JPH07121938A - テープ駆動装置 - Google Patents

テープ駆動装置

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Publication number
JPH07121938A
JPH07121938A JP5294752A JP29475293A JPH07121938A JP H07121938 A JPH07121938 A JP H07121938A JP 5294752 A JP5294752 A JP 5294752A JP 29475293 A JP29475293 A JP 29475293A JP H07121938 A JPH07121938 A JP H07121938A
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JP
Japan
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tape
capstan shaft
film
pinch roller
carbon film
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JP5294752A
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English (en)
Inventor
Yuichi Nakagami
裕一 中上
Hideo Kurokawa
英雄 黒川
Sadayasu Ueda
貞靖 上田
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 小型軽量化が可能で高い駆動力を備えたテー
プ駆動装置を実現する。 【構成】 ピンチローラーにより、回転するキャプスタ
ン軸に押圧されたテープをキャプスタン軸の回転方向に
駆動するテープ駆動装置であって、キャプスタン軸1の
表面に、ヌープ硬さ5000kgf/mm2以上、密度
3以下、水素含有率30%以下を有するダイヤモンド状
薄膜1bを形成したキャプスタン軸を用いる。 【効果】 上記の物性を有するダイヤモンド状薄膜をキ
ャプスタン軸表面に形成することにより、従来のダイヤ
モンド状薄膜を形成した場合に比べて、テープに対する
駆動力がくらべて20%以上向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テープを駆動するため
の装置に関するもので、例えばビデオテープレコーダー
やカセットデッキなどに使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビデオテープレコーダーやカセッ
トテープレコーダーなどの磁気記録再生装置では、磁気
テープをピンチローラーによってキャプスタン軸に圧接
し、キャプスタン軸を定速で回転させることで磁気テー
プの駆動を行っている。
【0003】以下に、従来のテープ駆動装置について図
16を用いて説明する。図16において、21はキャプ
スタン軸、22はピンチローラーであり、キャプスタン
軸方向へ移動可能でかつ磁気テープ23をキャプスタン
軸に圧接しながら回転する。
【0004】ピンチローラー22は、磁気テープ23を
キャプスタン軸21に圧接しているため、磁気テープ2
3はキャプスタン軸21の回転速度に応じて、キャプス
タン軸21の回転方向に搬送される。この時テープスリ
ップが生じないように、ピンチローラー22のキャプス
タン軸21への圧接力は、通常1kg以上に設定される。
【0005】またキャプスタン軸21の表面に細かな凹
凸を設けることにより、キャプスタン軸21と磁気テー
プ23との間の摩擦力を高めることにより、テープ駆動
力を向上させてテープスリップを少なくしている例も報
告されている。
【0006】また我々は、キャプスタン軸21の表面に
形成した硬質炭素膜(ダイヤモンド状薄膜とも呼ばれて
いる)の摩擦摺動特性と耐摩耗特性により、テープ駆動
