JPH0757343A - テープ駆動装置及びその製造方法 - Google Patents
テープ駆動装置及びその製造方法Info
- Publication number
- JPH0757343A JPH0757343A JP20050493A JP20050493A JPH0757343A JP H0757343 A JPH0757343 A JP H0757343A JP 20050493 A JP20050493 A JP 20050493A JP 20050493 A JP20050493 A JP 20050493A JP H0757343 A JPH0757343 A JP H0757343A
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- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tape
- carbon film
- hard carbon
- capstan shaft
- nitrogen
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 キャプスタン軸とピンチローラ間に狭持した
テープを駆動するテープ駆動装置において、小さなピン
チローラー圧接力でもスリップがなく、かつキャプスタ
ン軸側からテープを駆動できるテープ駆動装置を提供す
る。 【構成】 定速回転するキャプスタン軸1の表面に窒素
含有硬質炭素膜4を形成する。テープ3を、窒素含有硬
質炭素膜4を形成したキャプスタン軸1とピンチローラ
2との間に狭持し、キャプスタン軸1を回転してテープ
を駆動する。 【効果】 窒素含有硬質炭素膜4は、磁気テープに対し
て高摩擦係数材として機能し、ピンチローラ2の圧接力
が小さい場合でもテープスリップを抑制しキャプスタン
側からテープ駆動力を長時間安定に伝達することができ
る。
テープを駆動するテープ駆動装置において、小さなピン
チローラー圧接力でもスリップがなく、かつキャプスタ
ン軸側からテープを駆動できるテープ駆動装置を提供す
る。 【構成】 定速回転するキャプスタン軸1の表面に窒素
含有硬質炭素膜4を形成する。テープ3を、窒素含有硬
質炭素膜4を形成したキャプスタン軸1とピンチローラ
2との間に狭持し、キャプスタン軸1を回転してテープ
を駆動する。 【効果】 窒素含有硬質炭素膜4は、磁気テープに対し
て高摩擦係数材として機能し、ピンチローラ2の圧接力
が小さい場合でもテープスリップを抑制しキャプスタン
側からテープ駆動力を長時間安定に伝達することができ
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録再生装置にお
いて磁気テープをキャプスタン軸とピンチローラーを用
いて駆動するテープ駆動装置とその製造方法に関するも
のである。
いて磁気テープをキャプスタン軸とピンチローラーを用
いて駆動するテープ駆動装置とその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビデオテープレコーダーやカセッ
トテープレコーダーなどの磁気記録再生装置では、磁気
テープをピンチローラーによってキャプスタン軸に圧接
し、キャプスタン軸を定速で回転させることで磁気テー
プの駆動を行っている。
トテープレコーダーなどの磁気記録再生装置では、磁気
テープをピンチローラーによってキャプスタン軸に圧接
し、キャプスタン軸を定速で回転させることで磁気テー
プの駆動を行っている。
【0003】以下に、従来のテープ駆動装置について図
6を用いて説明する。図6において、1はキャプスタン
軸、2はキャプスタン軸方向へ移動可能でかつ磁気テー
プ3を圧接しながら回転するピンチローラーである。
6を用いて説明する。図6において、1はキャプスタン
軸、2はキャプスタン軸方向へ移動可能でかつ磁気テー
プ3を圧接しながら回転するピンチローラーである。
【0004】ピンチローラー2は磁気テープ3をキャプ
スタン軸1に圧接しているため、磁気テープ3はキャプ
スタン軸1の回転速度に応じてキャプスタン軸1の回転
方向に搬送される。この時テープスリップが生じないよ
うな圧接力で、ピンチローラー2はキャプスタン軸1に
圧接されている。
スタン軸1に圧接しているため、磁気テープ3はキャプ
スタン軸1の回転速度に応じてキャプスタン軸1の回転
方向に搬送される。この時テープスリップが生じないよ
うな圧接力で、ピンチローラー2はキャプスタン軸1に
圧接されている。
【0005】VHSタイプのビデオテープレコーダーの
場合、この圧接力は通常1kg以上に設定されている。ま
たキャプスタン軸1の表面に細かな凹凸を設け、キャプ
スタン軸1と磁気テープ3との間の摩擦力を高めること
によってテープ駆動力を向上させ、テープスリップを少
なくしている例も報告されている。
場合、この圧接力は通常1kg以上に設定されている。ま
たキャプスタン軸1の表面に細かな凹凸を設け、キャプ
スタン軸1と磁気テープ3との間の摩擦力を高めること
によってテープ駆動力を向上させ、テープスリップを少
なくしている例も報告されている。
【0006】また本願発明者は、キャプスタン軸1の表
面に硬質炭素膜(ダイヤモンド状薄膜とも呼ばれてい
る)を形成し、硬質炭素膜の摩擦摺動特性と耐摩耗特性
によりテープ駆動力の向上を実現したテープ駆動装置を
特開平5−6599号公報において報告している。
面に硬質炭素膜(ダイヤモンド状薄膜とも呼ばれてい
る)を形成し、硬質炭素膜の摩擦摺動特性と耐摩耗特性
によりテープ駆動力の向上を実現したテープ駆動装置を
特開平5−6599号公報において報告している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の装置では、キャプスタン軸と磁気テープが
ピンチローラーの圧接力を受けて接している状態におい
て、圧接力が小さいとキャプスタン軸と磁気テープとの
間でスリップが生じ、磁気テープを定速で駆動すること
が困難となるという課題があった。
ような従来の装置では、キャプスタン軸と磁気テープが
ピンチローラーの圧接力を受けて接している状態におい
て、圧接力が小さいとキャプスタン軸と磁気テープとの
間でスリップが生じ、磁気テープを定速で駆動すること
が困難となるという課題があった。
