JPH0735061A - スクロール型圧縮機のシール機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 シール性が良好でかつ製造工程における加工
の容易なスクロール型圧縮機のシール機構を提供する。 【構成】 固定スクロール部材１と、可動スクロール部
材８とにより圧縮室１０が形成されるスクロール型圧縮
機において、固定スクロール部材１及び可動スクロール
部材８の渦巻部１ｂの端面に沿って渦巻形状の溝１１が
形成されている。該溝１１の底面の位置は渦巻部の中心
部から外周部へと連続的又は段階的に高くなっており、
該溝１１には軸方向の厚みが一定のチップシール１３が
収納されている。この構成により、圧縮機運転時の熱膨
張による渦巻部中心部の変形に対応する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、スクロール型圧縮機
において、圧縮室を密閉するためのシール機構に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、スクロール型圧縮機において
は、両渦巻部の端面に沿って渦巻形状に形成された溝に
シール部材が収納されている。そして、このシール機構
により渦巻部端面とこれに対向する相手側スクロール部
材の基板との間のシールが確保されている。このような
スクロール型圧縮機が運転されると、渦巻部の中心部側
の圧縮室は高圧になり渦巻部の外周部側に比べて温度が
上昇し、渦巻部の熱膨張によりシール部材を収納する溝
の底面位置が高くなる。このように、溝の底面位置が高
くなると、シール部材が相手側スクロール部材の基板に
強圧されて、摩擦が増大し、過熱や摩耗量増大のおそれ
がある。実公平３−５４７号公報では、この現象に対応
したシール機構が紹介されている。つまり、渦巻部の端
面に溝の深さは一定であるが、シール部材は、渦巻部の
中心部側においては溝の深さ寸法よりも小さく、外周部
においては該溝の深さ寸法よりも大きくなるような厚み
を有するものが収納されているものである。このシール
機構によると、渦巻部の中心部側においてシール部材の
厚みを小さく形成しているので、圧縮機の運転時に熱膨
張によりその部分の溝の底面位置が高くなっても、シー
ル部材が相手側スクロール部材の基板に強圧されること
がなく、しかも良好なシール性が確保される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上述のよう
なシール部材は、型により成形された後、表面研磨によ
り厚みを調整される。この場合、細幅で渦巻状をなすシ
ール部材を、渦巻部の中心部側で厚みを小さく、渦巻部
の外周部側で厚みを大きくするように表面研磨を施すこ
とは、手間がかかるものであった。すなわち、研磨は回
転砥石により行われ、その回転砥石による研磨量を螺旋
に沿って順次変化させることはきわめて難しい。

【０００４】この発明は上記従来技術に存在する問題点
に着目してなされたものであって、その目的は、シール
性が良好でかつ製造工程における加工の容易なスクロー
ル型圧縮機のシール機構を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は以下のように構成されたものである。す
なわち、基板から渦巻部を突出形成させた固定スクロー
ル部材と、同様に基板から渦巻部を突出形成させた可動
スクロール部材とを有し、両スクロール部材間に形成さ
れる圧縮室を、可動スクロール部材の公転運動により渦
巻部の外周部から中心部へ移動させることによって圧縮
作用を行うスクロール型圧縮機において、前記両渦巻部
の端面に沿って渦巻形状に形成された溝に、シール部材
が収納され、該溝の底面の位置が、渦巻部の中心部から
外周部へ向かって連続的又は段階的に高く形成されてい
ることを特徴としている。

【０００６】また、上述の構成において、前記溝に収容
される前記シール部材が、厚み一定又は渦巻部の中心部
から外周部へ向かって段階的に薄く形成されていると効
果的である。

【０００７】

【作用】上述のように構成された本発明のスクロール型
圧縮機では、運転時に渦巻部の中心部側が熱膨張により
変形し、その部分の溝の底面位置が高くなっても、シー
ル部材が相手側スクロール部材の基板に強圧されること
がない。

