JPH0742943B2 - スクロール気体圧縮機 - Google Patents

スクロール気体圧縮機

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JPH0742943B2
JPH0742943B2 JP63159990A JP15999088A JPH0742943B2 JP H0742943 B2 JPH0742943 B2 JP H0742943B2 JP 63159990 A JP63159990 A JP 63159990A JP 15999088 A JP15999088 A JP 15999088A JP H0742943 B2 JPH0742943 B2 JP H0742943B2
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    • F01CROTARY-PISTON OR OSCILLATING-PISTON MACHINES OR ENGINES
    • F01C17/00Arrangements for drive of co-operating members, e.g. for rotary piston and casing
    • F01C17/06Arrangements for drive of co-operating members, e.g. for rotary piston and casing using cranks, universal joints or similar elements
    • F01C17/066Arrangements for drive of co-operating members, e.g. for rotary piston and casing using cranks, universal joints or similar elements with an intermediate piece sliding along perpendicular axes, e.g. Oldham coupling

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はスクロール圧縮機の過負荷軽減装置を兼ねた自
転阻止装置に関するものである。
従来の技術 低振動,低騒音特性を備えたスクロール圧縮機は、吸入
室が外周部にあり、吐出ポートが渦巻きの中心部に設け
られ、圧縮流体の流れが一方向で、往復動式圧縮機や回
転式圧縮機のような流体を圧縮するための吐出弁を必要
とせず、圧縮比が一定で、吐出脈動も小さくて大きな吐
出空間を必要とせず、各分野への利用展開の実用化研究
がなされている。
しかし、圧縮室のシール部が多いので、圧縮流体の漏れ
が多く、特に、家庭空調用冷媒圧縮機のような小排除容
量のスクロール圧縮機の場合などは、圧縮部の漏れ隙間
を小さくするために、渦巻き部の寸法精度を極めて高く
する必要があるが、部品形状の複雑さに伴いスクロール
圧縮機のコストが高いという欠点があり、渦巻き部以外
の部品のコスト低減が望まれている。
また、渦巻き部の寸法精度のバラツキにより、特に圧縮
機低速度運転状態では、圧縮効率が往復動式圧縮機や回
転式圧縮機よりも低いという欠点を有している。
そこで、この種の課題解決のための方策として、圧縮途
中の気体漏れ防止のために潤滑油を利用して油膜シール
効果により、渦巻き部寸法精度の適性化と圧縮効率向上
を期待することが大きく、特開昭57−8386号公報にも記
載されているように、吐出室底部の潤滑油を減圧して、
圧縮途中の圧縮室に流入させる構成が考えられている。
また、スクロール圧縮機の低振動特性を生かした別の方
策として、スクリュー圧縮機などで実施されているよう
に、圧縮機を高速度運転させ、単位時間当たりの圧縮気
体漏れ量を少なくして圧縮効率の低下を防ぐ方法もあ
り、前者よりも後者の方が一般に良く知られている。
また、旋回スクロールは、駆動軸のクランク機構と自転
阻止機構によって公転するので、旋回スクロールに生じ
る遠心力は、駆動軸の旋回スクロール係合軸受部に作用
するが、駆動軸に適当なバランスウエイトを設けること
により、駆動系の動バランスを均衡させ、駆動軸系の振
動を低下させる方策がなされている。
また、駆動軸の片側にのみ圧縮部を有する構成のスクロ
ール圧縮機は、旋回スクロールの自転阻止部材が旋回ス
クロールに係合して往復運動するために、旋回部分(旋
回スクロールと自転阻止部材)の重心位置が駆動軸の回
転角度に伴い変動する。そのため、駆動系の動バランス
を完全に均衡させ得ないという問題を有していることか
ら、自転阻止部材の軽量化が是非必要な課題であること
も知られている。
特に、高速度運転して圧縮効率を向上する圧縮機におい
ては、旋回スクロールの遠心力を支持する駆動軸の旋回
スクロール係合軸受部の軸受負荷を軽減するために、ア
ルミニウム合金などの軽比重部材で旋回スクロールを構
成する場合が多い。このような理由で、駆動系の不均衡
を少なくして低振動のスクロール圧縮機を実現するため
に、自転阻止部材の軽量化は最も重要な課題の一つであ
ることも知られている。
また、旋回スクロールの具体的な自転阻止機構は、第15
図〜第17図のような構成が以前から考えられている。
同図は、環状板3091の両面にキー溝3096,3097とキー溝3
098,3099が設けられ、両側のキー溝は互いに環状板3091
の中心で直交し、それぞれのキー溝には旋回スクロール
3020とハウジング30348に固定されたキー3100などが微
少隙間で係合摺動して自転阻止機構を形成している(米
国特許第3924977号明細書)。
また、第18図のように、環状板4061の両面に平行キー部
4059を設けて旋回スクロールなどの相手部材にキー溝を
設けたもの、また、第19図のように上記例を組み合わせ
た形状のもの(実公昭62−21756号公報)、さらには第2
0図,第21図のように第18図のキー部をその中心で回転
可能にしたもの(特開昭53−34107号公報)など、自転