力の向上を実現したテープ駆動装置を、例えば特開平5
−6599号公報において提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の装置では、キャプスタン軸と磁気テープが
ピンチローラーの圧接力を受けて接している状態におい
て、圧接力が小さいとキャプスタン軸と磁気テープとの
間でスリップが生じ、磁気テープを定速で駆動すること
が困難となるという課題があった。
【0008】一方で、特に小型軽量化を図っているビデ
オムービーでは、メカ部やシャーシーを構成する部品を
限界近くまで小型、薄肉化しており、ピンチローラーの
圧接力が大きいとピンチアーム等のメカ部品に歪やソリ
が生じてしまうことから、ピンチローラーの圧接力はで
きる限り小さいことが望まれている。
【0009】またキャプスタン軸に使用される軸受けも
小さくなっているため、キャプスタン軸に許容される負
荷も小さくなり、ピンチローラーの圧接力が大きいと軸
受けの寿命が短くなることからも、ピンチローラーの圧
接力は小さいことが望まれている。
【0010】キャプスタンがテープを駆動するテープ駆
動力は、キャプスタン軸とテープとの間の摩擦力及びピ
ンチローラーとテープとの間の摩擦力であるが、従来の
キャプスタンではピンチローラーとテープとの間の摩擦
力であるとされてきた。
【0011】従来のキャプスタンでは、ピンチローラー
の幅はテープ幅より大きいのが普通であり、ピンチロー
ラーの一部とキャプスタンは直接接触している。
【0012】従ってキャプスタン軸の回転力は、その一
部がピンチローラーに直接伝わり、さらにピンチローラ
からテープに伝わる。
【0013】通常キャプスタン軸の表面は、少なくとも
数ミクロンオーダ以下の平滑面に加工され、ピンチロー
ラはゴム等の弾性体であるので、テープ・キャプスタン
軸間の摩擦係数よりもテープ・ピンチローラ間の摩擦係
数やキャプスタン軸・ピンチローラ間の摩擦係数の方が
大きい。
【0014】従来から、キャプスタンのテープ駆動力
は、ピンチローラーとテープとの間の摩擦力であるとさ
れてきたのはこの理由からである。
【0015】最近の磁気記録装置は小型化、薄型化さ
れ、キャプスタンも小型化が進んでいる。このためピン
チローラの幅はテープ幅にほぼ等しくなり、キャプスタ
ン軸も小径になっている。
【0016】このようなキャプスタンでは、キャプスタ
ン軸とピンチローラとの直接接触部分は少なくなり、従
ってキャプスタンのテープ駆動力は、キャプスタン軸と
テープとの間の摩擦力が支配的になる。
【0017】キャプスタン軸とテープとの間の摩擦力を
高める方法としては、キャプタン軸の表面に微細な凹凸
を設けることが考えられている。即ち、キャプスタン軸
の表面の凹凸でキャプスタン軸とテープとの間の摩擦係
数を増大せしめ、安定したテープ走行を実現しようとす
るものである。
【0018】この場合、キャプスタン軸表面の凹凸は、
テープとの摩擦による摩耗で次第に平滑化され、テープ
駆動力が次第に低下するという課題があった。
【0019】結局、ピンチローラーの圧接力を高めるこ
とが必要不可欠であり、シャーシーやピンチアームの部
品を補強することでメカニズム重量が増加し小型軽量化
が困難になるという問題を有していた。
【0020】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
であり、キャプスタン軸の表面に窒素を含有する硬質炭
素膜を形成することにより、キャプスタン軸の摩耗を減
らすと同時に磁気テープとキャプスタン軸との間のテー
プ駆動力を高め、ピンチローラー圧接力が小さくてもス
リップがなく安定に磁気テープを駆動できるテープ駆動
装置を提供するものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記課題解決のために提
供するために、本願のテープ駆動装置は、キャプスタン
軸と、磁気テープをキャプスタン軸側へ圧接するピンチ
ローラーから構成されるテープ駆動装置であって、キャ