【０００８】

【実施例】以下に、この発明を具体化した第一実施例を
図１〜３に従って説明する。図１に示されるように、セ
ンタハウジングを兼ねる固定スクロール部材１の前後両
端面には、フロントハウジング２及びリヤハウジング３
が接合固定されている。フロントハウジング２内には回
転軸４が軸受５により回転可能に支持されており、回転
軸４には偏心軸６が連結されている。偏心軸６にはブッ
シュ７が回動可能に支持されている。このブッシュ７の
外周面には、可動スクロール部材８の基板８ａの背面中
心部に一体形成された円筒状のボス部８ｃが、軸受９を
介して相対回転可能に嵌合されている。

【０００９】可動スクロール部材８は、回転軸４の自転
に伴う偏心軸６の自転及び公転に伴い、ブッシュ７を介
して自転することなく公転する。可動スクロール部材８
の自転を阻止し公転のみを行わせる機構については、様
々な公知機構が知られているため、詳細な説明は省略す
る。

【００１０】前記固定スクロール部材１は、図２に示さ
れるように、基板１ａ上にケーシング１ｄと渦巻部１ｂ
を連続的に突出させて形成されている。一方、前記可動
スクロール部材８は、基板８ａ上に渦巻部８ｂを突出さ
せて形成されている。固定スクロール部材１と可動スク
ロール部材８とは、両渦巻部１ｂ，８ｂにおいて噛み合
わされ、かつ両渦巻部１ｂ，８ｂが互いに接触するとと
もに、両渦巻部１ｂ，８ｂの軸方向端面が他方のスクロ
ール部材の基板１ａ，８ａに接触するように設置されて
いる。そして、図１〜図２に示すように両スクロール部
材１，８の基板１ａ，８ａ及び渦巻部１ｂ，８ｂにより
圧縮室１０が形成される。

【００１１】該固定スクロール部材１及び可動スクロー
ル部材８の渦巻部１ｂ，８ｂの軸方向端面には、その渦
巻形状に沿って溝１１，１２が形成されている。この溝
は、その底面の位置が渦巻部１ｂ，８ｂの中心部から外
周部へと連続的に高くなっていくように形成されてい
る。この溝１１，１２には、平面形状が溝と同様の渦巻
形状であるシール部材としてのチップシール１３，１４
が収納されている。このチップシールの軸方向の厚みは
一定である。このチップシール１３，１４により、渦巻
部端面とこれが接触する相手側スクロール部材の基板と
の間のシールが確保される。

【００１２】前記両渦巻部１ｂ，８ｂの外部側には吸入
室１５が形成され、該吸入室１５には冷媒ガスが吸入さ
れる。また、前記固定スクロール部材１の基板１ａの中
心部には吐出孔１ｃが形成され、前記圧縮室１０とリヤ
ハウジング３に形成した吐出室１６とを連通可能にして
いる。なお、吐出室１６は外部の吐出管路と連通されて
いる。１７は吐出弁、１８は吐出弁の開放位置を規制す
るリテーナである。

【００１３】次に、上述のように構成されるスクロール
型圧縮機の作動を説明する。図３は、図２における一点
鎖線に沿う断面形状であり、固定スクロール部材１の渦
巻部１ｂ端面の溝１１、チップシール１３及び可動スク
ロール部材８の基板８ａの位置関係を、長さ方向にのみ
短縮してモデル的に示したものである。実施例のスクロ
ール型圧縮機は、停止時においては、図３に示されるよ
うに、渦巻部１ｂの中心部側において溝１１の底面とチ
ップシール１３との間に隙間が形成されており、この隙
間は渦巻部１ｂの外周部に向けて連続的に狭くなってい
る。

