JPH0737663B2 - アルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方法 - Google Patents

アルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方法

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JPH0737663B2
JPH0737663B2 JP41430690A JP41430690A JPH0737663B2 JP H0737663 B2 JPH0737663 B2 JP H0737663B2 JP 41430690 A JP41430690 A JP 41430690A JP 41430690 A JP41430690 A JP 41430690A JP H0737663 B2 JPH0737663 B2 JP H0737663B2
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ferrite
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糾 濱田
修司 山田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気カミソリの内刃
や外刃やバリカン等の刃物あるいは電動工具のチャック
やギア等の機構部品など高硬度、高耐摩耗性が要求され
る用途に好適なアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−Al
系フェライト合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高温酸化により合金表面に均一なAl2
3 皮膜(アルミナ皮膜)を生じる合金としては、Fe
−Cr−Al系フェライト合金が、アルミナ皮膜の剥離
が起こり易いFe−Ni−Cr−Al系オーステナイト
合金よりも優れている。Fe−Cr−Al系フェライト
合金については、特開昭54-141314 号公報、特開昭56-1
21641 号公報、特開昭58-177437 号公報、特開昭59-536
57号公報、特開昭59-93853号公報で酸化膜の耐剥離性等
の改善が提案されており、また、特開昭57-57859号公
報、特開昭64-47837号公報で加工性の改善が提案されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来のFe−Cr−Al系フェライト合金は、強度およ
び硬度が低く、特に、厚み数μm以上のアルミナ皮膜を
生じさせるために1000℃程度の高温加熱処理をする
と、合金基地の結晶粒が粗大化し、得られたアルミナ皮
膜付Fe−Cr−Al系フェライト合金の硬度が非常に
低いという問題があった。
【0004】この発明は、緻密かつ密着性に優れた均一
なアルミナ皮膜が硬度の十分な母材表面に形成されてな
るFe−Cr−Ni−Al系フェライト合金を製造する
ことのできる方法を提供することを課題とする。
【0005】
【問題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、請求項1記載のアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−
Al系フェライト合金の製造方法は、所定の形状に成形
されたFe−Cr−Ni−Al系フェライト合金を、酸
化雰囲気中、700℃以上1200℃未満の温度で加熱
することにより前記合金の表面に酸化アルミニウムを析
出させて酸化アルミニウム(アルミナ)皮膜を形成した
後、1200℃以上に加熱し、1℃/秒以上の速度で冷
却するようにしており、請求項2記載のアルミナ皮膜付
Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方法
は、所定の形状に成形されたFe−Cr−Ni−Al系
フェライト合金を、酸化雰囲気中、1200℃以上の温
度まで加熱し前記合金の表面に酸化アルミニウムを析出
させて酸化アルミニウム皮膜を形成した後、1℃/秒以
上の速度で冷却するようにしている。
【0006】これら、請求項1、2記載の発明における
Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の組成は、請
求項3のように、Cr:25〜35重量%、Ni:15
〜25重量%、Al:4〜8重量%、Ti:0〜0.5
重量%、Zr、Y、Hf、Ce、La、NdおよびGd
のうちのいずれか1種または2種以上:0.05〜1.