阻止部材の軽量化やキー部の耐摩耗性改善の工夫がなさ
れている。
また、スクロール圧縮機は圧縮比が一定で、常時密閉空
間の圧縮室が存在するので、圧縮のための吐出弁を必要
とする往復動式圧縮機や、回転式圧縮機の場合よりも液
圧縮が生じ易い。当然のことながら、圧縮効率向上のた
めの圧縮室への油インジェクション機能を備えたスクロ
ール気体圧縮機に液圧縮が生じる機会が多い。それゆ
え、スクロール圧縮機では、液圧縮回避のための過負荷
軽減装置を備えることが不可欠である。
また、自転阻止部材の平行キー部に作用する負荷トルク
が、旋回スクロールの旋回慣性力と、駆動軸と旋回スク
ロールとの係合軸受部に作用する摩擦力とに起因してい
ることから、圧縮機の高速運転時や圧縮過負荷運転時に
は、自転阻止部材の平行キー部に過大な負荷トルクが作
用するので、自転阻止部材はその負荷に充分耐える剛性
が必要であり、自転阻止部材の軽量化実現のためにも、
上述した過負荷軽減装置が是非とも必要である。
この液圧縮問題解決のための方策として、第22図の構成
が考えられている。同図は、固定スクロール2001eを軸
方向に移動可能な構成にし、板バネ2023eの付勢力と背
圧室2015に吐出圧力を導入して、その背圧力とで固定ス
クロール2001eを旋回スクロール2001dに押圧し、旋回ス
クロール2001dと、固定スクロール2001eとの間の軸方向
隙間を無くして圧縮室の密封を図り、圧縮効率を高める
と共に、圧縮室内で液圧縮が生じた時、固定スクロール
2001eが旋回スクロール2001dから軸方向に離反して圧縮
室圧力を降下せしめて負荷を軽減する構成である(米国
特許3600114号明細書)。
発明が解決しようとする課題 しかし、第20図,第21図の構成は部品数が多く、コスト
高で軽量化が困難である。
また、それ以外の自転阻止部材はいずれも環状板の両面
に平行キー部またはキー溝を組み合わせた形状で、旋回
スクロールの回転方向バックラッシュを少なくして圧縮
気体漏れを少なくするために、摺動部の平行精度やキー
溝またはキー幅寸法にも高精度を要する。
したがって、平行キー側面やキー溝の加工は片面毎の加
工をする必要があり、加工物の治具等への取り付け、取
り外しおよび加工時間が長くなり多量生産性に問題があ
った。
また、部品素材の制作においても、環状板の両面に凹凸
が有る異形状のために、素材の型打ち成形や焼結成形な
どの多量生産工法において、環状板の反りを少なくする
必要から薄板形状寸法に制約が生じ、精密寸法加工後の
部品軽量化にも限度があった。また、素材成形工程が多
くなるなど、素材コスト、加工コストが極めて高いとい
う課題もあった。
また、第22図のように、固定スクロール2001eを旋回ス
クロール2001dに常に押圧する構成では、その付勢力を
大きくする必要があり、両スクロールの接触面の摩擦や
摩耗により耐久性が低下し、入力損失も大きいという課
題があった。
また、過負荷軽減機構を構成する部分のスペースを特別
に必要とし、圧縮機が大きくなるという課題もあった。
また、過負荷防止策として米国特許3817664号明細書な
どのように、旋回スクロールを駆動軸の主軸と直角方向
に移動させる構成も考えられているが、圧縮室のシール
長さの短い第22図の構成の場合よりも負荷軽減応答速度
が遅く、高速運転する圧縮機の過負荷軽減策として充分
でないという課題があった。言うまでもなく、部品構成
も複雑で、コストも高く、圧縮機の外形寸法が大きくな
るなどの課題もあり、軽量,安価な自転阻止装置と安
価,省スペースで実質的に有効な圧縮過負荷軽減装置を
備えたスクロール圧縮機の実現が望まれていた。
課題を解決するための手段 上記課題を解決するために本発明のスクロール圧縮は、
渦巻き部とそれを支持するラップ支持円板とから成る旋
回スクロールがラップ支持円板の自転阻止部材を介して
旋回スクロールに旋回運動させる駆動軸を支承する本体
フレームと固定スクロールとの間に配置され、ラップ支
持円板は、本体フレームの側に設けられて軸方向にのみ
移動が可能な環状のスラスト軸受と固定スクロールの鏡
板との間に配置され、スラスト軸受は、吐出流体圧力ま
たは吐出圧力と吸入圧力との間の中間圧力流体を利用し
て常に旋回スクロールの方向に付勢されながら、且つ、
スラスト軸受と鏡板との間の最小寸法が、ラップ支持円
板の円板厚さに対して、少なくともラップ支持円板の両
面に油膜形成可能な隙間相当大きく確保できるべく配置
され、自転阻止部材は、ラップ支持円板とスラスト軸受
との間に配置されて概略楕円形状を成した環状板が、環
状板の概略中心を通る軸線上のラップ支持円板の側の面
に対称位置に設けた一対の突出部と、環状板の外周両側
面に軸線に直交して設けた平行な平面部とから成り、突
出部がラップ支持円板に設けた一対のガイド溝に摺動可
能に係合し、スラスト軸受の中央部に、ガイド溝に直交
する一対の平行な平面部を有した輪郭のガイド穴を設
け、ガイド穴の平行な平面部に環状板外周両側面の平面
部が摺動可能に係合すべく構成されたものである。
作用 本発明は上記構成によって、形状が小型で簡単なために
素材成形、加工成形時の環状板の反りが少なく、軽量で
摺動部寸法精度を高くすることの出来る自転阻止部材
が、旋回スクロールとスラスト軸受とに係合して、駆動
軸の回転に伴いスラスト軸受の内側で往復運動し、旋回
スクロールの自転阻止機能を省スペースで成してスクロ
ール圧縮室で吸入・圧縮作用が行われる。軽量の自転阻
止部材が往復運動して運動方向を変える時の慣性力の変
化や摺動部隙間のバックラッシュを少なくすると共に、
旋回スクロールに追従して往復運動して可動部材の重心
位置変化を小さくし、駆動軸系の不釣り合い量を少なく
して小型・軽量が可能な圧縮機への加振力を低減させ、
圧縮機高速運転時でも振動を少なくする。
また、圧縮室圧力が正常で、順次移行する圧縮室の圧縮
圧力により、旋回スクロールに作用してスラスト軸受の
側に向かうスラスト力が、スラスト軸受に作用する付勢
力よりも小さい場合は、旋回スクロールと固定スクロー
