JPH11130590A - 防塵性硬質炭素被膜 - Google Patents

防塵性硬質炭素被膜

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JPH11130590A
JPH11130590A JP9316036A JP31603697A JPH11130590A JP H11130590 A JPH11130590 A JP H11130590A JP 9316036 A JP9316036 A JP 9316036A JP 31603697 A JP31603697 A JP 31603697A JP H11130590 A JPH11130590 A JP H11130590A
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JP
Japan
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hard carbon
film
carbon film
substrate
conductive
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JP9316036A
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English (en)
Inventor
Seiichi Osada
誠一 長田
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材表面に形成した硬質炭素被膜上における
静電気発生を防止することにより、相手材の過度の摩耗
を抑制すると共に、硬質炭素被膜表面へのゴミの付着に
起因する硬質炭素被膜自身の異常摩耗を抑制すること。 【解決手段】 基材表面に直接又は中間層を介して所定
の硬度を有する硬質炭素被膜を形成すると共に、その表
面にさらに、比抵抗が1x107Ωcm 以下、好ましく
は1x104Ωcm 以下である導電性被膜、特に、水素
を27atm%以下及び/又は窒素等の第三元素を25
atm%以下含有する導電性硬質炭素被膜を形成するよ
うにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマCVD
法、スパッタリング法等により基材上に形成されるアモ
ルファス状の防塵性硬質炭素被膜に関し、特に、工具、
自動車部品、磁気ヘッド、磁気ディスク、磁気テープ、
電気接点、レンズなどの耐摩耗部品、摺動部品、光学部
品等のコーティング膜に用いられる防塵性に優れた防塵
性硬質炭素被膜に関する。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素被膜は、X線回折ではっきりと
した結晶構造を示さないアモルファス状の炭素膜、ある
いは膜中に存在する炭素の未結合手に水素を結合させた
水素化炭素膜であり、a−C:H、i−C、DLC(ダ
イヤモンドライクカーボン)とも呼ばれている。硬質炭
素被膜は、機械的強度、熱伝導性、電気絶縁性、赤外線
透過性、耐薬品性に優れる等、物性的にはダイヤモンド
に近いにもかかわらず、成膜条件がダイヤモンド薄膜に
比べて簡単であることから、ダイヤモンドの特性を種々
のデバイスに応用できるコーティング膜としての期待が
高まっているものである。
【0003】特に、硬質炭素被膜のビッカース硬度Hv
は、4000程度まで硬くすることができ、ダイヤモン
ド薄膜よりは低いが他の硬質薄膜に比べて高いので、耐
摩耗性に優れる一方、耐摩耗部品に使用した場合に、過
度に相手材を傷めないという利点がある。
【0004】また、ダイヤモンド薄膜が微結晶粒が集積
した構造のために5〜10μmの表面粗さであるのに対
し、硬質炭素被膜はアモルファス状であるため、成膜後
の表面粗さは1nm以下であり、表面平滑性に優れ、摩
擦係数が低いという特徴を有する。そのため、硬質炭素
被膜は、耐摩耗性や摺動特性を重視する部品表面へのコ
ーティング膜として特に優れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、硬質炭
素被膜による相手材の過度の摩耗を抑制するために、硬
質炭素被膜の硬度を相手材の硬度に併せて適度な硬度ま
で下げた場合、ゴミの多い環境下で両者を摺動させる