0重量%、残部が実質的にFeからなるものが適当であ
る。
【0007】この発明で得られるアルミナ皮膜付Fe−
Cr−Ni−Al系フェライト合金(以下、適宜に「フ
ェライト合金」と言う)は、フェライト相の生地に、高
強靱化に大きな役割を果たすといわれているNiAl系
金属間化合物が均一に分散析出した状態となっている。
このため、従来のFe−Cr−Al系フェライト合金に
比べて強度および硬度が飛躍的に向上している。また、
合金基地中に均一に分散析出したNiAlの存在によ
り、アルミナ皮膜形成のための熱処理を行った場合、結
晶粒の粗大化が抑制される利点がある。唯、実用性のあ
る十分な厚みのアルミナ皮膜を形成するためには長時間
高温で酸化処理する必要があり、この場合、そのままで
は、フェライト相生成元素であるAlがAl23 とな
るにつれて、NiAlの減少並びにオーステナイト相生
成元素であるNi元素の余剰で生じるオーステナイト相
の新たな出現あるいは粗大化が生じ、母材硬度の低下が
起こる。しかし、この発明のように、1℃/秒以上の急
速度で冷却することで硬度低下が阻止できるのである。
【0008】請求項1記載の発明の場合、アルミナ(酸
化アルミニウム)皮膜を形成するための酸化性雰囲気で
の熱処理は、700℃以上1200℃未満である。70
0℃未満だと全面に均一なアルミナ皮膜が形成されず、
また、母材が脆化する恐れがあるので、下限を700℃
とした。一方、1200℃以上だとアルミナ皮膜の形成
速度が早いため、長時間加熱した場合、NiAlの構成
元素であり、かつ、合金基地のフェライト相生成元素で
あるAl元素がAl23 となるにつれてNiAl量の
減少並びにオーステナイト相生成元素であるNi元素の
余剰によるオーステナイト相の新たな出現あるいは粗大
化が加速されることにより、母材硬度の大幅な低下を招
くので、1200℃未満とした。好ましくは、1150
℃以下である。また、加熱温度が900℃以下と低い場
合は、加熱時間は0.5時間以上が好ましい。0.5時
間より短いと全面に均一なアルミナ皮膜が形成されない
ことがある。アルミナ皮膜の厚さは、特に限定されな
い。
【0009】アルミナ皮膜形成後、合金基地中に分散析
出しているNiAlを合金基地に固溶させ微細化させる
1200℃以上の温度の熱処理を行う。温度が1200
℃未満だと固溶・微細化が生じにくいので、1200℃
を下限とした。また、1350℃を超えて加熱すると、
母材が脆化し易くなるので、加熱温度は1350℃以下
が好ましい。
【0010】1200℃以上での保持時間は、合金基地
中に分散析出しているNiAlを合金基地に固溶させ微
細化させるに十分な時間であれば特に限定されないが、
加熱温度が1200℃以上では急速にNiAl粒が固溶
・微細化するため保持する必要は特に無い。また、いた
ずらに長時間の加熱はコスト的に不利であるばかりでな
く、前述のとおりAl元素がAl23 となることによ
り、NiAl量の減少、オーステナイト相の新たな出現
あるいは粗大化による母材硬度の軟化を招くので、1時
間以内とするのが好ましい。
【0011】冷却速度が、1℃/秒未満だと加熱温度で
合金基地に固溶し微細化したNiAlが粒成長を起こ
し、そのため、母材硬度の向上が図れないので、1℃/
秒を冷却速度の下限とした。なお、冷却方法としては、
空冷、水冷等が挙げられるが、これに限らない。この発
明においては、合金表面に形成されたアルミナ皮膜は緻
密で合金との間の密着性が良好であるため、1200℃
以上の高温度から急速水冷を行っても、アルミナ皮膜の
剥離は生じない。
【0012】請求項2の発明においても、表面に緻密で
かつ合金との密着性に優れたAl2 3 を主成分とする
酸化物皮膜を備える。従来の耐高温酸化合金であるFe
