JPH0780424B2 - 農用トラクターの走行用伝動構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、走行用トランスミッションを機体後部に配置
し、左右一対の操向自在な前車輪の平均周速度と左右一
対の後車輪の平均周速度とを同一またはほぼ同一にする
標準伝動状態と、一対の前記前車輪の平均周速度を一対
の前記後車輪の平均周速度より大にする増速伝動状態と
に切換え自在な前輪変速装置を設けた農用トラクターの
走行用伝動構造に関する。

〔従来の技術〕

上記農用トラクターは、前車輪の操向操作に併せ、前輪
変速装置を増速伝動状態に切換えて前輪を増速駆動する
ことにより、前輪周速を後輪周速と同一にしておくより
も小半径で旋回できるように配慮されたものである。

この種農用トラクターにおいては、従来では、前輪変速
装置を機体後部に位置する走行用トランスミッションに
付設し、前車輪の操向操作により伝動状態を切り換える
ように構成されていた（例えば特開昭53−119530号公
報）。

〔発明が解決しようとする課題〕

上記従来構造の農用トラクターでは、前輪変速装置が機
体後部の走行用トランスミッションに一体的に組み込ま
れた状態で設けられていたため、この種の前輪用変速装
置を必要としない仕様のものに仕様変更することが困難
であった。

そして、前車輪の操向角度を検出して前輪変速装置の切
り換えを行うに、前車輪の操向状態を検出する手段と、
実際に前輪変速装置を切り換え操作する手段との間に相
当な距離があり、その連係のための構造が、その間の各
種機器などとの干渉を避けながら広範囲に及んで設けら
れる結果、その組み付け分解に手数を要し、しかも、操
作力の作用方向や作用量を適正に設定するための構造が
複雑となりがちであるとともに、コンパクトな構成を得
にくいものであった。

また、農用トラクターにあってはロータリ耕耘装置等の
各種作業装置を機体後部に連結して用いられるのが一般
的であるが、この作業装置を連結した状態では、機体後
部に掛かる作業装置重量や作業負荷のために、前車輪に
掛かる荷重が作業装置非連結時よりも減少して、前車輪
の接地圧が、充分な牽引力発揮のためには不足する状態
となったり、前輪側が浮き上がりぎみになることがある
ため、これを抑制するように、この種の農用トラクター
では機体前部に大きなバランスウェイトを設け、必然的
に機体重量の増大を招く結果となっていた。

本発明の目的は、前輪変速装置を備える場合とこれを省
いた場合との仕様変更を簡単に行えるとともに、前輪変
速装置の操作系の簡素化、及び、コンパクト化を図り、
さらに、バランスウェイトの必要重量を低減して機体の
軽量化を図ることにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の特徴構成は、走行用トランスミッションを機体
後部に配置し、左右一対の操向自在な前車輪の平均周速
度と左右一対の後車輪の平均周速度とを同一またはほぼ
同一にする標準伝動状態と、一対の前期前車輪の平均周
速度を一対の前記後車輪の平均周速度より大にする増速
伝動状態とに切り換え自在な前輪変速装置を設けた農用
トラクターの走行用伝動構造において、前記前輪変速装
置を前記前車輪が付設された前輪用伝動ケースに付設す
るとともに、この前輪変速装置の切り換え操作を、前記
前車輪が設定用角度未満の操向状態にあると前記標準伝
動状態に操作され、かつ、前記前車輪が前記設定角度以
上に操向されると前記増速伝動状態に自動的に切換え操
作されるように、前記前車輪の操向作動に連動させてあ
ることにあり、その作用及び効果は次のとおりである。

〔作 用〕

a.前輪変速装置を、後部の走行用トランスミッションか
ら分離させて、機体前部側寄り位置である前輪用伝動ケ
ースに付設したものであるから、この前輪変速装置の重
量を機体前部側により多く作用するように設定できる。

b.前輪変速装置が走行用トランスミッションと分離され
た状態で位置づけられるため、この前輪変速装置を装備
した仕様の農用トラクターと、前輪変速装置を備えない
仕様の農用トラクターとが、トラクター本体部分の仕様
としては共通のものを採用できるため、走行用ミッショ
ンの内部機構とは関係なく、前輪変速装置とその関連構
造の付加の有無を選択するだけで仕様変更が可能とな
る。

c.前輪変速装置の伝動状態の切り換え操作を、前輪の操
向作動に連動させたものであるから、伝動状態の切り換
え操作が容易である。そして、前輪の操向作動に連動し
て切り換えられる前輪変速装置が前輪用伝動ケースに付
設されているため、前輪の操向操作状態を検出する手段
との連係構造を前輪近くでコンパクトにまとめた状態で
配設し易い。

