JPH0730665Y2 - 溶解炉用羽口 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、高炉等溶解炉用の羽口構造に関するものであ
る。

（従来の技術） 一般に、高炉等の送風羽口（以下、羽口と云う。）は通
常、純銅製であり、高温雰囲気下での寿命延長のために
冷却水が、該羽口の冷却室に通水されている。従来、羽
口を循環する冷却水の熱損失を防止したり、該羽口の破
損を防止するために、羽口の内筒面、或いは外筒面に
は、耐火物よりなる耐火スリーブを装着する技術が広く
採用されている。

例えば、その羽口構造の一例を第３図に基づいて以下詳
細に説明する。

符号（１）は羽口本体であり、該羽口本体（１）の内部
に冷却室（２）が設けられており、該冷却室（２）に冷
却水を通水することにより羽口本体（１）を冷却する構
成となっている。さらに、羽口本体（１）の内筒面
（３）に、高アルミナ質系耐火物よりなる円筒形の耐火
スリーブ（４）が装着されている。

従来の高炉の羽口構造は、上述したような構成となって
おり、羽口本体（１）が1200〜1300℃の高温に曝される
ので、内部に設けた冷却室（２）に冷却水を通水して、
該羽口本体（１）の温度上昇を制御している。また、羽
口本体（１）の内筒面（３）に耐火スリーブ（４）を装
着し、図中矢印Ａ方向から流れる1200〜1300℃の高温熱
風の熱影響が、羽口本体（１）の内筒面（３）に及ぼす
ことを防いでいる。

即ち、耐火スリーブ（４）を装着することにより、高温
熱風が羽口本体（１）の内筒面（３）と直接接触するこ
とを防止している。

（考案が解決しようとする課題） 近年、高炉羽口に耐火部材を装着し、羽口からの熱損失
を防止する技術が見直しされている。しかし、上述した
ように、羽口本体の内筒面と、耐火スリーブの外周面と
が直接接触する構造となっているので、羽口本体の内筒
面は冷却水により冷却され、一方、耐火スリーブは高温
熱風により加熱され、前記羽口本体の内筒面と耐火スリ
ーブとの熱膨張の差が大きくなり、該耐火スリーブにヒ
ートクラックが発生すると云う問題がある。

さらに、耐火スリーブを羽口本体の内筒面に装着時、衝
撃等の外的要因を受けると、耐火スリーブが破損したり
する恐れがある。

前述したように耐火スリーブにヒートクラックが発生す
ると、該クラック部より耐火スリーブの背面に高温熱風
が侵入し、羽口本体の内筒面と直接接触するので、該羽
口本体を冷却する冷却水の冷却能力が低下すると共に、
羽口本体が破損し、溶解炉の安定操業を行うことができ
ない。

本考案は、羽口本体に装着する耐火スリーブの寿命を延
長し、長時間安定操業を行うことができる溶解炉用羽口
を提供することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上述した目的を達成するために本考案の溶解炉用羽口
は、羽口本体の内筒面に耐熱性繊維からなる断熱部材を
介して耐火スリーブを装着した構成としている。

（作用） 本考案によれば、羽口本体の内筒面に耐熱性繊維からな
る断熱部材を介して耐火スリーブを装着しているので、
羽口本体を冷却する冷却水の温度影響が耐火スリーブに
直接伝達されることなく、断熱部材で大きく緩和され、
境界部のヒートショックが大幅に減少される。断熱部材
の厚さは３〜7mmが望ましい。その結果、耐火スリーブ
に発生していたヒートクラックを防止することができ、
耐火スリーブの寿命延長につながるものである。

また、耐火スリーブに対して機械的な衝撃があっても、
断熱部材が一種のクッション材としての役割を果たすこ
とから、ある程度の衝撃力にも十分に耐えうるものであ
る。

従って、耐火スリーブの長寿命化により、羽口本体から
の熱損失を防ぎ、断熱効果を長時間保持することがで
き、長時間にわたって溶解炉の安定操業が行えるもので
ある。

（実施例） 本考案の一実施例を、第１図の縦断面図に基づき以下詳
細に説明するが、従来の技術の項で説明した同一構成物
については、本実施例においても同一符号を付して説明
する。

符号（１）は羽口本体であり、該羽口本体（１）は熱伝
導率に優れた純銅（Cu;99.7％以上）で制作され、内部
に冷却室（２）が設けられており、該冷却室（２）に冷
却水を通水することにより羽口本体（１）を冷却する構
成となっている。さらに、羽口本体（１）の内筒面
（３）に、耐熱性繊維からなる断熱部材として厚さ5mm
の石綿板状パッキン（５）が貼り付けられ、該石綿板状
パッキン（５）を介して高アルミナ質系耐火物（Al₂O₃;
90％以上）よりなる円筒形の耐火スリーブ（４）が装着
されている。

