JPH0747708B2 - バインダー樹脂組成物 - Google Patents

バインダー樹脂組成物

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JPH0747708B2
JPH0747708B2 JP3293710A JP29371091A JPH0747708B2 JP H0747708 B2 JPH0747708 B2 JP H0747708B2 JP 3293710 A JP3293710 A JP 3293710A JP 29371091 A JP29371091 A JP 29371091A JP H0747708 B2 JPH0747708 B2 JP H0747708B2
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acrylate
meth
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graft
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隆明 上田
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啓司 浦田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種プラスチックの保
護、美粧および接着を目的として用いられるバインダー
樹脂組成物に関し、更に詳しくは、ポリオレフィン系樹
脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル
系樹脂、ポリエステル系樹脂、各種合成樹脂のフィル
ム、シートまたは成形物に対し優れた諸物性を示す塗
料、印刷インキ、あるいは接着剤用のバインダー樹脂組
成物に関する。
【0002】プラスチックは、高生産性でデザインの自
由度が広く、軽量、防錆、耐衝撃性等多くの利点がある
ため、近年、自動車部品、電気部品、建築資材等の材料
として多く用いられている。とりわけポリオレフィン系
樹脂は、価格が安く成形性、耐薬品性、耐熱性、耐水
性、良好な電気特性など、多くの優れた性質を有するた
め、工業材料として広範囲に使用されており、将来その
需要の伸びが最も期待されている材料の一つである。
【0003】しかしながらポリオレフィン系樹脂は、ポ
リウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹
脂、ポリエステル系樹脂等、極性を有する合成樹脂と異
なり、非極性でかつ結晶性のため、塗装や接着が困難で
あると言う欠点を有する。
【0004】そこで従来よりポリオレフィン系樹脂成形
物の表面を、プラズマ処理やガス炎処理し、活性化する
ことにより付着性を改良しているが、この方法は工程が
複雑で多大な設備費や時間的なロスを伴うこと、又成形
物の形の複雑さ及び樹脂中の顔料や添加物の影響によ
り、表面処理効果にバラツキを生ずる等の欠点を有して
いる。
【0005】このような前処理なしに塗装する方法とし
て、自動車のポリプロピレンバンパー塗装に見られるよ
うなプライマー組成物が種々提案されている。例えば特
公昭62-21027号公報には、プロピレン−α−オレフィン
共重合体をマレイン酸変性した表面処理剤が提案されて
いる。しかしポリオレフィンにマレイン酸を導入しただ
けのプライマー組成物では、付着性、耐溶剤性はある
が、スプレー性、溶解性、相溶性が悪いという欠点を有
している。また、ツーコート仕上げという煩雑さを伴う
ものである。
【0006】ワンコート仕上げ用の被覆用組成物として
は、ポリオレフィン系樹脂に対して強い付着力を有する
塩素化ポリオレフィンや塩化ゴム等があるが、耐候性、
耐湿性、耐ガソリン性等が劣り十分な塗膜性能を示さな
い。そのため良好な塗料物性を有するアクリル樹脂やア
ルキッド樹脂を混合して使用する試みがなされている
が、本来アクリル樹脂やアルキッド樹脂は塩素化ポリオ
レフィンと相溶性が悪いため、塗膜の光沢が低下し、外
観を著しく損なうなどの問題を生じる。
【0007】これらの欠点を改良するため特開昭58-719
96号公報に見られるような、アクリル系単量体と塩素化
ポリオレフィンを共重合して得られる被覆用組成物や、
特開昭59-27968号公報に見られるような、水酸基を有す
るアクリル系単量体等と塩素化ポリオレフィンを共重合
させた、塩素化ポリオレフィン変性水酸基含有アクリル