【００１４】このスクロール型圧縮機が運転されると、
前記偏心軸６の公転に伴い、可動スクロール部材８が回
転軸４の周りを公転する。そして、それに伴い前記吸入
室１５内の冷媒ガスが両スクロール部材１，８間の圧縮
室１０へ取り込まれる。圧縮室１０は図２において可動
スクロール部材８の公転に伴って渦巻部１ｂの外周部か
ら中心部へ移動され、容積減少しつつ圧縮作用を行って
いく。圧縮室１０の容積減少によって圧縮された冷媒ガ
スは、図１〜図２に示される基板１ａの吐出孔１ｃから
吐出弁１７を押し退けて吐出室１６内へ吐出される。こ
の時、圧縮室内の圧力は前記溝の底面とチップシール１
３との間の隙間にも作用する。このため、前記チップシ
ール１３は、圧縮室内の冷媒ガスによる背圧を受けて、
可動スクロール部材８の基板８ａに密着し、渦巻部１ｂ
端面と可動スクロール部材８の基板８ａとの間のシール
を確保する。

【００１５】このスクロール型圧縮機の運転時には、両
スクロール部材１，８間に形成される圧縮室は、渦巻部
の中心部に近い位置にあるものほどその内部圧力が上昇
している。このため、渦巻部１ｂは中心部に近い部分ほ
ど温度が上昇しており、その温度上昇に伴い、渦巻部１
ｂに熱膨張が引き起こされる。つまり、渦巻部１ｂの中
心部付近では、渦巻部１ｂを形成する壁が軸方向に伸
び、それに伴い、渦巻部１ｂ端面に形成された溝１１の
底面位置が高くなる。この現象は、渦巻部の中心部に近
づくほど顕著である。この実施例におけるスクロール型
圧縮機では、渦巻部１ｂ端面の溝１１の底面位置をあら
かじめ渦巻部の中心部ほど低く形成してあり、その部分
において溝１１の底面位置とチップシール１３との間に
隙間が形成されている。このため渦巻部の中心部側にお
いては、温度上昇による溝１１の底面位置の上昇を該隙
間が吸収する。従って、溝１１の底面位置の上昇によ
り、チップシール１３が可動スクロール部材８の基板８
ａを強圧することがない。さらには、運転時において渦
巻部１ｂの中心部付近が熱膨張により変形すると、この
圧縮機の渦巻部１ｂ端面に形成される溝１１の底面とチ
ップシール１３との間の隙間は、渦巻部の外周部側と中
心部側においてほとんど均一となり、一様なシール効果
が期待できる。

【００１６】この実施例によると、スクロール型圧縮機
の運転時に、渦巻部の中心部側においてチップシール１
１が可動スクロール部材８の基板８ａに強圧されない。
このため、チップシール１１と可動スクロール部材８の
基板８ａとの間の摺動摩擦が過大にならず、過熱が防止
され、チップシール１１の摩耗量が少なく抑えられ、、
圧縮機の破壊や耐久性の低下が防止される。

【００１７】また、この実施例によると、摺動摩擦の過
大化を招くことなく、チップシール１３として軸方向の
厚みを一定に形成したものを使用できるため、製造工程
において従来のように表面研磨により厚みを調整する必
要がなく、加工が容易である。渦巻部１ｂ端面に形成さ
れる溝１１も、ＮＣ工作機械によりその底面位置を変化
させる切削が容易にできるので、加工が容易である。す
なわち、溝１１はエンドミルの先端で切削され、溝１１
の深さは、スピンドル又はワークとしてのスクロール部
材をスピンドルの軸方向へ移動させるのみで調整するこ
とができる。

【００１８】なお、上述のスクロール型圧縮機の作動
は、全て固定スクロール部材１の渦巻部１ｂにおいて説
明されているが、もちろん、可動スクロール部材８の渦
巻部８ｂの溝も同じ構成であって、同様の作動が行われ
ている。