−Cr−Al系合金は、フェライト系固有の強度、硬度
が小さいという弱点をもっており、また、表面に均一な
アルミナ皮膜を形成させるために高温加熱処理を施した
場合、一般の合金と同様に結晶粒の粗大化が認められ硬
度が低下するのに対し、この発明のフェライト合金で
は、酸化雰囲気中、1200℃以上に加熱し、加熱直後
あるいは所定時間保持の後、1℃/秒以上の速度で冷却
することによって、合金中に均一に分散析出したNiA
lを微細にかつ均一に分散させることにより加熱前に比
べて硬度の大幅な向上を図ることができる。酸化雰囲気
中、1200℃以上の温度に達する熱処理で同時に表面
に緻密かつ合金との密着性に優れたAl2 3 を主成分
とする酸化皮膜を形成することができる。
【0013】請求項2記載の発明において、加熱温度が
1200℃未満だと、合金基地中に分散析出しているN
iAlの合金基地への固溶による微細化が起こり難く、
1℃/秒以上の速度で冷却しても硬度の大幅な向上を図
ることは難しいので、1200℃を下限とした。また、
1350℃を超えて加熱すると母材が脆化し易くなるの
で、加熱温度は1350℃以下が好ましい。
【0014】1200℃以上での保持時間は、合金基地
中に分散析出しているNiAlを合金基地中に固溶させ
微細化させるに十分な時間であれば特に限定されるもの
ではないが、加熱温度が1200℃以上で保持する必要
はなく、加熱後すぐ1℃/秒以上の速さで冷却すれば十
分に硬化する。即ち、合金基地内に固溶し一度微細化す
れば、その後の加熱保持は硬化には不要であり、短時間
で硬化できる利点がある。
【0015】請求項2記載の発明においても、冷却速度
が、1℃/秒未満では加熱温度で合金基地に固溶し微細
化したNiAlが粒成長を起こし、その為、母材硬度の
向上が図れないので、1℃/秒を冷却速度の下限とし
た。なお、冷却方法としては、空冷、水冷等があるが、
特に限定されない。得られるフェライト合金表面のアル
ミナ皮膜厚みは、加熱温度が高く加熱時間が長いほど厚
くなる。請求項2記載の発明では、1200℃以上の加
熱温度で保持しなくても全面に均一なアルミナ皮膜が形
成される。また、1350℃を超えて加熱すると母材が
脆化し易くなるので、加熱温度は1350℃以下が好ま
しい。アルミナ皮膜厚みを増加させたい場合、加熱時間
を長くすればよい。長いほどアルミナ皮膜厚さに有効で
あるので特に限界はない。しかし、いたずらに長時間加
熱することはコスト的に不利であるばかりでなく、Ni
Alの成分であり、フェライト安定化元素でもあるAl
元素がAl2 3 となるにつれて、微細NiAl量の減
少ならびにオーステナイト相の新たな出現あるいは粗大
化により、1℃/秒以上の急冷によっても母材が硬化せ
ず軟化現象を招くので、5時間以内とするのが好まし
い。アルミナ皮膜の厚みは、特に限定されない。
【0016】また、この発明において、フェライト合金
に形成されるアルミナ皮膜は緻密でかつ合金との密着性
に優れている為、1℃/秒以上の急速な冷却、例えば、
加熱温度から水冷を行っても、アルミナ皮膜の剥離は起
こらない。請求項3の組成における各元素含有量の限定
理由を説明する。この発明の合金は、フェライト生成元
素であるCrおよびAlと、オーステナイト生成元素で
あるNiとを多量に含有したFe基合金であり、合金が
主としてフェライト相で構成されるように各元素の量を
選ばねばならない。この発明の合金を主としてフェライ
ト相にする理由は次のとおりである。フェライト相の合
金は、酸化加熱処理により、表面に緻密で下地との密着
性の良い厚いAl2 3 の膜が均一に生じず、剥離する
からである。合金をフェライト相にする場合、Ni量を
増加させると、(Cr+Al)量も増加させる必要があ
る。なお、わずかのオーステナイト相が混合してもこの