共重合体とイソシアネート化合物を必須成分として成る
塗料組成物や、特開昭62-95372号公報に見られるよう
な、塩素化ポリオレフィンと液状ゴムの存在下で、水酸
基を有するアクリル系単量体等と共重合した水酸基含有
アクリル変性塩素化ポリオレフィンおよびイソシアネー
ト化合物を主成分として成る接着剤樹脂組成物などが提
案されている。しかしこれら塩素を含有する組成物は、
耐紫外線性や耐熱性にやや劣り、長期の耐候性に問題が
ある。
【0008】これに対して塩素を含有しない組成物とし
て、特開昭62-27308号公報には、マレイン酸をグラフト
重合したエチレン−プロピレン共重合体と官能基モノマ
ーおよびラジカル重合性不飽和モノマーを共重合した樹
脂組成物と、架橋剤より成る複層塗膜形成法が提案され
ている。しかしながらこの方法も、高濃度で共重合反応
を行った場合、反応中にゲル化する恐れがあるため、非
常に稀薄な濃度で反応を行う必要がある。このためポリ
オレフィンへのグラフト共重合効率は非常に低く、ラジ
カル重合性不飽和モノマーのホモポリマーを生じ、精製
などの工程を経なければ2層分離を起こし、そのままで
は使用できないという欠点を有する。
【0009】一方、食品包装用材料としても、様々な種
類のプラスチックフィルムが開発され使用されている。
それに伴って包装形態も多様化しており、特に包装内容
物を保護するために、ラミネートによる複合フィルムの
使用が多くなっている。これら包装用に使用されるラミ
ネート用インキは、フィルムの種類により数多くのイン
キを使い分けていたが、今日では該ラミネート用インキ
は2種類に大別されるようになってきている。即ち、専
らポリプロピレンフィルムに用いられる塩素化ポリプロ
ピレンと塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体を主たるバ
インダーとするインキ組成物と、専らポリエステル、ナ
イロンフィルムに用いられるウレタン樹脂を主たるバイ
ンダーとするインキ組成物である。
【0010】前者の塩素化ポリプロピレンと塩素化エチ
レン酢酸ビニル共重合体を主たるバインダーとするイン
キ組成物は、例えば特公昭60-31670号公報に、また塩素
化エチレン酢酸ビニル共重合体を更にスルフォクロル化
したインキ組成物は、特開昭55-145775 号公報に示され
ている。これらは未処理ポリプロピレンフィルムに対し
てインキの接着性が良好であるとともに、エクストリュ
ージョンラミネート方式でラミネート印刷した場合でも
良好な接着性を示す。しかしポリエステル、ナイロン等
のフィルムに対しては接着性に乏しく、これらのフィル
ムにはラミネート用印刷インキとして適さない。
【0011】後者のウレタン系樹脂を主たるバインダー
とするインキ組成物は、特開昭 62-153366号公報、特開
昭 62-153367号公報で示されるように、ポリエステル及
びナイロンなどの極性を有するフィルムに対しては良好
な接着性を示すが未処理ポリプロピレンフィルムに対し
てはまったく付着性がなく、ポリプロピレンエクストリ
ュージョンラミネート方式による印刷は不可能である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記のよ
うな問題を解決するため、プロピレン−α−オレフィン
共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水
物を 0.1〜20重量%グラフト共重合した後、少なくとも
1個の水酸基、グリシジル基またはアミノ基を持つ反応
性不飽和物を結合した後に、ラジカル重合性不飽和物を
グラフト共重合して得られる樹脂を含有することを特徴
とするポリオレフィン系樹脂用コーティング組成物を、
特願平 2-23373号で既に提案した。
【0013】しかしながら、この方法により得られた反
応液ワニスは経時的に増粘し、保存安定性に問題があ
る。また、硬化剤による架橋が行われないため、塗膜の
耐ガソリン性や耐久性が劣るという欠点を有していた。
【0014】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者等は、既
に提案した上記特願平2-23373号を更に検討し改良を加
えた結果、保存安定性、塗膜の耐ガソリン性および耐久
性等の性質が改善できることを見出し、本発明を成すに
至った。
【0015】即ち、本発明はプロピレン−α−オレフィ
ン共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸および/また
