JPH0751206Y2 - スローアウエイチップ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この考案は、工具本体に着脱自在に装着されるスローア
ウエイチツプに係わり、特に工具本体のたわみによる切
削面の段差を減少させるものに関する。

「従来の技術」 近年、エンドミルや正面フライス等に用いられる転削工
具として、工具本体の先端部外周の同一円周上に一ない
し複数のスローアウエイチップが着脱自在に装着された
スローアウエイ式の転削工具が多用されつつある。

第５図はこの種のスローアウエイ式転削工具を示すもの
で、図中符号１は工具本体を示す。

この工具本体１は、基端部がエンドミル等の駆動源に軸
線1a回りに回転自在に保持される略円柱状のもので、そ
の先端の大径部1bの外周部には、スローアウエイチップ
（以下、チップと略称する）2,2が着脱自在に装着され
ている。

このチップ２は、第６図および第７図に示すように、上
下面3,4が平行な平面視略三角形状に形成されたもの
で、上記上面３の稜線部には直線状の切刃５…が形成さ
れている。また、上記切刃５…から下面４に至る側面に
は、下面４に向けて中心側に傾斜する逃げ面６が形成さ
れている。さらに、工具本体１の外周側に位置する切刃
５の後端側には切刃５に対して所定の角度で内側に傾斜
する副切刃９が形成されている。また、上記切刃５は正
のアキシャルすくい角を有しており、この切刃５の先端
７と後端８とは工具本体１の軸線1aから等距離になって
いる。

上記構成の転削工具で被削材を切削した場合、切刃５が
直線状に形成されているうえ、正のアキシャルすくい角
を有しているので、回転切削時に切刃５の中央部におけ
る回転半径が先端７と後端８とにおけるそれより小さく
なってしまう。したがって、第８図に示すように、切削
された被削材Ｈの切削面Ｓがその中央部が突出した円弧
状に形成されてしまうため、その加工精度を保持するこ
とが難しいという問題があった。

そこで、上記問題を解決するために、第９図に示すよう
に、チップ10の切刃11を円弧状に形成することにより、
回転切削時に切刃11の先端12から後端13に至る全ての部
位の回転半径を同一にすれば、切削された被削材Ｈの切
削面Ｓを断面第10図に示すように、略直線状に形成する
ことができるから、特に、直角肩壁加工においても、確
実に高い加工精度を得ることができる。

「考案が解決しようとする課題」 ところが、上記チップ10で切削を行う場合、切削時にお
ける工具本体１のたわみのために、第９図に示すＡ寸法
を越える掘り込み量になった場合、副切刃９で被削材を
切削してしまい、未使用の副切刃９を損傷する上、第11
図および第12図に示すような、大きい段差（寸法ｌで示
す）のある切削面となるという課題が残る。

「考案の目的」 この考案は、上記事情に鑑みてなされたものであり、工
具本体のたわみに起因して生じる切削面の段差を減少さ
せることができるスローアウエイチップを提供すること
を目的としている。

「課題を解決するための手段」 上記目的を達成するために、この考案のスローアウエイ
チップは、軸回りに回転せしめられる工具本体の外周側
に位置し、かつ工具本体の軸線上の点を中心とした円弧
状をなす切刃と、この切刃の後端側にこの切刃より工具
本体側へ傾斜する副切刃との間に、該切刃の端部から副
切刃側に１〜５°で傾斜して、これら切刃と副切刃とを
滑らかに繋ぐ傾斜切刃を形成したものであり、上記傾斜
切刃の刃長は、円弧状の切刃の刃長の1/5〜1/4であるこ
とが望ましい。

傾斜切刃の刃長を、円弧状の切刃の刃長の1/5〜1/4にし
たのは、1/4を越えると切刃による切込量が小さくな
り、一方、1/5未満では副切刃が被削材を切削してしま
い、切削面の段差が大きくなるためである。

「作用」 この考案のスローアウエイチップにあっては、工具本体
に一定のたわみが生じた場合、傾斜切刃が被削材に食い
込んで切削するため、副切刃が被削材を切削することが
ない。この傾斜切刃は副切刃より工具本体側に傾斜する
傾斜角が小さい、すなわち、上記円弧状の切刃により切
削された被削材の切削面に対する傾斜切刃の角度が従来
の副切刃より小さいので、工具本体の同一たわみによる
切削面の段差を従来に比べ減少させることができる。

