JPH0767635A - 新規フィターゼ及びその製造法 - Google Patents

新規フィターゼ及びその製造法

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JPH0767635A
JPH0767635A JP23915293A JP23915293A JPH0767635A JP H0767635 A JPH0767635 A JP H0767635A JP 23915293 A JP23915293 A JP 23915293A JP 23915293 A JP23915293 A JP 23915293A JP H0767635 A JPH0767635 A JP H0767635A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ヒト、動物の微量ミネラル吸収の改善に利用可
能な新規フィターゼ及びその製造法を提供する。 【構成】フィチン酸及びフィチン酸部分分解物によく作
用し、至適pHが3付近、至適温度が40℃付近で且つ50℃
で安定な性質を有するフィターゼ及び該フィターゼ生産
能を有するペニシリウム・カゼイコラムを栄養培地で培
養し、培養物中にフィターゼを産生せしめ、これを採取
することを特徴とするフィターゼの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規フィターゼ及びそ
の製造法に関する。更に詳細には、ペニシリウム・カゼ
イコルム(Penicillium caseicolum)由来の新規フィタ
ーゼに関し、本酵素は、ヒト、動物の微量ミネラル吸収
の改善に利用することができ、食品工業、飼料工業分野
及び医薬品工業分野において有用である。
【0002】
【従来の技術】植物起源の食物に含まれるフィチン酸
は、強力なキレート剤であり、容易に金属イオンと共有
結合し、それを不溶化し、その吸収を不可能とするた
め、栄養学的な面からフィチン酸の除去方法が望まれて
おり、そのための方法としてフィターゼを作用させてフ
ィチン酸をリン酸とミオイノシトールに加水分解する方
法が検討されている。
【0003】そして、それに使用するためのフィターゼ
として、アスペルギルス属、リゾプス属、サッカロミセ
ス属、ムコール属、ゲオトリカム属等の各種のフィター
ゼ生産能を有する菌株がスクリーニングされ、さらに、
これらの各種微生物の中でもアスペルギルス属由来の菌
株が好ましく、特にアスペルギルス・フィクウム(Aspe
rugillus ficuum)が好ましいことが述べられている〔E
nzyme Microb. Technol.,5巻 377-379 (1983)及び App
l. Microbiol.,16巻 1348-1351 (1968)〕。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
で知られた微生物のフィターゼ生産能は低いものであ
り、これらのフィターゼを用いての実用的な規模でのフ
ィチン酸除去の試みは、殆どなされておらず、それ故、
実用的に使用可能な新たな微生物の生産するフィターゼ
の開発が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、大豆チー
ズの熟成に使用されているペニシリウム・カゼイコラム
菌株がフィターゼ生産能を有していることを知り、本菌
を適当な栄養培地で培養してフィターゼを大量生産せし
めることによって、フィチン酸の実用的な規模での除去
に十分使用できるのではないかと考えた。
【0006】そして、鋭意検討の結果、本菌を用いてフ
ィターゼを著量生産する方法を確立すると共にペニシリ
ウム属の菌株において、これまでフィターゼ生産能を有
する菌株は知られておらず、本菌株が初めてであるこ
と、さらに又、採取されたフィターゼが新規酵素である
ことをも知ることによって本発明を完成した。即ち、本
発明は、新規フィターゼ及び該新規フィターゼ生産能を
有するペニシリウム属菌を栄養培地で培養し、培養物よ
り新規フィターゼを採取することを特徴とする新規フィ
ターゼの製造法である。
【0007】本発明に使用する菌株は、これまでに大豆
チーズのスターターとして用いられていたところのペニ
シリウム・カゼイコルム(Penicillium caseicolum)IA
M 7358株である。
【0008】本菌を使用してフィターゼを生産蓄積させ
る為の培養方法としては、液体培養法、固体培養法の何
れでもよい。固体培養培地としては、小麦ふすま単独或
いは小麦ふすまに種々の添加物、例えば、きな粉、大豆
粉、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、グルタミン酸、ア
スパラギン酸、ポリペプトン、コーンスティープリカ
ー、肉エキス、酵母エキス、蛋白質加水分解物などの有