はその無水物を 1.0ないし10重量%グラフト共重合した
後、少なくとも1個の水酸基、グリシジル基、アミノ基
またはアミド基を有する反応性不飽和物 0.5ないし10重
量%をα,β−不飽和カルボン酸および/またはその無
水物に部分的に反応させ、更にモノアルコールの存在下
でラジカル重合性不飽和物をグラフト共重合して得られ
るバインダー樹脂組成物である。
【0016】この様に本発明は、上記特願平 2-23373号
に示されるα,β−不飽和カルボン酸および/またはそ
の無水物および反応性不飽和物等の範囲を更に限定する
ことによって、またモノアルコールを添加することによ
って、保存安定性、塗膜の耐ガソリン性および耐久性等
の性質を改善したものである。
【0017】
【作用】本発明に用いられるプロピレン−α−オレフィ
ン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレ
フィンを共重合したものであり、特にブロック共重合体
よりランダム共重合体が望ましい。α−オレフィン成分
としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテ
ン、1−オクテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メ
チル−1−ペンテンなどを例示することが出来る。
【0018】本発明においては、共重合体におけるプロ
ピレン成分とα−オレフィン成分との比に特に制限はな
いが、プロピレン成分が50モル%以上であることが望ま
しい。また、プロピレン−α−オレフィン共重合体にグ
ラフト共重合するα,β−不飽和カルボン酸またはその
酸無水物としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレ
イン酸、(無水)シトラコン酸、フマル酸、メサコン
酸、(無水)イタコン酸、(無水)アコニット酸などが
挙げられる。
【0019】本発明において、α,β−不飽和カルボン
酸またはその酸無水物をグラフト共重合によって導入す
る量は、 1.0〜10重量%が最適である。 1.0重量%より
少ない場合は、得られた組成物は2層分離し、良好な塗
料やインキが得られない。10重量%を超えると反応中ゲ
ル化し、バインダー樹脂として使用できない。
【0020】プロピレン−α−オレフィン共重合体に、
α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフ
ト共重合する方法は、ラジカル発生剤の存在下でプロピ
レン−α−オレフィン共重合体を融点以上に加熱溶融し
て反応させる方法(溶融法)、プロピレン−α−オレフ
ィン共重合体を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生
剤の存在下で加熱攪拌して反応させる方法(溶液法)
等、公知の方法によって行うことができる。
【0021】上記溶融法の場合には、バンバリーミキサ
ー、ニーダー、押し出し機等を使用し融点以上 300℃以
下の温度で短時間で反応させるので、操作が簡単である
という利点がある。一方、溶液法に於いては、有機溶剤
としてトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤を使うこと
が望ましいが、他にエステル系溶剤、ケトン系溶剤等を
一部混合して使用しても差し支えない。反応に用いるラ
ジカル発生剤は公知のものの中より適宜選択することが
出来るが、特に有機過酸化物系化合物が望ましい。
【0022】上記有機過酸化物系化合物としては、例え
ば、ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオ
キシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシ
ド、tert−パーオキシベンゾエイト、クメンハイドロパ
ーオキシド等があげられる。
【0023】本発明に於けるα,β−不飽和カルボン酸
またはその酸無水物をグラフト共重合したプロピレン−
α−オレフィン共重合体が有しているカルボキシル基ま
たは酸無水物基は、少なくとも1個の水酸基、グリシジ
ル基、アミノ基もしくはアミド基を有する反応性不飽和
物とエステル、アミドもしくはイミドを生成し化学結合
させることが可能である。即ち、このような反応方法で
プロピレン−α−オレフィン共重合体に反応性不飽和物
