JPH0754625Y2 - アキシヤルピストンポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、油圧回路に用いられるアキシャルピストンポ
ンプに関する。

［従来の技術］ アキシャルピストンポンプの中でも固定斜板型式のポン
プ（以下、単にポンプという）は、各種産業機械や産業
車両などに広く使用されており、第４図はとくに斜板傾
角の調節機構を装備した可変容量形のポンプを例示した
ものである。

同ポンプは、ケーシング１及びその開放端を閉止するエ
ンドカバー２によって密封状の動作空間３が形成され、
この動作空間３内に挿入された駆動軸４は、これら両部
材１、２に軸受５を介して支承されている。駆動軸４に
結合され動作空間３内において駆動軸４と一体的に回転
するシリンダブロック６には、その軸心の周りに軸心と
ほぼ平行な複数のボア７が形成され、同ボア７内にはシ
ュー８を介して斜板９に係留されたピストン10が往復動
可能に挿嵌されている。

また、エンドカバー２に固定されて各ボア７の開口端面
を封止する弁板11には、第５図に示すように、ボア７の
開口7aの運動軌跡を符合して対向円弧状をなす吸入ポー
ト12a及び吐出ポート12bが穿設され、同ポート12a、12b
はこれと同一形状に形成されたエンドカバー２の吸入及
び吐出口13a、13bの端縁と整合すべく構成されている。
したがって、駆動軸４と共動するシリンダブロック６の
回転に伴い、斜板９に係留されて直動するピストン10が
ボア７の密閉空間容積を拡大する傾向にあるとき、同ボ
ア７は吸入ポート12aと対応して作動油を吸入し、逆に
ピストン10がボア７の密閉空間容積を縮小する傾向にあ
るとき、同ボア７は吐出ポート12bと対応して作動油を
吐出するようになされている。なお、図示しない支軸に
枢支された斜板９は付勢部材14により常に傾角を増大す
る向きに付勢されており、これに対抗する制御体15を流
体圧によって進退動せしめることにより、斜板傾角つま
りポンプ１回転当りの理論吐出量が変更調節可能に構成
されている。

［考案が解決しようとする課題］ 上述したポンプにおいて、シリンダブロック６に配設さ
れた各ボア７は、作動油の円滑な出入を図るため、その
開口7a部分がピストン10と嵌合するボア７よりも小さな
断面積をもって両ポート12a、12bと整合する長孔状に形
成され、ボア７は通常円錐面によって該開口7aと接続さ
れている。ところが、このようにピストン10との間に高
い嵌合精度を要求されるボア７が実質的な行止り孔に形
成されていることは、その加工性を極端に悪化させ、研
削、ホーニングのほかいずれの加工手段による場合も、
ボア７の奥部に至るほど真円度、表面粗さ等の精度確保
が著しく困難となるため、これが油漏れやピストン10と
の焼付などを誘発してポンプの劣化を早めるといった不
具合がある。

本考案は、各ボアと、吸入及び吐出ポートとの相対的な
接続構造を改変することにより、ボアの加工精度を飛躍
的に向上させることを解決すべき技術課題とするもので
ある。

［課題を解決するための手段］ 上記課題解決のため、本考案の各ボアはピストンと嵌合
する単一内径の貫孔として形成され、弁板の封止面側に
は、該ボア内径と同等の幅員をもって対向円弧状の吸入
及び吐出ポートをそれぞれ包絡する斜状座繰面が形成さ
れた新規な構成を採用している。

本考案の好適な形態として、シリンダブロックの回転方
向始端側に位置する斜状座繰面の上縁に、三角形状の切
欠を刻設してボアとのより円滑な連通を促すようにして
もよく、また、斜状座繰面を含む吐出ポートを適宜複数
個に分割して、吐出脈動の低減を図るようにすることも
できる。

［作用］ このようにピストンと嵌合する単一内径の貫孔に変身し
たボアは、切削及び研削用工具の自由な貫通往復動を許
容するため、寸法精度、表面粗さ等の向上に加えてボア
長手方向の均質性を格段と改善することができる。

ただ、本考案ではボアとの連接上、弁板の封止面側に対
向円弧状のポートを包絡する斜状座繰面の形成が必要と
なるが、これも単純な弁板の露出表面加工となるので極
めて簡易に削成を行うことができる。

