JPH0735918Y2 - コンクリート製セグメント - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はトンネル築造時に、トンネル壁面に組立施工さ
れるコンクリート製セグメントの改良に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

従来から、地下水が発生し易い地盤中にトンネルを築造
する場合、第５図に示すように、シールト機（ａ）のテ
ール部内に防水性筒状シート（ｂ）を圧縮状態で格納し
ておき、推進ジャッキ（ｄ）によりシールド機（ａ）を
前進させるに従って筒状シート（ｂ）を引き出しながら
テール部後端内で組立てられるセグメント（ｃ）の外周
面を被覆して掘削地盤からの地下水がセグメント（ｃ）
の接合部を通じてトンネル内に浸入するのを防止するこ
とが行われている。

この時、シールド機（ａ）は組立られるセグメント
（ｃ）の端面に反力を受止させて推進ジャッキ（ｄ）に
より推進され、シールド機（ａ）のテール部後端に装着
したテールシールパッキン（ｅ）によって前記筒状シー
ト（ｂ）の内周面をセグメント（ｃ）の外周面に押し付
けながら地盤からの地下水がシールド機（ａ）内にも浸
入するのを防止している。

このように、シールド機（ａ）の推進に従ってテール部
から引き出される筒状シート（ｂ）によりセグメント
（ｃ）を被覆しながらトンネルを築造していくものであ
るが、この場合、セグメントとして従来から広く知られ
ているコンクリート製セグメントを使用すると次のよう
な種々の問題点が生じる。

〔考案が解決しようとする課題〕

即ち、セグメント（ｃ）に反力をとって推進ジャッキ
（ｄ）を推進させると、セグメント（ｃ）の端面に大き
な圧力が作用し、その圧力によってセグメント（ｃ）の
端部、特に掘削地盤に接する表面側の稜角部が欠損する
場合が発生する。

そして、この欠損したコンクリート破片が、筒状シート
（ｂ）とセグメント（ｃ）間に介在し、シールド機
（ａ）の推進に従って筒状シート（ｂ）がテールシール
パッキン（ｅ）によりセグメント（ｃ）の外周面に押し
付けられながら後方に繰り出されに際に、筒状シート
（ｂ）とセグメント（ｃ）間に介在した破片によって筒
状シート（ｂ）が破損し、その破損部分から地下水がセ
グメント（ｃ）の接合部を通じてトンネル内に浸入する
という問題点が生じるものである。

このような筒状シート（ｂ）の破損は、互いに接合する
セグメント間に段差が生じていても、その角部によって
発生することになり、一部でも破損すると覆工セグメン
トの外周面全長に亘って地下水が浸入することになる。

本考案はこのような問題点を解消すると共に、例え筒状
シートが破損しても、接合面において確実な防水性を発
揮し得るコンクリート製セグメントの提供を目的とする
ものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案のコンクリート製セ
グメントは、長方形状のセグメント主体（１）の表面に
おける四方外周縁部に、外端縁に前記セグメント主体
（１）の四方端面側に臨んだ開口部（５）を有する偏平
中空帯状マット（２）を長方形枠状に貼着すると共にセ
グメント主体（１）の裏面から前記偏平中空帯状マット
（２）の内部に連通する止水剤注入孔（10）を設けてな
る構造を有するものである。

このように構成しているコンクリート製セグメントにお
いて、前記偏平中空帯状マット（２）内に弾力性を有す
る多孔性材料（３）を充填しておくことが好ましい。

〔作用〕

上記のように構成したコンクリート製セグメントをシー
ルド機のテール部後端内で組立てると共にその端面に反
力をとって推進ジャッキによりシールド機を前進させ、
該シールド機のテール部内から筒状シートを引き出しな
がらセグメントの外周面に被覆させていくと、上述した
ように、推進ジャッキ側からの圧力によってセグメント
主体（１）の端部、特に掘削地盤に接する表面側の稜角
部が欠損する場合が生じるが、欠損したコンクリート破
片は、セグメント主体（１）のトンネル地盤側の表面に
おける四方外周縁部に貼着された偏平中空帯状マット
（２）によって押え込まれた状態となり、筒状シートの
内周面側に脱落するのを阻止される。

