JPH0758535B2 - ビデオテープレコーダの回転ヘッドドラム装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はビデオテープレコーダーの回転ヘッドドラム装
置にかかるもので、詳しくは、流体動圧ベアリングを使
用して映像信号の記録及び再生時の画質と音質を向上し
得るようにしたビデオテープレコーダーの回転ヘッドド
ラム装置に関する。

〔従来の技術並びに発明が解決しようとする課題〕

一般に使用されるビデオテープレコーダーの回転ヘッド
ドラム装置は第７図に示すように、モーターの駆動で回
転する回転軸（21）を支持するボールベアリング（22）
（22′）が基板（Ｂ）上に固設された下部ドラム（23）
に設けられ、前記回転軸（21）の上部側にフランジ（2
4）が固着され、該フランジ（24）の上部位に回転ヘッ
ド（25）を具備した上部ドラム（26）がネジ（27）で固
設されている。又前記フランジ（24）の底面及び前記下
部ドラム（23）の上面にはトランス（28）（28′）がそ
れぞれ固設され、下部ドラム（23）の下端部にはモータ
ー固定子（29）がネジ（30）に依り固定されている。前
記回転軸（21）の下端部位にはリングカラー（31）がネ
ジ（32）に依り固設され、該リングカラー（31）を介し
てモーター回転子（33）がネジ（34）に依り固設されて
いる。

前記モーター回転子（33）が回転すると前記回転軸（2
1）が前記ボールベアリング（22）（22′）に支持され
て回転し、よって、その回転軸（21）に固着されたフラ
ンジ（24）、該フランジに固設された上部ドラム（2
6）、それに固設された回転トランス（28）、及び回転
ヘッド（25）が回転し、その回転ヘッド（25）は磁気テ
ープ（図示せず）に映像信号を記録又は再生する。回転
軸（21）は前記下部ドラム（23）の上・下部位に外輪が
嵌合されたボールベアリング（22）（22′）の内輪に嵌
合されているため、回転軸（21）が回転するとボールベ
アリング（22）（22′）のボールと内輪も同時に回転さ
れる。またボールベアリング（22）（22′）は回転する
上部ドラム（26）、フランジ（24）、リングカラー（3
1）及びモーター回転子（33）等の半径方向荷重及び軸
方向荷重を受ける。

しかし、このようなボールベアリング（22）（22′）を
利用した回転ヘッドドラム装置は機構的に極めて精確に
加工しても尚かつ回転軸（21）の回転振動並びに騒音が
発生してビデオテープレコーダーの映像信号の録化又は
再生時に画質を悪化させる欠点があった。又ボールベア
リング（22）（22′）の寸法精度と嵌合誤差に依り振動
の大きさが拡大すると共に、ボールベアリング（22）
（22′）の内外輪とボールの磨耗により延いては全体製
品の寿命が短縮される欠点があった。

一方、流体動圧を利用するベアリングを採用したヘッド
ドラム装置も従来使用されていてその装置を第８図を用
いて説明すると次の通りである。図面に示すように、
（41）は上部ドラム、（42）は外周面に多数の潤滑溝
（42a）が形成された固定軸で、該固定軸（42）にフラ
ンジ突起（43）を有するフランジ（44）が回転自在に嵌
合されている。該フランジ（44）に前記上部ドラム（4
1）が固定され、螺旋形溝（45a）を有する円板（45）が
フランジ（44）の上部にネジ（46）に依り固定されてい
る。又フランジ（44）の底面には金具を介してモーター
回転子（47）が固定され、基板（Ｂ）上に固設された下
部ドラム（48）に前記固定軸（42）が固設されている。
下部ドラム（48）の内側溝部（48a）上面にモーター固
定子（49）がネジ（50）に依り固設されている。尚、
（51）は上部ドラム（41）の下面に固設された回転ヘッ
ドである。

モーター回転子（47）が回転すると、前記フランジ（4
4）組立体、上部ドラム（41）及び回転ヘッド（51）が
回転し、該回転ヘッド（51）が磁気テープ（図示せず）
に映像信号を記録又は再生する。この場合、前記基板
（Ｂ）上に固設された下部ドラム（48）と該下部ドラム
（48）に固着された固定軸（42）は固定されていて回転
されない。

