JPH0760432A - ダクタイル溶湯の注湯装置およびダクタイル溶湯の注湯方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 造型機の一枠ごとの造型タクトと同調させ
て、一回の鋳込みに必要な量の溶湯や球状化処理剤を取
鍋によってバッチ処理することにより、取鍋での受湯か
ら注湯までを短時間で行うことができるようにし、もっ
て、フェーディングに伴うＭｇの無駄な消費や溶湯の白
銑化を防ぐ。 【構成】 一枠分の溶湯を球状化処理するための球状化
処理剤を計量して供給する手段１と、溶湯を一枠分ずつ
間欠的に注湯する注湯手段２と、一枠分の溶湯量に見合
う内容積を有する取鍋３と、鋳型へ注湯するための移動
樋５と、取鍋傾動手段４とを有する。一枠分の球状化処
理剤と溶湯とを取鍋内で反応させ、反応後の溶湯をすべ
て移動樋を経て鋳型に鋳込む。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、成分調整した溶湯を球
状化処理したダクタイル溶湯についての成分調整から鋳
込みに至る一連の工程を行うためのダクタイル溶湯の注
湯装置と、上記の一連の工程を行うためのダクタイル溶
湯の注湯方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】黒鉛の球状化処理は、耐火材を内張りし
た反応取鍋に球状化処理剤と脱硫・加炭して成分調整を
行った溶湯とを入れて反応させている。この方法は「置
き注ぎ法」と呼ばれ、広く一般的に採用されている。こ
の置き注ぎ法において、反応済みのダクタイル注湯を反
応取鍋に１５分以上保持した後でそのダクタイル溶湯を
注湯すると、球状化処理剤としてのＭｇが蒸発（フェー
ディング）して球状化不良となる。したがって、反応後
のダクタイル溶湯は速やかに注湯する必要がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そのため、工場によっ
ては、反応取鍋での反応スピードを調節するために鋼片
などでなるカバー材を投入して球状化処理剤を覆わせる
という対策を講じているけれども、この方法は煩わし
く、カバー材が余分に必要になるといった問題がある。

【０００４】また、自動注湯炉にバッチ処理溶湯を補給
しながら注湯するという方法を採用することもあるが、
この方法は、造型機が停止した場合にＭｇがフェーディ
ングを来たして注湯できなくなるという不都合があっ
た。そこで、フェーディングによるＭｇの減少量を見越
してＭｇ濃度を高めに設定することも行われているが、
これは通常よりも球状化処理剤としてのＭｇを無駄に使
うことになり、また、Ｍｇは白銑化元素になり得るので
その高濃度化は好ましくない。

【０００５】本発明は以上の問題や事情に鑑みてなされ
たものであり、造型機の一枠ごとの造型タクトと同調さ
せて、一回の鋳込みに必要な量の溶湯や球状化処理剤を
取鍋によってバッチ処理することにより、取鍋での受湯
から注湯までを短時間で行うことができるようにし、も
って、Ｍｇの無駄な消費や溶湯の白銑化を防ぎ、さらに
はカバー材を不要にすることのできるダクタイル溶湯の
注湯装置、ならびにダクタイル溶湯の注湯方法を提供す
ることを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明に
よるダクタイル溶湯の注湯装置は、１回の鋳込みに必要
な量の溶湯を球状化処理するための球状化処理剤を計量
して供給する計量供給手段と、溶湯を１回の鋳込みに必
要な量だけ間欠的に注湯する注湯手段と、１回の鋳込み
に必要な溶湯量に見合う内容積を有する取鍋と、鋳型に
注湯するための移動樋と、取鍋を注湯手段からの注湯お
よび計量供給手段からの球状化処理剤の供給に備えさせ
る起立姿勢と取鍋に蓄えられた溶湯の全量を移動樋に流
出させる傾斜姿勢との間で取鍋を姿勢変更させるための
取鍋傾動手段と、を有するものである。

【０００７】請求項２に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯装置は、請求項１に記載のものにおいて、取鍋
における湯溜め空間の内径ａと高さｂとが４ａ≦ｂの関
係に定められているものである。

【０００８】請求項３に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯装置は、請求項１に記載のものにおいて、計量
供給手段が、球状化処理剤と共に１回の鋳込みに必要な
溶湯量に見合う量の高強度材用補助添加材を計量して供
給可能に構成されているものである。