【0008】特に小型軽量化を図っているビデオムービ
ーでは、メカ部やシャーシーを構成する部品を限界近く
まで小型、薄肉化しており、ピンチローラーの圧接力が
大きいとピンチアーム等のメカ部品に歪やソリが生じて
しまうことから、ピンチローラーの圧接力はできる限り
小さいことが望まれている。またキャプスタン軸に使用
される軸受けも小さくなっているために、許容される負
荷も小さくなり、ピンチローラーの圧接力が大きいと軸
受けの寿命が短くなることからもピンチローラーの圧接
力は小さいことが望まれている。
ーでは、メカ部やシャーシーを構成する部品を限界近く
まで小型、薄肉化しており、ピンチローラーの圧接力が
大きいとピンチアーム等のメカ部品に歪やソリが生じて
しまうことから、ピンチローラーの圧接力はできる限り
小さいことが望まれている。またキャプスタン軸に使用
される軸受けも小さくなっているために、許容される負
荷も小さくなり、ピンチローラーの圧接力が大きいと軸
受けの寿命が短くなることからもピンチローラーの圧接
力は小さいことが望まれている。
【0009】テープを駆動するテープ駆動力は、キャプ
スタン軸とテープとの間の摩擦力及びビンチローラーと
テープとの間の摩擦力であるが、従来のキャプスタンで
はビンチローラーとテープとの間の摩擦力が支配的であ
るとされてきた。
スタン軸とテープとの間の摩擦力及びビンチローラーと
テープとの間の摩擦力であるが、従来のキャプスタンで
はビンチローラーとテープとの間の摩擦力が支配的であ
るとされてきた。
【0010】従来のキャプスタンでは、ピンチローラー
の幅LDはテープ幅LTより大きいのが普通であり、ピ
ンチローラーの一部とキャプスタンは直接接触してい
る。従ってキャプスタン軸の回転力の一部は、その直接
接触部分を介してピンチローラーに直接伝わり、さらに
ピンチローラからテープに伝わるとされている。
の幅LDはテープ幅LTより大きいのが普通であり、ピ
ンチローラーの一部とキャプスタンは直接接触してい
る。従ってキャプスタン軸の回転力の一部は、その直接
接触部分を介してピンチローラーに直接伝わり、さらに
ピンチローラからテープに伝わるとされている。
【0011】通常、キャプスタン軸の表面は少なくとも
数ミクロンオーダ以下の平滑面に加工され、ピンチロー
ラはゴム等の弾性体であるので、テープ・キャプスタン
軸間の摩擦係数よりもテープ・ピンチローラ間の摩擦係
数やキャプスタン軸・ピンチローラ間の摩擦係数の方が
大きい。従来から、キャプスタンのテープ駆動力は、ビ
ンチローラーとテープとの間の摩擦力が支配的であると
されてきたのはこの理由からである。
数ミクロンオーダ以下の平滑面に加工され、ピンチロー
ラはゴム等の弾性体であるので、テープ・キャプスタン
軸間の摩擦係数よりもテープ・ピンチローラ間の摩擦係
数やキャプスタン軸・ピンチローラ間の摩擦係数の方が
大きい。従来から、キャプスタンのテープ駆動力は、ビ
ンチローラーとテープとの間の摩擦力が支配的であると
されてきたのはこの理由からである。
【0012】最近の磁気記録装置は小型化、薄型化さ
れ、キャプスタンも小型化が進んでいる。このためピン
チローラの幅LDはテープ幅LTにほぼ等しくなり、キ
ャプスタン軸も小径になっている。このようなキャプス
タンではキャプスタン軸とピンチローラが直接接触する
ところは少なく、キャプスタンのテープ駆動力はキャプ
スタン軸とテープとの間の摩擦力が支配的になる。キャ
プスタン軸とテープとの間の摩擦力が支配的になる時の
ピンチローラー幅LDとテープ幅LTの関係は、我々の
実験ではLT/LDが0.8より小さい場合である。
れ、キャプスタンも小型化が進んでいる。このためピン
チローラの幅LDはテープ幅LTにほぼ等しくなり、キ
ャプスタン軸も小径になっている。このようなキャプス
タンではキャプスタン軸とピンチローラが直接接触する
ところは少なく、キャプスタンのテープ駆動力はキャプ
スタン軸とテープとの間の摩擦力が支配的になる。キャ
プスタン軸とテープとの間の摩擦力が支配的になる時の
ピンチローラー幅LDとテープ幅LTの関係は、我々の
実験ではLT/LDが0.8より小さい場合である。
【0013】キャプスタン軸とテープとの間の摩擦力を
高める方法としては、キャプタン軸の表面に微細な凹凸
を設けることが考えられている。即ち、キャプスタン軸
表面の凹凸でキャプスタン軸とテープとの間の摩擦係数
を増大せしめ、安定したテープ走行を実現する旨の記載
がある。
高める方法としては、キャプタン軸の表面に微細な凹凸
を設けることが考えられている。即ち、キャプスタン軸
表面の凹凸でキャプスタン軸とテープとの間の摩擦係数
を増大せしめ、安定したテープ走行を実現する旨の記載
がある。
【0014】この場合、この凹凸がテープとの摩擦で摩
耗し、次第に凹凸が平滑化されてテープ駆動力が低下す
るという課題があった。このためテープ駆動力の低下に
応じてピンチローラーの圧接力を高めることが必要不可
欠であり、シャーシーやピンチアームの部品を補強しな
ければならず、メカニズム重量が増加し小型軽量化が困
難になるという課題題は先に述べた従来例と同じであっ
た。
耗し、次第に凹凸が平滑化されてテープ駆動力が低下す
るという課題があった。このためテープ駆動力の低下に
応じてピンチローラーの圧接力を高めることが必要不可
欠であり、シャーシーやピンチアームの部品を補強しな
ければならず、メカニズム重量が増加し小型軽量化が困
難になるという課題題は先に述べた従来例と同じであっ
た。
【0015】本発明は上記従来の問題点を解決し、キャ
プスタン軸表面ににダイヤモンド状薄膜を形成した従来
のテープ駆動装置よりさらに大きなテープ駆動力を備え
たテープ駆動装置を提供するものである。
プスタン軸表面ににダイヤモンド状薄膜を形成した従来
のテープ駆動装置よりさらに大きなテープ駆動力を備え
たテープ駆動装置を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の発明は、
定速回転するキャプスタン軸と、少なくとも外周部に弾
性部材を有しキャプスタン軸に磁気テープを介して圧接
して回転するピンチローラーとから構成されるテープ駆
動装置であり、キャプスタン軸の少なくとも磁気テープ
が接触する表面部に、窒素を含有する硬質炭素膜を形成
したものである。
定速回転するキャプスタン軸と、少なくとも外周部に弾