と、摺動時に静電気が発生して硬質炭素被膜表面にゴミ
が付着しやすくなり、その摺動面に付着したゴミによっ
て、硬質炭素被膜自体の摩耗量が異常に高くなるという
問題があった。
【0006】本発明が解決しようとする課題は、基材表
面に形成した硬質炭素被膜上における静電気発生を防止
することにより、表面へのゴミの付着を低減し、これに
より、ゴミの多い環境下で使用された場合であっても、
硬質炭素被膜の異常摩耗を低減することが可能な防塵性
硬質炭素被膜を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明に係る防塵性硬質炭素被膜は、基材表面に直
接又は中間層を介して形成した硬質炭素被膜と、該硬質
炭素被膜の表面に形成した1x107Ωcm 以下の比抵
抗を有する導電性被膜からなることを要旨とするもので
ある。
【0008】上記構成を有する防塵性硬質炭素被膜によ
れば、基材表面に形成された硬質炭素被膜の上に、更に
電気伝導性を有する導電性被膜が形成される。このよう
な防塵性硬質炭素被膜を形成した基材と相手材とを摺動
させた場合には、部材間の摺動により硬質炭素被膜上に
蓄積された電荷が、硬質炭素被膜の上に形成された導電
性被膜を通って硬質炭素被膜上から除去され、静電気の
発生が防止される。これにより、ゴミの多い環境下にお
いて摺動させても、被膜表面へのゴミの付着が低減され
るので、安定した低摩耗量を維持することが可能とな
る。
【0009】ここで、本発明に係る防塵性硬質炭素被膜
を形成するための基材としては、鋼、銅、アルミニウ
ム、チタン合金、超硬合金等の各種の金属材料、炭化珪
素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ガラ
ス、アルミナ、石英、AlTiC(Al23+TiC)
等のセラミックス材料、Si、Ge、GaAs等の半導
体材料、ZnS、ZnSe等の光学材料、ポリエチレン
テレフタレート(PET)等のプラスチック材料などが
一例として挙げられるが、特にこれらの材料に限定され
るものではなく、あらゆる材料に適用できる。
【0010】また、硬質炭素被膜は、多くの基材に対す
る界面結合力が低いために、高い密着力が期待できない
場合もあるが、そのような場合には、基材と硬質炭素被
膜との間に、硬質炭素被膜との界面結合力の高いSi、
Ge等の中間層を介在させると良い。
【0011】基材上に形成する硬質炭素被膜の硬度は、
相手材の硬度、用途、要求される特性等を考慮して、適
宜最適な値に調整すればよい。具体的には、プラズマC
VD法による硬質炭素被膜の場合、水素や炭素及び水素
以外の第三元素含有量が少なくなるほど硬度が高くなる
傾向があるので、相手材の硬度等に応じて、硬質炭素被
膜中の炭素以外の元素の含有量を増減すればよい。ま
た、硬質炭素被膜の厚さも、基材の用途、要求される特
性等に応じて最適な膜厚を選択すればよい。
【0012】硬質炭素被膜の表面に形成する導電性被膜
は、比抵抗が1x107Ω cm以下である材料からなる
ことを要する。比抵抗が1x107Ωcm より大きい場
合には、摺動面に蓄積される電荷を効率よく除去できな
いからである。導電性被膜の比抵抗は、摺動面に発生す
る静電気を取り除くという点では、小さい程よく、好ま
しくは、1x104Ωcm 以下である。また、導電性被
膜の厚さは、被膜を形成する基材の用途、要求特性、耐
摩耗性等を考慮して、適宜最適な膜厚を選択すればよ
い。
【0013】また、硬質炭素被膜の表面に形成する導電
性被膜の材質は、比抵抗が1x107Ωcm以下であれ
ば足り、特に限定されるのもではない。例えば、Fe、
Cr、Ni、Ti、Al、Cu等の金属及びこれらの合
金、TiC、ZrC、TiN、ZrN、TiB2、Zr
2等の電気伝導性を有する炭化物、窒化物、ホウ化
物、SnO2、In23、CdSnO4、ZnO等の電気
伝導性を有する酸化物などが一例として挙げられる。
【0014】しかしながら、前記導電性被膜は、水素含
有量が27atm%以下である導電性硬質炭素被膜であ
ることが特に望ましい。硬質炭素被膜は、膜中に存在す
る未結合手を有する炭素に結合させる水素量が少なくな
るほど、比抵抗が小さくなるという性質を有し、水素含
有量を27atm%以下にすれば、硬質炭素被膜の比抵
抗を1x107Ωcm 以下とすることができるからであ
