JPH07317667A - スクロール型コンプレッサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来型のスクロール型コンプレッサの基本構
造からくる諸問題を解決可能な、スクロール型コンプレ
ッサを提供する。 【構成】 一つのクランクシャフト１に対して、互いに
噛み合う固定スクロール６ｂ、６ｃと可動スクロール５
ｂ、５ｃとの組を、複数、独立した位置に配設したスク
ロール型コンプレッサ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両用空調装置等に用
いられるスクロール型コンプレッサに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、一対のスクロール部材、つま
り固定スクロール部材と可動スクロール部材とを有する
スクロール型コンプレッサはよく知られている。この種
のコンプレッサでは、たとえば固定スクロールと可動ス
クロールとを角度をずらせて噛み合わせ、可動スクロー
ルの自転を阻止しつつ、固定スクロールに対して可動ス
クロールを旋回させるようになっている。両スクロール
間に形成される、両スクロールのうず巻体壁でシールさ
れた密閉空間（以下、流体ポケットということもあ
る。）を中心方向に移動させながら、該流体ポケットの
容積を減少させ、固定スクロールの中心部に設けられた
吐出孔から、流体ポケット内で圧縮された流体（たとえ
ば、冷媒）が吐出されるようになっている。

【０００３】上記のようなスクロール型コンプレッサに
おいては、一つのクランクシャフトが設けられ、このク
ランクシャフトに対して、通常、一つのうず巻体を有す
る固定スクロール部材と他の一つのうず巻体を有する可
動スクロール部材とが１組配設されている。そして、こ
のクランクシャフトと可動スクロール部材とが互いに係
合され、クランクシャフトの回転に伴って可動スクロー
ル（可動スクロール部材）が、回転（自転）を阻止され
た状態で旋回運動され、固定スクロールと可動スクロー
ルとの間に形成される流体ポケットを中心方向に移動さ
せることにより流体の圧縮が行われる。

【０００４】しかし、可動スクロールの旋回運動に際し
ては、可動スクロールの自転運動は阻止されなければな
らないが、この可動スクロールの自転阻止機構として、
たとえばボールカップリングやオルダムカップリングが
用いられている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなボールカップリングやオルダムカップリングを用い
ると、そのコンプレッサの大型化や内部機構の複雑化を
招き、さらに、これらカップリングは比較的構造が複雑
であるため組み付けに手間を要するという問題を招いて
いる。

【０００６】また、上記ボールカップリングやオルダム
カップリングは、自身の機構内に転動部や摺動部を有し
ているため、装置作動時にノイズの発生源となる。さら
に、ボールカップリングやオルダムカップリングの転動
部や摺動部には、長期間の使用中に多かれ少なかれ摩耗
が生じるので、装置自身の耐久性の律則部となることも
あり、ひいては耐久性向上に対して限界を与える原因と
もなっている。

【０００７】本発明の目的は、上記のような、これまで
の従来型のスクロール型コンプレッサの基本構造上から
くる限界に鑑み、従来のボールカップリングやオルダム
カップリングのような特別の回転阻止機構を設けること
なく、可動スクロールの自転阻止を達成し、装置の小型
化、構造の簡素化、耐久性の向上、ノイズの低減に関し
て、装置の性能を一挙に大幅に向上することにある。

【０００８】なお、本発明に係る構造と同様に複数のス
クロールを設ける構造としては、特開昭５５−１１２８
９２号公報に開示された構造が知られているが、この提
案構造では、複数組の可動スクロールと固定スクロール
において、各可動スクロールおよび固定スクロールがそ
れぞれ機械的に接続されているので、固定スクロールと
それに対応する可動スクロールとをそれぞれ噛み合せる
ために著しく高い加工精度が要求され、装置の製作が困
難になるおそれがある。本発明は、このような問題も同
時に解消するものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的に沿う本発明の
スクロール型コンプレッサは、一つのクランクシャフト
に対して、互いに噛み合う固定スクロールと可動スクロ
ールとの組を、複数、独立した位置に配設したものから
なる。

【００１０】このように、一つのクランクシャフトに対
して複数の固定スクロールと可動スクロールの組を複
数、独立した位置に配設する構成を採ることにより、対
応する固定スクロールと可動スクロールとを噛み合せる
ために著しく高い加工精度が求められることはなくな
る。

【００１１】この本発明に係るコンプレッサにおいて
は、複数の可動スクロールを構成するうず巻体は、一つ
の底板上に設けられ、一つの可動スクロール部材として
一体的に、自転を阻止されつつ旋回される。

