JP4123715B2 - 変性ポリオレフィン組成物およびその用途 - Google Patents

変性ポリオレフィン組成物およびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合物、エチレン−酢酸ビニル共重合物などのポリオレフィン成型物に対して優れた付着性を有し、他樹脂との相溶性にも優れた、該基材の型内塗装用樹脂として用いるのに適した低溶融粘度の非塩素系変性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンは、安価で成形性、耐薬品性、耐水性、電気特性など多くの優れた性質を有するため、シート、フィルム、成型物等として近年広く使用されている。しかし、ポリオレフィン基材は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の極性基材とは異なり、非極性でかつ結晶性のため、塗装や接着が困難であるという欠点を有する。塗装、接着性を改善するための表面処理技術として、コロナ処理、プラズマ処理等の機械的処理やプライマー等を用いた化学的処理が行われているが、被膜物性、作業性、装置上の問題等の点でプライマー処理法が現在広く採用されている。ポリオレフィン基材用のプライマーとしては塩素化ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンが、基材への付着性が優れているということで最も一般的に使用されている。
【0003】
一方、プライマー法等の従来の塗装工程を簡略化した新しい塗装方法として型内塗装法に関する技術が多く報告されている。特開平7−70263、特公昭59−19583、特公昭54−13273、US−4668460、US−4076788等で開示されている様に、あらかじめ金型内で樹脂成型物を形成した後に、引き続きジカルボン酸とジオールからなるポリエステル原料や、ジイソシアネートとジオールからなるポリウレタン原料等の熱硬化性樹脂組成物を金型内に流し込むと同時に硬化させ、成型物表面を被覆する技術である。この技術を用いた場合、顔料や併用樹脂等の添加剤を選択することにより、金型から基材を離型する段階で既に塗装が行われた成型物を得ることが可能になる。しかしながら、本方法をポリプロピレン等のポリオレフィン基材に応用する場合には、形成される被膜と基材との間に十分な付着力が得られないという問題があった。
【0004】
ポリオレフィン基材にも利用できる型内塗装技術としては、特開平6−107750に開示されている様に、アクリル、不飽和ポリエステル系の熱硬化性樹脂組成物中に塩素化ポリプロピレンを配合する技術が知られている。しかしながら、塩素化ポリオレフィン系の付着付与剤を使用した場合、熱成型時に脱塩酸反応が起こり、これによる硬化阻害や被膜物性低下が生じるため、使用できる熱硬化性樹脂組成物の選択に制限があった。また、近年の環境問題に対応するためにも、塩素を含まない樹脂を用いて良好な付着力を得ることも求められていた。ところが、従来の酸変性ポリオレフィン等のプライマー用非塩素系ポリオレフィンを単純に配合した場合、良好な付着力は得られるものの、被膜形成成分の粘度が上昇し、流動性が低下するために被膜が厚くなるという欠点があった。また、従来の非塩素系ポリオレフィンは他樹脂との相溶性が不良であるため、硬化性樹脂組成物中に配合したときの分散性が悪く、被膜物性を低下させる欠点もあった。更に、単純に分子量の低い非塩素系ポリオレフィンを配合した場合には、乾燥被膜のタックが強くなり、塗装基材の離型時に金型から離れにくいという欠点もあった。
【0005】
このような背景から、ポリオレフィン基材に対して優れた付着力を有し、他樹脂との相溶性も良好で、タックがなく、かつ低粘度で流動性の良い、ポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂に適した非塩素系ポリオレフィンの開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂として有用な非塩素系変性ポリオレフィン組成物を提供することにある。本発明者等は、本課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のポリオレフィン原料に対し、特定のモノマーをグラフト重合し、特定の分子量と溶融粘度を有するよう制御して調製した変性ポリオレフィン組成物が、ポリオレフィン基材への付着力、他樹脂との相溶性に優れ、タックがなく、低粘度で流動性も良いことを見い出し、この知見に基づいて本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このように本発明によれば、以下の(1)〜(7)が提供される。
(1)プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物。
(2)プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体と不飽和カルボン酸誘導体を0.1〜50重量%含有するエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体が80:20〜98:2(重量比)である混合樹脂100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物。
(3)プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下、及びエチレン性不飽和モノマーを0.1重量部以上500重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物。