ルとの間で軸方向に微少隙間が保たれて圧縮室の密封を
維持し、効率の良い圧縮作用をすると共に、ある程度の
負荷変動時や加減速運転時、高速運転時でも旋回スクロ
ールのジャンピングや傾きを防止して振動の少ない静粛
な圧縮運転を続ける。
万一、液圧縮などが生じて瞬時的に圧縮室圧力が異常上
昇した場合は、旋回スクロールに作用するスラスト力が
スラスト軸受に作用する付勢力よりも大きくなり、スラ
スト軸受は、本体フレームとの間の隙間を小さくする方
向に移動し、旋回スクロールと固定スクロールとの間の
軸方向隙間が大きくなる。その結果、圧縮室の密封を解
除して圧縮圧力を降下せしめ、圧縮負荷を軽減し、再び
正常な圧縮運転に復帰させて動力損失の低減を図ると共
に、圧縮機の破損や摺動部の摩耗を防止して効率,振
動,騒音,耐久性に優れた、小型のスクロール圧縮機を
提供できる。
実 施 例 以下、本発明の一実施例のスクロール圧縮機について、
図面を参照しながら説明する。
第1図において、1は鉄製の密閉ケースで、その内部は
吐出室2に連通する高圧雰囲気となり、上部にモータ
3、下部に圧縮部を配置し、モータ3の回転子3aに固定
された駆動軸4を支承する圧縮部の本体フレーム5によ
り、密閉ケース1の内部がモータ室6と吐出室2とに仕
切られている。本体フレーム5は軽量化と軸受部の熱発
散を主目的とした熱伝導特性に優れたアルミニウム合金
製で、その外周部に溶接性に優れた鉄製のライナー8が
焼ばめ固定され、ライナー8の外周面が密閉ケース1に
全周内接し部分的に溶接固定されている。
モータ3の固定子3bの両端外周部は、密閉ケース1に内
接固定された軸受フレーム9と本体フレーム5によって
支持固定されている。駆動軸4は軸受フレーム9に設け
られた上部軸受10、本体フレーム5の上端部に設けられ
た下部軸受11、本体フレーム5の中央部に設けられた主
軸受12、本体フレーム5の上端面とモータ3の回転子3a
の下部端面との間に設けられたスラスト玉軸受13とで支
持され、その下端部には駆動軸4の主軸から偏心した偏
心軸受14が設けられている。
本体フレーム5の下端面にはアルミニウム合金製の固定
スクロール15が固定され、固定スクロール15は、渦巻き
状の固定スクロールラップ15aと鏡板15bから成り、鏡板
15bの中央部には、固定スクロールラップ15aの巻き始め
部に開口する吐出ポート16が吐出室2にも開口して設け
られ、固定スクロールラップ15aの外周部には吸入室17
が設けられている。
固定スクロールラップ15aに噛み合って圧縮室を形成す
る渦巻き状の旋回スクロールラップ18aと、駆動軸4の
偏心軸受14に支持された旋回軸18bとを直立させたラッ
プ支持円板18cとから成るアルミニウム合金製の旋回ス
クロール18は、固定スクロール15と本体フレーム5と駆
動軸4とに囲まれて配置されており、旋回軸18bの外周
部に高張力鋼材料から成るスリーブ14が焼ばめ固定さ
れ、ラップ支持円板18cの表面は硬化処理されている。
本体フレーム5に固定された割りピン形の平行ピン19に
拘束されて軸方向にのみ移動が可能なスラスト軸受20と
固定スクロール15の鏡板15bとの間には、スペーサ21が
設けられ、スペーサ21の軸方向寸法は油膜による摺動面
のシール性向上のためにラップ支持円板18cの厚さより
も約0.015〜0.020mm大きく設定されている。
駆動軸4の偏心軸受14の底部と旋回スクロール18の旋回
軸18bの軸部との間の偏心軸受空間36と、ラップ支持円
板18cの外周部空間37とは旋回軸18bとラップ支持円板18
cに設けられた油穴A38aにより連通されている。
スラスト軸受20は抜き穴の成形加工が容易な焼結合金製
で第2図,第5図,第6図のように、その中央部が2つ
の平行な直線部分22と、それに連なる2つの円弧状曲線
部分23から成る形状に精密寸法で貫通成形されたガイド
穴99が設けられ、直線部分22の中央部のヘコミ部は逃げ
溝98である。
なお、2つの平行ピン19の割り部19aの向きは、直線部
分22の方向と一致している。
旋回スクロール18の自転阻止部材(以下、オルダムリン
グという)24は、焼結成形や射出成形工法などに適した
軽合金や強化繊維複合樹脂材料から成り、含油特性を有
し、軽量化のために、第4図のように両面が平行な薄い
環状板24aとその一面に設けられた一対の平行キー部分2
4bとから成り、環状板24aの厚さは、スラスト軸受20よ
りも僅かに薄く設定されており、その外輪郭は2つの平
行な直線部分25とそれに連なる2つの円弧状曲線部分26
から成り、直線部分25が第6図のようにスラスト軸受20
の直線部分22に微少隙間で係合し摺動可能であり、平行
キー部分24bの側面24cは、直線部分25の中央部で直交
し、第1図,第2図のように旋回スクロール18のラップ
支持円板18cに設けられた一対のキー溝71に微少隙間で
係合し摺動可能な形状に設定されている。なお、環状板
24aの内輪郭は外輪郭に類似した形状である。また、平
行キー部分24bの付け根に設けられた浅いヘコミ部24dは
潤滑油の通路にもなる。また、円弧状曲線部分に設けら
れた極浅のヘコミ部24eも同様な潤滑油の通路であり、
円弧状の細い油溝24gは潤滑油溜部である。
第1図,第3図のように、本体フレーム5とスラスト軸
受20との間には約0.1mmのレリース隙間27が設けられ、
そのレリース隙間27に対向して本体フレーム5にも環状
溝28が設けられ、環状溝28を囲んだゴム製のシールリン
グ70が本体フレーム5とスラスト軸受20との間に装着さ
れている。
モータ室6の上部と吐出室2とは、密閉ケース1の側壁
を貫通して接続されたバイパス吐出管29を介して連通
し、バイパス吐出管29のモータ室6への開口位置は、固
定子3bの上部コイルエンド30の側面に対向し、バイパス
吐出管29の上部開口端と密閉ケース1の上面に接続され
た吐出管31とは、軸受フレーム9に設けられた抜き穴3
2、密閉ケース1の上面と軸受フレーム9との間に配置
され多数の小穴を有したパンチングメタル33を介して連