従って、コンクリート破片は筒状シートに摺接すること
がなく、筒状シートの破損が防止されるものである。

さらに、セグメントの組立時において、互いに接合する
セグメント間に段差が生じた場合、その角部に筒状シー
トが圧着して破損する虞れがあるが、セグメントの表面
稜角部が適度の弾性を有する上記偏平中空帯状マット
（２）によって被覆されているから、その虞れは解消し
得る。

又、上記のようなセグメントの端部の欠損は、セグメン
トの運搬や搬入等の取扱時において他物との衝突などに
よっても生じるが、この場合も偏平中空帯状マット
（２）による保護によって防止し得るものである。

さらに又、セグメント主体（１）の裏面から前記偏平中
空帯状マット（２）内に連通する止水剤注入孔（10）を
穿設しているので、この注入孔（10）を通じてトンネル
内から偏平中空帯状マット（２）内に止水剤を注入する
と、該止水剤は偏平中空帯状マット（２）内に充填され
ると共にその開口縁から隣接するセグメント同士の接合
面に注入され、接合面間に止水層が形成されて、例え、
筒状シートが破損してもセグメント同士の接合面から地
下水が浸入するのを確実に防止することができる。

なお、前記偏平中空帯状マット（２）内に弾力性を有す
る多孔性材料（３）を内装しておけば、その弾性力によ
って上記のように欠損したコンクリート破片を確実に内
面側に押え込むことができると共に注入した止水剤が多
孔性材料（３）の全体に亘って円滑に浸透し、偏平中空
帯状マット（２）の開口端からコンクリート接合面の全
面に亘って均等に注入することができる。

〔実施例〕

本考案の実施例を図面について説明すると、第１図及び
第２図において、（１）は長方形状のコンクリート製セ
グメント主体で、掘削地盤側に接する表面は、その長さ
方向に掘削されるトンネルの彎曲面に沿う凸弧状面に形
成されていると共に裏面は凹弧状面に形成されてある。

（２）はセグメント主体（１）の表面における四方外周
縁部に長方形枠状に貼着された偏平中空帯状マットで、
比較的厚手の不織布又はゴム、合成樹脂シート材等より
形成され、一定幅を有する表裏シート部（2a）（2b）の
内端縁間を奥底シート部（2c）によって一体に連設する
と共に外端縁側を開口（５）させた構造を有している。

この偏平中空帯状マット（２）は、セグメント主体
（１）の四方外周縁部に該偏平中空帯状マット（２）の
幅に略等しい段面部（６）を形成し、この段面部（６）
に帯状被覆シート（２）を嵌め込むようにして貼着され
てある。

なお、このような段面部（６）を設けることなく、セグ
メント主体（１）の表面に直接貼着しておいてもよい
が、いずれにしても該偏平中空帯状マット（２）の開口
部（５）をセグメント主体（１）の四方端面側に臨ませ
て該開口部（５）の開口端をセグメント主体（１）の四
方端面と略面一にしておくものである。

（３）はこの偏平中空帯状マット（２）内に充填、内装
された弾力性を有する多孔性材料で、スポンジ或いは網
状繊維マット等よりなり、その厚みはセグメント主体
（１）の四方外周縁部に形成された前記段面部（６）の
深さと同等もしくはやゝ大きく形成されてあり、従っ
て、常態においては偏平中空帯状マット（２）の表面側
をセグメント主体（１）の表面と面一もしくは該表面か
ら僅かに突出させてある。

なお、この多孔性材料（３）は偏平中空帯状マット
（２）の開口部（５）部分のみに設けておいてもよい。

（７）はセグメント主体（１）の四方端面の中央部に無
端状に設けた周溝で、止水パッキン（８）を嵌着してあ
り、この止水パッキン（８）から裏面側における四方端
面には周方向に一定間隔毎にボルト取付孔（９）を穿設
してある。

