JPH0752986Y2 - 車両のダンパ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、車両用エンジンのクランク軸などに取り付
けられて、当該軸の捩じり振動を防止するダンパ装置に
関する。

〔従来の技術〕

車両用エンジンでは通常使用回転域において捩じり振動
の共振が避けられない。共振時の捩じり振幅が大きくな
るとフライホイール並びにクランクプーリボルトのゆる
み、歯車類の異常摩耗、ひいてはクランク軸の疲労破損
を引き起こしたり、シリンダブロック、クランクプーリ
からの放射音や歯車騒音の原因となる。このクランク軸
の捩じり振動を吸収するものとして、当該クランク軸と
一体的に回転するダンパ装置が取り付けられる。

車両用エンジンに取り付けられるダンパ装置には、慣性
リングをゴムなどの弾性体を介して軸系に付加して、振
動エネルギを熱として放散させる熱放散形ダンパが用い
られている。

従来のこの種のダンパ装置では、弾性体の熱による劣化
を防止すべく、放熱性を向上させるために、慣性リング
の軸方向面に適宜数の薄肉の放熱用フィンを取り付けた
ものや、慣性リングの軸方向面に慣性リングの半径方向
に溝部を形成して熱放散を行なうようにしたものがあ
る。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、上述した放熱用フィンを取り付けたもの
では、慣性リングの軸方向長さ（厚さ）が放熱用フィン
の先端面までとなるとともに、フィン以外の部分が広範
囲にわたるから、フィン以外の部分は慣性質量に寄与す
ることがなく、十分な大きさの慣性質量が得られず、ダ
ンパ装置の機能が損なわれるおそれがある。また、この
場合の熱の放散は、フィンに沿って慣性リングの内周部
から外周部に向けて空気を流すことによって行なわれる
が、熱の放散が行なわれる部分は主にフィンの壁面にお
いてであり、フィン以外の部分での熱放散が少ないため
放熱性の改善が要求されている。

また、上記溝部を形成したものでは該溝部の幅員が一定
としてあるが、慣性リングの内周部における周速よりも
外周部における周速の方が大きくなるため、外周部では
溝内の空気の交換が行なわれにくくなり、十分な放熱性
が得られないおそれがある。

そこで、この考案の目的は、慣性質量を極力減じること
なく、効率よく熱放散できるようにして上記ゴムなどの
弾性体の熱劣化を極力防止することができる車両のダン
パ装置を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的のため、この考案に係るダンパ装置は、回転
軸に弾性体を介して取り付けられて、該回転軸と一体に
回転する慣性体からなるダンパ装置において、前記慣性
体の回転軸の軸方向面に半径方向の溝部を形成し、該溝
部は、該溝部の壁面の延長線が回転軸の回転中心を通る
とともに、一の溝部の壁面によって形成される中心角の
大きさと、隣接する溝部の隣接する壁面によって形成さ
れる中心角の大きさとがほぼ等しくなるように配されて
いることを特徴としている。

〔作用〕

上記回転軸の回転とともに上記慣性体が回転すると、こ
の慣性体の上記溝部が形成された軸方向面が臨んでいる
部分の空気が、溝部の壁面によって攪拌されるととも
に、該軸方向面に沿って流れる。この攪拌と流れとによ
って溝部内の空気が適宜に交換されて慣性体から熱が放
散される。しかも、周速の大きな外周部にあっても、溝
部の幅員は内周部の幅員よりも外周部の幅員の方が大き
いから、外周部の溝部内でも効率よく空気が交換され
る。また、軸方向面に沿って流れる空気によって溝部以
外の表面からも熱が放散されるから、慣性体の上記軸方
向面のほぼ全域から熱が放散される。

〔実施例〕

以下、図示した好ましい実施例に基づいて、この考案に
係るダンパ装置を具体的に説明する。

第１図はこのダンパ装置２の正面図で、下半部を省略し
て示してある。このダンパ装置２は、第２図に示すよう
に、ダンパプレート４と、慣性体としての慣性リング６
とが弾性体であるゴム部８を介して一体的に成形された
もので、ダンパプレート４に形成された透孔4aを挿通す
るボルトを図示しないプーリのボス部に締め付けて、こ
のダンパ装置２が図示しないクランク軸などに一体的に
取り付けられる。なお、このクランク軸の回転中心をＯ
で示す。