る。
【0015】しかも、基板上に形成する硬質炭素被膜上
に異種材料からなる薄膜を形成する場合に比べて密着力
が高く、信頼性の高い被膜が得られると共に、同一の製
造装置を用いて基板表面に形成する所定の硬度を有する
硬質炭素被膜と、その上に形成する電気伝導性を有する
硬質炭素被膜の双方を成膜できるので、工程を簡略化で
き、低コスト化が可能だからである。
【0016】さらに、硬質炭素被膜は、水素量の増大に
伴い硬度は低下するが比抵抗は増大する性質を有するた
め、基材上に単一組成の硬質炭素被膜を形成する場合に
硬度と比抵抗を独立に制御するのは困難である。しかし
ながら、基板上に硬質炭素被膜を形成し、その上に更に
導電性硬質炭素被膜を形成するようにすれば、被膜全体
の硬度は、基材上に形成する硬質炭素被膜によって主に
決定される一方、その硬質炭素被膜の上に形成される導
電性硬質炭素被膜によって、被膜表面の比抵抗が決定さ
れることになるので、被膜の硬度と比抵抗とを独立に制
御することが容易となる。これにより、相手材の過度の
摩耗を抑制しつつ、摺動面に発生する静電気を効率よく
除去することが可能となる。
【0017】また、前記導電性硬質炭素被膜は、炭素及
び水素以外の第三元素を含有するものであってもよい。
硬質炭素被膜は、水素及び炭素以外の第三元素の含有量
が多くなるほど比抵抗が小さくなる性質を有し、第三元
素含有量を制御することにより、硬質炭素被膜の比抵抗
を容易に調整できるからである。なお、第三元素の含有
量は、25atm%以下であることを要する。第三元素
含有量が25atm%を越える場合には、導電性硬質炭
素被膜の製造が困難となるからである。第三元素含有量
は、好ましくは、10atm%以下である。
【0018】導電性付与を目的として硬質炭素被膜に含
有させる第三元素は、硬質炭素被膜中の未結合手に結合
させることが可能な元素であれば特に限定はないが、
B、Al等の周期律表第3族元素や、P、N等の周期律
表第5族元素が好ましい。硬質炭素被膜にこれらの元素
を添加すると、電気伝導性が著しく向上するからであ
る。
【0019】特に、導電性硬質炭素被膜に添加する第三
元素は、窒素であることが望ましい。窒素を含む原料と
しては、窒素ガス、アンモニア等があり、これらは安価
で、毒性も少ないからである。
【0020】本発明に係る硬質炭素被膜の製造方法とし
ては、炭化水素ガスをプラズマで分解して成膜するプラ
ズマCVD法、黒鉛のスパッタリングとイオン加速を組
み合わせたデュアルイオンビームスパッタ法、黒鉛を電
子ビームで蒸発させ、イオン化して加速するイオンプレ
ーティング法等、各種の製造方法を用いることができ
る。
【0021】基板上に成膜した所定の硬度を有する硬質
炭素被膜の上に形成する導電性被膜の成膜方法として
は、導電性被膜の材質に応じて、蒸着法、スパッタリン
グ法、イオンプレーティング法等、各種の方法で成膜す
ることができる。また、導電性被膜として、水素及び窒
素等の第三元素の含有量を制御した導電性硬質炭素被膜
を成膜する場合には、基板上に所定の硬度を有する硬質
炭素被膜を形成した後、同一装置を用い、電力、原料ガ
ス流量、基板温度等の成膜条件を変更して成膜すればよ
い。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施の形態に
ついて詳細に説明する。図1は、本発明に係る硬質炭素
被膜を製造するためのプラズマCVD(PE−CVD)
装置の概略構成図を示したものである。図1において、
プラズマCVD装置1は、反応容器2を備えている。反
応容器2は、その内部を所定の真空度に保持できるよ
う、排気系統(図示せず)に接続されている。
【0023】反応容器2の内部には、電極3が設けられ
ている。電極3は、マッチングボックス4を介して高周
波電源5に接続されており、所定の高周波を電極3に印
加できるようになっている。また、電極3の内部は、空
洞になっており、冷却水を循環できるようになってい
る。電極3の冷却は、高周波を印加した際に発生する渦
電流による電極の溶損を防止するために行われるもので
あると同時に、基板温度を所望の温度に保持するために
行われるものでもある。さらに、電極3の上面には、硬
質炭素被膜を形成するための基板6が載置できるように
なっている。
【0024】反応容器2は、電磁弁7を介してマスフロ
