JPH0762035A - 水系重合体分散液及び水系重合体組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 反応性が高く且つ架橋反応の際にホルマリン
を発生しない水系重合体分散液及びこの水系重合体分散
液を必須成分とする水系重合体組成物を提供する。 【構成】 アクリル酸エチル９６重量部、メタクリル酸
２重量部及び５−メタクリロイルオキシメチル−５−メ
チル−１，３−ジオキサン−２−オン２重量部を乳化重
合し水系重合体分散液を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、水系重合体分散液及び
水系重合体組成物に関する。さらに詳しくは、反応性が
高く且つ架橋反応に際しホルマリンを発生しない水系重
合体分散液及びこの水系重合体分散液を含有する水系重
合体組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】架橋点になり得る官能基を有する単量体
を重合して得られる水系重合体分散液は、加熱して自己
架橋することによって又は架橋剤などを添加して架橋す
ることによって、耐熱性、耐水性、耐薬品性などが高く
なるので、繊維加工、焼付塗料、耐熱接着剤などの分野
において広く利用されている。従来、このような水系重
合体分散液としては、Ｎ−メチロール（メタ）アクリル
アミドなどを必須とする単量体を共重合して得られる自
己架橋型の水系重合体分散液、カルボキシル基を有する
単量体を共重合して得られる水系重合体分散液が知られ
ている。しかし、これらの水系重合体分散液を構成する
重合体は、架橋する際にホルマリンが発生し、不織布な
どの製品にホルマリンが残存するので、皮膚をかぶれさ
せるなどの問題があった。また、最近、五員環カーボナ
ート基含有エチレン性不飽和単量体を共重合して得られ
る重合体が提案された（特開平３−６２３５号公報）
が、この重合体を、アミノ基を有する架橋剤を用いて架
橋すると着色し、またカルボキシル基を有する架橋剤を
用いて架橋しても、溶剤によって溶解または膨潤しやす
いという欠点があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、反応
性が高く且つ架橋反応の際にホルマリンが発生しない水
系重合体分散液及びこの水系重合体分散液を含有する水
系重合体組成物を提供することにある。本発明者らは、
前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の官能基
を有するエチレン性不飽和単量体及びこれと共重合可能
なエチレン性不飽和単量体とを重合することによって、
本目的を達成できることを見いだし本発明を完成するに
到った。

【０００４】

【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、六員環カーボナート基含有エチレン性不飽和単量体
及びこれと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を水性
媒体中で重合してなる水系重合体分散液が提供される。
また、本発明によれば、前記水系重合体分散液と、活性
水素含有官能基を２個以上有する化合物とを必須成分と
する水系重合体組成物が提供される。

【０００５】本発明の水系重合体分散液は、六員環カー
ボナート基含有エチレン性不飽和単量体及びこれと共重
合可能なエチレン性不飽和単量体を水性媒体中で重合し
てなるものである。

【０００６】本発明において、六員環カーボナート基
は、式（１）で表される官能基である。

【０００７】

【化１】

【０００８】式（１）中のｍ又はｎは０〜２の整数で且
つｍ＋ｎ＝２であり、Ｒ¹〜Ｒ⁴はそれぞれ独立に水素原
子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フェノキ
シ基又はニトロ基である。アルキル基、アリール基、ア
ルコキシ基又はフェノキシ基は、これらの官能基中の水
素原子が水酸基、ハロゲン基などで置換されているもの
が含まれる。アルキル基、アルコキシ基は炭素数が１〜
５個のものが好ましい。

【０００９】六員環カーボナート基含有エチレン性不飽
和単量体の具体例としては５−（メタ）アクリロイルオ
キシメチル−５−メチル−１，３−ジオキサン−２−オ
ン、５−（メタ）アクリロイルオキシメチル−５−エチ
ル−１，３−ジオキサン−２−オン、５−（メタ）アク
リロイルオキシエチル−５−フェニル−１，３−ジオキ
サン−２−オン、４−（メタ）アクリロイルオキシメチ
ル−１，３−ジオキサン−２−オン、４−（メタ）アク
リロイルオキシメチル−４−メチル−１，３−ジオキサ
ン−２−オンなどが挙げられる。