円筒形に成形された耐火スリーブ（４）は簡単に装着す
ることができるが、成形されていない耐火スリーブ
（４）、即ち、不定形耐火物の場合は、羽口本体（１）
の内筒面（３）に石綿板状パッキン（５）を貼り付けた
後、図示しない型枠をセットして該型枠と石綿板状パッ
キン（５）との間隙に、不定形耐火物を流し込み成形す
る。この不定形耐火物を流し込んで耐火スリーブ（４）
を成形するとき、石綿板状パッキン（５）がネット形状
のものを採用すると、該石綿板状パッキン（５）のネッ
トと不定形耐火物とが、羽口本体（１）の内筒面（３）
に強固に固着される。

本考案の溶解炉用羽口は上述したように構成されてお
り、図中矢印Ａ方向より1200〜1300℃の高温熱風が羽口
本体（１）の内筒部を通過して、図示しない溶解炉に吹
き込まれる。この高温熱風が、羽口本体（１）の内筒面
（３）に直接接触しないように、該内筒面（３）に石綿
板状パッキン（５）を介して、耐火スリーブ（４）を装
着している。

即ち、羽口本体（１）の内筒面（３）と耐火スリーブ
（４）との間に、断熱部材として石綿板状パッキン
（５）を装着することにより、羽口本体（１）の冷却室
（２）を循環する冷却水の影響は石綿板状パッキン
（５）を介して耐火スリーブ（４）に伝達するので、羽
口本体（１）の冷却能を緩和することができる。また、
羽口本体（１）の内筒部を流れる高温熱風の熱伝達は、
加熱された耐火スリーブ（４）の熱が石綿板状パッキン
（５）を介して羽口本体（１）に伝達されるが、断熱部
材としての前記石綿板状パッキン（５）により大部分が
遮断されるので、羽口本体（１）内を循環する冷却水の
熱損失およびヒートショックによる耐火スリーブ（４）
の割れを防止できる。

従来の羽口構造によれば耐火スリーブの寿命は約１ヵ月
程度であったが、本考案の羽口構造を採用することによ
り、12ヵ月以上耐火スリーブにヒートクラックが発生せ
ず、溶解炉を連続して安定操業することができる。

本実施例においては、羽口本体の内筒面に石綿板状パッ
キンを介して耐火スリーブを装着した例を示したが、羽
口本体の外筒面に石綿板状パッキンを介して耐火スリー
ブを装着しても同様の結果が得られる。

また、高炉等の操業で微粉炭吹込羽口に適用する場合、
耐火スリーブ内筒面の平滑度が要求されるため、第２図
の縦断面図に示すように羽口本体（１）の内筒面（３）
に、断熱部材としての石綿板状パッキン（５）を介して
耐熱合金製の耐火スリーブ（６）を装着している。ま
た、前記石綿板状パッキン（５）は多層状にして所定の
層厚に調整する。

上述したような羽口構成としているので、羽口本体
（１）に付着する微粉炭の灰分付着に関しては、粗度が
粗く物理的に付着していた高アルミナ質系耐火物製の耐
火スリーブに比較し、耐熱合金製の耐火スリーブ（６）
を使用することにより、内面の平滑度が確保できるため
灰分付着が防止できる。

さらに、断熱部材として石綿板状パッキン（５）を、羽
口本体（１）と耐熱合金製の耐火スリーブ（６）間に介
在させているので、非常に大きな断熱効果が得られると
共に、羽口本体（１）内を循環する冷却水の熱損失を防
止することができる。

（考案の効果） 本考案によれば、羽口本体の内筒面に耐熱性繊維からな
る断熱部材を介して耐火スリーブを配設した構成として
いるので、断熱部材で伝達熱が緩和され、筒体と耐火ス
リーブとの熱膨張差が吸収されると共に、外的要因に伴
う衝撃も緩衝され、耐火スリーブの寿命が飛躍的に向上
し、更に断熱効果も増すことから溶解炉の安定操業に大
きく寄与するものである。

併せて、溶解炉微粉炭吹込羽口にも適用できるため、経
済的効果は非常に大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の溶解炉用羽口を示す縦断面図、第２図
は本考案の羽口を微粉炭吹込羽口に適用した例を示す縦
断面図、第３図は従来の溶解炉用羽口を示す縦断面図で
ある。 （１）……羽口本体、（２）……冷却室、（３）……内
筒面、（４）、（６）……耐火スリーブ、（５）……耐
熱部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】羽口本体の内筒面に耐熱性繊維からなる断
   熱部材を介して耐火スリーブを装着したことを特徴とす
   る溶解炉用羽口。