【０００９】請求項４に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯方法は、溶湯を球状化処理するための球状化処
理剤と溶湯とを取鍋内で反応させ、反応後の溶湯を鋳型
に注湯するダクタイル溶湯の注湯方法において、１回の
鋳込みに必要な溶湯量に見合う球状化処理剤を取鍋に入
れることとその取鍋に１回の鋳込みに必要な量の溶湯を
注湯することとを行って溶湯を球状化処理する球状化処
理工程と、球状化処理工程を経た溶湯を上記取鍋から移
動樋に移して鋳型に注湯する鋳込み工程と、鋳込み工程
を経た後に、取鍋を球状化処理工程に戻す工程と、を含
むものである。

【００１０】請求項５に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯方法は、請求項４に記載のものにおいて、複数
の取鍋を用い、所定の取鍋を鋳込み工程で使っている間
に、他の取鍋を球状化処理工程で使いかつ上記鋳込み工
程が終了するまでに球状化処理工程を終了させるもので
ある。

【００１１】請求項６に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯方法は、請求項４に記載のものにおいて、球状
化処理剤を取鍋に給送するためのシュートを球状化処理
剤が通過したことをセンサーで確認するものである。

【００１２】請求項７に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯方法は、請求項４に記載のものにおいて、球状
化処理剤と溶湯が反応するときの閃光を光センサーで検
知するものである。

【００１３】請求項８に記載の発明によるダクタイル溶
湯の注湯方法は、請求項７に記載のものにおいて、光セ
ンサーが閃光を検知しなかったときに取鍋の溶湯を廃却
するものである。

【００１４】

【作用】請求項１に記載の発明によると、取鍋では一回
の鋳込みに必要な量のダクタイル溶湯が得られる。した
がって、取鍋での球状化処理剤の残量が一定になり、受
湯から注湯までが短時間になって温度が安定し、さらに
一枠ごとに処理されるのでダクタイル溶湯の品質のばら
つきが少なくなる。

【００１５】請求項２に記載の発明によると、溶湯と球
状化処理剤との接触面積が少なくなるのでカバー材を用
いずに反応スピードの調節が可能になる。

【００１６】請求項３に記載の発明によると、高強度材
用補助添加材の計量供給手段が不要になる。

【００１７】請求項４や請求項５に記載の発明による
と、造型タクトに同調して取鍋への連続自動注湯が可能
になる。

【００１８】請求項６や請求項７に記載の発明による
と、球状化処理工程での反応の確実性が確保される。

【００１９】請求項８に記載の発明によると、鋳造欠陥
の発生が未然に防止される。

【００２０】

【実施例】図１は本発明の実施例によるダクタイル溶湯
の注湯装置を示す説明図、図２は取鍋を一部断面で示し
た説明図、図３は本発明の実施例によるダクタイル溶湯
の注湯方法を説明するためのタイムチャート図である。

【００２１】図１において、１は計量供給手段で、この
計量供給手段１には、Ｍｇなどの球状化処理剤を貯留す
るホッパー１１，１２の他に、高強度材用補助添加材を
貯留するホッパー１３が付設されている。また、計量供
給手段１には電磁フィーダ１４やシリンダゲート１５が
設けられており、１回の鋳込みに必要な量の溶湯を球状
化処理するための球状化処理剤や、１回の鋳込みに必要
な溶湯量に見合う量の高強度材用補助添加材を計量して
供給することができるようになっている。１６はシュー
トである。

【００２２】２は注湯手段で、溶湯を１回の鋳込みに必
要な量だけ間欠的に自動注湯することができる。

【００２３】３は取鍋である。この取鍋３は一回の鋳込
みに必要な溶湯量に見合う内容積を有する細く深い形状
になっており、図２に示した湯溜め空間Ｓの内径ａと高
さｂとが４ａ≦ｂの関係（従来の取鍋ではおよそａ：ｂ
＝１：３）に定められている。Ｆは球状化処理剤または
高強度材用補助添加材を示す。この取鍋３は取鍋傾動手
段４により起立姿勢と傾斜姿勢との間で姿勢変更され
る。すなわち、取鍋傾動手段４はその駆動源としてシリ
ンダ４１を備え、シリンダ４１が引き込まれているとき
に取鍋３が起立姿勢となって注湯手段２からの注湯およ
び計量供給手段１からの球状化処理剤や高強度材用補助
添加材の供給に備えられる。また、シリンダ４１が押し
出されているときに取鍋３が仮想線で示すように傾斜姿
勢となってその取鍋３に蓄えられた溶湯の全量を後述す
る移動樋５に流出させる。