性部材を有しキャプスタン軸に磁気テープを介して圧接
して回転するピンチローラーとから構成されるテープ駆
動装置であり、キャプスタン軸の少なくとも磁気テープ
が接触する表面部に、窒素を含有する硬質炭素膜を形成
したものである。
【0017】本発明の第二の発明は、定速回転するキャ
プスタン軸と、少なくとも外周部が弾性部材を有し、キ
ャプスタン軸に磁気テープを介して圧接して回転するピ
ンチローラーとから構成されるテープ駆動装置であり、
キャプスタン軸の少なくとも磁気テープと接触する表面
に表面粗さが0.1〜1.0Sの微細な凹凸を設け、さらにこ
の凹凸部の表面に窒素を含有する硬質炭素膜を形成した
ものである。
プスタン軸と、少なくとも外周部が弾性部材を有し、キ
ャプスタン軸に磁気テープを介して圧接して回転するピ
ンチローラーとから構成されるテープ駆動装置であり、
キャプスタン軸の少なくとも磁気テープと接触する表面
に表面粗さが0.1〜1.0Sの微細な凹凸を設け、さらにこ
の凹凸部の表面に窒素を含有する硬質炭素膜を形成した
ものである。
【0018】本発明の第三の発明は、炭素を含む原料ガ
スに窒素ガスを混入してこれをプラズマ化し、プラズマ
中のイオンを加速衝突させてキャプスタン軸表面に硬質
炭素膜を堆積させて形成するテープ駆動装置の製造方法
である。
スに窒素ガスを混入してこれをプラズマ化し、プラズマ
中のイオンを加速衝突させてキャプスタン軸表面に硬質
炭素膜を堆積させて形成するテープ駆動装置の製造方法
である。
【0019】
【作用】硬質炭素膜は非晶質でありながらダイヤモンド
に類似の特性を示す炭素膜である。硬質炭素膜はダイヤ
モンド結合(SP3結合)の炭素とグラファイト結合
(SP2結合)の炭素とから構成され、その特性はダイ
ヤモンド結合とグラファイト結合の比率と密接な関係が
ある。すなわちダイヤモンド結合が多く含まれるほどダ
イヤモンドに近い特性を備えた膜になり、硬さは硬くな
る。
に類似の特性を示す炭素膜である。硬質炭素膜はダイヤ
モンド結合(SP3結合)の炭素とグラファイト結合
(SP2結合)の炭素とから構成され、その特性はダイ
ヤモンド結合とグラファイト結合の比率と密接な関係が
ある。すなわちダイヤモンド結合が多く含まれるほどダ
イヤモンドに近い特性を備えた膜になり、硬さは硬くな
る。
【0020】またイオン化蒸着法で形成した硬質炭素膜
は、磁気テープと摺動した時の摩擦係数がステンレス材
または鉄系金属材と比較すると、磁気テープが通常摺動
する時の動摩擦係数は低いのにもかかわらず、静止摩擦
係数や極低速で摺動する時の動摩擦係数は大きいという
特徴を備えている。
は、磁気テープと摺動した時の摩擦係数がステンレス材
または鉄系金属材と比較すると、磁気テープが通常摺動
する時の動摩擦係数は低いのにもかかわらず、静止摩擦
係数や極低速で摺動する時の動摩擦係数は大きいという
特徴を備えている。
【0021】本願のポイントは、このような特徴を備え
た硬質炭素膜に窒素を含有すると、磁気テープに対する
極低速摺動時の摩擦係数がさらに大きくなることを見い
だしたことにある。即ち、窒素を含有した硬質炭素膜を
キャプスタン軸表面に設けることで、テープ駆動力が高
まるとともに窒素を含有した硬質炭素膜の優れた耐摩耗
特性により高いテープ駆動力を長時間安定に維持するこ
とができるのである。
た硬質炭素膜に窒素を含有すると、磁気テープに対する
極低速摺動時の摩擦係数がさらに大きくなることを見い
だしたことにある。即ち、窒素を含有した硬質炭素膜を
キャプスタン軸表面に設けることで、テープ駆動力が高
まるとともに窒素を含有した硬質炭素膜の優れた耐摩耗
特性により高いテープ駆動力を長時間安定に維持するこ
とができるのである。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1〜図5と共に説
明する。なお図1〜図5において、同一機能の構成要素
には同一の符号を付して、その説明は省略する。
明する。なお図1〜図5において、同一機能の構成要素
には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0023】図1は本発明のテープ駆動装置の第一の実
施例の主要構成を示す平面図であり、図2はその正面図
である。図1及び図2において、キャプスタン軸1は表
面硬度がビッカース硬さでHv=500kg/mm2程度
の非磁性のステンレス鋼、もしくはこれと同等の鉄系材
料である。キャプスタン軸1の表面にはビッカース硬さ
が3000kg/mm2の窒素を含有した硬質炭素膜4が0.2μ
mの膜厚で形成されている。
施例の主要構成を示す平面図であり、図2はその正面図
である。図1及び図2において、キャプスタン軸1は表
面硬度がビッカース硬さでHv=500kg/mm2程度
の非磁性のステンレス鋼、もしくはこれと同等の鉄系材
料である。キャプスタン軸1の表面にはビッカース硬さ
が3000kg/mm2の窒素を含有した硬質炭素膜4が0.2μ
mの膜厚で形成されている。
【0024】硬質炭素膜4の形成方法については、従来
から種々の方法が報告されているが(例えば特開昭62-1
39873号公報)、本実施例ではイオン化蒸着法(198
9年度精密工学会秋期大会学術講演開講演論文集第3分
冊 P621参照)を用いた。
から種々の方法が報告されているが(例えば特開昭62-1
39873号公報)、本実施例ではイオン化蒸着法(198
9年度精密工学会秋期大会学術講演開講演論文集第3分
冊 P621参照)を用いた。
【0025】イオン化蒸着法とはフィラメントの加熱で
発生する熱電子を利用して原料ガスをプラズマ化し、プ
ラズマ中のイオンを利用して製膜する方法であり、硬質
炭素膜を形成する場合は原料ガスとして炭化水素ガス
(ex.CH4,C6H6)が使用され、本実施例ではC6H6ガスを
使用した。
発生する熱電子を利用して原料ガスをプラズマ化し、プ
ラズマ中のイオンを利用して製膜する方法であり、硬質
炭素膜を形成する場合は原料ガスとして炭化水素ガス
(ex.CH4,C6H6)が使用され、本実施例ではC6H6ガスを
使用した。
【0026】さらに本実施例ではC6H6ガスに窒素ガスを
混入し、この混合ガスのプラズマからイオンを引出し照
射することで、窒素を含有した硬質炭素膜を形成してい
る。C6H6ガスと窒素ガスとの流量比率AはC6H6/窒素=
0.1〜3.0の範囲で検討し、特に0.5〜1.0の