【００１２】また、前記クランクシャフトと、複数の可
動スクロールが固着されている底板とは、たとえば偏心
ブッシュを介して係合され、クランクシャフトの回転に
伴って、該偏心ブッシュを介して、複数の可動スクロー
ルと底板からなる可動スクロール部材に旋回運動が付与
される。

【００１３】

【作用】このような本発明に係るスクロール型コンプレ
ッサにおいては、一つのクランクシャフトから複数の可
動スクロールに、同時に回転運動が伝達されるが、該複
数の可動スクロールが対応する複数の固定スクロールに
それぞれ噛み合わされているので、一つの可動スクロー
ルの自転は、他の可動スクロールとそれに対応する固定
スクロールとの噛み合いによって阻止される。すなわ
ち、特別な自転阻止機構や部材を設けることなく、自然
に自転が阻止される。そして、自転が阻止されつつ、ク
ランクシャフトの回転に伴って、たとえば偏心ブッシュ
を介して旋回運動が付与される。

【００１４】特別な自転阻止機構や部材を設ける必要が
ないことから、その分装置の小型化、簡素化が可能とな
る。コンプレッサ自身の容量に関しては、可動スクロー
ルと固定スクロール間に形成される流体ポケットによる
圧縮容量で決まるので、上記のように特別な機構や部材
を省略しても、基本的に容量とは無関係であり、必要な
容量を確保しつつ、装置の小型化、簡素化が可能であ
る。

【００１５】また、従来のボールカップリングやオルダ
ムカップリングにおけるような、回転（自転）阻止機構
特有の転動部や摺動部が無くなるので、摩耗の発生が抑
えられて装置の耐久性が向上され、さらにこれら転動部
や摺動部からのノイズの発生も無くなる。さらに、複数
組の固定スクロールと可動スクロールとは、各々機械的
に接続されていないので、対応する固定スクロールと可
動スクロールとを噛み合せるために著しく高い加工精度
が要求されることはなく、装置の製作を容易化できる。

【００１６】

【実施例】以下に本発明のスクロール型コンプレッサの
望ましい実施例を図面を参照して説明する。図１ないし
図５は、本発明の一実施例に係るスクロール型コンプレ
ッサを示している。図において、１はクランクシャフト
を示している。クランクシャフト１の一方の先端部には
カウンターウエイト（バランスウエイト）２を介して偏
心ブッシュ３が設けられている。偏心ブッシュ３は、ク
ランクシャフト１の回転中心（軸心）から偏心した位置
に配置され、可動スクロール部材５の底板５ａの孔４に
係合されている。

【００１７】底板５ａ上には、可動スクロールとしての
うず巻体５ｂ、５ｃが互いに独立した位置に固着されて
おり、底板５ａと２つのうず巻体５ｂ、５ｃとで一つの
可動スクロール部材５が構成されている。

【００１８】可動スクロール部材５に対応して、固定ス
クロール部材６が設けられている。固定スクロール部材
６の底板６ａ上には、固定スクロールとしてのうず巻体
６ｂ、６ｃが互いに独立した位置に固着されている。ま
た、固定スクロールとしてのうず巻体６ｂ、６ｃの中心
部に当る底板６ａ上には、それぞれ吐出孔６ｄ、６ｅが
穿設されている。このように固定スクロール部材６が構
成されている。

【００１９】可動スクロールとしてのうず巻体５ｂ、５
ｃ（以下、単に可動スクロールということもある）と、
固定スクロールとしてのうず巻体６ｂ、６ｃ（以下、単
に固定スクロールということもある）とは互いに噛み合
されている。

【００２０】上述のように本実施例においては、一つの
クランクシャフト１に対して、２組の可動スクロールと
固定スクロールとが独立した位置に配設されていること
になる。なお、本発明は、３組以上の可動スクロールと
固定スクロールによっても、原理的には構成可能であ
る。

【００２１】上記のようなスクロール型コンプレッサに
おいては、クランクシャフト１の他方の先端部に、たと
えば駆動モータ等の駆動源、あるいはそれから伝達機構
（図示略）を介して動力が伝達されると、クランクシャ
フト１が回転される。クランクシャフト１の回転に伴っ
て、偏心ブッシュ３を介して可動スクロール部材５に旋
回運動が付与される。この旋回運動により、可動スクロ
ール５ｂ、５ｃも該可動スクロールに噛み合された対応
する固定スクロール６ｂ、６ｃに対して旋回する。