プスタン軸の最表面にヌープ硬さ5000kg/mm2
以上、密度3以下、水素含有率が30%以下である硬質
炭素膜が形成されたテープ駆動装置である。
【0022】あるいは、キャプスタン軸に、少なくとも
珪素と炭素を含有しヌープ硬さが1000kg/mm2
以上を有する薄膜を形成し、その上層にヌープ硬さが5
000kg/mm2以上で、密度3.0以下、水素含有
率が30%以下である硬質炭素膜が形成されたテープ駆
動装置である。
【0023】
【作用】硬質炭素膜は非晶質でありながらダイヤモンド
に類似した特性を示す炭素膜である。その構造は主とし
てダイヤモンド結合(SP3結合)成分とグラファイト
結合(SP2結合)成分、その他無定型炭素などが混在
したものと考えられている。膜の特性は各種の結合成分
の存在比率と密接な関係があり、ダイヤモンド結合が多
く含まれるものほどダイヤモンドに近い特性を示す。
【0024】また、摩擦係数の速度依存性が大きく、磁
気テープが通常摺動する時の動摩擦係数は低いのにもか
かわらず、静止摩擦係数あるいは極低速で摺動する時の
動摩擦係数は大きいという特徴を備えている。
【0025】本願出願人は、キャプスタン軸上に形成し
た硬質炭素膜の膜質とそのテープ駆動力の関係について
鋭意検討を行った結果、以下の如き事実を見いだした。
【0026】すなわち、ヌープ硬さ5000kg/mm
2以上、密度3以下、水素含有率が30%以下の硬質炭
素膜をキャプスタン軸表面に形成することにより、テー
プ駆動力が向上し、従来の硬質炭素膜を用いる場合に比
べても20%以上も高いことが判明したのである。
【0027】上記の物性を有する硬質炭素膜がなぜ高い
駆動力を示すか、明確な原因はわかっていないが、硬質
炭素膜の中でも比較的ダイヤモンド結合を多く含むもの
は、その緻密性が低いことが判明したのである。これ
は、多くのダイヤモンド成分が分散して存在するために
膜としては完全な非晶質となる。
【0028】この結果、膜自体は弾性率が小さくなるも
のと考えられ、テープ駆動力が高くなると考えられる。
さらに、硬質炭素膜は耐摩耗性に優れているため、高い
駆動力が長時間安定に維持できるのである。
【0029】さらに、キャプスタン軸と硬質炭素膜の中
間層として硅素と炭素を含む薄膜を導入することによっ
て、炭素膜の付着性はより向上するのである。このと
き、中間層の硬さがたとえば、1000kg/mm2
満の柔らかい膜の場合には、その上層の硬質炭素膜を硬
くしても、ピンチローラーの圧接によるせん断力によっ
て、中間層の部分から容易に剥離が生ずる。中間層の硬
さを少なくとも1000kg/mm2以上有することに
よって、炭素膜の付着性を最も向上することができるの
である。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面とともに説明す
る。
【0031】図1は本発明の第1の実施例装置を構成す
るキャプスタン軸の説明図である。キャプスタン軸1の
母材1aは非磁性のステンレス鋼であり、その表面には
ヌープ硬さ5000kg/mm2、密度2.5、水素含
有率25%の硬質炭素膜1bが膜厚0.3μmで形成さ
れている。同図(b)は、キャプスタン軸の断面図であ
る。
【0032】キャプスタン軸母材1a上へ硬質炭素膜1
bを形成する方法は、従来よりいくつか報告されている
が、本実施例ではイオン化蒸着法と呼ばれる方法を用い
た。
【0033】図2に、本実施例で使用した薄膜形成装置
の概略を示す。真空チャンバー内に、フィラメントを備
えたイオン源5の上方に、キャプスタン軸保持部2を設
けた。保持部2にはモーター3が直結され回転可動とし
た。また、同時に直流電源4が接続され、基材に直流バ
イアスが印加できるように構成されている。
【0034】次に、実験手順を説明する。まず、真空チ
ャンバー内を真空ポンプ(図示せず)によって、10-4
〜10-6torrまで真空排気を行った。
【0035】その後、イオン源5内に不活性ガスのアル
ゴンを導入するとともに、熱フィラメントの通電加熱を
行い、フィラメントからの熱電子によってプラズマを発
