JPH0762429A - 鋼帯の酸化防止剤 - Google Patents

鋼帯の酸化防止剤

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JPH0762429A
JPH0762429A JP20927793A JP20927793A JPH0762429A JP H0762429 A JPH0762429 A JP H0762429A JP 20927793 A JP20927793 A JP 20927793A JP 20927793 A JP20927793 A JP 20927793A JP H0762429 A JPH0762429 A JP H0762429A
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steel strip
antioxidant
annealing
oxide
coating film
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JP20927793A
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Hisatomi Muraki
久富 村木
Zenji Yamaguchi
善治 山口
Genichi Ishibashi
源一 石橋
Masaharu Ikeda
雅晴 池田
Kuniaki Sato
邦昭 佐藤
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JFE Steel Corp
Hakuto Co Ltd
Original Assignee
Hakuto Co Ltd
Kawasaki Steel Corp
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  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】高温酸化性雰囲気中での焼鈍処理における酸化
スケールの生成を防止するとともに、焼鈍処理後には容
易に除去できる鋼帯の酸化防止剤を提供する。 【構成】1300℃を越える融点を有する無水シリカ
と、アルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,リン酸
アルミニウム,ケイ酸ジルコニウム,ホウ酸ジルコニウ
ム,酸化タングステン,酸化バナジウム,酸化イットリ
ウム,酸化鉄からなる群より選ばれた少なくとも一種類
の無機コロイド状物とを有効成分として含有する。鋼帯
表面に緻密な非結晶性無定形被膜を形成して酸化スケー
ルの生成を防止するとともに、焼鈍炉内の温度上昇で結
晶性被膜に変化するから、焼鈍処理後に鋼帯表面から容
易に剥離可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼帯の連続焼鈍酸洗に
先立って鋼帯表面に塗布する酸化防止剤に関し、詳しく
は、高温酸化性雰囲気中での酸化スケールの生成を防止
するとともに、完全かつ容易に剥離することができる鋼
帯の酸化防止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、冷間圧延後の鋼帯に対して、機
械的性質を得るために焼鈍処理が施される。従来の焼鈍
処理としては、例えば炭素鋼の場合のH2 (3%〜15
%)+N2 (85%〜97%)の弱還元性雰囲気中で焼
鈍されるCA法や、ステンレス鋼の場合でのH2 (75
%)+N2 (25%)の強還元性雰囲気中で焼鈍される
BA法や、あるいはO2 (2%〜3%)の酸化性雰囲気
中で焼鈍されるAP法等がある。
【0003】これらのうちで、焼鈍工程における鋼帯表
面の酸化スケールの生成を避けるためにはCA法やBA
法が適しているが、いずれも熱効率が悪くてコストが高
くなる欠点がある。一方、AP法は、先の還元性雰囲気
を使用する2法に比べてコストは比較的低いが、酸化性
雰囲気のため緻密な酸化スケールを生成する欠点があ
る。
【0004】以下、AP法の焼鈍工程について、図1に
基づき詳しく説明する。冷間圧延後の鋼帯、例えばステ
