JPH0770630A - 電気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法 - Google Patents

電気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法

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JPH0770630A
JPH0770630A JP5243714A JP24371493A JPH0770630A JP H0770630 A JPH0770630 A JP H0770630A JP 5243714 A JP5243714 A JP 5243714A JP 24371493 A JP24371493 A JP 24371493A JP H0770630 A JPH0770630 A JP H0770630A
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Toshihiko Ide
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徹 大津山
Hirotsuyo Kaneko
大剛 金子
Takeshi Honda
豪 本田
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 主として0.3%C以下の中ないし極低炭素
電気炉鋼を対象として、減圧下における酸素ガスブロー
イング処理の脱窒効果を改善すること。 【構成】 製品の炭素含有量よりも少なくとも0.10
%ないし0.15%以上高くなるように溶鋼の炭素含有
量を取鍋精錬炉や送酸前の真空槽内で調整し、その後
に、RH脱ガス設備やVOD脱炭設備などでの減圧下に
おける溶鋼の酸素ガスブローイング処理に際して、0.
10%ないし0.25%以上の炭素を脱炭するまでの期
間は、酸素ガス流量を2.5Nm3 /溶鋼トン・時ない
し10Nm3/溶鋼トン・時の低流量とし、かつ、真空
槽内圧力をできるだけ5トール以下に維持し、また、溶
鋼環流のサイクルタイムを1.3分以下とする。これに
よって電気炉により溶製された溶鋼を二次精錬において
脱窒し、転炉鋼に近い低窒素鋼を溶製することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気炉溶鋼を用いた低窒
素鋼の溶製法に係り、詳しくは、電気炉溶鋼を二次精錬
設備において転炉鋼にほぼ匹敵するレベルにまで脱窒し
て、連続鋳造や熱間圧延における割れ防止や製品の軟質
化や時効性の改善に適した低窒素溶鋼を溶製する方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、内外において省エネルギや資源リ
サイクルの観点から電気炉による製鋼法の重要性が再認
識されつつあり、いろいろな事情から粗鋼生産量に占め
る電気炉の比率も増加してきている。一方、品質的に
は、電気炉鋼は、転炉鋼に比べてCu,Sn,Crなど
のトランプエレメント含有量が多いこと、窒素含有量が
高いことの主として二つの理由により、鋼種拡大に制約
が課せられているのが現状である。上記のトランプエレ
メントの点は本発明の範囲外であるため割愛するが、窒
素含有量が高いと、例えばアルミナイトライド脆性に見
られるように熱間延性が低下し、連続鋳造における鋳片
の内部割れや表面割れ、熱間圧延における表面疵の原因
となる。また、製品の品質面では、極低炭素極軟線材の
引張り強さや時効性の悪化、連続焼鈍法で製造する冷延
薄板の降伏強度の上昇や深絞り性の悪化などの欠点も挙
げられる。そこで、電気炉鋼の低窒素化を目的として、
電気炉における中空電極からのアルゴンガス吹き込みや
フォーミングスラグ操業、偏心炉底出鋼における未脱酸
出鋼やアルゴンガスシール出鋼、低硫黄溶鋼のRHやV
ODの脱ガス設備における減圧脱ガスや酸素ガスブロ
ー、取鍋・タンディッシュ間やタンディッシュ・鋳型間
のノズルやアルゴンガスシールによる大気侵入の防止な
どの対策が試験され、逐次実用化されてきている。しか
しながら、上述した要素技術のかなりの部分が現在まで
十分に成熟しているとは言い難く、結果として、0.3
%C以下である中炭素鋼や極低炭素鋼の電気炉鋼の窒素
レベルは、転炉鋼とかなりの差が見られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した要素技術の一
つとして、減圧下における酸素ガスブロー法がある。こ
の方法は、元来、転炉で溶製したステンレス粗鋼や炭素
鋼の脱炭速度の向上や極低炭素鋼化を目的として開発・
実用化された方法であり、副次的に脱窒効果も認められ
ることが、0.8%Cないし1.0%Cなどの高炭素鋼
について明らかにされている。しかし、0.3%C以下
の中ないし極低炭素鋼については、脱窒効果にばらつき
が見られ、そのばらつきの原因も明らかとなっていな
い。一方、減圧下における酸化物粒子の溶鋼への吹き付
けによれば、0.3%ないし0.8%炭素鋼について著
しい脱窒効果のあることが発見され、実用化されてい
る。しかし、0.3%C以下については、脱窒効果が明
らかでない。
【0004】ところで、特開昭60−184619号公
報には、製鋼炉で溶製した0.1%C以上の粗溶鋼を減
圧下で酸素ガスを上吹きして脱炭させ、その際に脱窒を
促進させるようにした低窒素鋼の製造方法が提案されて
いる。そして、250トンRH設備の実施例において、
12Nm3 /溶鋼トン・時ないし36Nm3 /溶鋼トン
・時という多量の酸素ガス流量であるにもかかわらず、
15分ないし30分で10ppmないし14ppmの窒
素含有量まで低下させることができるという顕著な脱窒
効果が記載されている。このように、酸素ガス流量が後
述する本発明の最適範囲とは異なる原因は、その第1表
の実施例8にあるように、4,500Nm3 /時の送酸
速度で真空槽内圧力が本発明に比べて桁違いに高い1.
7トールといった排気能力を有する設備を使用したもの
と推測せざるを得ない。また、その実施例2では、6ト
ールの真空槽内圧力において、4,500Nm3 /時の
酸素ガス流量で上吹き後の溶鋼の炭素含有量が0.01
%,珪素含有量が0.08%と記されている。しかし、
後述する図3の送酸中の炭素含有量と珪素含有量との関
係図と比較すると、炭素含有量に対する珪素含有量が余
りにも高過ぎるという不可解な点がある。また、特開昭
63−186818号公報には、35ppm以下の濃度
に窒素を低下するために、減圧下で溶鋼中に酸素ガスを
吹き込み、酸素濃度を140ppm以下に維持すると共
に、必要に応じて加炭材を溶鋼中に添加して、炭素濃度
を0.05%以上に維持させるようにした脱窒法が記載
されている。この例では、酸素ガスを間歇的に吹き込む
か連続して少量を吹き込み、酸素濃度を上記の程度に維
持して脱窒させている。しかし、その実施例を見ると、
酸素ガスを4.8Nm3 /溶鋼トン・時の流量で間歇的
に吹き込んだ場合は、脱窒素前の74ppmの窒素が、
45分後には24ppmまで脱窒されるが、酸素ガスを
4.8Nm3 /溶鋼トン・時の流量で連続的に吹き込ん
だ場合は、酸素ガス吹込終了後の窒素は40ppmない
し50ppmまでしか低下しなかったと記されている。
酸素ガス流量4.8Nm3 /溶鋼トン・時の連続吹き込
みは、後述する本発明における脱窒期の最適酸素ガス流
量の範囲内であるにもかかわらず脱窒が余り進行しなか
った理由は、循環用アルゴンガス流量が300トンの溶
鋼に対して1,200Nリットル/分に過ぎないため
に、本発明よりも溶鋼環流サイクルタイムがかなり長い
ことと、おそらくは、真空槽内圧力が本発明の5トール
以下よりも高かったためと推測される。また、後述する
ように、脱窒期間中の溶存酸素量の平均値をより低くし
て脱窒を促進するためには、溶鋼への加炭材の添加
素ガス吹き込み以前に行うべきである。しかも、酸素ガ
スを吹き込んでから溶鋼中の窒素濃度が25ppm以下
になるまで約45分も要している。したがって、その後
に、RHもしくはVOD処理するとなると、全体的には
二次精錬時間の長大化を招く難点がある。
【0005】本発明は上述の問題に鑑みなされたもの
で、その目的は、0.3%C以下の中低炭素鋼のみなら
ず、0.006%Cといった極低炭素鋼までを対象とし
て、電気炉溶鋼の減圧下における酸素ガスブローイング
処理の脱窒効果を改善しかつ安定化させることを目指
し、具体的には、脱窒の際の酸素ガスブローイング条件
の明確化と脱窒時間の短縮化さらには脱窒後の急速脱炭
の実現を図り、転炉鋼に近い低窒素鋼を電気炉鋼から溶
製できるようにした方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気炉によっ
て溶製した溶鋼を二次精錬により脱窒を行う低窒素鋼の
溶製法に適用される。その特徴とするところは、0.0
5%以下とする製品の炭素含有量よりも少なくとも0.