発明のフェライト合金の性質を損なうことはない。
【0017】この発明の合金では、Crは、全体の25
〜35重量%を占める。Fe−Cr−Al系合金におい
て、緻密で表面に均一なアルミナ皮膜を形成させるため
に必要であるが、この発明の合金では多量のNiを含有
していて、合金をフェライト相にするためには、Niが
下限値でAlが上限値の場合でも24重量%以上のCr
が必要である。それで、Crの下限は25重量%であ
る。また、合金中のCr含有量が増加するにつれて脆化
の傾向が強くなるので、Crの上限は35重量%であ
る。
【0018】この発明の合金では、Niは、全体の15
〜25重量%を占める。この発明では、微細なNiAl
を合金中に析出させることにより、機械的性質の向上を
はかっているが、Alとの共存下でNiAlを析出させ
るためにNiは不可欠の元素である。機械的性質の向上
に十分効果的であるだけのNiAlを析出させるために
は、15重量%程度以上のNiを必要とするので、Ni
の下限は15重量%である。Ni量が増加すれば、Ni
Alの析出や機械的性質の向上に好都合であるが、この
発明の合金はフェライト相で構成されねばならないの
で、オーステナイト生成元素であるNiの含有量を増加
すればそれに伴ってCrおよびAlの含有量を増加させ
る必要がある。しかし、Ni量が25重量%を越える
と、Cr量を増加させねばならず、そうすると脆化しや
すくなるので、Niの上限値は25重量%である。
【0019】この発明の合金では、Alは、全体の4〜
8重量%を占める。Alは合金中にNiAlを析出さ
せ、さらに、高温酸化処理により合金表面にアルミナ皮
膜を形成させるためには不可欠な元素である。特に、緻
密で均一な皮膜を形成させるためには、4重量%以上の
Alを含有することが必要である。Al含有量の増加
は、NiAlの析出やアルミナ皮膜の形成に有利である
が、8重量%を越えると合金の加工性が低下するので、
Alの上限は8重量%である。
【0020】この発明の合金では、Zr、Y、Hf、C
e、La、Nd、Gd等のチタン族元素や希土類元素は
アルミナ皮膜内に混入して皮膜の脆さを改善するととも
に、皮膜直下の合金内に内部酸化物粒子として分散し、
皮膜の密着性を著しく向上させる。これらの効果が発揮
されるには、Zr、Y、Hf、Ce、La、Ndおよび
Gdのうちの1種または2種以上が少なくとも0.05
重量%必要である。他方、1.0重量%を越えて含有す
ると、合金の加工性が急激に低下するので、上限は1.
0重量%である。
【0021】Tiは合金中に0.5重量%程度含有され
ている場合、適当な熱処理により微細な金属間化合物を
形成し、合金の強靱化に役立つ。この発明の合金は、T
iを含んでいないものであってもよいが、このような理
由によりTiを含んでいてもよい。ただし、Tiの含有
量が0.5重量%を越えるとアルミナ皮膜の密着性や緻
密性を損なうおそれがあるので0.5重量%以下が望ま
しい。
【0022】この発明の合金は、以上の成分以外の残部
をFeが占める。ただし、残部が全てFeである場合の
みに限定されず、たとえば、残部がFe以外に不可避的
に存在している不純物も含んでいる場合も含める。な
お、不純物の中でも、Si、C、Nの3元素は、下記の
理由により、下記の範囲となるようにすることが好まし
い。
【0023】Siは高温酸化処理中にSiO2 となり、
アルミナ皮膜に混入して皮膜の緻密性を損なうおそれが
あることから、0.3重量%以下とすることが望まし
い。0重量%であってもよい。Cは高温でCrと反応し
てCr炭化物を形成し、合金を脆化させる。また、CO
がCO2 ガスとなり、アルミナ皮膜を破壊する。さら
に、希土類と容易に反応し皮膜の密着性向上に対する希
土類元素の効果を低下させる。これらのことから、Cは