ンレス鋼帯は、連続焼鈍酸洗ラインで焼鈍と酸洗が施さ
れる。図1は、一般に行われている連続焼鈍酸洗ライン
(以下、APLと称する)の概略を示したもので、図に
おいて、1はペイオフリール、2は入側シヤー、3はウ
ェルダ、4は脱脂装置、5は入側ルーパである。6は焼
鈍炉であって、加熱部7と冷却部8とからなり、加熱部
7は予熱帯,加熱帯,均熱帯などから構成されている。
9,10,11は、ソルトバス,中性塩電解槽,硝酸
槽,硝フッ酸槽などを適宜組み合わせた複数の酸洗槽で
ある。12は洗浄装置、13はドライア、14は出側ル
ーパ、15は分割シヤー、16はテンションリールであ
る。
【0005】このAPLにおいて、まず、ペイオフリー
ル1により巻戻された冷間圧延後のステンレス鋼帯S
は、入側シヤー2で先端部または後端部を切断され、ウ
ェルダ3により先行コイルと接続される。次に、ステン
レス鋼帯Sは、表面に付着した冷間圧延油が脱脂装置4
で除去され、その後、入側ルーパ5を経て焼鈍炉6に送
られて、所定の熱処理を施される。このとき、加熱部7
において、ステンレス鋼帯Sはアスベストロール71で
カテナリー状に支持されて直火バーナーで熱処理され
る。その後、冷却部8においてエアージェットによる冷
却が行われる。このように直火バーナーによる燃焼ガス
雰囲気下で焼鈍されるので、ステンレス鋼帯Sの表面に
は厚さ20〜400mμ程度の緻密な酸化スケール層が
形成される。そこで、この緻密な酸化スケール層を除去
するために、複数の酸洗槽9〜11を使用してステンレ
ス鋼帯Sの脱スケールがなされるとともに不働態化処理
が施される。
【0006】次に、ブラッシングやスプレー等を行う洗
浄装置12により表面が清浄にされ、ドライア13で乾
燥される。その後、出側ルーパ14を経て分割シヤー1
5により所定長さに切断された後、テンションリール1
6に巻き取られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のAP法の焼鈍工程では、次のような問題点が
あった。 (1)冷間圧延後の鋼帯の表面は、鏡面に近いため熱吸
収率が低く、APLの焼鈍炉6の加熱部7において焼鈍
温度まで昇温するには、長大な炉を必要とするか、もし
くは炉内の通板速度を低下しなければならない。
【0008】(2)AP法で鋼帯表面に生成する緻密な
酸化スケール層の除去には、複数の酸洗設備を必要とす
る。特に、ステンレス鋼帯の酸化スケールは炭素鋼に比
べてより緻密であるため、酸化スケール層の除去には長
大な酸洗設備を要する。さらに、使用薬品の種類や量も
多いため、その廃液処理の手間およびコストも多大にな
る。
【0009】このAP法に対して、炭素鋼におけるCA
法、ステンレス鋼におけるBA法は、還元性雰囲気中で
加熱処理するために酸化スケールの生成はほとんどない
が、間接加熱が必要となることから、先に述べたように
熱効率が悪く、処理コストが高くなるという問題点があ
った。こうした問題の解決策として、例えば特公昭56
−8092号公報には、鋼帯の表面に、炭素、黒色染料
の単独又はこれらの混合物を塗布して連続焼鈍する方法
が開示されている。
【0010】しかし、この従来方法は、鋼帯表面の熱吸
収率を向上させることはできるものの、他方で次のよう
な種々の問題点を有している。 炭素、黒色染料等の塗布膜の鋼帯表面への接着性が不
十分で、しかも均一な塗布膜の形成ができない。 その塗布膜が炉内で分解するために酸化スケールの生
成を防止できない。
【0011】炉内で全部の塗布膜が完全には分解しき
らない場合、残った焼成被膜がその部分の鋼帯表面にお
ける酸化スケールの生成を防止することはできるが、し
かし焼鈍工程終了後に鋼帯表面からその残留焼成被膜を
完全かつ容易に除去することができない。 鋼帯表面に生成される酸化スケールが炉内のハースロ
ールに付着し、これが成長すると鋼帯表面にピックアッ
プ疵が生じる。このため、ハースロールの頻繁な交換が
必要となり、生産性低下、メインテナンスの増大とな
る。
【0012】そこで、本発明は、上記の従来からの問題
点に着目してなされたもので、焼鈍工程の熱吸収率を向
上させることができ、また高温酸化性雰囲気における酸
化スケールの生成を防止でき、さらに焼鈍後の酸洗工程