範囲(体積比で言えば1/3〜1/2の範囲)が望まし
い。流量比率Aが3.0より大きくなると含有される窒
素の量が少なすぎて、その効果が小さい。また流量比率
Aが0.5より小さくなると硬質炭素膜の硬度が2000kg
/mm2以下となり、硬質炭素膜自身の特性が低下するため
好ましくない。また成膜レートも遅く、量産性も低下す
る。本実施例ではA=1.0の条件で成膜した。この時
窒素は元素比で約20%含有されている。
混入し、この混合ガスのプラズマからイオンを引出し照
射することで、窒素を含有した硬質炭素膜を形成してい
る。C6H6ガスと窒素ガスとの流量比率AはC6H6/窒素=
0.1〜3.0の範囲で検討し、特に0.5〜1.0の
範囲(体積比で言えば1/3〜1/2の範囲)が望まし
い。流量比率Aが3.0より大きくなると含有される窒
素の量が少なすぎて、その効果が小さい。また流量比率
Aが0.5より小さくなると硬質炭素膜の硬度が2000kg
/mm2以下となり、硬質炭素膜自身の特性が低下するため
好ましくない。また成膜レートも遅く、量産性も低下す
る。本実施例ではA=1.0の条件で成膜した。この時
窒素は元素比で約20%含有されている。
【0027】図3に本実施例装置および従来装置のテー
プ駆動力の比較を示す。従来装置については、キャプス
タン軸表面にビッカース硬さが2800kg/mm2の硬質炭素膜
を形成したもの、ハードクロム処理を施したもの、およ
び未処理のものについての結果を示している。
プ駆動力の比較を示す。従来装置については、キャプス
タン軸表面にビッカース硬さが2800kg/mm2の硬質炭素膜
を形成したもの、ハードクロム処理を施したもの、およ
び未処理のものについての結果を示している。
【0028】本実施例装置と従来装置との相違点は、本
実施例装置ではキャプスタン軸表面に窒素を含有した硬
質炭素膜(ビッカース硬さ3000kg/mm2)が形成されてい
ることである。図3の横軸は、本実施例装置における磁
気テープの走行時間であり、縦軸は各走行時間における
テープ駆動力を表す。
実施例装置ではキャプスタン軸表面に窒素を含有した硬
質炭素膜(ビッカース硬さ3000kg/mm2)が形成されてい
ることである。図3の横軸は、本実施例装置における磁
気テープの走行時間であり、縦軸は各走行時間における
テープ駆動力を表す。
【0029】ここで、テープ駆動力の定義及び測定方法
は以下の通りである。キャプスタン軸1へのピンチロー
ラ2の圧接力を一定にし、かつ磁気テープ3には駆動方
向と逆方向へのテープ負荷Tを加えつつ走行させる。磁
気テープに加えるテープ負荷を変化させた時に、キャプ
スタン軸1の周速と磁気テープ3の移動速度との間に
0.5%の相対速度(スリップ)が生じる時のテープ負
荷Tの値をテープ駆動力とした。
は以下の通りである。キャプスタン軸1へのピンチロー
ラ2の圧接力を一定にし、かつ磁気テープ3には駆動方
向と逆方向へのテープ負荷Tを加えつつ走行させる。磁
気テープに加えるテープ負荷を変化させた時に、キャプ
スタン軸1の周速と磁気テープ3の移動速度との間に
0.5%の相対速度(スリップ)が生じる時のテープ負
荷Tの値をテープ駆動力とした。
【0030】図3では、キャプスタン軸1とピンチロー
ラー2との間の圧接力が600gの場合のテープ駆動力
を示している。なにも処理をしていない従来の装置やハ
ードクロム処理を施した従来の装置では、50g以下と
いう全く不十分なテープ駆動力しか得られていない。ま
たビッカース硬さ2800kg/mm2の硬質炭素膜を形成した従
来の装置では、約80gの駆動力を実現している。
ラー2との間の圧接力が600gの場合のテープ駆動力
を示している。なにも処理をしていない従来の装置やハ
ードクロム処理を施した従来の装置では、50g以下と
いう全く不十分なテープ駆動力しか得られていない。ま
たビッカース硬さ2800kg/mm2の硬質炭素膜を形成した従
来の装置では、約80gの駆動力を実現している。
【0031】これに対して窒素を含有したビッカース硬
さ3000kg/mm2の硬質炭素膜を形成した本実施例では、約
105gというさらに大きなテープ駆動力を得ることが
出来ている。しかもこの駆動力は1000時間の走行後
においても殆ど変化せず、極めて安定である。
さ3000kg/mm2の硬質炭素膜を形成した本実施例では、約
105gというさらに大きなテープ駆動力を得ることが
出来ている。しかもこの駆動力は1000時間の走行後
においても殆ど変化せず、極めて安定である。
【0032】本実施例の顕著な作用効果は、次の様に理
解される。本実施例において、小さな圧接力で大きなテ
ープ駆動力が得られる主な理由は、窒素を含有した硬質
炭素膜が磁気テープに対して高摩擦係数の材料として機
能しているためと考えられる。
解される。本実施例において、小さな圧接力で大きなテ
ープ駆動力が得られる主な理由は、窒素を含有した硬質
炭素膜が磁気テープに対して高摩擦係数の材料として機
能しているためと考えられる。
【0033】通常、硬質炭素膜は、低摩擦係数の材料で
あると理解されている。確かに動摩擦係数を測定したと
ころ、テープと硬質炭素膜とを2mm/sec程度の相対速度
で摺擦する場合には、両者間の動摩擦係数は0.18程度の
値である。これは硬質炭素膜を形成していないキャプス
タン軸や、表面にハードクロム処理等の各種硬質化処理
を施したキャプスタン軸とテープとの動摩擦係数より小
さい値である。
あると理解されている。確かに動摩擦係数を測定したと
ころ、テープと硬質炭素膜とを2mm/sec程度の相対速度
で摺擦する場合には、両者間の動摩擦係数は0.18程度の
値である。これは硬質炭素膜を形成していないキャプス
タン軸や、表面にハードクロム処理等の各種硬質化処理
を施したキャプスタン軸とテープとの動摩擦係数より小
さい値である。
【0034】ところが相対速度が0に近づくにつれて、
硬質炭素膜とテープとの間の静摩擦係数あるいは動摩擦
係数は、ステンレス材あるいは鉄系金属とテープとの間
の摩擦係数に比べて約2倍と極めて大きな値となるので
ある。
硬質炭素膜とテープとの間の静摩擦係数あるいは動摩擦
係数は、ステンレス材あるいは鉄系金属とテープとの間
の摩擦係数に比べて約2倍と極めて大きな値となるので
ある。
【0035】そして、硬質炭素膜に窒素を含有すると、
