和液に混合することも有効であ
る。ハイドロキシアパタイトなど添加物自身が生体親和
性を有するものについては60重量パーセント以下、生
体為害性が考えられるポリメタクリル酸メチル等につい
ては40重量パーセント以下の添加が望ましい。
【0038】医療用リン酸カルシウム硬化性組成物は粉
末部を練和液で練和することにより硬化反応が開始する
が、粉末と練和液の重量パーセント混合比(以下P/L
と言う)は硬化性組成物の練和性、硬化時間、硬化体の
機械的強度、気孔率などに影響を及ぼす。P/Lが大き
くなりすぎると硬化性組成物の練和性が悪くなり、P/
Lが小さくなりすぎると硬化体の機械的強度が小さくな
る。また気孔率の大きい硬化体を作成したいときにはP
/Lを小さくし、気孔率の小さい硬化体を作成したいと
きにはP/L比を大きくする。一般的にはP/Lが0.
5から8であり、P/Lが1から6であることがより望
ましい。
【0039】本発明を実施例で更に詳しく説明する。な
お本発明の医療用リン酸カルシウムの効果は医療用リン
酸カルシウム硬化性組成物とした時の方がわかりやすい
ので、医療用リン酸カルシウム硬化性組成物について記
載した。
【0040】また本医療用リン酸カルシウム硬化性組成
物の硬化時間、機械的強さの測定は日本工業規格T66
02に規定されている歯科用りん酸亜鉛セメントの凝固
試験および破砕抗力試験に準じて測定した。ただし、こ
の規格は歯科用りん酸亜鉛セメント用であり、日本工業
規格T6602に規定は「標準ちょう度のセメントを練
和を開始してから3分を経過したときに恒温器中に移
す」と規定されているが本医療用リン酸カルシウム硬化
性組成物の場合には臨床応用を考慮してP/Lを4.0
とし、練和を開始して1分で恒温器中に試料を移した。
また硬化後における硬化性組成物の成分は粉末X線回折
法により分析した。
【0041】
【実施例1】炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを
混合物のカルシウムとリン酸のモル比が1.95となる
ようにイソプロパノールを混合助材としてボールミルで
24時間混合した。混合物をろ過、乾燥後、電気炉にて
大気中1600度で24時間焼成し、その後デシケータ
中で室温まで急冷した。乳鉢にて粉砕後、本医療用リン
酸カルシウムを粉末X線回折法で分析するとリン酸四カ
ルシウムとリン酸三カルシウムがモル比で9:1の割合
で生成しており、互いに固溶していた。また製造された
医療用リン酸カルシウムのカルシウムとリン酸のモル比
は1.95であった。
【0042】
【実施例2】炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを
混合物のカルシウムとリン酸のモル比が2.0となるよ
うにイソプロパノールを混合助材としてボールミルで2
4時間混合した。混合物をろ過、乾燥後、電気炉にて大
気中1600度で24時間焼成し、その後デシケータ中
で室温まで急冷した。乳鉢にて粉砕後、本医療用リン酸
カルシウムを粉末X線回折法で分析するとリン酸四カル
シウムのみが製造されていた。また製造された医療用リ
ン酸カルシウムのカルシウムとリン酸のモル比は2.0
であった。
【0043】
【実施例3】炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを
混合物のカルシウムとリン酸のモル比が1.98となる
ようにイソプロパノールを混合助材としてボールミルで
24時間混合した。混合物をろ過、乾燥後、電気炉にて
大気中1500度で12時間焼成し、その後デシケータ
中で室温まで急冷した。乳鉢にて粉砕後、本医療用リン
酸カルシウムを粉末X線回折法で分析するとリン酸四カ
ルシウムとリン酸三カルシウムがモル比で24:1の割
合で生成しており、互いに固溶していた。また製造され
た医療用リン酸カルシウムのカルシウムとリン酸のモル
比は1.98であった。
【0044】
【実施例4】炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを
混合物のカルシウムとリン酸のモル比が1.8となるよ
うにイソプロパノールを混合助材としてボールミルで2
4時間混合した。混合物をろ過、乾燥後、電気炉にて大
気中1500度で12時間焼成し、その後デシケータ中
で室温まで急冷した。乳鉢にて粉砕後、本医療用リン酸
カルシウムを粉末X線回折法で分析するとリン酸四カル
シウムとリン酸三カルシウムがモル比で3:2の割合で
生成しており、互いに固溶していた。また製造された医
療用リン酸カルシウムのカルシウムとリン酸のモル比は
1.8であった。
【0045】
【実施例5】炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを
混合物のカルシウムとリン酸のモル比が1.99となる
ようにイソプロパノールを混合助材としてボールミルで
24時間混合した。混合物をろ過、乾燥後、電気炉にて
大気中1500度で12時間焼成し、その後デシケータ
中で室温まで急冷した。乳鉢にて粉砕後、本医療用リン
酸カルシウムを粉末X線回折法で分析するとリン酸四カ
ルシウムしか検出されなかった。また製造されたリン酸
カルシウムのカルシウムとリン酸のモル比は1.99で
あった。
【0046】
【実施例6】実施例1で製造されたカルシウムとリン酸
のモル比が1.95であるリン酸四カルシウムとリン酸
水素カルシウムを1:1のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は20分間で、24時間後の破砕抗力は980kg
f/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキ
シアパタイトであった。
【0047】
【実施例7】実施例2で製造されたカルシウムとリン酸
のモル比が1.95であるリン酸四カルシウムとリン酸
水素カルシウムを1:1のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は20分間で、24時間後の破砕抗力は780kg
f/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキ
シアパタイトであった。
【0048】
【実施例8】実施例3で製造されたカルシウムとリン酸
のモル比が1.98であるリン酸四カルシウムとリン酸
水素カルシウムを1:1のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は20分間で、24時間後の破砕抗力は920kg
f/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキ
シアパタイトであった。
【0049】
【実施例9】実施例1で製造されたカルシウムとリン酸
のモル比が1.95であるリン酸四カルシウムと、リン
酸三カルシウムを2:1のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は40分間で、24時間後の破砕抗力は700kg
f/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキ
シアパタイトであった。
【0050】
【実施例10】実施例2で製造されたカルシウムとリン
酸のモル比が2.0であるリン酸四カルシウムと、リン
酸三カルシウムを2:1のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は40分間で、24時間後の破砕抗力は650kg
f/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキ
シアパタイトであった。
【0051】
【実施例11】実施例1で製造されたカルシウムとリン
酸のモル比が1.95であるリン酸四カルシウムと、リ
ン酸八カルシウムを1:3のモル比で混合したものを粉
末部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬
化時間は一時間間で、24時間後の破砕抗力は700k
gf/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロ
キシアパタイトであった。
【0052】
【実施例12】実施例2で製造されたカルシウムとリン
酸のモル比が2.0であるリン酸四カルシウムと、リン
酸八カルシウムを1:3のモル比で混合したものを粉末
部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の硬化
時間は一時間で、24時間後の破砕抗力は600kgf
/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロキシ
アパタイトであった。
【0053】
【実施例13】実施例1で製造されたカルシウムとリン
酸のモル比が1.95であるリン酸四カルシウムと、リ
ン酸二水素カルシウムを7:2のモル比で混合したもの
を粉末部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物
の硬化時間は一時間で、24時間後の破砕抗力は790
kgf/cm2であった。また硬化体の主成分はハイド
ロキシアパタイトであった。
【0054】
【実施例14】実施例2で製造されたカルシウムとリン
酸のモル比が2.0であるリン酸四カルシウムと、リン
酸二水素カルシウムを7:2のモル比で混合したものを
粉末部とし、蒸留水を練和液とした。本硬化性組成物の
硬化時間は一時間で、24時間後の破砕抗力は580k
gf/cm2であった。また硬化体の主成分はハイドロ
キシアパタイトであった。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸カルシウムにおいて主成分がリン
    酸四カルシウムであり、成分中のカルシウムとリン酸の
    モル比が1.55以上1.98以下であることを特徴と
    する医療用リン酸カルシウム。
  2. 【請求項2】 リン酸カルシウムにおいて主成分がリン
    酸四カルシウムでありリン酸三カルシウムあるいはハイ
    ドロキシアパタイトが固溶していることを特徴とする請
    求項1の医療用リン酸カルシウム。
  3. 【請求項3】 リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシ
    ウム、リン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウムの
    群からなる少なくとも一つとリン酸四カルシウムからな
    る硬化性組成物においてリン酸四カルシウムが請求項1
    のリン酸カルシウムであることを特徴する医療用リン酸
    カルシウム。
  4. 【請求項4】 リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシ
    ウム、リン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウムの
    群からなる少なくとも一つとリン酸四カルシウムからな
    る硬化性組成物においてリン酸四カルシウムが請求項2
    のリン酸カルシウムであることを特徴する医療用リン酸
    カルシウム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4861811A (en) * 1987-03-25 1989-08-29 Sanyo Chemical Industries, Ltd. Dispersion of low molecular weight polyolefin
JP2016513064A (ja) * 2013-02-20 2016-05-12 ボーナ スーポート アーベー 硬化性骨代替物の硬化改善
US10823124B2 (en) 2017-03-27 2020-11-03 Kohler Co. Carburetor drain

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JP2016513064A (ja) * 2013-02-20 2016-05-12 ボーナ スーポート アーベー 硬化性骨代替物の硬化改善
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