の廃酸処理の手間および処理コストの低減をもたらし、
かつ焼鈍後には容易に除去できる鋼帯の酸化防止剤を提
供して上記従来の問題点を解決することを目的としてい
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点を解決することができる酸化防止剤について鋭意研
究した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、上
記の目的を達成する本発明の鋼帯の酸化防止剤は、13
00℃を越える融点を有する無水シリカと、アルミナ,
シリカ,ジルコニア,チタニア,リン酸アルミニウム,
ケイ酸ジルコニウム,ホウ酸ジルコニウム,酸化タング
ステン,酸化バナジウム,酸化イットリウム,酸化鉄か
らなる群より選ばれた少なくとも一種類の無機コロイド
状物とを有効成分として含有することを特徴とする。
【0014】また、本発明の鋼帯の酸化防止剤は、前記
無水シリカと無機コロイド状物とに加えて、更に130
0℃以下の融点を有する無機金属塩を有効成分として含
有するものとすることができる。前記無機金属塩は、ケ
イ酸、ホウ酸、リン酸のアルカリ金属塩あるいはアルカ
リ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一種類
以上から構成されるものとすることができる。
【0015】以下に、本発明を詳しく説明する。一般
に、冷間圧延後の鋼帯に対して、機械的性質を向上させ
るために焼鈍処理が施される。その焼鈍処理の一つであ
る連続焼鈍では、鋼帯の焼鈍温度は鋼種によって異な
り、例えばSUS304では1120〜1200℃、S
US430では800〜900℃、電磁鋼や炭素鋼では
700〜800℃とおおよそ1300℃以下の処理温度
である。
【0016】本発明の酸化防止剤には、このような鋼帯
の処理温度に鑑み、1300℃を越える融点を有する無
水シリカを用いる。その無水シリカの微細な粒子を例え
ば水等に分散させて鋼帯表面に吹きつけるなどして塗布
すると、無水シリカ粒子が鋼帯表面を緻密に覆うととも
に微細な凹凸が形成される。この凹凸により鋼帯表面の
鏡面性が失われるとともに、見掛け上の受熱面積が増大
し、鋼帯表面の熱吸収率が大きくなる。その結果、焼鈍
工程における昇温が容易になり、従来のような長大な焼
鈍炉を必要としなくなる。しかも、鋼板の通板速度を低
下させることもなく、生産性の向上が得られる。
【0017】また、無水シリカは高温に耐え化学的にも
安定であるため、鋼帯表面に吹きつけられた無水シリカ
は、焼鈍炉内の昇温によって溶融被膜ではなく見掛け上
の乾燥塗膜を形成する。その塗膜構造は、炉内温度が上
昇しても無水シリカの融点以上にはならないため、焼鈍
中に変わることはない。よって、焼鈍炉中の酸化性成分
(O2 ,CO2 ,H2O) と反応することはなく、鋼帯
表面に固着することがないため、焼鈍後の冷却工程で容
易に鋼帯面から剥離することができる。
【0018】このような機能を有する無水シリカとして
は、各種の鋼の焼鈍処理温度が1300℃以下であるこ
とから、その融点が1300℃を越え且つ鋼の融点より
低く、平均粒子径が50μm以下のものが好ましい。平
均粒子径が50μmを越えるものは、焼鈍炉内のハース
ロールに付着して鋼帯表面に疵をつけるなど、鋼帯品質
を低下させるため好ましくない。
【0019】本発明の酸化防止剤は、アルミナ,シリ
カ,ジルコニア,チタニア,リン酸アルミニウム,ケイ
酸ジルコニウム,ホウ酸ジルコニウム,酸化タングステ
ン,酸化バナジウム,酸化イットリウム,酸化鉄等から
選ばれた無機コロイド状物をも含有している。その無機
コロイド状物は、粒子径が5mμ〜100mμと非常に
小さい。そのため、無機コロイド状物を前記無水シリカ
に配合して鋼帯表面に塗布すると、無水シリカと一体化
した乾燥塗膜が形成されて、鋼帯の表面を覆う塗膜がよ
り一層緻密になり、焼鈍炉中の酸化スケールの生成を効
果的に防止することができる。
【0020】無機コロイド状物は、焼鈍炉内の昇温によ
り見掛け上の乾燥塗膜を形成した後、約300〜600
℃で微細な無機コロイド物粒子の脱水が起こり、600
℃を越えるとさらに粒子間の縮合が起こって、強固な非