摩擦係数の速度変化に対する特性は硬質炭素膜のみと同
じ傾向を備えつつ、絶対値は約25%程度大きくなる。
摩擦係数の速度変化に対する特性は硬質炭素膜のみと同
じ傾向を備えつつ、絶対値は約25%程度大きくなる。
【0036】従って、テープがキャプスタン軸の周速と
ほぼ同速で駆動されるテープ駆動装置にあっては、従来
は低摩擦材料であると考えられていたキャプスタン軸表
面に形成された硬質炭素膜は、ステンレス材あるいは鉄
系金属材と比べると、実は高摩擦係数の材料として機能
するのである。窒素を含有するとこの作用はさらに大き
くなり、その結果、本実施例装置では、未処理やハード
クロム処理を施した従来装置に比べて2倍以上、硬質炭
素膜を形成した従来装置に比べて20%以上もの大きな
テープ駆動力が得られているのである。
ほぼ同速で駆動されるテープ駆動装置にあっては、従来
は低摩擦材料であると考えられていたキャプスタン軸表
面に形成された硬質炭素膜は、ステンレス材あるいは鉄
系金属材と比べると、実は高摩擦係数の材料として機能
するのである。窒素を含有するとこの作用はさらに大き
くなり、その結果、本実施例装置では、未処理やハード
クロム処理を施した従来装置に比べて2倍以上、硬質炭
素膜を形成した従来装置に比べて20%以上もの大きな
テープ駆動力が得られているのである。
【0037】また、図3に示す通り、長期にわたりテー
プ駆動力が大きな状態で安定維持される理由は、硬質炭
素膜が耐摩耗性にも物理的な安定性にも優れているため
と考えられる。
プ駆動力が大きな状態で安定維持される理由は、硬質炭
素膜が耐摩耗性にも物理的な安定性にも優れているため
と考えられる。
【0038】本実施例では、この様に、窒素を含有した
硬質炭素膜の高い摩擦係数と優れた耐摩耗性の相乗効果
により、きわめて優れた特性が得られるものである。
硬質炭素膜の高い摩擦係数と優れた耐摩耗性の相乗効果
により、きわめて優れた特性が得られるものである。
【0039】次に本発明の第2の実施例につき説明す
る。本実施例装置は、図1と同様の構成を有する。しか
し、キャプスタン軸1は、その軸方向の断面図である図
4に示す通り、表面粗さが0.5μmRzの微細な凹凸面で
あり、この凹凸部の表面にビッカース硬度3000kg/mm2の
窒素を含有した硬質炭素膜4が膜厚0.2μmで形成されて
いるものである。窒素を含有した硬質炭素膜4の形成方
法は第1の実施例と同じくイオン化蒸着法を使用した。
る。本実施例装置は、図1と同様の構成を有する。しか
し、キャプスタン軸1は、その軸方向の断面図である図
4に示す通り、表面粗さが0.5μmRzの微細な凹凸面で
あり、この凹凸部の表面にビッカース硬度3000kg/mm2の
窒素を含有した硬質炭素膜4が膜厚0.2μmで形成されて
いるものである。窒素を含有した硬質炭素膜4の形成方
法は第1の実施例と同じくイオン化蒸着法を使用した。
【0040】硬質炭素膜はカバレッジがよいため、本実
施例の場合、硬質炭素膜4の表面にも、下地面1Sの表
面粗さが反映されて、凹凸が形成されることとなる。従
って、本実施例装置では、窒素を含有した硬質炭素膜4
の高い摩擦係数と、硬質炭素膜表面に形成された凹凸に
よる係止効果の相乗効果によって、テープの駆動力はさ
らに向上する。しかも、窒素を含有した硬質炭素膜の高
い耐摩耗性によって、長時間の使用に対しても凹凸部の
形状は保持され、高いテープ駆動力を維持することがで
きる。
施例の場合、硬質炭素膜4の表面にも、下地面1Sの表
面粗さが反映されて、凹凸が形成されることとなる。従
って、本実施例装置では、窒素を含有した硬質炭素膜4
の高い摩擦係数と、硬質炭素膜表面に形成された凹凸に
よる係止効果の相乗効果によって、テープの駆動力はさ
らに向上する。しかも、窒素を含有した硬質炭素膜の高
い耐摩耗性によって、長時間の使用に対しても凹凸部の
形状は保持され、高いテープ駆動力を維持することがで
きる。
【0041】図5に、本実施例装置の走行時間とテープ
駆動力の評価結果を、従来装置と比較して示す。テープ
駆動力の測定方法、測定条件等は、第1の実施例の場合
と同様である。従来例としては、表面粗さが0.05μ
mRz以下の金属面であるキャプスタン軸、表面粗さが
0.5μmRzの凹凸を形成した金属面であるキャプス
タン軸、表面粗さが0.5μmRzの凹凸面でかつ表面
に窒化チタン膜を0.2μmの厚みで形成したキャプス
タン軸、及び表面粗さが0.5μmRzの凹凸面でかつ
表面に硬質炭素膜を0.2μmの厚みで形成したキャプ
スタン軸の4種類を示している。
駆動力の評価結果を、従来装置と比較して示す。テープ
駆動力の測定方法、測定条件等は、第1の実施例の場合
と同様である。従来例としては、表面粗さが0.05μ
mRz以下の金属面であるキャプスタン軸、表面粗さが
0.5μmRzの凹凸を形成した金属面であるキャプス
タン軸、表面粗さが0.5μmRzの凹凸面でかつ表面
に窒化チタン膜を0.2μmの厚みで形成したキャプス
タン軸、及び表面粗さが0.5μmRzの凹凸面でかつ
表面に硬質炭素膜を0.2μmの厚みで形成したキャプ
スタン軸の4種類を示している。
【0042】金属面のみの従来のキャプスタン軸では、
いずれもテープ走行時間と共にテープ駆動力が急激に低
下し、実用的な寿命が全く得られないのに対して、窒素
を含有した硬質炭素膜を形成した本実施例装置では、飛
躍的な寿命の伸長、大幅な駆動力の向上を達成してい
る。硬質炭素膜に窒素を含有させることで磁気テープと
の間の摩擦係数が大きくなり、従来の硬質炭素膜の時よ
りもさらにテープ駆動力は大きくなる。また、窒素を含
有した硬質炭素膜は従来の硬質炭素膜と同等のビッカー
ス硬さを備えており、その高い耐摩耗性によって、長時
間の使用に対しても凹凸部の形状は保持され、高いテー
プ駆動力を維持することができる。
いずれもテープ走行時間と共にテープ駆動力が急激に低
下し、実用的な寿命が全く得られないのに対して、窒素
を含有した硬質炭素膜を形成した本実施例装置では、飛
躍的な寿命の伸長、大幅な駆動力の向上を達成してい
る。硬質炭素膜に窒素を含有させることで磁気テープと
の間の摩擦係数が大きくなり、従来の硬質炭素膜の時よ
りもさらにテープ駆動力は大きくなる。また、窒素を含
有した硬質炭素膜は従来の硬質炭素膜と同等のビッカー
ス硬さを備えており、その高い耐摩耗性によって、長時
間の使用に対しても凹凸部の形状は保持され、高いテー