【００１０】本発明において、六員環カーボナート基含
有エチレン性不飽和単量体の量は、全単量体に対して、
通常、０．１〜５０重量％、好ましくは１〜２０重量
％、更に好ましくは１〜１０重量％である。０．１重量
％より少ないと、水系重合体分散液を構成する重合体を
架橋して得られる架橋体の耐溶剤性が低くなる。５０重
量％を超えると水系重合体分散液の貯蔵安定性が悪くな
る。

【００１１】六員環カーボナート基含有エチレン性不飽
和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体として
は、（メタ）アクリル酸メチル、（メタ）アクリル酸エ
チル、（メタ）アクリル酸プロピル、（メタ）アクリル
酸ｎ−アミル、（メタ）アクリル酸イソアミル、（メ
タ）アクリル酸ヘキシル、（メタ）アクリル酸エチルヘ
キシル、（メタ）アクリル酸オクチル、マレイン酸ジエ
チル、イタコン酸ジメチル等のエチレン性不飽和カルボ
ン酸エステル単量体；メタクリル酸、アクリル酸等のエ
チレン性不飽和モノカルボン酸単量体；マレイン酸、イ
タコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体；
マレイン酸モノエチル等のエチレン性不飽和多価カルボ
ン酸部分エステル単量体；スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル
単量体；（メタ）アクリロニトリル等のシアン化ビニル
単量体；（メタ）アクリルアミド、Ｎ−メチロール（メ
タ）アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量
体；１，３−ブタジエン、イソプレン、２，３−ジメチ
ル−１，３−ブタジエン、１，３−ペンタジエン等の共
役ジエン単量体；塩化ビニル等のハロゲン化ビニル単量
体；酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体等
が挙げられる。これらの単量体のうち、エチレン性不飽
和モノカルボン酸単量体、エチレン性不飽和多価カルボ
ン酸単量体及びエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エ
ステル単量体は、本発明の水系重合体分散液を構成する
重合体を架橋剤を用いずに架橋（自己架橋）できるの
で、好適である。エチレン性不飽和モノカルボン酸単量
体、エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体及びエチレ
ン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体の量は、
全単量体に対して０．１〜４０重量％、好ましくは１〜
２０重量％である。

【００１２】本発明の水系重合体分散液は、前記の単量
体を水性媒体中で重合することによって得られる。重合
する方法は特に限定されず、例えば、乳化重合法、懸濁
重合法などがある。高い重合度の水系重合体分散液を得
られるので、乳化重合法が好適である。水性媒体は水を
主成分とするものであり、水以外に低級アルコール、ア
セトンなどの親水性有機溶媒を併用していてもよい。

【００１３】本発明の水系重合体分散液を構成する重合
体は、後記の活性水素含有官能基を２個以上有する化合
物によって、ホルマリンを発生せずに架橋することがで
きる。

【００１４】本発明の水系重合体分散液を構成する重合
体が、活性水素含有官能基を２個以上有する化合物とど
の様に反応して架橋するかは定かではないが、六員環カ
ーボナート基が、活性水素含有官能基と反応しやすいの
で、本発明の水系重合体分散液を構成する重合体の高分
子鎖間に該化合物によって橋かけを結合を形成するから
であると考えられる。