〔発明の効果〕

イ．前記a.に記載の作用から、作業装置重量や作業負荷
に応じて前部バランスウェイトを装着する必要が生じた
としても、前輪変速装置の重量が前輪側に従来より多く
掛かっていることから、バランスウェイトを省略、もし
くは、従来より軽量なもので済ませられるようになり、
作業装置の連結や分離に伴って必要になるバランスウェ
イトの着脱が楽になるという効果がある。

ロ．前記b.に記載の作用から、前輪変速装置を走行用ミ
ッションの内部に組み込んだ従来の構造のものに比べ、
農用トラクターの仕様の変更を簡単に行える利点があ
る。

ハ．前記c.に記載の作用から、前輪変速装置の切換えが
前車輪の操向操作でもって一挙にできることから、前輪
変速が機体操向操作をするだけで楽にできるとともに、
全体構造のコンパクト化、及び連係構造の簡素化を達成
し易い。

〔実施例〕

第５図に示すように、左右一対の前車輪（1a），（1b）
を操向操作及び駆動可能に有し、且つ、左右一対の非操
向型の後車輪（2a），（2b）を駆動可能に有した走行機
体の後部に、ロータリ耕耘装置等の各種の作業装置を昇
降操作可能に連結するリフトアーム（３）、及び、作業
装置に伝動する動力取出し軸（４）を付設して、農用ト
ラクターを構成してある。

一対の前車輪（1a），（1b）は、これら前車輪（1a），
（1b）が両端側に各別に取付けられた前輪用伝動ケース
（５）を介して機体フレーム（６）に取付けてある。そ
して、前輪用伝動ケース（５）は、この前輪用伝動ケー
ス（５）及び走行機体の左右中心またはほぼ左右中心に
配置した機体前後方向軸芯（P1）周りで揺動するよう
に、機体フレーム（６）に連結してあり、走行地盤の凹
凸にかかわらず、一対の前車輪（1a），（1b）が前輪用
伝動ケース（５）の対機体揺動により背反的に昇降し、
機体を前後方向視で水平またはこれに近い姿勢に維持す
るように構成してある。

前輪用伝動ケース（５）は第２図に示すように、機体側
ケース部分（5a）と、この機体側ケース部分（5a）の両
端部に各別に、機体上下方向軸芯（P2）の周りで揺動す
るように連結した一対の車輪側ケース部分（5b），（5
b）とから構成してあり、車輪側ケース部分（5b）がナ
ックルアーム（７）により機体上下方向軸芯（P2）の周
りで揺動操作されて、前車輪（1a），（1b）が操向操作
されるように構成してある。

次に、前車輪（1a），（1b）及び後車輪（2a），（2b）
への伝動構造について説明する。第５図に示すように、
機体後部を形成するミッションケース（８）に走行トラ
ンスミッション（９）を内装すると共に、エンジン（1
0）の出力をクラッチ（11）及び回転軸（12）を介して
走行用トランスミッション（９）に伝達するように構成
し、そして、走行用トランスミッション（９）からの動
力を、ミッションケース（８）内の後輪用差動機構（1
3）に伝達するように構成している。

そして、ミッションケース（８）から前向きに突出する
状態で備えてある前輪用出力軸（14）を、伝動軸（15）
を介して、前輪用伝動ケース（５）の後向きに突出する
入力軸（16）に連動連結しており、この入力軸（16）の
動力を第１図に示すように、前輪用伝動ケース（５）に
内装してある減速用及び回転方向変換用のベベルギア
（17）、及び前輪変速装置（18）を介して、前輪用差動
機構（19）に伝達するように構成してある。

次に、前輪変速装置（18）について説明する。

第１図に示すように、ベベルギア（17）に連動させた入
力筒軸（20）に標準伝動ギア（21）を一体回転可能に取
付け、この標準伝動ギア（21）に第１ギア（22）、ギア
支軸（23）及び第２ギア（24）を介して増速連動させた
増速伝動ギア（25）を、前輪用差動機構（19）のデフィ
レンシャルギアケース（19a）に連設してある出力筒軸
（26）に相対回転可能に取付けている。そして、出力筒
軸（26）に筒体（27a）を介して一体回転するように、
かつ、摺動するように取付けた伝動部材（27）と、標準
伝動ギア（21）の間に咬合いクラッチ（28）を設けると
共に、出力筒軸（26）と増速伝動ギア（25）の間に多板
式の摩擦クラッチ（29）を設けてある。

そして、伝動部材（27）が、摺動シフター（30）及びス
プリング（43）を介して連動させてある第４図に示す如
きプッシュロッド型の操作部（31）により摺動操作され
るに伴い、咬合い及び摩擦クラッチ（28），（29）を入
り切りするように構成すると共に、咬合いクラッチ（2
8）が入りで摩擦クラッチ（29）が切りになるように、
伝動部材（27）及び操作部（31）をスプリング（32）に
よって付勢してある。