【００１９】この実施例において、図４に示されるよう
に、チップシール１３の厚みを渦巻部１ｂの外周部から
中央部に向けて段階的に厚く形成してもよい。図４にお
いては、厚みの異なる３個のチップシール片１３ａ〜１
３ｃを使用し、最も厚いチップシール片１３ａを中心側
に配置し、それに続けて次に厚いチップシール片１３ｂ
を配置し、さらにそれに続けて最も薄いチップシール片
１３ｃを外周部側に配置している。つまり、これら３個
のチップシール片１３ａ〜１３ｃにより、チップシール
１３を構成している。この場合、溝１１の底面位置はチ
ップシール１３との間の隙間を保つように渦巻部の外周
部から中心部に向けて連続的に低く形成する。この変形
例は、渦巻部の中心部側の圧縮室ほど圧力が高いため
に、チップシールの摩耗量が外周部と比較して多くなっ
てしまう不具合に対して有効である。この変形例におい
ては、図４に示されるように、チップシール１３とし
て、互いに厚みは異なるが、厚み一定のチップシール片
１３ａ〜１３ｃを使用しているため、チップシールの加
工は上述のものと同様に容易である。

【００２０】次に、この発明の第二実施例について図５
に従って説明する。この実施例は、上述の実施例におい
て、渦巻部１ｂの中心部から外周部に向けて連続的に高
く形成されていた渦巻部１ｂ端面の溝１１を、図５に示
されるように、段階的に形成したものである。この実施
例においても、上述の実施例とほぼ同様の効果が得られ
る。さらに、この実施例のスクロール型圧縮機による
と、溝１１の底面の変化が段階的であるため、上述の実
施例よりも、さらに製造工程における両渦巻部端面の溝
の加工が容易である。

【００２１】この実施例において、図６に示されるよう
に、図４に示したチップシール１３を使用してもよい。
また、上述の全ての実施例において、この発明の構成を
固定又は可動スクロールの一方のみに採用してもよい。

【００２２】

【発明の効果】以上詳述したように、この発明のスクロ
ール型圧縮機によれば、運転時に渦巻部の中央部におい
て、熱膨張により溝の底面位置が高くなっても、シール
部材が相手側スクロール部材の基板に強圧されず、良好
なシール効果を確保できる。つまりは、シール部材と相
手側スクロール部材の基板との間の摺動摩擦力の過大化
による圧縮機の破壊や圧縮機の耐久性の低下を防止する
ことができるという優れた効果を奏する。また、シール
部材を厚み一定に形成するため、シール機構部分の製造
工程における加工が容易である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を具体化した実施例のスクロール型圧縮
機の縦断面図である。

【図２】渦巻部端面の溝にシール部材が収納されている
様子を示す図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】シール部材、溝及び相手側スクロール部材基板
の位置関係を示すモデル図である。

【図４】シール部材、溝及び相手側スクロール部材基板
の位置関係を示すモデル図である。

【図５】シール部材、溝及び相手側スクロール部材基板
の位置関係を示すモデル図である。

【図６】シール部材、溝及び相手側スクロール部材基板
の位置関係を示すモデル図である。

【符号の説明】

１…固定スクロール部材、１ａ，８ａ…基板、１ｂ，８
ｂ…渦巻部、８…可動スクロール部材、１１，１２…
溝、１３，１４…シール部材としてのチップシール

フロントページの続き (72)発明者 ▼ひろ▲瀬 達也 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基板から渦巻部を突出形成させた固定ス
   クロール部材と、同様に基板から渦巻部を突出形成させ
   た可動スクロール部材とを有し、両スクロール部材間に
   形成される圧縮室を、可動スクロール部材の公転運動に
   より渦巻部の外周部から中心部へ移動させることによっ
   て圧縮作用を行うスクロール型圧縮機において、 前記両渦巻部の端面に沿って渦巻形状に形成された溝
   に、シール部材が収納され、該溝の底面の位置が、渦巻
   部の中心部から外周部へ向かって連続的又は段階的に高
   く形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機
   のシール機構。
2. 【請求項２】 前記シール部材は厚み一定であることを
   特徴とする請求項１記載のスクロール型圧縮機のシール
   機構。
3. 【請求項３】 前記シール部材は、渦巻部の中心部から
   外周部へ向かって段階的に薄く形成されていることを特
   徴とする請求項１記載のスクロール型圧縮機のシール機
   構。