15%以上高くなるように溶鋼の炭素含有量を調整す
る。その後に、RHもしくはVODでの溶鋼の減圧下に
おける酸素ガスブローイング処理に際して、0.10%
ないし0.25%の炭素を脱炭するまでの脱窒期は、酸
素ガス流量を2.5Nm3 /溶鋼トン・時ないし10N
3 /溶鋼トン・時、好ましくは3.5Nm3 /溶鋼ト
ン・時ないし7Nm3 /溶鋼トン・時の低流量として脱
窒する。そして、以後のRHもしくはVOD処理時間を
短縮するための急速脱炭期には、製品の炭素含有量近く
まで酸素ガス流量を10Nm3 /溶鋼トン・時ないし4
0Nm3 /溶鋼トン・時の高流量として急速脱炭するこ
とである。
【0007】上記の製品の前記炭素含有量が0.05%
ないし0.30%である場合、溶鋼の炭素含有量の前記
調整を製品の炭素含有量よりも少なくとも0.10%以
上高くするようにすればよい。前記した脱窒期には、R
HもしくはVODの真空槽内圧力を5トール以下に維持
させておくことが好適である。その際に、真空槽内圧力
を5トール以下に低下させるのを排気開始から5分以内
とし、その後に脱窒を開始させるようにするとよい。さ
らには、上記のRHにおける操業条件として、取鍋溶鋼
量(トン)÷環流速度(トン/分)で規定される溶鋼環
流サイクルタイム(分)が、
【数2】 なる式で表現される環流速度(トン/分)に基づき演算
した場合に、1.3分以下となるようにしておくと都合
がよい。
【0008】前記した急速脱炭期には、RHもしくはV
ODの真空槽内圧力を50トール以下に維持させるよう
にするとよい。また、RHもしくはVODの真空槽内に
ミルスケールなどの固体酸素源を添加することもでき
る。溶鋼の炭素含有量を製品の炭素含有量よりも高くす
る調整は、取鍋精錬炉における炭材添加またはRHもし
くはVODにおける脱窒期前の真空槽内炭材添加によっ
て行うようにすればよい。取鍋精錬炉に脱硫剤を添加
し、または、RHもしくはVODの脱窒期前の真空槽に
脱硫剤を添加して、溶鋼の硫黄含有量を0.010%以
下にしておくことが好ましい。製品の目標値に対して−
0.03%ないし+0.04%の炭素含有量になったと
きには溶鋼への送酸を停止し、取鍋内溶鋼量に対して
0.04%以下となる加炭材をRHもしくはVODの真
空槽内に添加する。そして、減圧下における溶鋼中の炭
素および溶存酸素による自己脱炭を行わせることにより
溶鋼の溶存酸素量を減少させ、その後に溶鋼の脱酸度と
成分調整を行うようにするとよい。酸素ガスブローイン
グ処理は、RHの上方から垂直に挿入したランスによっ
て行えばよい。取鍋精錬炉で溶鋼の珪素含有量を0.0
5%ないし0.30%に調整し、その溶鋼を減圧下にお
いて酸素ガスブローイング処理するようにしておく。減
圧下の酸素ガスブローイングをRHで行うとき、トップ
ランスのパージ用ガス,槽内監視用覗き窓のパージ用ガ
ス,合金投入口のパージ用ガスや合金添加ホッパの復圧
用ガスとして窒素ガスを使用することが好ましい。
【0009】
【作用】電気炉によって溶鋼を溶製する。その溶鋼を取
鍋精錬炉に移した状態で脱硫,加炭し、その溶鋼の炭素
含有量を製品の炭素含有量よりも少なくとも0.15%
以上高くなるように調整する。これは、低炭素鋼を得よ
うとする目的とは逆に、一旦ある程度の量の加炭を行う
ことであり、脱炭に伴う激しい一酸化炭素ガスの発生に
よる溶鋼の脱窒を進行しやすくするための脱炭代が確保
される。この脱炭代の確保のための加炭調整は、取鍋精
錬炉における炭材添加またはRHもしくはVODにおけ
る脱窒期前の真空槽内において行う。上記した脱窒反応
を阻害する界面活性元素として硫黄と溶存酸素とがあ
り、溶存酸素は硫黄の約二倍半の阻害作用を有する。こ
のことから、脱窒反応を促進したい場合には、溶鋼の溶
存酸素ならびに硫黄含有量を0.010%以下に低下さ
せておく。また、取鍋精錬炉において、硫黄の分配比を
高くするための溶鋼の溶存酸素量を低下させるために、
溶鋼の珪素含有量を0.05%ないし0.30%に調整
する。減圧下における酸素ブローイング中の溶鋼の溶存
酸素量は、溶鋼の炭素含有量が高いほど、酸素ガスの流
量が少ないほど、またRHもしくはVOD真空槽の内部
圧力が低いほど低くなる。そこで、例えばRH,VOD
などの脱ガス設備での減圧下における酸素ガスブローイ
ング処理に際して、少なくとも0.10%ないし0.2
5%の炭素を脱炭するまでの期間、例えばRHの上方か
ら垂直に挿入したランスを介した酸素ガス流量を2.5
Nm3 /溶鋼トン・時ないし10Nm3/溶鋼トン・時
の低流量とし、かつ、槽内圧力を排気開始から5分以内
にできるだけ5トール以下に維持し、溶鋼の溶存酸素量
を低く維持しながら脱炭させることによって脱窒を進行
させ、低窒素鋼を得る。この場合のRHにおける操業条
件として、取鍋溶鋼量(トン)÷環流速度(トン/分)
で規定される溶鋼環流サイクルタイム(分)が、
【数3】 なる式で表現される環流速度(トン/分)に基づき演算
した場合に、1.3分以下となるようにしておく。上記
した減圧下の酸素ガスブローイングをRHで行うとき、
真空槽内に侵入する空気量を抑制するためのアルゴンガ
スに代えて窒素ガスを、トップランスのパージ用ガス,
槽内監視用覗き窓のパージ用ガス,合金投入口のパージ
用ガスや合金添加ホッパの復圧用ガスとして使用すれ
ば、費用の節減が図られる。
【0010】このように、低い酸素ガス流量と低い槽内
圧力にしても溶鋼の溶存酸素量は溶鋼の炭素含有量にほ
ぼ逆比例して増加し、溶鋼の炭素含有量が約0.05%
以下になると、溶存酸素量が急増して、脱窒はほとんど
進行しなくなる。したがって、RHやVOD処理時間の
延長を避ける必要がある場合、溶鋼の窒素含有量が低下
した後に、まず、RHもしくはVODの真空槽内圧力を
50トール以下に維持し、その真空槽内にミルスケール
などの固体酸素源を添加して脱炭速度の向上が図られる
ようにしておく。そして、酸素ガス流量を10Nm3
溶鋼トン・時ないし40Nm3 /溶鋼トン・時の高流量
に上げて製品の炭素含有量近くまで急速に脱炭する。な
お、製品の炭素含有量が目標値に対して−0.03%な
いし+0.04%となるような溶鋼の炭素含有量になっ
たときに送酸を停止する。そして、取鍋内溶鋼量に対し
て0.04%以下となる加炭材をRHもしくはVODの
真空槽内に添加し、減圧下における溶鋼中の炭素および
溶存酸素による自己脱炭を行わせ、溶鋼の溶存酸素量を
減少させて、その後に溶鋼の脱酸度と成分調整を行う。
【0011】一方、製品の前記炭素含有量が0.05%
ないし0.30%である場合には、溶鋼の炭素含有量の
調整を製品の炭素含有量よりも少なくとも0.10%以
上高くしておく。製品の炭素含有量の範囲を0.05%
以下とする前述したケースと、0.05%ないし0.3
0%であるケースとに二分し、加炭量の下限値を0.1
5%と0.10%とに差をつけたのは、溶鋼の炭素含有
量が約0.05%以下では脱窒がほとんど進行しないか
らである。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、減圧下の酸素ガスブロ
ーイング処理において溶鋼の溶存酸素量を低くしながら
脱炭することを狙って、中炭素溶鋼を槽内圧力を低くし
て低酸素ガス流量とすることにより、転炉鋼の窒素含有
量に近い低窒素鋼を電気炉鋼で製造することが可能とな
る。これは、製品の炭素含有量が0.05%以下である
場合に炭素含有量よりも少なくとも0.15%以上高く
なるように溶鋼の炭素含有量を調整したり、製品の炭素
含有量が0.05%ないし0.30%である場合に0.