生させた。
【0036】基材となるキャプスタン軸1は基体保持部
2に固定し、−1.0〜3.0kVの負バイアスを印加
した。この時、プラズマ中のアルゴンイオン6はこの電
界により加速されキャプスタン軸1上へ衝突する。イオ
ンのスパッタ効果により、キャプスタン軸表面の汚染物
が取り除かれる。
【0037】基材表面をこうしてクリーニングした後、
導入ガスをベンゼンに変え、キャプスタン軸1上に硬質
炭素膜の形成を行った。炭素膜の膜質は基材への印加バ
イアスを変化することにより行なった。
【0038】図3に、基体の印加バイアスと膜の硬さの
関係を示す。膜の硬さは印加バイアスが−0.7kV付
近で最高を示し、バイアスの増加とともに低下する。
【0039】まず、上記の方法により作製した、(a)
ヌープ硬さ5000kg/mm2および(b)ヌープ硬
さ3000kg/mm2の硬質炭素膜について、各種の
膜質分析を行なった。
【0040】図4は、上記(a)および(b)の硬質炭
素膜のラマン分光スペクトルを示す。両者とも典型的な
硬質炭素膜のスペクトルを示し、1360cm-1および
1560cm-1を中心とする2つのブロードピークが観
測された。
【0041】これらの2つのピークの面積比から、
(a)は(b)に比べてSP3成分、すなわち、ダイヤ
モンド結合成分を多く含有していることがわかる。
【0042】上記(a)、(b)の膜の電子線回折パタ
ーンの写真を、それぞれ図5(a)、(b)に示す。図
5(a)は完全なハローパターンであるのに対して、図
5(b)には散漫な回折リングが観測される。
【0043】また、上記(a)、(b)の膜の透過電子
顕微鏡観察結果の写真を、それぞれ図6(a)、(b)
に示す。図6(a)には結晶粒が観測されず、図6
(b)にはわずかながら規則性が存在することを確認し
た。
【0044】このことから、上記(a)の膜は完全な非
晶質状態であり、従来の(b)の膜はわずかな結晶構造
が存在するものと考えられる。また(b)の膜に存在す
る短距離秩序は、面間隔約0.35〜0.4nmと算出
された。
【0045】また、上記(a)の膜に比べて上記(b)
の膜には僅かな導電性がみられることから、上記(b)
の膜構造はグラファイトに近いものであると推測され
る。
【0046】(表1)にラザフォード後方散乱法(RB
S)およびERDAから求めた膜の密度、水素含有量を
示す。
【0047】
【表1】
【0048】このように(a)の膜が(b)の膜に比べ
て密度が小さくなっていることは、(a)の膜が結晶性
が低く、緻密になっていないことを示しており、前述の
電子線回折、透過電顕の観察結果ともよく一致する。ま
た、水素含有量については、いずれの場合も25〜26
%で同等であった。
【0049】以上のことから、ヌープ硬さ5000kg
/mm2を示す膜は、SP3性の高い即ちダイヤモンド
結合をより多く含有する膜ではあるが、その結合状態は
かなり無秩序的に分散して存在すると考えられ、その緻
密性はヌープ硬さ3000kg/mm2の膜に比べて低
いことがわかった。
【0050】次に、上記の硬質炭素膜をキャプスタン軸
上に形成し評価を行なった結果について述べる。
【0051】図1に示されたキャプスタン軸を用いて、
図16に示す構造のテープ駆動装置を構成し、テープ駆
動力の評価を行なった。
【0052】テープ駆動力の測定方法を図16において
説明する。キャプスタン軸21へのピンチローラー22
の圧接力を一定にし、かつ磁気テープ23には駆動方向
と逆向きのテープテンションTを加えつつ走行させる。
磁気テープに加えるテープテンションを変化させた時
に、キャプスタン軸21の周速とテープ23の走行速度
との間に0.5%のスリップが生じたときのテープテン
ション値Tをテープ駆動力と定義した。
【0053】図7に本実施例および従来のテープ駆動力
のエージング特性比較を示す。図7において、曲線
(a)は、上記の薄膜を形成した本実施例装置の場合の
特性であり、曲線(b)は、ヌープ硬さが3000kg
/mm2、密度3.1、水素含有率26%の硬質炭素膜
