JPH07317628A - 燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃料の効率的な微粒化を、簡易かつ安価な構
造で実現する。 【構成】 ニードル弁３の先端面３ａを平面に成形する
とともに、上記先端面３ａに平行に円板プレート２を配
設して、これらの間に平行流路Ｐを形成する。ニードル
弁３の開放時に上記先端面３ａの外周を回り込んで供給
される調量後の燃料は、平行流路Ｐにより円板プレート
２中心の燃料噴射口２１方向へ案内され、燃料噴射口２
１の直上付近で正面衝突して微粒化し、燃料噴射口２１
より噴出する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は燃料噴射弁に関し、特に
噴射燃料の微粒化を促進した燃料噴射弁の構造改良に関
する。

【０００２】

【従来の技術】燃料噴射弁により供給される噴射燃料の
微粒化を促進することは、エアとの良好な混合を可能と
し、内燃機関の動力性能の向上、燃費低減、排気エミッ
ションの改善等、種々の利点をもたらす。特に近年にお
いては、ガソリンエンジン車での電磁式燃料噴射弁の普
及が目ざましく、該噴射弁より吸気管内へ供給される燃
料の液滴粒径をさらに小さくして、エンジン性能の向上
を図ることが求められている。

【０００３】かかる燃料微粒化の有力な方法の一つとし
て、例えば特公平５−３４５１５号公報、実公平２−５
０１７０号公報には、液体燃料同士を衝突せしめるもの
が提案されている。ここでは、燃料噴射弁の燃料噴出部
先端に、数個のオリフィスホールを有するプレートを装
着し、これらオリフィスホールから噴出する燃料同士を
衝突せしめている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、噴射弁開弁時
の供給燃料量は所定量に定められているから、上記従来
の燃料噴射弁においてオリフィスホールの開口総面積が
制限される。この結果、各オリフィスホールの直径を
０．１〜０．２ｍｍ程度とごく小さなものにする必要が
あり、プレス等による大量生産が困難で、コストアップ
となっていた。

【０００５】一方、日本機械学会論文誌（Ｎｏ．９１−
１７２８）上において、図１５に示す燃料の衝突角度θ
が１８０°に近くなる程、噴射する液体燃料の噴射エネ
ルギーが微粒化に有効に寄与することが示されており、
これによれば、燃料の微粒化には噴射燃料を正面衝突せ
しめるのが最も効果的であることになる。しかし、上記
従来の燃料噴射弁の構造では、噴射燃料を正面衝突せし
めることはできず、また、正面衝突せしめる点について
の示唆もない。

【０００６】本発明はかかる課題を解決するもので、燃
料流の正面衝突による燃料の効率的な微粒化を、簡易か
つ安価な構造で実現した燃料噴射弁を提供することを目
的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】請求項１の構成では、ノ
ズルボディ１の内空間に収納されて前後動し、後退開放
時にノズルボディ１内壁のシート面１ａとの間で調量し
た燃料を、上記ノズルボディ１先端の燃料噴射口２１よ
り噴出せしめるニードル弁３を有する燃料噴射弁におい
て、上記ニードル弁３の先端面３ａを平面に成形すると
ともに、上記ノズルボディ１の先端内壁面２ａを上記ニ
ードル弁先端面３ａの外周に対向する位置よりこれに平
行に中心部方向へ延出せしめて、ニードル弁先端面３ａ
とノズルボディ先端内壁面２ａとの間に、中心部に位置
する上記燃料噴射口２１へ至る平行流路Ｐを形成し、ニ
ードル弁３開放時にこれの先端面３ａ外周を回り込んで
供給される調量後の燃料を、上記平行流路Ｐにより中心
部の燃料噴射口２１方向へ案内して、燃料噴射口２１の
直上付近で正面衝突せしめ、衝突により微粒化した燃料
を上記燃料噴射口２１より噴出せしめるようになす。

【０００８】請求項２の構成では、平行流路Ｐを形成す
る上記ニードル弁先端面３ａないしノズルボディ先端内
壁面２ａの少なくとも一方に、外周部より中心部の燃料
噴射口２１へ向かう複数の渦状溝３１，２２を形成しも
のである。

【０００９】

【作用】請求項１の構成において、ニードル弁の開放時
には、調量後の燃料が平行流路により燃料噴射口方向へ
案内され、燃料噴射口の直上付近で正面衝突して効率的
に微粒化されて、燃料噴射口より噴出せしめられる。か
くして、燃料流の正面衝突によりその微粒化が促進され
るとともに、従来の如き複数の微細なオリフィスホール
を設ける必要はないから、製造容易であり、コスト低減
が実現される。

【００１０】請求項２の構成においては、燃料噴射口へ
案内される燃料が渦状溝により旋回せしめられ、この旋
回状態で正面衝突するから、さらに効果的な燃料の微粒
化が実現される。