【００１５】本発明の水系重合体組成物は、前記の水系
重合体分散液と、活性水素含有官能基を２個以上有する
化合物とを必須成分とするものである。

【００１６】本発明に用いる活性水素含有官能基を２個
以上有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、コ
ハク酸、ブタンテトラカルボン酸、テレフタル酸、ピロ
メリット酸等のカルボン酸；エチレンジアミン、ジエチ
レントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメ
チレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メタフェ
ニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレ
ンジアミン、テトラエチレンペンタミン等のアミン；オ
キサミド、マロンアミド、スクシンアミド等のアミド；
ｐ−ベンゾキノンジイミン；Ｎ−（ｐ−アミノフェニ
ル）−ｐ−ベンゾキノンジイミン；特開昭６３−５６５
４９号公報や特開昭６２−１７６０１号公報記載のごと
く、カルボキシル基を有する重合体にアルキルイミン又
は多価アミンを付加して得られる重合体；特開昭６１−
１３６５１５号公報記載のごとく、エポキシ基を有する
重合体にアンモニアを付加して得られる重合体；炭素−
炭素不飽和結合を有する重合体にエチレン性不飽和アミ
ンなどをエン付加して得られる重合体；カルボキシル
基、アミノ基又はイミノ基を有する単量体を単独重合あ
るいは他の共重合体と共重合して得られる重合体などが
挙げられる。これら化合物のうち、カルボキシル基を有
するものは、本発明の水系重合体分散液を構成する重合
体との架橋反応性が高く且つ架橋体が着色しないので好
適である。

【００１７】本発明の水系重合体組成物において、本発
明の水系重合体分散液と、活性水素含有官能基を２個以
上有する化合物との比率は、水系重合体分散液中の六員
環カーボナート基１モルに対して、該化合物中の活性水
素含有官能基が、通常、０．０１〜２０モル、好ましく
は０．１〜１０モル、さらに好ましくは０．５〜５モル
になる範囲である。０．０１モル未満では水系重合体分
散液を構成する重合体を架橋して得られる架橋体の耐溶
剤性が低くなる。２０モルを超えても架橋体の耐溶剤性
は一定の値を超えることはない。

【００１８】本発明の水系重合体組成物は、その調製方
法によって、特に限定されず、前記の水系重合体組成物
と活性水素含有官能基を２個以上有する化合物とを適宜
混合するなどして得ることができる。

【００１９】なお、本発明の水系重合体組成物には、必
要に応じて、消泡剤、脱臭剤、耐水化剤、湿潤剤、増粘
剤、柔軟剤、帯電防止剤、難燃剤などを添加することが
できる。

【００２０】本発明の水系重合体組成物は、これを乾燥
し、加熱することによって、該組成物を構成する重合体
を架橋することができる。加熱温度は、通常、３０〜２
００℃、好ましくは５０〜１５０℃である。加熱時間
は、通常、３０分以下である。加熱温度を高く又は加熱
時間を長くしても架橋体の耐溶剤性は一定の値を超える
ことはない。

【００２１】本発明の水系重合体分散液を構成する重合
体が、活性水素含有官能基を２個以上有する化合物とど
の様に反応して架橋するかは定かではないが、六員環カ
ーボナート基と、活性水素含有官能基とから橋かけ結合
を形成し、本発明の水系重合体分散液を構成する重合体
が架橋すると考えられる。

【００２２】

【発明の効果】本発明の水系重合体分散液は、これを構
成する重合体が架橋反応する際にホルマリンを発生しな
いので、この水系重合体分散液を含有する本発明の水系
重合体組成物は、繊維加工、紙加工、焼付塗料、耐熱接
着剤、耐熱粘着剤などの分野において好適に利用でき
る。

【００２３】

【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。本発明は、実施例に限定されるものでな
い。なお、実施例中の部及び％は、乾燥重量基準であ
る。

【００２４】本実施例で得られるフィルム及び不織布の
特性と、架橋反応の際にホルマリンが発生するか否かに
ついてとを以下の方法に従って評価した。 （フィルム特性） 溶剤溶解率 フィルムを１００メッシュの金網に入れ、これを２０℃
のテトラヒドロフランに２４時間浸漬した後、金網に残
った固形分の恒量を求め、最初に金網に入れたフィルム
の溶解率を測定した。数値が小さい方が架橋度が高いこ
とを示す。 溶剤膨潤率 ２０ｍｍ×２０ｍｍ×０．４ｍｍのフィルムを、２０℃
のテトラヒドロフランに１時間浸漬後、フィルムの体積
を求め、浸漬前のフィルム体積に対する百分率で示し
た。数値が小さい方が架橋度が高いことを示す。