【００２４】５は移動樋で、取鍋３から受け取った一回
の鋳込みに必要な量のダクタイル溶湯を鋳型６に注湯す
る。この移動樋５は一回の鋳込みに必要な量の溶湯を入
れることのできる受皿であり、溶湯が付着しにくいとい
う性質を有するＳｉＣレンガ製のノズル５１が先端底部
に設けられている。また、ノズル５１の入口手前には三
次元網目構造の耐火物で作られたノロ分離部材を設置し
てノロが鋳型６に流入することを防いでいる。このノロ
分離部材は溶湯が清浄でノロが少ないときは不要であ
り、また、ノロ分離部材は溶湯が付着して溶湯の流出が
遅くなれば新品と取り替えられる。

【００２５】図１〜図３を参照してダクタイル溶湯の注
湯方法を説明する。

【００２６】取鍋傾動手段４により取鍋３が起立姿勢に
保たれているときに、シリンダゲート１５が開かれ、シ
ュート１６を経て取鍋３に球状化処理剤としてのＭｇ合
金が、１回の鋳込みに必要な量の溶湯を球状化処理する
のに見合う量だけ計量して供給される。供給後にシリン
ダゲート１５は閉じる。ＦＣＤ６００，ＦＣＤ７００な
どの高強度材を得る場合には、銅や錫などの高強度材用
補助添加材を加える。このときの高強度材用補助添加材
は、球状化処理剤と共に１回の鋳込みに必要な溶湯量に
見合う量だけ計量して供給される。高強度材用補助添加
材としての銅や錫などの強化材は、飛散しない程度の小
粒のものを使用することにより、球状化処理時間内に速
やかに溶解・反応する。こうして球状化処理剤や高強度
材用補助添加材が取鍋３に供給された後、注湯装置２よ
り１回の鋳込みに必要な量の溶湯が取鍋３に注湯され、
取鍋３内で球状化処理剤と溶湯とが反応し、溶湯がダク
タイル処理される。以上が球状化処理工程である。

【００２７】この球状化処理工程が行われている間に、
鋳型６が鋳込み位置まで移動してくる。

【００２８】球状化処理工程を減ることにより得られた
ダクタイル溶湯は、取鍋傾動手段４により取鍋３が傾斜
姿勢に姿勢変更されることにより、移動樋５に出湯さ
れ、移動樋５から鋳込み位置で待機している鋳型６に鋳
込まれる。鋳込み工程である。

【００２９】取鍋３から移動樋５への一回の鋳込みに見
合う量（取鍋３内のダクタイル溶湯の全量）のダクタイ
ル溶湯の出湯が終了した後、取鍋傾動手段４により取鍋
３が起立姿勢に姿勢変更され、次回の受湯に備えられ
る。取鍋を球状化処理工程に戻す工程である。

【００３０】そして、シリンダゲート１５が再び開き、
上述の各工程が繰り返される。また、再度の球状化処理
工程が開始されるまでには別の鋳型が鋳込み位置に移動
して停止する。

【００３１】以上において、取鍋３の湯溜め空間Ｓの内
径ａと高さｂとが４ａ≦ｂの関係に定められていること
により、従来のように反応スピードを調整するためにカ
バー材を用いる必要がない。また、移動樋５から鋳型へ
の先行する鋳込み時間内に取鍋３での球状化処理が終了
し、しかも取鍋３には一回の鋳込みに見合う量のダクタ
イル溶湯が蓄えられるので、球状化処理剤の歩留りが向
上する。したがって、球状化処理剤の使用量が少なくて
済み、白銑化などの問題を生じない。

【００３２】鋳型６による造型スピードは品種（中子の
有無）によって多少異なるが、その造型スピードは球状
化処理時間に合わせる必要がある。たとえば、最少鋳込
み重量が１０ｋｇと最大２５ｋｇの場合、成分調整した
溶湯を溜めている自動注湯装置２から取鍋（反応小取
鍋）３への出湯に要する時間に差があるけれども、秤量
−受湯−反応−注湯に至る所要時間は大差がないので、
この時間を一定にすれば造型タクトも一定にできること
になり、品種変更に伴う各種設定時間の変更の煩わしさ
から開放されるし、また、設定ミスによる連係不良も起
こらない。一連の動作は各ステップごとに動作−確認−
次ステップへと進むようにシーケンス制御され、誤動作
や誤操作は起こり得ない。反応工程は前後逆では起こり
得ないので、そのシーケンスは確実に実行される。そし
て、シーケンスが万一確実に実行されなかったときの歯
止めとして、球状化処理剤のシュート通過を確認するセ
ンサーや、球状化処理剤と溶湯が反応するときの閃光を
検知する光センサーを装備させておくことが望ましい。
この場合、取鍋３に溶湯を一定量流出させた後、光セン
サーで閃光を確認できなかったときは、溶湯は別の受皿
に受けて廃却するとよい。