プ駆動力を維持することができる。
【0043】図5において、表面に凹凸を形成した従来
のキャプスタン軸のテープ駆動力が急激に低下するの
は、表面の凹凸がテープ走行と共に急激に摩耗するため
と考えられる。本実施例では、キャプスタン軸1の表面
粗さは0.1μmRz〜2μmRzとし、窒素を含有する
硬質炭素膜の膜厚は、0.1μm以上でキャプスタン軸
1の表面粗さの値(上記実施例では0.5μm)以下と
すれば一層好ましい。
のキャプスタン軸のテープ駆動力が急激に低下するの
は、表面の凹凸がテープ走行と共に急激に摩耗するため
と考えられる。本実施例では、キャプスタン軸1の表面
粗さは0.1μmRz〜2μmRzとし、窒素を含有する
硬質炭素膜の膜厚は、0.1μm以上でキャプスタン軸
1の表面粗さの値(上記実施例では0.5μm)以下と
すれば一層好ましい。
【0044】その理由は、キャプスタン軸1の表面粗さ
を0.1μmRz以上とすることにより十分な係止効果
を有する凹凸が窒素を含有する硬質炭素膜の表面に形成
され、また2μmRz以下とすることにより、過大な凹
凸によってテープが傷つくことを防止できるからであ
る。
を0.1μmRz以上とすることにより十分な係止効果
を有する凹凸が窒素を含有する硬質炭素膜の表面に形成
され、また2μmRz以下とすることにより、過大な凹
凸によってテープが傷つくことを防止できるからであ
る。
【0045】また、硬質炭素膜の膜厚を0.1μm以上
とすることで、1000時間程度の長時間の運転に対し
てもダイヤモンド状薄膜が摩耗しつくさないことが保証
され、下地の表面粗さの値よりも小さな膜厚とすること
により、下地の表面粗さが硬質炭素膜の表面に反映され
て、硬質炭素膜表面にはテープ駆動力を高めるのに効果
的な凹凸を良好に形成できるのである。
とすることで、1000時間程度の長時間の運転に対し
てもダイヤモンド状薄膜が摩耗しつくさないことが保証
され、下地の表面粗さの値よりも小さな膜厚とすること
により、下地の表面粗さが硬質炭素膜の表面に反映され
て、硬質炭素膜表面にはテープ駆動力を高めるのに効果
的な凹凸を良好に形成できるのである。
【0046】また本実施例では、キャプスタン軸表面の
凹凸により窒素を含有する硬質炭素膜の付着力を高める
こともできる。従って、ビッカース硬度が特に高い硬質
炭素膜を形成する場合に効果的である。すなわち、硬質
炭素膜のビッカース硬度を高めていくと、膜の内部応力
が大きくなるためキャプスタン軸との付着性は低下す
る。特にビッカース硬度が3500kg/mm2以上ではこの傾向
が強くなる。しかし、本実施例では、表面に凹凸部を設
けているので軸と硬質炭素膜との接触面積が広くなり、
両者間に働くファンデスワールス力による付着力が増加
して付着性が改善されるのである。 硬質炭素膜に窒素
を含有させた場合でも、このように付着力が改善される
効果は同じである。
凹凸により窒素を含有する硬質炭素膜の付着力を高める
こともできる。従って、ビッカース硬度が特に高い硬質
炭素膜を形成する場合に効果的である。すなわち、硬質
炭素膜のビッカース硬度を高めていくと、膜の内部応力
が大きくなるためキャプスタン軸との付着性は低下す
る。特にビッカース硬度が3500kg/mm2以上ではこの傾向
が強くなる。しかし、本実施例では、表面に凹凸部を設
けているので軸と硬質炭素膜との接触面積が広くなり、
両者間に働くファンデスワールス力による付着力が増加
して付着性が改善されるのである。 硬質炭素膜に窒素
を含有させた場合でも、このように付着力が改善される
効果は同じである。
【0047】上記各実施例のテープ駆動装置では、キャ
プスタン軸の表面に形成された窒素を含有する硬質炭素
膜の長さLDは、通常は、主として必要とされるテープ
駆動力により定めることができる。例えば、必要とされ
るテープ駆動力が小さなものであればLDは短くてよ
い。しかし、本発明のテープ駆動装置を、例えばビデオ
機器に使用する場合には、窒素を含有する硬質炭素膜の
長さLDは、テープ幅LTとの関係において、図2に示す
様に、LTよりも長くすることがより好ましい。その理
由は、以下の通りである。
プスタン軸の表面に形成された窒素を含有する硬質炭素
膜の長さLDは、通常は、主として必要とされるテープ
駆動力により定めることができる。例えば、必要とされ
るテープ駆動力が小さなものであればLDは短くてよ
い。しかし、本発明のテープ駆動装置を、例えばビデオ
機器に使用する場合には、窒素を含有する硬質炭素膜の
長さLDは、テープ幅LTとの関係において、図2に示す
様に、LTよりも長くすることがより好ましい。その理
由は、以下の通りである。
【0048】もし、図6に示すようにLDがLTより短い
と、テープの端面部3Eはキャプスタン軸1の金属表面
と接触し、テープの中央部はキャプスタン軸に形成され
た窒素含有硬質炭素膜4と接触することになる。上記の
通り、窒素含有硬質炭素膜とキャプスタン軸の金属表面
とでは、テープに対する摩擦係数は約2.5倍も異な
る。従って、テープ駆動時にはテープの端面部3Eと中
央部に加わる摩擦力に大きなアンバランスが発生し、こ
の様な状態で同一テープを幾度も繰り返し走行させる
と、例えばテープ中央部と端面部とにおいてテープの伸
び量が異なって、テープの端面部3Eに皺等が発生しや
すくなったり、あるいはこの様にして発生した皺が更な
るテープの変形や損傷を招きやすい。
と、テープの端面部3Eはキャプスタン軸1の金属表面
と接触し、テープの中央部はキャプスタン軸に形成され
た窒素含有硬質炭素膜4と接触することになる。上記の
通り、窒素含有硬質炭素膜とキャプスタン軸の金属表面
とでは、テープに対する摩擦係数は約2.5倍も異な
る。従って、テープ駆動時にはテープの端面部3Eと中
央部に加わる摩擦力に大きなアンバランスが発生し、こ
の様な状態で同一テープを幾度も繰り返し走行させる
と、例えばテープ中央部と端面部とにおいてテープの伸
び量が異なって、テープの端面部3Eに皺等が発生しや
すくなったり、あるいはこの様にして発生した皺が更な
るテープの変形や損傷を招きやすい。
【0049】周知の様に、ビデオテープレコーダーの場
合、テープの端面は、シリンダーのリード部に沿って走
行させるための基準であるばかりでなく、コントロール
信号が記録される部分でもあり、この端面部に上記の不
都合が発生するとテープの走行が不安定となりトラッキ