を導入することが出来る。
【0024】本発明に於いて使用される上記の少なくと
も1個の水酸基、グリシジル基、アミノ基またはアミド
基を有する反応性不飽和物には、例えば水酸基を有する
ものとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2
−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレートをカプロラクトン類で
エステル化した(ポリ)カプロラクトン変性(メタ)ア
クリレート等がある。グリシジル基を有するものとし
て、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジ
ルエーテル等がある。アミノ基を有するものとして、ア
リルアミン等がある。アミド基を有するものとして、ア
クリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブ
トキシメチルアクリルアミド等がある。
【0025】反応性不飽和物を導入する方法は、α,β
−不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフトした
プロピレン−α−オレフィン共重合体を、融点以上に加
熱溶融させて反応させる方法(溶融法)、またはトルエ
ン、キシレン等の有機溶剤に溶解させて反応させる(溶
液法)のいずれでもよいが、反応が均一に行えるという
点から考えると溶液法が好ましい。
【0026】反応性不飽和物の導入を溶融法で行う場
合、前述のα,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水
物をグラフト共重合させる反応の場合と同様な方法およ
び装置で行うことが可能であるが、ラジカルが残存して
いると2重結合を攻撃するのでラジカル発生剤が完全に
消滅した後に反応性不飽和物を導入する必要がある。反
応温度はポリマーの融点以上、反応性不飽和物の沸点以
下で行い、反応時間は10分〜3時間が適当である。
【0027】反応性不飽和物の導入を溶液法で行う場合
の反応温度は常温〜 160℃の範囲で実施でき、反応時間
は1〜20時間が適当である。溶剤としては、芳香族系溶
剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等を前述と同様な方
法で用いることが出来る。
【0028】いずれの方法で反応性不飽和物を導入する
場合も、無機酸、有機酸、第3級アミン等の触媒を使用
することが望ましい。勿論触媒を用いずに反応させるこ
ともできる。
【0029】反応性不飽和物の添加量はプロピレン−α
−オレフィン共重合体に対して 0.5〜10重量%が最適で
ある。添加量が10重量%を超えると反応中にゲル化し
て、バインダー樹脂として使用できず、 0.5重量%より
少ない場合は、得られた組成物は2層分離し、良好なイ
ンキや塗料が得られない。
【0030】上記の方法で幹ポリマーに導入した反応性
不飽和基と、これと重合し得るラジカル重合性不飽和物
を共重合反応する方法は溶液重合が最も適している。使
用する溶剤は、前述の芳香族系溶剤、エステル系溶剤、
ケトン系溶剤等を同様にして使用できるが、この際モノ
アルコール類を一部添加して反応することにより保存安
定性が良好で均一な本発明のバインダー樹脂組成物を得
ることが出来る。
【0031】ここでモノアルコール類としては、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が例示
できる。モノアルコールの添加量は反応溶剤中2〜20重
量%が適当である。そして共重合反応終了後、残余のモ
ノアルコールは蒸留により除去して用いてもそのまま残
留させて用いても本発明の実施上差し支えなく、使用目
的に応じて適宜選択すればよい。
【0032】具体的な共重合の方法は、反応性不飽和基
が導入されたプロピレン−α−オレフィン共重合体を、
モノアルコールを含有する溶剤で適当に希釈しラジカル
発生剤を添加した後加温し、ラジカル重合性不飽和物を
徐々に加えながら反応することを基本プロセスとする
が、これらを予め混合しラジカル発生剤を添加した後加
温し反応しても差し支えない。
【0033】上記ラジカル発生剤としては、前述の有機
過酸化物の他にアゾ系化合物、スルフィド類、スルフィ
ン類、ジアゾ化合物、ニトロソ化合物、レドックス系等
が使用できる。また上記ラジカル重合性不飽和物として