【００３３】

【発明の効果】本発明によるダクタイル溶湯の注湯装置
によれば、良質で健全なダクタイル溶湯を、一回の鋳込
みに必要な量づつバッチ式に処理することが可能であ
る。そして、請求項２に記載の発明によれば鋼片などの
カバー材を用いずに反応スピードの調節が可能になり、
さらに請求項３に記載の発明によれば、高強度ダクタイ
ル溶湯の処理が可能になる。

【００３４】請求項４や請求項５に記載した本発明方法
によれば、造型タクトに同調させて取鍋への連続自動注
湯が可能になる。さらにダクタイル溶湯の球状化処理の
安定化や溶湯温度の一定化により、材質不良の最大要因
であるＭｇのフェーディングが防止される。

【００３５】請求項６や請求項７に記載の発明による
と、球状化処理工程での反応の確実性が確保され、ま
た、請求項８に記載の発明によると、鋳造欠陥を発生し
やすい溶湯が廃却されて使用されなくなるので、鋳造欠
陥の発生が未然に防止される。発生が未然に防止され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例によるダクタイル溶湯の注湯装
置を示す説明図である。

【図２】取鍋を一部断面で示した説明図である。

【図３】本発明の実施例によるダクタイル溶湯の注湯方
法を説明するためのタイムチャート図である。

【符号の説明】

１ 計量供給手段 ２ 注湯手段 ３ 取鍋 ４ 取鍋傾動手段 ５ 移動樋 Ｓ 湯溜め空間

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １回の鋳込みに必要な量の溶湯を球状化
   処理するための球状化処理剤を計量して供給する計量供
   給手段と、溶湯を１回の鋳込みに必要な量だけ間欠的に
   注湯する注湯手段と、１回の鋳込みに必要な溶湯量に見
   合う内容積を有する取鍋と、鋳型に注湯するための移動
   樋と、取鍋を注湯手段からの注湯および計量供給手段か
   らの球状化処理剤の供給に備えさせる起立姿勢と取鍋に
   蓄えられた溶湯の全量を移動樋に流出させる傾斜姿勢と
   の間で取鍋を姿勢変更させるための取鍋傾動手段と、を
   有することを特徴とするダクタイル溶湯の注湯装置。
2. 【請求項２】 取鍋における湯溜め空間の内径ａと高さ
   ｂとが４ａ≦ｂの関係に定められている請求項１に記載
   のダクタイル溶湯の注湯装置。
3. 【請求項３】 計量供給手段が、球状化処理剤と共に１
   回の鋳込みに必要な溶湯量に見合う量の高強度材用補助
   添加材を計量して供給可能に構成されている請求項１に
   記載のダクタイル溶湯の注湯装置。
4. 【請求項４】 溶湯を球状化処理するための球状化処理
   剤と溶湯とを取鍋内で反応させ、反応後の溶湯を鋳型に
   注湯するダクタイル溶湯の注湯方法において、 １回の鋳込みに必要な溶湯量に見合う球状化処理剤を取
   鍋に入れることとその取鍋に１回の鋳込みに必要な量の
   溶湯を注湯することとを行って溶湯を球状化処理する球
   状化処理工程と、 球状化処理工程を経た溶湯を上記取鍋から移動樋に移し
   て鋳型に注湯する鋳込み工程と、 鋳込み工程を経た後に、取鍋を球状化処理工程に戻す工
   程と、 を含むことを特徴とするダクタイル溶湯の注湯方法。
5. 【請求項５】 複数の取鍋を用い、所定の取鍋を鋳込み
   工程で使っている間に、他の取鍋を球状化処理工程で使
   いかつ上記鋳込み工程が終了するまでに球状化処理工程
   を終了させる請求項４に記載のダクタイル溶湯の注湯方
   法。
6. 【請求項６】 球状化処理剤を取鍋に給送するためのシ
   ュートを球状化処理剤が通過したことをセンサーで確認
   する請求項４に記載のダクタイル溶湯の注湯方法。
7. 【請求項７】 球状化処理剤と溶湯が反応するときの閃
   光を光センサーで検知する請求項４に記載のダクタイル
   溶湯の注湯方法。
8. 【請求項８】 光センサーが閃光を検知しなかったとき
   に取鍋の溶湯を廃却する請求項７に記載のダクタイル溶
   湯の注湯方法。