10%以上の加炭調整において実現される。上記によっ
て、いずれの場合も、従来窒素含有量が高いために電気
炉では製造することが不可能であった例えば極軟鋼線材
や深絞り用冷延鋼板,高張力パイプライン用鋼板,高張
力厚板などの鋼種をも、電気炉鋼で製造することができ
るようになる。
【0013】脱窒期にRHもしくはVODの真空槽内圧
力を5トール以下に維持させておけば、バルク溶鋼内部
からの一酸化炭素ガス気泡がより深い位置から発生し、
気泡が溶鋼表面に離脱するまでの時間がより長くなる。
しかも、低圧化により気泡浮上中の膨張がより著しくな
って気泡内の窒素ガス分圧がより低くなるために、気泡
内への溶鋼窒素の取り込みがより進み、溶存酸素量の低
下から予想される以上に脱窒速度が大きく向上される効
果が生じる。真空槽内圧力を5トール以下に低下させる
のを排気開始から5分以内とし、その後に脱窒を開始さ
せるようにした場合は、5トールまでの排気時間が短く
RH全処理の時間短縮が図られる。そして、大気圧から
100トール前後まで減圧する間での槽内大気からの吸
窒量も可及的に少なくできる。RHにおける操業条件と
しての溶鋼環流サイクルタイム(分)が、
【数4】 なる式で表現される環流速度(トン/分)に基づき演算
した場合に1.3分以下となるようにしておけば、脱窒
期の所要時間の延長が防止できる。
【0014】脱窒後に、RHもしくはVODの真空槽内
圧力を50トール以下に維持させておくと、製品の炭素
含有量近くまで高流量の酸素ガスでもって急速に脱炭す
ることができ、RHもしくはVOD処理時間が短くでき
る。上記の急速脱炭期に、RHもしくはVODの真空槽
内にミルスケールなどの固体酸素源を添加すれば、酸素
の供給量を増加させることができ、時間短縮が図られ
る。溶鋼の炭素含有量を製品の炭素含有量よりも高くす
る調整を、取鍋精錬炉における炭材添加またはRHもし
くはVODにおける脱窒期前の真空槽内炭材添加によっ
て行うことにより、溶鋼の溶存酸素量が低くでき、脱窒
効果を上げることができる。取鍋精錬炉に脱硫剤を添加
し、または、RHもしくはVODの脱窒期前の真空槽に
脱硫剤を添加して、溶鋼の硫黄含有量を0.010%以
下にする場合には、脱窒反応を遅延させる硫黄が少なく
なり、脱窒の促進が図られる。
【0015】製品の目標値に対して−0.03%ないし
+0.04%の炭素含有量になったときには溶鋼への送
酸を停止するので、溶鋼の溶存酸素量が減少して、脱酸
剤の歩留りを高く安定させる。生成する一次脱酸生成物
の量も可及的に少なくなる。したがって、その後の溶鋼
の脱酸度と成分調整が容易となり、RHやVOD処理の
終了時の溶鋼のすべての成分含有量,脱酸度や温度を目
標に適中させやすくなる。一方、送酸を停止した後に取
鍋内溶鋼量に対して0.04%以下となる加炭材をRH
もしくはVODの真空槽内に添加し、減圧下における溶
鋼中の炭素および溶存酸素による自己脱炭を行わせる
と、溶鋼の溶存酸素量が減少され、その後に溶鋼の脱酸
度と成分調整を行うことができる。
【0016】酸素ガスブローイング処理を、RHの上方
から垂直に挿入したランスによって行うようにしておけ
ば、脱窒に及ぼすセミディップノズルとの有意差は認め
られず、却って二次燃焼率が高くなり、それによる温度
上昇効果により真空槽内地金付を著しく減少させること
ができる。取鍋精錬炉で溶鋼の珪素含有量を0.05%
ないし0.30%に調整し、溶鋼を減圧下において酸素
ガスブローイング処理すれば、取鍋精錬炉における脱硫
剤としてCaO−CaF2 系を主に使用し、Al灰など
の金属Al系を多用することなく、Si脱酸を利用して
硫黄の分配比を高くするための溶鋼の溶存酸素量を低下
させることができる。減圧下の酸素ガスブローイングを
RHで行うとき、前述したように、槽内圧力の各レベル
における排気能力を高くしておけば、窒素ガスをトップ
ランスのパージ用ガス,槽内監視用覗き窓のパージ用ガ
ス,合金投入口のパージ用ガスや合金添加ホッパの復圧
用ガスとして使用しても、送酸中および自己脱炭中の槽
内窒素ガス分圧は低く維持され、窒素ガスが溶鋼バルク
に吸窒されるのを抑制できる。その結果、安価な窒素ガ
スを高価なアルゴンガスに代替させることができる。
【0017】
【実施例】以下に、本発明の電気炉溶鋼を用いた低窒素
鋼の溶製法を詳細に説明する。本発明は、概略的に言っ
て、電気炉溶鋼を予め加炭して炭素含有量を高くしてお
き、減圧下の酸素ガスブローイング処理において、溶鋼
中の溶存酸素量を低く保ち、脱窒初期における脱窒速度
が高められるようにしたことである。そして、本発明
は、公知の他の脱窒促進技術や吸窒防止技術などと組み
合わせて適用される。電気炉によって溶製した溶鋼を二
次精錬によって脱窒を行う低窒素鋼の溶製法において、
炭素含有量を0.05%(重量比)以下とする製品の場
合、その炭素含有量よりも少なくとも0.15%以上高
くなるように溶鋼の炭素含有量を調整する。また、炭素
含有量を0.05%ないし0.30%とする製品の場合
は、その炭素含有量よりも少なくとも0.10%以上高
くなるように溶鋼の炭素含有量を調整する。いずれの場
合も、低炭素鋼を得ようとする目的とは逆に、一旦ある
程度の量の加炭を行うことであり、脱炭に伴なって激し
く発生した一酸化炭素ガス中に溶鋼中の窒素が取り込ま
れることにより、脱窒を進行させやすくするための脱炭
代が確保される。なお、製品の炭素含有量の範囲を0.
05%以下とする場合と、0.05%ないし0.30%
である場合とに分け、加炭量の下限値を0.15%と
0.10%といったように相違させているのは、溶鋼の
炭素含有量が約0.05%以下では脱窒がほとんど進行
しないためである。すなわち、前者である製品の目標炭
素含有量を例えば0.03%とする場合には例えば0.