(4)プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体と不飽和カルボン酸誘導体を0.1〜50重量%含有するエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体が80:20〜98:2(重量比)である混合樹脂100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下、及びエチレン性不飽和モノマーを0.1重量部以上500重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物。
(5)不飽和カルボン酸及び/又はその無水物とエチレン性不飽和モノマーが100:1〜1:500(重量比)である(3)又は(4)記載の変性ポリオレフィン組成物。
(6)プロピレン共重合体が、プロピレン−エチレン共重合体及び/又はプロピレン−エチレンーブテン共重合体である(1)〜(5)いずれか記載の変性ポリオレフィン組成物。
(7)(1)〜(6)いずれか記載の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるプロピレン共重合体とは、プロピレンを必須成分とし、更にエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1,4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上20以下、好ましくは2以上6以下のα-オレフィン、あるいはシクロペンテン、シクロヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン、あるいはスチレン、置換スチレンなどを共重合させて得られたものであるが、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が好ましく、特にエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、およびこれらの併用系が基材に対する付着力や他樹脂との相溶性に良好なので好ましい。
【0009】
上記プロピレン共重合体中のプロピレンの組成比は50%以上98%以下であり、好ましくは60%以上98%以下である。50%より少ないとポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン基材への付着性が劣る。98%より多いとグラフト変性した後の他樹脂との相溶性が低下したり、溶融粘度が上昇したりするので好ましくない。
【0010】
また、本発明では上記のプロピレン共重合体とともに、エチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体を併用して原料とすることができる。エチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体とはエチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン−無水マレイン酸共重合体、及びこれらと(メタ)アクリル酸またはそのエステルとの共重合体、もしくは以上の群より選ばれる少なくとも2種以上の混合物である。好ましくはエチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体を用いることが望ましい。これら共重合体中の不飽和カルボン酸誘導体の含有率は0.1〜50重量%、特に1〜40重量%であることが好ましい。この範囲よりも少ないと溶剤溶解性が悪化し、多いと溶液透明性が悪化するため好ましくない。
【0011】
プロピレン共重合体とエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体の混合割合は80:20〜98:2(重量比)であることが好ましい。この範囲よりもプロピレン共重合体が少ないと変性ポリオレフィン樹脂組成物の溶剤溶解性や付着性が悪化したり、反応時の粘度上昇による操作性低下や反応不良等が発生する。この範囲より多いとタックが強くなる。
【0012】
使用できるプロピレン共重合体とエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体の分子量は、変性ポリオレフィン組成物の重量平均分子量が10,000〜40,000となるように自由に選択できるが、重量平均分子量が40,000より大きいポリオレフィンであっても、熱やラジカルの存在下で減成して分子量を適当な範囲に調整する等の公知の方法で使用可能になる。また、樹脂溶融粘度についても、変性後に190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・S以下になるものであれば自由に使用できる。
【0013】
本発明では、ラジカル開始剤の有無によらずグラフト反応できるが、開始剤を用いる方が好ましく、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることが好ましい。ラジカル開始剤の種類や使用量は反応条件により適宜選択できるが、原料樹脂に対して0.1〜5重量%程度使用することが望ましい。これより少ないとグラフト反応率が低下し、多くてもグラフト反応率の低下や内部架橋、低分子量化等の副反応が生じる。
【0014】