ーコントロール8の一端に接続され、マスフローコント
ロール8の他端は、原料ガス供給源(図示せず)に接続
されている。原料ガス供給源は、硬質炭素被膜の原料と
なる物質が気体である場合は、ガスボンベ、液体又は固
体からなるときは、気化器及びキャリアガス供給源等か
らなっている。
【0025】次に、上記の製造装置を用いて、硬質炭素
被膜を製造する工程について説明する。まず、硬質炭素
被膜を形成するための基板を用意し、基板表面をラッピ
ングして、表面粗さRaを所定の値、例えば10nm、
以下とする。基板が、硬質炭素被膜との界面結合力が大
きい材質からなる場合、例えばSiウェハー等である場
合は、そのまま次に述べる工程に従って硬質炭素被膜の
成膜を行えばよい。
【0026】しかし、基板が、硬質炭素被膜との界面結
合力が小さい材質からなる場合、例えば、アルミナ等で
ある場合は、基板表面に硬質炭素被膜との界面結合力の
大きい材質、例えば、Si、Ge等からなる中間層を形
成しておくことが望ましい。中間層の形成方法として
は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等、
種々の方法があり、中間層の膜厚は、用途にもよるが、
通常は、0.2μm以下の厚さとなるように形成する。
【0027】次いで、基板6を反応容器2内に備えられ
た電極3上に載置し、反応容器2を密閉した後、反応容
器2内が所定の真空度に達するまで、排気手段(図示せ
ず)により排気する。反応容器2内が所定の真空度に達
したところで、電磁弁7を開き、原料ガス供給源(図示
せず)から炭化水素からなる原料ガス、並びに必要に応
じて水素ガスや炭素及び水素以外の第三元素を含む原料
ガスを反応容器2内に導入する。原料ガスの供給量は、
マスフローコントロール8により制御され、原料ガスの
導入速度と排気系統による排気速度のバランスをとるこ
とにより、反応容器2内のガス圧が所定の値に維持され
る。
【0028】反応容器2内に原料ガスが導入されたとこ
ろで、電極3を冷却しながら、マッチングボックス4を
介して高周波電源5により、電極3に高周波を印加す
る。電極3に高周波を印加すると、反応容器2内に導入
された原料ガス内に放電が起こり、投入された電気エネ
ルギーにより原料ガスが分解され、C+、CH+、C
2 +、CH3 + 等の炭素を含むイオン、H+、必要に応じ
て添加した第三元素のイオン、及び電子とに電離して、
プラズマ状態となる。
【0029】高周波を印加した状態では、プラズマ中か
らは、最初に電子だけがイオンとの質量差に起因して電
極に到達する。そのため、電極には電子が蓄積され、こ
れに応じて電極は負にバイアスされる。その結果、プラ
ズマ中の炭素を含む陽イオン等が負バイアスの加速を受
けて基板に衝突し、基板上に硬質炭素被膜が形成されて
いく。
【0030】なお、硬質炭素厚被膜の炭素源として用い
る炭化水素としては、気体又は気化させることが容易な
液体もしくは固体状の物質であれば足り、例えば、メタ
ン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチ
レン等の脂肪族炭化水素、シクロプロパン、シクロブタ
ン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン
等の芳香族炭化水素などが一例として挙げられる。特
に、炭素源としてベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素を用いると、成膜速度を高速化することが
できるという利点がある。
【0031】次に、基板上に所定の硬度を有する硬質炭
素被膜を成膜した後、その表面に導電性硬質炭素被膜を
成膜する方法について説明する。プラズマCVD法によ
る硬質炭素被膜は、アモルファス状の緻密な炭素と水素
の混合物であり、水素量を減少させると、硬質炭素被膜
の比抵抗が低下するという性質がある。
【0032】ここで、硬質炭素被膜の成長は、膜表面に
存在する未結合手を有する炭素にプラズマ中の炭素イオ
ンが結合することにより進行するが、この未結合手に水
素が付くことで未結合手の数を減らしてしまうと、その
部分ではもはや炭素ー炭素の結合は発生せず、水素が取
り込まれたままとなる。
【0033】プラズマCVD法は、同時に発生するプラ
ズマ中のH+ が、膜表面の水素あるいは炭素と反応し、