「実施例」 以下、第１図ないし第４図を参照して、この考案のスロ
ーアウエイチップの一実施例を説明する。

これらの図において符号20はスローアウエイチップ（以
下、チップと略称する）を示す。このチップ20は、上下
面23,24が平行な平面視略三角形状に形成されたもので
あり、上記上面23の稜線部には、第５図で示した工具本
体１の外側に張り出す円弧状の切刃25が形成されてい
る。この切刃25は、上面25の稜線部の下端ａから符号ｂ
で示す部分まで延びるものであり、切刃25から下面24に
至る側面の上縁部には、切刃25の逃げ面26が形成されて
いる。この逃げ面26の上縁部は円弧状をなしており、こ
の部分から上記下面24に至る側面には２番逃げ面27が形
成されている。

また、上記上面25の符号ｃで示す部分から上端ｄまでの
稜線部には、切刃25に対して所定の角度で工具本体１側
に傾斜する副切刃28が形成されており、この副切刃28の
端部ｃから上記切刃25の端部ｂとの間の稜線部にはこれ
ら切刃25と副切刃28とを滑らかに繋ぐ傾斜切刃30が形成
されている。この傾斜切刃30は上記副切刃28より小さい
傾斜角で上記工具本体１側に傾斜する（切刃25の端部ｂ
における接線に対して１〜５°工具本体１側に傾斜して
いる）ものであり、直線あるいは円弧状に形成されてい
る。また、傾斜切刃30の刃長は上記円弧状の切刃25の刃
長の1/5〜1/4に設定されている。

上記構成のチップ20を上記工具本体１にアキシャルすく
い角を正にして装着して、該チップ20により切削を行っ
た場合、工具本体１にたわみが生じても、第３図に示す
ように、上記傾斜切刃30が被削材に食い込んで切削する
ため、従来のように上記副切刃28が被削材を切削するこ
とがない。この傾斜切刃30は副切刃28より工具本体１側
に傾斜する傾斜角が小さい。すなわち、切刃25により切
削された被削材Ｈの切削面Ｓに対する角度が小さいの
で、第４図に示すように、切削面Ｓの段差Ｌを従来の段
差ｌに比べ減少させることができる。

なお、上記実施例では、平面視略三角形状のチップ20に
この考案を適用した例を示したが、これに限ることな
く、四角形状のチップに適用してもよい。

「考案の効果」 以上説明したように、この考案のスローアウエイチップ
によれば、軸回りに回転せしめられる工具本体の外周側
に位置する円弧状をなす切刃と、この切刃の後端側にこ
の切刃より工具本体側へ傾斜する副切刃との間に、該切
刃の端部から副切刃側に１〜５°で傾斜して、これら切
刃と副切刃とを滑らかに繋ぐ傾斜切刃を形成したので、
工具本体にたわみが生じても、傾斜切刃が被削材に食い
込んで切削するため、副切刃が被削材を切削することが
ない。この傾斜切刃は副切刃より工具本体側に傾斜する
傾斜角が小さい、すなわち、上記円弧状の切刃により切
削された被削材の切削面に対する傾斜切刃の角度が従来
の副切刃より小さいので、工具本体の同一たわみによる
切削面の段差を従来に比べ減少させることができ、切削
面が滑らかになって、仕上がりが向上するとともに、未
使用の副切刃を損傷することがない。

【図面の簡単な説明】 第１図ないし第４図は、この考案のスローアウエイチッ
プの一実施例を示すものであり、第１図はスローアウエ
イチップの平面図、第２図は第１図におけるII−II線視
図、第３図はチップで被削材を切削している状態を示す
断面図、第４図は切削された被削材の断面図、 第５図は従来のチップが装着された転削工具を示す正面
図、第６図は従来のチップの平面図、第７図は同側面
図、第８図は従来のチップにより切削された被削材の断
面図、第９図は円弧状の切刃を有する従来のチップの平
面図、第10図は第９図のチップで切削された被削材の断
面図、第11図は切削中にたわみが生じた工具本体の正面
図、第12図は第11図におけるＸ円部分の拡大図である。 １……工具本体、1a……軸線、20……スローアウエイチ
ップ、25……切刃 28……副切刃、30……傾斜切刃。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】軸回りに回転せしめられる工具本体の先端
   外周部に着脱自在に装着され、工具本体の外周側に位置
   する切刃が円弧状をなし、かつ切刃の後端側にこの切刃
   より工具本体側へ傾斜する副切刃が形成されたスローア
   ウエイチップにおいて、 上記切刃と副切刃との間に、該切刃の端部から副切刃側
   に１〜５°で傾斜して、これら切刃と副切刃を滑らかに
   繋ぐ傾斜切刃を形成したことを特徴とするスローアウエ
   イチップ。
2. 【請求項２】傾斜切刃の刃長が、上記円弧状の切刃の刃
   長の1/5〜1/4であることを特徴とする請求項１記載のス
   ローアウエイチップ。