（４）はセグメント主体（１）の表面側における四方外
周縁部に形成した条溝部で、セグメント主体（１）の稜
角部を面取り形状に切欠、切除してその切欠面（4a）と
該切欠面（4a）を被覆するように突出する前記被覆シー
ト（２）の外端部の裏面間で形成されているものであ
り、セグメント主体（１）の四方端面に向かって開口し
てある。

（10）はセグメント主体（１）の外周部適所に穿設して
いる止水材注入孔で、セグメント主体（１）の裏面外周
部適所から前記偏平中空帯状マット（２）内に連通して
いるものである。

このように構成したコンクリート製セグメント（ｃ）
を、第５図に示すように、シールド機（ａ）のテール部
後端内で組立てゝ、セグメント覆工を形成すると共に該
セグメント（ｃ）の前端面に反力をとって推進ジャッキ
（ｄ）によりシールド機（ａ）を前進させ、該シールド
機（ａ）のテール部内に格納、又は継ぎ足された筒状シ
ート（ｂ）をシールド機（ａ）の推進に従って後方に引
き出しながらセグメント（ｃ）の外周面に被覆させ、該
セグメント（ｃ）の外周面と掘削地盤間に筒状シート
（ｂ）による防水膜を形成するものであるが、この時、
推進ジャッキ側からの圧力によってセグメント主体
（１）の端部、特に掘削地盤に接する表面側の稜角部が
欠損する場合が生じる。

しかしながら、最も破壊しやすいセグメント主体（１）
の稜角部は切除されていると共に多孔性材料（３）を内
装した弾力性を有する偏平中空帯状マット（２）の外端
部により被覆されているので、この偏平中空帯状マット
（２）が緩衝作用を発揮して欠損の発生を極力防止する
ものであり、例え欠損してコンクリート破片が生じて
も、そのコンクリート破片は、偏平中空帯状マット
（２）の外端部内面に付着、保持されると共に該マット
（２）の内面から分離してもこのマット（２）により押
え込まれた状態となって筒状シート（ｂ）の内周面側に
脱落するのを阻止されるものである。

従って、筒状シート（ｂ）がシールド機（ａ）のテール
部後端に装着しているテールシールパッキン（ｅ）によ
ってセグメント外周面に押しつけられながら後方に引き
出される際に、コンクリートの破片に摺接することな
く、偏平中空帯状マット（２）の表面シート部（2a）に
摺接しながら円滑に引き出され、コンクリート破片との
摺接による破損は生じないものである。

又、偏平中空帯状マット（２）の表面側はセグメント主
体（１）の表面と同等又はやゝ突設しているので、セグ
メントの組立時に接合部に段差が生じても、筒状シート
（ｂ）がセグメント主体の稜角部に圧着することなく、
柔軟な偏平中空帯状マット（２）の表面に接するため、
破損する虞れがない。

さらに、セグメントの組立後、トンネル内から注入孔
（10）を通じて偏平中空帯状マット（２）内に樹脂系の
止水剤を注入すると、該止水剤は偏平中空帯状マット
（２）内の多孔性材料（３）に浸透しながら、該多孔性
材料（３）全体に亘って含浸すると共に偏平中空帯状マ
ット（２）の開口部（５）から条溝部（４）を介して隣
接するセグメント同士の接合面間の空隙部に前記止水パ
ッキン（８）に達するまで注入され、接合面間に止水層
が形成されて、例え、筒状シートが破損してもセグメン
ト同士の接合面から地下水が浸入するのを確実に防止す
ることができる。

又、セグメントの組立時にセグメント主体（１）（１）
の端面同士を接合すると、セグメント主体（１）（１）
に貼着している偏平中空帯状マット（２）（２）を開口
端同士が互いに密接して条溝部（４）（４）を密閉した
状態となるから、筒状シート（ｂ）が不測に破損しても
土砂が該条溝部（４）（４）内を通じて接合面間に浸入
するのを阻止するものである。