通している。
モータ室6の下部に設けられた吐出室油溜34は、モータ
室6の上部とモータ3の固定子3bの外周の一部をカット
して設けた冷却通路35により連通されている。また、吐
出室油溜34は本体フレーム5に設けられた油穴B38bを経
由して環状溝28に通じると共に、オルダムリング24が配
置された旋回スクロール18の背圧室39にも主軸受12の摺
動部微少隙間を介して通じ、更に偏心軸受14に設けられ
た油溝A40aを介して偏心軸受け空間36へも連通してい
る。
また、本体フレーム5に設けられた油穴B38bは、駆動軸
4の下部軸受け11に対応する下部軸部4aの表面に設けら
れた螺旋状油溝41にも通じており、螺旋状油溝41の巻き
方向は、駆動軸4が正回転する時に潤滑油の粘性を利用
したネジポンプ作用の生じるように設けられ、その終端
は下部軸受4aの途中まで形成されている。
第7図,第8図のように、固定スクロール15は吸入室17
の両端を連通する円弧状の吸入通路42が設けられ、それ
に直交する円形の吸入穴43が固定スクロールラップ15a
の側面に対しても直角方向に設けられ、吸入穴43の底部
は平面で吸入通路42の側面にまで到達している。
また、第9図のように、吸入穴43の中心は吸入通路42の
底面44とずれており、吸入通路42への開口部寸法W45は
吸入穴43の直径寸法より小さく設けられている。また、
吸入穴43にはアキュームレータ46の吸入管47が接続され
ており、吸入穴43の底面44と吸入管端面48との間には、
吸入管47の内径寸法および吸入管端面48と底面44との間
の吸入穴深さ寸法L49よりも大きく、且つ開口寸法W45よ
りも大きい円形薄鋼板の逆止弁50が配置されている。逆
止弁50の表面は油濡れ特性が悪く弾力性に富んだテフロ
ンまたはゴムなどがコーティングされている。
吸入室17にも吐出室2にも連通しない第2圧縮室51と外
周部空間37とは、第2圧縮室51に開口して鏡板15bに設
けられた細径のインジェクション穴52、鏡板15bと樹脂
製の断熱カバー53とで形成されたインジェクション溝5
4、外周部空間37に開口した段付き形状の油穴C38cとか
ら成るインジェクション通路55で連通され、油穴C38cの
大径部56には、第10図に示すような外周の一部に切欠き
57を有する薄鋼板製の逆止弁58とコイルスプリング59と
が配置されている。
コイルスプリング59は、断熱カバー53に押さえられて逆
止弁58を常時付勢する。外周部空間37への油穴C38cの開
口位置は、第11図,第12図に示す如く、吐出ポート16に
連通する第3圧縮室60の容積減少行程が終了する近傍に
まで旋回スクロール18が移動した(第11図参照)時に、
外周部空間37と油穴C38cとが連通し、それ以外の時(第
12図参照)にはラップ支持円板18cによって遮断される
位置に設けられている。
第13図において、横軸は駆動軸4の回転角度を示し、縦
軸は冷媒圧力を示し、吸入・圧縮・吐出過程における冷
媒ガスの圧力変化状態を示し、実線62は正常圧力で運転
時の圧力変化を示し、点線63は異常圧力上昇時の圧力変
化を示す。
第14図において、横軸は駆動軸4の回転角度を示し、縦
軸は冷媒圧力を示し、実線64は吐出室2にも吸入室17に
も連通しない第2圧縮室51a,51bのインジェクション穴5
2a,52bの開口位置における圧力変化を示し、点線65は、
吸入室17に連通する第1圧縮室61a,61b(第7図参照)
の定点における圧力変化を示し、一点鎖線66は、吐出室
2に連通する第3圧縮室60a,60bの定点における圧力変
化を示し、二点鎖線67は、第1圧縮室61a,61bと第2圧
縮室51a,51bとの間の定点における圧力変化を示し、二
重点線68は、背圧室39の圧力変化を示す。
以上のように構成されたスクロール気体圧縮機につい
て、その動作を説明する。
第1図〜第14図において、モータ3によって駆動軸4が
回転駆動すると旋回スクロール18は、駆動軸4のクラン
ク機構によって駆動軸4の主軸回りに回転しょうとする
が、オルダムリング24の平行キー部分24bが旋回スクロ
ール18のキー溝71に係合し、直線部分25が回転を阻止さ
れたスラスト軸受20の直線部分に係合しているので、自
転を阻止され、公転運動をして固定スクロール15と共に
圧縮室の容積を変化させ、冷媒ガスの吸入・圧縮作用を
行う。そして、圧縮機に接続した冷凍サイクルから潤滑
油を含んだ吸入冷媒ガスが、アキュームレータ46に接続
した吸入管47、吸入穴43、吸入通路42を順次経て吸入室
17に流入し、旋回スクロール18と固定スクロール15との
間に形成された第1圧縮室61a,61bを経て圧縮室内に閉
じ込められ、常時密閉空間となる第2圧縮室51a,51b、
第3圧縮室60a,60bへと順次移送圧縮され、中央部の吐
出ポート16を経て吐出室2へと吐出される。
圧縮機内圧力が均衡した状態からの圧縮機起動初期に
は、圧縮室内の圧縮冷媒圧力によって旋回スクロール18
に吐出ポート16と反対の方向のスラスト力が作用する。
しかし、旋回スクロール18の背面には付勢に必要な背圧
力が生じていないので、旋回スクロール18が固定スクロ
ール15から離れスラスト軸受20に支持される。この時、
圧縮室の軸方向には約0.015〜0.020mmの隙間が生じる。
その結果、圧縮室内圧力が一時的に降下して、起動初期
の圧縮負荷が軽減する。
なお、スラスト軸受20が旋回スクロール18を支持する初
期の支持力は後述する如く、シールリング70の弾性力と
補助的なバネ装置(例えば、第22図の2023のような板バ
ネ)に依存する。
万一、圧縮室内で液圧縮などが生じて瞬時的に圧縮室圧
力が異常上昇した場合でも、旋回スクロール18に作用す
るスラスト力が旋回スクロール18の背面に作用する付勢
力よりも大きくなり、旋回スクロール18が軸方向に移動
し、旋回スクロール18のラップ支持円板18cが固定スク
ロール15の鏡板15bから離れてスラスト軸受20に支持さ
れると共に、圧縮室の密封が解除して、圧縮室圧力が降
下し、圧縮負荷が軽減する。