0.01重量%以下が望ましい。0重量%であってもよ
い。
【0024】Nは合金の靱性を低下させ、また、高温加
熱中にCrと反応しCr系窒化物となり、合金の脆化の
原因となりうる。このため、0.015重量%以下が望
ましい。0重量%であってもよい。この発明のフェライ
ト合金は、以上の成分限定理由で述べたように、基本的
にはフェライト相であるが、数%、より好ましくは10
%(体積率)以下のオーステナイト相が混合しても合金
の性質を損なうことはなく、均質な膜を形成することが
可能である。
【0025】なお、熱処理する所定形状のフェライト合
金は、各成分を一緒に真空溶解して鋼片を得てから、熱
間鍛造・圧延、温冷間加工の後、所定の形状に成形する
ようにする。この発明により製造されたアルミナ皮膜付
のフェライト合金は、表面に緻密で合金との密着性に優
れた均一なアルミナ皮膜が形成されていて、表面硬度が
母材よりも極めて高く、母材の保護皮膜となっており、
また、従来合金よりも硬度が大幅に向上しているため、
耐摩耗性と耐食性が要求される電気カミソリの内刃、外
刃、バリカン刃の固定刃、可動刃などの刃物や、また、
電動工具等のチャックやギアなどの機構部品、内燃機関
用あるいは腐食雰囲気用バルブなどに応用できる。しか
し、用途は、これらに限定されない。
【0026】
【実施例】以下、この発明の具体的な実施例および比較
例を示すが、この発明は下記実施例に限定されない。 −請求項1記載の発明の実施例− 表1に示す試料 No.1〜7の組成の合金を高周波誘導加
熱式真空溶解炉で溶製し、0.5mm厚の板状に圧延し
た。すなわち、5×10-4Torr以上の高真空中で、電解
鉄、電解クロムおよびNiペレットをアルミナるつぼに
入れて溶解し、溶融液中に、アルミニウム鉄合金、Fe
Zr合金、FeTi合金、ならびに、Hfおよび希土類
元素小片を添加した。さらに、同じ真空中で炉内にある
鉄あるいは銅鋳型に鋳込んで約1kgの合金インゴット
を得た。得られたインゴットを800〜1100℃に加
熱し、ハンマーで鍛造、さらに、同温度で圧延し、1.
5mm厚とし、表面酸化物を除去後、冷間圧延によって
0.5mm厚とした。これらを0.5mm×15mm×20mm
の大きさ切断し試料とした。
【0027】試料 No.1〜6の板材を、表2に示す条件
のもとに、大気中で加熱し酸化処理を行い、続いて12
00℃以上に再加熱し、再加熱直後あるいはその温度で
所定時間保持後、1℃/秒以下の速度で急冷した。図1
は、酸化処理および再加熱処理温度と経過時間との関係
をあらわすグラフであり、T1は酸化処理温度、t1は
酸化処理時間、T2は再加熱温度、t2は再加熱時間で
ある。
【0028】冷却後、板材断面のマクロビッカース硬度
(Hv)を測定するとともにアルミナ皮膜厚みを測定し
た。測定結果を表2に示す。比較のために、試料 No.1
〜7の板材を、表3に示す条件のもとに、処理し、アル
ミナ皮膜付の合金を得た。マクロビッカース硬度(H
v)およびアルミナ皮膜厚みを測定した。測定結果を、
表3に記す。なお、比較例13、14は従来例である。
【0029】−請求項2記載の発明の実施例− 表1に示す試料 No.1〜7の組成の合金を高周波誘導加
熱式真空溶解炉で溶製し、0.5mm厚の板状に圧延し
た。すなわち、5×10-4Torr以上の高真空中で、電解
鉄、電解クロムおよびNiペレットをアルミナるつぼに
入れて溶解し、溶融液中に、アルミニウム鉄合金、Fe
Zr合金、FeTi合金、ならびに、Hfおよび希土類
元素小片を添加した。さらに、同じ真空中で炉内にある
鉄あるいは銅鋳型に鋳込んで約1kgの合金インゴット
を得た。得られたインゴットを800〜1100℃に加
熱し、ハンマーで鍛造、さらに、同温度で圧延し、1.