は、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、
イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、酢
酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル等や、前述の少な
くとも1個の水酸基またはグリシジル基を有するラジカ
ル重合性不飽和物等がある。
【0034】ラジカル重合性不飽和物の添加量は、プロ
ピレン−α−オレフィン共重合体に対し、5ないし 500
重量%が最適である。添加量が5重量%より少ないと溶
剤への溶解性や顔料分散性等が劣りインキや塗料とした
場合十分な性能が得られず、500重量%を超えるとポリ
オレフィンに対する付着性が悪くなる。
【0035】本発明のバインダー樹脂は硬化剤としてイ
ソシアネート化合物または1分子中に−NH基か−NH
2 基を2個以上含有する化合物を配合することにより、
耐ガソリン性、耐候性、耐湿性、耐熱水性(ボイル,レ
トルト性)等、塗料やインキに必要な塗膜物性を向上さ
せることが出来る。
【0036】上記イソシアネート化合物としては、トリ
レンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソ
シアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ジイ
ソシアネート類が使用できるが、これらの有機ジイソシ
アネート類を、ビューレット体、イソシアヌレート体、
トリメチロールプロパンアダクト体等のイソシアネート
誘導体に変性して用いるのが好ましい。
【0037】また上記1分子中に−NH基か−NH2
を2個以上含有する化合物としては、エチレンジアミ
ン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、
ペンタエチレンヘキサミンの様な脂肪族アミン類、イソ
ホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサンの様
な脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミノの様な芳香
族アミン類、重合脂肪酸等と反応させて得られるポリア
ミド樹脂等が使用できる。
【0038】本発明のバインダー樹脂組成物は、そのま
まコーティングして用いても良いが、顔料、溶剤、その
他の添加剤を加え混練し塗料やインキとして用いること
が出来る。また該組成物はそれだけでバランスのとれた
塗膜物性を示すが、必要であれば、アルキッド樹脂、ア
クリル樹脂、ポリアクリルポリオール、ポリエステル樹
脂、ポエステルポリオール、ポリエーテル樹脂、ポリエ
ーテルポリオール、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレ
フィン等を更に添加して用いても差し支えない。
【0039】本発明の特徴とするところは、他の類似の
発明に比べ、遥かに均一で保存安定性に優れるバインダ
ー樹脂溶液を得ることにある。即ち、プロピレン−α−
オレフィン共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸およ
び/またはその無水物を付加させた後、該カルボキシル
基または酸無水物基に少なくとも1個の水酸基、グリシ
ジル基、アミノ基またはアミド基を有する反応性不飽和
物をそれぞれエステル化、アミド化、イミド化反応させ
化学的に結合させることにより反応性不飽和基を導入
し、更に該反応性不飽和基を反応点としラジカル重合性
不飽和物をモノアルコールの存在下でグラフト共重合す
ることにより均一且つ保存安定性に優れるバインダー樹
脂溶液が得られる。
【0040】該バインダー樹脂溶液が均一で保存安定性
に優れる理由としては、本来プロピレン−α−オレフィ
ン共重合体は非極性であるが、上記した方法であれば極
性のあるアクリルやスチレン等をプロピレン−α−オレ
フィン共重合体に確実にグラフト共重合することが可能
であり、その結果極性が付与され溶剤に対する溶解性や
顔料分散性が改良されるものと思われる。また、モノア
ルコールの存在下でラジカル重合性不飽和物をグラフト
共重合した場合、幹ポリマーに含まれる遊離のカルボキ
シル基または酸無水物基がモノアルコールによりマスク
され副反応が停止されることにより保存安定性が改善さ
れるものと思われる。
【0041】