2あるいはCH4などのガスとして除去しつつ、成膜が
進行していくものである。
【0034】従って、所定の成膜条件下において基材上
に所定の硬度を有する硬質炭素被膜を成膜した後、その
上に導電性硬質炭素被膜を成膜する場合には、成膜条件
を変更し、膜表面とプラズマ中のH+ との反応を促進さ
せて膜表面の水素量が減るような条件下で成膜を行えば
よい。
【0035】成膜手段として図1に示すプラズマCVD
法を用いる場合には、成膜条件の内、例えば、電極3に
投入する高周波電力の増加、反応容器2内に導入する原
料ガスの流量の減少、基板6温度の上昇、成膜放電中に
高周波放電を一時的に停止するパルス放電を行う場合に
おける放電のOFF時間の増加は、膜中の水素含有量を
低下させるように作用する。
【0036】電極3に投入する高周波電力の増加や単位
時間当たりの原料ガス流量の低下により膜中の水素含有
量が低下するのは、単位分子当たりの投入エネルギーが
増加することにより炭化水素分子がバラバラの状態に分
解され、プラズマ中のH+ の発生量が増加し、これによ
り膜表面とプラズマ中のH+ とのエッチング反応が促進
されるからである。
【0037】また、基板温度の上昇により膜中の水素含
有量が低下するのは、膜表面の運動エネルギーが増加す
ることで、プラズマ中のH+ との反応効率が改善され、
少ないH+ 量でもエッチング反応が進むためである。
【0038】さらに、電極に高周波を印加したり停止し
たりするようにパルス放電を行うと膜中の水素含有量が
減少するのは、連続放電では、エッチング反応と堆積反
応とのバランスにより成膜が進行していくのに対し、パ
ルス放電では、高周波停止状態のときに、堆積反応に寄
与する炭素あるいは炭素化合分子の寿命時間より、エッ
チング反応に寄与するH+ の寿命時間の方が長いことか
ら、堆積反応が停止してもなおエッチング反応が行われ
るからである。
【0039】膜中の第三元素含有量を変化させる場合も
同様であり、窒素等の第三元素を含む原料ガスを炭素源
となる原料ガスと共に反応容器内に導入し、投入電力、
ガス流量、基板温度、パルス放電のOFF時間等の成膜
条件を適宜選択することにより、被膜中の第三元素含有
量を変えることができ、これにより比抵抗の異なる硬質
炭素被膜を容易に形成することが可能となる。
【0040】(実施例1)図1に示すプラズマCVD装
置を用いて、防塵性硬質炭素被膜の成膜を行った。基板
は、直径150mm、厚さ0.8mmのSiウェハーに
5μmのAl23膜をスパッタリングにより成膜したも
のを用い、その表面は、表面粗さRaが1nm以下とな
るようにラップ仕上げした。これを反応容器2内の電極
3上に載置し、反応容器2内を1x10-5Torrに排
気後、反応容器2内に炭素源としてキシレンを100S
CCMの速度で導入し、基板温度27℃、周波数13.
56MHz、投入電力300Wの条件で、Si基板上に
ビッカース硬度Hv800、厚さ0.3μmの硬質炭素
被膜を形成した。
【0041】次いで、他の成膜条件を同一としたまま、
電極に投入する高周波電力及びキシレン流量を適宜制御
することにより、前記硬質炭素被膜の上に、水素含有量
の異なる厚さ5.5μmの導電性硬質炭素被膜を形成し
た。最表面に形成された導電性硬質炭素被膜の水素含有
量をHFS(水素前方向散乱)法により、またその比抵
抗を、四探針法により測定した。結果を図2に示す。
【0042】反応容器2内に導入するキシレン流量の減
少及び電極に投入する高周波電力の増加に伴い、最表面
に形成された導電性硬質炭素被膜に含まれる水素含有量
及び導電性硬質炭素被膜の比抵抗は低下した。水素含有
量が27atm%以下となった場合に、比抵抗は1x1
7Ωcm 以下となり、水素含有量が25atm%で
は、比抵抗は5x105Ωcm まで低下した。
【0043】(実施例2)図1に示すプラズマCVD装
置を用いて、防塵性硬質炭素被膜の成膜を行った。基板
は、直径150mm、厚さ0.8mmのSiウェハーに
5μmのAl23膜をスパッタリングにより成膜したも
のを用い、その表面は、表面粗さRaが1nm以下とな
るようにラップ仕上げした。これを反応容器2内の電極
3上に載置し、反応容器2内を1x10-5Torrに排
気後、反応容器2内に炭素源としてキシレンを100S
CCMの速度で導入し、基板温度27℃、周波数13.