本発明に用いる不飽和カルボン酸及び/又はその無水物としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、あるいはそれらの酸無水物、あるいは(メタ)アクリル酸及びそのエステルで変性されたもの等が挙げられる。これら不飽和カルボン酸又はその無水物を単独あるいは組み合わせて使用できるが、無水マレイン酸を用いることが好ましい。不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の使用量は、変性ポリオレフィン組成物中の含有量が原料ポリオレフィンに対して0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜15重量%になることが好ましい。この範囲より含有量が少ないと基材に対する付着力低下や他樹脂との相溶性の悪化を引き起こし、逆に多すぎると付着力低下や未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が多く発生するため好ましくない。
【0015】
本発明では、エチレン性不飽和モノマーを不飽和カルボン酸及び/又はその無水物と同時に使用することができる。また、原料ポリオレフィンがあらかじめエチレン性不飽和モノマーで変性された変性ポリオレフィンに不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を反応させることができ、逆に不飽和カルボン酸及び/又はその無水物であらかじめ変性された原料ポリオレフィンにエチレン性不飽和モノマーを反応させることもできる。ここでいうエチレン性不飽和モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのようなビニルエーテル、(メタ)アクリル酸やそのアルキルエステル等の誘導体、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられる。
【0016】
又、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等の反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー、あるいはその官能基が適当な保護基でブロックされたものを使用すると、本発明の変性ポリオレフィンを他の熱硬化性樹脂組成物と併用して使用する場合、諸被膜物性が更に向上する。保護基については適宜選択できるが、変性ポリオレフィンを単独で、あるいは他の熱硬化性樹脂組成物や顔料等の添加剤とともに金型内に注入して被膜形成させる工程における温度、プレス圧、時間等の条件下で保護基が脱離して、反応性基が再生される必要がある。
【0017】
上記モノマーは単独でも組み合わせても使用でき、変性ポリオレフィン組成物の他樹脂との相溶性や顔料分散性を向上させたり、被膜の硬さを調節する等の目的に合わせて適宜使用できるが、原料ポリオレフィンに対して0.1〜500重量%が好ましい。この範囲を外れると、付着性や耐溶剤性が低下する。
【0018】
また、エチレン性不飽和モノマーを使用する場合、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物とエチレン性不飽和モノマーの重量比は、100:1〜1:500、好ましくは50:1〜1:300の範囲で使用される。100:1よりエチレン性不飽和モノマーの量が少ないと使用効果が無く、1:500より多いと原料ポリオレフィンにグラフトしないポリマーの生成量が増加したり、付着性等の諸物性が低下する。
【0019】
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物やエチレン性不飽和モノマーをポリオレフィン原料にグラフト反応させる方法は公知の方法で行うことが可能であり、例えば原料ポリオレフィンをトルエン等の溶剤に溶解し、ラジカル開始剤、モノマーを添加する溶液法で変性ポリオレフィン溶液を得た後に溶剤を揮発させる方法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出し機等を使用して、溶融した原料ポリオレフィンにラジカル開始剤、モノマーを添加する溶融法等が挙げられるが、溶融法で行うのが好ましい。モノマー、開始剤の添加順序、方法等は適宜選択できる。また、反応終了時に減圧工程を設け、残留するモノマー類を取り除くこともできる。
【0020】
得られる変性ポリオレフィンの重量平均分子量は10,000〜40,000、好ましくは20,000〜35,000である。10,000より小さいと非極性基材への付着力、凝集力が劣り、40,000より大きいと粘度増加により被膜が厚くなりすぎたり、他樹脂との相溶性が低下する。また、特にエチレン性不飽和モノマーを使用する場合、分子量をこの範囲に制御するために、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を適宜使用できる。
【0021】
また、本発明においては、変性ポリオレフィン組成物の190℃における溶融粘度は0.2以上3.5Pa・s以下である。0.2Pa・sより小さいと付着性が低下したりタックが強くなり、3.5Pa・sより大きいと平滑な被膜が得られなかったり、被膜が厚くなりすぎる。
【0022】
変性ポリオレフィン組成物の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により求めることができる。また、モノマーのグラフト率は、MEK、アセトン、あるいはMEK・メタノール混合溶媒等を用いて変性ポリオレフィン組成物を抽出処理した後、滴定、FT−IR、NMR等を用いて測定できる。
【0023】
本発明でいう溶融粘度は、B型粘度計を用いて190℃、30rpm、#4ローターの条件で測定した値を基準としている。他の粘度測定方法についても、B型粘度計から得られる値との補正係数を求めれば、当然代用できる。