結晶性無定形被膜が形成される。この無定形被膜の形成
により鋼帯表面が保護されるため、焼鈍工程の酸化性雰
囲気中であっても酸化スケールの生成が防止される。
【0021】前記の非結晶性無定形被膜は、更に温度が
上昇すると、結晶性被膜へと変化するという熱的特性を
備えている。この結晶性被膜は鋼帯に比べて線膨張係数
が小さいため、次の冷却工程で鋼帯との収縮率の違いか
ら被膜内に亀裂が生じて、水洗あるいはナイロンブラッ
シング程度の簡易な機械的方法で鋼帯表面から容易に除
去することができる。
【0022】したがって、本発明に使用する無機コロイ
ド状物は、連続焼鈍における鋼帯の焼鈍温度の上限であ
る1300℃以下で結晶化して結晶性被膜を形成するも
のであって、好ましくは700〜1300℃で結晶化し
て結晶性被膜を形成するものである。結晶化温度が13
00℃を越える無機コロイド状物を用いると、焼鈍時に
鋼帯表面に形成された非結晶性無定形被膜が鋼帯表面に
融着したまま残存するため、焼鈍後の冷却工程で完全か
つ容易にこれを剥離させて除去することが困難になる。
【0023】本発明の鋼帯の酸化防止剤は、更に、13
00℃以下の融点をもつ無機金属塩を上記の無機コロイ
ド状物に配合することができる。これにより、無機コロ
イド状物を形成する無機物の「非結晶性無定形被膜の形
成温度」および「結晶性被膜の形成温度」を変えること
ができ、その配合量を調整することにより、対象とする
鋼帯製品の種類に応じて最も適した酸化防止剤を提供す
ることができる。
【0024】また、この無機金属塩の配合により、非結
晶性無定形被膜はより緻密になり、鋼帯表面に対する密
着性も向上し、酸化スケールの生成防止機能を一層高め
ることができる。上述の1300℃以下の融点をもつ無
機金属塩は、ケイ酸、ホウ酸、リン酸のアルカリ金属塩
およびアルカリ土類金属塩であり、具体例として、ケイ
酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ
酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ホウ酸リチウ
ム、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カルシ
ウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグ
ネシウム、リン酸カルシウム等があげられ、これらの少
なくとも一種類を含むものである。融点が1300℃を
越えるものは、コロイドを形成する無機物の「非結晶性
無定形被膜の形成温度」および「結晶性被膜の形成温
度」の調整ができないことと、鋼帯表面に固着した被膜
が残ることから好ましくない。
【0025】図2に、無機コロイド状物に無機金属塩の
リン酸カリウムを配合したときの「非結晶性無定形被膜
の形成温度」および「結晶性被膜の形成温度」の変化を
示す。図から、リン酸カリウムの配合量が増加するとと
もに、「非結晶性無定形被膜の形成温度」および「結晶
性被膜の形成温度」が次第に低くなる方向へ変化するこ
とがわかる。
【0026】このことを利用して、本発明の酸化防止剤
にあっては、無機コロイド状物と無機金属塩との配合比
を、例えばステンレス鋼用と電磁鋼や炭素鋼用というよ
うに鋼種により変えて、それぞれの焼鈍温度に最も良く
適合した熱的特性を備えた酸化防止被膜を形成させるよ
うにする。本発明の鋼帯の酸化防止剤には、鋼帯表面に
均一かつ平滑な乾燥塗膜を得るために、更に、分散剤を
適量配合してもよい。
【0027】使用する分散剤は、有機系高分子であるコ
ーンスターチ、タピオカデンプン、アルギン酸ソーダ、
グアーガム、ザンサンガム、プルラン、カゼイン、ゼラ
チン、α−デンプン、デキストリン、メチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセル
ロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチ
ルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン
グリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニールブ
チラール等からなる群から選ばれた少なくとも一種類を
含むものである。
【0028】本発明の鋼帯の酸化防止剤における、無機
コロイド状物、無機金属塩、分散剤を分散させる溶媒と
して、水あるいは水と有機溶剤との混合物が使用でき
る。その混合物の沸点は150℃以下であることが好ま
しい。沸点が150℃を越える溶媒は、塗布膜の乾燥速
度が遅くて通板速度の低下をまねき、また焼鈍炉中での
有機溶剤の揮散による塗布膜の膨れや剥離を生じて酸化
防止効果が得にくくなる。
【0029】好適な有機溶剤としては、メタノール、エ
タノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、2−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコー
ル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールメ
チルエーテルなどのアルコール類等をあげることができ
る。本発明の鋼帯の酸化防止剤の塗布には、通常焼鈍炉
入り側で鋼帯表面に酸化防止剤を均一かつ平滑に塗布す
るのに使用される手段、例えばミストスプレー、ロール
コータ、静電塗布装置等を用いることができるが、それ
らに限定されるものではない。
【0030】
【作用】本発明の鋼帯の酸化防止剤の作用は、無水シリ
カを鋼帯表面に塗布して焼鈍すると、鋼帯表面に緻密な
無水シリカの被膜が形成されて鋼帯表面の鏡面性が消失
し、鋼帯の熱吸収率が向上する。さらに、無水シリカの
被膜の凹凸により掛け上の受熱面積も増大して炉内の昇
温が促進される。
【0031】また、微細な無機コロイド状物を配合する
ことで、無水シリカと無機コロイド状物との一体化した
塗膜が形成される。無機コロイド状物の粒子は、温度が
約300℃〜600℃になると脱水反応が起こり、60
0℃を越えると粒子間が縮合して強固で緻密な非結晶性
無定形被膜が形成され、鋼帯表面に固着する。この被膜
が焼鈍炉の酸化性雰囲気中の酸化成分を遮断して鋼板表
面の酸化スケールの生成を防止する。
【0032】さらに温度が上昇すると、この非結晶性無
定形被膜はその熱的特性により結晶性被膜に変化するた
め線膨張係数が鋼帯より小さくなり、鋼帯との収縮率の
差による多数の亀裂が被膜内に生じる。この結果、焼鈍
後の冷却過程で酸化防止剤の焼成被膜を水洗とブラッシ
ングで簡単に鋼帯表面から剥離させることが可能にな
る。
【0033】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を説明する。
この実施例は、無水シリカ,無機コロイド状物,無機金
属塩,分散剤を配合して溶剤に分散させた本発明の鋼帯
の酸化防止剤と、比較例としてこれとは異なる配合の酸
化防止剤とを用いて、図1の連続焼鈍酸洗ライン(AP
L)におけるステンレス鋼帯の連続焼鈍を実施し、焼鈍
炉内での昇温時間及び焼鈍炉通板後に酸化防止剤の性能
(酸化防止性、剥離性)等をテストして評価したもので
ある。
【0034】〔テストに用いた薬品〕 無水シリカ;日本アエロジル株式会社製、「アエロジル
130(商標名)」比較例として、 ジルコンフラワー;キンセイマテック株式会社製、「ジ
ルコンフラワーNO.140(商標名)」 無機コロイド状物 アルミナ;日産化学工業株式会社製、「アルミナゾルA
Z100(商標名)」 チタニア;日産化学工業株式会社製、「TA−10(商
標名)」 酸化バナジウム;日産化学工業株式会社製、 無機金属塩 リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ナトリウ
ム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ホウ酸カルシウ
ム、ホウ酸リチウム、比較例として、リン酸亜鉛、リン
酸バナジウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸
アンモニウム、バナジン酸カリウム;いずれも関東化学
株式会社製の試薬を用いた。