ングの直線性が悪くなるなどして、記録再生における互
換性が低下したりする。
合、テープの端面は、シリンダーのリード部に沿って走
行させるための基準であるばかりでなく、コントロール
信号が記録される部分でもあり、この端面部に上記の不
都合が発生するとテープの走行が不安定となりトラッキ
ングの直線性が悪くなるなどして、記録再生における互
換性が低下したりする。
【0050】一方、図6に示すようにLDをLTよりも大
きくした場合には、テープはその端面部3Eを含めて全
体が窒素含有硬質炭素膜に一様に接触するので、テープ
のどの部分もほぼ等しい駆動力を受けることとなり、上
記の不都合は回避され、機器の信頼性をより一層高める
ことが出来るのである。
きくした場合には、テープはその端面部3Eを含めて全
体が窒素含有硬質炭素膜に一様に接触するので、テープ
のどの部分もほぼ等しい駆動力を受けることとなり、上
記の不都合は回避され、機器の信頼性をより一層高める
ことが出来るのである。
【0051】この様にLDをLTよりも大きくしておくと
により、同一のテープを繰り返し走行させた場合の安全
性、信頼性を一層向上できるので、ビデオ機器に限ら
ず、テープの端面部をテープ走行系に設けられたテープ
走行ガイドに当接させて駆動する機器あるいはテープ端
部にも信号が記録される機器においては、本実施例は特
に有効である。
により、同一のテープを繰り返し走行させた場合の安全
性、信頼性を一層向上できるので、ビデオ機器に限ら
ず、テープの端面部をテープ走行系に設けられたテープ
走行ガイドに当接させて駆動する機器あるいはテープ端
部にも信号が記録される機器においては、本実施例は特
に有効である。
【0052】また、上記各実施例においては、窒素含有
硬質炭素膜の形成にはイオン化蒸着法を使用したが、本
発明ではその製膜法をこれらに限定するものではない。
更に窒素含有硬質炭素膜の付着性をさらに高めるため
に、キャプスタン軸と窒素含有硬質炭素膜との間にTi
NC、TiC、Si、SiC、Siを含有したカーボン
膜等の中間層を設けてもかまわない。あるいはキャプス
タン軸の表面にC、Si元素をドーピングする等の表面
処理を行ってもかまわない。あるいは特開平2−274
876号公報に記載のように、窒素含有硬質炭素膜の形
成初期には内部応力の小さな条件で形成し徐々に膜質を
変化させることで窒素含有硬質炭素膜の付着力を高める
ことも可能である。
硬質炭素膜の形成にはイオン化蒸着法を使用したが、本
発明ではその製膜法をこれらに限定するものではない。
更に窒素含有硬質炭素膜の付着性をさらに高めるため
に、キャプスタン軸と窒素含有硬質炭素膜との間にTi
NC、TiC、Si、SiC、Siを含有したカーボン
膜等の中間層を設けてもかまわない。あるいはキャプス
タン軸の表面にC、Si元素をドーピングする等の表面
処理を行ってもかまわない。あるいは特開平2−274
876号公報に記載のように、窒素含有硬質炭素膜の形
成初期には内部応力の小さな条件で形成し徐々に膜質を
変化させることで窒素含有硬質炭素膜の付着力を高める
ことも可能である。
【0053】また、本発明においては、窒素含有硬質炭
素膜4の膜厚は、0.05μm以上であることが好ましい。
これは、キャプスタン軸表面の窒素含有硬質膜4は、テ
ープ駆動装置の運転条件により多少の差異はあるもの
の、約1000時間程度の運転後においては、0.05μm
〜0.08μmほど摩耗しており、従って窒素含有硬質炭素
膜の膜厚を0.05μm以上とすれば、上記1000時
間自体、十分に余裕を考慮した寿命時間であるので、実
用上十分な寿命を得ることができるからである。
素膜4の膜厚は、0.05μm以上であることが好ましい。
これは、キャプスタン軸表面の窒素含有硬質膜4は、テ
ープ駆動装置の運転条件により多少の差異はあるもの
の、約1000時間程度の運転後においては、0.05μm
〜0.08μmほど摩耗しており、従って窒素含有硬質炭素
膜の膜厚を0.05μm以上とすれば、上記1000時
間自体、十分に余裕を考慮した寿命時間であるので、実
用上十分な寿命を得ることができるからである。
【0054】本発明のテープ駆動装置においては、キャ
プスタン軸に形成する窒素含有硬質炭素膜は、ビッカー
ス硬さがHv=1500kg/mm2以上で比抵抗が1.0×1
04Ωcm以下であれば一層好ましい。1500kg/mm2以
上のビッカース硬度においては、実用上、十分な耐摩耗
特性が得られ、テープ駆動力を長期にわたり安定に維持
することができる。また比抵抗を1.0×104Ωcmよ
り小さくすることでテープへの静電気の発生・蓄積を抑
制、防止でき、テープに記録された信号を再生する際
に、ノイズの発生を効果的に防止できる。本発明の場
合、硬質炭素膜に窒素を含有させることで、硬さは維持
したまま比抵抗を小さくすることが容易である。
プスタン軸に形成する窒素含有硬質炭素膜は、ビッカー
ス硬さがHv=1500kg/mm2以上で比抵抗が1.0×1
04Ωcm以下であれば一層好ましい。1500kg/mm2以
上のビッカース硬度においては、実用上、十分な耐摩耗
特性が得られ、テープ駆動力を長期にわたり安定に維持
することができる。また比抵抗を1.0×104Ωcmよ
り小さくすることでテープへの静電気の発生・蓄積を抑
制、防止でき、テープに記録された信号を再生する際
に、ノイズの発生を効果的に防止できる。本発明の場
合、硬質炭素膜に窒素を含有させることで、硬さは維持
したまま比抵抗を小さくすることが容易である。
【0055】上記第一及び第二の実施例の特徴的な相違
は、第二の実施例では、テープ駆動力を更に増大させる
ために、キャプスタン軸表面に微細な凹凸を形成した点
である。従って、換言すれば、図3に示された第一の実
施例の特性は、キャプスタン軸表面に微細な凹凸を形成
せずとも得られるものである。つまり、硬質炭素膜が形
成されるキャプスタン軸表面が極めて平滑な鏡面であっ
たとしても、図3の特性を得ることが出来るものであ
る。
は、第二の実施例では、テープ駆動力を更に増大させる
ために、キャプスタン軸表面に微細な凹凸を形成した点
である。従って、換言すれば、図3に示された第一の実
施例の特性は、キャプスタン軸表面に微細な凹凸を形成
せずとも得られるものである。つまり、硬質炭素膜が形
成されるキャプスタン軸表面が極めて平滑な鏡面であっ