機及び無機の窒素化合物などを添加して用いることがで
き、又、適当な無機塩類を加えることもできる。
【0009】又、液体培地の場合は、当該微生物が良好
に生育し、酵素を順調に生産するために必要な炭素源、
窒素源、無機塩、必要な栄養源等を含有する合成培地又
は天然培地があげられる。例えば、炭素源としては、澱
粉又はその組成画分、焙焼デキストリン、加工澱粉、澱
粉誘導体、物理処理澱粉及びα−澱粉等の炭水化物が使
用できる。具体例としては、可溶性澱粉、トウモロコシ
澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、デキストリン、アミロペ
クチン、アミロース等があげられる。
【0010】窒素源としては、ポリペプトン、カゼイ
ン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー或
いは大豆又は大豆粕などの抽出物等の有機窒素源物質、
硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩窒素
化合物、グルタミン酸等のアミノ酸類が挙げられる。
【0011】そして無機塩類としては、リン酸1カリウ
ム、リン酸2カリウム等のリン酸塩、硫酸マグネシウム
等のマグネシウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム
塩、炭酸ナトリウム等のナトリウム塩等が用いられる。
【0012】培養は、振盪培養若しくは、通気攪拌培養
等の好気的条件下に於いて、培地をpH7〜11の範囲、好
ましくはpH8〜10の範囲に調製し、温度10〜40℃の範
囲、好ましくは、25〜37℃で実施するのが望ましいが、
この条件以外であっても微生物が生育し、目的とする酵
素を生成する条件であれば特に制限されない。
【0013】培養の条件としては、固体培養の場合に
は、静置培養で行い、培地のpHを3〜5に調製したもの
に本菌を接種し、10〜35℃で1〜10日間培養を行う。培
養後その培養物からフィターゼを適当な塩溶液、例え
ば、塩化カルシウム溶液等を用いて抽出し、遠心分離
し、濾過して上澄液を得てこれを粗酵素液とする。
【0014】そして、液体培養の場合には、培養は、振
盪培養若しくは、通気攪拌培養等の好気的条件下に於い
て行い、培地をpH7〜11の範囲、好ましくはpH8〜10の
範囲に調製し、温度10〜40℃の範囲、好ましくは、25〜
37℃で、24〜96時間培養する。培養後菌体を除去し、粗
酵素液を得る。
【0015】ついで、これらの粗酵素液から硫安塩析処
理、DEAE−セファデックス(Sephadex)A−50(商
品名:ファルマシア社製)処理、Butyl Toyopearl 650M
(商品名:ファルマシア社製)による疎水クロマトグラ
フィー処理、セファデックスG-200(商品名:ファルマ
シア社製)によるゲルろ過処理等により高純度の精製フ
ィターゼ標品が得られる。こうしてSDS−PAGEで
単一な精製フィターゼが得られた。この精製フィターゼ
の酵素化学的性質について以下に述べる。
【0016】(1)作用:フィチン酸を加水分解してミオ
イノシトールと遊離のリン酸を生成せしめる。
【0017】(2)基質特異性:表1に示されるように、
フィチン酸及びフィチン酸の部分分解物によく作用し、
有機リン酸エステル、ピロホスフェート、糖・リン酸エ
ステル及びヌクレオシドホスフェートにも作用する。
【0018】
【表1】
【0019】尚、表中のIP類は、フィチン酸の酵素分解
物を示し、IP2、IP3、IP4、IP5はそれぞれ1,2−エタン
キスリン酸、1,2,5−プロパンキスリン酸、1,2,4,5−ブ
タンキスリン酸、1,2,3,4,5−ペンタキスリン酸を示
す。
【0020】(3)至適pH:3付近(図1に示される。)
【0021】(4)至適温度:45℃付近(図2に示され
る。)
【0022】(5)温度安定範囲:50℃で安定であるが、7
0℃で失活する(図3に示される。)。
【0023】(6)pH安定範囲:pH5以上で不安定である
(図4に示される。)。
【0024】(7)各種金属塩による影響:水銀及び鉄に
よって活性阻害が見られるが、コバルト、カドミウム、
マンガン、亜鉛によって賦活される(表2に示され
る。)。
【0025】
【表2】
【0026】(8)各種阻害剤の影響:金属酵素阻害剤で
あるEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid、即ちエ
チレンジアミン四酢酸の略)及びオルト−フェナントロ
リンには影響されず、SH酵素阻害剤のPCMB(p-chlorome
rcuribenzoic acid、即ちパラクロロメリクリ安息香酸
の略)のエタノール溶液及びNーエチレンマレイミドに
対しては賦活され、L−システイン、ペプスタチン、PM