【0035】分散剤 ザンサンガム;ケルコカンパニー製、 ヒドロキシプロピルメチルセルロース;信越化学工業株
式会社製 ポリエチレンオキサイド;住友精化株式会社製、「PE
O−3(商標名)」 〔テストに用いた鋼帯〕ステンレス鋼帯;SUS30
4、幅1.0 m×長さ10.0m×板厚1.0mm 〔テスト方法〕ステンレス鋼帯の連続焼鈍酸洗ラインに
おいて、本発明の酸化防止剤および比較例の酸化防止剤
を焼鈍炉入り側にてロールコータ法で鋼帯表面に全面塗
布し、焼鈍炉内での昇温時間および焼鈍炉通板後の性能
(酸化防止性、剥離性)の評価を実施した。
【0036】塗布後の膜厚は、ウエットで20μm〜3
0μm、ドライで1μm〜2μmであった。焼鈍後の焼
成被膜は、焼鈍炉の出側にてエアージェット後、水洗と
ナイロンブラシで除去した。本評価テストに使用した本
発明の酸化防止剤の実施例の組成(重量%)、粘度を表
1および表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】また、本評価テストに使用した比較例の酸
化防止剤の組成(重量%)、粘度を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】また、表1、表2、表3にそれぞれ示した
各酸化防止剤の評価結果を、表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】表4の「乾燥塗膜の付着性」、「焼鈍炉中
の酸化防止性能」、「焼鈍後の剥離性能」はいずれも目
視による面積率で評価した。なお、「焼鈍炉中の酸化防
止性能」は、「焼鈍後の剥離性能」の評価後に表面にお
ける残存スケールの面積率で評価した。また、「ハース
ロールへの付着の有無」は、全面塗布後のハースロール
表面を観察し、本発明の酸化防止剤と比較例の酸化防止
剤との付着性を評価した。
【0044】表4の結果から、比較例に比べて、本発明
の酸化防止剤は、全ての評価項目において勝っていると
いえるが、なかでも焼鈍炉内における酸化防止効果およ
び焼鈍後の鋼帯表面からの剥離特性が特に優れているこ
とが認められる。また、焼鈍後の鋼帯表面に生成した酸
化スケールの厚みを、GDS(lowischar
ge atomic emission pectr
oscopy)で測定した結果を、図3(a),(b)に示
す。同図(a)は酸化防止剤を塗布しない場合、同図(b)は
本発明の酸化防止剤(表1のNo.1)を塗布した場合
である。
【0045】図3から、酸化スケール層の厚みは、無塗
布材で約430mμであるのに対して、塗布材では約
2.2mμであり、本発明の酸化防止剤を用いること
で、酸化スケールの生成厚みを約1/200まで低減で
きたことが明らかである。図4に、焼鈍炉内温度113
0℃中で、鋼帯表面温度が1125℃までに到達するの
に要する昇温時間を、熱電対により測定した結果を示
す。
【0046】同図から、無塗布材に比べて、本発明の酸
化防止剤(表1のNo.1)塗布材の場合は、加熱温度
1125℃までの昇温時間が約45%短縮されたことが
わかる。換言すれば、本発明の酸化防止剤を用いること
により、炉長を45%も短縮でき、また炉内での通板速
度を約1.8倍に上げることができることが示されてい
る。
【0047】以上、ステンレス鋼帯(SUS304)に
ついて説明したが、他のステンレス鋼帯(SUS430
系,SUS420系等)及び普通鋼,高炭素鋼,ケイ素
鋼等にも本発明を適用することができる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の鋼帯の酸
化防止剤は、1300℃を越える融点を有する無水シリ
カと、アルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,リン
酸アルミニウム,ケイ酸ジルコニウム,ホウ酸ジルコニ
ウム,酸化タングステン,酸化バナジウム,酸化イット
リウム,酸化鉄からなる群より選ばれた少なくとも一種
類の無機コロイド状物とを有効成分として含有する構成
としたため、これを鋼帯表面に塗布して焼鈍すると微細
な凹凸を有する緻密な非結晶性無定形被膜が形成され、
これが鋼帯表面を覆って炉内の酸化性雰囲気から遮断し
て酸化スケールの生成を防止するとともに、鋼帯の熱吸