【実施例】次に本発明を実施例により更に詳細に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】(試作例−1)攪拌機、冷却管、温度計お
よび滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、プロ
ピレン−α−オレフィン共重合体(プロピレン成分75モ
ル%、エチレン成分20モル%、1−ブテン成分5モル
%、重量平均分子量25,000) 300gをトルエン700gに
加熱溶解させた後、系の温度を 140℃に保って攪拌しな
がら無水マレイン酸30gとラジカル発生剤としてジ−te
rt−ブチルパーオキシド12gをそれぞれ2時間かけて滴
下させその後3時間熟成を行った。反応後室温まで冷却
した後反応物を20リットルのアセトン中に投入して精製
し、グラフト量 6.5重量%の無水マレイン酸グラフト共
重合体を得た。
【0043】(試作例−2)無水マレイン酸15gを滴下
する以外は試作例−1とまったく同様な方法で反応を行
い、グラフト量 3.4重量%の無水マレイン酸グラフト共
重合体を得た。
【0044】(実施例−1)試作例−1と同様な4つ口
フラスコ中で、試作例−1で得た無水マレイン酸グラフ
ト共重合体 100gをトルエン 200gに溶解させた後、濃
硫酸0.07g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.5
gを添加し 100℃で2時間かけてエステル化反応を行っ
た。次に系の温度を85℃まで冷却し、イソプロピルアル
コール20gを投入した後、メチルメタクリレート45g及
びイソブチルメタクリレート5gから成るラジカル重合
性不飽和物と、10gのトルエンに 1.5gのベンゾイルパ
ーオキシドを溶解させた溶液を3時間かけて滴下させ、
更に8時間に亘って共重合反応を行い、プロピレン−α
−オレフィン共重合体にラジカル重合性不飽和物をグラ
フト共重合したバインダー樹脂溶液を得た。バインダー
樹脂溶液の固形分濃度をトルエンで40wt%に調整し、完
全に密閉した容器に入れ、40℃の雰囲気に貯蔵して経時
的な粘度変化を見た。その結果を表1に示した。
【0045】(実施例−2)試作例−2で得た無水マレ
イン酸グラフト共重合体 100g及び2−ヒドロキシエチ
ルアクリレート 2.2gを採取する以外は実施例−1とま
ったく同様にエステル化反応を行った。次にイソプロピ
ルアルコール10g及びシクロヘキシルメタクリレート50
gを採取し、20gのトルエンに 1.5gのベンゾイルパー
オキシドを溶解する以外は実施例−1とまったく同様に
共重合反応を行い得られたバインダー樹脂溶液の粘度の
経時変化を見た。その結果を表1に示した。
【0046】(実施例−3)試作例−2で得た無水マレ
イン酸グラフト共重合体 100gを採取する以外は実施例
−1とまったく同様にエステル化反応を行った。次にイ
ソプロピルアルコール15g、トルエン70g及びシクロヘ
キシルメタクリレート60g、n−ブチルメタクリレート
19g、2−ヒドロキシエチルアクリレート21gを採取
し、20gのトルエンに2gのベンゾイルパーオキシドを
溶解する以外は実施例−1とまったく同様に共重合反応
を行いバインダー樹脂溶液を得た。バインダー樹脂溶液
中に残存するイソプロピルアルコールを留去しトルエン
で置換した後、固形分濃度を40wt%に調整して実施例−
1と同様に粘度の経時変化を見た。その結果を表1に示
した。
【0047】(実施例−4)実施例−1とまったく同様
なエステル化反応を行い、次にイソプロピルアルコール
15g、トルエン70g及びメチルメタクリレート60g、イ
ソブチルメタクリレート12g、グリシジルメタクリレー
ト28gを採取し、20gのトルエンに2gのベンゾイルパ
ーオキシドを添加する以外は実施例−1とまったく同様
に共重合反応を行って得られたバインダー樹脂の粘度の
経時変化を見た。その結果を表1に示した。
【0048】(比較例−1〜4)実施例−1〜4の共重
合反応時に添加したイソプロピルアルコールをトルエン
に置き換える以外は実施例−1〜4とまったく同一条件
でそれぞれ共重合反応を行い、実施例−1〜4に対応す
る比較例−1〜4のバインダー樹脂溶液を得た。固形分
濃度を40wt%に調整し実施例−1と同様に粘度の経時変
化を見た。それらの結果を表1に示した。
【0049】
【表1】 ●粘度測定はB型粘度計を使用した。測定温度は25℃ ●表中の単位はセンチポイズ(cp)
【0050】(実施例−5)実施例−3で得たバインダ