【００１１】

【実施例１】図１には本発明を適用した電磁式燃料噴射
弁の全体断面を示し、図２、図３にはそれぞれ、閉弁時
および開弁時の噴射弁先端の拡大断面を示す。図１にお
いて、本体４内には燃料通路４ａが形成され、燃料通路
４ａの入口４１にはフィルタ４２が装着されている。燃
料通路４ａの下流側にはノズルボディ１が密に嵌入さ
れ、該ノズルボディ１には、上記本体４の燃料通路４ａ
に連通する燃料通路４ｂ、該燃料通路４ｂの下流側端に
形成されたシート面１ａおよびこれに続いて燃料流出口
４３（図２）が設けられている。

【００１２】上記燃料通路４ｂ内にはニードル弁３が収
容されており、その先端面３ａは所定面積の円形平面と
なっている。該先端面３ａの上流側にはテーパ部３１が
形成され、上記シート面１ａとで燃料通路４ｂを開閉す
る弁部を構成している。

【００１３】また、上記本体４には、電磁ソレノイド４
４と、本体４の燃料通路４ａに収容されて電磁ソレノイ
ド４４の励磁により上流側へ移行するコア４５と、該コ
ア４５を下流方向へ付勢するリターンスプリング４６と
が設けてあり、上記コア４５とニードル弁３の上端部３
２は一体に結合されている。

【００１４】上記本体４とノズルボディ１とはスペーサ
４７を介して結合されている。ニードル弁３はスペーサ
４７を貫通してノズルボディ１の内周面で前後動可能に
支持されている。ニードル弁３にはストッパ部３３が設
けられ、該ストッパ部３３と上記スペーサ４７のクリア
ランスに相当する分だけニードル弁３は前後動が可能で
ある。これにより、ニードル弁３は電磁ソレノイド４４
を励磁することにより一定量リフトして、テーパ部３１
がシート面１ａより離間する。これにより、燃料流路４
ｂが開放される。

【００１５】図１において、５１〜５３は燃料シール用
のＯリング、４４１は電磁ソレノイド４４の電極端子、
４８は電極端子４４１を絶縁するハウジングである。ノ
ズルボディ１の先端には燃料流出口４３（図２）を閉鎖
して円板プレート２が一体に溶接接合してあり、該円板
プレート２には中央に、ノズルボディ１の燃料流出口４
３から流出した燃料を噴出させる燃料噴射口２１が設け
てある（図４）。そして、ニードル弁先端面３ａと上記
円板プレート２の上面２ａとの間には、図３に示す如
く、外周部の燃料流出口４３から中心部の上記燃料噴射
口２１へ向かう平行流路Ｐが形成されている。

【００１６】上記構造において、電磁コイル４４に通電
すると、燃料噴射口２１から燃料が噴射されるが、この
燃料は入口４１からフィルタ４２、燃料通路４ａ，４ｂ
を経て、シート面１ａとテーパ部３１の間隙で調量さ
れ、ノズルボディ１の燃料流出口４３から流出して円板
プレート２の燃料噴射口２１へ流れてきた燃料である。

【００１７】図５には、この時のシート面１ａとテーパ
部３１の間隙を通過した後の燃料流れの状態を矢印で示
す。燃料はニードル弁３の先端面３ａと円板プレート面
２ａの間の平行流路Ｐ内で水平流れとなり、中央部で燃
料同士が正面衝突して、燃料噴射口２１から噴出してい
る。この時、燃料同士の正面衝突により燃料の微粒化が
促進される。図６（１）、（２）には、衝突前後の燃料
流の状態を側面視で示し、さらに図７（１）、（２）に
はこの場合の燃料流を立体的に透視したものを示す。燃
料流は燃料噴射口２１の直上で正面衝突して微粒化し、
燃料噴射口２１より噴出する。

【００１８】なお、上記燃料噴射口２１の面積は適当な
大きさとする必要がある。すなわち、図８は、燃料噴射
口２１が小さすぎる場合の燃料流れを示し、この場合に
は燃料衝突後の微粒化分散作用が妨げられるため、燃料
微粒化促進の目的が達成できない。一方、図９は燃料噴
射口２１が大きすぎる場合で、この場合には燃料の水平
流れが形成できないため、燃料同士の正面衝突が生じ
ず、同様に燃料微粒化促進の目的が達成できない。すな
わち、燃料同士の正面衝突を実現し、燃料微粒化を実現
するためには、燃料噴出口２１の大きさを、燃料噴射中
（図３）のシート面１ａとテーパ部３１の間隙面積より
大きく、ニードル弁３の先端面３ａの面積より小さくす
る。これを、燃料噴射口２１の面積をＳとして数式で示
すと以下のようになる。 π・Ｄ1 ・Ｌ・ｓｉｎα＜Ｓ＜π・( Ｄ2 )²／４ ここで、図１０に示す如く、Ｄ1 ：シート面の直径 Ｄ2 ：ニードル弁先端面の直径 α：テーパ部の角度 Ｌ：ニードル弁のリフト量 である。