【００２２】まず、可動スクロール５ｂ、５ｃの固定ス
クロール６ｂ、６ｃに対する旋回運動について、図２な
いし図５を用いて説明する。図２に示すように、可動ス
クロール５ｂ、５ｃと、固定スクロール６ｂ、６ｃを角
度をずらせて互いに噛み合わせると、可動スクロール５
ｂ、５ｃと固定スクロール６ｂ、６ｃの壁間に、シール
された流体ポケットＢが形成される。

【００２３】この状態で可動スクロール５ｂ、５ｃが図
２の矢印方向に、図３ないし図５に示す順序で旋回され
る。該旋回に伴って、両スクロール間に形成された流体
ポケットＢは、次第にその容積が減少されつつ、中心方
向に向けて移動される（図２ないし図５）。

【００２４】流体ポケットＢの容積の減少により、流体
ポケットＢ内の流体（たとえば冷媒）が圧縮され、圧縮
された流体が吐出孔６ｄ、６ｅから吐出される。この圧
縮作用を伴う流体ポケットの外側に、次の流体ポケット
が順次形成され（図３ないし図５）、同様の圧縮をくり
返す。

【００２５】上記のように構成されたスクロール型コン
プレッサにおいては、一つのクランクシャフト１から複
数の可動スクロール５ｂ、５ｃに同時に回転運動が伝達
されるが、可動スクロール５ｂ、５ｃが、対応する固定
スクロール６ｂ、６ｃにそれぞれ噛み合わされているの
で、一つの可動スクロールの自転は、他の可動スクロー
ルとそれに対応する固定スクロールの噛み合わせによっ
て、自然にかつ確実に阻止される。つまり、一組の可動
スクロールと固定スクロールとの噛み合わせ構造が、他
組における可動スクロールの自転を阻止する。このよう
に、２つの可動スクロール５ｂ、５ｃの自転が阻止さ
れ、各固定スクロール６ｂ、６ｃに対して旋回される。

【００２６】従って、特別に自転阻止機構や部材を設け
ることなく可動スクロール５ｂ、５ｃの自転が確実に阻
止できる。従来のような自転阻止機構や部材が省略され
るので、装置の小型化、簡素化が可能になる。

【００２７】また、自転阻止機構の配設に起因する問
題、つまり自転阻止機構の転動部や摺動部の摩耗やノイ
ズの発生がなくなるので、耐久性に優れた低騒音のコン
プレッサを実現できる。

【００２８】さらに、可動スクロール５ｂ、５ｃ、固定
スクロール６ｂ、６ｃは各々独立した位置に配設されて
いるので、各対応するスクロールは、それぞれ容易に所
定の噛み合わせ位置に組み付けられる。従って、両スク
ロール噛み合せのために著しく高い加工精度が要求され
ることはない。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のスクロー
ル型コンプレッサによるときは、一つのクランクシャフ
トに対して、互いに噛み合う固定スクロールと可動スク
ロールとを複数組配設する構成としたので、自転阻止機
構等を省略しても可動スクロールの自転を確実に阻止で
き、該省略により、装置の小型化、簡素化を実現でき
る。また、自転阻止機構の配設に起因する装置の耐久性
の低下やノイズの発生といった問題を解消できる。さら
に、複数組のスクロールが互いに独立した位置に配設さ
れているので、装置製作上の諸問題も同時に解消でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るスクロール型コンプレ
ッサの要部分解斜視図である。

【図２】図１の装置の一作動状態を示す断面図である。

【図３】図２の次の作動状態を示す断面図である。

【図４】図３の次の作動状態を示す断面図である。

【図５】図４の次の作動状態を示す断面図である。

【符号の説明】

１ クランクシャフト ２ カウンターウエイト（バランスウエイト） ３ 偏心ブッシュ ４ 孔 ５ 可動スクロール部材 ６ 固定スクロール ５ａ、６ａ 底板 ５ｂ、５ｃ 可動スクロールとしてのうず巻体 ６ｂ、６ｃ 固定スクロールとしてのうず巻体 Ｂ 流体ポケット

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一つのクランクシャフトに対して、互い
   に噛み合う固定スクロールと可動スクロールとの組を、
   複数、独立した位置に配設したことを特徴とするスクロ
   ール型コンプレッサ。
2. 【請求項２】 前記複数の可動スクロールを構成するう
   ず巻体が一つの底板上に設けられている、請求項１のス
   クロール型コンプレッサ。
3. 【請求項３】 前記クランクシャフトと、複数の可動ス
   クロールが固着されている底板とが、クランクシャフト
   の先端部に設けられた偏心ブッシュを介して係合されて
   いる、請求項１又は２のスクロール型コンプレッサ。