操作部（31）が第１操作位置（Ｓ）に操作されると、摩
擦クラッチ（29）が切りで咬合いクラッチ（28）が入り
になって、標準伝動ギア（21）の動力が伝動部材（27）
を介して出力筒軸（26）に伝達され、左右の前車輪（1
a），（1b）の平均周速度と左右の後車輪（2a），（2
b）の平均周速度とが同一またはほぼ同一になるよう
に、前輪用差動機構（13）に伝動する標準伝動状態とな
る。そして、操作部（31）が第２操作位置（Ｈ）に操作
されると、咬合いクラッチ（28）が切りで摩擦クラッチ
（29）が入りになって、増速伝動ギア（25）の動力が出
力筒軸（26）に伝達され、左右の前車輪（1a），（1b）
の平均周速度が左右の後車輪（2a），（2b）の平均周速
度より大になるように、前輪用差動機構（19）に伝動す
る増速伝動状態になる。

そして、前輪変速装置（18）を機体上下方向視で、入力
軸（16）と前輪用差動機構（19）との間に位置させ、入
力軸（16）から入力して前輪用差動機構（19）に出力す
るように、かつ、標準伝動状態に復元付勢されるように
してある。

入力軸（16）と前輪用差動機構（19）を、機体上下方向
視で機体前後方向軸芯（P1）の左右に振り分けように配
置して、入力軸（16）、ベベルギア（17）、前輪変速装
置（18）及び前輪用差動機構（19）等のトータル重量が
左前車輪（1a）と右前車輪（1b）に均等にまたはほぼ均
等に掛かるように構成してある。この為に、入力軸（1
6）が機体前後方向軸芯（P1）に対し、右の前車輪（1
a）側に位置ずれして、前輪用伝動ケース（５）の揺動
に伴って上下に移動することを、伝動軸（15）のユニバ
ーサルジョイント型の屈伸部（15a）での腰折れによっ
て許容するように構成してある。

第３図に示すように、操作部（31）の操作のための回転
カム（33）を一方の車輪側ケース部分（5b）に備えてあ
る。そして、回転カム（33）は、機体側ケース部分（5
a）に対して車輪側ケース部分（5b）と一体に、機体上
下方向軸芯（P2）周りで回動して、直進位置から左向き
側及び右向き側への操向角が設定値未満にあるところの
操向状態に前車輪（1a），（1b）がある時には、第１周
面カム部（33a）が操作部（31）に対向して、これを第
１操作位置（Ｓ）に維持操作するように構成している。

そして、左向き側及び右向き側への操向角が設定値以上
になる操向状態に前車輪（1a），（1b）が操向操作され
た時には、第２周面カム部（33b）又は第３周面カム部
（33c）により、操作部（31）を第２操作位置（Ｈ）に
押圧操作するように構成してある。つまり、前車輪（1
a），（1b）が設定角未満の操向状態にあると前輪変速
装置（18）が標準伝動状態にあり、前車輪（1a），（1
b）を設定角以上に操向操作することにより、前輪変速
装置（18）を増速伝動状態に切換え操作できるようにし
てある。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明に係る農用トラクターの走行用伝動構造の
実施例を示し、第１図は前輪用伝動ケースの一部展開断
面図、第２図は前車輪取付け部の後面図、第３図は前輪
変速装置操作部の一部切欠き平面図、第４図は前輪変速
装置操作部の後面図、第５図は農用トラクター全体の一
部切欠き側面図である。 （1a），（1b）……前車輪、（2a），（2b）……後車
輪、（５）……前輪用伝動ケース、（９）……走行用ト
ランスミッション、（18）……前輪変速装置。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−15020（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−176121（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−54604（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−169328（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−99421（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−60914（ＪＰ，Ａ) 特開 昭53−47631（ＪＰ，Ａ) 実開 昭60−145934（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−85517（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭54−63330（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】走行用トランスミッション（９）を機体後
   部に配置し、左右一対の操向自在な前車輪（1a），（1
   b）の平均周速度と左右一対の後車輪（2a），（2b）の
   平均周速度とを同一またはほぼ同一にする標準伝動状態
   と、一対の前記前車輪（1a），（1b）の平均周速度を一
   対の前記後車輪（2a），（2b）の平均周速度より大にす
   る増速伝動状態とに切り換え自在な前輪変速装置（18）
   を設けた農用トラクターの走行用伝動構造であって、 前記前輪変速装置（18）を前記前車輪（1a），（1b）が
   付設された前輪用伝動ケース（５）に付設するととも
   に、 この前輪変速装置（18）の切り換え操作を、前記前車輪
   （1a），（1b）が設定角度未満の操向状態にあると前記
   標準伝動状態に操作され、かつ、前記前車輪（1a），
   （1b）が前記設定角度以上に操向されると前記増速伝動
   状態に自動的に切換え操作されるように、前記前車輪
   （1a），（1b）の操向作動に連動させてある農用トラク
   ターの走行用伝動構造