【００１９】かくして、本実施例によれば、ニードル弁
３の先端面３ａを平面となし、これに平行に対向する円
板プレート面２ａとの間に平行流路Ｐを形成して、該平
行流路Ｐにより中心部の燃料噴射口２１へ燃料を案内し
て正面衝突せしめることにより、十分に微粒化した燃料
を燃料噴出口２１から噴出供給することができる。これ
により、エンジンの動力性能の向上、燃費低減、有害排
気ガス成分の低減、始動性の向上等が実現される。ま
た、円板プレート２の燃料噴射口２１はプレス加工が十
分可能な大きさに設定できるから、コストアップも避け
られる。

【００２０】

【実施例２】燃料噴射口２１の形状は上記実施例１に示
すものに限られず、図１１に示す如く、円板プレート２
の板面に対して対称形に傾斜せしめた円形開口を、瓢箪
形に連結したものとすることができ、これによれば、噴
射燃料は微粒化されて図の左右方向へ噴射供給される。
なお、円形開口の連結方向は左右方向に限られず、燃料
噴射方向に応じて適宜変更できることはもちろんであ
る。

【００２１】

【実施例３】燃料噴射口２１の形状は円形に限られず、
例えば図１２に示す如く、円板プレート２の板面に対し
て対称形に傾斜せしめた矩形開口をその一辺で連結した
ものでも良い。

【００２２】

【実施例４】図１３に示す如く、ニードル弁３の先端面
３ａに、周方向の同方向へ湾曲して四方より中心部へ集
まる渦状溝３４を設けて、燃料噴射口２１へ至る燃料を
旋回せしめ、この旋回状態で燃料流を正面衝突せしめる
ようになせば、さらに燃料の微粒化を促進することがで
きる。

【００２３】

【実施例５】渦状溝２２を図１４に示す如く、ニードル
弁先端面３ａに対向する、円板プレート上面２ａの燃料
噴射口２１周縁に形成しても、上記実施例４と同様の効
果が得られる。もちろん、渦状溝２２，３４をニードル
弁先端面３ａおよび円板プレート２の両者に形成しても
良い。

【００２４】

【発明の効果】以上の如く、本発明の燃料噴射弁によれ
ば、簡易かつ安価な構造により液体燃料の効率的な微粒
化をなすことができ、エンジン動力性能や排気エミッシ
ョンの向上を実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用した電磁式燃料噴射弁の全体縦断
面図を示す。

【図２】本発明の実施例１における閉弁時の噴射弁先端
の拡大縦断面図である。

【図３】開弁時の噴射弁先端の拡大縦断面図である。

【図４】円板プレートを下方より見た平面図である。

【図５】噴射時の燃料流れを示す噴射弁先端の拡大断面
図である。

【図６】噴射時の燃料流れを示す側面図である。

【図７】噴射時の燃料流れの透視斜視図である。

【図８】燃料流の概略側面図である。

【図９】燃料流の概略側面図である。

【図１０】開弁時の噴射弁先端の拡大縦断面図である。

【図１１】本発明の実施例２における円板プレートを下
方より見た平面図である。

【図１２】本発明の実施例３における円板プレートを下
方より見た平面図である。

【図１３】本発明の実施例４におけるニードル弁先端の
拡大斜視図である。

【図１４】本発明の実施例５における円板プレートを上
方より見た斜視図である。

【図１５】燃料流の衝突を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ ノズルボディ １ａ シート面 ２ 円板プレート ２ａ 板面（先端内壁面） ２１ 燃料噴射口 ２２ 渦状溝 ３ ニードル弁 ３ａ 先端面 ３４ 渦状溝 Ｐ 平行流路

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ノズルボディの内空間に収納されて前後
   動し、後退時にノズルボディ内壁のシート面との間で調
   量した燃料を、上記ノズルボディ先端の燃料噴射口より
   噴出せしめるニードル弁を有する燃料噴射弁において、
   上記ニードル弁の先端面を平面に成形するとともに、上
   記ノズルボディの先端内壁面を上記ニードル弁先端面の
   外周に対向する位置よりこれに平行に中心部方向へ延出
   せしめて、ニードル弁先端面とノズルボディ先端内壁面
   との間に、中心部に位置する上記燃料噴射口へ至る平行
   流路を形成し、ニードル弁後退時にこれの先端面外周を
   回り込んで供給される調量後の燃料を、上記平行流路に
   より中心部の燃料噴射口方向へ案内して、燃料噴射口の
   直上付近で正面衝突せしめ、衝突により微粒化した燃料
   を上記燃料噴射口より噴出せしめるようになした燃料噴
   射弁。
2. 【請求項２】 平行流路を形成する上記ニードル弁先端
   面ないしノズルボディ先端内壁面の少なくとも一方に、
   外周部より中心部の燃料噴射口へ向かう複数の渦状溝を
   形成した請求項１記載の燃料噴射弁。