17%を加炭し、その0.20%から0.08%までの
0.12%を酸素ブローイングによって脱炭させ、その
間に脱窒させるものである。一方、後者では、製品の目
標炭素含有量を例えば0.08%とする場合に例えば
0.12%を加炭して、その0.20%から0.08%
までの0.12%を酸素ブローイングによって脱炭さ
せ、その間に脱窒させようとするものである。この例か
ら、製品の目標炭素含有量が0.05%以下とする場合
には加炭量を大きくしなければ脱窒のための高炭域にお
ける脱炭代を確保しにくく、製品の目標炭素含有量が
0.05%ないし0.30%である場合には、加炭量を
多くしなくても脱窒のための脱炭代が確保できることが
分かる。
【0018】ところで、上記した0.12%のようにた
とえ脱炭代が等しくても、溶鋼の炭素含有量が0.05
%以下と例えば0.20%ないし0.25%の範囲とで
は、前者における溶鋼の溶存酸素量が著しく高いために
一酸化炭素ガス中に溶鋼の窒素が取り込まれる速度が小
さく、したがって、前者において脱窒はほとんど進行し
ない。逆に、後者においては溶鋼の溶存酸素量が低く、
脱窒は著しく進行するということが知られている。この
ように溶鋼の炭素含有量がより高い値から脱炭をスター
トするほど脱窒効果が大きいが、逆に製品の炭素含有量
まで脱炭するまでの時間が長くかかる。最近の電気炉操
業の50分台前半のサイクルタイムに合わせた時間でR
HやVOD処理を行いかつ脱窒効果と両立させるバラン
ス点は、トータルの脱炭量としておおよそ0.30%以
下が適当である。上記した溶鋼の炭素含有量を製品の炭
素含有量よりも高くする調整は、取鍋精錬炉,RHやV
ODの酸素ブローイング前に行うとよい。すなわち、取
鍋精錬炉における炭材添加またはRH脱ガス設備もしく
はVOD脱炭設備における脱窒期前の真空槽内炭材添加
によって行われる。なお、加炭効率の点では、取鍋精錬
炉よりもその後でのRHの槽内に添加する方が優れてい
る。もし、酸素ブローイングが進行して溶鋼の炭素含有
量が一旦低下した時点で加炭したとすると、酸素ブロー
イング以前に加炭した場合に比べて溶鋼の溶存酸素量が
高くならざるを得ないために、脱窒効果は劣る結果とな
るからである。
【0019】この脱窒反応を阻害する界面活性元素とし
て硫黄と溶存酸素とがあり、溶存酸素は硫黄の約二倍半
の阻害作用を有する。このことから、脱窒反応を促進し
たい場合には、溶鋼の溶存酸素ならびに次に述べる硫黄
含有量を低下させる必要がある。上記のように、溶鋼中
の硫黄は脱窒反応速度を遅くする有害な成分であり、取
鍋精錬炉またはRHもしくはVODの脱窒期の真空槽に
脱硫剤を添加して溶鋼の硫黄含有量を0.010%以下
にしておくことが望ましい。なお、添加要領としては、
単に溶鋼に投入したり、通常行われているインジェクシ
ョンやブラスティングによるものでよい。溶鋼の炭素含
有量を調整した後にRHもしくはVODで酸素ガスブロ
ーイングを開始するが、その流量は、溶鋼の減圧下にお
いて、0.10%ないし0.25%の炭素を脱炭するま
での脱窒期は、酸素ガス流量を2.5Nm3 /溶鋼トン
・時ないし10Nm3 /溶鋼トン・時、好ましくは3.
5Nm3 /溶鋼トン・時ないし7Nm3 /溶鋼トン・時
の低流量として脱炭する。すなわち、減圧下における酸
素ブローイング中の溶鋼の脱窒速度は、図1の(a)に
示したように、溶鋼の炭素含有量が高いほど、酸素ガス
の流量が少ないほど、また、図1の(b)に示したよう
に、RHもしくはVOD真空槽の内部圧力が低いほど高
くなる。なお、図1は、本発明を完成させるに及んだ後
述する図11の結果を概略的に表したものである。
【0020】このようにして、0.10%ないし0.2
5%の炭素を脱炭するまでは、前述したとおり溶鋼の溶
存酸素量が低く、脱窒は著しく進行する。それゆえに、
0.10%以下の脱炭代では脱窒効果が不十分であり、
最高0.25%の脱炭代で十分な脱窒効果が得られる。
もちろん、酸素ガス流量を高くするほど溶鋼の溶存酸素
量が高くなるので、より大きい脱炭代をとらなければ等
しい脱窒効果は得られないが、より高い炭素含有量すな
わちより低い溶存酸素量からスタートできる利点もあ
る。一方、酸素ガス流量を多くすると一酸化炭素ガスな
どの排ガス量が増加するので、排気設備能力に制約があ
る場合には槽内圧力が高くなり、後述するように溶存酸
素量が高くなって脱窒に不利となる。好ましい酸素ガス
流量範囲である3.5Nm3 /溶鋼トン・時ないし7N
3/溶鋼トン・時は発明者らの試験に使用した設備に
おける最適範囲であり、5トール(Torr)以下の圧
力における排気能力を増加すれば、適正流量の上限は1
0Nm3 /溶鋼トン・時まで可能である。
【0021】酸素ガスブローイング期における溶存酸素
量は、第一近似的には溶鋼の炭素含有量に反比例し、酸
素ガス流量にほぼ比例する項に槽内の一酸化炭素ガス分
圧と平衡する溶存酸素量を加算した値である。これは、
酸素ガス流量を一定に維持したとき、酸素の供給速度と
脱炭による酸素の消費速度とが等しくなって動的平衡を
保つためには、以下の近似式(1)で表わされる脱炭速
度が酸素ガス流量に比例して増加しなければならないた
めと考えられる。
【数5】 したがって、槽内圧力を低下するほど溶鋼の溶存酸素濃
度が低下するため、脱窒に有利と考えられる。そこで、
脱窒期における槽内圧力を5トール,50トール,5ト
ールないし50トールの中間の三水準に変えて試験した
ところ、槽内圧力を5トールに低下することにより、予
想どおり溶鋼の溶存酸素量が低下し、予想以上に下記の
式(2)で表される見掛けの脱窒速度定数KN (1/%
・分)の向上することが判明した。
【数6】
【0022】溶存酸素量の低下から予想される以上に脱
窒速度向上が大きい理由は、低圧化によってバルク溶鋼
内部からの一酸化炭素ガス気泡がより深い位置から発生
するようになり、気泡が溶鋼表面に離脱するまでの時間
がより長くなり、しかも低圧化により気泡浮上中の膨張
がより著しくなって気泡内の窒素ガス分圧がより低くな
るために、気泡内への溶鋼窒素の取り込みがより進んだ
ためと考えられる。すなわち、脱窒期においてRHもし
くはVODの槽内圧力を5トール以下に維持することは
極めて望ましい条件の一つであり、排気能力の許す限
り、できるだけ低い圧力にすることが脱窒にとって有利
である。一方、RH処理において槽内の溶鋼の炭素,窒
素および溶存酸素の濃度と取鍋内溶鋼のそれとの差をで
きるだけ小さくすることが、脱窒を促進するために有利
であることは式(1)および式(2)から容易に予測さ
れるところであり、このため、取鍋内溶鋼量(トン)÷
溶鋼の還流速度(トン/分)で規定される溶鋼環流のサ
イクルタイムを1.3分以下とすることが、脱窒期およ
び急速脱炭期を通じて極めて望ましい条件の一つであ
る。
【0023】溶鋼環流サイクルタイムが1.3分以上の
場合には、脱窒期の酸素ガス流量を減少させるか脱炭量
を増加しないと同じ程度の脱窒効果は得られず、これら
はいずれも処理時間の延長を招く。上記の環流速度W
(トン/分)は、次式によって算出するものとする。
【数7】 環流速度の演算式には種々のものが存在するが上記は小
野の式であり、上掲した1.3分はそれに基づいて演算
された場合のものである。したがって、他の式を用いて
計算することによって異なる値の還流速度となる場合で
も、上式に当てはめた場合に1.3分以下となれば充分
である。参考までに、式(3)を用いて以下の条件で計
算すると、次のようになる。