をキャプスタン軸表面に形成したものの特性、曲線
(c)は、キャプスタン軸表面が未処理のものである。
なお、キャプスタン軸そのものの表面の粗さは、いずれ
もRmax=0.2μmであり、また曲線(a)、(b)
において、キャプスタン軸表面に形成した炭素膜の膜厚
は0.3μmである。ピンチローラーの圧接力は600
gで評価を行なった。
【0054】未処理のキャプスタンを用いた(c)で
は、駆動力そのものが非常に低い。また、(b)は、
(c)に比較すると高い駆動力を示すが、エージング時
間に対して駆動力の大きな経時変化(劣化)が見られ
る。
【0055】一方、(a)のテープ駆動装置は(b)に
比べて、駆動力の変化が小さく、その飽和値も大きい。
【0056】以上より、(a)の膜質を有するキャプス
タンのテープ駆動力が最も優れていることがわかる。
【0057】図7において駆動力が経時的に変化する原
因は、キャプスタン軸自身の表面粗さがテープの駆動に
よって摩耗することによるものと考えられる。
【0058】そこで、キャプスタン軸表面の粗さを平坦
化し、同様なエージング試験を行なった。キャプスタン
軸の表面粗さはRmax=0.02〜0.04μmと、上
記の実施例に比べて1桁小さい値であり、この上に
(a)、(b)の膜質をもつ硬質炭素膜を形成した。ま
た、比較のため未処理の(c)についても評価を行っ
た。
【0059】図8にエージング結果を示す。(a)、
(b)ともに、キャプスタン軸表面の表面粗さを小さく
して平滑化しているにも関わらず、図7の場合と同じ傾
向を示す。このことから、(a)および(b)がもつ駆
動力の差は、キャプスタン軸の表面粗さにあまり関係が
なく、硬質炭素膜の物性によるものであることがわかっ
た。
【0060】(a)と(b)の膜に駆動力の差がある原
因は前述の分析結果から、膜の緻密性の違いが関わって
いるものと考えられる。
【0061】すなわち、非晶質であり、緻密性の低い
(a)の膜は、外圧に対して弾性変形しやすくその弾性
率が小さいと考えられる。したがって、磁気テープに対
する駆動力が高くなると考えられる。なお、キャプスタ
ン軸の表面粗さを一層平滑化した図8(c)について
は、図7(c)に比べてさらに駆動力が低下した。
【0062】次に、図16において示されるBとAの比
と駆動力の関係について調べた。図9はB/A値と駆動
力の関係について示す。硬質炭素膜が磁気テープに対し
て優れたテープ駆動性能を持つことは前に述べた通りで
ある。
【0063】したがって、キャプスタン軸がピンチロー
ラーに接触している部分Bが、キャプスタン軸が直接テ
ープに接触している部分Aに比べて大きすぎるとその効
果が低下する傾向がある。すなわち、B/Aが0.8以
上ではテープ駆動力は低下するのである。
【0064】次に、(a)と同等の膜質の硬質炭素膜
を、 (d)膜厚0.1μmとしたもの (e)0.5μmとしたもの について比較検討を行なった。
【0065】図10にその検討結果を示す。炭素膜の膜
厚が薄い場合には、キャプスタンの凸部が摩耗し、母材
が露出して駆動力が低下した。したがって、炭素膜は凸
部が摩耗しても母材が露出しないほど十分な膜厚で形成
することが望ましい。
【0066】一方、膜厚が厚過ぎる場合には、膜自体の
付着性が低下しエージング途中で剥離し、その場合、駆
動力も低下する。
【0067】以上より、本実施例では、キャプスタン軸
の表面粗さが0.2μmの場合では、硬質炭素膜の膜厚
は0.2〜0.4μm程度が望ましい。
【0068】次に、第2の実施例について、図11に基
づき説明を行う。図11(a)、(b)は、それぞれ本
実施例装置において使用されたキャプスタン軸の外観図
と断面図である。
【0069】図11において、キャプスタン軸1の母材
1aは非磁性のステンレス鋼であり、その上に、中間層
として珪素と炭素を含有するヌープ硬さ3000kg/
mm2の薄膜1cが0.05μmの膜厚で形成され、更
にその上層にヌープ硬さは5000kg/mm2で、密
度が2.5であり、水素含有率が25%の硬質炭素膜1
