JPH076975A - 石英ガラスボートおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ウエーハのライフタイム劣化の石英ガラスボ
ートおよびその製造法を提供することにある。 【構成】 結晶質石英粉を電気溶融して得た石英ガラス
部材を成形し、ウエーハと接触する部位が少なくとも５
μｍのＯＨ基含有層を有し、その層のＯＨ基含有量が８
０ｐｐｍ以上である石英ガラスボート。および前記石英
ガラス部材で成形した石英ガラスボートにＯＨ基をドー
プすることにより石英ガラスボートを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、半導体熱処理用石英ガ
ラスボート、特にライフタイム劣化の少ない石英ガラス
ボートに関する。

【０００２】

【従来の技術】半導体製造に使用される機械、装置、容
器、管などは耐熱性とともに、化学的に高純度が要求さ
れている。そして、これら部材はどのような条件下で
も、ウエーハと反応したり、あるいは痕跡といえどもど
のような元素もウエーハに与えない部材でなければなら
ない。こうした要求にこたえる材料として、従来、石英
ガラスが用いられてきた。石英ガラスには、結晶質石英
を電気溶融法で溶融しガラス化した石英ガラス、酸水素
火炎法で溶融しガラス化した石英ガラス、およびゾルー
ゲル法やスート法で製造した合成石英ガラス等がある。
しかしながら、前記酸水素火炎法で溶融して得た石英ガ
ラスは該石英ガラス中にＯＨ基が多く含有され、高温で
長時間使用するとつぶれや変形を起こすという欠点を有
していた。また、合成石英ガラスは結晶質石英粉から得
られた石英ガラスに比して粘度が低いため実際のプロセ
スでは使用されていない。そのため、従来、半導体工業
用治具として、特に熱処理温度が１１００℃以上のプロ
セスでは専ら電気溶融法により得られた石英ガラス（以
下電気溶融石英ガラスという）が用いられてきた。

【０００３】しかしながら、この電気溶融石英ガラスに
は、ヒーターなどの構造物からの汚染、特に石英ガラス
中で拡散速度の速いアルカリ金属元素不純物が拡散し易
いという欠点を有している。そこで、この欠点を解決す
る手段として、治具の肉厚方向に特定量のＯＨ基を含有
せしめる多層構造体が既に提案されている。これら多層
構造体は、炉芯管等の構造が簡単な部材には好適である
が、ボートのように構造が複雑、特にウエーハを置載す
る溝等を有する構造では、これまで不適とされてきた。
そのため、ウエーハ用ボートには専ら前記ＯＨ基含有の
ない電気溶融石英ガラスが用いられてきた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このようにウエーハ用
ボート材料として電気溶融石英ガラスが専ら用いられて
きたが、最近、この電気溶融石英ガラスボートで熱処理
したウエーハにライフタイムの規格値以下になるものが
多く発生することがわかった。この原因について本発明
者らは鋭意研究したところ、前記ライフタイムの低下は
鉄、クロム、ニッケル、銅等の重金属不純物に基づくこ
とがわかった。そして、この重金属不純物の汚染は電気
溶融石英ガラス中にＯＨ基、特に特定量のＯＨ基をドー
プすることにより効率的に低減できることを発見した。

【０００５】さらに、本発明者らは前記ボートにＯＨ基
をドープする手段として、石英ガラスボートを水素雰囲
気中で加熱処理するか、または酸水素炎、あるいはプロ
パンガス炎に接触させることにより容易に行いうること
も発見した。こうした知見に基づき本発明は完成された
ものであり、本発明は、ライフタイム劣化の少ない石英
ガラスボートを提供することを目的とする。

【０００６】また、本発明は、上記ライフタイム劣化の
少ない石英ガラスボートの製造方法を提供することを目
的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、結晶質石英粉
を電気溶融して得た石英ガラス部材を成形してなる石英
ガラスボートにおいて、ウエーハと接触する部位が少な
くとも５μｍのＯＨ基含有層を有し、その含有量が８０
ｐｐｍ以上であることを特徴とする石英ガラスボート、
および前記結晶質石英粉を電気溶融して得た石英ガラス
部材で形成した電気溶融石英ガラスボートを水素雰囲気
中で加熱処理するか、または酸水素炎あるいはプロパン
ガス炎に接触することによりＯＨ基を石英ガラス中に含
有することによりライフタイム劣化の少ない石英ガラス
ボートの製造方法に関する。

【０００８】上記において、「結晶質石英粉」とは、水
晶等の天然の結晶質二酸化ケイ素を微粉砕したガラス原
料を意味する。また、「電気溶融」とは、ガラス化のた
めに電気を使用した加熱手段を用いて溶融することをい
う。前記結晶質石英粉の粒度範囲は、１０〜１０００μ
ｍ，好ましくは５０〜５００μｍがよい。粒度が１０μ
ｍ以下では細かい気泡が発生し、また粒度が１０００μ
ｍ以上では純化が難しく、不純物の混入が起こり易くな
る。