【0024】
本発明の変性ポリオレフィン組成物はポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂として使用できる。塗装条件については、使用するポリオレフィン基材に応じた温度、圧力、時間を選択できる。圧縮成形装置については、基材を圧縮成形した後に金型と基材塗装面との間に適当な空隙を形成させ、その空隙内に本発明の樹脂を含有する塗装用樹脂組成物を圧入し、さらに熱圧縮を行うことにより基材表面を被覆できる装置が好ましく用いられ、例えば特開昭61-273921に例示されている装置を使用することができる。また、必要に応じて添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤、離型剤、流動助剤等を配合して用いることもできる。また、他樹脂との相溶性にも優れることから、変性ポリオレフィン組成物中の官能基と反応するポリアミン、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリエポキシ等の硬化剤を使用したり、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂組成物等の他の熱硬化性樹脂を併用して型内に注入し、被膜形成時に硬化させることもできる。
【0025】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
(実施例−1)
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた1L容4ッ口フラスコ中に、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン含量70%、重量平均分子量約35,000)300gを投入し、170℃にて溶融し、窒素置換した後撹拌しながら、無水マレイン酸25g、パーブチルD(日本油脂製)6gを30分かけて滴下し、さらに30分間混練した。反応物を取り出して、室温まで冷却し、重量平均分子量23,000、無水マレイン酸グラフト率4.8重量%、190℃における溶融粘度0.3Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0027】
(実施例−2)
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた2L容4ッ口フラスコ中に、エチレン−プロピレン共重合体(プロピレン含量95%、重量平均分子量約300,000)900gを投入し、200℃で溶融、撹拌しながらパーブチルD9gを2時間かけて滴下し、さらに1時間反応した後、低分子量生成物を減圧留去した。その後、温度を170℃にして無水マレイン酸共重合体(ボンダインHX8210、住友化学製)100gを投入して均一に混練し、窒素置換した後、イタコン酸50g、オクタデシルビニルエーテル10g、パーヘキサ25B(日本油脂製)10gを2時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。未反応物等を減圧留去して、生成物を取り出し、重量平均分子量36,000、イタコン酸グラフト率3.5重量%、オクタデシルビニルエーテルのグラフト率0.9重量%、190℃における溶融粘度2.9Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0028】
(実施例−3)
酸素減成処理アイソタクティックポリプロピレン(重量平均分子量50,000)15kg、トルエン85kgを200L反応釜に投入し、環流温度にて溶融した後、温度を85℃に調製した。窒素置換した後、無水マレイン酸1.2kg、スチレン100gを添加し、均一に攪拌した。その後、過酸化ベンゾイル(60%キシレン溶液)500gを1時間かけて滴下し、さらに30分間反応を続けた。反応物を室温まで冷却し、メタノール中で精製し、重量平均分子量35,000、無水マレイン酸グラフト率6.5重量%、スチレングラフト率0.6重量%、190℃における溶融粘度2.8Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0029】
(実施例−4)
L/D=60、φ=15mmの二軸押出機に、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン含量68%、重量平均分子量40,000)80重量部、エチレン−無水マレイン酸共重合体(エチレン成分90重量%、無水マレイン酸成分10重量%、重量平均分子量25,000)20重量部、無水アコニット酸4重量部、ジクミルパーオキサイド1.5重量部を投入した。滞留時間は10分、バレル温度は80℃(第1バレル)、180℃(第2〜6バレル)、100℃(第7バレル)、50℃(第8バレル)として反応し、第1バレルより窒素を吹き込み、第7、8バレルにて脱気を行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン組成物の重量平均分子量は27,000、無水マレイン酸のグラフト率は3.2重量%、190℃における溶融粘度1.3Pa・sであった。
【0030】
(実施例−5)