ー樹脂溶液(solid 40%) 100gと二酸化チタン26gを
サンドミルで3時間混練した後、イソシアネート硬化剤
デスモジュールZ4370(住友バイエルウレタン
(株)製、イソホロンジイソシアネート系、イソシアヌ
レート体)12.9gを添加し、No.4フォードカップで13
〜15秒/20℃になるようキシレンで粘度調整を行い、ポ
リプロピレン板、TX−933A(三菱油化(株)製)
にスプレー塗装した。室温で15分間乾燥した後、80℃で
30分間強制乾燥し、1週間室内に静置した後塗膜の試験
を行った。その結果を表2に示した。
【0051】(実施例−6)実施例−4で得たバインダ
ー樹脂溶液(solid 40%) 100gと二酸化チタン26gを
サンドミルで3時間混練した後、アミン系硬化剤 エポ
メートB−002(油化シェルエポキシ(株)製、複素
環式アミン系エポキシ硬化剤)4gを添加し、実施例−
5と同様な方法で塗料調整及び塗膜の試験を行った。そ
の結果を表2に示した。
【0052】(比較例−5)塩素化ポリプロピレン ス
ーパークロン832L(山陽国策パルプ(株)製、塩素
含有率27wt%、固形分30wt%)35g及びポリアクリルポ
リオール デスモフェンA−160(住友バイエルウレ
タン(株)製、固形分60%、水酸基含有量2.7%対 soli
d)35g、二酸化チタン26g、デスモジュールZ437
0 12.2gの配合割合で、実施例−5と同様な方法で塗
料調整及び塗膜の試験を行った。その結果を表2に示し
た。
【0053】
【表2】
【0054】試験方法 ●付着性 塗面上に1mm間隔で素地に達する 100個の碁盤目を作
り、その上にセロファン粘着テープを密着させて 180°
方向にひきはがし、塗膜の残存する程度で判定した。
【0055】●促進耐候性 カーボンアーク式のサンシャインウエザーメーターを使
用した。白色度はハンターで、光沢度は60°鏡面反射光
沢度計で測定した。
【0056】●耐温水性 40℃の温水に塗装板を 120時間及び 240時間浸せきし、
塗膜の状態を調べた。
【0057】●耐ガソリン性 (ラビング 100回)脱脂綿に日石レギュラーガソリンを
しみ込ませ、塗面を 100回ラビングし、塗膜の状態を調
べた。 (浸せき2時間)塗面上に素地に達するスクラッチ
(×)を入れ、日石レギュラーガソリンに2時間浸せき
し、塗膜の状態を調べた。
【0058】●耐屈曲性 1/2 φインチマンドレルで 180°折り曲げ、塗膜の状態
を調べた。
【0059】●耐衝撃性 デュポン式衝撃試験機で、撃芯 1/2φインチ、荷重 500
gを使用し、塗面上に50cmの高さから落下させ、塗膜の
状態を調べた。
【0060】(実施例−7) 実施例−1で得たバインダー樹脂溶液(solid 4
0%)でインキを調整し、コーティングロッド#10で
未処理ポリプロピレンフィルム(以下未処理PPと称
す)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PE
Tと称す)、ナイロンフィルム(以下NYと称す)にそ
れぞれ塗工し、24時間室温で乾燥した後、セロファン
粘着テープを用いセロテープ剥離試験及びヒートシール
強度試験を行った。これらの結果を表4に示した。尚、
インキの配合処方は表3に示した。
【0061】(実施例−8)実施例−2で得たバインダ
ー樹脂溶液(solid 40%)でインキを調整し、以下実施
例−7と同様な試験を行った。これらの結果を表4に示
した。
【0062】(比較例−6)塩素化ポリプロピレン ス
ーパークロン803MW(山陽国策パルプ(株)製、塩
素含有率29.5wt%、固形分20wt%)と塩素化エチレン酢
酸ビニル共重合体スーパークロンBX(山陽国策パルプ
(株)製、塩素含有率18wt%、固形分20wt%)の混合物
でインキを調整し、以下実施例−7と同様な試験を行っ
た。これらの結果を表4に示した。
【0063】(比較例−7) ポリウレタン樹脂 サンブレンIB−450(三洋化成
化学工業(株)製、固形分30wt%)でインキを調整
し、以下実施例−7と同様な試験を行った。これらの結
果を表4に示した。
【0064】
【表3】 *二酸化チタン(石原産業(株)製、ルチル型R−82
0) *カーミン6BN(東洋インキ製造(株)製、アゾ系有
機顔料) *インキの練肉条件:サンドミルで2時間混練
【0065】
【表4】
【0066】●セロテープ剥離試験 インキ塗工面上にセロファン粘着テープを貼付け、一気
に剥したときの塗工面剥離状態で判定した。