【００２５】（ホルマリンの検出）固形分２５％の水系
重合体組成物にろ紙（東洋ろ紙社製、Ｎｏ．２）を浸
し、ろ紙に水系重合体組成物をしみこませた後、ロール
で絞り、１４０℃で２分間乾燥し、さらに１３０℃のオ
ーブン中に１０分間放置した。放置直後、アセチルアセ
トン法（厚生省令３４号、光電比色計：波長４１３ｎ
ｍ）によりろ紙のホルマリン含量を測定した。

【００２６】実施例１ アクリル酸エチル９６部、メタクリル酸２部、５−メタ
クリロイルオキシメチル−５−メチル−１，３−ジオキ
サン−２−オン２部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソ
ーダ０．５部を軟水３５部に添加し攪拌して単量体乳化
物を得た。一方、温度計、攪拌器、還流冷却器、供給管
及び窒素導入管を備えた反応器内を窒素ガスで置換した
後、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ０．３部及び軟
水８５部を仕込んだ。次いで反応器を６０℃まで加熱
し、前記単量体乳化物のうち１０％を添加し、１０分間
攪拌した後、過硫酸アンモニウム５％水溶液１０部を添
加して攪拌しながら反応を開始させた。反応開始から１
時間経過後、過硫酸アンモニウム５％水溶液６部を添加
し、次に残りの単量体乳化物を５時間かけて反応器に添
加した。単量体乳化物の添加終了後、更に２時間反応を
続け、最後に２０℃まで冷却して、固形分濃度４１．５
％、ｐＨ５．４の本発明の水系重合体分散液を得た。こ
の水系重合体分散液を枠付ガラス板に流延し、２０℃の
空気雰囲気下に４８時間放置した後、１３０℃のオーブ
ン中に２０分間放置してフィルムを得た。評価結果を表
１に示した。

【００２７】実施例２〜４及び比較例１〜３ 表１に示す処方に変えた他は実施例１と同じ方法で水系
重合体分散液を得た。また、これらの水系重合体分散液
を用いて、実施例１と同様にしてフィルムを得た。これ
らの評価結果を表１に示した。

【００２８】実施例５ 攪拌機付オートクレーブにシードラテックス（メタクリ
ル酸メチルの重合体ラテックス）１０部（固形分）、
１，３−ブタジエン４６部、スチレン４０部、アクリル
アミド１部、５−メタクリロイルオキシメチル−５−メ
チル−１，３−ジオキサン−２−オン、ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ソーダ１部、ポリオキシエチレンノニルフ
ェニルエーテル２部及び軟水１４０部を仕込み１０分間
攪拌した後、５０℃まで加熱し、次に過硫酸カリウム５
％水溶液６部を添加し、重合反応を開始させた。反応開
始から８時間後、２０℃まで冷却して、固形分濃度４
２．５％、ｐＨ５．５の本発明の水系重合体分散液を得
た。この水系重合体分散液１００部（固形分）と、比較
例１で得られた水系重合体分散液１００部（固形分）と
を混合し攪拌して、本発明の水系重合体組成物を得た。
さらに、この水系重合体組成物を枠付ガラス板に流延
し、２０℃の空気雰囲気下に４８時間放置した後、１３
０℃のオーブン中に２０分間放置して、フィルムを得
た。評価結果を表１に示した。

【００２９】

【表１】

【００３０】以上から、五員環カーボナート基含有エチ
レン性不飽和単量体を共重合してなる水系重合体分散液
（比較例３）は、これを乾燥し、加熱して得られるフィ
ルムの溶剤に対する溶解率、膨潤率が高いことがわか
る。一方、六員環カーボナート基含有エチレン性不飽和
単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びこれと
共重合可能なエチレン性不飽和単量体とを共重合してな
る本発明の水系重合体分散液（実施例１〜４）は、これ
を乾燥し、加熱することによって、ホルマリンを発生せ
ずに架橋でき且つ得られるフィルムは、溶剤に対する溶
解率及び膨潤率が低いことがわかる。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 六員環カーボナート基含有エチレン性不
   飽和単量体及びこれと共重合可能なエチレン性不飽和単
   量体を水性媒体中で重合してなる水系重合体分散液。
2. 【請求項２】 請求項１記載の水系重合体分散液と、活
   性水素含有官能基を２個以上有する化合物とを必須成分
   とする水系重合体組成物。