【数8】 となり、溶鋼量が94トンとすると、溶鋼環流サイクル
タイムは1.26分となる。
【0024】RHやVOD処理を開始する際の急速排気
も重要であり、排気開始より5分以内に真空槽内圧力を
5トール以下に低下させた後に脱窒期を開始するのがよ
い。5トールまでの排気時間が延びると、RH全処理時
間が長引くばかりでなく、大気圧から100トール前後
まで減圧する間の槽内大気から吸窒する時間が長くなる
ので好ましくない。ただし、SiやAlの脱窒元素を含
有しない未脱酸溶鋼を素鋼(RH処理前の溶鋼)として
減圧処理を開始する場合には、溶鋼中の溶存酸素と炭素
とが反応して激しいボイリングが起こるので、排気速度
を遅くせざるを得ない。RHもしくはVOD処理時間を
短縮する必要がある場合には、脱窒期が終了した後に酸
素ガス流量を10Nm3 /溶鋼トン・時ないし40Nm
3 /溶鋼トン・時に上昇して製品の炭素含有量近くまで
急速脱炭する。この急速脱炭期においては、RHもしく
はVODの真空槽内圧力を50トール以下に維持させて
おく。
【0025】この急速脱炭期の目的は、できるだけ短時
間に脱炭してしまうことであり、脱窒はあまり期待でき
ないために酸素ガス流量は高いほどよい。しかしなが
ら、酸素ガス流量が高すぎると、トップランスで酸素ガ
スを吹き込む場合には、酸素ジェットが真空槽の底面や
側面に衝突することによる底面や側面の耐火物の溶損の
増大する難点がある。一方、セミディップノズル(真空
槽下部側面に埋め込まれた酸素ガスブローイング中には
溶鋼に浸漬する高さにあるノズル)で酸素ガスを吹き込
む場合には、ノズルと対向する側の真空槽下部側面の耐
火物の溶損が増大するために酸素ガス流量の上限が制約
される。真空槽の内径が大きいほど酸素ガス流量を大き
くできるが、総合的に判断して急速脱炭期の酸素ガス流
量の上限は40Nm3 /溶鋼トン・時である。さらに、
RHやVODの脱ガス設備での急速脱炭期の時間を短縮
する必要が生じた場合には、溶鋼温度の低下が許容でき
れば、ミルスケール,鉄鉱石などの固体酸素源を真空槽
内に添加して脱炭速度を向上させてもよい。また、急速
脱炭期における真空槽内圧力は50トール以下が望まし
いとしたのは、この期においても若干の脱窒を進行さ
せ、また、急速脱炭した後の自己脱炭終了後の脱酸度調
整時の脱酸剤の節減のためには溶鋼の溶存酸素量を低く
するため槽内圧力はできるだけ低いほどよいが、真空槽
内の各圧力レベルにおける排気能力(kg/時)を勘案
すると、現実的には50トール以下に妥協せざるを得な
いからである。
【0026】さて、RHやVOD処理の終了時には当然
のことながら溶鋼のすべての成分含有量,脱酸度や温度
を目標に適中させる必要がある。したがって、処理終了
前にこれらを調整する直前の溶鋼の溶存酸素量は、脱酸
剤の歩留りを高く安定させ、生成する一次脱酸生成物の
量ができるだけ少なくなるように、できるだけ低いこと
が望ましい。そこで、急速脱炭期においては、製品の目
標値に対して−0.03%ないし+0.04%の炭素含
有量になったときには溶鋼への送酸を停止する。取鍋内
溶鋼量に対して0.04%以下となる加炭材をRHもし
くはVODの真空槽内に添加し、できれば1トール以下
の高真空下で溶鋼中の炭素および溶存酸素による自己脱
炭を行わせることにより、溶鋼の溶存酸素量を減少させ
るとよい。加炭材を添加するのは、例えば炭素含有量が
0.003%の極低炭素鋼を製造する場合に、急速脱炭
終了時の溶存酸素量が炭素含有量に比べて極端に高いと
きには自己脱炭を行っても溶存酸素量がほとんど減少し
ないので、炭素源を補給して自己脱炭により溶存酸素量
を減少させるためである。Alなどの脱酸剤を添加して
溶存酸素を低下させると、溶存酸素低下分に相当するA
2 3 などの脱酸生成物が余分に生成され、脱酸生成
物を浮上分離させるための環流時間をより長くする必要
が生ずるからである。
【0027】酸素ブローイングに使用するノズルは、上
吹転炉のランスのように真空槽上部から挿入して垂直方
向へ上下できるようになっているトップランスにより、
真空槽内の溶鋼の上方から酸素ガスを吹き付けてもよい
し、下部真空槽の側面の酸素ガスブローイング中は溶鋼
に浸漬する高さ位置に埋め込まれたセミディップノズル
で斜上方から溶鋼内に酸素ガスをインジェクションする
ことも可能である。試験を開始する前には、トップラン
スでは酸素ガスジェットが溶鋼と衝突する火点の面積は
セミデョップノズルよりも狭いと想像した。溶鋼バルク
からの脱炭を含めた全脱炭量に占める火点における脱炭
の比率が高いとすれば、溶存酸素濃度の極めて高い火点
での脱窒反応速度が遅いために、全体としてトップラン
スの方がセミディップノズルよりも脱窒には不利であろ
うと考えたからである。しかしながら、試験の結果、脱
窒に及ぼすトッフランスとセミディップノズルの有意差
は認められなかった。加えて、周知のようにトップラン
スを使用すると二次燃焼率Pc〔=CO2 %/(CO%
+CO2 %)〕が高くなって、二次燃焼による温度上昇
効果により真空槽内地金付が著しく減少する効果を考え
あわせると、高二次燃焼率による脱炭酸素効率の低下が
あるにせよ、トップランスを使用する方が有利であると
判断される。
【0028】一般にRHやVODなどにおける溶鋼の脱
窒処理においては、真空槽内に侵入する空気量を最小に
することが常識とされている。確かに浸漬管自体あるい
は浸漬管と真空槽底部の継ぎ目部から空気が侵入する
と、窒素ガスが溶鋼バルクに入って吸窒する。したがっ
て、溶鋼環流用はもとより真空槽内の各種のパージ用に
はすべてアルゴンガスを使用することが常識とされてい
る。しかしながら、アルゴンガスの単価が高く使用量も
多量であることから、コストダウンを目的として、試み
にトップランスのパージ用ガス,真空槽上部に取り付け
た槽内監視用覗き窓のパージ用ガス,合金鉄投入口のパ
ージ用ガス,合金添加ホッパの復圧用ガスをすべてアル
ゴンガスから粗製窒素ガス(1%程度の酸素ガスを含
む)に切り替えてみた。試験の結果によれば、酸素ガス
をブローイングして溶鋼から多量の一酸化炭素ガスが発
生している期間の脱窒挙動はもとより、酸素ガスブロー
イングを停止した後の溶鋼の窒素含有量の推移も、窒素
ガスに切り替えた時期の前後において有意差は認められ
なかった。各槽内圧力レベルにおける排気能力を高くし
たことによって送酸中および自己脱炭中の槽内の窒素ガ
ス分圧が低く維持された結果、吸窒しなかったものと考
えられる。すなわち、槽内圧力の各レベルにおける排気
能力を高くしておけば、窒素ガスを各種のパージ用ガス
として高価なアルゴンガスに代替させることが理解され
る。ちなみに、溶鋼中の窒素含有量の平衡値は、窒素ガ
ス分圧が約0.4トールで10ppm、約1.5トール
で20ppmであることが知られている。
【0029】さて、取鍋精錬後RH処理前の溶鋼組成と
しては、Siキルド鋼はもとより、炭素含有量0.00
3%,珪素含有量0.015%程度の極軟線材用鋼の素
鋼にも珪素を0.05%ないし0.30%を予め含有さ
せるように調整した。これは取鍋精錬炉における脱硫剤
としてCaO−CaF2 系を主に使用し、硫黄の分配比
を高くするための溶鋼の溶存酸素量を低下させる手段と
してAl灰などの金属Al系を多用せず、むしろSi脱
酸を利用したためである。ちなみに、上記した0.30
%程度以下とするならば、極軟線材用に限らず厚板用に
も供するに充分なものとなる。
【0030】前述したように炭素含有量がおおよそ0.