【0067】●ヒートシール強度試験 インキ塗工面を重ね合わせて、 110℃−1kg/cm2 で1
秒間の圧着条件でヒートシールを行い、24時間後テンシ
ロンにて180°剥離強度試験を行った。(引張り速度 5
0mm/min)
【0068】
【発明の効果】
(表1の結果より)表1結果から分かるように実施例−
1〜4のバインダー樹脂溶液は40℃で1ヶ月間貯蔵して
も溶液の増粘はほとんど見られないが、比較例−1〜4
のバインダー樹脂溶液は経時的に増粘あるいはゲル化し
ている。このことより本発明のバインダー樹脂が保存安
定性に優れていることが分かる。
【0069】(表2の結果より)実施例−5及び6の塗
料組成物は耐候性、耐温水性、耐ガソリン性、低温物性
ともに良好な結果を示しているが、比較例−5の塗料組
成物は諸物性が劣っている。比較例−5の場合、市販の
ポリアクリルポリオールと塩素化ポリプロピレンを単に
混合したバインダー樹脂であるため、両者の相溶性の悪
さや塩素化ポリプロピレンの耐紫外線性の悪さが塗膜物
性を低下させているものと思われる。このことより、本
発明のバインダー樹脂が均一で且つバランスの取れた塗
料樹脂であると言える。
【0070】(表4の結果より)比較例−6の塩素化ポ
リプロピレン/塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体系の
インキはPPフィルムに対して良好な付着性を示すが、
PET、NYフィルムには付着性がなく実用強度にほど
遠い。比較例−7のポリウレタン系のインキはPET、
NYフィルムには付着するが、PPフィルムには付着強
度が十分でない。実施例−7及び8のインキはPPフィ
ルムにもPET、NYフィルムにも良好な接着性を示
し、本発明品が汎用性の高いインキ用バインダーである
ことが分かる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プロピレン−α−オレフィン共重合体
    に、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその酸無
    水物を 1.0ないし10重量%グラフト共重合した後、少な
    くとも1個の水酸基、グリシジル基、アミノ基またはア
    ミド基を有する反応性不飽和物 0.5ないし10重量%を上
    記α,β−不飽和カルボン酸および/またはその酸無水
    物に部分的に反応させ、更にモノアルコールの存在下で
    ラジカル重合性不飽和物をグラフト共重合して得られる
    物質を主要成分とするバインダー樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 ラジカル重合性不飽和物を、プロピレン
    −α−オレフィン共重合体に対し、5ないし 500重量%
    グラフト共重合した請求項1記載のバインダー樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のバインダー樹脂組
    成物に硬化剤としてイソシアネート化合物または1分子
    中に−NH基か−NH2 基を2個以上含有する化合物を
    配合することを特徴とした、塗料および印刷インキまた
    は接着剤用バインダー樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 反応性不飽和物が2−ヒドロキシエチル
    (メタ)アクリレート,グリシジル(メタ)アクリレー
    ト,アリルアミン,アクリルアミドのうちのいずれかで
    ある請求項1〜3のいずれか1項記載のバインター樹脂
    組成物。
  5. 【請求項5】 ラジカル重合性不飽和物がメチル(メ
    タ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、
    イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチ
    ルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート
    のうちのいずれかである請求項1〜4のいずれか1項記
    載のバインダー樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2記載のバインダー樹脂組
    成物の製法。
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