潤滑油を含んだ吐出冷媒ガスは、圧縮機外部へ配管され
たバイパス吐出管29を経て再び圧縮機内のモータ室6に
帰還した後、外部の冷凍サイクルへ吐出管31から排出さ
れるが、モータ室6に流入する際に、モータ3の上部コ
イルエンド30の側面に衝突してモータ巻き線の表面に付
着する。これにより、潤滑油の一部が分離され、その
後、軸受フレーム9に設けられた抜き穴32を通過する際
に、流れ方向を変えたり、パンチングメタル33の小穴を
通る際に、潤滑油の慣性力や表面付着により潤滑油が効
果的に分離される。
吐出ガスから分離された潤滑油の一部は、上部軸受の摺
動面を潤滑した後、残りの潤滑油と共に冷却通路35を通
り、モータ3を冷却しながら吐出室油溜34に収集され
る。
吐出室油溜34の潤滑油は、駆動軸4の下部軸部4aの表面
に設けられた螺旋状油溝41のネジポンプ作用により、ス
ラスト玉軸受13へ給油され、下部軸部4aの端部の微少軸
受隙間を潤滑油が通過する際に、その油膜のシール作用
により、モータ室6の吐出冷媒ガス雰囲気と主軸受12の
上流側空間とが遮断される。
吐出室油溜34の溶解吐出冷媒ガスを含んだ潤滑油は、主
軸受12の微少隙間を通過する際に、吐出圧力と吸入圧力
との中間圧力に減圧され、背圧室39に流入する。
背圧室39の潤滑油は、オルタムリング24がスラスト軸受
20のガイド穴99を往復運動することによって、オルダム
リング移動空間77a,77bをポンプ室とし、オルダムリン
グ24の環状板24a上面に設けたヘコミ部24eを吸入通路と
し、平行キー部24b近傍の通路24dを吐出通路とするポン
プ経路を循環してオルダムリング24に係わる摺動部を強
制潤滑する。また、その一方、潤滑油は、偏心軸受14の
油溝A40a、偏心軸受空間36、旋回スクロール18を通る油
穴A38を経て漸次減圧されながら外周部空間37に流入
し、更に間欠的に開口する油穴C38c、インジェクション
溝54、インジェクション穴52a,52bを経て第2圧縮室51
a,51bに流入し、その通路途中の各摺動面を潤滑する。
また、吐出室油溜34は、環状溝28やレリース隙間27とも
通じているので、スラスト軸受20はその背圧力により付
勢されてスペーサ21の端面に当接する。そして、旋回ス
クロール18のラップ支持円板18cは、スラスト軸受20と
固定スクロール15の鏡板15bとの間で微少隙間を保持さ
れて円滑に摺動すると共に、固定スクロールラップ15a
の端面とラップ支持円板18cとの間、旋回スクロールラ
ップ18aの端面と鏡板15bとの間の隙間も微少に保持され
て隣接する圧縮室間の気体漏れを少なくする。
第2圧縮室51a,51bのインジェクション穴52a,52b開口部
は、第14図の如くの圧力変化をし、吐出室2の圧力に追
従して変化する背圧室圧力68よりも瞬時的に高いが平均
圧力が低い。そのため、背圧室39からの潤滑油は、間欠
的に第2圧縮室51a,51bに流入し、また、正常運転時の
背圧室圧力68よりも瞬時的に高い第2圧縮室51a,51b内
の圧縮冷媒ガスは、細径のインジェクション穴52a,52b
で減圧されて瞬時的なインジェクション溝54への逆流が
少なく、インジェクション溝54内の圧力が背圧室圧力68
よりも高くならない。
第2圧縮室51a,51bにインジェクションされた潤滑油
は、吸入冷媒ガスと共に圧縮室に流入した潤滑油と合流
し、隣接する圧縮室間の微少隙間を油膜により密封して
圧縮冷媒ガス漏れを防ぎ、圧縮室間の摺動面を潤滑しな
がら圧縮冷媒ガスと共に吐出室2に再び吐出される。
また、前述のように圧縮機起動初期にはシールリング70
の弾性力やバネ装置によりスラスト軸受20を介して旋回
スクロール18を支持するが、圧縮機起動安定後の背圧室
39に差圧給油された潤滑油は、中間圧力の付勢力を旋回
スクロール18に作用させて、ラップ支持円板18cを鏡板1
5bとの摺動面に押圧油膜シールし、外周部空間37と吸入
室17との間の連通を遮断する。また、背圧室39の潤滑油
は、スラスト軸受20とラップ支持円板18cとの摺動面の
隙間に介在し、ラップ支持円板18cとスラスト軸受20と
の隙間(約0.015〜0.020mm)を密封する。
また、圧縮機の冷時起動後しばらくの間は、第13図,第
14図から理解できるように、吐出室2の圧力が第2圧縮
室51a,51bの圧力よりも低く、圧縮途中の冷媒ガスが第
2圧縮室51a,51bからインジェクション通路55を経て背
圧室39に逆流しようとするが、逆止弁58の逆止作用によ
って外周部空間37への逆流が阻止され、吐出室油溜34の
潤滑油は、吐出室2の圧力上昇と共に背圧室39、外周部
空間37にまで差圧給油される。その後、吐出室2の圧力
上昇に伴い、外周部空間21の潤滑油は、コイルスプリン
グ59の付勢力に抗してインジェクション穴52a,52bから
第2圧縮室51a,51bヘインジェクションされる。
したがって、冷時起動直後のように吸入冷媒ガスの圧力
が非常に高く、スクロール圧縮機の圧縮比が一定である
ことから圧縮室圧力も非常に高くなった場合、あるい
は、異常な液圧縮が生じた場合などは、上述のように旋
回スクロール18が固定スクロール15から離反し、スラス
ト軸受20に支持される。しかしながら、背圧付勢された
スラスト軸受20は、異常に上昇した圧縮室圧力により生
じて旋回スクロール18に作用するスラスト荷重を支持で
きず、レリース隙間27を減少させる方向に後退して、旋
回スクロール18と固定スクロール15との間の軸方向隙間
が拡大する。
万一、スラスト軸受20が本体フレーム5に当接まで軸方
向に後退した場合でも、オルダムリング24は円滑に往復
運動を継続する。これにより、圧縮室間に多くの漏れが
生じて圧縮室圧力が急低下し、圧縮負荷が瞬時に軽減し
た後、スラスト軸受20が瞬時に元の位置に復帰して、背
圧室39の圧力は著しい低下もせず、安定運転が再継続す
る。
また、旋回スクロール18と固定スクロール15との間の軸
方向隙間部に異物噛み混みが生じた場合も上述と同様
に、スラスト軸受20が後退して異物を除去する。