10%以上の領域では、溶鋼の溶存酸素量は、槽内圧力
と溶鋼の炭素含有量および酸素ガス流量によって左右さ
れており、槽内圧力約5トール以下、酸素ガス流量6N
3 /溶鋼トン・時以下の条件では、溶鋼の珪素含有量
が0.30%程度以下ならば、酸素ガスブローイングに
伴う脱珪量は僅かである。脱炭量に対する脱珪量の比率
は酸素ガス流量が低いほど、また槽内圧力が低いほど減
少する。すなわち、製品の成分目標として炭素含有量が
0.1%以上,珪素含有量約0.2%程度の低窒素鋼を
溶製したい場合には、RH処理前の素溶鋼に珪素を含有
させておいても脱珪損失はほとんどない。Al−Siキ
ルド鋼の製品を得たい場合には、前述した自己脱炭によ
って溶鋼の溶存酸素量を低下させた後に、槽内Alを添
加すればよい。このように溶鋼の炭素含有量が約0.1
%以上では酸素ガスブローイングにおける優先脱炭が認
められるが、溶鋼の炭素含有量が約0.1%以下に低下
し溶鋼の溶存酸素量が約80ppm以上に高くなるにつ
れて脱炭量に対する脱珪量の比率が次第に増加する。溶
鋼の炭素含有量の減少につれて溶鋼の溶存酸素量は溶鋼
の珪素含有量に左右される度合いが高くなるようであ
る。珪素含有量0.015%程度まで脱珪しようとする
と、溶存酸素量約400ppm以上となり、溶鋼の炭素
含有量も0.01%まで低下する。このような低珪素含
有量の製品を得ようとする場合は、RH処理前の珪素含
有量を高くすると、珪素の損失と脱珪に必要な酸素ガス
の点からみて得策でない。しかし、取鍋精錬炉における
脱硫効率からみて最低0.05%の珪素を取鍋精錬後の
溶鋼に含有させておくことが、Alと珪素の相対価格か
らみて有利である。
【0031】以下に実例を示して、本発明の効果を説明
する。電気炉によって溶製した溶鋼を偏心炉底出鋼方式
で出鋼し、取鍋精錬炉で加炭脱硫した後に、RHで脱窒
・脱炭した。取鍋内溶鋼量は約90トンないし94トン
であり、RH脱ガス設備の仕様と操業条件は、下部真空
槽内張内径を1,700mm,浸漬管内径を400m
m,環流用アルゴンガス流量を1,000Nリットル/
分,排気能力は0.5トールないし5トールで1,00
0kg/時,5トールないし60トールで2,000k
g/時,60トールないし200トールで3,000k
g/時,酸素ガスは単孔ラバールノズルのトップランス
で最大1,500Nm3 /時,二本のセミディップ方式
のノズルで最大500Nm3 /時の送酸能力がある。ち
なみに、このRH設備が有している0.5トールないし
5トールにおける取鍋内溶鋼トン当たりの排気能力は、
これまでの文献で知り得る限り国内で最高のものであ
る。取鍋精錬後の溶鋼組成は、概ね以下の範囲である。
【数9】
【0032】溶鋼の炭素含有量が0.18%以下の領域
における酸素ガスブローイングすなわち送酸中の溶鋼の
炭素含有量と珪素含有量の関係を図2および図3に示
す。同じヒート(一鍋のチャージ分)のデータがそれぞ
れ実線,破線,一点鎖線といったように結ばれ、ヒート
ごとに区別して表されている。図2の槽内圧力50トー
ル前後の場合には、酸素ガス流量が高いほどまた溶鋼の
珪素含有量が高いほど、より高い炭素含有量の領域から
脱炭量に対する脱珪量の比率が増加し始めている。すな
わち、500Nm3 /時と1,200Nm3 /時とを比
較すると、後者では脱炭に伴う脱珪が炭素含有量の高い
ところから傾斜が強くなっており、また、1,200N
3 /時の場合の実線のケースよりも珪素含有量の高い
一点鎖線のケースの方が炭素含有量の高いところから脱
炭に伴う脱珪の傾斜が大きくなっていることが理解され
る。もちろん、溶鋼の炭素含有量の低下につれて脱炭量
に対する脱珪量の比率が逐次増加する傾向は、いずれの
データにも共通して認められる。図3の槽内圧力5トー
ル前後の場合は、酸素ガス流量が500Nm3 /時の図
2と比較すると、脱炭量に対する脱珪量の比率がより低
い炭素含有量の領域から急増し始めている。これらは以
下に述べる送酸中の溶鋼の炭素含有量と溶存酸素量との
関係から理解される。ちなみに、同一ヒートであって同
種の線で結ばれている図中の記号が途中で変わっている
のは、その時点で酸素ガス流量を変更させていることを
意味している。なお、図2以降中に記載された酸素ガス
流量はNm3 /時であるので、上記したごとく取鍋内溶
鋼量が約90トンをもとにNm3 /溶鋼トン・時を換算
すると以下のようになる。
【数10】 ちなみに、従来技術の項で触れたが、特開昭60−18
4619号公報の第1表の実施例2では、6トールの真
空槽内圧力において、4,500Nm3 /時の酸素ガス
流量で上吹き後の溶鋼の炭素含有量が0.01%,珪素
含有量が0.08%と記載されている。これを、上記し
た90トンRH設備に換算すると、約1,620Nm3
/時の送酸量となり、上述した図3と比較すれば、炭素
含有量に対する珪素含有量が余りにも高過ぎるという印
象は免れえない。
【0033】送酸中の溶鋼の炭素含有量と溶存酸素量と
の関係を図4および図5に示す。0.05%C以下は溶
存酸素量が急増するので省略されている。ここで、溶存
酸素量の相対的な高低については信頼できるようである
が、溶存酸素量の絶対値については酸素プローブメーカ
により差異が存在するので、信頼できるとは必ずしも言
えないようである。50トールの図4を見ると、50ト
ールのC−O平衡の溶存酸素量と実測溶存酸素量との差
はおおよそ送酸量に比例して増加しており、また、炭素
含有量に逆比例して減少している。ただし、酸素ガス流
量が1,200Nm3 /時の場合に溶鋼の炭素含有量が
0.10%から0.05%の区間において溶鋼の溶存酸
素量がそれほど急増しない理由は、図2に見られるよう
に、この炭素含有量の範囲において脱珪に消費される酸
素量の比率が逐次急増し、脱炭速度が漸次低下するため
と考えられる。5トールの図5を50トールの図4と比
べると、500Nm3/時の酸素ガス流量で明らかに5
トールの方が溶存酸素量が低く、槽内圧力の影響が明ら
かである。
【0034】極低炭素・極低珪素鋼の脱窒試験結果の例
を図6に示す。RH処理開始4分後にセミディップノズ
ルで500Nm3 /時の送酸を開始し、19.5分後に
流量を900m3 /時に上げ、さらに21分後にトップ
ランスによる900Nm3 /時の送酸も開始し、27.