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた1L容4ッ口フラスコ中に、エチレン−プロピレン共重合体(プロピレン含量80%、重量平均分子量約40,000)75g、トルエン425gを投入し、トルエンの環流温度で溶解した後、85℃に調整した。窒素置換し、撹拌しながらメタクリル酸3g、アクリル酸シクロヘキシル72g、メタクリル酸イソブチル150g、メタクリル酸グリシジル3g、過酸化ベンゾイル(60%キシレン溶液)1.5g、ドデシルメルカプタン0.8gを4時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。未反応物等を減圧留去して、生成物を取り出し、重量平均分子量30,000、メタクリル酸グラフト率2.1重量%、他のアクリルのグラフト率168重量%、190℃における溶融粘度1.9Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0031】
(実施例−6)
実施例−5におけるメタクリル酸グリシジルを2−ブタノンオキシムでブロックしたメタクリル酸2−エチルイソシアネートに置き換えて反応を行い、重量平均分子量26,000、メタクリル酸グラフト率2.1重量%、他のアクリルのグラフト率175重量%、190℃における溶融粘度1.0Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0032】
(実施例−7)
L/D=60、φ=15mmの二軸押出機に、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン含量68%、重量平均分子量40,000)100重量部、無水マレイン酸6重量部、パーヘキサ25B 2重量部を投入した。次に、第3バレルよりアクリル酸2−ヒドロキシエチル2重量部を投入し、更に第5バレルよりメタクリル酸メチル20重量部、パーブチルI4重量部、ドデシルメルカプタン1重量部を投入した。滞留時間は10分、バレル温度は80℃(第1バレル)、180℃(第2バレル)、150℃(第3、4バレル)、100℃(第5〜7バレル)、50℃(第8バレル)として反応し、第1バレルより窒素を吹き込み、第8バレルにて脱気を行い、残留する未反応物を除去した。得られた変性ポリオレフィン組成物の重量平均分子量は32,000、無水マレイン酸のグラフト率は3.6重量%、他のアクリルのグラフト率は14重量%、190℃における溶融粘度2.3Pa・sであった。
【0033】
(比較例−1)
エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン含量65%、重量平均分子量約90,000)35gをラボプラストミル(東洋精機製)に投入し、170℃にて溶融した後、試料投入口より窒素を流しながら無水マレイン酸2.1g、スチレン1.5g、パーブチルD(日本油脂製)0.7gを添加し、10分間混練した。反応物を取り出して、室温まで冷却し、重量平均分子量75,000、無水マレイン酸グラフト率5.4重量%、スチレングラフト率2.3重量%、190℃における溶融粘度7.7Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0034】
(比較例−2)
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた5L容4ッ口フラスコ中に、エチレン−プロピレン共重合体(プロピレン含量80%、重量平均分子量約40,000)75g、トルエン425gを投入し、トルエンの環流温度で溶解した後、85℃に調整した。窒素置換し、撹拌しながらメタクリル酸3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.5g、アクリル酸シクロヘキシル72g、メタクリル酸イソブチル600g、過酸化ベンゾイル(60%キシレン溶液)10gを8時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。未反応物等を減圧留去して、生成物を取り出し、重量平均分子量90,000、メタクリル酸グラフト率2.1重量%、他のアクリルのグラフト率620重量%、190℃における溶融粘度8.8Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0035】
(比較例−3)
L/D=60、φ=15mmの二軸押出機に、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン成分68%、重量平均分子量40,000)50重量部、エチレン−無水マレイン酸共重合体(エチレン成分90重量%、無水マレイン酸成分10重量%、重量平均分子量25,000)50重量部、無水シトラコン酸4重量部、ジクミルパーオキサイド1.5重量部を投入した。滞留時間は10分、バレル温度は80℃(第1バレル)、180℃(第2〜6バレル)、100℃(第7バレル)、50℃(第8バレル)として反応し、第1バレルより窒素を吹き込み、第7、8バレルにて脱気を行い、残留する未反応物除去した。得られた変性ポリオレフィン組成物の重量平均分子量は157,000、無水シトラコン酸のグラフト率は3.6重量%、190℃における溶融粘度12.3Pa・sであった。
【0036】
(比較例−4)
液状ポリオレフィン(ルーカントHC−600、三井化学製、数平均分子量約2,500)35gをラボプラストミル(東洋精機製)に投入し、130℃にて溶融した後、試料投入口より窒素を流しながら無水マレイン酸2.1g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.4g、パーブチルC(日本油脂製)0.7gを添加し、10分間混練した。反応物を取り出して、室温まで冷却し、重量平均分子量7,000、無水マレイン酸グラフト率3.7重量%、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのグラフト率0.4重量%、190℃における溶融粘度0.1Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0037】