bが、膜厚0.3μmで形成されている。
【0070】珪素と炭素を含有する中間層の薄膜は、図
2に示される薄膜形成装置において、導入ガスにテトラ
メチルシラン(TMS)を用いて作製した。この薄膜の
硬さは、硬質炭素膜を形成する場合と同様に、基板バイ
アスを変化させることによって変化させることができ
る。
【0071】図12に基体への印加バイアスと膜のヌー
プ硬さの関係を示す。この場合、比較的低いバイアスで
ヌープ硬さ3000kg/mm2の膜質が得られる。上
層の硬質炭素膜については、第1の実施例の場合と同じ
要領で作製した。
【0072】次に、硬質炭素膜の膜質は一定にしなが
ら、中間層の膜質だけを変化させた各種キャプスタンを
作製し、中間層の膜質を変化させた場合のテープ駆動力
を評価した。
【0073】即ち、 (f)ヌープ硬さ500kg/mm2の中間層を形成し
た場合 (g)ヌープ硬さ2000kg/mm2の中間層を形成
した場合 について評価した。なお、この中間層の上には、前述の
(a)と同じ硬質炭素膜を形成した。中間層の膜厚は2
5nm、炭素膜の膜厚は0.3μmとした。
【0074】図13にエージング結果を示す。中間層の
硬さが柔らかい(f)の場合、エージング初期に駆動力
の不安定な挙動が観測される。この原因は、中間層が炭
素膜に対して柔らか過ぎるために、ピンチローラーから
受けるせん断力に耐えきれずここから膜が剥離するため
と考えられる。
【0075】一方、(g)の場合、中間層が比較的硬い
ため膜の剥離は発生せず、良好な特性が得られる。
【0076】次に、第1の実施例と同様、図16におい
て示されるBとAの比と駆動力の関係について調べた。
【0077】図14はB/A値と駆動力の関係について
示すが、図9の場合と同様な結果を示す。すなわち、B
/Aが0.8以上では、キャプスタン軸がピンチローラ
ーに接触している部分Bが、キャプスタン軸が直接テー
プに接触している部分Aに比べて大きすぎるので、その
硬質炭素膜の効果が低下しテープ駆動力も低下する。
【0078】次に、中間層の膜質を(g)の場合と同一
にし、硬質炭素膜の膜厚を (h) 0.1μm (i) 0.5μm の膜厚で形成し、これらを比較検討した。
【0079】図15に結果を示す。図9の場合と同様、
炭素膜の膜厚が薄く、表面粗さの方が粗い場合には、粗
さの摩耗により母材が露出する。このため、駆動力が低
下する。
【0080】一方、(i)の膜厚が大きい場合は図9の
場合とは異なり、中間層によって付着性が向上してい
る。
【0081】この結果、(g)と同様の特性が実現でき
る。したがって、表面粗さの最大高さ以上の膜厚で硬質
炭素膜を形成することにより、良好な特性が得られる。
【0082】以上のことから、ヌープ硬さ3000kg
/mm2の硅素含有炭素膜を中間層として用いることに
よって、硬質炭素膜の付着性が向上し、かつ長時間にわ
たって高いテープ駆動力が安定に得ることができる。
【0083】以上述べてきたように、本発明により高い
テープ駆動力を備えたテープ駆動装置が実現できる。
【0084】なお、上記実施例においてはイオン化蒸着
法を用いた硬質炭素膜の構成を掲げているが、膜の形成
方法はいずれの方法によってもよく同様な効果がある。
【0085】また、硬質炭素膜、硅素含有炭素膜の原材
料としては実施例に用いられているものに限るものでは
ない。
【0086】
【発明の効果】以上のように、本発明はピンチローラー
の圧接力を低減しながら長時間安定して磁気テープを駆
動できるテープ駆動装置を提供できるものであり、小
型、軽量、高性能な磁気記録装置を実現できるため工業
的価値は非常に高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例装置におけるキャプスタン軸の
構成図
【図2】同実施例装置における図1のキャプスタン軸へ
の炭素膜の形成装置の構成図
【図3】図2の装置の、基材への印加バイアスと硬質炭
素膜のヌープ硬さとの関係図
【図4】本実施例装置で形成された硬質炭素膜のラマン