このように構成したので、前記モーター回転子（47）の
回転によりフランジ突起（43）と固定軸（42）間の潤滑
流体は固定軸（42）外周面の潤滑溝（42a）を沿って流
動しながら流体動圧を発生し、該流体動圧に依り回転体
の半径方向荷重が発生される。また、前記フランジ（4
4）の上側部位に固設された円板（45）も回転するので
該円板（45）の螺旋形溝（45a）を沿って潤滑流体が流
動し、よって流体動圧が発生して回転体を上方向に浮上
させる。この場合、浮上力として作用する流体動圧は回
転体の自重を含めた軸方向荷重とモーター回転子（47）
の磁力に依る吸引力との圧力よりも大きく、回転体は約
数ミクロン浮上されるようになっている。

しかし、このような従来の流体動圧を利用した回転ヘッ
ドドラム装置は、回転体の軸方向荷重とモーター回転体
の吸引力とが流体動圧に依る浮上力に逆らって下方に作
用するようになっているため、回転体の浮上力が回転体
の下向力に依りその大部分が相殺されて実際に必要な浮
上力を得ることができず、そのため回転体の回転が円滑
に行われない欠点があった。

また、円板（45）に形成された螺旋形溝（45a）と固定
軸（42）の上端面との間は極めて精密な嵌合精度を維持
しなければ潤滑流体が螺旋形溝（45a）を沿って円滑に
流動されないので、嵌合を維持するための円板（45）の
螺旋形溝と円定軸（42）上面部の精密嵌合加工は極めて
むづかしく、僅かの誤差によって潤滑流体の流動が不均
一になり、そのため回転性能が低下する欠点があった。

又、前述の通常のボールベアリングを利用する回転ヘッ
ドドラム装置に比べて従来の流体動圧を利用するベアリ
ングのヘッドドラム装置はその基本構造が根本的に異な
っているため、それら両装置に於ける各部分品の互換性
即ち、各部分品の共用化が困難になり、延いては製品の
生産原価が上昇する問題点があった。

更に、従来の流体動圧を利用するベアリングのヘッドド
ラム装置はモーターの回転子（47）と固定子（49）が各
々上・下ドラム（41）（48）の内部側に配置されている
ため、モーターを修理交換する場合にはその分解及び組
立が煩雑になる欠点があった。

このような問題点を解決するために本発明者は研究を重
ねた結果次のような進歩したビデオテープレコーダーの
回転ヘッドドラム装置を提供しようとするのである。

〔課題を解決するための手段〕

すなわち、本発明に依れば、基板上に通常の下部ドラム
が固設され、該下部ドラムの中心部位にハウジングを介
して回転軸が回転自在に設置され、該回転軸の上端部位
には上部ドラムが固定されると共に、前記下部ドラムの
下端部と前記回転軸の下端部位にはモーター固定子、モ
ーター回転子並びにリングカラーがそれぞれ固定されて
所謂通常の回転ヘッドドラム装置を成している。又、前
記回転軸が嵌合される前記下部ドラム内側のハウジング
には空気流通孔並びに空気流通溝がそれぞれ形成され、
該空気流通溝を基準に前記回転軸の上・下所定部位には
数個の潤滑溝が形成されると共に、前記ハウジングの下
部位に潤滑流体貯蔵溝が形成されて該潤滑流体貯蔵溝に
対向する前記回転軸の下端部位には流体引上用溝が形成
されている。且つ回転軸下端面部の前記リングカラーの
上面部位には螺旋形溝が形成されて空気と潤滑流体との
混合流体が前記回転軸と前記リングカラー並びに前記ハ
ウジングの間を強制循環し得るように構成されている。
このことに依り前記回転軸と共に回転する部品の重さは
下向きに作用するが、モーターの磁力に依る吸引力と潤
滑流体の流体動圧とは上向きに作用するので、従来の流
体動圧ベアリング装置に比べて浮上力が増大されて回転
作動が円滑に行われ、そのため、ハウジングと回転軸と
の嵌合を維持するための高度な精密加工をある程度省く
ことができる。