5分後にトップランスの送酸を停止し、28.5分後の
セミディップノズルの送酸も停止し、35.5分後まで
自己脱炭している。窒素含有量は19.5分後に21p
pmに、35.5分後に20ppmまで低下し、この時
点で極軟鋼の目標値である炭素含有量0.006%、珪
素含有量0.010%まで低下している。このテストで
は、8分後以降の真空槽内圧力Prを約5トール以下に
維持することができた。
【0035】真空槽の各種パージ用に窒素ガスを使用
し、しかも処理前の溶鋼の硫黄含有量が0.023%
で、かつ送酸前に槽内に炭材を添加した試験結果の例を
図7に示す。処理開始より4.5分後に槽内に炭材を添
加して加炭し、5.5分後にセミディップノズルで50
0Nm3 /時の送酸を開始し、19分後に900Nm3
/時に流量を上げて30分後に停止する一方、トップラ
ンスによる500Nm3 /時の送酸を19分後から2
9.5分後まで行っている。なお、図中のCにおける2
9およびPrにおける195なる数字が付されている箇
所は、図に収まらないので、低い位置に表示されてい
る。窒素含有量は20.6分後には24ppmまで低下
しているが、酸素ガス流量を上昇させたそれ以降の急速
脱炭期における脱窒はほとんど見られない。この設備・
操業条件における溶鋼の均一混合時間は槽内にCuを添
加した場合に1分以内であることを確かめているが、多
量の比重の小さい炭材を槽内に添加した場合の溶鋼への
溶解と均一混合には数分程度を要するようである。送酸
開始後の槽内圧力Prは50トールないし5トールの中
間であった。いずれにせよ、パージ用窒素ガスを使用
し、しかも処理中の溶鋼の硫黄含有量が0.020%以
上でも24ppmまで脱窒できることが確認された。
【0036】中炭素・Siキルド鋼の試験結果の例を図
8に示す。処理開始より4分後に槽内に炭材を添加し、
5.5分後にトップランスの500Nm3 /時の送酸を
開始し、27.5分後に停止した。また、セミディップ
ノズルによる500Nm3 /時の送酸を32.5分後よ
り2分間行った。このヒートでは、送酸中に酸素ガス流
量を上昇させていない。窒素含有量は24分後には22
ppmまで低下しているが、それ以降の脱窒は僅かであ
る。図8よりもさらに高い炭素含有量で送酸を開始し、
中炭素域で長時間送酸を継続した試験結果の例を図9に
示す。処理開始より6分後に槽内に炭材を添加し、10
分後より40分後までセミディップノズルにより500
Nm3 /時の送酸を30分間継続した。送酸中の槽内圧
力Prは50トール前後であるが、窒素含有量は処理開
始より24分後に22ppmに、40分後には12pp
mまで低下していた。
【0037】図9と同様に高い炭素含有量で送酸を開始
し、中炭素域で長時間送酸を継続した試験結果の例を図
10に示す。処理開始より7分後に槽内に炭材を添加
し、11分後より41分後までセミディップノズルによ
り500Nm3 /時の送酸を30分間継続した。槽内圧
力は、排気系操作の不手際から一時的に上昇した時期を
除いて10トール以下になっている。窒素含有量はSi
キルド鋼脱ガス処理による処理開始より11分後に早く
も40ppmに低下し、18.5分後には23ppm
に、34.5分後には12ppmまで低下している。溶
鋼の溶存酸素量の影響については触れなかったが、脱窒
にとって溶存酸素量が低いほど好ましく、溶存酸素量が
80ppmないし100ppm以上になると脱窒が停滞
するように見受けられた。溶存酸素量は、炭素含有量が
高いほど酸素ガス流量が低いほどまた真空槽内圧力が低
いほど低下する。以上の図6から図10には脱炭に伴う
脱窒の性向を示したが、従来技術のところで述べた特開
昭60−184619号公報に記載の酸素ガス流量を9
0トンRH設備に換算すると、約1,100Nm3 /時
ないし3,300Nm3 /時となり、本発明の脱窒期の
最適送酸範囲である315Nm3 /時ないし630Nm
3/時を大きく越える流量となる。それにもかかわら
ず、15分ないし30分で10ppmないし14ppm
の窒素含有量まで低下するという上記公報における顕著
な脱窒効果は、真空槽内圧力が1.7トールというよう
な本発明に比べて桁違いに高い排気能力を有する設備を
使用したものと推測される。それゆえ、本発明によれ
ば、過大な排気能力は要求されないことが理解される。
【0038】ここで、送酸開始時の溶鋼の炭素含有量を
横軸にとる一方、見掛けの脱窒速度定数KN ' を縦軸に
とり、槽内圧力と酸素ガス流量で層別したものを図11
に示す。溶鋼の硫黄含有量も記入されている。なお、式
(2)における平衡窒素含有量〔%N〕e は推定しにく
かったために〔%N〕e =0と仮定して、次式(4)に
よってKN ' を求めた。
【数11】 なお、KN ' の評価に際して脱窒が停滞した時間以降の
データはカットしたので、KN ' については恣意的な部
分もある。図11を見ると、送酸開始時の炭素含有量が
高いほど、酸素ガス流量が低いほどKN ' が上昇する傾
向が槽内圧力50トール前後のデータについて明らかに
認められる。また、酸素ガス流量が500Nm3 /時の
場合に、KN ' は槽内圧力が5トール前後の場合に最も
高く、5トールないし50トールの場合がこれに次ぎ、
50トール前後が最も低いことも明らかであり、槽内圧
力の影響が大きいことが分かる。槽内圧力が5トールで
酸素ガス流量が500Nm3 /時の場合に送酸開始時の
炭素含有量を0.20%以上にすれば、KN ' が25以
上になることも容易に推定されるところである。さら
に、溶鋼の硫黄含有量が100ppm以下から200p
pm以上に上昇すると、KN ' はやや低下している。
【0039】RH処理後の溶鋼の窒素含有量の目標は鋼
種および仕向先によって変わるのは当然であるが、20
ppmあるいは25ppmと仮定し、さらに送酸開始時
の窒素含有量を100ppmあるいは80ppmとし
て、式(4)を使用して簡単な割算によってKN ' と脱
窒に要する時間を算出した結果を図12に示す。ちなみ
に、今回の試験では電気炉・出鋼・取鍋精錬炉の操業に
おいて脱窒促進や吸窒防止に格別な対策を採用しなかっ
たために、RH処理前の窒素含有量が80ppm前後の
ヒートが多かった。仮に、送酸開始前の窒素含有量を1
00ppm脱窒処理後の窒素含有量を20ppmとし、
送酸開始前の炭素含有量が0.193%,酸素ガス流量
が500Nm3 ,槽内圧力が5トール前後,KN ' が2
4.6(1/%・分)のデータを図11から採用する
と、脱窒所要時間は図12から16.3分となる。50
0Nm3 /時で16.3分間送酸し、取鍋内溶鋼量90
トンの場合、脱炭酸素効率とし0.10%C以上は90
%、0.10%C以下は75%と試験結果の下限に近い
値を採用すると、この期間の脱炭量は0.137%とな
る。残り0.056%の炭素と0.05%の珪素および
0.13%のMnを酸素利用効率75%で1,200N
3 /時の酸素ガス流量で除去し、また、極低炭・極低
Si域で溶存酸素量が650ppm上昇したとすると、
酸素ガス所要量は197Nm3 となり急速脱炭期の所要
時間は9.9分となる。
【0040】ここで、酸素利用効率とは、送酸した酸素
ガス量に対して消費した酸素量の割合である。この場
合、CはCOとしてSiはSiO2 としてMnはMnO
として除去されると仮定し、これに溶存酸素量の上昇を
加算したものである。なお、0.13%の脱Mnを仮定
した理由は、極低炭素・極低硅素鋼を溶製する場合のR
H処理前と溶製後のMn含有量との差の試験結果を採用
したものである。結局、RH処理開始より5分後に送酸
を開始し、脱窒期に16.3分,急速脱炭期に9.9分
を要するとすれば合計31.2分であり、急速脱炭後の
自己脱炭,成分・脱酸度・温度調整ならびに一次脱酸生
成物の浮上分離のための攪拌時間を含めて、RH全処理
時間を50分代前半の電気炉のサイクリタイムに一致さ
せることができる。この例は最も処理に長時間を要する
極低炭素・極低珪素鋼を溶製する場合の例であり、より
高い炭素含有量のSiキルド鋼を溶製する場合には、脱
珪、脱Mnと溶存酸素量の上昇に要する酸素量が少なく
て済むので、RH処理時間を短縮することができる。R
H処理時間を短縮しないとすれば、より高い炭素含有量
から低酸素ガス流量の送酸を開始して、より低い溶存酸
素量における脱窒期をより長い時間とることにより、よ
り低い窒素含有量にできることは、すでに図9と図10
に示したとおりである。
【0041】以上述べたことから分かるように、電気炉
および取鍋精錬において格別な脱窒技術あるいは吸窒防
止技術を採用せずとも、RHのごとき減圧下における溶
鋼の酸素ガスブローイング処理に関する本発明と連続鋳
造における既存の吸窒防止技術を組み合わせることによ
って、転炉鋼の窒素含有量に近い低窒素鋼を電気炉鋼と
して製造することが可能となる。したがって、従来、窒
素含有量が高いために電気炉では製造することが不可能
であった鋼種、例えば極軟鋼線材や連続焼鈍プロセスに
より製造される深絞り用冷延鋼板,高張力ラインパイプ
用熱延鋼板などをも電気炉鋼で製造することができる。
なお、0.3%C以上の中炭素鋼もしくは高炭素鋼にお
いては、減圧下における酸化物粒子の溶鋼への吹き付け
による脱窒が実用化されているので、本発明において