(比較例−5)
エチレン−プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン含量65%、重量平均分子量約35,000)40gをラボプラストミル(東洋精機製)に投入し、170℃にて溶融した後、試料投入口より窒素を流しながら無水マレイン酸0.1g、パーヘキサ25B 0.7gを添加し、10分間混練した。反応物を取り出して、室温まで冷却し、重量平均分子量25,000、無水マレイン酸グラフト率0.2重量%、190℃における溶融粘度0.8Pa・sの変性ポリオレフィン組成物を得た。
【0038】
次に、実施例1〜7、比較例1〜5で得られた樹脂について以下の処方で型内塗装用塗料を調製した。
実施例1〜7、及び比較例1〜5で得られた樹脂 :30重量部
トリレンジイソシアネート(2,4-体:2,6-体=8:2) :35重量部
ヘキサメチレンジイソシアヌレート :7重量部
1,6-ヘキサンジオール :26重量部
トリメチロールプロパン :2重量部
ジブチル錫ジラウレート :0.7重量部
酸化チタン(ルチル型) :30重量部
カーボンブラック :3重量部
【0039】
上記の処方で得られた各塗料約5gを70mm×150mm大の超高剛性PP板上に乗せ、送風乾燥機内で180℃、5分間加温して、すぐにバーコーターで膜厚約500μmになるように均一に塗り伸ばした。再度乾燥機中で180℃、20分間加温した後、72時間室温で養生して以下の塗膜試験を行った。結果を表1に示す。
平滑性試験
塗膜の平滑性を目視にて評価した。
付着性試験
塗膜表面にカッターで素地に達する切れ目を入れ、1mm間隔で100個の碁盤目を作り、その上にセロファン粘着テープを密着させて180°方向に5回引き剥がし、残存する碁盤目の数を数えた。
タック性試験
塗膜表面を指で軽く抑えた時のべとつきをタック性の指標とした。
【0040】
【表1】
表1
Figure 0004123715
※表中、
平滑性: ○:良好 △:やや凹凸有り ×:凹凸有り
付着性: 未試験:平滑性不良のものについては試験せず
タック性: ○:タック無し △:タックやや有り ×:タック強い
【0041】
【発明の効果】
型内塗装用樹脂としては、使用温度にて良好な流動性を有するものが求められるが、比較例1、2のように分子量が40,000より大きく、190℃での溶融粘度が3.5Pa・sより大きい場合には、500μmという薄い被膜にする場合には良好な平滑性が得られない。実際に金型に流し込んだ場合には、流動性不良によって塗装ムラ等の塗膜欠陥を生ずる。さらに分子量の大きい比較例3の場合、これらの欠陥は更に顕著である。
【0042】
一方、分子量が7,000と小さい比較例4では、流動性は良好であるが、塗膜にタックが生じる。
【0043】
また無水マレイン酸グラフト量の少ない比較例5では、付着性試験において塗膜層内での剥離を起こす。これは併用する他樹脂との相溶性が不足することに由来する。
【0044】
以上の結果から、本発明の樹脂が型内塗装用樹脂として極めて有用であるといえる。

Claims (6)

  1. プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
  2. プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体と不飽和カルボン酸誘導体を0.1〜50重量%含有するエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体が80:20〜98:2(重量比)である混合樹脂100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
  3. プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下、及びエチレン性不飽和モノマーを0.1重量部以上500重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
  4. プロピレン含有量が50%以上98%以下のプロピレン共重合体と不飽和カルボン酸誘導体を0.1〜50重量%含有するエチレン系化合物−不飽和カルボン酸共重合体が80:20〜98:2(重量比)である混合樹脂100重量部に対して、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を0.5重量部以上20重量部以下、及びエチレン性不飽和モノマーを0.1重量部以上500重量部以下グラフト重合した、重量平均分子量が10,000以上40,000以下で、190℃での溶融粘度が0.2以上3.5Pa・s以下の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
  5. 不飽和カルボン酸及び/又はその無水物とエチレン性不飽和モノマーが100:1〜1:500(重量比)である請求項3又は4記載の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
  6. 前記プロピレン共重合体が、プロピレン−エチレン共重合体及び/又はプロピレン−エチレン−ブテン共重合体である請求項1〜5いずれか1項記載の変性ポリオレフィン組成物を用いたポリオレフィン基材の型内塗装用樹脂組成物
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