また、冷時起動初期や定常運転時に、瞬時的な液圧縮が
生じた場合の圧縮室圧力は、第13図の点線63のように異
常な圧力上昇と過圧縮が生じるが、吐出室2とそれに連
通する高圧空間容積が大きいため、吐出室圧力の上昇は
極めて小さい。
また、液圧縮により第2圧縮室51a,51bに連通するイン
ジェクション溝54なども異常圧力上昇するが、細径の油
穴C38cの絞り効果と逆止弁58の逆止作用により、外周部
空間37とインジェクション溝54との間は遮断される。そ
の結果、背圧室39の圧力は変わらず、スラスト軸受け20
の背面に作用する背圧付勢力にも変動がない。その結
果、液圧縮時には、旋回スクロール18に作用する過大な
スラスト力によって上述のようにスラスト軸受け20が後
退し、圧縮室圧力が降下して正常運転を継続する。
なお、液圧縮途中でスラスト軸受け20が後退することに
より、圧縮室圧力は第13図の一点鎖線63aの如く途中で
降圧する。
圧縮機停止後は、圧縮室内圧力により旋回スクロール18
に逆旋回トルクが生じ、旋回スクロール18が逆旋回して
吐出冷媒ガスが吸入側に逆流する。この吐出冷媒ガスの
逆流に追従して、逆止弁50が第7図の位置から第8図の
位置に移動し、逆止弁50の表面に施されたテフロン被膜
により、吸入管端面48を密封して吐出冷媒ガスの逆流を
制止し、旋回スクロール18の逆旋回が停止し、吸入通路
42と吐出ポート16との間の空間は吐出圧力を保持する。
また、インジェクション通路の逆止弁58を境にして圧縮
室に連通する通路は、吐出圧力になるが、外周部空間37
と背圧室39との間の空間は暫くのあいだ、中間圧力を保
持し、吐出室油溜34からの潤滑油微少流入により、次第
に吐出圧力に近づく。圧縮機停止時、旋回スクロール18
は逆旋回し、第3圧縮室60a,60bが拡大した位置に停止
し、油穴C38cの外周部空間37への開口部は、ラップ支持
円板18cにより遮断される。
圧縮機停止後は、コイルスプリング59の付勢力によって
も逆止弁58がインジェクション通路55を遮断するので、
外周部空間37から圧縮室への潤滑油流入がない。
また、圧縮機運転中、主軸受12の給油上流側は、吐出室
油溜34に連通し、給油下流側は中間圧力状態の背圧室39
に連通してその間に差圧が生じ、モータ3の回転子3aを
固定した駆動軸4が、旋回スクロール18の方向へ付勢さ
れる。この付勢力は、スラスト玉軸受13を介して本体フ
レーム5に支持され、駆動軸4が上部軸受10と主軸受12
との間の隙間の範囲内で、駆動軸4の不釣り合いや圧縮
負荷に起因して、倒れが生じるのを阻止して上部軸受10
と主軸受12の片当たりを防止する。
また、圧縮機運転時の温度上昇により、アルミニウム合
金製の本体フレーム5は熱膨脹して鉄製のライナー8を
拡管し、ライナー8の外周面と密閉ケース1の内壁との
密着を強めて、吐出室油溜34と吐出室2との間の気密を
向上させると共に、本体フレーム5と密閉ケース1との
固定を強めて互いの剛性向上に役立つ。
また、上記実施例では吐出室油溜34の潤滑油を第2圧縮
室51a,51bに油インジェクションしたが、圧縮機使用条
件などにより吸入室17に通じる第1圧縮室61a,61bに油
インジェクションしてもよい。
また、上記実施例ではスラスト軸受20の背面に設けたレ
リース隙間27や環状溝28に吐出室油溜34の潤滑油を導入
したが、モータ室6の吐出冷媒ガスや第2圧縮室51a,51
bなどから中間圧力冷媒ガスを導入してもよい。
以上のように上記実施例によれば、旋回スクロール18は
ラップ支持円板18cの自転阻止機構を形成するオルダム
リング24を介して旋回スクロール18に旋回運動させる駆
動軸4を支承する本体フレーム5固定スクロール15との
間に配置され、ラップ支持円板18cは本体フレーム5と
鏡板15bとの間に配置され、本体フレーム5の側に設け
られて軸方向にのみ移動が可能な環状のスラスト軸受20
と固定スクロール15との間に微少隙間を設けて挾まれて
おり、スラスト軸受20は本体フレーム5との間に適当な
軸方向のレリース隙間27を維持しながら吐出室油溜34の
潤滑油圧力を利用して、常に旋回スクロール18の方向に
背圧付勢され、オルダムリング24は旋回スクロール18の
ラップ支持円板18cと本体フレーム5とスラスト軸受20
との間に配置されて環状薄板形状を成し、ラップ支持円
板18cの側の環状板24a上に、略中心を通る軸線上の対称
位置に一対の平行キー部24bを有し、環状板24aの外周両
側面に平行キー部24bの軸線に直交する平行な一対の平
面部を設け、平行キー部24bは、ラップ支持円板18cに設
けた一対のキー溝71に摺動可能に係合し、一対の平面部
は、スラスト軸受20の内側に形成された一対の平行な平
面部を有するガイド穴99の平面部に摺動可能に係合した
ことにより、オルダムリング24の凹凸部が一面上にのみ
存在するように形状が簡単となり、その結果、素材制作
時の材質選択の自由度が高く、環状板24aの反りが少な
く、平行キー部の精密加工も容易で、薄肉による軽量化
が可能である。
また、オルダムリング24の一対の平面部の間隔や平板状
の焼結合金製のスラスト軸受20の貫通したガイド穴99の
一対の平面部の間隔が広く、且つ、形状も簡単なため
に、切削工具や成形金型のポンチ部などの寸法精度や剛
性を向上できるので、平面部の切削加工や成形加工が容
易で、平面部の寸法精度も高く、加工コストも安価であ
る。このため、オルダムリング24とスラスト軸受20との
間の摺動部隙間を少なくできる。この結果、また、旋回
スクロール18を自転阻止する際のトルクが作用する軽量
のオルダムリング24が、スラスト軸受20のガイド穴99の
直線部分22の平面部に当接して往復運動をし、その運動
方向を変える時の慣性力の変化や摺動部隙間に基づくオ
ルダムリング24のバックラッシュを少なくすることが出
来る。そのために、軸方向に移動が可能なスラスト軸受
20に与える振動が少なくなるので、定常運転時の旋回ス
クロール18のラップ支持円板18cの外周部を、固定スク