5mm厚とし、表面酸化物を除去後、冷間圧延によって
0.5mm厚とした。これらを0.5mm×15mm×20mm
の大きさ切断し試料とした。
【0030】試料 No.1〜6の板材を、表4に示す条件
のもとに、大気中で1200℃以上の温度に達する処理
を、到達温度に達した直後ないし所定時間保持後、1℃
/秒以下の速度で急冷した。冷却後、板材断面のマクロ
ビッカース硬度(Hv)を測定するとともにアルミナ皮
膜厚みを測定した。測定結果を表4に示す。比較のため
に、試料 No.1〜7の板材を、表5に示す条件のもと
に、処理し、アルミナ皮膜付の合金を得た。マクロビッ
カース硬度(Hv)およびアルミナ皮膜厚みを測定し
た。測定結果を、表5に記す。なお、比較例33、34
は従来例である。
【0031】なお、実施例と比較例のデータを比べれ
ば、この発明で得られたアルミナ皮膜付のFe−Cr−
Ni−Al系フェライト合金が十分な硬度を維持してい
ることがよく分かる。図2は、実施例4のアルミナ皮膜
付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の母材内部
の金属組織をあらわす光学顕微鏡写真(倍率700倍)
である。
【0032】図3は、比較例3のアルミナ皮膜付Fe−
Cr−Ni−Al系フェライト合金の母材内部の金属組
織をあらわす光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
実施例4の場合、NiAl粒子は微細であるが、比較例
3の場合、粒径2〜4μmの粗大NiAl粒子がみられ
る。図4は、実施例22のアルミナ皮膜付Fe−Cr−
Ni−Al系フェライト合金の母材内部の金属組織をあ
らわす光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
【0033】図5は、比較例19のアルミナ皮膜付Fe
−Cr−Ni−Al系フェライト合金の母材内部の金属
組織をあらわす光学顕微鏡写真(倍率700倍)であ
る。実施例22の場合、NiAl粒子は1μm以下と微
細であるが、比較例19の場合、粒径2〜4μmの粗大
NiAl粒子がみられる。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【発明の効果】請求項1、2記載の発明で得られるアル
ミナ皮膜付のFe−Cr−Ni−Al系フェライト合金
は、母材がFe−Cr−Ni−Al系フェライト合金で
あるため、アルミナ皮膜は緻密で合金との密着性に優
れ、1℃/秒以下の急冷処理を受けているため、母材硬
度が十分となっている。
【0040】請求項3記載の発明で得られるアルミナ皮
膜付のFe−Cr−Ni−Al系フェライト合金は、合
金組成が適切であるため、緻密で合金との密着性に優れ
たアルミナ皮膜付で母材硬度が十分なものが確実に得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化処理および再加熱処理温度と経過時間との
関係をあらわすグラフである。
【図2】実施例4のアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−
Al系フェライト合金の母材内部の金属組織をあらわす
光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
【図3】比較例3のアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−
Al系フェライト合金の母材内部の金属組織をあらわす
光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
【図4】実施例22のアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni
−Al系フェライト合金の母材内部の金属組織をあらわ
す光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
【図5】比較例19のアルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni
−Al系フェライト合金の母材内部の金属組織をあらわ
す光学顕微鏡写真(倍率700倍)である。
【符合の説明】
T1 酸化処理温度 t1 酸化処理時間 T2 再加熱温度 t2 再加熱時間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/50

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の形状に成形されたFe−Cr−N
    i−Al系フェライト合金を、酸化雰囲気中、700℃
    以上1200℃未満の温度で加熱することにより前記合
    金の表面に酸化アルミニウムを析出させて酸化アルミニ
    ウム皮膜を形成した後、1200℃以上に加熱し、1℃
    /秒以上の速度で冷却するようにするアルミナ皮膜付F
    e−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 所定の形状に成形されたFe−Cr−N
    i−Al系フェライト合金を、酸化雰囲気中、1200
    ℃以上の温度まで加熱し前記合金の表面に酸化アルミニ
    ウムを析出させて酸化アルミニウム皮膜を形成した後、
    1℃/秒以上の速度で冷却するようにするアルミナ皮膜
    付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合
    金が、Cr:25〜35重量%、Ni:15〜25重量
    %、Al:4〜8重量%、Ti:0〜0.5重量%、Z
    r、Y、Hf、Ce、La、NdおよびGdのうちのい
    ずれか1種または2種以上:0.05〜1.0重量%、
    残部が実質的にFeからなる請求項1または2記載のア
    ルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金
    の製造方法。
JP41430690A 1990-12-25 1990-12-25 アルミナ皮膜付Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金の製造方法 Expired - Fee Related JPH0737663B2 (ja)

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