分光スペクトル図
【図5】本実施例で用いた硬質炭素膜の電子線回折パタ
ーンの写真
【図6】本実施例で用いた硬質炭素膜の透過電子顕微鏡
観察結果の写真
【図7】同実施例装置のテープ駆動力のエージング特性
【図8】同実施例においてキャプスタン軸の表面粗さを
低減させた場合のエージング特性図
【図9】同実施例装置のキャプスタン軸のテープおよび
ピンチローラーとの接触部分比と駆動力の関係図
【図10】同実施例装置において硬質炭素膜の膜厚を変
化させた場合のエージング特性図
【図11】本発明の他の実施例におけるキャプスタン軸
の構成図
【図12】図2の装置における珪素含有炭素膜のヌープ
硬さと基材への印加バイアスの関係を示す図
【図13】同実施例におけるテープ駆動力の特性図
【図14】同実施例における、キャプスタン軸のテープ
およびピンチローラーとの接触部分比と駆動力の関係図
【図15】同実施例における、中間層の膜厚を変化させ
た場合のテープ駆動力の特性図
【図16】テープ駆動装置の構成図
【符号の説明】
1 キャプスタン軸 1a 硬質炭素膜 1b キャプスタン軸基材 1c 珪素、炭素含有薄膜 2 キャプスタン軸保持部材 3 モーター 4 直流電源 5 イオン 6 イオン源 21 キャプスタン軸 22 ピンチローラー 23 磁気テープ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テープと、回転するキャプスタン軸と、
    ピンチローラーを有し、前記テープを前記ピンチローラ
    ーにより前記キャプスタン軸へ圧接して、前記テープを
    前記キャプスタン軸の回転方向に駆動するテープ駆動装
    置であって、前記キャプスタン軸の最表面にヌープ硬さ
    5000kg/mm2以上、密度3.0以下、水素含有
    率が30%以下である硬質炭素膜が形成されたことを特
    徴とするテープ駆動装置。
  2. 【請求項2】 テープと、回転するキャプスタン軸と、
    ピンチローラーを有し、前記テープを前記ピンチローラ
    ーにより前記キャプスタン軸へ圧接して、前記テープを
    前記キャプスタン軸の回転方向に駆動するテープ駆動装
    置であって、前記キャプスタン軸に少なくとも珪素と炭
    素を含有し、ヌープ硬さ1000kg/mm2以上を有
    する薄膜を形成し、さらにその上層に、ヌープ硬さ50
    00kg/mm2以上、密度3.0以下、水素含有率が
    30%以下である硬質炭素膜が形成されたことを特徴と
    するテープ駆動装置。
  3. 【請求項3】 ピンチローラーにおける、キャプスタン
    軸にテープを介して圧接して回転する部分Aと、テープ
    を介さずにキャプスタン軸と直接圧接して回転する部分
    Bとの比(B/A)が、0.8以下である請求項1叉は
    2記載のテープ駆動装置。
  4. 【請求項4】 キャプスタン軸表面の硬質炭素膜の膜厚
    が0.2μm以上である請求項1叉は2記載のテープ駆
    動装置。
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EP19940710009 EP0651385B1 (en) 1993-10-28 1994-10-26 Method for producing diamond-like carbon film and tape driving apparatus
KR1019940027358A KR100195605B1 (ko) 1993-10-28 1994-10-26 다이아몬드형상의 박막형성방법 및 테이프구동장치

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006036611A (ja) * 2004-07-29 2006-02-09 Sumitomo Electric Ind Ltd 水素含有炭素膜

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