56MHz、投入電力300Wの条件で、Si基板上に
ビッカース硬度Hv800、厚さ0.3μmの硬質炭素
被膜を形成した。
【0044】次いで、他の成膜条件を同一とし、キシレ
ン流量を20SCCM及び投入電力を600Wの一定値
としたまま、N2 ガス流量を適宜制御することにより、
前記硬質炭素被膜の上に、窒素含有量の異なる厚さ5.
5μmの導電性硬質炭素被膜を形成した。最表面に形成
された導電性硬質炭素被膜の水素含有量及び比抵抗を、
実施例1と同様の手順により測定した。また、窒素含有
量をRBS(ラザフォード後方散乱)法により測定し
た。結果を図3に示す。
【0045】反応容器2内に導入する窒素ガス流量の増
加に伴い、最表面に形成された導電性硬質炭素被膜に含
まれる窒素含有量は増加し、比抵抗は低下した。水素含
有量25atm%、窒素含有量0atm%の組成では、
比抵抗は5x105Ωcm であるのに対し、水素含有量
25atm%、窒素含有量0.1atm%の組成では、
比抵抗は3x105Ωcm となり、さらに水素含有量2
5atm%、窒素含有量10atm%の組成では、比抵
抗は、8x103Ωcm まで低下した。
【0046】(実施例3)実施例1と同様の手順に従
い、Al23膜付きSi基板上にビッカース硬度Hv8
00、厚さ0.3μmの硬質炭素被膜を形成した。次い
で、反応容器2内に導入するキシレン流量を20SCC
M、窒素ガス流量を160SCCM、投入電力を600
Wとして、前記硬質炭素被膜の上に更に厚さ5.5μm
の導電性硬質炭素被膜を形成した。得られた被膜のビッ
カース硬度Hvは1500、比抵抗は8x103Ωcm
であった。
【0047】(比較例1)実施例1と同様の手順に従
い、Al23膜付きSi基板上にビッカース硬度Hv8
00、厚さ0.3μmの硬質炭素被膜を形成した。次い
で、反応容器2内に導入するキシレン流量を50SCC
M、投入電力を600Wとし、窒素ガスを流すことな
く、前記硬質炭素被膜の上に更に厚さ5.5μmの硬質
炭素被膜を形成した。得られた被膜のビッカース硬度H
vは1500、比抵抗は、> 108Ωcmであった。
【0048】実施例3及び比較例1で得られた硬質炭素
被膜について、摩耗試験を行った。摩耗試験は、あらか
じめ硬質炭素被膜を楕円(30μmx50μm)となる
ようにフォトレジストでパターニングして、RIEによ
り不要部分を除去することにより島状硬質炭素被膜を形
成し、この島状硬質炭素被膜をラップディスクに線速度
を一定にして走行させたときの硬質炭素被膜の摩耗速度
を測定することにより行った。また、測定環境は、クラ
ス10からクラス1000(「クラスX」とは、1ft
3 中に存在する0.5μm以上のゴミの数がX個以下の
環境であることを意味する)の範囲で行った。結果を図
4に示す。
【0049】基板上に形成した硬質炭素被膜の上に、さ
らに導電性硬質炭素被膜を形成した実施例3では、クラ
ス10の条件下では、平均摩耗速度は250μm3/m
in、クラス1000の条件下では、平均摩耗速度は4
00μm3/min となり、測定環境中に存在するゴミ
の量が多くなるほど、摩耗速度は増大した。
【0050】一方、基板上に形成した硬質炭素被膜の上
に、さらに電気伝導性を有しない硬質炭素被膜を形成し
た比較例1でも、同様に、測定環境中に存在するゴミの
量が多くなるほど摩耗速度が増大する傾向が認められ
た。しかしながら、クラス10の条件下では、平均摩耗
速度は350μm3/min 、クラス1000の条件下
では、900μm3/min となり、実施例3と比べて
平均摩耗速度は著しく増大した。
【0051】図5は、実施例3及び比較例1で作成した
硬質炭素被膜について、クラス100の条件下において
測定した摩耗速度の平均値とその分布を示したものであ
る。実施例3では、摩耗速度の平均値は300μm3
min であり、測定されたデータは、200μm3/m
inから500μm3/minの間に分布していた。一
方、比較例1では、摩耗速度の平均値は600μm3
min であり、測定されたデータは、250μm3/m