収率の向上と見掛け上の受熱面積の増大をもたらし、か
つ、さらに温度が上昇すると、非結晶性無定形被膜は線
膨張係数が鋼帯より小さい結晶性被膜に変化して冷却過
程で多数の亀裂が被膜内に生じて簡単に鋼帯表面から剥
離可能となり、これに伴って以下のような種々の効果が
得られる。
【0049】(1)鋼帯表面の熱吸収効率の向上により
焼鈍時間の短縮もしくは炉長の短縮が可能となり、その
結果エネルギーコストを節減することができる。 (2)また、鋼帯の通板速度の増加による生産性の向上
が実現できる。 (3)鋼帯表面の酸化スケールの生成防止により、酸洗
設備が簡略化されるだけでなく、酸洗に使用する薬品コ
ストあるいは廃酸処理コスト等のランニングコストの低
減が達成できる。
【0050】(4)酸化スケールによるハースロールで
のピックアップ疵の発生が防止できて、鋼帯の品質が向
上する。 (5)直火焼鈍炉であっても酸化スケールの生成防止が
可能となることから、不経済なCA法やBA法などの焼
鈍法が不要になる。 (6)焼鈍後の剥離性が良いので、焼鈍炉の出側で簡単
な機械的な手段により容易に鋼帯表面から除去できて、
製品品質を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼帯の連続焼鈍酸洗ラインの概要図である。
【図2】本発明の酸化防止剤の成分配合比と酸化防止被
膜の熱特性との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の酸化防止剤の酸化スケール生成防止効
果を示すグラフで、同図(a)は酸化防止剤を塗布しない
場合、同図(b)は塗布した場合の生成酸化スケール層の
厚みを示した図である。
【図4】本発明の酸化防止剤の焼鈍時間短縮効果を示す
グラフである。
【符号の説明】
6 焼鈍炉 7 加熱部 8 冷却部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 善治 三重県四日市市別名6−6−9 伯東株式 会社四日市研究所内 (72)発明者 石橋 源一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 池田 雅晴 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 佐藤 邦昭 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1300℃を越える融点を有する無水シ
    リカと、アルミナ,シリカ,ジルコニア,チタニア,リ
    ン酸アルミニウム,ケイ酸ジルコニウム,ホウ酸ジルコ
    ニウム,酸化タングステン,酸化バナジウム,酸化イッ
    トリウム,酸化鉄からなる群より選ばれた少なくとも一
    種類の無機コロイド状物とを有効成分として含有するこ
    とを特徴とする鋼帯の酸化防止剤。
  2. 【請求項2】 1300℃以下の融点を有する無機金属
    塩を含有することを特徴とする請求項1記載の鋼帯の酸
    化防止剤。
  3. 【請求項3】 無機金属塩が、ケイ酸、ホウ酸、リン酸
    のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩からなる
    群より選ばれた少なくとも一種類以上から構成されるこ
    とを特徴とする請求項2記載の鋼帯の酸化防止剤。
JP20927793A 1993-08-24 1993-08-24 鋼帯の酸化防止剤 Pending JPH0762429A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021514018A (ja) * 2018-02-15 2021-06-03 クェーカー・ケミカル・コーポレーション 熱間圧延における酸化物スケール生成を低減するための化学的方法
WO2021153657A1 (ja) 2020-01-31 2021-08-05 日本製鉄株式会社 合金材加熱用酸化防止剤、及び、それを用いた合金材の加熱方法

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