たとしても、図3の特性を得ることが出来るものであ
る。
【0056】また、上記各実施例構成のテープ駆動装置
を実際にVHS規格のVTRカメラに用いることによ
り、VTRカメラの大きさ、重量を大幅に低減すること
ができた。また、この場合、テープは、スリップするこ
となくキャプスタン軸の周速と殆ど同速で走行し、ワウ
フラッターは従来に比べて改善されるなど、走行特性が
著しく向上した。
を実際にVHS規格のVTRカメラに用いることによ
り、VTRカメラの大きさ、重量を大幅に低減すること
ができた。また、この場合、テープは、スリップするこ
となくキャプスタン軸の周速と殆ど同速で走行し、ワウ
フラッターは従来に比べて改善されるなど、走行特性が
著しく向上した。
【0057】更に、従来例で述べた様なテープ駆動の制
御系を用いずとも、磁気テープは、十分な余裕をもっ
て、キャプスタン軸の周速と殆ど同速で走行することも
確認された。この様に、本願発明は、上記した従来のテ
ープ走行の制御系の大幅な簡素化もしくは省略による機
器の低価格化をも可能とするものである。
御系を用いずとも、磁気テープは、十分な余裕をもっ
て、キャプスタン軸の周速と殆ど同速で走行することも
確認された。この様に、本願発明は、上記した従来のテ
ープ走行の制御系の大幅な簡素化もしくは省略による機
器の低価格化をも可能とするものである。
【0058】また、VTRカメラに限らず、磁気テープ
駆動を行なう他の機器においても、同様な効果が得られ
ることは明かである。
駆動を行なう他の機器においても、同様な効果が得られ
ることは明かである。
【0059】
【発明の効果】以上のように、本願発明によれば、ピン
チローラーの圧接力が小さくとも十分なテープ駆動力の
得られるテープ駆動装置が実現でき、機器の小型化、長
寿命化、スリップの無いテープ走行等を達成することが
出来る。
チローラーの圧接力が小さくとも十分なテープ駆動力の
得られるテープ駆動装置が実現でき、機器の小型化、長
寿命化、スリップの無いテープ走行等を達成することが
出来る。
【0060】また、本願発明では、窒素含有硬質炭素膜
をキャプスタン軸表面に形成することにより、主たるテ
ープ駆動力をキャプスタン軸から伝達でき、ワウフラッ
ターの改善に大なる効果を発揮することができる。
をキャプスタン軸表面に形成することにより、主たるテ
ープ駆動力をキャプスタン軸から伝達でき、ワウフラッ
ターの改善に大なる効果を発揮することができる。
【0061】加えて、テープ走行の制御系の簡素化、省
略化を行なう上でも重要な技術であるなど、本願発明
は、極めて高い工業的価値を有するものである。
略化を行なう上でも重要な技術であるなど、本願発明
は、極めて高い工業的価値を有するものである。
【図1】本発明のテープ駆動装置の第一の実施例の構成
を示す平面図
を示す平面図
【図2】同実施例装置の正面図
【図3】同実施例装置のテープ駆動力を示す特性図
【図4】本発明のテープ駆動装置の第二の実施例の構成
を示す断面図
を示す断面図
【図5】同実施例装置のテープ駆動力を示す特性図
【図6】従来のテープ駆動装置の構成を示す平面図
1 キャプスタン軸 2 ピンチローラー 3 磁気テープ 4 硬質炭素膜
Claims (8)
- 【請求項1】表面に窒素を含有した硬質炭素膜を形成し
たキャプスタン軸と、少なくとも周面部が弾性部材から
構成され前記キャプスタン軸に磁気テープを介して圧接
して回転するピンチローラーとを備えたテープ駆動装
置。 - 【請求項2】キャプスタン軸と、少なくとも周辺部が弾
性部材から構成されキャプスタン軸に磁気テープを介し
て圧接して回転するピンチローラーとから構成され、前
記キャプスタン軸表面の少なくとも磁気テープと接触す
る部分に表面粗さが0.1〜2.0μmRzの範囲の微細な凹
凸を備えると共に、少なくとも微細な凹凸の表面に窒素
を含有した硬質炭素膜を合成したテープ駆動装置。 - 【請求項3】ピンチローラーの幅LDと磁気テープ幅L
Tとの比(LT/LD)が0.8以下である請求項1ま
たは2記載のテープ駆動装置。 - 【請求項4】窒素を含有した硬質炭素膜がビッカース硬
さHv1500kg/mm2以上である請求項1または2記載のテー
プ駆動装置。 - 【請求項5】窒素を含有した硬質炭素膜の比抵抗が1.0
×104Ωcmより小さな請求項1または2記載のテープ駆
動装置。 - 【請求項6】窒素を含有した硬質炭素膜の膜厚が0.1μm
以上である請求項1または2記載のテープ駆動装置。 - 【請求項7】少なくとも炭素を含む原料ガスに窒素ガス
を混入してプラズマ化し、プラズマ中のイオンを加速衝
突させてキャプスタン軸の表面に硬質炭素膜を堆積させ
るテープ駆動装置の製造方法。 - 【請求項8】少なくとも炭素を含む原料ガスへの窒素ガ
スの混入比が体積比で1/2〜1/3の範囲である請求
項7記載のテープ駆動装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20050493A JPH0757343A (ja) | 1993-08-12 | 1993-08-12 | テープ駆動装置及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20050493A JPH0757343A (ja) | 1993-08-12 | 1993-08-12 | テープ駆動装置及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0757343A true JPH0757343A (ja) | 1995-03-03 |
Family
ID=16425418
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20050493A Pending JPH0757343A (ja) | 1993-08-12 | 1993-08-12 | テープ駆動装置及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0757343A (ja) |
-
1993
- 1993-08-12 JP JP20050493A patent/JPH0757343A/ja active Pending
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