〔考案の効果〕

以上のように本考案のコンクリート製セグメントによれ
ば、長方形状のセグメント主体（１）の表面における四
方外周縁部に、外端縁に前記セグメント主体（１）の四
方端面側に臨んだ開口部（５）を有する偏平中空帯状マ
ット（２）を長方形枠状に貼着すると共にセグメント主
体（１）の裏面から前記偏平中空帯状マット（２）の内
部に連通する止水剤注入孔（10）を設けてなるものであ
るから、セグメント運搬時やトンネル内での組立時等の
取扱時にセグメント主体（１）の稜角部が他物に当たっ
ても該稜角部が偏平中空帯状マット（２）によって保護
されているので、欠損を防止することができると共に、
シールド機によるトンネル築造時にセグメントが推進ジ
ャッキ側からの圧力によって最も欠損し易い表面側の角
部が欠損しても、その欠損により生じたコンクリート破
片がセグメント外周面側に脱落するのを偏平中空帯状マ
ット（２）によって阻止することができ、従って、セグ
メントの外周面を止水用筒状シートによって被覆する場
合には、その筒状シートがコンクリート破片によって破
損させられるのを防止して筒状シートの止水効果をセグ
メント覆工の全長に亘って発揮させることができるもの
である。

さらに、セグメントの組立時において、互いに接合する
セグメント間に段差が生じる場合があるが、その部分の
セグメント表面は偏平中空帯状マット（２）によって被
覆されているので、セグメント稜角部による前記筒状シ
ートの破損も防止できるものである。

又、セグメント主体（１）の裏面から前記偏平中空帯状
マット（２）内に連通する止水剤注入孔（10）を設けて
いるので、トンネル内からこの注入孔（４）を通じて偏
平中空帯状マット（２）内に止水剤を充填することがで
きると共に該偏平中空帯状マット（２）はセグメント主
体（１）の端面側に開口（５）しているので、偏平中空
帯状マット（２）内に充填した止水剤を該開口部（５）
を通じて互いに接合するセグメントの接合面間の隙間に
円滑に注入することができ、筒状シートが破損してもセ
グメント同士の接合面から地下水が浸入するのを確実に
防止することができる。

なお、偏平中空帯状マット（２）を貼着しているセグメ
ント主体（１）の四方外周縁部の稜角部を切欠いておけ
ば、上記のような稜角部の欠損の発生を少なくし得ると
共に、この切欠面と該切欠面を被覆するように突出して
いる前記偏平中空帯状マット（２）の外周端部間で形成
された条溝部（４）は、例え上記筒状シートの一部が破
損しても偏平中空帯状マット（２）によりその内部に土
砂が浸入するのを阻止され、セグメント接合面に土砂が
閉塞する虞れがない。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図はセグメン
トの斜視図、第２図はセグメント同士の端面を接合した
状態を示す拡大断面図、第３図はその一部拡大断面図、
第４図は偏平中空帯状マットが外圧により圧縮させられ
た状態を示す拡大断面図、第５図は施工状態を示す簡略
縦断側面図である。 （１）…セグメント主体、（２）…偏平中空帯状マッ
ト、（３）…多孔性材料、（４）…条溝部、（５）…開
口部、（10）…止水剤注入孔。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】長方形状のセグメント主体（１）の表面に
   おける四方外周縁部に、外端縁に前記セグメント主体
   （１）の四方端面側に臨んだ開口部（５）を有する偏平
   中空帯状マット（２）を長方形枠状に貼着すると共にセ
   グメント主体（１）の裏面から前記偏平中空帯状マット
   （２）の内部に連通する止水剤注入孔（10）を設けたこ
   とを特徴とするコンクリート製セグメント。
2. 【請求項２】前記偏平中空帯状マット（２）内に弾力性
   を有する多孔性材料（３）を内装したことを特徴とする
   請求項記載のコンクリート製セグメント。