は、0.3%C以下の中炭素鋼ないし極低炭素鋼におけ
る低窒素鋼を溶製の対象とすれば、著しい脱窒効果が発
揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による脱窒効果を概略的に表したもの
で、(a)は槽内圧力を一定にして酸素ガス流量を異に
した場合の送酸開始時の炭素含有量に対する脱窒速度の
変化を表したグラフで、(b)は酸素ガス流量を一定に
して真空槽内圧力を異にした場合の送酸開始時の炭素含
有量に対する脱窒速度の変化を表したグラフ。
【図2】 槽内圧力50トール前後において、送酸中の
溶鋼の炭素含有量と硅素含有量との関係を示す試験結果
のグラフ。
【図3】 槽内圧力5トール前後において、送酸中の溶
鋼の炭素含有量と硅素含有量との関係を示す試験結果の
グラフ。
【図4】 槽内圧力50トール前後において、送酸中の
溶鋼の炭素含有量と溶存酸素量との関係を示す試験結果
のグラフ。
【図5】 槽内圧力5トール前後において、送酸中の溶
鋼の炭素含有量と溶存酸素量との関係を示す試験結果の
グラフ。
【図6】 極低炭極低珪素鋼の脱窒試験結果の例を示す
グラフ。
【図7】 極低炭低珪素鋼の脱窒試験結果の例を示すグ
ラフ。
【図8】 中炭Siキルド鋼の脱窒試験結果の例を示す
グラフ。
【図9】 中炭Siキルド鋼の脱窒試験結果の例を示す
グラフ。
【図10】 中炭Siキルド鋼の脱窒試験結果の例を示
すグラフ。
【図11】 送酸開始時の溶鋼の炭素含有量と見掛けの
脱窒速度定数との関係を示す試験結果のグラフ。
【図12】 見掛けの脱窒速度定数と脱窒に要する時間
との関係を示す計算結果のグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大津山 徹 大阪府大阪市西淀川区西島1丁目1番2号 合同製鐵株式会社大阪製造所内 (72)発明者 金子 大剛 大阪府大阪市西淀川区西島1丁目1番2号 合同製鐵株式会社大阪製造所内 (72)発明者 本田 豪 大阪府大阪市西淀川区西島1丁目1番2号 合同製鐵株式会社大阪製造所内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気炉によって溶製した溶鋼を二次精錬
    により脱窒を行う低窒素鋼の溶製法において、 0.05%以下とする製品の炭素含有量よりも少なくと
    も0.15%以上高くなるように溶鋼の炭素含有量を調
    整し、その後に、RHもしくはVODでの前記溶鋼の減
    圧下における酸素ガスブローイング処理に際して、0.
    10%ないし0.25%の炭素を脱炭するまでの脱窒期
    は、酸素ガス流量を2.5Nm3 /溶鋼トン・時ないし
    10Nm3 /溶鋼トン・時、好ましくは3.5Nm3
    溶鋼トン・時ないし7Nm3 /溶鋼トン・時の低流量と
    して脱窒し、以後の前記RHもしくはVOD処理時間を
    短縮するための急速脱炭期には、製品の炭素含有量近く
    まで酸素ガス流量を10Nm3 /溶鋼トン・時ないし4
    0Nm3 /溶鋼トン・時の高流量として急速脱炭するこ
    とを特徴とする電気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  2. 【請求項2】 電気炉によって溶製した溶鋼を二次精錬
    により脱窒を行う低窒素鋼の溶製法において、 0.05%ないし0.30%とする製品の炭素含有量よ
    りも少なくとも0.10%以上高くなるように溶鋼の炭
    素含有量を調整し、その後に、RHもしくはVODでの
    前記溶鋼の減圧下における酸素ガスブローイング処理に
    際して、0.10%ないし0.25%の炭素を脱炭する
    までの脱窒期は、酸素ガス流量を2.5Nm3 /溶鋼ト
    ン・時ないし10Nm3 /溶鋼トン・時、好ましくは
    3.5Nm3 /溶鋼トン・時ないし7Nm3 /溶鋼トン
    ・時の低流量として脱窒し、以後の前記RHもしくはV
    OD処理時間を短縮するための急速脱炭期には、製品の
    炭素含有量近くまで酸素ガス流量を10Nm3 /溶鋼ト
    ン・時ないし40Nm3 /溶鋼トン・時の高流量として
    急速脱炭することを特徴とする電気炉溶鋼を用いた低窒
    素鋼の溶製法。
  3. 【請求項3】 前記脱窒期には、前記RHもしくはVO
    Dの真空槽内圧力を5トール以下に維持させておくこと
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気炉溶
    鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  4. 【請求項4】 前記真空槽内圧力を5トール以下に低下
    させるのを排気開始から5分以内とし、その後に脱窒を
    開始させることを特徴とする請求項3に記載の電気炉溶
    鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  5. 【請求項5】 前記RHにおける操業条件として、取鍋
    溶鋼量(トン)÷環流速度(トン/分)で規定される溶
    鋼環流サイクルタイム(分)が、 【数1】 なる式で表現される環流速度(トン/分)に基づき演算
    した場合に、1.3分以下となるようにしたことを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載の電気炉溶鋼を用
    いた低窒素鋼の溶製法。
  6. 【請求項6】 前記急速脱炭期には、前記RHもしくは
    VODの真空槽内圧力を50トール以下に維持させてお
    くことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電
    気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  7. 【請求項7】 前記急速脱炭期に、RHもしくはVOD
    の真空槽内にミルスケールなどの固体酸素源を添加する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気
    炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  8. 【請求項8】 溶鋼の炭素含有量を製品の炭素含有量よ
    りも高くする前記調整は、取鍋精錬炉における炭材添加
    またはRHもしくはVODにおける脱窒期前の真空槽内
    炭材添加によって行うことを特徴とする請求項1または
    請求項2に記載の電気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製
    法。
  9. 【請求項9】 取鍋精錬炉に脱硫剤を添加し、または、
    RHもしくはVODの脱窒期前の真空槽に脱硫剤を添加
    して、溶鋼の硫黄含有量を0.010%以下にすること
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気炉溶
    鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  10. 【請求項10】 製品の目標値に対して−0.03%な
    いし+0.04%の炭素含有量になったときには溶鋼へ
    の送酸を停止し、取鍋内溶鋼量に対して0.04%以下
    となる加炭材をRHもしくはVODの真空槽内に添加
    し、減圧下における溶鋼中の炭素および溶存酸素による
    自己脱炭を行わせることにより溶鋼の溶存酸素量を減少
    させ、その後に溶鋼の脱酸度と成分調整を行うようにし
    たことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電
    気炉溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
  11. 【請求項11】 前記酸素ガスブローイング処理は、R
    Hの上方から垂直に挿入したランスによって行うことを
    特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気炉溶鋼
    を用いた低窒素鋼の溶製法。
  12. 【請求項12】 取鍋精錬炉で溶鋼の珪素含有量を0.
    05%ないし0.30%に調整し、該溶鋼を減圧下にお
    いて前記酸素ガスブローイング処理することを特徴とす
    る請求項1または請求項2に記載の電気炉溶鋼を用いた
    低窒素鋼の溶製法。
  13. 【請求項13】 減圧下の酸素ガスブローイングをRH
    で行うとき、窒素ガスをトップランスのパージ用ガス,
    槽内監視用覗き窓のパージ用ガス,合金投入口のパージ
    用ガスや合金添加ホッパの復圧用ガスとして使用するこ
    とを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気炉
    溶鋼を用いた低窒素鋼の溶製法。
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