ロール15の鏡板15bとスラスト軸受20との隙間を微少保
持し、ある程度の負荷変動時、加減速運転時、高速運転
時でも旋回スクロール18の傾きやジャンピングを防止
し、振動の少ない静粛な圧縮運転を継続することが出来
る。
この結果、軸方向に移動が可能なスラスト軸受20の背面
に吐出室油溜34の潤滑油を背圧付勢する方式の実質的に
有効な過負荷軽減装置の簡易構成が可能で安価に実現で
きる。また、簡易構成のため、その過負荷軽減装置の応
答性も早く、過負荷解消後の圧縮冷媒ガスの漏れも少な
いので、過負荷軽減装置作動時の圧縮効率の低減を防止
できる。
また、スラスト軸受20が後退時に、旋回スクロール18の
ラップ支持円板18cの外周部を支持するので、ラップ支
持円板18cの傾きが少なく、旋回スクロール18と駆動軸
4との軸受部の片当たり、こじれが少なく、過負荷軽減
装置作動時の軸受耐久性の低下を防ぐことも出来る。
また、旋回スクロール18に追従し、往復移動することに
より旋回スクロール18の重心位置を変えるオルダムリン
グ24を軽量化できるので、旋回スクロール18の重心位置
変化が少なくなり、駆動系の不釣り合いも少なくでき
る。それによって、圧縮機高速運転時でも低振動を維持
することができる。
また、オルダムリング24とスラスト軸受20との間の摺動
面が広いので、摩耗が少なく、上述したように、オルダ
ムリング24のバックラッシュを少なく維持できる。これ
によって、旋回スクロール18の微少な自転が生じないの
で、圧縮室の円周方向(旋回スクロールラップと固定ス
クロールラップの渦巻き方向)の密封隙間に変動がな
く、圧縮冷媒ガスの漏れを少なくできる。また、対称な
圧縮室の圧力差も少ないので、圧縮トルクの変動を少な
く維持し、動力損失や振動を少なくできる。
また、平板状のオルダムリング24の外側に旋回スクロー
ル自転阻止機構の自転阻止摺動部を兼ねた過負荷軽減装
置用の平板のスラスト軸受20を設けているので、圧縮機
軸方向寸法増加することもなく、省スペースの過負荷軽
減装置と自転阻止機構を実現することができる。
また、スラスト軸受20のオルダムリング24との摺動平面
の中央部に一対の逃げ構98を設けているので、逃げ溝98
が潤滑油溜となり、スラスト軸受20とオルダムリング24
との間の摺動面への充分な給油ができ、摩耗,摩擦を少
なくして上述のように、動力損失や振動を少なくでき
る。また、逃げ溝98の潤滑油がダンパー作用をするの
で、スラスト軸受20とオルダムリング24との間の摺動面
で発生する衝突音を低減できる。
また、オルダムリング24の環状板24aの厚さとスラスト
軸受20の厚さとを近似させているので、スラスト軸受20
のガイド穴99とオルダムリング24の環状板24aの外周部
との間のオルダムリング移動空間77a,77bの容積が、オ
ルダムリング24の往復運動に追従して縮小・拡大するの
を利用して、背圧室39の一部を、新たな部品を要するこ
となく、環状板24a面に設けた通路24dやヘコミ部24eを
吸入・吐出通路とするポンプ室を構成することができ
る。このため、背圧室39の潤滑油をオルダムリング24の
自転阻止係合摺動部に強制給油することができ、摺動部
の摩耗,摩擦を低減し、上述のように、騒音,振動,動
力損失をより一層低減できる。
また、上記実施例では冷媒圧縮機について説明したが、
酸素,窒素,ヘリウムなど他のスクロール圧縮機の場合
も同様の作用効果を期待できる。
発明の効果 以上のように本発明は、渦巻き部とそれを支持するラッ
プ支持円板とから成る旋回スクロールが、ラップ支持円
板の自転阻止部材を介して旋回スクロールに旋回運動さ
せる駆動軸を支承する本体フレームと、固定スクロール
との間に配置され、ラップ支持円板は、本体フレームの
側に設けられて軸方向にのみ移動が可能な環状のスラス
ト軸受と固定スクロールの鏡板との間に配置され、スラ
スト軸受は、吐出流体圧力またほ吐出圧力と吸入圧力と
の間の中間圧力流体を利用して常に旋回スクロールの方
向に付勢されながら、且つ、スラスト軸受と鏡板との間
の最小寸法が、ラップ支持円板の円板厚さに対して、少
なくともラップ支持円板の両面に油膜形成可能な隙間相
当大きく確保できるべく配置され、自転阻止部材は、ラ
ップ支持円板とスラスト軸受との間に配置されて概略楕
円形状を成した環状板が、環状板の概略中心を通る軸線
上のラップ支持円板の側の面に対称位置に設けた一対の
突出部と、環状板の外周両側面に軸線に直交して設けた
平行な平面部とから成り、突出部がラップ支持円板に設
けた一対のガイド溝に摺動可能に係合し、スラスト軸受
の中央部に、ガイド溝に直交する一対の平行な平面部を
有した輪郭のガイド穴を設け、ガイド穴の平行な平面部
に環状板外周両側面の平面部が摺動可能に係合すること
により、自転阻止部材の凹凸部が一面上にのみ存在する
ように形状が簡単なために、素材制作時の材質選択の自
由度が高く最適な材料選択が可能で、焼結成形,射出成
形などで制作する時の型費用も安く、高精度の型制作や
部品仕上げ加工が容易で、摺動部の高精度寸法確保が容
易にでき、環状板の反りが少なく、薄肉による軽量化が
図れる。
また、環状板の一対の平面部の間隔やスラスト軸受のガ
イド穴の一対の平面部の間隔が広く、且つ、形状も簡単
なために、切削工具や成形金型のポンチ部などの寸法精
度や剛性を向上できるので、平面部の切削加工や成形加
工が容易で、平面部の寸法精度も高く、加工コストも安
価である。このため、自転阻止部材とスラスト軸受との
間の摺動部隙間を少なくできる。
この結果、軽量の自転阻止部材が旋回スクロールに追従
し、往復運動して運動方向を変える時の慣性力の変化や
摺動部隙間のバックラッシュを少なくしてスラスト軸受
への回転方向振動、軸方向振動を低減することが出来る
と共に、旋回スクロールと自転阻止部材を合わせた駆動
軸の回転に伴う可動部材の重心位置変化を小さくし、駆
動軸系の不釣り合い量を少なくして小型・軽量が可能な
圧縮機への加振力を低減させ、圧縮機高速運転時でも振
動を少なくできる。
また、軸方向に移動が可能なスラスト軸受の振動が少な