〔実施例〕

以下、本発明にかかる回転ヘッドドラム装置の実施例を
図面を用いて詳細に説明する。

第１図乃至第６図は本発明にかかる流体動圧ベアリング
を使用したビデオテープレコーダーの回転ヘッドドラム
装置を示した断面図で、図面に示したように、基板
（Ｂ）上にハウジング（６）を介して下部ドラム（５）
が固設され、該下部ドラム（５）の内側のハウジング
（６）には回転軸（１）が回転自在に嵌合されている。
該回転軸（１）の上端にフランジ（４）を固着し、該フ
ランジ（４）に上部ドラム（３）が固着されている。該
上部ドラム（３）の下端に磁気テープ（図示せず）に映
像信号を記録又は再生する回転ヘッド（２）が固定され
ている。フランジ（４）の下端面部位には信号連結のた
めのトランス（13）（13′）がそれぞれ固定されてい
る。前記下部ドラム（５）の下端にはモーター固定子
（12）が固設され、前記回転軸（１）の下端にはリング
カラー（７）を介してモーター回転子（10）が固設され
ている。前記フランジ（４）の中央下端面の所定部位に
案内突起（4a）が形成され、前記ハウジング（６）の下
端面所定部位にも案内突起（6d）が形成されている。前
記回転軸（１）の中間部位と前記ハウジング（６）の中
間部位との間に環状の空気流通溝（6b）が形成され、該
空気流通溝（6b）を基準にして回転軸（１）の上・下所
定部位の外周面上に潤滑流体が流動する数個の潤滑溝
（1a）（1a′）（1b）（1b′）がそれぞれ形成されてい
る。前記回転軸（１）の下端部位と前記ハウジング
（６）の下端部位との間に潤滑流体貯蔵溝（6c）が形成
され、該潤滑流体貯蔵溝（6c）の下方の前記回転軸
（１）の外周面に潤滑流体の流体引上用溝（1c）が形成
されている。

又、前記ハウジング（６）の上端面に前記フランジ
（４）の案内突起（4a）に対応して案内溝（6a）が形成
され、ハウジング（６）の中間部位には前記の空気流通
溝（6b）に連通される空気孔（6b′）が形成され、ハウ
ジング（６）の下端面部位には前記潤滑流体貯蔵溝（6
c）に連通される潤滑流体流路（6c′）が形成されてい
る。

更に、前記リングカラー（７）の上面部位には螺旋形溝
（7a）が前記回転軸（１）の軸心向きに形成されて前記
潤滑流体流路（6c′）に連通され、螺旋形溝（7a）の外
側には前記ハウジング（６）の下端の前記案内突起（6
d）に対応するように案内溝（7b）が形成されることに
依り、潤滑流体が空気と混合して、前記回転軸（１）と
ハウジング（６）との間を強制的に流動し得るように成
っている。

このように構成された本発明の流体動圧回転ヘッドドラ
ム装置は第１図に示すようにモーターに電源が印加する
とモーター回転子（10）が回転し、よって、リングカラ
ー（７）、回転軸（１）、フランジ（４）、上部ドラム
（３）及び回転ヘッド（２）（以下、これらの各部品を
一括して“回転体”と称す）が回転し、回転ヘッド
（２）は磁気テープ（図示せず）に映像信号を記録又は
再生するようになる。

前記回転体の自重が下向きの力に作用される反面に、前
記モーター回転子（10）の吸引力と流体の動圧とが前記
回転体を上昇させる浮上力に作用するようになるがこれ
らの作用を詳細に説明すると次の通りである。すなわ
ち、モーターの駆動に依り回転軸（１）が回転すると、
第５図に示すように空気が前記空気孔（6b′）を通って
前記の各潤滑溝（1a）（1a′）、（1b）（1b′）に流入
される。流入された空気は回転軸（１）とハウジング
（６）との間で潤滑流体と混合して流動し、下部潤滑溝
（1b）（1b′）では第２図に示すように回転軸（１）の
回転に依り矢印の方向に流動する。すると流体の圧力は
流入以前の圧力P₀からP₁に上昇し、回転軸（１）の半径
方向の荷重を支持するようになる。また、潤滑流体貯蔵
溝（6c）内に潤滑流体は回転軸（１）の回転に依り第４
図に示すように流体引上用溝（1c）に於いてα，βの流
路を沿って流動される。

フランジ（４）の案内突起（4a）とハウジング（６）の
案内溝（6a）とによって形成される間隙内に空気が流入
しこの間隙を数ミクロン程度に維持する。

又、前記ハウジング（６）と前記リングカラー（７）の
間の潤滑流体は第３図に示すように、回転軸の回転に依
り螺旋形溝（7a）に流入し、流体圧力は流入以前の圧力
P₀からP₂に上昇し、浮上力に作用されて軸方向荷重を支
持するようになる。更に、潤滑油流体の流体圧力がP₂の
場合には第６図に示すようにフランジ（４）の案内突起
（4a）とハウジング（６）の案内溝（6a）とは数ミクロ
ン程度の嵌合が維持されるが、流体圧力がP₂以上に増加
されるとハウジング（６）の案内突起（6d）にリングカ
ラー（７）の案内溝（7b）が掛止されて回転体の上昇が
規制されるようになる。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明に依るビデオテープレコーダ
ーのヘッドドラム装置は従来の装置に比べて次のような
効果がある。