［実施例］ 以下、図に基づいて本考案の実施例を具体的に説明す
る。

第１図は、第４図に例示したアキシャルピストンポンプ
構造のうち、エンドカバー２に固着された弁板110と、
該弁板110によってボア70の開口端面を封止されるシリ
ンダブロック60部分のみを示しており、第２図は弁板11
0の封止面側から視た吸入ポート12a及び吐出ポート12b
を示している。

図から明らかなように本実施例のボア70は、円錐面で接
続された従来のような長孔状開口7aを有せず、シリンダ
ブロック60の摺接端面にピストン10との嵌合内径ｄが開
口する単一の貫孔として形成されている。一方、弁板11
0には第５図に示されたそれと同様、ボア開口の運動軌
跡（回転半径）と符号して対向円弧状をなす吸入ポート
12a及び吐出ポート12bが穿設され、さらに該弁板110の
封止面側には、上記ボア内径ｄと同等の幅員Ｈをもって
これら両ポート12a、12bを包絡する斜状座繰面20a、20b
が形成されている。そしてシリンダブロック60の回転方
向（図示矢印）始端側に位置する該斜状座繰面20a、20b
の上縁には、上記ボア70開口との連通をより円滑ならし
める三角形状の切欠21が刻設されている。

このように高精度の要求されるボア70形状が単一径の貫
孔に変身したことにより、切削、研削、ホーニング加工
等に使用される各種工具類は、ボア70内の自由な貫通往
復動を許容されるため、作業性は勿論、寸法精度、表面
粗さ並びにこれら品質要素の長手方向における均質性を
飛躍的に向上させることができる。

第３図は、吐出ポート12b及びこれを包絡する斜状座繰
面20bをそれぞれ３個に分割した他の実施例を示してお
り、このような吐出行程の不規則化によって吐出脈動の
有効な低減を期待することができる。

なお、以上は弁板110に斜状座繰面20a、20bを形成した
構成について説明したが、例えば従来のシリンダブロッ
ク６をピストン10と嵌合するボア内径末端部分（円錐面
との接続縁）で分断し、分断した２個の部材をそれぞれ
加工後に結合して、従来の弁板11と摺接させるように構
成することも可能であり、部品点数の増加という不利益
要件を除けば、かかる形態によってもボア精度の向上効
果は享受することができる。

［考案の効果］ 以上、詳述したように本考案は、各ボアをピストンと嵌
合する単一内径の貫孔として形成し、弁板の封止面側に
はボア内径と同等の幅員をもって対向円弧状の吸入及び
吐出ポートをそれぞれ包絡する斜状座繰面を形成したも
のであるから、ボアの仕上加工が頗る容易となり、ボア
の全域にわたって高い精度と均質性を確保しうるので、
油漏れや焼付等の発生を有効に防止することができる。
しかも、上記斜状座繰面の形成により実質的にポート容
積が拡大されることは、吸入及び吐出抵抗の減少を伴っ
て動力の低減にも少なからず寄与することができる。な
お、本考案によって追加が必要となる斜状座繰面加工
も、それ自体が単純な弁板の露出表面加工にとどまるの
で、加工上の負担は極めて軽微である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例に係るアキシャルピストンポン
プを示す要部断面図、第２図は同弁板のみを示す側面
図、第３図は同弁板の他の実施例を示す側面図、第４図
は従来のアキシャルピストンポンプの全容を示す断面
図、第５図は同ポンプの弁板とボアとの関係を示すＡ−
Ａ線矢視図である。 ２……エンドカバー、12a……吸入ポート 12b……吐出ポート 20a、20b……斜状座繰面 60……シリンダブロック 70……ボア、110……弁板

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】駆動軸と共に回転するシリンダブロックの
   軸心の周りに該軸心とほぼ平行な複数のボアを有し、各
   ボアにはシューを介して斜板と係留するピストンが挿嵌
   されるとともに、これらボアの開口端面を封止する弁板
   には、ボア開口の運動軌跡と符合して対向円弧状をなす
   吸入及び吐出ポートが穿設され、該両ポートはこれと同
   一形状に形成された吸入及び吐出口端と整合すべく構成
   されたアキシャルピストンポンプにおいて、上記各ボア
   はピストンと嵌合する単一内径の貫孔として形成され、
   上記弁板の封止面側には該ボア内径と同等の幅員をもっ
   て上記各ポートを包絡する斜状座繰面が形成されている
   ことを特徴とするアキシャルピストンポンプ。