上記慣性リング６のクランク軸の軸方向面には、第１図
に示すように半径方向に適宜深さの溝部10が適宜数形成
されている。これらの溝部10の壁面10aはクランク軸の
回転中心Ｏから延びた放物線を含んでおり、即ち壁面10
aの延長線がクランク軸の上記回転中心Ｏを通るように
してある。したがって、該溝部10の幅員は慣性リング６
の内周部よりも外周部の方が大きくなるようにしてあ
る。また、一の溝部10の両側の壁面10aによって挾まれ
た中心角αと、隣接した溝部10の隣接した壁面10aによ
って挾まれた中心角βとがほぼ等しくなるようにしてあ
る。すなわち、溝10と溝10以外の山部12とが等しい間隔
で交互に配設されている。

また、第２図に示すように、上記溝部10の外周側端部11
aは慣性リング６の外周面で開放されており、内周側端
部11bは慣性リング６の内周面まで達しておらずに、適
宜位置から円弧状に形成したものとしてある。このた
め、内周側端部11bを慣性リング６の内周面で開放した
ものと異なり、溝部10の延長上においてゴム部８の端部
を切断する必要がなく、第２図に示すようにゴム部８の
端部を慣性リング６の表面まで伸ばした状態にしておく
ことができる。これにより、ゴム部８を切断した場合に
生じる切断部からの劣化を防止することができる。

以上により構成されたこの考案のダンパ装置２の作用
を、以下に説明する。

図示しないクランク軸が回転してこのダンパ装置２が、
第３図上矢標Ｐ方向に回転するものとする。このダンパ
装置２の回転によって慣性リング６の溝部10内にある空
気が、該溝部10の壁面10aで叩かれて適宜に攪拌されな
がら、該溝部10から慣性リング６の山部12の表面に流れ
出るとともに、慣性リング６の表面から該溝部10に空気
が流入する。また、慣性リング６の表面近傍にある空気
が適宜に攪拌される。このため、この溝部10内で熱が放
散されることになる。しかも、周速の大きな慣性リング
６の外周部では、溝部10の幅員が内周部における幅員よ
りも大きくしてあるから、大きな速度であっても溝部10
内の空気の交換が損なわれることがなく、溝部10内では
周速の小さい内周部から周速の大きい外周部にかけてほ
ぼ一様に熱を放散させることができる。

また、山部12の表面では、第３図上矢標Ｑ方向に流れる
空気によって熱の放散が行なわれる。したがって、慣性
リング６の表面ではほぼ一様に熱を放散させることがで
きる。

第３図に示した実施例では溝部10の壁面10aを山部12の
表面に対してほぼ直角に形成してあるが、第４図に示す
ように溝部10の壁面10bを山部12の表面に対して傾斜さ
せたものであっても構わない。壁面10bを傾斜面とした
ものでは、溝部10に流入する空気の流れが円滑になると
ともに、傾斜角度を適宜なものとすれば溝部10の表面積
が大きくなるから、放熱性の向上を期待できる。

なお、本実施例では溝部10の壁面10aの延長線が回転軸
Ｏを通るものとしてあるが、外周部の幅員の方が内周部
のそれよりも大きいものであれば、外周部においても十
分な熱放散を期待できる。

〔考案の効果〕

以上説明したように、この考案に係る車両のダンパ装置
によれば、回転軸とともに回転する慣性体の表面近傍の
空気が適宜に攪拌されるとともに、溝部内の空気も攪拌
されて適宜に交換される。また、溝部の幅員が慣性体の
内周部よりも外周部の方が大きいから、周速の大きな外
周部であっても確実に溝部内の空気が交換され、溝部の
全域にわたってほぼ均一に熱放散が行なわれる。さら
に、溝部以外の部分も慣性体の外周部の方が内周部より
も幅員が大きいから、当該部分の表面から確実に熱放散
が行なわれる。したがって、慣性体のほぼ全面から熱の
放散が行なわれるから、放熱性が向上したダンパ装置と
することができる。

【図面の簡単な説明】

図面は、この考案に係るダンパ装置の好ましい実施例を
示すものである。第１図は、このダンパ装置の正面図で
下半部を省略して示している。第２図は、第１図におけ
るII-II線に沿って切断した断面図である。第３図は、
第１図におけるIII-III線に沿って切断した断面図であ
る。 第４図は他の実施例を示すもので、第３図に相当する断
面図である。 ２……ダンパ装置、４……ダンパプレート ６……慣性リング（慣性体）、８……ゴム部（弾性体） 10……溝部、10a,10b……壁面 12……山部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に弾性体を介して取り付けられて、
   該回転軸と一体に回転する慣性体からなるダンパ装置に
   おいて、 前記慣性体の回転軸の軸方向面に半径方向の溝部を形成
   し、該溝部は、該溝部の壁面の延長線が回転軸の回転中
   心を通るとともに、一の溝部の壁面によって形成される
   中心角の大きさと、隣接する溝部の隣接する壁面によっ
   て形成される中心角の大きさとがほぼ等しくなるように
   配されていることを特徴とするダンパ装置。