SF(phenylmethanesulfonyl fluoride、即ちフェニルメ
タンスルフォニルフロリドの略)及びp-APMSF(p-amino
phenylmethanesulfonyl fluoride、即ちパラアミノフェ
ニルメタンスルフォニルフロリドの略)のそれぞれによ
ってもやや賦活される(表3に示される。)。
【0027】
【表3】
【0028】(9)分子量:約6万(SDS-PAGE及びゲルろ
過法による)
【0029】本酵素は、以上の酵素化学的性質を有し、
特に至適pHが3付近にあるという特徴を有している。こ
れまでに知られた種子及び微生物のフィターゼのほとん
どの至適pHは、5から6付近にあり、ただ例外的にアス
ペルギルス・フクウムのフィターゼの至適pHが2付近に
あるものの、これとは至適温度においても相違してお
り、結局のところ本酵素は、これら何れとも至適pHを異
にしている。従って、本酵素は、新規酵素であるといい
得るのである。
【0030】本発明において使用したフィターゼの活性
は、フィチン酸から遊離した無機リン酸をジャッカ等の
方法〔Analytical Biochmistry 113, 313-317 (1981)〕
に準じ定量、測定した。即ち、基質に米由来のフィチン
酸ナトリウム(シグマ社製品)0.5ml、0.2M酢酸緩衝液
(pH3.0)0.1ml、蒸留水0.4ml及び酵素液0.1mlを用いて
総量2mlで45℃、所定時間酵素反応を行い、その反応液
0.5mlをモリブデ酸アンモニウム1容、硫酸1容、アセ
トン2容の混液4.0mlの中に加え、フィチン酸から遊離
された無機リン酸を定量した。活性単位は、1分間に1
μMのリン酸を遊離させる活性を1単位とした。
【0031】以下、実施例及び試験例により本発明を詳
述する。なお、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0032】
【実施例】
実施例1 広口三角フラスコに、40メッシュの篩で微粉
末を除去した小麦ふすま15gを入れ、0.1M酢酸緩衝液(p
H4.8)26mlを加え、120℃、20分滅菌後、Penicillium c
aseicolum IAM 7358の胞子懸濁液を接種し、18℃、7日
間培養した後、培養物を粉砕し、2%塩化カルシウム溶
液150mlで培養物からフィターゼを5℃、2時間抽出し
た。抽出後、遠心分離(5℃、8000rpm)し、ろ過して
粗酵素液を145mlを得た(総活性は12325単位であっ
た。)。
【0033】ついで粗酵素液を40%硫酸アンモニウム飽
和にし一晩放置後、遠心分離し(5℃、8000rpmにて20
分間)、得られた沈殿区分を蒸留水に溶解した後透析を
行い、透析内液を得、この液を更にDEAE Sephadex(フ
ァルマシア社製品) A-50のカラムに流し、該カラムに
フィターゼを吸着せしめた後、0〜0.5M NaClで濃度勾
配溶出を行い、活性区分を溶出し、更に活性区分をButy
l Toyopearl(東ソー社製品) 650Mを用いた疎水クロマ
トグラフィーにかけた後、0〜40%の硫酸アンモニウム
の濃度勾配にてカラムに吸着したフィターゼを溶出し、
精製フィターゼ30mlを得た(総活性は、4,070単位であ
った。)。尚、粗酵素液から比活性は292.2倍上昇し、
回収率は、5.9%であった。
【0034】
【発明の効果】本発明により、ペニシリウム属の産生す
る新規フィターゼが提供され、本酵素は食品工業及び飼
料工業分野において、フィチン酸の除去に利用すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィターゼの至適pHを示す。
【図2】本発明のフィターゼの至適温度を示す。
【図3】本発明のフィターゼの安定温度範囲を示す。
【図4】本発明のフィターゼの安定pH範囲を示す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の酵素化学的性質を有するフィター
    ゼ。 (1)作用:フィチン酸を加水分解してミオイノシトール
    と遊離のリン酸を生成せしめる。 (2)基質特異性:フィチン酸及びフィチン酸の部分分解
    物によく作用し、有機リン酸エステル、ピロホスフェー
    ト、糖・リン酸エステル及びヌクレオシドホスフェート
    にも作用する。 (3)至適pH:3付近 (4)至適温度:45℃付近 (5)温度安定範囲:50℃で安定であるが、70℃で失活す
    る。
  2. 【請求項2】ペニシリウム属に属するフィターゼ生産能
    を有する菌株を栄養培地で培養し、培養物中にフィター
    ゼを産生せしめ、これを採取することを特徴とするフィ
    ターゼの製造法。
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