いので、圧縮室圧力が正常で順次移行する圧縮室の圧縮
圧力により旋回スクロールに作用してスラスト軸受の側
に向かうスラスト力がスラスト軸受に作用する付勢力よ
りも小さい場合は、旋回スクロールと固定スクロールと
の間で軸方向に微少隙間が保たれて圧縮室の密封を維持
し、効率の良い圧縮作用をすると共に、ある程度の負荷
変動時や加減速運転時、高速運転時でも旋回スクロール
のジャンピングや傾きを防止して振動の少ない静粛な圧
縮運転を続けることができ、万一、液圧縮などが生じて
瞬時的に圧縮室圧力が異常上昇した場合には、旋回スク
ロールに作用するスラスト力がスラスト軸受に作用する
付勢力よりも大きくなり、スラスト軸受を本体フレーム
との間の隙間が小さくする方向に移動せしめ、旋回スク
ロールと固定スクロールとの間の軸方向隙間を大きく
し、圧縮室の密封を解除して圧縮圧力を降下せしめて圧
縮負荷を軽減し、再び正常な圧縮運転に復帰させること
のできる実質的に有効な過負荷軽減装置を簡易構成で安
価に実現できる。
また、過負荷軽減装置のスラスト軸受の内側に、それと
係合摺動して自転阻止機構を形成する自転阻止部材を配
置しているので、圧縮機軸方向寸法を増加することな
く、省スペースの過負荷軽減装置と自転阻止機構を実現
することができる。
また、過負荷軽減装置と自転阻止部材とが軽量・簡易構
成のため、その過負荷軽減装置の応答性も早く、過負荷
解消後の圧縮冷媒ガスの漏れも少ないので、過負荷軽減
装置作動時の圧縮効率の低減を防止できるなど、数多く
の優れたスクロール圧縮機を提供できる効果を奏するも
のである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例におけるスクロール冷媒圧縮機
の縦断面図、第2図は同圧縮機における主要部品の分解
図、第3図は同圧縮機におけるシールリング部とスラス
ト軸受部の部分詳細図、第4図は同圧縮機におけるオル
ダムリングの外観図、第5図は同圧縮機におけるオルダ
ム機構部の組立外観図、第6図は第5図におけるオルダ
ム機構部の上平面図、第7図は第1図におけるA−A線
に沿った横断面図、第8図は同圧縮機の吸入管接続部に
おける逆止弁の位置説明図、第9図は第8図におけるB
−B線に沿った部分断面図、第10図は同圧縮機の給油通
路に用いる逆止弁の外観図、第11図,第12図はそれぞれ
同圧縮機の吐出ポート付近における圧縮室の移動説明
図、第13図は同圧縮機の吸入行程から吐出行程までの冷
媒ガスの圧力変化を示す特性図、第14図は各圧縮機にお
ける定点の圧力変化を示す特性図、第15図は従来のオル
ダムリングを用いたスクロール圧縮機の縦断面図、第16
図,第17図は第15図におけるオルダムリングの平面図と
その断面図、第18図〜第20図は従来のそれぞれ異なるオ
ルダムリングの外観図と平面図、第21図は第20図のオル
ダムリングの分解図、第22図は従来の過負荷軽減装置を
備えたスクロール圧縮機の縦断面図である。 2……吐出室、3……モータ、4……駆動軸、5……本
体フレーム、15……固定スクロール、15a……固定スク
ロールラップ、15b……鏡板、16……吐出ポート、17…
…吸入室、18……旋回スクロール、18a……旋回スクロ
ールラップ、18c……ラップ支持円板、20……スラスト
軸受、24……オルダムリング、24a……環状板、27……
レリース隙間、28……環状溝、34……吐出室油溜、39…
…背圧室、70……シールリング、77a,77b……オルダム
リング移動空間。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固定スクロールの一部をなす鏡板の一面に
    形成された渦巻き状の固定スクロールラップに対して、
    旋回スクロールの一部をなすラップ支持円板上の旋回ス
    クロールラップを揺動回転自在に噛み合わせ、両スクロ
    ール間に渦巻き形の圧縮空間を形成し、前記固定スクロ
    ールラップの中心部には吐出ポートを設け、前記固定ス
    クロールラップの外側には吸入室を設け、前記圧縮空間
    は吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮
    室に区画されて流体を圧縮するスクロール圧縮機構を形
    成し、前記旋回スクロールは、前記ラップ支持円板の自
    転阻止部材を介して前記旋回スクロールに旋回運動させ
    る駆動軸を支承する本体フレームと、前記固定スクロー
    ルとの間に配置された構成において、前記ラップ支持円
    板は、前記本体フレームの側に設けられて軸方向にのみ
    移動が可能な環状のスラスト軸受と前記鏡板との間に配
    置され、前記スラスト軸受は、吐出流体圧力または吐出
    圧力と吸入圧力との間の中間圧力流体を利用して常に前
    記旋回スクロールの方向に付勢されながら、且つ、前記
    スラスト軸受と前記鏡板との間の最小寸法が、前記ラッ
    プ支持円板の円板厚さに対して、少なくとも前記ラップ
    支持円板の両面に油膜形成可能な隙間相当大きく確保で
    きるべく配置され、前記自転阻止部材は、前記ラップ支
    持円板と前記スラスト軸受との間に配置されて概略楕円
    形状を成した環状板が、前記環状板の概略中心を通る軸
    線上の前記ラップ支持円板の側の面に対称位置に設けた
    一対の突出部と、前記環状板の外周両側面に前記軸線に
    直交して設けた平行な平面部とから成り、前記突出部が
    前記ラップ支持円板に設けた一対のガイド溝に摺動可能
    に係合し、前記スラスト軸受の中央部に、前記ガイド溝
    に直交する一対の平行な平面部を有した輪郭のガイド穴
    を設け、前記ガイド穴の平行な前記平面部に前記環状板
    外周両側面の前記平面部が摺動可能に係合すべく構成さ
    れた自転阻止装置を備えたスクロール気体圧縮機。
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