inから1100μm3/minの間に分布していた。
【0052】以上の結果から、基板上に形成した硬質炭
素被膜の上に、導電性硬質炭素被膜を形成すると、ゴミ
の多い環境下において摺動させても、ゴミに起因する硬
質炭素被膜の異常摩耗が抑制され、平均摩耗量が低下す
ると共に、安定した低摩耗量を維持できることがわかっ
た。
【0053】なお、本発明は、上記実施例に何ら限定さ
れるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種
々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、最表
面に形成する導電性硬質炭素被膜の比抵抗を低下させる
ために、水素含有量及び窒素含有量を制御しているが、
水素及び窒素以外の第三元素を添加し、第三元素含有量
を制御することにより、比抵抗を低下させてもよい。
【0054】また、上記実施例では、硬質炭素被膜の上
に形成する導電性被膜として、電気伝導性を有する硬質
炭素被膜を採用しているが、導電性被膜として耐摩耗性
を有する金属、合金、導電性炭化物、窒化物等を用いて
も良く、上記実施例に限定されるものではない。
【0055】
【発明の効果】本発明は、基材表面に形成された硬質炭
素被膜の上に、さらに導電性被膜を形成することによ
り、基材と相手材を摺動させた際に硬質炭素被膜表面に
蓄積される静電気を効果的に除去するようにしたので、
ゴミの多い環境下において摺動させても、摺動面へのゴ
ミの付着が低減され、安定した低摩耗量を維持できると
いう効果がある。
【0056】また、表面に形成する導電性被膜として、
水素及び窒素等の第三元素の含有量を制御することによ
り得られる導電性硬質炭素被膜を用いれば、被膜全体の
硬度と被膜最表面の比抵抗とを独立に制御することが可
能となるので、相手材の過度の摩耗を抑制しつつ、摺動
面に発生する静電気を効率よく除去することが可能とな
るという効果がある。
【0057】さらに、導電性被膜として導電性硬質炭素
被膜を用いれば、基材上に形成する硬質炭素被膜と導電
性被膜とを同一の製造工程で製造可能となるので、工程
の簡略化と、低コスト化を図ることが可能となると共
に、信頼性の高い防塵性硬質炭素被膜が得られるという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬質炭素被膜を製造するためのプラズマCVD
装置の概略構成図である。
【図2】硬質炭素被膜中の水素含有量と比抵抗との関係
を示す図である。
【図3】硬質炭素被膜中の窒素含有量と比抵抗との関係
を示す図である。
【図4】測定環境中のゴミの量と平均摩耗速度との関係
を示す図である。
【図5】被膜の比抵抗と摩耗速度の平均値及びその分布
との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 プラズマCVD装置 2 反応容器 3 電極 4 マッチングボックス 5 高周波電源 6 基板 7 電磁弁 8 マスフローコントロール

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面に直接又は中間層を介して形成
    した硬質炭素被膜と、該硬質炭素被膜の表面に形成した
    1x107Ωcm 以下の比抵抗を有する導電性被膜から
    なることを特徴とする防塵性硬質炭素被膜。
  2. 【請求項2】 前記導電性被膜は、水素含有量が27a
    tm%以下である導電性硬質炭素被膜であることを特徴
    とする請求項1に記載される防塵性硬質炭素被膜。
  3. 【請求項3】 前記導電性硬質炭素被膜は、炭素及び水
    素以外の第三元素の含有量が25atm%以下であるこ
    とを特徴とする請求項2に記載される防塵性硬質炭素被
    膜。
  4. 【請求項4】 前記第三元素が、窒素であることを特徴
    とする請求項3に記載される防塵性硬質炭素被膜。
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