（１）従来のボールベアリングを使用せずに流体の動圧
を利用する動圧ベアリングを使用しているため、回転時
に発生する振動と騒音が排除されると共に回転ヘッドド
ラム装置の回転偏差が無くなって製品の寿命が延長され
る。

（２）回転ヘッドドラムの映像信号記録化／再生時に画
質に影響を及ぼすジッター（Jitter）と音声信号の歪率
（Wowflutter）とを減少させる。

（３）本発明に依る流体動圧回転ヘッドドラム装置は回
転体の自重が下向きに作用する反面、モーターの吸引力
と流体動圧とが上向きの浮上力に作用するので、従来の
流体動圧回転ヘッドドラム装置に比べて、相対的に小さ
い流体動圧を発生させても円滑な回転が可能となり、そ
のため、ハウジングと回転軸との嵌合に従来必要であっ
た高精度の加工が省かれて生産能率が向上される。

（４）従来の流体動圧ベアリング回転ヘッドドラム装置
はモーターがドラム内側部位に内蔵されているが、本発
明にかかる装置はドラム装置の外部に装着されているた
め、構造上分解組立が簡単で、且つ、モーター交換のア
フタサービスが極めて簡単である。

（５）従来のボールベアリングを使用した回転ヘッドド
ラム装置と大部分の部品（回転軸とハウジング以外の他
部分品）を共用し得るようになっているため極めて経済
的である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明にかかる流体動圧ベアリングを使用した
ビデオテープレコーダーの回転ヘッドドラム装置の構成
を示す縦断面図、第２図は第１図の回転軸部分の拡大断
面図、第３図は第１図のリングカラー部分の拡大断面
図、第４図は第１図のハウジング下部の潤滑油流体の流
動を示す縦断面図、第５図は第１図のハウジング中間部
位の空気の流動を示す縦断面図、第６図は第１図のフラ
ンジとハウジングの間の潤滑流体の流動を示した縦断面
図、第７図は従来のボールベアリングを使用したビデオ
テープレコーダーの回転ヘッドドラム装置の一例を示す
縦断面図、第８図は従来の流体動圧ベアリングを使用し
たビデオテープレコーダーの回転ヘッドドラム装置の一
例を示す縦断面図である。 図中、 1:回転軸 1a,1a′,1b,1b′：潤滑溝 1c:流体引上用溝、2:回転ヘッド 3:上部ドラム、4:フランジ 4a:案内突起、5:下部ドラム 6:ハウジング、6a:案内溝 6b:空気流通溝、6b′：空気孔 6c:潤滑流体貯蔵溝、6c′：流路孔 6d:案内突起、7:リングカラー 7a:螺旋形溝、7b:案内溝 10:モーター回転子、12:モーター固定子 13,13′：トランス、B:基板

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基板（Ｂ）と、該基板に固定された下部ド
   ラム（５）と、該下部ドラム（５）の内側に設置され潤
   滑油貯蔵溝（6c）と空気流通溝（6b）を有するハウジン
   グ（６）と、該ハウジング内側に回転可能に設置され複
   数個の潤滑油案内溝（1a,1a′,1b,1b′）と潤滑油引上
   用溝（1c）を有する回転軸（１）と、該回転軸の上部に
   固定されたフランジ（４）と、該フランジに固定された
   上部ドラム（３）と、前記回転軸の下部に固定され、上
   面部位に潤滑油の円滑な流通のための螺旋形溝（7a）を
   有するリングカラー（７）とを具備しているビデオテー
   プレコーダーの回転ヘッドドラム装置。
2. 【請求項２】前記シャフトハウジング（６）は、上面部
   位に空気案内溝（6a）を、中間部位に空気の流入のため
   空気孔（6b′）と円滑な空気流通のため設置された空気
   流通溝（6b）を、下面部位に潤滑油流通のための潤滑油
   貯蔵溝（6c）とリングカラー螺旋形溝（7a）に向う潤滑
   油通路（6c′）とを、それぞれ有している請求項１記載
   のビデオテープレコーダーの回転ヘッドドラム装置。
3. 【請求項３】前記回転軸にはその外部に、前記空気案内
   溝（6a）と空気流通溝（6b）の間と空気流通溝（6b）と
   潤滑油貯蔵溝（6c）の間とに、円滑な潤滑油の流通のた
   めの潤滑油案内溝（1a,1a′）と（1b,1b′）が形成さ
   れ、また前記潤滑油貯蔵溝（6c）と螺旋形溝（7a）の間
   に潤滑油引上溝（1c）が形成されていることを特徴とす
   る請求項１記載のビデオテープレコーダーの回転ヘッド
   ドラム装置。