【０００９】上記電気溶融石英ガラスボート中のＯＨ基
含有層に含まれるＯＨ基の含有量は、少なくとも８０ｐ
ｐｍである。そして、該ＯＨ基を含有する層の肉厚は、
５μｍ以上でかつボート材全体の肉厚の１／２以下でな
ければならない。ＯＨ基の含有量が８０ｐｐｍ以下では
重金属不純物の汚染を抑制する作用が少なく、従来の石
英ガラスボートとほとんど変わらない。また、ＯＨ基含
有層が５μｍ以下では、重金属不純物によるウエーハ汚
染の抑制効果が果たせず、その層がボート材の１／２以
上ではボートの耐熱性を悪くし使用に耐えない。

【００１０】上記に規定する範囲のＯＨ基を電気溶融石
英ガラスボートに含有せしめるには、石英ガラス材料で
形成したボートを、水素雰囲気中に６００〜８００℃
で、１〜２時間加熱するか、あるいは酸水素ガスバーナ
ーまたはプロパンガスバーナーで前記成形ボートを焼き
仕上げすることにより達成できる。ただし、後者の場合
には、バーナーで強く焼き仕上げすると、ボートが変形
するので注意する必要がある。

【００１１】上記電気溶融石英ガラスボートを再使用す
る場合には、ウエーハの熱処理段階で、重金属不純物が
付着するので、ボートを弗酸液で洗浄し、再度ＯＨ基を
ドープする必要がある。

【００１２】以下に実施例を示しさらに本発明を詳細に
説明する。

【００１３】（ライフタイムの測定法）セミテックス製
ＬＩＦＥ ＴＥＣＨー８８Ｒを使用してウエーハ面内の
ライフタイムをマップ測定する方法。

【００１４】（ＯＨ基含有量の測定法）赤外分光光度法
により表面から５０μｍの層のＯＨ基含有量を測定する
方法。

【００１５】

【実施例】結晶質石英粉を電気溶融して直径１２ｍｍの
石英ガラス棒を成形した。この石英ガラス棒を用いてウ
エーハ熱処理用ボートを３台制作した。このボートに
５″ウエーハをセットし、石英炉芯管内に挿入し、１２
００℃で５時間加熱処理を行った。 加熱処理の終わっ
たウエーハを取り出し、そのライフタイムを測定し、規
格値の１００μｓｅｃ以下となる部分の割合を求めた。
また、各ボートの表面から５０μｍにおけるＯＨ基の含
有量を測定した。

【００１６】一方、比較例として、結晶質石英粉を酸水
素溶融して得た石英ガラスを用いてボートを形成した。
このボートにウエーハをセットし前記と同様に加熱処理
を行った。上記結果を表１に示す。

【００１７】

【表１】 ＊ ウエーハ面内でライフタイムが規格値以下となる
割合。

【００１８】上記比較例２は、表面も中心部でのＯＨ基
含有量が１８０ｐｐｍと多いために、１２００℃、５時
間加熱処理を行ったところ、ボートのウエーハ支持棒が
変形した。このため、次の熱処理を行うとき、ウエーハ
が巧くウエーハ支持棒に置載できず正常に熱処理できた
ウエーハ、は全体の５０％になってしまった。

【００１９】

【発明の効果】本発明の電気溶融石英ガラスボートを用
いて加熱処理したウエーハは上記表１に示すようにライ
フタイムの規格値以下となる割合が著しく減少する。す
なわち、本発明の電気溶融石英ガラスボートは耐熱性を
低下することなく、ライフタイムの優れたウエーハを容
易に製造できるボートであることがわかる。

フロントページの続き (72)発明者 木村 博至 福井県武生市北府２−13−60 信越石英株 式会社武生工場内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 結晶質石英粉を電気溶融して得た石英ガ
   ラス部材を成形してなる石英ガラスボートにおいて、ウ
   エーハと接触する部位が少なくとも５μｍのＯＨ基含有
   層を有し、その層のＯＨ基含有量が８０ｐｐｍ以上であ
   ることを特徴とするライフタイム劣化の少ない石英ガラ
   スボート。
2. 【請求項２】 結晶質石英粉を電気溶融して得た石英ガ
   ラス部材で形成した石英ガラスボートを水素雰囲気中で
   加熱処理することを特徴とする請求項１記載の石英ガラ
   スボートの製造方法。
3. 【請求項３】 結晶質石英粉を電気溶融して得た石英ガ
   ラス部材で形成した石英ガラスボートを酸水素炎または
   プロパンガス炎で処理することを特徴とする請求項１記
   載の石英ガラスボートの製造方法。